2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章...

41
22 経済のグローバル化が進展する中で、我が国製造 業を取り巻く競争環境や企業行動に大きな構造変化 が生じている。我が国の製造企業は、厳しいグロー バル競争に対応するため、世界規模での最適な機能 分業を志向しつつ積極的に海外展開を進めている が、その結果として国内製造業が空洞化するのでは なく、海外生産拠点と国内生産拠点が相互に補完関 係を構築しつつある。 第一に、海外拠点での現地生産・販売の拡大は、 国内からの高度部素材の調達等を通じて国内経済の 活性化に寄与している。第二に、海外事業を生産技 術、人材育成等の面で支援する必要性から、海外展 開の拡大に対応して、国内生産拠点の機能の高度化、 製品の高付加価値が進展している。 (1)我が国製造業の貿易と直接投資 2006年の我が国の貿易規模は、輸出金額が75.2兆 円、輸入金額が67.3兆円に達した(図121-1)。輸出入 1 我が国製造業の海外展開の現状 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割 0� 10 20 30 40 50 60 70 80 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 輸出金額� 輸入金額� 収支� (兆円)� 資料:財務省貿易統計� (年)� 75.2� 67.3� 図121-1 我が国の貿易収支 5,221 5,848 6,794 5,688 6,537 7,397 8,674 11,025 12,607 13,352 14,800 12,857 14,373 14,549 16,076 13,261 18,244 4,525 14,107 15,197 10,659 9,313 7,193 8,324 化学製品� 原料別製品� 一般機械� 電気機器� 輸送用機器� そ�の�他� 2003� 2004� 2005� 2006� 0 (年)� 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000(10億円)� 資料:財務省貿易統計� 図121-2 輸出の品目別内訳

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Page 1: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

22

経済のグローバル化が進展する中で、我が国製造

業を取り巻く競争環境や企業行動に大きな構造変化

が生じている。我が国の製造企業は、厳しいグロー

バル競争に対応するため、世界規模での最適な機能

分業を志向しつつ積極的に海外展開を進めている

が、その結果として国内製造業が空洞化するのでは

なく、海外生産拠点と国内生産拠点が相互に補完関

係を構築しつつある。

第一に、海外拠点での現地生産・販売の拡大は、

国内からの高度部素材の調達等を通じて国内経済の

活性化に寄与している。第二に、海外事業を生産技

術、人材育成等の面で支援する必要性から、海外展

開の拡大に対応して、国内生産拠点の機能の高度化、

製品の高付加価値が進展している。

(1)我が国製造業の貿易と直接投資

2006年の我が国の貿易規模は、輸出金額が75.2兆

円、輸入金額が67.3兆円に達した(図121-1)。輸出入

1 我が国製造業の海外展開の現状

第2節 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

0�

10

20

30

40

50

60

70

80

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06

輸出金額�輸入金額�収支�

(兆円)�

資料:財務省貿易統計� (年)�

75.2�

67.3�

図121-1 我が国の貿易収支

5,221

5,848

6,794

5,688

6,537

7,397

8,674

11,025

12,607

13,352

14,800

12,857

14,373

14,549

16,076

13,261

18,244

4,525

14,107

15,197

10,659

9,313

7,193

8,324

化学製品� 原料別製品� 一般機械� 電気機器� 輸送用機器� そ�の�他�

2003�

2004�

2005�

2006�

0

(年)�

10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000(10億円)�

資料:財務省貿易統計�

図121-2 輸出の品目別内訳

Page 2: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

23

金額の対前年伸び率は、輸出が14.6%、輸入が18.3%

といずれも10%を上回るなど、2001年以降の輸出入

の伸びは堅調に推移している。2006年の輸出入金額

の伸びの要因をみると、輸出については、前年同様、

輸送用機器、電気機器、一般機械の寄与が大きく、

これら3業種で輸出増加の6割以上を占める。一方

で、輸入については鉱物性燃料の寄与率が4割近く

を占めており、原油高騰の影響と考えられる(図

121-2、図121-3)。

我が国製造業の対外直接投資は、2006年には対前

年比39.1%増の4兆166億円となった(図121-4)。業

種別にみると、対外直接投資額として大きな構成比

を持つ電気機械が前年の1.7倍に増加した他、ガラ

ス・土石、石油、化学・医療などの素材系業種での

対外直接投資の増加もそれぞれ前年に比べて11.7倍、

6.2倍、1.4倍と大幅に増え製造業の対外直接投資の増

加に寄与した。製造業の対外直接投資の増加を地域

別にみると、これまでの増加傾向を継続する形でア

ジア地域が前年比1.3倍と顕著に増加したことに加え

て、欧州地域で前年比3.6倍の大幅な増加となってい

る。アジア地域については電気機械器具での増加が

大きく寄与している。これらの変化の結果、2006年

のアジア向けの対外直接投資の構成比は、2004年度

に比べて2%ポイント程度低下したが、それでも全

5,302

5,559

5,710

2,659

3,079

3,505

4,733

10,671

14,560

18,657

4,863

5,417

6,554

4,702

5,171

5,661

6,240

6,070

6,851

7,402

8,645

1,868

1,926

2,063

2,259

10,547

11,355

12,784

14,546

5,105 9,350 4,063

0� 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000(10億円)�

2003�

(年)�

2004�

2005�

2006�

食料品� 原料品� 鉱物性燃料� 原料別製品� 一般機械� 電気機器� 輸送用機器� その他�

資料:財務省貿易統計�

図121-3 輸入の品目別内訳

0�

1�

2�

3�

4�

5�

6�

7�

8�

9�

10�

84� 85� 86� 87� 88� 89� 90� 91� 92� 93� 94� 95� 96� 97� 98� 99� 00� 01� 02� 03� 04� 05� 06

(兆円)�

その他�

製造業�

(年度)�備考:04年度以前と05年以降で異なる統計を使用。両者には定義の違いあり、単純には比較できない。�  :2005年、2006年は暦年の値。�資料:04年度以前財務省「対外及び対内直接投資状況」�  :05年以降「国際収支統計」�

図121-4 対外直接投資

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24

88.779.0

91.7 93.4 94.9

123.8 127.6 126.6119.2

129.0134.9 138.0

145.2

162.8

184.8

198.5

95.087.3

25.4 25.1 29.0 34.5 36.747.4 52.1 50.7 50.8

56.264.6 64�

7179.3

103.597.5

83.574.173.470.972.868.4

75.975.576.4

58.258.962.753.9

63.4

0�

50

100

150

200

250

91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 予測�

製造業�

非製造業�

全産業�

(兆円)�

(年度)�備考:2005年度は速報値。�  :2006年度は見込み額として調査したもの。�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図121-7 海外現地法人の売上高

16.7 17.1

30.6 31.2

7.9 8.310.4 11.0 11.6 11.4 11.8

14.3 14.615.6 16.2

29.929.729.129.0

24.223.0

24.523.821.8

19.718.0

0�

5�

10

15

20

25

30

35

94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 予測�

国内全法人ベース� 海外進出企業ベース�

備考:1.国内全法人ベースの海外生産比率=海外現地法人(製造業)売上高/(海外現地法人(製造業)売上高+国内法人(製造業)売上高)×100�   2.海外進出企業ベースの海外生産比率=海外現地法人(製造業)売上高/(海外現地法人(製造業)売上高+本社企業(製造業)売上高)×100�   3.「海外現地法人」とは、「子会社(日本側出資比率が10%以上の海外法人)」と「孫会社(日本側出資比率が50%超の海外子会社が50%超

の出資を行っている海外法人)」を指す。�   4.「海外進出企業」とは、「海外現地法人」を有する我が国企業を指す。�   5.2006年度は見込額として調査したもの。また、国内全法人ベースの見込みは経済産業省において試算したもの。�   6.2005年度は速報値。�資料:財務省「法人企業統計」経済産業省「海外事業活動基本調査」�

(%)�

(年度)�

図121-8 海外生産比率

0�

5000�

10000�

15000�

20000�

25000�

30000�

35000�

40000�

45000�

50000�

90�91�92�93�94�95�96�97�98�99�2000�01�02�03�04�05�06

億円�

製造業全体 �

(年度)�

製造業(欧州)�

製造業(北米)�

製造業(アジア)�

備考:04年度以前と05年以降で異なる統計を使用。両者には定義の違いあり、�   単純には比較できない。�  :05年以降は暦年の値。��資料:04年以前財務省「対外及び対内直接投資状況」、05年以降「国際収支統計」�

図121-5 地域別対外直接投資

0�

10

20

30

40

50

60

70

80

90%�

38.7

67.765.2

(年度)�備考:04年度以前と05年以降で異なる統計を使用。両者には定義の違いあり、�   単純には比較できない。アジアには東アジア、南アジアの諸国を含む。�  :05年以降は暦年の値。��資料:04年以前財務省「対外及び対内直接投資状況」、05年以降「国際収支統計」�

90 92 94 96 98 2000 02 04 06

対アジア投資における製造業の割合�対外投資における製造業の割合�

57.2

図121-6 対外投資における製造業の割合

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

25

体の40.4%を占めており、近年のアジア中心の投資

基調に変化はない。一方で、2006年に欧州向けの対

外直接投資が大幅に増えたのは輸送機械産業の直接

投資の増加の寄与が大きく、我が国の自動車業界が

北米への生産拠点拡大を積極的に進めた結果である

と考えられる(図121-5、図121-6)。

対外直接投資の増加に伴い、我が国製造業の海外

現地法人売上高及び海外生産比率も増加基調が続い

ている。2005年度には海外現地法人の売上高が87.3

兆円、海外生産比率(国内全法人ベース)が16.7%

と、いずれも過去最高を更新している(図121-7、図

121-8)。

(2)直接投資先の選択要因

我が国製造業が直接投資を行う場合に、どのよう

な要因を重視して立地を選択しているのか、企業が

重視する立地選択要因をアンケート調査で把握した

ところ、海外生産拠点の立地選択要因の中で重要度

が最も高いのは「労働力確保の容易性」や「物流コ

スト」であり、9割以上の企業が「非常に重要であ

る」あるいは「重要である」と回答している。一方、

「補助金など金銭的インセンティブ」については、

約半数の企業が重要と考えているが、「非常に重要

である」と回答したのは4%に過ぎない。

なお、過去5年間の重要度の変化を「重要度DI」

(=「過去5年間で重要度が増した」の回答比率-

「重要度が下がった」の回答比率)でみると、5年

前と比較して、「知財保護の確実性」、「労働力確保

の容易性」、「災害リスク」、「カントリーリスク」及

び「物流コスト」の重要度の増加が著しく、知財問

題への関心の高まりや国内での労働力不足などを反

映しているものと考えられる。(図121-9)

以上のような企業の立地選択要因を背景に、実際

に海外生産拠点を整備する場合の優先度が高い国と

しては、中国を挙げる企業が約8割と最も多く、タ

イが4割強、米国とベトナムが3割強で続いている。

過去5年間の優先度の変化を「優先度DI」でみると、

ベトナム、インド、中国、ロシア、タイ、ポーラン

ドの優先度が大きく増加している(図121-10)。

0�10

20

30

40

50

60

70

80

90

100(%)�

0�

5�

10

15

20

25

30

35

40

45

労働力確保の容易性�

物流コスト�

人件費単価�

知財保護の確実性�

電力など�

ユーティリティ単価�

災害リスク�

サプライヤとの�

アクセス�

税 制�

顧客との近接性�

補助金など金銭的�

インセンティブ�

非常に重要である� 重要である� 最近5年間の変化�

備考1.上場している製造企業を対象にしたアンケート調査結果。有効回答数は227社�  2.D. I値は「重要性が増加した」と回答した企業の割合から「重要度は低下した」   と回答した企業の割合を差し引き算出�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図121-9 立地選択要因

0�

10

20

30

40

50

60

70

80

90

-20

-10

0�

10

20

30

40

50

60

70

優先度�

(%)� 優先度D.I�

優先度D.I�

中 国�

タ イ�

米 国�

ベトナム�

インド�

台 湾�

韓 国�

インドネシア�

マレーシア�

ロシア�

シンガポール�

ドイツ�

ポーランド�

イギリス�

フランス�

備考1.上場している製造企業を対象にしたアンケート調査結果。有効回答数は227社�  2.D. I値は「優先度が増加した」と回答した企業の割合から「優先度は低下した」   と回答した企業の割合を差し引き算出�資料:経済産業省調べ�

図121-10 立地選択の優先度

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26

コ ラ ム 化学物質管理を組み込んだものづくりへの対応~アーティクルマネジメント推進協議会

サプライチェーンにおけるアーティクル(成形品)が含有する化学物質情報の適切かつ円滑な授受

や開示の仕組みの具体化、並びにアーティクルを製造・販売・購入する川中の中堅・中小企業へ含有

化学物質情報管理を普及・推進し、もってサプライチェーン上でそれぞれのプレイヤーが自己の責任

や宣言による円滑な情報開示の仕組みを構築するため、業界の横断的な取組みを推進する主体として、

「アーティクルマネジメント推進協議会(通称:JAMP)」が2006年9月に発足した。

従前、化学物質規制等の各国規制は、各国の実状に合わせ、逐次導入が進められてきた。しかし、

グローバル化の進展により、「もの」に係る他国の環境規制が世界市場に与える影響も顕在化しつつあ

り、我が国産業界においても、このようなグローバル化への対応が急務となってきている。また、そ

の範囲はサプライチェーン全体に波及するため、サプライチェーンのそれぞれの主体がマネジメント

の高度化を図りつつ互いに連携し、環境への対応を積極的に図ることにより、「ものづくり」基盤の強

化を通じ国際的な競争力を確保していくことが不可欠となってきている。

サブスタンス(単一化学物質)やプレパレーション(複数の化学物質の混合品)に分類される製品

群には、MSDSやMSDSplusなどの情報開示の共通の仕組みが存在し、目的に応じて使い分けがなされ

ている。その反面、これらを利用して製造されるアーティクル(成形品)に分類される製品群には、

含有化学物質に関する情報開示の仕組みが存在しないので、これらの利用者が独自の仕組みを作り調

査しているのが実状である。

しかしながら、2007年にも施行が予定されているREACH規則は、一定基準を満たした化学物質の欧

州化学品庁への登録、加えて製品含有化学物質が環境に暴露される場合の製品製造者によるリスク評

価や登録等が求められるなど、国際的にもサプライチェーン全体への規制が顕著になりつつある。こ

のため、JAMPは、製品含有化学物質情報の管理と開示する仕組みを構築すべく産業界主導で提案し

ていく。

<JAMPのミッション>

サプライチェーンにおける製品含有化学物質の適切な管理及び関連する情報の円滑な開示を促進し、

もって我が国産業の環境への積極的な対応による「ものづくり」基盤の強化を通じた国際的な競争力

確保とアジア諸国を含めた製品含有化学物質の適切な管理の実現に寄与することを目的としている。

Page 6: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

27

コ ラ ム 産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質政策基本問題小委員会における検討

「化学物質」は、極めて広範な分野で活用される有用な基礎素材として、我々の社会・暮らしに不

可欠な一方で、その取扱いを間違えると、人体や環境を脅かす有害な物質として作用することがあるた

め、製造・使用・廃棄といった各段階で適切な管理を行い、問題を未然に防止することが重要である。

我が国では、化学物質審査規制法(化審法)に基づく市場導入前の事前審査規制等の高度化や、化

学物質排出把握管理促進法(化管法)に基づく自主管理の促進等が進められてきたが、近年、化学物

質を巡る周辺環境は大きく変化している。

このため、産業構造審議会化学・バイオ部会に新たに「化学物質政策基本問題小委員会」を設置し、

化学物質の更なる安全・安心の追求、国際的制度調和への対応、合理的な規制体系の追求、新規化学

物質開発に係るイノベーションの進展等の観点から、今後の化学物質政策の在るべき姿について9回

に亘って精力的な検討が行われてきた。

経済産業省では、同委員会における中間取りまとめを踏まえ、今後、関係省庁とともに化管法や化

審法といった制度の見直しを含めた具体的な政策展開を進めていくことを予定している。

化学物質管理を巡る国際的な動向と中間取りまとめの主要なポイント�

中間取りまとめの主要なポイント�

■リスクコミュニケーションの特性を踏まえた効果の最大化�■人材育成に向けた長期戦略�

■東アジア域内での共存・共栄に向けた国際協力の推進�

成型品・最終製品の�製造・輸入段階�

最終製品の廃棄・リサイクル�段階�

WEEE指令�

家電リサイクル法�自動車リサイクル法�資源有効利用促�進法(PCリサイクル)�

EuP指令�

化審法�

バーゼル条約�

電子情報産�品汚染防治�管理弁法�

廃旧家電回収�利用管理弁法�

PCリサイクル法�(カリフォルニア州)�

ELV指令�

各国国内法規�(廃棄物処理法)�

ROHS指令�REACH�

資源有効利用�促進法(設計・�製造)�

化学物質・調剤の製造・輸入�段階�

日本�

EU�

米国�

中国�

国連�

米TSCA�

化学物質・調剤の取扱い�(含使用・加工)段階�

各国PRTR制度�

化学品分類表示調和システム(GHS)�

化管法他(MSDS)�

中国化審法�

製品�含�有物�質�情�報の�伝�達�(�M�S�DS�p�l�u�s�、�I�M�D�S�、�アー�テ�ィ�ク�ルイ�ンフ�ォ�メーシ�ョン�等�)�製品含有物質情報の伝達(MSDSplus、IMDS、アーティクルインフォメーション等)�

化学物質の�ライフサイクル�

(成型品・最終製品としての状態)�(化学物質・調剤としての状態)�

化管法(PRTR)�

■長期的視野に立った化学物質政策の在り方と国際的制度調和の推進�→2020年目標と当面の制度見直しの課題整理�→GHSや各国規制との戦略的な制度調和�→化学物質のライフサイクルを考慮したリスクベース管理の一層の推進�■安全性情報の収集・把握の強化及び戦略的な基盤整備�→ハザード情報は公表を基本、併せて財産権は保護�

■サプライチェーンにおける双方向の情報伝達�→MSDS制度の充実・強化�→中長期的かつ段階的なGHS対応化�■サプライチェーン上のリスク評価・管理の推進�→事業者が行うリスク評価の対象を明確化�→リスク評価の重点分野の明確化とナノ粒子問題への対応�

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28

コ ラ ム M&A

近年、我が国におけるM&A件数は増加している。2006年のM&A件数は2,775件※1と、昨年を若干上

回り過去最高を記録した。これは、政府が、1997年の持株会社の解禁(独禁法改正)を皮切りに、商法

の改正(会社法の制定)、関連税制の整備等組織再編を容易にする制度改革を推進するとともに、買収

防衛に関するルール作り、証券取引法におけるTOB制

度、開示制度等公正なM&Aルールについて整備を行っ

てきた中で、企業が競争力を高めるツールの1つとして、

M&Aが定着しつつあると評価するものである。

世界経済の一体化、国際的な資金移動の巨大化が進む

中で、M&Aの活発化は、企業経営者にとって、自社の

企業価値を高めるためには、何をすべきかを常に考えな

ければならないという、ある種の緊張感をもたらすもの

である。

他方で、企業にとって、自由度が増した組織再編の手段を用いてM&Aを行うことは、国際市場に打

って出たり、新たな技術や経営ノウハウを取得することによって、大きな事業戦略の転換を図ることを

可能とし、競争力強化に資するものである。

今後においても、競争力強化の1ツールとして、M&Aニーズはさらに高まると思われる。政府とし

ても、M&A制度のより一層の定着を図るとともに、不断の見直し、整備を行っていくことが必要との

認識を有しており、最近では公正取引委員会が、「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(平成

16年5月31日)に関し、経済のグローバル化に伴う国際的な企業間競争の進展に対応し、企業の組織再

編に当たっての予見可能性並びに手続の透明性及び迅速性を一層高める観点から、改正を行ったところ

である。改正の概要は以下のとおりである。

1.一定の取引分野の画定

需要者にとっての代替性を基本とするものの、供給者にとっての代替性も必要に応じて考慮する旨を

明記した。

需要者にとっての代替性をみるに当たっては、ある商品をある地域で独占して供給している事業者の

存在を仮定し、当該事業者が利潤最大化を図る目的で、小幅ではあるが、実質的かつ一時的ではない価

格引上げをした場合に、需要者が当該商品の購入を他の商品又は地域に振り替える程度を考慮すること

を明記した。

地理的範囲が国境を越えて画定されることがあり得る旨を明記した。

2.独占禁止法上の問題が生じることがないと考えられる企業結合の範囲

通常、独占禁止法上の問題が生じることはないと考えられる範囲(セーフハーバー)については、

HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)及びHHIの増分により定めることとし、過去の審査実績

を踏まえてその具体的水準(①HHI1,500以下、②HHI1,500超2,500以下かつHHI増分250以下、③HHI2,500

超かつHHI増分150以下)を明示した。

※1 レコフ社調べ。なお、10年前と比較すると、約4.5倍の件数である。

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

29

コ ラ ム 国際標準化戦略目標の策定

1995年のWTO/TBT協定注)の発効により、世界市場における国際標準の重要性は飛躍的に高まっ

た。これに伴い、欧米では、国家政策として国際標準化を明確に位置づけ、戦略的に国際標準化を推

進してきている。産業界も、自らの問題として積極的に国際標準化活動に取り組んでいる。

近年、新製品の開発による新たな世界市場の獲得競争が激しくなる中で、我が国産業の国際競争力

の強化の観点から、我が国発の技術に基づく国際標準を戦略的に獲得していくことがますます重要と

なっている。また、福祉・安全・環境など公共福祉分野における国際標準のニーズも高まりつつある。

我が国においても、製品の競争力強化のための標準化活動は主に産業界が担い、政府はそうした民

間の活動への支援や公共福祉分野の標準化を実施するという基本的考え方のもと、国際標準の獲得に

向けて取り組んできたところであるが、依然として、我が国のISO・IECにおける活動水準は、欧米主

要国と比べて相当の開きがある。

このため、国際標準化活動を一層活性化するため、「国際標準総合戦略」(2006年12月6日:知的財

産戦略本部決定)の議論を踏まえ、2006年11月29日、経済産業大臣主催による「国際標準化官民戦略

会議」を経て、ISO・IECのデジュール国際標準化活動を強化することを目的として、「国際標準化戦

略目標」を策定した。

注)WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)第2条4項および附属書3(抜粋)「加盟国は、強制/任意規格を必要とする場合において、関連する国際規格が存在するときまたはその仕上がりが目前であるときは、当該国際規格またはその関連部分を強制/任意規格の基礎として用いる。(略)」

3.輸入・参入圧力等の評価基準

輸入・参入圧力の評価方法を明確化するため、「主要な企業結合事例」において示されている評価分析

の枠組みと判断要素を分かりやすくガイドライン上に記述するとともに、将来の輸入・参入の可能性の

評価期間の目安を2年以内と示す等、評価基準をより詳細に明示した。

4.その他

需要者からの競争圧力、効率性、当事会社グループの経営状況、問題解消措置等に係る記述について

所要の見直しを実施した。

また、公正取引委員会は、事前相談手続の一層の明確化を図る観点から、今般の企業結合ガイドライ

ンの改正にあわせて、事前相談の手続きについて定めた「企業結合計画に関する事前相談に対する対応

方針」の見直しを行い、事前相談に必要な書類や審査開始に関する手続き等の明確化を行った。

今般の改正により、企業結合審査における独占禁止法の適用の考え方や手続きが明確になり、企業の

予見可能性や審査の透明性が向上した。この結果、企業の迅速な意志決定が促されると期待できる。

以上

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30

コ ラ ム ISO(国際標準化機構)における事業継続計画(BCP)の国際標準化の動向

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)とは、企業等において災害、事故などが発生した

場合に、重要な業務が中断しないこと、または万一事業活動が中断しても目標復旧時間内に早く重要

な業務を再開させるために日常的に様々な準備などを行う計画で、近年その重要性が指摘されている。

現在、ISO(国際標準化機構)においては事業継続計画(BCP)についての国際標準化の検討が社

会セキュリティ技術委員会(TC223)で行われている。

ISO社会セキュリティ技術委員会(TC223)は、2006年5月にスウェーデンで第1回総会が開催され、

同年11月にはタイで第2回総会が、2007年5月にはアメリカで第3回総会が開催されている。この技術

員会のもとには、3つのワーキンググループ(WG)が設置されている。WG1は米国がコンベナー

(主査)として「社会セキュリティの原則と枠組」、WG2は英国がコンベナーとして「セキュリティ関

連の用語定義」、WG3はドイツがコンベナーとして「コマンド&コントロール/組織内・組織間の情報

伝達手法」について議論を行っている。

事業継続計画(BCP)の検討は、WG1のなかで行われている。5カ国(米国、英国、オーストラリ

ア、イスラエル、日本)がそれぞれ提案した事業継続計画に関連する文書をベースに、第三社認証制

度を意図しないガイダンス文書としての議論が行われている。

ISOで制定される国際標準は、強制力を持たない任意のものであるが、産業界などで広く利用され

ることもある。したがって、今後とも同技術委員会の議論の動向を注視し、積極的に関与していくこ

とが重要である。

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

31

(3)我が国製造企業の海外現地法人の活動

①設備投資

我が国製造業の海外現地法人の設備投資額は、

1997年度以降の減少傾向が、2000年度に増加に転じ、

2005年度には3.5兆円となり増加のペースが加速して

いる。さらに、国内法人企業の設備投資に対する海

外現地法人の設備投資の比率も2005年度には19.6%

と前年度より3.3%ポイントの上昇となっている(図

121-11)。国内景気の回復基調が顕著になる中で、国

内法人企業の設備投資についても増加傾向が続いて

いるが、海外現地法人では、それを上回るペースで

設備投資が増加している。

海外現地法人の設備投資額を地域別にみると、

2003年度以降アジアで大幅に増加している。その内

容をみると、中国での設備投資額が6,442億円と過去

最高を更新しているが、中国を除いたアジアでの増

加幅も大きく、ASEANやNIEs諸国においても設備

投資が増加していることがわかる(図121-12)。また、

アジア以外の海外現地法人の設備投資額について

は、1990年代後半以降減少傾向が続いていた北米に

おいても2005年度に急激な増加に転じており、自動

車を中心とした製品の需要地における生産・販売体

制を強化しようとする日系企業の姿勢がうかがえ

る。さらにヨーロッパでも設備投資の増加が顕著に

みられる。EU市場の統合が進む中で設備投資環境

が整ってきていることに加えて、堅調なEU景気が

背景にあると考えられる。

②売上高、経常利益

我が国製造業の海外現地法人の経営状況を地域別

にみると、北米、アジア、ヨーロッパのいずれの地

域の現地法人の売上高も増加傾向が続いているが、

特に2002年度以降のアジア拠点の売上高の増加傾向

が著しく、2004年度には北米拠点の売上高を上回り、

拡大基調が続いている(図121-13)。

また、2002年度以降、現地法人の経常利益が急激

に増加しており、先の設備投資の増加と併せてみる

と、投資が利益を生み、また新たな投資を喚起する

好循環が生じている様子がみてとれる。日系企業の

海外経常利益比率は2002年度以降大きな変化はない

が、これは国内の景気回復を背景として国内法人の

9,585

17,501

5,723

6,442

0�

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05

北米� 中国�

備考:「海外現地法人」とは、「子会社(日本側出資比率が10%以上の海外法人)」と「孫会社(日本側出資比率が50%超の海外子会社が50%超の出資を行っている海外法人)」を指す。�:海外設備投資比率=現地法人設備投資額/(現地法人設備投資額+国内設備投資額)×100�

  :2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

(億円)�

(年度)�アジア� ヨーロッパ�

図121-12 製造業の海外現地法人の地域別設備投資の推移

8.8

10.7 11.1

15.016.1 15.8 15.4 15.1

16.617.9

19.621.0

16.3

0�

2�

4�

6�

8�

10

12

14

16

18

93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 050�

5�

10

15

20

25

国内法人企業(左軸)� 現地法人(左軸)� 海外設備投資比率(右軸)�

(兆円)� (%)�

(年度)�

備考:「海外現地法人」とは、「子会社(日本側出資比率が10%以上の海外法人)」と「孫会社(日本側出資比率が50%超の子会社が�   50%超の出資を行っている海外法人)」を指す。�  :海外設備投資比率=現地法人設備投資額/(現地法人設備投資額+国内設備投資額)×100�  :2005年度は速報値�資料:財務省「法人企業統計」、経済産業省「海外事業活動基本調査」�

14.8

1.4 1.5 1.72.5 3.0

2.4 2.0 2.4 2.3 2.4 2.1 2.53.5

12.9 13.8 14.315.5

13.0 13.2 13.014.3

11.2 11.39.0

9.7

図121-11 海外現地法人の設備投資

Page 11: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

32

29

7793

119 113

80

133

170

115

237

280

395

356

19.6

15.4

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 050�

5�

10

15

20

25現地法人経常利益(左軸)�

海外設備投資比率(右軸)�

海外経常利益比率(右軸)�

(百億円)�

(年度)�

(%)�

備考:海外経常利益比率=現地法人経常利益/(現地法人経常利益+国内法人経常利益)×100�  :海外設備投資比率=現地法人設備投資額/(現地法人設備投資額+国内設備投資額)×100�   2005年度は速報値�資料:財務省「法人企業統計」、経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図121-14 製造業現地法人の経常利益と海外経常利益比率、海外設備投資比率の推移

30.028.4

27.627.128.5

23.422.121.721.1

18.5

14.713.5

11.910.111.0

12.1

7.2

31.1

14.8

18.017.0

12.312.1

9.67.97.9

16.7

19.9 20.322.1

25.9

36.1

4.9 4.6 5.4 5.76.7 7.4

9.1 9.511.1

9.7 9.911.2 11.5

13.815.3 15.9

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

90� 91� 92� 93� 94� 95� 96� 97� 98� 99� 00 01� 02� 03� 04� 05�(年度)�

北米�

(兆円)�

ヨーロッパ�

アジア�

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図121-13 海外現地法人(製造業)の地域別売上高

3.8

4.3

5.2

3.6

-2�

0�

2�

4�

6�

8�

93� 94� 95� 96� 97� 98� 99� 00� 01� 02� 03� 04� 05�

(%)�国内全法人�

現地法人�

中国�

北米�

アジア�

ヨーロッパ�

(年度)�

備考:2005年度は速報値�資料:財務省「法人企業統計」、経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図121-15 製造業の地域別現地法人と国内全法人の売上高経常利益率の比較

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

33

経常利益も堅調に伸びているためと考えられる(図

121-14)。また、全世界の現地法人の収益状況を売上

高経常利益率について国内法人と比較すると、2005

年度には国内法人が現地法人をわずかながら逆転し

ている(図121-15)。これはこれまで高かったアジア、

とりわけ中国に進出している現地法人の利益率につ

いて、2003年度以降低下傾向が継続していることが

影響していると考えられる。2005年度の中国の現地

法人の利益率は3.8%となっており、北米での4.3%を

下回り、ヨーロッパの3.6%とほぼ同水準になってい

る。人民元の切り上げ、競争の激化などにより、中

国市場での経営環境が、これまでのような利益が利

益を生む高成長の循環から新たなステージに進んで

いるためと考えられる。先にみた設備投資の動向と

重ね合わせると、アジアの現地法人による設備投資

の増加基調は継続しているが、同時に北米、ヨーロ

ッパの現地法人の投資行動も積極化しており、利益

と設備投資の好循環がアジア、北米、ヨーロッパの

3極でバランスよく生じていると捉えることもできる。

③海外現地法人からの配当金・ロイヤリティ収入

海外への生産拠点の移転や、海外現地法人による

設備投資の拡大などの対外直接投資によって、海外

現地法人の販売・売上高が増加すれば、日本側の出

資者の所得(配当金やロイヤリティ等)が増えるこ

とになる。実際、海外現地法人の2000年度以降の日

本側出資者向けの支払費用は2002年度には一時的に

前年度比で減少したものの、それを除けば増加が続

いており、2003年度以降は増大のペースも堅調に推

移している。その結果、2005年度の支払費用合計は

約1.5兆円に達している(図121-16)。これを業種別に

みると、2005年度の支払費用合計のうち輸送用機械

が44.9%、電気機械が26.7%、化学が11.8%となって

おり、この3業種で全体の83.4%と8割超を占める

(図121-7)。

2.0�

1.5�

1.0�

0.5�

0.0

(兆円)�

96 97 98 99 00 01 02 03 04 05

(年度)�

0.40.6

0.8 0.80.9

1.00.9

1.21.4

1.5

備考:2005年度は速報値を利用�

資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図121-16 海外現地法人(製造業)の日本側出資者向け支払い費用の推移

食料品�1.2%�

繊維�0.6%�木材紙パルプ�0.6%�

化学�12.0%�

石油石炭�0.2%�

鉄鋼�1.7%�

非鉄金属�2.1%�

一般機械�5.6%�

電気機械�26.7%�

輸送機械�44.9%�

精密機械�1.0%�

その他の製造業�3.6%�

備考:数値は2005年度速報値を利用�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図121-17 海外現地法人(製造業)の日本側出資者向け支払い費用(業者別)

