2 決算の手続き -...

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2 決算の手続き 6 決算とは 1 決算とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 2 毎事業年度,作成しなければならない計算書類等 ・・・・・・・・・・・・46 3 決算の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 7 決算手続きで必要なこと 1 実査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 2 売上原価の計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 3 減価償却の計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 4 固定資産の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 5 費用・収益の見越しと繰延べ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58 6 貯蔵品残高の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 7 現金過不足の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 8 仮払金・仮受金の確認と精算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64 9 共通する費用の配賦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 8 具体的な事例 1 受取会費は未収計上するの? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66 2 スタッフの立替払いがある場合の会計処理は? ・・・・・・・・・・・・・67 3 電話代・電気代なども未払計上するの? ・・・・・・・・・・・・・・・・68 4 法人税と消費税の会計処理・表示方法はどのようにするの? ・・・・・・・69 5 未使用額の返還義務のある補助金等の会計処理はどのようにするの? ・・・72 6 後払いの補助金等の会計処理はどのようにするの? ・・・・・・・・・・・75 9 計算書類の注記 1 重要な会計方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 2 重要な会計方針を変更したとき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 3 事業別損益の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 4 施設の提供等の物的サービスの受入の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・80 5 ボランティアによる役務の提供の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・81 6 使途等が制約された寄付等の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82 7 固定資産の増減の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84 8 借入金の増減の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84 9 役員及びその近親者との取引の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・85 10 その他 NPO 法人の資産,負債及び正味財産の状況並びに 正味財産の増減の状況を明らかにするために必要な事項 ・・・・・・・・86 43

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Page 1: 2 決算の手続き - Fukuoka決算整理仕訳とは,日々行われる通常の仕訳とは別に,期末だけに必要となる特別 な仕訳のことをいいます。これで各勘定科目の期末の数字を確定させます。

2 決算の手続き

6 決算とは

1 決算とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

2 毎事業年度,作成しなければならない計算書類等 ・・・・・・・・・・・・46

3 決算の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47

7 決算手続きで必要なこと

1 実査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

2 売上原価の計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50

3 減価償却の計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

4 固定資産の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57

5 費用・収益の見越しと繰延べ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58

6 貯蔵品残高の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62

7 現金過不足の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62

8 仮払金・仮受金の確認と精算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64

9 共通する費用の配賦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65

8 具体的な事例

1 受取会費は未収計上するの? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66

2 スタッフの立替払いがある場合の会計処理は? ・・・・・・・・・・・・・67

3 電話代・電気代なども未払計上するの? ・・・・・・・・・・・・・・・・68

4 法人税と消費税の会計処理・表示方法はどのようにするの? ・・・・・・・69

5 未使用額の返還義務のある補助金等の会計処理はどのようにするの? ・・・72

6 後払いの補助金等の会計処理はどのようにするの? ・・・・・・・・・・・75

9 計算書類の注記

1 重要な会計方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77

2 重要な会計方針を変更したとき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77

3 事業別損益の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78

4 施設の提供等の物的サービスの受入の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・80

5 ボランティアによる役務の提供の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・81

6 使途等が制約された寄付等の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82

7 固定資産の増減の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84

8 借入金の増減の内訳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84

9 役員及びその近親者との取引の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・85

10 その他 NPO 法人の資産,負債及び正味財産の状況並びに

正味財産の増減の状況を明らかにするために必要な事項 ・・・・・・・・86

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10 決算書から分かること

1手元資金の把握 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88

2 財務安全性の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90

3 事業別収益の把握 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93

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第6章 決算とは

第6章 決算とは

1決算とは

決算とは,会計期間の 後に帳簿を締め切り,その時点での財政状態や,事業年度に

おける損益状況を明らかにする手続きのことをいいます。

決算において帳簿から直接作成できる書類は,貸借対照表と活動計算書です。さらに

財産目録や事業報告書についても,決算によって確定した会計数値を利用して作成され

ます。

事業報告書等は,定款の定めにより社員総会や理事会で承認を受け,会員に報告する

必要があります。また,所轄庁において,一般の人にも公開されます。さらに,法人税

の申告を行う法人は,社員総会等により承認された活動計算書に基づいて,損益計算書

を作成しなければなりません。

事業報告書等をきちんとした形で外部に公開するためには,提出期限(所轄庁には,

決算日から 3 か月以内)があるため,社員総会や理事会等の議案書作成期間・招集期間

などを考え,迅速かつ正確に決算手続きを完了させる必要があります。

参考 事業年度終了後の流れ

月 実務・手続き

決算月 決算日

速やかに 1 決算処理(活動計算書,貸借対照表,財産目録の作成)

2 監事による監査(定期総会の開催までに実施)

3 定期総会の開催

決算日+2 月以内 <資産の総額に変更があった場合>

1 資産の総額の変更登記 ⇒ 法務局

<収益事業を実施する法人>

1 法人税の確定申告書の提出 ⇒ 税務署

2 法人県民税・事業税の確定申告書の提出 ⇒ 県税事務所

3 法人市民税の確定申告書の提出 ⇒ 福岡市

<消費税の課税事業者となる法人>

1 消費税の確定申告書の提出 ⇒ 税務署

決算日+3 月以内 1 事業報告書等提出書の提出 ⇒ 福岡市

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第6章 決算とは

2毎事業年度,作成しなければならない計算書類等

活動計算書

各事業年度に発生した収益,費用及び損失を計上することにより,NPO法人のす

べての正味財産の増減の状況を明瞭に表示し,NPO法人の活動状況を表すものです。

法人の 1 年間の活動の全体像と正味財産の増減を見せることで,法人の規模や資金源

等を伝えることを目的としています。

貸借対照表

各事業年度末現在におけるすべての資産,負債及び正味財産の状況を明瞭に表示す

るものです。

計算書類の注記

計算書類(活動計算書と貸借対照表)を補足するもので,「計算書類と一体のもの」

という位置づけです。NPO法人においては情報公開が義務付けられていますので,

計算書類の利用者に対して,より一層の情報を提供することで,計算書類等の信頼性

をより高めるためのものです。NPO法人会計基準では、注記は必ず作成するものと

しています。

財産目録

各事業年度末現在におけるすべての資産及び負債につき,その名称,数量,価額等

を詳細に表示したものです。財産目録の価額は,貸借対照表記載の価額と同一となり

ます。

財産目録は,計算書類(活動計算書と貸借対照表)を補完する書類です。金額は貸

借対照表の価額と一致すべきですが,法人の財産の中には,金銭評価はできないけれ

ども法人の活動にとって非常に重要な財産といえるものがある場合があります。そう

いった場合に金額欄には「評価せず」と記載することで財産を表現することができま

す。預金等を記載する場合,口座番号の記載は不要です。

(P188 を参照してください。)

