20110203 金融経済読書会 資本主義と自由

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1 「資本主義と自由」 ミルトン・フリードマン () 金融経済読書会 in 東京 2011年2月6日

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「資本主義と自由」

ミルトン・フリードマン (著) 

金融経済読書会 in 東京

2011年2月6日 

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1. ミルトン・フリードマンとは

2. 「資本主義と自由」

3. 「資本主義と自由」と現代の経済政策

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1.ミルトン・フリードマンとは

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どのような知的影響からも無縁であ ると自ら信じている実務家達も、過去 の経済学者の奴隷であるのが普通で ある。

実務家という名の奴隷を従える 「偉大」な経済学者といえば、

スミス、ケインズ、マルクス、フリードマン、 ガルブレイスぐらいのものだろう。

ジョンメイナードケインズ

元京都大学教授 現滋賀大学学長 佐和隆光

佐和隆光(1999)「経済学の名言100」ダイヤモンド社

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ミルトンフリードマンの影響

「フリードマンは20世紀の も影響力のある経済学者だという見方がますます広がっている。」(1990年ノーベル経済学賞受賞者ゲーリー・ベッカー)

「氏の非凡な頭脳と自由への貢献に、私達の誰もが恩恵を受けている。」 (元米大統領ジョージ・W・ブッシュ)

「歴史の流れを変えた」(元米国防長官ドナルド・ラムズフェルド)

「文明の方向を大きく変える独創的な思想を打ち立てた人は、長い年月の中でも、 ごく一握りだが、フリードマンはその数少ない一人だ。」(元FRB議長アラン・グリーンスパン)

「経済に対する考え方で、もっとも強い影響を受けたのは、ミルトン・フリードマンとア ダム・スミスだ。」(元カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツネッガー)

「フリードマンの貨幣論の枠組みが、現在の金融理論・政策に与えた影響は計り知れない。 現実の重要な事実を発見し、幅ひろい政策を提言した。」(現FRB議長ベン・バーナンキ)

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フリードマンの政策提言 •  変動相場制

•  K%ルール

•  負の所得税

•  徴兵制廃止

•  税金の物価スライド

•  税金・歳出の上限設定

•  連邦政府の均衡予算義務化

•  歳出抑制のための財政赤字容認

•  所得税 高税率の引き下げ

•  教育バウチャー制度

•  麻薬の合法化

•  医療貯蓄口座の創設

→市場経済、物価の安定、民営化、自由貿易、規制緩和、小さな政府、減税、 変動相場制、金融政策によるインフレ抑制。

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フリードマンと政治

•  レーガノミクス(アメリカ)

•  サッチャリズム(イギリス)

•  中曽根政権(国鉄の分割民営化、電電公社の民営化)

•  小泉政権(郵政民営化への着手)

•  香港(フリードマンの理想に も近い政策を実践していると言われている)

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フリードマン経済学 【金融政策】

•  K%ルール

•  貨幣数量説

•  フリードマンルール

【消費の理論】

•  恒常所得仮説

【失業】

•  自然失業率仮説

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ミルトンフリードマン 経歴 Milton Friedman、1912年7月31日 - 2006年11月16日)

1932年ラトガーズ大学(学士)

1933年シカゴ大学大学院(修士)

1934年-35年コロンビア大学

1937年-40年 NBER(クズネッツの研究助手)

1941年ウィスコンシン大学マディソン校客員教授

1941年-1943年 米財務省

1943年-45年 統計調査部グループ(SRI)

1945年-46年 ミネソタ大学

1946年 コロンビア大学(博士)

1946年-1976年 シカゴ大学教授

1977年-2006年 フーバー研究所

1951年ジョン・ベーツ・クラーク賞

1973年米経済学会会長

1976年にノーベル経済学賞を受賞

受賞テーマ:"for his achievements in the fields of consumption analysis, monetary history and theory and for his demonstration of the complexity of stabilization policy".

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フリードマンの教え子達

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2. 「資本主義と自由」

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「資本主義と自由」が書かれた当時のの時代背景

•  1940-70年代は、学会やメディアに政府の介入を支持するリベラルの思想が蔓延し、政治家の大半も考えに染まっていた。

•  フリードマンが自説を述べると、異端者か、ラスプーチンか、頭のおかしな人か、もしくはその3つを一緒くたにしたような扱いを受けた。

•  シカゴ大学の経済学部以外では、超保守派の傍流とみられていた。

ラニー・エー・ベンシュタイン(2008)「 強の経済学者ミルトン・フリードマン」より

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第1章 経済的自由と政治的自由 •  自由主義者が究極的な目的とするのは、個人の自由であり、

これはおそらく家族の自由である。この自由を基準に社会制度のよしあしを判断する。(P44)

•  経済的自由:多様性に対して寛容

  政治的自由:個人が他人から強制されないことを意味する (P50)