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34

コ ラ ム 中国におけるライセンス規制について

国際知的財産保護フォーラム(以下「フォーラム」という)は、模倣品等知的財産権侵害対策を目

的として、2002年4月に設置された業種横断的・官民合同のアライアンスで、86団体、107企業が参

加している(2007年2月26日現在)。

フォーラムに参加する企業の多くは中国で事業展開を行っている。これらの企業が中国の関係会社

に特許技術、技術ノウハウ等をライセンスし事業を進める際に、関係当局から種々の意見が出される

ことがある。フォーラムの過去5回にわたる訪中ミッションでは、ライセンス規制を改善するように

要請してきたところである。

中国のライセンス規制に関する法令およびその運用上の問題点について、フォーラムが実施したア

ンケートでは、①技術の完全性保証、第三者権利侵害時の供与側の責任保証、②契約の登録が煩雑で

時間がかかる、③地方により運用が異なる、④ロイヤリティ料率の低減指導がある、などを指摘する

回答が多い。そこで、指摘の多かった上記①の第三者権利侵害時の供与側の責任保証について、事例

を取り上げて、現状を説明する。

供与側の保証等を定めた技術輸出入管理条例(以下「新条例」という)の第24条は、外資企業が中国

で事業を進めるためにライセンス契約を結ぶ際に直面する大きな問題の一つで、フォーラムに参加す

る多くの企業から、「障害になっている」と報告されている。

新条例に定める、(1)供与側が適法な所有権限を有することを保証しなければならない、とする所

有権限保証条項(第24条第1項)、(2)受領側が技術の使用に関して他人の権利を侵害した場合には供

与側が責任を負う、とする第三者権利侵害時の供与側の責任保証条項(同条第3項)、および(3)技

術が完全無欠、有効、目標到達可能であることを保証しなければならない、とする技術の完全性保証

条項(第25条)等の規定は、供与側のライセンスをする権利を過度に制限する可能性を含んでいる。

また、上記(2)の供与側の責任保証に関しては中国国内の技術契約は中国の契約法が適用され、

他人の権利を侵害した場合の供与側の責任保証について、当事者間で自由に定めることができるとさ

れている。ところが、新条例にはこのような規定がないため、外国企業と中国企業がライセンス契約

を結ぶ場合は、上記新条例第24条第3項の規定が中国のライセンシー側に保証を求める根拠となり得

るのである。このことは、TRIPS協定第3条に規定する内国民待遇義務に抵触する可能性がある。

仮に、新条例第24条第3項の規定を上記契約法の規定に優先させると、供与側は、第三者の権利を

侵害するリスクを完全に排除する条件でロイヤリティ料率を計算するようになる。特に最近のように

著しく技術が発展している状況では、供与側はリスクの予測が困難なため、極めて高額のロイヤリテ

ィを受領側に要求せざるを得ないことになる。そうすると、経済合理性の面からライセンス契約が成

り立ち難くなり、結局は先進技術の導入が抑制され、結果的に潜在的技術導入者(技術受領側)であ

る中国企業にも不利な規定となるのである。

出所:(社)電子情報技術産業協会

<事例>

~供与側の協力義務~

日本のメーカーA社は、中国の関係会社であるB社とのライセンス契約の

交渉を行っている。第三者から権利侵害訴訟を提起された場合の供与側

(A社)の責任は、技術輸出入管理条例第24条第2項に「供与側は(権利侵

害訴訟の)通知を受けた後、受領側に協力して障害を排除しなければなら

ない」と規定されていることから、供与側の受領側(B社)への協力義務

に留まるはずである、とA社は理解していたが、今般、当局より全面保証

するように指導され、これをライセンス契約登録の条件とされた。

【日本】� 【中国】�

日本のメーカー�A 社�

(技術供与側)�

A社の中国の関係会社�B 社�

(技術受領側)�

第三者�

中国�

ライセンス�契約�

権利侵害訴訟�

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

35

コ ラ ム 巧妙化する模倣品被害の現状

中国等、模倣品被害が深刻な国においては、政府により法制度の整備や取締りの強化が進むに従い、

模倣品被害も複雑化しつつある。被害実態の複雑化の方向としては、①単純なデッドコピーから類似商

標・デザイン模倣への移行、②外見や品質のレベルアップ、③販売拠点には最低限の品数のみ置くなど

製造・流通プロセスの潜在化、等が挙げられるが、最近では「模倣品の製造・流通プロセスの国際分業」

が進んでいるとされている。

一例を挙げれば、2004年に中国において摘発された掃除機の事例では、商標がついていない中国製の

本体と、同じく中国製の商標が付された箱等梱包材料がそれぞれ別のルートで輸出され、ドバイのフリ

ートレードゾーンにおいて加工されて、中近東やアフリカの各国に輸出されていたことがわかった。こ

の掃除機のメーカーA社は、同社の他の製品が同様の商流で中近東やアフリカに輸出されているとの情

報を入手しており、現在調査中である。

このような事例は、拡大・複雑化する模倣品被害の氷山の一角に過ぎず、様々な製品が様々なルート

で輸出されていると言われているが、具体的にどのような商品がどのような規模でどこからどこに流れ

ているのか、実態は十分に明らかになっていない。アジアから中近東、アフリカへの中継地における加

工がひとつの鍵となる要素だが、事実上のブラックボックスとなってしまっている。

このような複雑化する被害に対応するためには、個別企業の取組だけでなく、各国政府間の連携、官

民の連携が非常に重要となる。日本は産業界と政府が一体となって「官民合同訪中代表団」を中国に派

遣し、技術支援等の協力と制度改正・執行強化等の要請を行っているところであるが、このような取組

を拡大すると共に、中国以外の第三国における被害実態の把握・対策の強化を行い、税関や警察など各

国の執行機関が協力関係を強化していくことが緊急の課題である。

(1)我が国製造業の海外生産比率

我が国製造業の海外展開の現状について、主とし

て海外現地法人の活動実態を中心にみてきたが、海

外拠点における生産が拡大する中で、我が国製造業

の海外生産比率は着実に増大している。

2005年度についてみると、製造業における国内全

法人ベースの海外生産比率は16.7%、前年度に比べ

0.5%ポイント上昇し過去最高となった。これは、国

内法人(製造業)売上高が景気回復を反映して対前

年度比6.2%増加したものの、現地法人(製造業)の

売上高が同10.1%増加と国内法人を上回る伸びを見

せたことによるものである。

海外生産比率(国内全法人ベース)を業種別にみ

ると、輸送機械が37.1%と最も高く、前年度に比べ

1.1%ポイントの上昇、その構成比は2000年度以降上

昇傾向を強めている。次に多いのが電気機械の

23.0%であるが、その内数である情報通信機械に限

ってみれば、海外生産比率が34.9%、対前年比1.8%

ポイントの大幅上昇となっている。また、精密機械

が13.8%、同1.4%ポイントの上昇、一般機械が12.9%、

同1.2%ポイント上昇している。一方、化学が14.8%、

同0.5%ポイントの低下、鉄鋼が9.6%、同1.0ポイン

トの低下となった(図122-1)。

地域別の寄与度をみると、アジアが6.9%で前年度

に比べ0.5%ポイント上昇となったが、北米は5.7%で

同0.1%ポイント低下、ヨーロッパが3.0%で同0.1%

ポイント低下となった。

以上のように、我が国製造業全体としての海外生

産比率(国内全法人ベース)は上昇しているが、個

別の業種についてみれば低下している分野もあり、

業種毎に大きく異なっていることに留意する必要が

ある。

2 内外拠点の生産動向

Page 15: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

36

(2)業種別にみた内外拠点の生産動向

我が国製造業の内外生産動向をみる場合には、単

に海外生産比率の傾向だけをみるのではなく、内外

拠点における生産動向などその背景にも焦点を当て

ていくことが不可欠である。例えば、前述したとおり

我が国製造業の海外生産比率は前年度に比べ0.5%ポ

イント上昇し過去最高となったが、これは、国内法人

(製造業)売上高が景気回復を反映して対前年度比

6.2%増加したものの、現地法人(製造業)の売上高が

同10.1%と国内法人を上回る伸びを見せたことによ

る。すなわち、海外拠点の生産が大幅に拡大している

が、それに伴い国内生産が縮小するのではなく、国内

拠点の生産も同時に拡大している様子がうかがえる。

こうした内外拠点の生産動向を業種別にみると、

電気機械を除く機械産業では海外拠点、国内拠点の

双方において売上高が増加している。2000年度から

2005年度の5年間の変化をみると、輸送機械では海

外現地法人の売上高が117.7%増加と急拡大している

が、国内法人の売上高についても15.0%増加してい

る。精密機械では、海外で45.8%、国内で14.6%増加

し、一般機械では、海外で54.3%、国内で26.1%増加

している。化学についても、海外で43.9%、国内で

10.3%増加している。一方、鉄鋼については、国内

法人の売上高が47.7%と大幅に増加しているのに対

し、海外法人の売上高にほとんど変化が無く、その

結果、海外生産比率が足下で低下している(図122-2)。

(3)国内拠点の強化・拡大

海外拠点の生産が大幅に拡大している中、国内拠

点の生産についても同時に拡大している様子をみて

きたが、我が国の製造企業の今後3年程度の中期的

見通しについても、多くの業種において、国内事業

を拡大・強化する意向が強い。

国際協力銀行が2006年7月から9月にかけて実施

した「わが国製造業企業の海外事業展開の動向」に

関するアンケート調査によれば、国内事業の規模を

「強化・拡大する」と回答した企業の割合は電気・

電子産業以外で増加傾向にあり、化学で63.1%(前

年比11%ポイント増)、一般機械で55.4%(前年比

8.3%ポイント増)、輸送用機械で46.1%(前年比8.3%

ポイント増)と、総じて、国内事業を強化・拡充す

るとの姿勢が強まっている。

我が国製造業の海外拠点における生産の拡大が国

内経済にどのような影響を与えているかについては

後述するが、我が国の製造業による海外投資の大宗

は、日本への逆輸入を念頭においたものではなく、

進出地域のマーケット拡大を見込んだものであり、

こうした傾向は企業規模が大きいほど強い。

以上のように、我が国製造業の海外展開が急速に

進展する中にあっても、国内拠点の重要性は減少せ

ず、大宗の業種において、今後とも国内生産拠点は

維持・拡大されていくものと考えられる(図122-3)。

(%)� 食 料 品� 繊   維� 材木紙パルプ� 化   学� 鉄   鋼�非 鉄 金 属 � 一 般 機 械 � 電 気 機 械 � 輸 送 機 械 � 精 密 機 械 �

4.26.3

3.0

14.8

9.610.212.9

23.0

37.1

13.8

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 (年度)�備考:1. 海外生産比率=海外現地法人売上高/(海外現地法人売上高+国内法人売上高)×100

2. 「海外現地法人」とは、「子会社(日本側出資比率が10%以上の海外法人)」と「孫会社(日本側出資比率が50%超の海外子会社が50%�      超の出資を行っている海外法人)」を指す。�   3. 「電気機械」には「情報通信機械」を含む。�   4. 01年度に業種分類の見直しを行ったため、2000年度以前の数値とは断層が生じている。�   5. 05年度数値は速報値。�資料:財務省「法人企業統計年報」、経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図122-1 我が国製造業の業種別海外生産比率(国内法人ベース)

Page 16: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

37

(1)内外拠点の相互補完関係

我が国製造業が今後とも国内生産拠点を維持・拡

大していくとの見通しを示したが、人口減少が国内

需要の抑制要因となる我が国において、製造業が将

来にわたって持続的な発展を遂げていくためには、

海外生産拠点と国内生産拠点を有機的に結びつけ、

我が国製造業全体としての戦略的な発展を追求して

いくことが求められている。

一般に、海外への生産移転は、完成品輸出が減少

する一方で海外生産拠点への中間品輸出が増加する

ため、短期的には輸出減少にはつながらないが、輸

出平均単価の下落や中間財生産の海外移転あるいは

海外での現地調達比率の高まり等を通じて、長期的

には輸出減少要因になると考えられている。

しかしながら、我が国製造業の海外現地法人と国

内法人の関係についてアンケート調査したところ、

63.9%が「補完関係」にあるとしており、「代替関係

あるいは競合関係」にあるとするのは11.2%に過ぎ

ない(図123-1)。グローバル競争がますます激化す

る中で、製造業の海外展開の進展は不可避であるが、

国内生産拠点の高付加価値化を推進し海外生産拠点

と国内生産拠点との補完関係を強化していくことに

より、国内拠点の維持・強化を促進していくことが

可能と考えられる。

こうした観点から、ここでは、我が国製造業の海

外拠点における生産の拡大が国内経済や国内生産拠

点にどのような影響を与えているかについて検討す

る。

(2)海外現地法人と国内との取引

我が国製造業の海外現地法人は、地域内での調達

割合を高めつつ、同時に販売先についても域内販売

を中心に据えてはいるが、一方で、海外現地法人の

日本からの調達額は海外生産の増加に対応して増加

を続けており、2005年度には22.0兆円となった。我

が国の輸出総額に占める調達額の比率は33.7%と

2004年度より若干低下したものの、依然として高水

準にある(図123-2)。

3 海外展開の国内への影響

備考:1. 海外現地法人売上高増減率は速報値。2. 「繊維」は法人企業統計の「繊維工業」、「衣類・その他繊維製品製造業」�

を含む。電気機械には、海外事業活動基本調査の「電気機械」、「情報通�信機械」、法人企業統計の「電気機械器具製造業」、「情報通信機械」を含�む。輸送用機械には、法人企業統計の「自動車・同附属品製造業」、「そ�の他の輸送用機械」を含む。�

3. 2005年度は速報値。 �資料:財務省「法人企業統計」、経済産業省「海外事業活動基本調査」�

220%�

190%�

160%�

130%�

100%�

70%�70%� 100%� 130%� 160%� 190%� 220%�

海外現地法人売上増減率�

国内法人売上増減率�

食品�

繊維�

材木・紙パ�

非鉄金属�

化学�

鉄鋼�

電気機械�

一般機械�

輸送機械�

精密機械�

図122-2 業種別内外売上増減率(00年→05年)

備考:1. 中期的とは今後3年程度を指す。2. 回答企業数上位4業種のみ時系列調査。�

資料:国際協力銀行「わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」より�経済産業省作成�

化学� 一般機械� 輸送用機器�

51.8� 52.1�

63.1�

43.8�47.1�

55.4�50.5� 50.5�

44.1�

35.9�37.8�

46.1�

0�

10�

20�

30�

40�

50�

60�

70�

04� 05� 06� (年)�

(%)�

電機・電子�

図122-3 中期的な国内事業強化・拡大の見通し

補完関係�63.9%�

代替関係あるいは�競合関係�11.2%�

その他�7.7%�

同じ製品・分野ながら�スペック等が全く�異なり関係がない�6.5%�

分からない�10.7%�

備考:上場している製造企業を対象にしたアンケート調査結果�   有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ�

図123-1 海外現地法人と国内法人の関係

Page 17: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

38

また、海外現地法人から日本国内への販売額(逆

輸入額)についても、2005年度に9.3兆円になるなど、

増加傾向が続いている。我が国輸入総額に占める逆

輸入額の比率は、2005年度には前年度の18.5%から

は約1.8%ポイント低下し、16.7%となっている。こ

の要因の一つは、原油高を背景とした鉱物性燃料輸

入額の増加幅が大きいことにあると考えられる。

(図123-3)。

以上のような我が国製造業の海外現地法人と国内

との取引の全体像を把握するため、海外現地法人の

日本からの調達額から日本への販売額(逆輸入額)

を差し引いた額を海外現地法人の「取引収支」と定

義すると、2005年の取引収支は日本から海外現地法

人に対する12.7兆円の輸出超過となっている。1990

年以降の経年でみると、日本からの調達額、逆輸入

額のいずれも増加基調にあるが、2002年以降の日本

からの調達額の増加幅が逆輸入額の増加幅を大幅に

上回っており、取引収支が着実に拡大している(図

123-4)。

業種別では、輸送機械、電気機械の貢献が大きく、

2005年度の日本から海外現地法人に対する輸出超過

額12.7兆円のうち57%に相当する7.2兆円が輸送機械

によるものとなっている(図123-5)。

地域別では、北米及びヨーロッパの現地法人に係

る取引収支の黒字が続いている。これは、北米及び

ヨーロッパの現地法人の全調達額に占める日本から

9.3

8.5

6.86.4

6.06.1

5.34.9

5.8

4.6

3.43.6

2.9

1.7

16.7

18.5

17.016.516.316.016.0

15.416.0

12.9

11.6

14.3

12.5

6.5

0�

1�

2�

3�

4�

5�

6�

7�

8�

9�

10�

92� 93� 94� 95� 96� 97� 98� 99� 00� 01� 02� 03� 04� 05�0�

2�

4�

6�

8�

10�

12�

14�

16�

18�

20�(兆円)�

(年度)�備考:「海外現地法人」とは、「子会社(日本側出資比率が10%以上の海外法人)」と「孫会社(日本側出資比率が50%超の子会社が�   50%超の出資を行っている海外法人)」を指す。�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

(%)�海外現地法人から日本への販売額(逆輸入額)��我が国への販売額(逆輸入額)の総輸入額に占める割合�

図123-3 我が国海外現地法人(製造業)からの我が国への販売額(逆輸入額)

22.0

4.3 5.14.1

16.915.1

17.3

14.213.412.713.412.6

7.0

20.5

34.933.7

9.811.2

13.0

31.730.1

37.5

28.528.726.726.8

28.0

17.1

0�

2�

4�

6�

8�

10�

12�

14�

16�

18�

20�

22�

24�

92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 050�

5�

10�

15�

20�

25�

30�

35�

40�(兆円)� (%)�

(年度)�

調達額の日本の総輸出額に対する比率�

日本からの調達額�

備考:「海外現地法人」とは、「子会社(日本側出資比率が10%以上の海外法人)」と「孫会社(日本側出資比率が50%超の子会社が�   50%超の出資を行っている海外法人)」を指す。�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」、日本銀行「国際収支統計」�

図123-2 我が国製造業の現地法人による我が国からの調達額

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

39

の調達額の割合がそれぞれ32.2%、43.3%と大きな割

合であるのに対して、全販売額に占める日本への販

売比率がそれぞれ2.7%、2.5%と低く日本への逆輸入

が極めて少ないことによる。

アジアの現地法人については、収支がほぼ均衡す

る状態となっていたが、2004年度、2005年度は黒字

を確保している。2004年、2005年についても、アジ

ア現地法人から日本への販売額は増加しているもの

の、それを上回る調達額の増加があったためである。

アジアの現地法人は、我が国への逆輸入拠点という

位置づけに加え、拡大するアジア域内市場に対応す

るための拠点としての位置づけを強めていることが

うかがえる(図123-6)。但し、アジアの現地法人と

の取引収支を主要業種別にみると、輸送機械産業で

は黒字幅が拡大しているのに対し、電気機械産業で

は1996年以降赤字が続いている点に注意が必要であ

る(図123-7)。

(3)海外現地法人の調達・販売構造

海外現地法人の国内との取引は上述の通りである

が、アジアの現地法人から日本への逆輸入額が全販

売額に占める割合はどのように推移しているのか、

といった海外現地法人の調達・販売構造を検討す

る。

我が国製造業の海外現地法人の現地(域内を含む)

調達比率をみると、2005年度については、アジア:

67.1%、北米:61.2%、欧州:51.7%となっており、

いずれの地域でも総調達額の過半を現地調達してお

り、特にアジア、北米では現地調達比率が高い(図

123-8)。過去の推移をみても、1990年以降、北米、

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0(兆円)�

92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年度)�0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