①活動計算書

計算書類

④財産目録

②貸借対照表

③注記

計算書類等

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第6章 決算とは

3決算の流れ

日常の取引

(1 毎月行う会計処理を参照ください。)

決算手続き

(1)実査(P49 を参照ください)

(2)決算整理前残高試算表の作成

決算では総勘定元帳を締め切って,勘定科目ごとに 1 年間の発生額を集計する必要

があります。また,現金出納帳や借入金台帳,固定資産台帳などを作成している場合

には,総勘定元帳と照合して残高が一致していることを確認します。

その後,総勘定元帳の各勘定科目の金額を試算表に集計して,金額に誤りがないか

チェックします。

(3)決算整理手続き

決算整理仕訳とは,日々行われる通常の仕訳とは別に,期末だけに必要となる特別

な仕訳のことをいいます。これで各勘定科目の期末の数字を確定させます。

①売上原価の計算

②減価償却費の計算

③固定資産の処理

④費用・収益の見越しと繰延べ

⑤貯蔵品残高の処理

⑥現金過不足の処理

⑦仮払金・仮受金の確認と精算

⑧共通する費用の配賦(日常の取引で行っていない場合)

STEP1

STEP2

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第6章 決算とは

(4)決算整理後残高試算表の作成

「決算整理前残高試算表」の金額に「決算整理仕訳」の金額を加減して,「決算整

理後残高試算表」欄を記入します。

借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方

現金 281,400 281,400 281,400

未収入金 3,000 3,000 3,000

仮払金 5,000 5,000

什器備品 100,000 30,000 70,000 70,000

短期借入金 70,000 70,000 70,000

正味財産 130,000 130,000 130,000

受取会費 415,000 5,000 410,000 410,000

○○○事業収益 95,392 95,392 95,392

☆☆☆事業収益 92,108 92,108 92,108

調査・提言事業収益 62,500 62,500 62,500

事業消耗品費 173,313 173,313 173,313

事業通信費 27,087 27,087 27,087

事業会場費 20,000 20,000 20,000

給与手当 220,000 20,000 240,000 240,000

旅費交通費 20,000 5,000 25,000 25,000

水道光熱費 15,000 3,000 18,000 18,000

現金過不足 200 200

小計 865,000 865,000

(決算整理)

未払金 23,000 23,000 23,000

前受金 5,000 5,000 5,000

減価償却費 30,000 30,000 30,000

雑損失 200 200 200

当期正味財産増減額 126,400 126,400

合計 63,200 63,200 888,000 888,000 354,400 354,400 660,000 660,000

活動計算書決算整理前残高試算表 決算整理仕訳 決算整理後残高試算表科目

貸借対照表

貸借対照表,活動計算書の作成

「貸借対照表」欄,「活動計算書」欄を「決算整理後残高試算表」欄の右欄に作成し,

決算整理後残高試算表の金額を振り分けて記入します。

精算表を作成したら,貸借対照表と活動計算書を作ります。各勘定科目の金額は,す

でに精算表によって集計されていますので,あとは書式にあわせて記入するだけです。

STEP3

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第7章 決算手続きで必要なこと

第7章 決算手続きで必要なこと

1実査

帳簿上の残高と,実際の財産に差異がないことを確認することです。

科目 実査の内容

現金 金庫等にある現金を確認する

預金 通帳預金残高や残高証明書を確認する

商品 期末の在庫の数量を確認し,破損・盗難の有無を点検し,棚卸表を作

成する

固定資産 固定資産台帳と,固定資産の現物の有無・数量を照合する

貯蔵品 事務用品(コピー用紙,名入封筒等),広告宣伝物(パンフレット等),

切手の数量を確認し,棚卸表を作成する

借入金 金融機関からの借入金は,借入金返済予定表や借入金残高証明書から

確認する。役員等からの借入金は,役員等に借入金残高を確認する

棚卸表の作成

決算日 平成○○年○○月○○日

区分 品名 数量 仕入単価(税込) 金額 備考

商品○○ 50 105 5,250

商品△△ 60 210 12,600

商品□□ 30 315 9,450

合計 140 27,300

名入封筒 1000 25 25,000

パンフレット 500 84 42,000

合計 1,500 67,000

商品

貯蔵品

棚 卸 表

※棚卸資産の評価方法には,個別法,先入先出法,総平均法等のいくつかの方法があ

ります。このうち も簡易な方法が, 終仕入原価法です。 終仕入原価法とは,期

末に も近い時に取得した 1 単位当たりの取得価額で,期末の棚卸資産を評価する方

法です。法人税の申告をする場合には,原則として 終仕入原価法により評価するこ

とになっています(法定評価方法)。

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第7章 決算手続きで必要なこと

2売上原価の計算

売上原価 販売用棚卸資産を販売したときの原価。期首の棚卸高に当期の仕入高を加

え,期末の棚卸高を控除した額。

経常収益に占める物品販売による事業収益の割合が大きい場合には,三分法による

会計処理が合理的ですが,経常収益に占める物品販売による事業収益の割合が小さい

場合には,売上原価対立法による会計処理が合理的です。

例題

NPO法人のロゴ入りTシャツを販売しています。期首の商品棚卸高は 500 円で,当

期にTシャツ(商品)を 1,000 円仕入れました。当期の売上は 1,500 円で,期末商品棚

卸高は 600 円です。

期首商品棚卸高 500 商品仕入高 1,000 期末商品棚卸高 600 ○○事業収益 1,500

期首商品棚卸高 + 当期仕入高 - 期末商品棚卸高 = 売上原価

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第7章 決算手続きで必要なこと

三分法による会計処理の場合

 仕入時の仕訳

(借)仕入(仕入高) 1,000 (貸)現金 1,000

 売上時の仕訳

(借)現金 1,500 (貸)事業収益 1,500

 決算時の仕訳

(借)仕入(期首商品棚卸高) 500 (貸)繰越商品 500

(借)繰越商品 600 (貸)仕入(期末商品棚卸高) 600

三分法による活動計算書の表示

 Ⅰ.経常収益

4.事業収益

○○事業収益 1,500

 Ⅱ.経常費用

1.事業費

(2)その他経費

  期首商品棚卸高 500

  当期商品仕入高 1,000

   合 計 1,500

  期末商品棚卸高 600

  売上原価 900

売上原価対立法による会計処理の場合

 仕入時の仕訳

(借)売上原価 1,000 (貸)現金 1,000

 売上時の仕訳

(借)現金 1,500 (貸)事業収益 1,500

 決算時の仕訳

(借)売上原価 500 (貸)商品 500

(借)商品 100 (貸)売上原価 100

売上原価対立法による活動計算書の表示

 Ⅰ.経常収益

4.事業収益

  事業収益 1,500

 Ⅱ.経常費用

1.事業費

(2)その他経費

  売上原価 900 (期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高)

