2. 調査結果 - maff.go.jp畑町4-27 「まるでお肉!」シリーズ...

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17 2. 調査結果 代替肉 2.1.1 代替肉の類型 代替肉は一般に大豆など植物由来の肉と、培養技術を用いた培養肉に分けられるが、 培養肉は試験段階なのでまだ市場に出回っていない。植物由来の肉の原材料は、大豆の ほか小麦、エンドウマメ、ソラマメ(フィンランド産)というものもあるが量は少なく、 大豆が多くを占める。呼称も大豆ミートと呼ばれることが多いが、小麦の場合もあるの でその場合はグルテンミートと呼ばれる。その他植物由来の代替肉の総称としてプラン トベースミート、またはオルタナティブミート、フェイクミートなどとも呼ばれる。 植物由来といっても原材料に動物性由来の材料を含む商品もあるため、厳格な菜食主 義(ビーガン)には対応していないものもある。これは、脱ミートのなかにも消費者の 意識レベルの違いがあり、どのターゲットのニーズに応えている商品かによって異なっ てくる。従って、今後は表示の面で混乱を避ける必要があると考えられる。 また、代替肉というよりも代替蛋白質という大きな括りの中では、生育において家畜 よりも環境負荷が小さい昆虫食も含まれ、コオロギなどを原料とする商品が販売されて いる。 代替肉の類型 名称 内容 植物肉 (プラントベー スミート、オルタ ナティブミート、 フェイクミート とも呼ばれる) 植物性原材料(大豆、小麦、エンドウ豆、ソ ラマメなど)で作られたもの。大豆による商 品は大豆ミート、小麦による商品はグルテン ミートとも呼ばれる。商品化にあたっては菜 食主義の消費者対応のため、動物性タンパク 質を添加していないものと、一般消費者向け に添加しているものとがある。 動物油脂、肉エキスな ど動物性添加物を含む もの。 動物性添加物を含まな いもの。(ヴィーガン 対応) 培養肉 動物の個体からではなく、可食部の細胞を組織培養して得られた肉。

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2. 調査結果

代替肉

2.1.1 代替肉の類型

代替肉は一般に大豆など植物由来の肉と、培養技術を用いた培養肉に分けられるが、

培養肉は試験段階なのでまだ市場に出回っていない。植物由来の肉の原材料は、大豆の

ほか小麦、エンドウマメ、ソラマメ(フィンランド産)というものもあるが量は少なく、

大豆が多くを占める。呼称も大豆ミートと呼ばれることが多いが、小麦の場合もあるの

でその場合はグルテンミートと呼ばれる。その他植物由来の代替肉の総称としてプラン

トベースミート、またはオルタナティブミート、フェイクミートなどとも呼ばれる。 植物由来といっても原材料に動物性由来の材料を含む商品もあるため、厳格な菜食主

義(ビーガン)には対応していないものもある。これは、脱ミートのなかにも消費者の

意識レベルの違いがあり、どのターゲットのニーズに応えている商品かによって異なっ

てくる。従って、今後は表示の面で混乱を避ける必要があると考えられる。 また、代替肉というよりも代替蛋白質という大きな括りの中では、生育において家畜

よりも環境負荷が小さい昆虫食も含まれ、コオロギなどを原料とする商品が販売されて

いる。

表 代替肉の類型

名称 内容 植物肉 (プラントベー

スミート、オルタ

ナティブミート、

フェイクミート

とも呼ばれる)

植物性原材料(大豆、小麦、エンドウ豆、ソ

ラマメなど)で作られたもの。大豆による商

品は大豆ミート、小麦による商品はグルテン

ミートとも呼ばれる。商品化にあたっては菜

食主義の消費者対応のため、動物性タンパク

質を添加していないものと、一般消費者向け

に添加しているものとがある。

動物油脂、肉エキスな

ど動物性添加物を含む

もの。

動物性添加物を含まな

いもの。(ヴィーガン

対応)