取引収支�日本への輸出� 日本からの調達�

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図123-4 我が国製造業の海外現地法人の取引収支

-2�

0�

2�

4�

6�

8�

92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年度)�

輸送機械� 電気機械� 一般機械�

化学� 鉄鋼� その他�

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

(兆円)�

図123-5 我が国製造業の海外現地法人の取引収支(業種別)

-2000�

0�

2000�

4000�

6000�

8000�

10000�

12000�

14000�

92� 93� 94� 95� 96� 97� 98� 99� 00� 01� 02� 03� 04� 05(年度)�

アジア�北米�ヨーロッパ�全地域�

日本から仕入額-日本への販売額(10億円)�

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図123-6 我が国製造業の海外現地法人の取引収支(地域別)

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05(年度)�

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

-0.5

-1.0

(兆円)�

電気機械�一般機械�

輸送機械�精密機械�

繊維産業�

図123-7 アジア地域における我が国製造業の海外現地法人の取引収支(主要業種)

Page 19: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

40

アジアの海外現地法人は、一貫して現地調達比率を

上昇させ、特に2000年以降は加速している一方で、

欧州の海外現地法人については、1990年以降、調達

構造にはほとんど変化がみられない(図123-9)。

次に、我が国製造業の海外現地法人の現地(域内

を含む)販売比率をみると、2005年度については、

アジア:70.1%、北米:94.3%、欧州:93.7%となっ

ている。北米、欧州の拠点で生産された製品のほと

日本�

� �

日本�

� �

日本� 日本�

【1990年度】�

アジア�3.7兆円�2.1兆円�

0.1兆円�

0.03兆円�

1.5兆円� 1.3兆円�

欧州�3.0兆円�1.5兆円�

0.02兆円�

0.02兆円�3.7兆円�

0.02兆円�0.1兆円�

北米�7.3兆円�3.3兆円�

【1995年度】�

アジア�9.4兆円�5.3兆円�

0.5兆円�

0.1兆円�

3.8兆円� 2.5兆円�

欧州�5.9兆円�2.7兆円�

0.1兆円�

3.7兆円�

0.5兆円�

0.2兆円�

北米�11.2兆円�6.8兆円�

0.1兆円�

【2000年度】� 【2005年度】�

アジア�14.3兆円�8.2兆円�

欧州�7.1兆円�3.7兆円�

5.2兆円� 2.8兆円�

0.2兆円�0.5兆円�

5.4兆円�

北米�13.7兆円�7.4兆円�

0.2兆円�

0.1兆円�

アジア�27.7兆円�18.6兆円�

0.5兆円�

0.2兆円�

8.7兆円� 5.0兆円�

欧州�11.6兆円�6.0兆円�

0.05兆円�

0.4兆円�6.9兆円�

0.8兆円�0.2兆円�

北米�21.4兆円�13.1兆円�

備考:丸枠内上段は調達総額、下段は現地調達額+域内調達額�   2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

0.4兆円�

0.2兆円�

図123-8 現地法人の調達

50

52

54

56

58

60

62

64

66

68

70

00 01 02 03 04 05 (年度)�

%�

北米� アジア� 欧州�

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図123-9 現地法人の調達額に占める現地・域内調達の割合

0�

5�

10

15

20

25

30

00 01 02 03 04 05

%�北米� アジア� 欧州�

(年度)�

備考:2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図123-10 海外現地法人の販売額に占める日本への逆輸入率の割合

Page 20: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

41

んどが現地あるいは域内で販売されているが、アジ

アでは、約3割が日本へ逆輸入されている。但し、

2000年以降は、現地販売比率が上昇しており、アジ

ア経済の堅調な成長を背景に、日本に逆輸入される

割合がゆるやかに減少している(図123-10、123-11)。

なお、海外に生産拠点を持つ我が国製造企業を対

象に、現在と5年後の海外生産拠点の役割を尋ねた

ところ、「国内向け製品の競争力向上」との回答が

28.7%から19.5%に大きく減少している。(図123-12)。

将来的にも、アジアに進出している海外現地法人の

日本への逆輸入の比重は低下していくとの意見もあ

る。

日本�日本�

日本�日本�

【1990年度】� 【1995年度】�0.4兆円�

0.01兆円�

0.8兆円�0.1兆円�

0.1兆円�

0.1兆円�

北米�12.0兆円�11.3兆円�

0.4兆円�

0.7兆円�

0.1兆円�

欧州�4.9兆円�4.7兆円�

アジア�7.2兆円�5.3兆円�

アジア�12.3兆円�9.1兆円�

0.3兆円�

0.1兆円�

2.2兆円�

欧州�7.4兆円�6.8兆円�

0.3兆円�

0.2兆円�

0.1兆円�0.5兆円�

北米�14.7兆円�13.7兆円�

0.5兆円�

0.2兆円�

【2000年度】� 【2005年度】�

アジア�19.9兆円�13.2兆円�

0.7兆円�

0.1兆円�

4.9兆円�

0.3兆円�

0.7兆円�

0.2兆円�0.7兆円�

北米�23.4兆円�21.7兆円�

1.1兆円�

0.3兆円�

アジア�36.1兆円�25.3兆円�

欧州�9.9兆円�9.3兆円�

0.9兆円�

0.2兆円�

7.8兆円�

0.4兆円�

欧州�15.9兆円�14.9兆円�

0.2兆円�

0.2兆円�0.8兆円�

1.6兆円�

0.3兆円�

北米�30.0兆円�28.3兆円�

備考:丸枠内上段は販売総額、下段は現地販売額+域内販売額�   2005年度は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図123-11 現地法人の販売先

28.7%

19.5%

25.6%

33.3%

7.7%

7.2%

23.0%

24.1%

14.4%

15.9%

0%� 10%� 20%� 30%� 40%� 50%� 60%� 70%� 80%� 90%�100%�

現在の�役割�

(n=195)�

将来の�見込�

(n=195)�

国内向け製品の競争力向上� 海外市場向け製品の競争力向上�関連企業の海外生産拠点への提供�

海外企業の現地生産拠点への提供�自社の海外生産拠点への部品提供�

無回答�

備考:将来とは5年後の見込を指す�資料:(社)日本機械工業連合会「我が国の主要製造品の競争力に関するアンケート�   調査(07年2月)」�

図123-12 海外拠点の将来見通し

Page 21: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

42

(1)部素材産業の国際シェア

我が国製造業の海外現地法人による中間財の調達

額に占める日本からの調達の割合は、アジア31.5%、

北米32.5%、欧州43.2%と高い水準で推移している

(図124-1)。この背景には、我が国の部素材産業が生

産する中間財の高い競争力がある。当然、そうした

世界的にみても希有な我が国部素材産業の大きなシ

ェアは、日系企業の海外現地法人の調達面に限定さ

れるものではなく、高付加価値の部素材を世界の完

成品メーカーに供給している。

例えば、液晶用主要部材、半導体製造用部材、炭

素繊維についてみると、日系企業が、それぞれ

61.8%、73.1%、77.4%と極めて高い国際シェアを有

している(図124-2)。液晶用部材と半導体製造用部

材の世界シェアについて詳しくみると、液晶用フォ

トマスク、偏光板、シリコンウエハー、リードフレ

ーム、ボンディングワイヤが7割から8割程度、カラ

ーフィルター、偏光板保護フィルム、ガラス基盤、

プラスチック基盤、封止材に至っては、100%近い

シェアを有している(図124-3)。

4 我が国部素材産業の競争力

39.942.3

33.6 32.5

36.6 36.133.0

30.631.7

31.5

40.637.6

43.2

33.333.7

44.5

39.0 41.5

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

00 01 02 03 04 05 (年度)�

(%)� 北米� アジア� 欧州�

備考:2005年度数値は速報値�資料:経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図124-1 海外現地法人の日本からの調達率

外国系企業�38.2%

日系企業�61.8%

日系企業�77.4%

外国系企業�22.6%

外国系企業�26.9%

日系企業�73.1%

液晶用主要部材� 半導体製造用部材� 炭素繊維(PAN系)�

市場規模:1.2兆円(04年)→2.9兆円(10年)�資料:2005液晶関連市場の現状と将来展望�(富士キメラ総研)�

市場規模:2.8兆円(05年)→3.7兆円(08年)�資料:2005半導体材料データブック((株)電子�ジャーナル)�

備考:経済産業省調べ�

図124-2 日系企業の世界シェア

Page 22: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

43

100%�60%�40%�20%�

(金額)�

(世界シェア)�0%� 80%�

:半導体用材料�:液晶用材料�

○粗鋼:生産量116,221千トン� (世界計1,238,377千トン)� 世界シェア9%�○エチレン生産量757万トン� (世界計1.04億万トン)� 世界シェア7.3%�

○炭素繊維:�生産量16,800トン�(世界計24,000トン)�世界シェア70%�

5000億円�

1兆円�

10兆円�

25兆円�

50兆円�

1000億円�

100億円�

資料:経済産業省作成�

【自動車】�売上高:54.2兆円�世界シェア:31.1%� 【情報通信機器】�

売上高:40.3兆円�世界シェア:53.6%�

【ロボット】�総出荷額:6,766億円�世界シェア:40%�

【ガラス基盤】�売上高:184億円�世界シェア:98%�

【液晶用フォトマスク】�売上高:460億円�世界シェア:70%�

【シリコンウエハー】�世界市場:9,407億円�世界シェア:74%�

【プラスチック基盤】�世界市場:2,180億円�世界シェア:92%�【工作機械】�

販売額:1.3兆円�世界シェア:29.1%�

【高度部材産業】�

【金型】�生産額:1.5兆円�世界シェア:20%�

【偏光板保護フィルム】�売上高:579億円�世界シェア:100%�

【カラーフィルター】�売上高:3,410億円�世界シェア:100%�【封止材】�

世界市場:1,145億円�世界シェア:100%�

【リードフレーム】�世界市場:2,292億円�世界シェア:81%�【ボンディングワイヤ】�世界市場:1,984億円�世界シェア:83%�

【偏光板】�売上高:3,410億円�世界シェア:73%�

図124-3 我が国製造業の売上高・世界市場シェアマップ

コ ラ ム 次世代半導体材料技術研究組合(CASMAT)(世界に類をみない半導体材料メーカーのコンソーシアム)

次世代半導体材料技術研究組合の英文名称はConsortium for Advanced Semiconductor Materials

and Related Technologiesで、略称を「CASMAT」とし、キャスマットと呼称している。

CASMATは半導体材料メーカーが結集して、半導体製造工程の配線工程(BEOL)に関係した材料

を対象にパッケージまで俯瞰した評価技術の開発を通じ、世界における半導体材料の競争力強化を目

指して2003年3月に研究組合として設立された。

CASMATの第1の特徴は、半導体メーカーの300mmウエハープロセス技術に対応した製造装置を

導入し、BEOLの一貫プロセスラインをCASMAT内に整備している点である。

半導体製造において使用される材料は、製造工程における熱、応力等によりダメージを受けるため、

材料―プロセス間、材料―材料間の相互影響を含めた評価が求められる。

第2の特徴は、CASMATは材料を開発するのではなく、組合員の材料開発を支援する組織である

という点である。CASMATでは組合員が開発した材料を用いて上述した一貫プロセスラインで配線

を試作した後、電気特性等を測定しプロセスによるダメージ評価や材料評価用の開発支援ツール

(TEG:Test Element Group)による評価などを行い、これらの評価結果を個々の組合員にフィード

バックする。個々の組合員は評価結果をもとに材料の改良、新しい材料の開発等を行うこととなる。

これらの特徴を活かし、CASMATではLow-k材料、CMPスラリー、バッファーコートなどの材料

評価やアッセンブリに関連するバックグラインドテープについて65nmノードでの材料評価基準書を

既に作成し、現在は更に45nmノードプロセスに対応する材料評価基盤の研究開発を進めている。

また、上述した評価方法の研究、TEGの開発、材料の評価等を行う「共通プログラム」のほか、組

合員がCASMATの装置、機器を利用する「個別プログラム」、組合員の研究者の実習、教育を行う

「実習プログラム」、共通プログラムの成果を利用し組合員とデバイスメーカー又は装置メーカー等が

共同で実用化研究を行う「実用化プログラム」、ノウハウとしてのTEGの提供「TEGサービス」の5

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44

(2)部素材産業の利益率

我が国部材産業は、高い国際シェアを有するのみ

ならず、その利益率についても高水準を維持してい

る。2005年簡易延長産業連関表を用いて加工組立型

産業と部素材産業の営業余剰率を概算すると、部素

材産業の営業余剰率が7.7%、加工組立型産業の営業

利益率が3.8%となり、前者の高収益構造が明らかと

なる(図124-4)。

情報家電を例に、具体的な企業の営業利益率をみ

ると、ソニー(エレクトロニクス部門)、松下電器

産業(AVCネットワーク部門)といったセットメ

ーカーの営業利益率がせいぜい5%に止まっている

のに対し、JSR(多角化(半導体材料、工学材料等)

事業部門)が26.8%、日本ゼオン(高機能材料事業)