※決算時に前期末の在庫を売上原価に振り替え,期末在庫を売上原価勘定から商品勘定に振り替えます。

○○事業収益

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第7章 決算手続きで必要なこと

3減価償却費の計算

NPO法人会計基準では,減価償却について次のように定めています。「貸借対照

表に計上した固定資産のうち,時の経過により価値が減少するものは,減価償却の方

法に基づき取得価額を減価償却費として各事業年度に配分しなければならない。」

固定資産の代表的なものには次のような資産があります。このうち,土地以外の資

産が減価償却資産です。土地については価値が減少しないという理由により,減価償

却を行いません。

固定資産の種類 資産の種類 例

有形固定資産 建物 事務所用,貸付用等

建物附属設備 電気設備,給排水設備,賃借している建物

にした造作工事等

車両運搬具 自動車,バイク等

什器備品 パソコン,机,本棚等

土地

無形固定資産 ソフトウェア レセプト請求用ソフト等

取得価額 購入した場合には購入金額,製作した場合には製作に要した材料費,労務

費等の合計額に,その資産を事業の用に供するために直接要した費用(引取運賃,設

置費用等)を加算した金額です。

減価償却 事業のために購入した車やパソコンは使用するごとに消耗し, 後には価

値がなくなります。この価値の減少分を,使用した各事業年度の費用にするのが減価

償却です。

減価償却費の計算方法 NPO法人会計基準では,減価償却の方法までは定めていま

せん。法律で減価償却の方法について定めているのは法人税法だけなので,ここでは

法人税法が規定する方法のうち,定額法と定率法について説明します。

法人税法では,固定資産の種類や内容に応じて耐用年数と,耐用年数ごとの定額法,

定率法の償却率を定めています。

法人税法の法定償却方法とは?

建物と無形固定資産は「定額法」を採用し,建物以外の有形減価償却資産は「定率法」※を

採用することになります。税務署に「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出をしていない

場合は、法定償却方法で計算することになります。

例えば、車両運搬具の法定償却方法は定率法ですので、定額法の選定を希望される場合は、

上記の届出書を税務署に提出する必要があります。

※平成28年度の税制改正により,平成28年4月1日以後に取得をされた建物附属設備及び構築物につい

ての償却方法は,定率法が廃止され「定額法」となりました。

コラム

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第7章 決算手続きで必要なこと

例題 介護デイサービスの送迎用車両100万円を購入しました。耐用年数は6年です。

定額法・・・毎事業年度の減価償却費は同額

[(取得価額)×(耐用年数に応ずる定額法の償却率)]×事業の用に供した当期の月数

12

車両運搬具 取得価額 100 万円,耐用年数 6 年(償却率 0.167)

【ポイント】

1.1 年目は使用期間に応じて月割り計算。(1 年目は 8 か月使用,定率法も同じ) 2.期末簿価=貸借対照表に計上する金額。資産を廃棄するまでは,1 円残す。(備忘

価額)

定率法・・・毎事業年度,減価償却費は減少

取得原価

-前期までの償却累計

×耐用年数に応ずる定率法の償却率

×事業の用に供した当期の月数

        12

取得価額 100 万円,耐用年数 6 年(償却率 0.333 改定償却率 0.334 償却保証額 100万円×0.09911=99,110 円)

【ポイント】

減価償却額が,償却保証額未満となったら,償却率→改定償却率に切り替える。

減価償却費 減価償却累計額 期末簿価1年目 1,000,000円×0.167×8/12=111,333円 111,333円 888,667円2年目 1,000,000円×0.167=167,000円 278,333円 721,667円3年目 1,000,000円×0.167=167,000円 445,333円 554,667円4年目 1,000,000円×0.167=167,000円 612,333円 387,667円5年目 1,000,000円×0.167=167,000円 779,333円 220,667円6年目 1,000,000円×0.167=167,000円 946,333円 53,667円7年目 53,666円 999,999円 1円

減価償却費 減価償却累計額 期末簿価1年目 1,000,000円×0.333×8/12=222,000円 222,000円 778,000円2年目 778,000円×0.333=259,074円 481,074円 518,926円3年目 518,926円×0.333=172,802円 653,876円 346,124円4年目 346,124円×0.333=115,259円 769,135円 230,865円

230,865円×0.333=76,878<1,000,000円×0.09911=99,110円230,865円×0.334=77,108円

6年目 230,865円×0.334=77,108円 923,351円 76,649円7年目 76,648円 999,999円 1円

5年目 846,243円 153,757円

まとめ

「定額法」では年々の償却額は同じですが,「定率法」

では 初の方が償却額が大きくて,だんだんと償却額が

小さくなります。

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第7章 決算手続きで必要なこと

Q 過去に固定資産を取得して貸借対照表に計上したまま一度も減価償却をしていな

い法人が,NPO法人会計基準の適用に伴い減価償却を行う場合,どのようにしたらよ

いのでしょうか?

原則 会計基準適用初年度に過年度の償却費をまとめて計上し,活動計算書の経常外費

用に「過年度損益修正損」として表示します。ただし,「過年度損益修正損」に該当す

る費用が減価償却費のみの場合は,「過年度減価償却費」として表示することも可能で

す。

例)5 年目にNPO法人会計基準を適用した場合(1 年目は 8 か月使用)

5 年目に過年度分の償却費合計 612,333 円を経常外費用の「過年度減価償却費」として

計上します。さらに当期分の償却費として,167,000 円を,経常費用の「事業費」と「管

理費」に按分して計上します。

特例 過年度分の減価償却費を一括して計上せず,会計基準適用初年度から減価償却を

開始することも可能です。ただし,この場合に適用する耐用年数は,新規に取得した場

合の耐用年数から経過年数を控除した年数とし,その旨を重要な会計方針として注記し

ます。

耐用年数 6 年-4 年(経過年数)=2 年(定額法 償却率 0.500) 当期の減価償却

費 1,000,000 円×0.500=500,000 円

計算書類の注記

重要な会計方針

(1)固定資産の減価償却の方法

有形固定資産は,法人税法の規定に基づいて定額法で償却をしています。これま

で減価償却を行っていない有形固定資産につきましては,当事業年度より期首の帳

簿価額を取得価額とみなし,以後継続的に減価償却します。その場合の耐用年数は,

新規に取得した場合の耐用年数から経過年数を控除した年数を用いています。

個々の固定資産の耐用年数や減価償却の方法については,会計相談会などを利用して専

門家に一度ご相談されることをおすすめします。

減価償却費 減価償却累計額 期末簿価1年目 1,000,000円×0.167×8/12=111,333円 111,333円 888,667円2年目 1,000,000円×0.167=167,000円 278,333円 721,667円3年目 1,000,000円×0.167=167,000円 445,333円 554,667円4年目 1,000,000円×0.167=167,000円 612,333円 387,667円5年目 1,000,000円×0.167=167,000円 779,333円 220,667円6年目 1,000,000円×0.167=167,000円 946,333円 53,667円7年目 53,666円 999,999円 1円