培養肉 動物の個体からではなく、可食部の細胞を組織培養して得られた肉。

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2.1.2 市場規模や市場の動向

(1) 代替肉市場形成の背景

「脱ミート」が世界的な潮流になっている。マクドナルドをはじめバーガーキングや

KFC など、外食大手チェーンも代替肉の使用を開始し、ネスレ、ユニリーバなども参

入の動きをみせている。中でもアメリカではビヨンドミートが上場し黒字化を達成した

ほか、インポッシブル・フーズも未上場ながら市場を牽引し、存在感を高めている。こ

うした代替肉市場の成長の背景には、欧米人の健康志向(肥満の軽減、生活習慣病の抑

制)、人口増加と環境問題意識の高まり(土地・水の節約、温暖化ガスの排出抑制)、動

物愛護、代替肉自体の味の改良があるといわれている。

(2) 世界的な市場予測

アメリカの金融機関 JP モルガン・チェース(JPMorgan Chase)は、植物肉の市場

規模は 15 年以内に 1,000 億ドル(約 11 兆円)を超えると推計、またイギリスの銀行

のバークレイズ(Barclays)は 10 年以内に世界で販売される肉全体の約 10%、最大

1400 億ドル(約 15 兆円)相当を「代替肉」が占めると試算(出典:AFP 通信 2019年 6 月 17 日)している。市場調査会社のジオンマーケットリサーチ(Zion Market Research)の推計によれば 2018 年に 119 億ドルだった植物肉の世界市場の規模は、

2025 年には 212 億ドル(成長率 78%)になる(出典:日本経済新聞 2019 年 9 月 6 日)