•  経済の力に政治の力が結びついたら、集中は避けられまい。逆に切り離されていれば、経済は政治権力を抑制してバランスをとる役割を果たすことが出来る。(P51)

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第2章社会における政府の役割 •  法を秩序を維持する

•  財産権を明確に定める

•  財産権を含む経済のルールを修正できるようにする

•  ルールの解釈をめぐる紛争を仲裁する

•  契約が確実に履行される環境を整える

•  競争を促す

•  通貨制度の枠組みを用意する

•  技術的独占に歯止めをかける

•  政府の介入が妥当と広く認められるほど重大な外部効果に対処する

•  狂人や子供などの責任能力のない者を慈善事業や家族に代わって保護する

筋の通った自由主義者は、けっして無政府主義者ではない。 とは言え政府の役割には、はっきりと制限を設けるべき。

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第10章 所得の分配

•  生産に応じて払うという資本主義的な立場と、平等を重視する目下人気の社会主義的な主張とは、両立するのだろうか。ある意味では両立する。なぜなら本当の意味で結果を平等にするためには、生産に応じて対価を払う必要があるからだ。(P294)

•  運のいいロビンソンや20ドル札を拾った男がいささか度量が狭いからと言って、分け前を強要するのは許されない。(P300)

•  現在みられる不平等の大半は市場の不完全性に起因するが、その不完全性の大半は、政府の手で生み出されている。したがって政府の手で取り除くことが可能だ。ルールを修正し不平等を根本で断ち切るのが当然であろう。(P317)

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3.「資本主義と自由」と現代の経済政策

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政府が行うべきではない役割(第2章) 1.  農産物の買取り保証制度。 2.  輸入関税と輸出制限。 3.  産出規制(農作物の作付面積制限、原油の生産割当てなど)。 4.  全面的な物価コントロール、賃金コントロール。 5.  低賃金制、価格の上限設定。 6.  産業規制、銀行規制。 7.  ラジオとテレビの規制。 8.  社会保障制度(とくに老齢・退職金制度) 9.  事業免許制度、職業免許制度。 10. 公営住宅、住宅建設奨励のための補助金制度。 11. 平時の徴兵制。 12. 国立公園。 13. 営利目的での郵便事業。 14. 公有公営の有料道路。

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政策提言と経済学者の賛同率 •  家賃の上限規制は住宅供給の量・質ともに低下させる。93% •  関税と輸入割り当ては一般的な経済厚生を低下させる。93% •  変動為替相場制度は有効な国際通貨制度である。  90% •  不完全雇用状態の経済では、財政政策(減税や財政支出拡大)には顕著な景

気刺激効果がある。90% •  連邦予算を均衡させるためには、毎年の値ではなく景気循環を通じての値を

均衡させるべきである。85% •  生活扶助受給者への現金給付は、同額の現物給付よりも受給者の厚生を高

める。84% •  巨額の財政赤字は経済に悪影響をもたらす。83% •  低賃金の引き上げは、若年労働者と未熟練労働者の失業率を引き上げる。

79% •  政府は社会福祉制度を「負の所得税」形式に変革すべきである。79% •  環境汚染規制のアプローチとしては、排出税や売買可能な排出権のほうが、

総量規制の導入よりもすぐれている。78%

Mankiw(2008) Principles of Economics

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ミクロ経済学からみた効率化と格差是正

•  高校無償化のような公立学校だけを補助する再分配より教育バウチャーのほうが公平で効率的(第9章)

•  低賃金を引き上げると失業が増える(第13章)

•  家賃規制や「借り手保護」を強めると借り手が困る(第15章)

•  雇用規制を強めると非正規労働者が困る(第22章)

•  子ども手当や農業所得補償のような「集団再分配」より負の所得税のような「個人再分配」のほうが公平で効率的

  (第22章)

  

八田達夫(2008)「ミクロ経済学Ⅰ Ⅱ」東洋経済新報社

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リーマンショックと市場主義 •  リーマンショックにより、市場への信頼は揺ら

いでいる

•  各国が大きな政府を志向し始めている

•  一方で、ギリシャ危機に見られるように、財政危機も表面化してきている

 今後、資本主義はどうあるべきなのか?

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資本主義は嫌いですか?

 (事前的な安全策を含む)このような規制が、経済に恩恵をもたらすかどうかは定かでなくても、一つのことだけは確かだといえる。それは、今後も世界経済の潮流が、「規制の強化」と「規制の緩和」の間を揺れ動くということである(P278)

竹森俊平(2008)「資本主義は嫌いですか」日本経済新聞社

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ディスカッションテーマ

•  「資本主義と自由」で賛同できた部分、出来なかった部分はどこか?

•  市場経済により発生する格差を容認できるか?(参考)大竹文雄(2010)「競争と公平感」中公新書

•  政府の役割は第2章で述べられていることだけでいいのか?