過年度減価償却費 合計 612,333 円

54

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第7章 決算手続きで必要なこと

参考

耐用年数表:一例です。実際の処理を行う場合は,国税庁のホームページ

(http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/houji312.htm)などを参照してください。

種類 構造 耐用年数

50年

47年

24年

22年

20年

15年

電気・照明設備 15年

15年

13年

15年

8年

可動間仕切り 3年

3年

4年

4年

6年

金属製 15年

その他 8年

接客業 5年

その他 8年

6年

4年

5年

ソフトウェア 5年購入ソフトウェア(販売用除く)

建物(土地の上に建てられた建築物)

建物附属設備(建物本体に固定されて付属しているもので,建物の維持管理上必要なもの)

車両運搬具(人や物を運ぶことを主たる目的とするもの)

什器備品(一定金額以上の備品等で,耐用年数が1年超のもの)

小型車(総排気量0.66㍑以下)

その他(貨物車等除く)

事務机・事務いす・キャビネット

応接セット

冷暖房機器・電気冷蔵庫

パソコン(サーバー用除く)

その他

家具・電気機器・ガス機器・家庭用品

事務所・美術館

寄宿舎・宿泊所・学校・体育館

事務所・美術館

複写機・FAX事務機器・通信機器

店舗・寄宿舎・宿泊所・学校・体育館

飲食店・貸席・劇場

工場・作業場・倉庫

蓄電池電源設備以外

冷暖房設備(冷凍機の出力が22kw以下)

運送業・貸自動車業

木造

冷暖房・通風・ボイラー設備 その他

簡易なパーテーション

小型車(積載量2t以下,総排気量2㍑以下)

その他(総排気量3㍑以上除く)

細目

給排水・衛生・ガス設備

消火・排煙・災害報知・格納式避難設備

鉄骨・鉄筋コンクリート

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第7章 決算手続きで必要なこと

参考

減価償却資産の償却率,改定償却率及び補償率の表: 実際の処理を行う場合は,

国税庁のホームページ(http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/houji312.htm)を参

照してください。

平成 24 年 4 月 1日以降取得分(取得日により償却率が変わるので注意してください。)

償却率 改定償却率 保証率2 0.500 1.000 ― ―3 0.334 0.667 1.000 0.110894 0.250 0.500 1.000 0.124995 0.200 0.400 0.500 0.10800

6 0.167 0.333 0.334 0.099117 0.143 0.286 0.334 0.086808 0.125 0.250 0.334 0.079099 0.112 0.222 0.250 0.0712610 0.100 0.200 0.250 0.0655211 0.091 0.182 0.200 0.0599212 0.084 0.167 0.200 0.0556613 0.077 0.154 0.167 0.0518014 0.072 0.143 0.167 0.0485415 0.067 0.133 0.143 0.0456516 0.063 0.125 0.143 0.0429417 0.059 0.118 0.125 0.0403818 0.056 0.111 0.112 0.0388419 0.053 0.105 0.112 0.0369320 0.050 0.100 0.112 0.0348621 0.048 0.095 0.100 0.0333522 0.046 0.091 0.100 0.0318223 0.044 0.087 0.091 0.0305224 0.042 0.083 0.084 0.0296925 0.040 0.080 0.084 0.0284126 0.039 0.077 0.084 0.0271627 0.038 0.074 0.077 0.0262428 0.036 0.071 0.072 0.0256829 0.035 0.069 0.072 0.0246330 0.034 0.067 0.072 0.0236631 0.033 0.065 0.067 0.0228632 0.032 0.063 0.067 0.0221633 0.031 0.061 0.063 0.0216134 0.030 0.059 0.063 0.0209735 0.029 0.057 0.059 0.0205136 0.028 0.056 0.059 0.0197437 0.028 0.054 0.056 0.0195038 0.027 0.053 0.056 0.0188239 0.026 0.051 0.053 0.0186040 0.025 0.050 0.053 0.0179141 0.025 0.049 0.050 0.0174142 0.024 0.048 0.050 0.0169443 0.024 0.047 0.048 0.0166444 0.023 0.045 0.046 0.0166445 0.023 0.044 0.046 0.0163446 0.022 0.043 0.044 0.0160147 0.022 0.043 0.044 0.0153248 0.021 0.042 0.044 0.0149949 0.021 0.041 0.042 0.0147550 0.020 0.040 0.042 0.01440

定率法定額法償却率耐用年数

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第7章 決算手続きで必要なこと

4固定資産の処理

固定資産について実査をした結果,帳簿(総勘定元帳及び固定資産台帳)と実際の

固定資産の状況に食い違いがある場合には,実状に合わせて帳簿を修正する必要があ

ります。

除却 除却とは,固定資産が事業の用途から取り除かれることをいいます。

例)固定資産の実査を行ったところ,ノートパソコンが固定資産台帳よりも 1 台少

なかった。調査したところ,故障で廃棄したが,帳簿上は未処理であったことが判

明。ノートパソコンの取得価額は 150,000 円。減価償却累計額は 110,280 円。 帳簿価額 39,720 円 = 取得価額 150,000 円 - 減価償却累計額 110,280 円

直接法で減価償却を行っている場合

借方 金額 貸方 金額 摘要

固定資産除却損 39,720 什器備品 39,720 ノートパソコン廃棄

売却 固定資産を売却したときは,売却時点の帳簿価額と売却価額を比べて,売却損

益を求め,固定資産売却益または固定資産売却損を計上します。

売却時点の帳簿価額は次のように計算します。

期首に売却した場合 売却時点の帳簿価額=期首帳簿価額

期中に売却した場合 売却時点の帳簿価額= 期首帳簿価額-期首から売却月までの減価償却費

期末に売却した場合 売却時点の帳簿価額=期末帳簿価額

例)介護デイサービスの送迎用車両を 100 万円で取得した法人が,5 年目に売却し

ました。定率法で減価償却をしており,売却時の帳簿価額は 153,757 円,直接法で

減価償却を行っています。(P53 参照) ①200,000 円で売却した場合

借方 金額 貸方 金額 摘要

現金

200,000 車両運搬具

固定資産売却益 153,757

46,243

車両○○○を売却

②100,000 円で売却した場合

借方 金額 貸方 金額 摘要

現金 固定資産売却損

100,000 53,757

車両運搬具

153,757

車両○○○を売却

売却価額 - 売却時点の帳簿価額 = (+)固定資産売却益 (-)固定資産売却損

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第7章 決算手続きで必要なこと

5費用・収益の見越しと繰延べ

現金主義と発生主義

現金主義とは,実際に物を買ったり,サービスを受けた日とは関係なく,「お金を

支払った日」を費用が生じた日と考えます。また,実際に物を売ったり,サービスを

提供した日に関係なく,「お金を受け取った日」を収益が生じた日と考えます。現金

主義を採用する場合には,未払金や未収金は発生しません。

発生主義とは,お金を支払った日とは関係なく,「実際に物を買ったり,サービス

を受けた日」を費用が生じた日と考えます。また,お金を受け取った日とは関係なく,

「実際に物を売ったり,サービスを提供した日」を収益が生じた日と考えます。

一事業年度の収益と費用を正確に算定するためには,この発生主義の考え方を理解

する必要があります。

クイズの答えは P189

クイズ1 12 月決算の法人です。

介護保険事業を行い,平成 25 年 12 月に 100 万円請求しました。国保連から

の支払は翌年 2 月です。この事業収益 100 万円は,何年度の収益になります

か?