と予測している。各社の予測は独自の前提条件にもとづく推計のため相互の整合性はな

いものの、いずれも市場拡大を予測している。

(3) 国内市場の動き

日本国内の企業参入の歴史を振り返ると、国内の大豆ミートの老舗企業とよばれる企

業は、マクロビオテックのオーサワジャパン株式会社や、ベジタリアン食材の株式会社

かるなぁ、セブンスデー・アドベンチスト教団食品事業部が運営する三育フーズ株式会

社、農業生産法人を起源にもつ株式会社マイセンなどがあげられる。これらに続く形で

2015 年頃より、マルコメ株式会社が「ダイズラボ・シリーズ」を販売開始。素材と惣

菜の両方を商品化。ほぼ同時期にモスバーガーが大豆を原料としたソイパテ入りのハン

バーガーを販売開始し、一般の人も手に取る機会が増えた。 2017 年には日清食品のカップヌードルに具材として使われている「謎肉(なぞにく)」

が話題となった。原料は粒状大豆蛋白を含んだ加工肉で、純粋な肉ではなかったが消費

者から目立った批判の声は聞かれなかった。 2019 年になると健康志向やインバウンド観光客への対応から、株式会社 SEE THE

SUN、大塚食品株式会社、ケンコーマヨネーズ株式会社、株式会社ヤヨイサンフーズ、

不二製油株式会社、米久株式会社・伊藤ハム株式会社などが、2020 年3月には日本ハ

ム株式会社も参入した。

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表 国内代替肉メーカーと商品例

メーカー 商品例 商品写真 オーサワジャパン株

式会社 本社:東京都目黒区東

山三丁目 1 番 6 号

オーサワの国産大豆ミート(バラ肉風) 国内産の大豆を 100%使用し、圧搾法で大

豆の油分をカット。ほかにハンバーグな

ど用のそぼろ肉風もある。

株式会社かるなぁ 本社:愛知県名古屋市

天白区 保呂町 2016

大豆まるごとミート ミンチタイプ【国

産】 遺伝子組み換えでない国産大豆 100%を

まるごと使用した無添加食品。

三育フーズ株式会社 本社:千葉県袖ケ浦市

拓 1−1−65

デミグラスソース風野菜大豆ボール 大豆にキャベツとたまねぎを加えて作っ

た野菜大豆ボールに、野菜を煮込んだデ

ミグラス風ソースを加えて仕上げ。

株式会社マイセン 本社:福井県鯖江市上

野田町 12-7-1

大豆と玄米のベジフェレ 原材料は大豆と玄米のみ。保存料・着色

料は使用せず、残留農薬検査をクリアし

た国産玄米粉と脱脂大豆を丸ごと製粉、

加工。

マルコメ株式会社 本社:長野県長野市安

茂里 883 番地

ダイズラボ・シリーズ 「ヘルシーを、もっと美味しく」をコン

セプトにしたシリーズ。脂質や糖質、カ

ロリーや栄養バランスなどを考慮し、毎

日の食生活に取り入れやすい形として販

売。

株式会社 SEE THE SUN 本社:神奈川県三浦郡

葉山町堀内 810-2

ZEN MEAT ミンチタイプ ヘルシーな味わいと食べ応えのある食感

に加え、玄米を加えた独自配合により従

来の大豆ミート製品に比べ大豆特有の臭

みを抑えることに成功。ブロックやスラ

イス商品のほか、カレー等も販売。

大塚食品株式会社 本社:大阪市中央区大

手通 3-2-27

ゼロミート デミグラスタイプハンバー

グ 大豆加工食品を使用したハンバーグ。ソ

ーセージタイプも新登場している。

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ケンコーマヨネーズ

株式会社 本社:東京都杉並区高

井戸東 3 丁目 8 番 13号

やさいと大豆ミートのキーマカレー 大豆ミートとたまねぎ、にんじん、

マッシュルーム入り。ボロネーゼや

担々辣醤等もある。

株式会社ヤヨイサン

フーズ 本社:東京都港区芝大

門 1丁目 10-11 芝大

門センタービル 6F

イートベジ 大豆ミートの肉団子 大豆ミートと 5 種の野菜(タマネギ・人

参・タケノコ・インゲン・ゴボウ)を使用

した肉団子と、ゴマ油をきかせた醤油あ

んを合せたワンポーションタイプの商

品。

不二製油株式会社 本社:大阪府泉佐野市

住吉町 1番地

ニューフジニック 薄切りビーフタイプを佃煮や牛丼風に使

用できるほか、水性など多様な機能を活

かしハンバーグやシューマイなど加工食

品のおいしさを保ちつつ品質の強化や安

定化に使用可能な業務用商品。

伊藤ハム株式会社 本社:兵庫県西宮市高

畑町4-27

「まるでお肉!」シリーズ 伊藤ハムの長年の加工品のノウハウを生

かし食感・味・香りともにまるでお肉の

ようなおいしさに仕上げた商品。8 品のラ

インアップ。

日本ハム株式会社 本社:大阪市北区梅田

二丁目 4 番 9 号 ブリ

ーゼタワー

ナチュミート お肉を使用しないハムタ

イプ 大豆たん白等を使用し、ハムの味・食感

を再現した商品。

(4) 植物肉に対する消費者や小売業の評価

国内メーカーへのヒアリング調査したところ、小売店は植物肉製品の投入に対して好

意的な意見が多いが、原材料に主に大豆を使用することから、遺伝子組み換え大豆の使

用に対する姿勢を尋ねられることはあるという。日本生活協同組合連合会からも植物肉

製品の取り扱いに対して、ルール化などの動きは聞かれなかった。 京都府生活共同組合連合会によれば、植物肉の取り扱いについて数年前に生協活動の

一環で検討の俎上に登ったことはあるものの、現在では食品問題のテーマからは消えて

いる状況という。その理由は、消費者の食品分野の課題・関心の優先度が、ゲノム編集

に寄せられているためとのことである。

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117 116 118 117 118 117 114 111 110 108 107 107 106111 113 115

43 44 43 44 44 44 44 44 45 46 47 47 47 47 51 53

33,692 33,696 34,565 34,763 35,307 35,375 34,685 34,174 34,165 33,643 33,526 33,964 33,92635,736 36,662 37,419

5,526 5,580 5,456 5,588 5,624 5,600 5,587 5,643 5,793 5,864 6,026 5,990 5,995 6,000 6,428 6,696

0

50

100

150

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

1人当たり消費量米国 1人当たり消費量日本 合計米国 合計日本

(千トン) (㎏)

(5) 国内の肉消費動向から考える代替肉需要の行方

かつての植物肉の購入者は、マクロビオテックに取り組む人や厳格な菜食主義者など、

ポリシーをもって購入する層が中心だったが、近年の商品については普通の消費者で、

少し健康に関心が高い層がターゲットに変わってきている。今後の世界的な人口増加に

ともなう国内への肉供給を考えると、国際的に買い負ける危機感もあり、大手食肉メー

カーも、本業まででないにしても代替肉に着手する必要性を認識していると考えられる。 アメリカにおける植物由来の肉ブームのように、日本でも同じように爆発的に消費が

拡大するかどうかは未知数である。日本植物蛋白食品協会によれば、日本人の肉の消費

量は増加傾向にあるとはいえ未だアメリカ人の半分以下なので、「肉を食べすぎている」

という問題意識は持ちにくいのではないかと考えられることから、肉を控えて代替肉を

選択する動機が強くないのではないかとみている。 一般的には生活が豊かになるにつれて世界的に肉食が普及するといわれるが、日本に

おいては過去のトレンドから、今後肉の消費量が急拡大するとは考えにくく、ゆえに肉

食を控えるといった行動変容は急激には生じにくい可能性が高い。

出典:米国農務省、IMF 図 肉の消費量の比較

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8.19

3.963.28

0.04 0.00227

12,725

57,857

72,858

47,483

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

日本 中国 ブラジル アメリカ アルゼンチン

1人当たり摂取量 生産量

(㎏) (千トン)