が24.4%をはじめ、部材メーカーでは20%以上の高

い利益率を確保している企業も少なくない(図124-

5)。特に家電産業では、製品のデジタル化が進み、

部品のモジュール化が進展していることなどから組

み立て工程での差別化が難しく、価格競争に陥り易

い一方で、優れた部素材企業はその国際競争力を背

景に高い利益率を維持している。

7.7%�

3.8%�

0.0%�

資料:2005年簡易延長産業連関表をもとに経済産業省作成�

1.0%�

2.0%�

3.0%�

4.0%�

5.0%�

6.0%�

7.0%�

8.0%�

9.0%�

素材・部品� 加工組立�

図124-4 部素材産業と加工組立産業の営業余剰率

13.7

17.9

24.4

26.8

-0.6

4.8

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

01 02 03 04 05 (年)�

(%)�

旭硝子�(電子・ディスプレイ部門)� 日東電工(電子材料部門)�

日本ゼオン(高機能材料事業)� JSR�(多角化(半導体材料、工学材料等)事業部門)�

ソニー(エレクトロニクス部門)� 松下電器産業(AVCネットワーク部門)�

備考:05年数値は速報値�資料:各社の決算短信をもとに経済産業省作成�

図124-5 部素材企業の売上高営業利益率の推移

本のプログラムを実施している。

なお、CASMATの概要、組織、研究成果(技

術レポート)等についてはCASMATのホームペ

ージ(http://www.casmat.or.jp)を御参照いただ

きたい。

名称:次世代半導体材料技術研究組合(CASMAT)住所:東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地TEL:042-327-8090

アセンブリ用ウエハー加工関連材料� バックグラインドテープなど�

バッファーコート・再配線関連材料� バッファーコート膜など�

バックエンドプロセス関連材料� 反射防止膜など�

銅配線、CMP関連材料� CMPスラリ-、CMPパッドなど�

低誘電率配線層間絶縁膜関連材料� Low-k材料など�

LSIの断面模式図�

W

Metal 1

Cu

Inter-�mediate

Global

研究対象としている材料

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

45

(3)中堅・中小企業の競争力

前段では、我が国部素材産業の代表的企業として

比較的規模の大きな企業の例を取り上げたが、我が

国には、最終製品の高度な機能や品質を実現する優

れた部品や材料を供給する企業が、比較的狭い国土

に多数、高密度に立地しており、その多くは中堅・

中小企業である。

我が国の中堅・中小の部素材企業のうち、海外に

拠点を有する企業は27.4%に過ぎず、大半の企業は

国内を拠点にしている(図124-6)。海外に拠点を有

する場合についても、生産、販売が中心となってお

り、技術開発、製品開発設計、試作等については国

内拠点の機能とする回答が多い(図124-7)。特にコ

ア技術については84.7%が国内拠点で保有している

と回答している(図124-8)。

取引先からの評価については、「精度・品質の保

証力」、「コア技術力の高さ」、「即応力(スピード)」

が高く評価されていると回答する企業の割合が多

く、コスト競争以外のところで競争力を維持してい

ることがうかがえる(図124-9)。

そうした中、「海外展開を更に拡大」、今後「海外

に進出する予定」の企業を合わせても26.6%にとど

まる一方、国内生産を拡大するとした企業は64.6%

にのぼり、引き続き国内拠点を生産の中心に据えつ

つ、世界市場をターゲットにしていく様子がうかが

える(図124-10、図124-11)。

なお、中堅・中小の部素材企業が今後とも競争力

を維持・強化していくための課題の一つは、取引先

の技術力に係るものである。中堅・中小の部素材企

業の約4割が大企業など取引先の技術力が低下して

いると感じている。但し、その事実を「負担である」

と捉えているのは13.7%に過ぎず、反対に、「負担で

はなく、むしろ取引先に改善案を提案することがで

き、取引先からの信頼が上がっている」とする企業

が30.0%に上っている。取引先の技術力の低下を認

識しながらも、それを取引先との関係強化のための

チャンスととらえている傾向がみられた(図124-12)。

無�72.6%

有�27.4%

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、�   有効回答は555社。�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図124-6 サポーティングインダストリーの海外拠点の有無

43.7

74.0

75.5

85.4

92.1

80.4

57.4

74.4

2.4

20.2

11.7

15.3

28.2

64.4

54.6

35.6

65.6

3.7

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)

企画・�マーケティング�

技術開発�

製品開発設計�

試作�

生産�

資材調達�

保守・�メンテナンス�

その他�

国内�

海外�

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、有効回答は555社。�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

営業販売�

図124-7 サポーティングインダストリーの内外拠点における保有機能

海外に保有�2.1%�

双方に保有�13.2%�

国内に保有�84.7%�

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、�   有効回答は555社。�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図124-8 サポーティングインダストリーのコア技術の保有地域

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46

66.6

60.6

47.0

34.5

27.5

24.3

19.8

19.8

6.0

1.9

0 10 20 30 40 50 60 70(%)�

精度・品質の保証力�

コア技術力の高さ�

即応力(スピード)�

コスト対応力

提案力�

生産現場の管理力�

健全な財務体質�

従業員の日常的な対応�

リスク管理能力�

とりまとめ力�

その他�

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、有効回答は555社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

14.9

図124-9 サポーティングインダストリー取引先からの評価

既に出ているが�更に拡大�

16.7%

未だ出て�いないが�今後進出�予定�9.9%

海外拠点を�閉鎖し国内�に集約�1.2%

当面、進出の�意向なし�72.2%

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、有効回答は555社。�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図124-10 サポーティングインダストリーの海外への進出意向

拡大�64.6%�

縮小�1.7%�

現状維持�33.7%�

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、有効回答は555社。�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図124-11 サポーティングインダストリーの国内生産意向

感じたことは�ない�52.7%

その他�3.6%

感じているが�取引先に改善�案を提案し、�取引先からの�信頼が上がっ�ている�

30.0%

感じており�負担である�13.7%

備考:中堅・中小企業を対象にしたアンケート調査、有効回答は555社。�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図124-12 サポーティングインダストリーの取引先の技術力低下

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

47

コ ラ ム 中小ものづくり高度化法の実施状況

我が国産業の強みの一つとして、製造業の基盤となる優れた技術を持った中小企業が数多く存在して

いることが唱われて久しい。勿論、国際競争に直接曝されている川下産業(最終製品を製造・販売する

産業)が、技術開発を始めとする様々な企業努力を欠かさないことも我が国競争力の要因ではあるが、

製造工程に必要不可欠な鋳造、鍛造、プレス加工、メッキ、切削等、ものづくりの基盤となる技術を有

する川上産業(川下産業に対して加工サービスや部品の供給等を行う産業)が多数存在し、それら川上

中小企業者の技術レベルが卓越した水準に達している点が我が国最大の強みの一つと言える。

これら我が国産業の競争力の源泉であるものづくり中小企業の有する基盤技術の高度化を強力に支援

するため、2006年4月に「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」が成立した。同法は

同年6月13日に施行され、以来ものづくり中小企業への総合的な支援策が展開されている。

同法では、支援の対象となる高度化すべき基盤技術として、施行当初に鋳造、金型、めっき等の17の

特定ものづくり基盤技術が指定され、その後、パブリックコメントによる意見、社会的ニーズなどを踏

まえ、2007年2月13日に粉末冶金及び溶接の2技術が追加して指定されている。

中小企業者は、これら19の特定ものづくり基盤技術毎に経済産業大臣が告示した「特定ものづくり基

盤技術高度化指針」に沿って特定研究開発等計画を策定し、各地域の経済産業局において認定を受ける

ことができる(2007年4月24日時点で累計590件を認定)。この認定を受けると、国からの研究開発委託

事業への申請、中小企業金融公庫からの低利融資、信用保証協会による信用保証の特例、特許料・特許

審査請求料の減免等の特例措置を受けることができる。国の研究開発委託事業である「戦略的基盤技術

高度化支援事業」については、2006年度は認定を受けた中小企業者から合計323件の申請があり、この

うち金型技術分野で10件、鋳造技術分野で10件、めっき技術分野で9件等、合計80件の研究開発計画が

採択されている。

ものづくり中小企業に対する支援策としては、この他にも、基盤技術を担う川上中小企業者と、川下

製造業者等とのコミュニケーションを促進するための「川上・川下ネットワーク構築支援事業」や、も

のづくり人材の育成を支援する「中小企業ものづくり人材育成事業」等が展開されており、国は中小企

業者によるものづくり基盤技術の高度化に対する支援を強力に押し進めているところである。

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48

コ ラ ム 素形材ビジョンと取引ガイドライン報告書

鋳造・鍛造・金型といった素形材産業は、下請体質が強く、親事業者の経営に依存するところが大き

い。このため、景気回復基調の中、大手メーカーのグローバル展開、コストダウン要請等により、仕事

はあるが利益なき繁忙状況にある。

素形材メーカーの収益の確保などにつき検討を行うため、2005年12月に素形材産業ビジョン策定委員

会を発足。技術・技能などの攻めを活かした経営、健全な取引慣行の下での共存共栄、素形材産業に国

民の目を振り向かせるための取組など、多岐にわたり議論がなされ、2006年5月に素形材産業ビジョ

ン-我が国の素形材産業が目指すべき方向性-が策定された。

素形材産業ビジョンを受け、鋳造、鍛造、金属プレス、金属熱処理、金型など15の素形材業界団体が

同年11月までの業界ビジョン策定を目標に検討を行い、それぞれの産業ビジョンを発表。アクションプ

ランを定め、本年度から本格的に事業展開を行っている。

素形材産業ビジョンでは、取引慣行の問題も扱っている。問題のある取引慣行の中には、買いたたき

をはじめとした法令上留意すべき行為の他、鋳物の重量取引といった従来からの商慣行が悪弊となり、

適正な利益を確保できない事例が存在している。部品メーカー・完成品メーカーともに長年の慣行とい

う理由で疑念をもつことがなく、取引を漫然と繰り返していることも多い。

ものづくりがさらなる発展を実現していくためには、部品メーカーと完成品メーカーとが対等な「パ

ートナー」の関係を築き、連携していくことが不可欠である。そして、問題ある取引を改善し、日本の

ものづくり全体の競争力強化を図っていくことが必要である。

取引の改善を図るため、経済産業省では「素形材産業取引ガイドライン策定委員会」を発足させ、問

題ある取引事例の整理の他、望ましい取引例・ベストプラクティスも含んだ報告書を発表した。

報告書の公表後、業界ビジョンを策定したばかりの素形材関係団体から非常に大きな関心が寄せられ、

報告書は業界で掲げる取引改善活動の中核に位置することになった。2006年12月から全国各地で開催さ

れた「川上・川下セミナー」(中小企業基盤整備機構委託事業)では、1,101人の参加者に報告書が紹介

された。

2007年2月には、素形材企業を対象としたガイドラインセミナーを東京・大阪・名古屋で実施。(社)

自動車工業会及び(社)自動車部品工業会からもセミナー開催の要請があり、同年3月に東京・大阪・

名古屋で開催した。

経済産業省では、引き続き2007年度も各地でセミナーを行い、取引改善に努めていく予定である。

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

49

(1)高付加価値製品を生産する国内拠点

本節では、内外拠点の生産動向について、その規

模など量的側面に焦点を当てて述べてきたが、国内

生産拠点と海外生産拠点を比較すると、生産拠点の

有している機能など質的側面においても異なってい

る。

まず付加価値の源泉である研究開発について、製

造業の海外現地法人の研究開発費とこれに国内研究

開発費を加えたものを分母にした海外研究開発比率

を経年でみると、2000年以降、多少の増減を繰り返

しながらも、ほぼ2%台で推移してきており大きな

変化はない。我が国製造業の研究開発のほとんどは

5 国内生産拠点の役割

コ ラ ム 素形材産業界のタイ王国へのミッション派遣(日タイ修好120周年認定事業)

経済産業省は、我が国素形材産業界の今後のアジアへの更なる進出と連携を検討するために、タイ王

国へミッション派遣を行い、現地の市場環境等の調査及びタイ王国政府、ローカル企業との意見交換を

行った。

現地の市場環境調査では、バーツ危機(1998年)以後の急速な発展によって、企業売上が大きく伸び

てきているという明るい状況がある反面、タイ王国においてもユーザーからのコスト削減要求が厳しく

なっている状況(現地価格で日本品質を要求される)などが確認された。積極的な設備投資によって順

調な成長を遂げている企業もあり、単にコストの観点だけでなく、戦略的位置付けで進出を検討するこ

とが重要であると考えられる。

また、タイ王国政府及びローカル企業との意見交換では、双方の国内状況などを説明した。タイ王国

は中国等との差別化を図ることを目指しており、タイ王国側からは新しい技術や品質向上に対する関心

が示された。

本ミッション派遣を通じて、日タイの協調関係の継続と定期的な意見交換の必要性などについて、双

方の意見が一致した。

企業訪問

日タイ修好120周年認定事業ロゴマーク

タイ政府及びローカル企業との意見

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50

コ ラ ム 「成長力底上げ戦略」における「下請取引の適正化対策」について

「成長力底上げ戦略」は、成長戦略の一環として、経済成長を下支えする基盤(人材能力、就労機会、

中小企業)の向上を図ることにより、格差の固定化を防止しようとする考えから2007年2月にとりまと

められた。その中で、生産性向上の成果を大企業から中小企業に適正に波及させる方策として策定され

た「中小企業底上げ戦略」において「下請取引の適正化」が喫緊の課題とされている。

下請取引の適正化について既に講じた取組は以下のとおりである。

1.3月1日

日本経済団体連合会に対し、常任理事会の場において、甘利経済産業大臣より下請取引の適正化

について要請

2.3月15日

日本商工会議所に対し、通常会員総会の場において、甘利経済産業大臣より下請取引の適正化に

ついて要請

3.3月23日

不当な理由による下請代金減額の下請代金法違反を行った企業に対する公正取引委員会への措置

請求(4月6日付で勧告)