国保連

(12月請求分)

100万円

NPO法人 国保連

クイズ2 12 月決算の法人です。

平成 26 年 1 月に開催するセミナーの会場賃借料 5 万円を 12 月に支払ました。

この賃借料 5 万円は,何年度の費用になりますか?

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第7章 決算手続きで必要なこと

費用・収益の見越し 当期分の費用・収益となるべきもので,期末までに支払・入金

が終わっていないものについて,当期の費用・収益として計上します。

未収金 物品の売却やサービスの提供をしたことにより,代金を受け取る権利が発生

するため,資産として計上します。

例えば,物品を掛けで販売した,国民健康保険団体連合会からの介護報酬の支払い

や,障害者総合支援法に基づく給付(サービス提供月の2か月後に振り込まれる)な

例)3 月決算の法人が,3 月に福岡市からの委託で講座を開催し,その委託料 30万円が 4 月になってから入金される場合 ①委託事業を実施した事業年度

決算時

借方 金額 貸方 金額 摘要

未収金 300,000 事業収益 300,000 博多区○○講座受託料

②入金された事業年度 入金時 預金出納帳

日付 科目 摘要 収入 支出 残高

4/30 未収金 博多区○○講座受講料 300,000 800,000

未収金 30 万円が回収された

代金は来月支

払います売主 買主

備品

10万円

未収金 未払金

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第7章 決算手続きで必要なこと

未払金 物品の購入やサービスの提供を受けたことにより,代金を支払う義務が発生

するため,負債として計上します。

例えば,翌月払いの給料手当,水道光熱費など

例)3 月決算の法人の主催する講座が 3 月に実施されたが,会場費 15 万円は 4 月

に支払った場合 ①講座を実施した事業年度

決算時

借方 金額 貸方 金額 摘要

賃貸料 150,000 未払金 150,000 中央会館○○講座会場費

②会場費を支払った事業年度 支払時 現金出納帳

日付 科目 摘要 収入 支出 残高

4/30 未払金 中央会館○○講座会場費 150,000 650,000

未払金 15 万円が支払われた

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第7章 決算手続きで必要なこと

費用・収益の繰延べ 翌期分の費用・収益となるべきもので,期末までに支払・入金

が終わっているものについて,翌期の費用・収益として繰り越します。

前払金 代金を支払い,後日商品やサービスを受け取る権利が発生するため,資産と

して計上します。 例)3 月決算の法人が,4 月に主催する講座の会場費 15 万円を 3 月に支払った場

合 ①会場費を支払った事業年度 決算時

借方 金額 貸方 金額 摘要

前払金 150,000 賃借料 150,000 中央会館○○講座会場費

②翌事業年度

期首

借方 金額 貸方 金額 摘要

賃借料 150,000 前払金 150,000 中央会館○○講座会場費

前受金 代金を受け取り,後日商品やサービスを引き渡す義務が発生するため,負債

として計上します。 例)3 月決算の法人が,4 月に主催する講座の受講料 30 万円を 3 月に受け取った

場合 ①セミナー受講料を前受けした事業年度

借方 金額 貸方 金額 摘要

事業収益 300,000 前受金 300,000 4月実施分セミナー受講料

②翌事業年度 期首

借方 金額 貸方 金額 摘要

前受金 300,000 事業収益 300,000 4月実施分セミナー受講料

チケット代

3,000円

買主 売主セミナーは

来月開催します

前受金前払金

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第7章 決算手続きで必要なこと

6貯蔵品残高の処理

コピー用紙等の事務用品,パンフレット等の広告宣伝物などは,購入時にいったん全

額を費用計上し,期末に実査により期末数量を確認します。期末数量を貯蔵品勘定(資

産)に振り替え,当期の費用から取り除きます。

(1)5 月 1 日,広告宣伝物(パンフレット)1,000 部を 10 万円で作成し,現金で支払っ

た。パンフレットの単価は,100,000 円/1,000 部=@100 円

借方 金額 貸方 金額 摘要

広告宣伝費 100,000 現金 100,000 (株)○○印刷 パンフレット 1,000 部作成

(2)3 月 31 日,決算となり実査により数量を確認したところ,450 部あった。

借方 金額 貸方 金額 摘要

貯蔵品 45,000 広告宣伝費 45,000 (株)○○印刷 パンフレット期末残 450 部

7現金過不足の処理

現金が帳簿残高より不足している場合

処理1 5 月 28 日,現金の実際有高を調べたところ 10,000 円で,帳簿残高 11,500円より 1,500 円不足していることがわかった。

借方 金額 貸方 金額

現金過不足 1,500 現金 1,500

処理2(期中に原因が分かった時)

5 月 31 日,通信費 1,500 円の記帳漏れであることが判明。

借方 金額 貸方 金額

通信費 1,500 現金過不足 1,500

処理3(期末まで原因が分からなかった時)

3 月 31 日,決算となり現金過不足勘定の借方残高 1,500 円を雑損失として処理。

借方 金額 貸方 金額

雑損失 1,500 現金過不足 1,500

帳簿 (調整) 実際有高

11,500 円 - 1,500 円 =10,000 円

× ○ 必ず,実際有高に

帳簿を合わせます!

5 月 28 日

3 月 31 日

5 月 31 日

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第7章 決算手続きで必要なこと

現金が帳簿残高より多い場合

処理4 8 月 12 日,現金の実際有高を調べたところ 10,000 円で,帳簿残高 9,000 円

より 1,000 円多いことがわかった。

借方 金額 貸方 金額

現金 1,000 現金過不足 1,000

処理5(期中に原因が分かった時)

8 月 31 日,Tシャツ販売による事業収益 1,000 円の記帳漏れであることが判明。

借方 金額 貸方 金額

現金過不足 1,000 ○○事業収益 1,000

処理6(期末まで原因が分からなかった時)

3 月 31 日,決算となり現金過不足勘定の貸方残高 1,000 円を雑収益として処理。

借方 金額 貸方 金額

現金過不足 1,000 雑収益 1,000

通常,現金過不足勘定は一事業年度のうちに,借方(処理1),貸方(処理4)の

両方に発生するので, 後に決算整理で相殺しその差額を雑損失(現金の不足額の方

が多いとき)又は,雑収益(現金の余剰額の方が多いとき)として処理します。

帳簿 (調整) 実際有高

9,000 円 + 1,000 円 =10,000

× ○必ず,実際有高に

帳簿を合わせます!