日本でアメリカのような代替肉ブームが考えにくい理由の 2 つ目は、大豆の消費に

関して、日本人は豆腐や納豆など普段からたくさん消費しているため、あえて積極的に

摂取しなくても足りている点が指摘できる。以下のグラフは 1 人当たりの大豆摂取量

の国別比較だが、日本人は年間 8.19kg 摂取するのに対し、アメリカ人は 40g にとどま

る。古くから日本食文化の中で大豆に慣れ親しんでおり、改めて肉の形に変えてまで大

豆を摂取する必要性は乏しいのではないかと考えられる。

出典:大豆生産量摂取量(FAO 国連食糧農業機関 2007)

図 大豆摂取量と生産量比較(2007 年)

3 つ目の理由としては、アメリカではビヨンドミートやインポッシブル・フーズのよ

うに肉に限りなく近いものが商品化されて好評を得ているが、日本では特にコストを上

げてまで肉に似せることに対し、欧米ほどには評価されない可能性がある。以上の理由

から、消費は伸びると思われるものの、欧米ほどには伸びないのではないかと考えられ

る。 業界関係者も「アメリカのようにブームになるかは分からない。市場が拡大すること

を予測して参入してはいるが、アメリカの若者がこぞって植物由来の肉を選択するよう

なブームは日本では起きていない」(国内メーカー)とし、市場見込みについては今の

ところ慎重である。 日本において需要増加を加速させうる要素としては、インバウンド消費分の上乗せが

可能性として考えられる。メニュー表示が徹底されていないなど遅れもあるので、その

まま消費量の上乗せにはならないと思われる。

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23,560

33,297

43,034

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028

(トン)

(年)

23,560 24,029 25,094 26,12428,379 27,913 29,014 30,084

31,37133,297

0

10,000

20,000

30,000

40,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(トン)

(年)

(6) 国内市場の成長予測

日本植物蛋白食品協会として植物肉市場の予測はもっていないが、消費量の予測に利

用されるのが、当協会の粒状大豆蛋白の生産、出荷・自社使用量の統計数値」(日本植

物蛋白食品協会)といわれている。粒状大豆蛋白は大豆蛋白質を粒状に加工したもので、

大豆ミートの原材料に使用されることから日本の植物肉の市場成長率とほぼ同じと考

えられるのがその理由である。 粒状大豆蛋白質の国内生産量は、2010 年の 23,560 トンから、2019 年に 33,297 ト

ンで、10 年間で約 41%成長した。(大豆蛋白質の国内生産とは、海外から原材料とな

る大豆を輸入し、国内生産したものを含む。)。これをもとに今後も直線的に成長を続け

ると予測するならば、2028 年の生産量は約 43,000 トンとなる。

出典:一般社団法人日本植物蛋白食品協会

注:国内生産量は国内自社工場で生産した総量で OEM や受託生産も含む。海外自社工場の生産量は含ま

ない。 図 粒状大豆蛋白質の生産の推移(日本)

図 粒状大豆蛋白質の生産の推計(点線は推計)

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2.1.3 代替肉を取り巻く課題

植物性蛋白質を取り扱う業界も食肉業界も、代替肉を規格化する取組は今のところみ

られないものの、ビーガンへの対応やハラールへの対応など、表示や取り扱いに注意・

明確化が必要との指摘があった。 また消費者及び小売サイドは原料素材の遺伝子組み換えに関心が寄せられている。現

在日本のメーカーでは大豆の生産地に対し、遺伝子組み換えでない大豆をプレミアム価

格を払って加工・分別管理してもらって輸入している。厳格に管理しでも生産工程で生

じうる5%までのコンタミネーション(遺伝子組み換えの大豆が意図せず混入すること)