4.3月23日 

経済産業大臣と公正取引委員会委員長の連名で、下請代金法の遵守徹底の通達を発出(親事業者

約2万社、事業者団体約560団体)経済産業大臣と所管府省大臣の連名で、取引価格決定における下

請事業者への十分な配慮を要請(事業者団体約560団体)

5.3月30日

経済産業大臣と国土交通大臣の連名で、建設業における下請取引の適正化についての通達を発出

6.4月2日

(財)全国中小企業取引振興協会がインターネットを用いた新たなマッチングシステム(ビジネ

ス・マッチング・ステーション)を開始。今後の取組として、企業のコンプライアンスを促し、法

令違反を未然に防ぐとともに、取引慣行の改善やベストプラクティスを提示するガイドラインの策

定・遵守を指導。更に、公正取引委員会において、買いたたき関係事案を効果的に防止するための

啓発用資料を作成・普及予定。

<中小企業底上げ戦略において策定された下請取引の適正化の概要>

1.下請取引適正化のために、各業界に対し、ガイドラインの策定・遵守を指導。

2.「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の「買いたたき」に関する内容をより具体化・拡

充。

3.下請の適正な取引環境を整備するため、独禁法及び下請法による取締強化。

4.取引価格の決定における、下請事業者に対する十分な配慮(下請中小企業振興法に基づく「振興基

準」の遵守)を親事業者に要請。

5.下請事業者の取引先拡大のため、売り手・買い手の効率的なマッチングを支援。

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

51

国内で行われている(図125-1)。

国内外の拠点で生産している製品のグレードにつ

いては、国内拠点で生産している製品の過半

(57.0%)が高付加価値製品であるのに対して、海外

拠点で生産している製品の大宗を中位グレード製品

あるいは普及品が占めている(図125-2)。

(2)上工程を担当する国内拠点

上工程・下工程の別でいえば、設備集約的な上工

程・前半工程の立地を国内に集中させる一方、相対

的に労働集約的な下工程・後半工程については、約

4割の企業が国内から海外へ移転したことがあると

している(図125-3)。特に、電子デバイスでは80%

の企業が、家電では63%の企業が移転したとしてい

る(図125-4)。一方、精密機器や自動車では2割台

と相対的に低く、その分業の様子は業種毎に大きく

異なっている。

下工程・後半工程を海外移転した理由としては、

7割強の企業が「製造コスト」を挙げ、続いて3割

強の企業が「消費地立地により顧客ニーズを取り込

むため」と回答している(図125-5)。

下工程・後半工程の海外移転を進めた結果、上工

程・前半工程を中心とする国内拠点の付加価値額や

生産量が増加したとする企業が4割を占めた(図

125-6)。

以上のように、下工程・後半工程の海外移転を進

3,770 3,8163,407

4,1073,632

4,2103,628

2.8 2.82.6

2.92.7

2.9

2.5

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

99 00 01 02 03 04 05 (年度)�

億円�

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5(%)�

海外研究開発費(左目盛)� 海外研究開発費比率�

備考:1.海外研究開発比率=現地法人研究開発費/(現地法人研究開発費+国内研究開発費)×100�   2.05年度の数値は速報値。�資料:総務省「科学技術研究調査報告」、経済産業省「海外事業活動基本調査」�

図125-1 海外研究開発費及び海外研究開発比率の推移(製造業)

45.2

25.2

14.8

22.7

11.6

57.0

0 10 20 30 44 50 60

普及・汎用タイプ、ローグレード製品�

中位グレード製品�

高付加価値製品、ハイグレード製品�

(%)�

海外� 国内�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-2 生産製品のグレード

Page 31: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

52

めることにより、海外に立地する顧客ニーズのタイ

ムリーな把握と輸送費等の削減を図り、世界の需要

を取り込む効率的な現地オペレーションを構築する

とともに、国内では上工程・前半工程の集中生産に

より規模のメリットを追求し、競争力のある中間財

を海外拠点へ輸出するなど、効率的な国際機能分業

体制の構築が進展しつつある。

25.0

18.2

14.3

13.3

10.0

7.4

6.7

5.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

37.5

36.4

42.9

66.7

20.0

25.9

26.7

35.0

7.1

23.1

20.0

25.0

42.9

25.0

36.4

21.4

6.7

40.0

59.3

46.7

50.0

85.7

69.2

40.0

62.5

42.9

12.5

9.1

21.4

13.3

30.0

7.4

20.0

10.0

7.1

7.7

40.0

12.5

14.3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)�

家電�

その他電機�

非鉄・金属�

電子デバイス�

繊維�

化学�

情報通信機器�

機械�

食品�

自動車�

窯業�

精密機器�

鉄鋼�

全面的に海外移転した� 一部海外移転した� 全く海外移転していない� 分からない�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-4 下工程・後半工程の海外移転(業種別)

一部海外移転�した�

31.6%

全く海外移転�していない�47.4%

分からない�14.4%

全面的に海外�移転した�

6.7%

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、�   有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-3 下工程・後半工程の海外移転

72.9

34.1

23.5

3.5

10.6

0 10 20 30 40 50 60 70 80(%)�

海外の製造コストが国内より安かったため�

海外市場が需要先の中心であり、消費地立地により顧客ニーズを取り込むため�

海外市場が需要先の中心であり、かつ製品の輸送コストが割高であるため�

国内での一貫生産体制が非効率となっていたため�

その他�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-5 下工程・後半工程の海外移転理由

Page 32: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

53

(3)マザー工場としての国内拠点

国内外の生産拠点の保有する機能を比較すると、

国内拠点が保有する機能としては、製品開発

(70.9%)、製造技術の開発(70.9%)、基本的な設

計・試作(64.0%)などの機能に加え、技術指導要

員等を育成する機能についても4割以上の拠点が保

有する。国内拠点がいわゆる「マザー工場」として

機能していることがうかがえる。一方、海外拠点で

は量産以外のこうした機能を保有している拠点の割

合は国内拠点と比較して著しく低い(図125-7)。

これまでも「マザー工場」という考え方は存在した

が、従来は、製品開発機能、新製品の量産化を可能と

する製造技術開発機能等を想定した概念であった。し

かしながら、我が国製造業の海外展開が急速に進展す

るに従い、最近では、海外市場向けの技術・技能を育

成・蓄積する機能についても注目されている様子がう

71.0

70.5

63.6

53.4

43.8

16.8

22.7

24.4

21.0

11.8

0 10 20 30 40 50 60 70 80(%)�

製品開発�

製造技術の開発�

基本的な設計・試作�

品質の安定化�

技術指導要員等の育成� 国内� 海外�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-7 生産拠点の主な機能

コ ラ ム 効率的な国内機能分業体制の構築事例(シャープ(株)亀山工場の取組)

液晶国内最大手のシャープは、テレビ向け大型液晶パネルについては、亀山工場(三重県亀山市)で

生産し、最新鋭設備への投資を集中しつつ、液晶モジュール(液晶の後半工程)から液晶テレビまでの

生産については、日本、マレーシア、メキシコ、中国、ポーランドにおける“グローバル5極一貫生産

体制”により、急拡大する薄型テレビの世界需要に対し、安定した供給体制の構築を目指している。

国内拠点から海外�拠点への輸出が国�内減産分をカバー�できず、国内拠点�での生産・付加価�値額は減少した。�

16.0%

分からない�26.7%

国内拠点から海外�拠点への輸出が海�外移転による国内�減産分をカバーし、�国内拠点での生産�や付加価値額は増�加した。�

40.0%

17.3%�

国内拠点から海外拠点への輸出が国内減産分に相殺され、国内拠点での生産・付加価値額に変化はなかった。�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�

資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-6 下工程・後半工程を海外移転した際の国内拠点への影響

Page 33: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

54

かがえる。海外展開の急速な進展に伴い、同時に、そ

うした取組を支える国内生産拠点の「マザー工場」機

能を充実させなければ、高機能・高品質の製品を生み

出す生産技術を維持できないとの考え方が主流になっ

てきているものと考えられる。

(4)ライフサイクル短縮化への対応と国内拠点

近年の急激な技術革新、市場ニーズの多様化等に

より、製品が市場に投入されてから、成長、成熟、

衰退までの製品ライフサイクルの期間が短くなる傾

向がある。現在のライフサイクル期間を5年前と比

較し、どの程度短期化しているかを業種別にみると、

特に家電産業における短期化が著しく、5年前の

59.9%になっている。その他、食品、繊維産業で短

縮率が大きい(図125-8)。製品サイクルの短縮化の

要因についてみてみると、「市場ニーズの多様化・

複雑化」(82.1%)、「市場ニーズの変化のスピードの

急速化」(69.5%)と回答する企業の割合が高い(図

125-9)。

製品ライフサイクルの短縮化は、多品種少量生産

化(70.4%)を促がすとともに、価格低下のスピー

ドを速めている(64.0%)。その他、「顧客への納期

が早まった」(45.6%)、「生産変動が大きくなった」

(43.2%)さらには「製品のカスタマイズの要求が高

まった」(35.2%)といった多様な影響がみられる

(図125-10)。

特に、イノベーションに与える影響は大きく、研

究開発段階、特に応用研究段階から製品化までのス

ピード(Time to Market)を速めることが、企業の

競争力を左右するようになってきている。具体的に

は、研究開発人員を増員するなど研究開発力そのも

のを強化したり、研究開発成果を製品化する段階の

生産立上げ要員の育成、さらには開発や生産に関わ

るIT情報システムの強化等が進められている(図

125-11)。

なお、Time to Marketへの対応を業種毎にみると、

コ ラ ム マザー工場の国内立地事例

<自動車メーカーの事例>

ホンダは、四輪の世界生産台数が340万台(2005年)であるところ、販売台数を340万台(2005年)か

ら2010年に450万台以上にする目標を掲げ、北米や中国では生産拠点の新設、インドやブラジルでは能

力増強を急いで進めているが、国際的に生産能力が増す今後は国内で開発する先端的な生産技術がます

ます重要になるため、現在の埼玉製作所(埼玉県狭山)と鈴鹿製作所(三重県鈴鹿)に加え、国内では

40年ぶりとなる最先端の新工場を埼玉県の寄居町に建設予定である。関連投資額は700億円を予定し、

2010年に稼働する計画である。

<機械部品メーカーの事例>

ベアリング(軸受)や等速ジョイント等の世界的なメーカーであるNTNは、2007年度からスタートし

た新中期経営計画において1,350億円の設備投資を計画し、国内外の工場、設備を増強する予定である。

中でも、活況が続く工作機械や建設機械等の産業機械用のベアリングを増産するべく2004年10月に稼働

開始した三重県桑名市の新工場では、最新鋭の設備や手法を導入し、ベアリングの生産性の極限を追求

した同社のモデル工場と位置付けられている。

「IH-R炉」と呼ばれる最新技術を駆使した熱処理設備や、一度にベアリングの複数箇所が削れる世界

初の新型研削盤など、独自開発の設備を導入し、年内にフル稼働の予定である。

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

55

電子デバイス、精密機器、情報通信機器、家電とい

った業種で対応の必要性が高くなっているが、鉄鋼

や自動車ではそうした必要性は低いと認識されてい

る(図125-12)。

(5)生産システムと人材の変化

最近5年間の国内拠点の生産システムの変化をみ

てみると、9割以上で何らかの生産システムの見直

しが行われている。具体的には、上述したTime to

Marketへの対応とオーバーラップするものが多い

が、約4割の企業で「工程管理のIT化を進めた」

「ロボットや機械による自動化を進めた」等、機械

化・ロボット化・自動化が進展していることがうか

がえる。また、セル生産方式を採用・拡大している

企業も2割弱ある(図125-13)。

こうした生産システムの変化に伴い、工場内で必

要とされる人材についても変化が生じている。5年

前と比較して、特定技能に優れた人材へのニーズが

82.1

69.5

47.4

26.3

23.2

11.6

0 20 40 60 80 100(%)�

市場ニーズの多様化・複雑化�

市場ニーズの変化のスピードの急速化�

技術の世代交代のスピードの急速化�

新規参入者の増加による競争激化�

ITの進化による製品・技術情報の外部伝達スピードの急速化�

既存の同業者間での設備投資競争の激化�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-9 製品ライフサイクル短縮の要因

100.893.3 93.0 90. 6 90.6 89.4 88.0 87.4

83.3 82.776.5

72.6

59.9

0

20

40

60

80

100

120

ライフサイクルの短縮率(%)�

備考:1.上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�   2.主力製品の現在のライフサイクル年数(産業別平均値)/主力製品の5年前のライフサイクル年数(産業別平均値)�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