8 月 12 日

3 月 31 日

8 月 31 日

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第7章 決算手続きで必要なこと

8仮払金・仮受金の確認と精算

仮払金と仮受金は,後日正しい勘定科目にする,一時的な勘定です。正しい勘定科目

や金額が判明したときにその都度,修正します。やむを得ない場合を除き,仮払金・仮

受金は翌期に持ち越さず,期末までに精算するのが原則です。

仮払金 現金などを支払ったが,記入すべき勘定科目または金額が未確定な時

仮受金 現金などを受け取ったが,記入すべき勘定科目または金額が未確定な時

例)3 月 8 日,イベント準備費用として,現金 10,000 円を前渡しした。 (P29 の事例)

借方 金額 貸方 金額 摘要

仮払金 10,000 現金 10,000 イベント準備費用

3月31日,決算となりイベント準備費用が未精算であることが判明した。消耗品5,000円,旅費交通費 1,500 円の領収書とともに,現金 3,500 円の返還を受けた。

借方 金額 貸方 金額 摘要

現金 消耗品費 旅費交通費

3,5005,0001,500

仮払金 10,000 イベント準備費用精

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第7章 決算手続きで必要なこと

9共通する費用の配賦はいふ

(P17~22 を参照してください)

事務所家賃,水道光熱費,通信費,コピー機のリース料等のように,事業費か管理

費か,明確に区分しにくい費用(共通費用)について,按分計算をして費用を事業ご

とに割り振る作業をします。

① 共通する費用を把握する

② 分ける(按分あんぶん

する)ための基準を決める

③ 決めた基準に従って計算する

例1) 事務所占有面積の割合で計算する (全面積100㎡)

「配食サービス」と「デイサービス」を行い,法人事務も同じ場所で行っている場合

事業費 管理費

科 目 1ヶ月の金額

(共通経費)

配食サービス

60㎡(×60%)

デイサービス

35㎡(×35%)

本部事務所

5㎡(×5%)

地代家賃 300,000円 180,000円 105,000円 15,000円

水道光熱費 30,000円 18,000円 10,500円 1,500円

火災保険料 15,000円 9,000円 5,250円 750円

内装工事減価償却費 20,000円 12,000円 7,000円 1,000円

合計 365,000円 219,000円 127,750円 18,250円

例2) 活動量等の割合で計算する (週5日勤務)

「犬のしつけ教室」と「里親探し活動」を実施している法人の会計担当Bさんは,それ

ぞれの助成金への報告と会計処理,および法人全体の会計処理も行っている

事業費 管理費

科 目 支出額(月額)

(共通経費)

犬のしつけ教室

週2日(×40%)

里親探し

週1日(×20%)

本部事務

週2日(×40%)

Bさんの給料 200,000円 80,000円 40,000円 80,000円

Bさん社会保険料 20,000円 8,000円 4,000円 8,000円

Bさん通勤交通費 3,000円 1,200円 600円 1,200円

合計 223,000円 89,200円 44,600円 89,200円

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第8章 具体的な事例

第8章 具体的な事例

1受取会費は未収計上するの?

答え

会費として扱われるものは,次の 3 つに分けられます。

①社員(正会員)たる地位にある者が会を成り立たせるため負担すべきもの(正

会員受取会費など) ②支出する側に任意性があり,直接の反対給付がない経済的利益の供与としての

寄付金の性格を持つもの(賛助会費など)

実際に,入金された時点で収益に計上するため,未収計上はしない。

③サービス利用の対価としての性格を持つもの(○○利用会員受取会費など)

解説

NPO法人会計基準では,「受取会費は,確実に入金されることが明らかな場合

を除き,実際に入金したときに収益として計上する。」としています。①と②のよ

うな会費は,回収可能性の観点から確実に入金されることが明らかな場合を除き,

実際に入金された時点で収益として計上します。 また,NPO法人会計基準では,「棚卸資産の販売又はサービスを提供して対価

を得る場合,販売又はサービスを提供したときに収益として計上し,対価の額をも

って収益の額とする」としています。したがって,③のような会費は入金時ではな

く,サービスを提供した時点で事業収益に計上します。 ※「確実に入金されることが明らかな場合」とは,決算日以後,決算作業中に会費

を受け取ったような場合を指します。

サービスを提供した時点で事業収益に計上するため,期末までに回

収できていない場合は未収計上する。

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第8章 具体的な事例

2スタッフの立替払いがある場合の会計処理は?

答え

立替払いは,随時精算するようにしますが,期末に立替払いが残っている場合には,

スタッフに対する「未払金」になりますので,決算でスタッフが立て替えた経費を活

動計算書に計上するとともに,貸借対照表に「未払金」を計上します。翌事業年度に,

スタッフと精算したときには,現金出納帳の出金欄に「未払金」と記帳します。

解説

スタッフが経費の立替払いをしていて,決算までに精算できない場合があります。

この場合に,現金出納帳や預金出納帳を集計しただけでは,スタッフが立て替えた経

費が,活動計算書に計上されないことになってしまいます。 しばしば見受けられるのは,スタッフが立て替えた経費の領収書の日付に遡って現

金から支払ったように記帳するケースです。 例えば,領収書の日付が 3 月 20 日になっていたら,書き直して 3 月 20 日に出金

したように,現金出納帳に記帳しているような場合があります。 しかし,このようなやり方ですと,古い領収書が見つかると,そのたびに現金残高

が違ってきてしまい,現金の残高が実態をまったく表さなくなってしまいます。

次のように決算で「未払金」を計上します。 例)会場の賃借料 3 万円をスタッフが立替払いをし,決算までに精算しなかった。

・賃借料(事業費)3 万円→活動計算書に計上 ・未払金(スタッフ)3 万円→貸借対照表に計上 決算時

借方 金額 貸方 金額 摘要

賃借料 30,000 未払金 30,000 スタッフAさん○○講座会場費

精算時 現金出納帳または預金出納帳に次のように「未払金」と計上します。

日付 科目 摘要 収入 支出 残高

4/30 未払金 スタッフAさん精算分 30,000 50,000

67

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第8章 具体的な事例

3電話代・電気代なども未払計上するの?