は許容してきたが、今後厳格化(「遺伝子組み換えでない」と表記するには、遺伝子組

み換えが検出されることが許されなくなる。)される。さらにアメリカやブラジルも近

年ノンGM(遺伝子組み換えでない)大豆が注目されはじめている。もともとノン GM大豆は生産量が少ないため、限りあるパイを奪い合う構図となることから、日本人が入

手できなくなる可能性もあり、製品価格にも反映することが考えられる。 また、遺伝子組み換えの有無を原材料名に記載する必要があるのは、重量ベースで上

位3位以内か、5%以上含まれる場合である。下位にある大豆蛋白質由来の食材につい

ては遺伝子組み換えの情報は消費者が把握できない可能性があることから、代替肉の市

場浸透に際しては、使用される原材料の表示の明確化が課題となりうると考えられる。

さらに米国では「肉」という単語の使用を動物性食品に限定する動きがある。肉という

表示ができなくなると代替肉がマーケットに浸透しにくくなるとの指摘もある。

2.1.4 ルール形成の方向性の考察

代替肉のマーケットは世界的にも国内においても今後成長が見込まれ、食肉メーカー

も植物性蛋白質業界からも注目される市場でありながら、業界団体もないためルール形

成のうえで空白地帯となっている。代替肉は一般に動物性蛋白質の代替素材として植物

性蛋白質を使用しているものと考えられているが、実際には卵や乳を使用する商品もあ

る。今後の一般消費者の普及に伴い、そうした商品がさらに増えてくることが予想され

ることから、まずは代替肉の生産方法について定義が必要となる。 ヴィーガンやハラールなどへの対応表示を明確化すべきという意見や、惣菜などに加

工されると全体重量に占める割合が相対的に下位となり、原材料の大豆が遺伝子組み換

えか否かが判別できないとの指摘に対して、すべてを取り入れることは難しいものの、

使用する原材料によって、代替肉の中を純粋なヴィーガン対応のものから、動物性蛋白

質を含むものまでいくつかのカテゴリーに整理することが考えられる。これに既存のハ

ラール認証などの枠組みを個別商品ごとに適宜適応することにより、消費拡大に寄与す

るものと考えられる。

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ファインバブル

2.2.1 ファインバブル技術の概要

(1) ファインバブル産業における日本の位置

ファインバブルの産業応用は、1999 年に徳山工業高等専門学校の大成博文教授によ

ってカキ養殖の水質改善を目的として行われたのが最初といわれる。広島県江田島湾の

カキ養殖場でマイクロメートルサイズの泡を水中に発生させたところ、溶存酸素量が増

え、カキの生育促進にもつながった。その後北海道噴火湾のホタテ養殖や三重県英虞湾

の真珠養殖においても効果が確認されている。 ファインバブルの応用技術については、日本が世界に先駆けて発展を遂げている。そ

の理由として「日本の創意工夫の風土が数々の発生方式を生み出した。また、従来測定

ができないために技術開発の障害となっていたウルトラファインバブルの測定法を日

本が世界で初めて開発に成功したことから、現在は世界に普及する立場にある」(ファ

インバブル産業会ヒアリングより)といわれ、発生機械の製造のみならず、ウルトラフ

ァインバブル測定の面から業界のルール化整備に寄与した点が市場の主導的立場を築

いたと考えられる。

(2) ファインバブルの定義

ファインバブルは、気泡のサイズによりマイクロサイズのマイクロバブル(Micro -Bubble:MB)と、ナノサイズのウルトラファインバブル(Ultrafine-Bubble:UFB)に

分類される。 これらの泡は単に気泡が小さいだけでなく、日常生活で目にする数 mm 大の気泡(ミ

リバブル、センチバブルとも呼ばれる)と異なる特徴を有する。 具体的には帯電していて水中の不純物を吸着する浄化作用、弾けた時に生じる衝撃圧

力による殺菌作用、高い酸化状態を維持し有機物の汚れを分解する酸化作用、溶存酸素

が増えることにより水棲動植物を元気にする生理活性作用などが挙げられる。また、こ

れらを使って水質浄化技術(産業排水や水処理産業など)や洗浄技術(半導体や家庭用

品など)、殺菌(食品機械産業や医療産業など)等の分野で活用されている。

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ファインバブル(Fine-Bubble)

ミリバブル (Milli-Bubble)

ウルトラファインバブル (Ultrafine-Bubble)

マイクロバブル (Micro-Bubble)

泡の直径 数十 nm~1μm 未満※ 1μm~100μm 未満※ 100μm~

小さい 大きい

特徴

・水中に数週間~数ヶ月残

存 ・可視光の回析限界を超え

るため光学顕微鏡では

視認できない。

・水中の上昇速度が非常に遅

い ・大きな比表面積を持つため

高速溶解し、水面に達する

前に溶解しきる事もある。

すぐに上昇

類似する

物質 ウィルス(数十~100nm) スギ花粉(約 30μm) 通常の泡 (数 mm)