鉄鋼�

自動車�

非鉄・金属�

化学�

機械�

窯業�

情報通信機器�

電子デバイス�

精密機器�

その他電機�

繊維�

食品�

家電�

図125-8 ライフサイクルの短縮率

Page 35: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

56

70.4

64.0

45.6

43.2

35.2

1.6

0 10 20 30 40 50 60 70 80(%)�

多品種少量生産化が進んだ�

価格低下のスピードが速くなった�

顧客への納期が早まった�

生産変動が大きくなった�

製品のカスタマイズの要求が高まった�

特に影響はない�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-10 ライフサイクル短縮化の企業経営への影響

80.7

54.1

45.9

27.4

20.7

17.0

13.3

7.4

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90(%)�

研究開発人員の増員など研究開発力の強化�

生産立上げ要員の維持・育成�

開発や生産に関わるIT情報システムの強化�

キーとなる部材(キーデバイス等)の内製化�

開発や生産の一部工程のアウトソーシング�

金型・生産設備など設備の内製化�

事業所の立地選択の最適化�

事業所内の外注人員の増加�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-11 ライフサイクル短縮化への対応

Page 36: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

57

コ ラ ム 最近の製品事故の動向について

最近、身の回りで使われている製品による事故が相次いでいる。独立行政法人製品評価技術基盤機構

(nite)が収集している製品に関する事故報告の年度別の推移を見ると、増加傾向にあり、2005年度には、

報告された事故件数は、2,413件と過去最高を記録した(図)。

このように製品事故が相次いでいる理由としては、①製品の機能の高度化や、製品の使用形態の多様

化が進んでいること、②製造事業者が、安全性よりも製品の高度化やコスト削減を相対的に優先しがち

であること、③消費者がフェイル・セーフ機能を備えた製品に慣れてしまい、製品の危険性に対する認

識が希薄になりつつあること、④製品事故への社会の関心が高まり、製品事故と認識される事故が増加

していることなどが考えられる。

そのような中で、経済産業省としては、製品事故の発生・拡大を防止するために、消費生活用製品安

全法(以下、「消安法」という。)を改正し、重大な製品事故が発生した場合、製造又は輸入事業者に対

し、国への事故報告を義務づけるとともに、国は事故情報を収集・分析し、その結果を広く国民に公表

することとしている。

また、事業者に対しては、消安法に基づく義務を履行することに加え、製品安全向上のための自主的

な取組も期待される。

そのため、経済産業省は、製品安全の確保に向けた事業者自らの取組を促すため、「製品安全自主行

動指針」を策定し、製造事業者、輸入事業者、修理・設置工事事業者、販売事業者ごとに製品安全に関

する基本的な考え方や行動の在り方を示すなど、事業者に対する啓発活動を行っている。

さらに、製品事故を防止するためには、製品を使用する消費者が製品の正しい使い方を理解すること

が重要であるという認識に基づき、毎年11月に「製品安全点検週間」を実施する他、毎月第2火曜日を

「製品安全点検日」とし、セミナーの開催等を通じて、消費者への啓発活動に取り組んでいる。(参考:経済産業省 製品安全サイト http://www.meti.go.jp/product_safety/index.html)

64.3

28.6

50.0

45.5

40.0

31.3

26.2

24.0

14.3

20.0

20.0

28.6

7.7

14.3

28.6

57.1

33.3

36.4

40.0

43.8

42.9

44.0

50.0

40.0

40.0

28.6

30.8

0.0

0 20 40 60 80 100(%)�

電子デバイス�

家電�

精密機器�

その他電機�

繊維�

情報通信機器�

機械�

化学�

食品�

その他製造�

窯業�

非鉄・金属�

自動車�

鉄鋼�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

大幅に短くする� 少し短くする�

図125-12 Time to Market短縮化の必要性

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58

資料:独立行政法人製品評価技術基盤機構「事故情報収集制度報告書」�

事故の報告件数(年度別)�

1,0131,132

1,015 956

1,4441,532

1,7181,594

2,124

2,413

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005(年度)�

(件)�

11.その他�

10.繊維製品�

9.乳幼児用品�

8.レジャー用品�

7.保健衛生用品�

6.身のまわり品�

5.乗物・乗物用品�

4.家具・住宅用品�

3.燃焼器具�

2.台所・食卓用品�

1.家庭用電気製品�

引き続き高水準ながら減少しているのに対し、製造

ラインをコーディネートする人材、工程管理等のI

Tに精通した人材などへのニーズが大幅に上昇して

いる(図125-14)。また、プロセス技術者やオペレー

ターについては、人数については減少しているとの

回答が41.3%と最も多いが、求められている熟練度

は増加している(図125-15)。

なお、生産システムのIT化の課題として、開発

コストの増大があり、十分な投資効率を上げられて

いるのかとの指摘もあり、共同開発によるコスト削

減の対策が必要になると考えられる。

ITはこれまでも生産性向上に大きく寄与してい

ロボットや機械�による自動化を�進めた�

22.5%

その他�

14.9%

製造ラインの�モジュール化�を進めた�

9.0%

生産のアウト�ソーシングを�進めた�13.3%

セル生産方式を�採用・拡充した�

16.2%

工程管理の�IT化を進�めた�24.1%

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�

資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-13 最近5年間における国内量産工場の生産システムの変化

Page 38: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

59

5年前� 現在�

80�

70�

60�

50�

40�

30�

20�

10�

0

(%)�

製造ラインをコーディネートする人材�

工程管理等のITに精通した人材�

自動化設備をメンテナンスできる人材�

設備の内製に貢献できる人材�

汎用的な設計技術を有する人材�

セル生産等で「一品物」を作り込める人材�

CG等最新の設計技術を有する人材�

自動化設備を運転できる人材�

製造ラインにおける特定技能に優れた人材�

52.2

29.8

44.9

34.640.1

38.038.7

19.0

29.7

13.7

27.4

42.037.7

68.3

57.551.9

66.5

58.0

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社�資料:経済産業省調べ(07年2月)�

図125-14 生産システムの変化に伴い工場内で必要とされる人材

るが、米国と比べITの活用はまだ不十分である。

生産性の向上を加速するために、IT資本投入の拡

大やIT投資効率を向上させるようなIT活用の促

進に向けて、制度改革やIT投資の加速を図ってい

くことが必要である。

低下(減少した)�

14.7

41.3

36.233.0

46.8

23.8

ほとんど変わらない� 増加(高まった)�

50�

45�

40�

35�

30�

25�

20�

15�

10�

5�

0

(%)�

備考:上場している製造業企業を対象にしたアンケート調査結果、有効回答数は227社��資料:経済産業省調べ(07年2月)�

熟練度� 人数�

図125-15 プロセス技術者やオペレータの人数・求められる熟練度の変化(5年前との比較)

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60

コ ラ ム 化学産業における生産革新の動き

中東・アジア諸国における設備増設や原材料価格の高騰等、化学産業を巡る国際的な競争環境は厳し

さを増している。こうした環境変化に対応し、今後とも我が国の基幹産業である化学産業の活力の維

持・増進を図るためには、これまでに生産現場で培われた技術・ノウハウを定式化して世代間で継承し

ていくとともに、新たな生産方式の導入によりコスト競争力を一層強化していくことが求められている。

こうした状況下において、近年、一部の化学企業を中心として、生産方式の革新に取り組み、生産性

の大幅な向上、製造原価の大幅な削減、プラントの連続安定運転の実現、省資源・省エネルギー・CO

2排出削減、次世代人材の育成等の多大な成果を挙げている事例が見受けられる。

このような化学産業における生産革新の動きは、①プラントの連続安定運転の実現という化学産業特

有の課題への対応が一つの契機となって生じてきたものであり、従来、組立加工型産業を中心に展開さ

れてきた生産方式とは異なる新たな生産方式の萌芽となりうるものであること、②その適用範囲が化学

産業に限定されることなく、広く素材プロセス加工型産業に応用されうる可能性を有しているものであ

ること、③新たな生産方式を導入するためのシステム設計に際して、徒にシステム導入を急ぐのではな

く、生産現場における定常・非定常業務の総点検と標準化を徹底して行った上で、業務内容に即したシ

ステム設計を行うという手順を踏むことによって、生産性向上に直結するシステムの構築手法を提示し

た例が見受けられることなどにより、今後の動向が注目されるところとなっている。

経済産業省においては、今後、こうした生産革新の動きについて、生産現場における具体的な生産革

新の事例に則しつつ、それが生産性向上等の効果をどのように発揮しているのか、新たな生産方式の導

入を進めてきた企業においてどのようなハードルを乗り越えてきたのか、生産革新の動きを広範囲の企

業・産業に加速的に展開していくにはどのような方策が考えられるか、といった観点からの検討を進め

ることとしている。

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第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望

我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割

第2節

61

コ ラ ム IT投資生産性の向上に向けた取組

1.課題~低いIT投資生産性

ものづくり産業に限らず、我が国企業の多くは「垂直統合、囲い込み」を特色としており、これが差

別化を通じて競争力強化に効果をもってきた。そのため、IT導入に際しても、他社との差別化につなが

る部分もそうでない部分も、すべて自社専用のオーダーメードで開発したり、ソフトウェア製品を大幅

にカスタマイズしたりする傾向が強く、IT投資生産性が低い要因となっている可能性がある。

また、囲い込みを前提として開発された自社専用システムは、社内ユースだけとなり、スケールメリ

ットを発揮しにくい。その結果、バージョンアップ費用を捻出できず、自社専用システムを放棄し、汎

用ソフトウェア製品に乗り換える事例も見られる。例えば、多くの国内半導体メーカーが、自社開発

MESから海外ベンダー製MESに乗り換えている。

このような他社との差別化につながらないIT投資に必要以上のコストをかけることにより、付加価値

の向上や市場拡大につながる「攻めのIT投資」の割合が低くなっている可能性がある。これも、IT投資

生産性を引き下げている要因である可能性がある。

2.IT投資生産性向上に向けた取組

IT化の推進にあたっては、まずは、検討している生産システム等について自社の差別化に資する部分

とそうでない部分とに峻別し、「IT投資の選択と集中」を通じて、ITのもつ能力を最大限に活かし、生

産性向上と競争力強化を図ることが重要である。

具体的には、自社の差別化に当たらない部分については、①共同開発・外販パッケージの導入(コス

ト削減型の生産性向上)、あるいは、②自社開発ソフトウェアの外部展開(コスト回収型の生産性向上)

を進め、自社の差別化に資する部分では、IT投資を集中させ囲い込みによって開発を進めること(付加

価値増大型の生産性向上)が必要である。

コスト削減型の戦略に関しては、例えば、ある自動車会社では、CADシステムの導入にあたって、

汎用的な部分と自社製品の差別化にかかる部分とに分け、差別化にかかる部分(自由曲面の作成手法等)

については、一切外部にノウハウを出さずに自社で囲い込む形で開発を行い、汎用的な部分については、

資料:ガートナー社調べ�

22.1%

31.1%

30.9%

58.8%

47.1%

10.1%

米国�CRM

日本�CRM

そのまま�使用�

100%�作り込み� 混成�

CRMとSCMのカスタマイズ度合いの日米比較�

(CRM)�

顧客管理ソフト�

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

7.5%

40.0%

41.3%

49.2%

51.2%

10.8%

米国�SCM

日本�SCM

そのまま�使用�

100%�作り込み� 混成�

(SCM)�

物流管理ソフト�

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

Page 41: 2 我が国製造業の海外展開の現状と国内拠点の役割第1章 グローバル経済下における国内拠点の強化に向けた課題と展望 我 が 国 製 造

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コ ラ ム 情報基盤・強化税制について

2006年度の税制改正において、特に、高度な情報セキュリティが確保された情報システムの導入によ

り、企業の部門間、企業間の情報共有・活用を促進し、生産性の一層の向上を図る観点から情報基盤強

化税制が創設された。本税制は、産業競争力の向上に資する設備等で情報基盤の強化を促すもの(対象

設備は下記の通り)の取得等をした場合に、基準取得価額の10%の税額控除又は50%の特別償却との選

択適用を認めるものである。

【対象設備の内容】

①OS※及び当該OSがインストールされたサーバー

②データベース管理ソフトウェア※及び当該データベース管理ソフトウェアの機能を利用するアプ

リケーションソフトウェア

③ファイアーウォール※(①または②と同時に取得されるものに限る)

※ISO/IEC 15408に基づいて評価・認証されたもの。

(注1)年間投資額:1億円以上(資本金1億円以下:300万円以上、資本金1億円超10億円以下:3,000万円以上)(注2)資本金1億円以下の法人については、リース投資も税額控除の対象。(リース費用の総額:420万円以上)(注3)適用期限は2年間。(注4)税額控除について、法人税額の20%相当額を限度とし、控除限度超過額については1年間の繰越しを認める。

デファクトスタンダードとなっている市販CADを導入することで差別化とコストの削減を同時に実現

している。

コスト回収型の戦略は、自社開発システムが、外部展開によって、業界のプラットフォームの獲得や

他のユーザーのノウハウの吸収が期待できる場合などに採用すべきと考えられる。例えば、ダイセル化

学工業では、独自に開発した生産システムを、自社内に留めおくのではなく、ITベンダーである横河電

機と協業して、積極的に同業他社に展開している。こうした外部展開によって、他社からシステム開発

コストを回収するとともに、他社のノウハウのフィードバックによるシステムの改善を実現している。

なお、自社開発システムが陳腐化する前に、外部展開することが重要となる。