答え

電話代や電気代,水道代,ガス代などは,通常後払いなので未払計上するのが正し

い会計処理ですが,毎月発生するものなので,未払計上をせずに,支払時に費用とし

て計上しても問題ありません。

解説

NPO法人会計基準第 16 項では,「電話代,電気代,家賃等定期的に支払う費用は,

実際に支払った時に費用として計上することができる。」としています。 「定期的に支払う費用」は,電話代,電気代や家賃のほかにガス代,水道代,新聞

などの購読料,機器のリース料,他団体への会費,給料などいろいろなものが考えら

れます。これらを「実際に支払ったときに費用として計上する」というのは,費用と

期間の対応をどれくらい厳密に考えるかによります。 例えば,電話代の場合でも考え方は同じです。2 月分の電話代を 3 月 15 日に支払

い,3 月 31 日の決算を迎えたとき,3 月分の電話代は厳密にいえば未払いです。で

すが,前年の 3 月分を 4 月に支払っているはずですから,1 年を通して考えれば,支

払ったときに費用に計上しても,実質的には大きな違いはないはずです。 また,3 月 31 日決算日の法人が 4 月分の家賃を 3 月 20 日に支払った場合,厳密に

言えばこれは来年度の費用なので,3 月の決算では前払金にしておくべきだという考

え方もあります。しかし,家賃は毎月 1 回支払って,12 回で 1 年分なので,支払っ

たときに費用に計上することにしても毎年同じ処理をするのであれば,1 年分の金額

は変わりません。

重要性の原則

NPO法人会計基準第 7 項では,「重要性の乏しいものについては,より簡便な方

法を用いて処理することができることを原則とした上で,重要性の高いものはより厳

密な処理をする」としています。

一般に重要性の原則には,「質的重要性」と「量的重要性」があると言われていま

す。「質的重要性」とは,金額の大きさに関係なく,活動等を示す上で重要であるか

どうかを意味します。つまり,いくら金額的に少額であっても,その科目及び内容が

NPO法人の活動を表すのに欠かせないものである場合には,厳密で詳細な報告が求

められます。事業収益や人件費や借入金などは,一般に「重要な」科目とされていま

す。金額面だけで判断するのではないことに注意してください。重要か否かの判断は,

NPO法人自らが行うことになります。

コラム

68

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第8章 具体的な事例

4法人税と消費税の会計処理・表示方法はどのようにするの?

答え

(1)会計処理の方法 NPO法人でも,法人税法上の収益事業を行っている場合には,法人税,法人県民

税,法人市民税,法人事業税(以下「法人税等」とします)の納付が必要です。この

とき,収益事業の利益が出ていない場合であっても,法人県民税,法人市民税の均等

割は納付します。 法人税等は,その事業年度の収益事業の所得金額に対して課税され,納付は,その

事業年度終了後 2 か月以内に行います。未払計上するのが正しい会計処理ですが,毎

事業年度,均等割のみ納付する場合は,未払計上をせずに,実際に納付した事業年度

に「法人税,住民税及び事業税」あるいは「租税公課」などの勘定科目で計上するこ

ともできます。

未払計上する場合 決算のときに振替伝票で,次のような仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額

法人税,住民税及び事

業税

300,000 未払法人税等 300,000

(2)表示方法 活動計算書の末尾に次のように記載します。

経常費用計 税引前当期正味財産増減額

法人税,住民税及び事業税 当期正味財産増減額

前期正味財産増減額 次期正味財産増減額

9,410,000

560,000300,000

260,0003,260,000

3,520,000

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第8章 具体的な事例

解説

(1)会計処理の方法 未払計上する場合 法人税等は,その事業年度の収益事業の所得金額に対して課税さ

れ,その事業年度終了後 2 か月以内に納付します。例えば,今期の収益事業の所得金

額が 100 万円で,法人税等が 30 万円の場合に,実際に法人税等を納付するのは,次

の事業年度になります。 しかし,この法人税等の 30 万円は,あくまでも今期の活動計算書に計上されてい

る事業収益などがもとになって課税されるものですから,今期の活動計算書に計上さ

れるべきです。 このような場合には,決算のときに振替伝票で,次のような仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額

法人税,住民税及び事

業税

300,000 未払法人税等 300,000

未払計上しない場合 NPO法人の中には,法人税法上の収益事業は行っていても,

収益事業の所得金額は赤字で,法人県民税と法人市民税の均等割(福岡県と福岡市の

場合,合わせて 71,000 円)だけ納付しているという法人も多いと思います。 このような場合は,未払計上をせずに,実際に納付した事業年度に「法人税,住民

税及び事業税」あるいは「租税公課」などの勘定科目で計上することもできます。

(2)活動計算書への表示方法 「法人税,住民税及び事業税」や「租税公課」は,活動計算書ではどのように表示

されるのでしょうか? 均等割の 71,000 円だけのような場合であれば,「租税公課」として事業費または管

理費に計上しても問題はありません。しかし,前述のように,法人税等が 30 万円も

生じるような場合には,活動計算書の末尾に「税引前当期正味財産増減額」から「法

人税,住民税及び事業税」を差し引いて,「当期正味財産増減額」を表示します。 *P177,181,184 を参照ください。

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第8章 具体的な事例

(3)消費税の会計処理(P133~143 を参照ください)

消費税の処理方法には,「税込経理」と「税抜経理」があります。

消費税の申告義務がない法人は,税込経理になります。消費税の申告義務がある法

人は,税込処理と税抜処理のいずれかを選択します。

税込経理による場合,決算整理仕訳で,消費税の納付予定額を「租税公課」,負債

として「未払消費税」を計上します。

税抜経理による場合,「仮受消費税」と「仮払消費税」を相殺して,「未払消費税」

又は「未収消費税」を計上します。

例) ①商品○○を税込価額 10,500 円で仕入れ,代金を現金で支払った。 ②商品△△を税込価額 31,500 円で販売し,代金は現金で受け取った。 ③決算時 ④確定申告を行い,消費税を現金で納付した。 (消費税率は全て 5%,説明用に金額を少額にしています。)

税込経理

税抜経理

※実務上は,税抜経理は会計ソフトを利用しないと難しいため,税込経理をおすすめ

します。

貸方 金額 貸方 金額

① 売上原価 10,500 現金 10,500

② 現金 31,500 事業収益 31,500

③ 租税公課 1,000 未払消費税 1,000

④ 未払消費税 1,000 現金 1,000

貸方 金額 貸方 金額

① 売上原価 仮払消費税

10,000 500

現金 10,500

② 現金 31,500 事業収益 仮受消費税

30,000 1,500

③ 仮受消費税 1,500 仮払消費税 未払消費税

500 1,000

④ 未払消費税 1,000 現金 1,000

税込経理 : 消費税額を収益や費用の金額に含めて仕訳を行う方法

税抜経理 : 収益や費用の金額と消費税額を区別して仕訳を行う方法

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第8章 具体的な事例

5未使用額の返還義務のある補助金等の会計処理はどのようにする

の?