※気泡径 100μm(マイクロメートル)未満の泡が「ファインバブル」、気泡径 1μm未満の

泡が「ウルトラファインバブル」と定義。(規格: ISO 20480-1:2017 Fine bubble technology — General principles for usage and measurement of fine bubbles — Part 1: Terminology(ファイ

ンバブル技術 -ファインバブルの使用と計測に関する一般原則 -パート1 :用語)

(2017-06-22))

図 ファインバブルの定義

(3) ファインバブルの発生方式

マイクロバブルの代表的な発生方式は以下のとおりである。なおウルトラファインバ

ブルの発生方法はマイクロバブルを原料として製造される技術が現在主流とされ、旋回

液流式または加圧溶解式マイクロバブル製造法でマイクロバブル化する。その後マイク

ロバブルを急速収縮させつつ過剰なマイクロバブルを浮上分離させることにより,ウル

トラファインバブルを抽出する。

表 ファインバブル発生装置

発生方式 概要

旋回液流式

円筒状の発生器本体側面から接線方向にポンプを用いて液を高速で圧

入し,内部に高速旋回流を発生させる。この液回転運動に起因した圧力

降下を利用し,下端面の小孔より自吸されたガスは,上端面中央の小孔

でのせん断力により粉砕されマイクロバブルとなる。 ベンチュリー

管路断面積の縮小と拡大をもつ流路に高速で気泡を含んだ液を通過さ

せ,急激な圧力変化によって気泡を激しく崩壊させてマイクロバブルを

生成させる。

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微細孔式

微細孔膜面に沿った高速液流により、膜を通して液中に注入されたガス

をせん断してマイクロバブル化する。 スタティック

ミキサー式 機械的破砕操作を用いずに流路内の構造を複雑化し,主として渦流由来

の大きな粘性せん断力によって気体を破砕する。 加圧溶解式 気液混合物をポンプで加圧し,ガス成分を液中に過飽和まで溶解させ

る。未溶解気泡を分離し,過飽和液のみを減圧弁を経て常圧液中にフラ

ッシュさせ,マイクロバブルを析出させる。 加温析出法 低温液に予めガスを過飽和溶解させておき,加温しつつ適切な刺激を与

えてマイクロバブルを液中から析出させる。 混合蒸気直接

接触凝縮式 窒素など非凝縮性ガスを含んだ加圧水蒸気をノズルから冷却水中に噴

射させる。生成した蒸気泡は分散直後から急速冷却され凝縮するが,非

凝縮ガス成分のみ液化せずマイクロバブルとなる。 超音波キャビ

テーション式 液体に超音波を照射することにより蒸気または溶存ガスからなるマイ

クロバブルを発生させる。 電気分解式 水の電気分解により水素気泡と酸素気泡を電極から同時に発生させる。

最適操作条件に調整すると水素気泡はマイクロバブル化しやすい。

2.2.2 ファインバブルの活用例

(1) 農林漁業への活用

農業分野におけるファインバブルの活用は、野菜、果物、花き、水稲などに対してウ

ルトラファインバブルもしくは酸素ウルトラファンバブルと養液等を組み合わせて供

給し、農作物の成長促進を図る例がみられる。通常の水で育てたものと実績比較をする

と、養液土耕方式によるいちご高設栽培(酸素ウルトラファインバブル水供給)で総収

穫量が 24%増加、糖度が 0.9 度増加した例や、ミニトマトの水耕栽培(ウルトラファ

インバブル水供給)で収穫量が約 20%増加、糖度が約2度増加した例、また植物工場

におけるレタス水耕栽培(酸素ウルトラファインバブル水供給)で、重量が約 2.5 倍に

向上(播種後 50 日)した例などがある(出典:ファインバブル活用事例集 九州経済

産業局より)。 その他、ウルトラファンバブルの活用に伴う追加的な効果として、根部の成長促進や

根腐れ予防、バクテリア繁殖抑制効果などもあり、植物工場やハウス等で環境制御を行

っている場合や、高付加価値な商品作物の生産に特に大きなメリットが期待できる。ま

た酸素だけでなく二酸化炭素をファインバブル状にして魚が泳ぐいけすに放出すると、

二酸化炭素が魚に対して麻酔の役割を果たし、低活性化を促す効果が確認されている。

(詳細は活魚輸送技術参照。)

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(2) 食品産業への活用

酸化による生鮮食品の腐敗を防止するため、窒素を使用したファインバブルを使用す

ることにより鮮度を保持することが可能になる。また窒素は食品内に閉じ込めることで

口当たりがまろやかにすることが可能になる。 ナノバブルのもつ洗浄効果が最も発揮されるのは食品の洗浄・殺菌分野である。カッ

ト野菜などの洗浄では、マイクロバブル化したオゾン水が使用されている。 その他の活用分野とその代表的な活用例を以下に示す。

表 ファインバブルの活用分野

分野 活用例

環境 土壌浄化、地下水浄化、工業廃水処理、汚泥減容化、有害物分解、藻類除去、 凝集 SS2の浮上分離 など

農業 農畜産物の成長促進、農畜産物の収量増加、農畜産物の品質向上、鮮度保持、 液肥、生産管理(植物工場等) など

食品 鮮度保持、酸化防止、風味の付与、食感の付与、香りの付与 など

水産業 水産物の成長促進、水産物の収量増加、水産物の品質向上、養殖環境改善、 鮮度保持 など

洗浄 トイレ洗浄、生産ライン洗浄、塩害対策、配管汚れ除去、ガラス鱗状痕対策、 洗濯機、野菜・食品 など

産業 精密剥離、シリコンウエハー薄膜分離 など

美容 温泉(気泡風呂)、洗顔・頭皮洗浄、ナノテク化粧品、シャワーヘッド など

その他 医療、医薬品、船舶、製紙、日用品、エネルギー、水族館 など

出典: 経済産業省 九州経済産業局 『ファインバブル活用事例集』 2018

2 suspended solids の略。浮遊物質。

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A

基本規格

ファインバブル技術に関する

共通基本要素の規格

B

計測方法規格

ファインバブルの多面的特性を多様な計測手法で評価し、広範囲の産業分野で利用可能とする

ための規格

C

個別応用規格

特定の産業分野におけるファインバブル応用技術要件を規定する規格

ISO/TC 281Fine bubble technology

2.2.3 (一社)ファインバブル産業会による認証

(1) ファインバブル認証開始の経緯

これまではファインバブルやマイクロバブル、ウルトラファインバブルの定義や用語

が明確ではなく、気泡サイズ、気泡密度、また液体やガスの種類, 液中の滞在時間とい

った特性の国際標準がなかったため、利用者が共通の言語を持って開発を進めることが

できなかった。また、様々な計測方法が開発されてきているが、様々な特性の計測にお

ける条件や準備等も国際規格で明確にする必要があった。 技術開発と市場競争力向上を同時に行うことにより経済効果に結び付け、他の技術分

野でみられるような、欧米認証機関による世界市場独占を許さないという考えのもと、

技術開発と国際標準化及びグローバル認証の同時多発戦略を採用している。一般社団法

人ファインバブル産業会(FBIA)は、経済産業省支援をうけながら、2013 年に日本提

案で ISO/TC 2813を設立、ファインバブル技術の国際標準化を推進している。 グローバル社会で広く受け入れられるため、そもそもファインバブルの定義が明確で

なかったことから定義・用語規格や一般原則を上位に、様々な特性の計測方法の規格群

を中位に位置づけ、効果効能そして産業応用に関連する個別応用分野規格群を下位に位

置づけて新たな ISO 規格体系を構築することで世界中でのファインバブル技術の利用

と健全な市場創成を目指している。

図 ファインバブル技術の三層構造型国際規格体系

3 TC281 はファインバブル技術の専門委員会

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FBIA製品認証登録制度

製品サービス認証制度

製品サービス登録制度

製品サンプル性能認証制度(1a)

標準機指定制度

試験ラボ指定制度

ファインバブル性能試験ラボ

一般性能試験ラボ

製品サービス性能認証制度(1b)

製品サービス認証制度

ファインバブル技術を利用した製品・サービスのファインバブル性能及びその効果及び品質管理を、申請者が提出する証拠に基づいて審査し、登録マークを製品・サービスに付すことを承認する。

ファインバブル技術を利用した製品の特定のサンプルを指定試験ラボで試験し、その成績書及び試験条件を審査し、そのサンプルに認証マークを付すことを承認する。

ファインバブル技術を利用した製品・サービスの特定のサンプルを指定試験ラボで試験し、その成績書及び試験条件さらに品質管理を審査し、その製品に認証マークを付すことを承認する。

ファインバブル技術を利用した製品の製品規格に基づく試験結果及び品質管理の審査に基づき認証マークを付すことを承認する。計画中

ファインバブル技術を利用した製品・サービスのファインバブル特性(ファインバブルのサイズと個数濃度)をFBIA測定法規格の従って測定し指定マーク付きの成績書の発行を承認する。

ファインバブル技術を利用した製品・サービスの一般特性(ファインバブルのサイズと個数濃度以外)を測定し指定マーク付きの成績書の発行を承認する。計画中

ファインバブル性能及び一般性能の基準を発生する装置または、基準を提供する事業者を指定する。計画中

出典:一般社団法人ファインバブル産業会ホームページ

図 ファインバブル登録認証制度の構造

(2) ファインバブル認証の適用条件

ファインバブルのサイズと濃度については、ファインバブル産業会が確立した測定法

規格に基づき測定能力を認定した試験ラボ数社が、測定サービスを担当している。それ

に基づいて、各ファインバブル製品が正しくファインバブルを利用していることを認証

している。ファインバブルが生み出す製品の効果(例えば、洗浄など)については、製

品メーカーが効果を試験したデータの妥当性を審査し登録している。実験的根拠が存在

する効果であることを承認する。今後、効果についても規格を作り、認証へと進む計画

である。

(3) 認証取得商品に対する市場の評価

特にファインバブル洗濯機やファインバブルシャワーヘッド、ファインバブルバスな

どの消費者製品に認証取得マークが貼付されて、マークの有無が差別化の基礎となって

いる。現在海外企業の認証登録事例は無いが、2018 年度から認証登録依頼の問い合わ

せがあるものの、非会員には認証を与えてこなかったため、受け付けなかった経緯があ

る。(試験ラボへの測定依頼はあったので斡旋した。) 登録制度では多種類の性能についてマーク利用ができるので使い勝手がよく、国内で

は人気があると認識している。今後は東南アジアを中心に普及を進める計画をもってい

る。

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1,26010,976

44,300

126,700

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2010年 2015年 2020年 2030年

海外市場

(億円)

(4) 認証取得者拡大の取組と拡大にむけた課題など

これまではファインバブル産業会の会員限定の認証登録制度だったところを、非会員

にも適用できるようにしつつある。同一原理で、規模だけが異なる製品群や、製造ライ

ンは異なるが同種の製品なども一括して認証対象として扱えるような料金体系を検討

中であり、認証拡大を図っている。

2.2.4 市場規模や市場の動向

(一社)ファインバブル産業会の関連シンクタンクによる調査推計によると、世界

の市場規模は 2020 年で 4.4 兆円、2030 年には約 12.6 兆円にまで拡大する可能性が

あると推計されている。同様に国内市場においては 2020 年で 4,300 億円、2030 年

に 8,500 億円と見込まれている。

(出典)(一社)ファインバブル産業会 注)世界の水ビジネスの日本シェアを基準に国内ファインバブルビジネスボリュームから算出

図 海外のファインバブル市場規模予測

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200

1,351

4,300

8,500

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2010年 2015年 2020年 2030年

国内市場

(億円)

(出典)(一社)ファインバブル産業会

図 国内のファインバブル市場規模予測

2.2.5 ルール形成の方向性の考察

(一社)ファインバブル産業会が食品関連で与えた認証は、現在野菜類(トマト)の

成長促進の登録と、農業へのファインバブル効果試験サービスの登録の2件である。こ

の認証は製造設備に対する認証であり、製造設備を通じて作られた製品に対して与えら

れた認証ではない。すなわち、JAS 規格の拡大部分にあたる「モノの生産方法の規格」、

「事業者の取扱方法の規格」、「モノに関する試験方法の規格」に関してはファインバブ

ル認証と重複しうる可能性が高いと考えられるが、ファインバブルを活用して生産され

た「モノの品質の規格」についてはファインバブル認証が及ばず、JAS による規格化

の余地があるといえる。 もちろん生産に用いられるファインバブル設備は十分な性能を有したものであるこ

とが望ましいことから、当該認証に基づく設備となることが想定される。従って、ファ

インバブル認証を得た設備による生産を前提とし、モノに対する認証は JAS 認証を与

える補完関係の認証も考えられる。