答え

(未使用額の返還義務があり,対象事業の途中で決算を迎えた場合)

NPO法人会計基準では,助成金や補助金で,未使用額の返還義務が課されている

場合(使い切らない場合には返還しなければならない)には,未使用額を負債として

計上します。 つまり,交付要綱等に従った支出に対応する部分については,受取助成金として処

理しますが,未使用額については,前受助成金として負債に計上し,翌期に繰り越す

ことになります。

解説

例)12 月決算のNPO法人が,ある助成財団から,○○事業を 4 月 1 日から翌年 3月 31 日までの期間に実施することを目的として助成金 1,000 万円の交付を受けまし

た。決算の段階では当該事業に係る費用として 600 万円を計上しています。 もし,決算でなにも経理しなかった場合は,次のようになります。

助成金等を受け取った事業年度 翌事業年度

NPO法人会計基準での会計処理方法 ①助成金を受け取った事業年度 決算のときに,まだ実施していない事業に係る助成金について,次のような仕訳を

行います。まだ実施していない事業に係る助成金は,「前受助成金」として貸借対照

表の負債の部に計上します。

借方 金額 貸方 金額

助成金入金時 現金預金 10,000,000 受取助成金 10,000,000

期中処理 ○○事業費 6,000,000 現金預金 6,000,000

期末処理 受取助成金 4,000,000 前受助成金 4,000,000

その結果,活動計算書に計上する「受取助成金」は 600 万円(1,000 万-400 万)

となります。

経常収益 受取助成金 1,000 万円 経常費用 ○○費 600 万円

経常収益 受取助成金 0 円 経常費用 ○○費 400 万円

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第8章 具体的な事例

②未使用額の返還義務が課されている助成金等を受け取った事業年度 活動計算書

科目 金額

Ⅰ経常収益 1.受取会費 2.受取寄付金 3.受取助成金等 受取助成金 ………… Ⅱ経常費用 1.人件費 …………

2.その他経費 ………… …………

6,000,000 2,000,000 4,000,000

貸借対照表

Ⅰ資産の部 1.流動資産

………… 2.固定資産 …………

Ⅱ負債の部 1.流動負債 前受助成金 4,000,000

………… Ⅲ正味財産の部

③翌事業年度

事業の実施に伴い活動計算書に事業費を計上します。前期,貸借対照表に計上した

「前受助成金」を決算で「受取助成金」に振り替えます。

借方 金額 貸方 金額 摘要

○○事業費 4,000,000 現金預金 4,000,000

前受助成金 4,000,000 受取助成金 4,000,000 1月以降実施対応分

交付要綱等に従った支出に対応する

部分を「受取助成金」として収益に

計上する。

受け取った助成金等のうち,まだ

使用していない部分については

「前受助成金」として負債に計上

する。

73

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第8章 具体的な事例

また,助成金,補助金は,「使途等が制約された寄付等」に該当しますので,次のよ

うな注記を行います。

計算書類の注記 (中略)

5.使途等が制約された寄付等の内訳 使途が制約された寄付等の内訳は以下の通りです。当法人の正味財産は×××円で

すが,そのうち使途が制約された財産はありません。 (単位:円)

内容 期首残高 当期増加額 当期減少額 期末残高 備考

○○助成

団体助成

0 6,000,000 6,000,000 0 ××事業として当期

に交付の決定を受け

た助成金 1,000 万円

のうち,未使用で返

還義務のある 400 万

円は前受助成金とし

て負債に計上してい

ます。

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第8章 具体的な事例

6後払いの補助金等の会計処理はどのようにするの?

答え

(補助金等の交付が対象事業終了後となる場合)

補助金等の交付決定があり,事業を実施した後で,補助金等が交付される場合があ

ります。このような後払いの補助金等については,対象事業の実施に伴って,当期に

計上した費用に対応する金額を,未収助成金等として,当期の収益に計上します。

解説

例)ある助成財団から,××事業を 10 月 1 日から翌年 3 月 31 日までの期間に実

施することを目的として助成金 1,000 万円の交付が決定しました。ただし,助成金の

交付は事業の終了後に行われます。 事業を行うNPO法人の決算は 12 月ですが,12 月 31 日の時点では,当該事業に

係る費用として 600 万円を計上しています。この場合には,決算で次の仕訳を行い

ます。

①交付決定した事業年度

借方 金額 貸方 金額 摘要

××事業費 6,000,000 現金預金 6,000,000

未収助成金 6,000,000 受取助成金 6,000,000 12 月以前実施対応分

②翌事業年度

借方 金額 貸方 金額 摘要

××事業費 4,000,000 現金預金 4,000,000

現金預金 10,000,000 受取助成金 10,000,000

受取助成金 6,000,000 未収助成金 6,000,000 前期実施分

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第8章 具体的な事例

また,「使途が制約された寄付等」に該当しますので,次のような注記を行います。

計算書類の注記 (中略)

5.使途等が制約された寄付等の内訳 使途が制約された寄付等の内訳は以下の通りです。当法人の正味財産は×××円で

すが,そのうち使途が制約された財産はありません。 (単位:円)

内容 期首残高 当期増加額 当期減少額 期末残高 備考

○○助成

団体助成

0 6,000,000 6,000,000 0 ××事業として当期に

交付の決定を受けた助

成金 1,000 万円は,次

期に入金予定です。 ただし,このうち 600万円は当期に事業実施

済みのため当期の未収

助成金として計上して

います。

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第9章 計算書類の注記

第9章 計算書類の注記

「計算書類の注記」は,活動計算書や貸借対照表に記載された情報を補足するための

ものですが,NPO法人会計基準では,この注記を非常に重視しています。注記に記載

する項目は次のものです。

1重要な会計方針

重要な会計方針は,複数の会計処理が認められるものについて,どの会計処理を選択

したのかを明示するものです。例えば,NPO法人会計基準によって計算書類を作成し

た場合にはその旨を記載するほか,消費税の会計処理を税込経理で行ったか税抜経理で

行ったかを記載します。

2重要な会計方針を変更したときは,その旨,変更の理由及び当該

変更による影響額

従来から採用してきた会計方針を変更したときは,その旨およびその変更による影響

額を記載します。

(1)重要な会計方針 (2)重要な会計方針を変更したときは,その旨,変更の理由及び当該変更による影

響額 (3)事業費の内訳又は事業別損益の状況を注記する場合には,その内容 (4)施設の提供等の物的サービスを受けたことを計算書類に記載する場合には,受

入れたサービスの明細及び計算方法 (5)ボランティアとして,活動に必要な役務の提供を受けたことを計算書類に記載

する場合には,受入れたボランティアの明細及び計算方法 (6)使途等が制約された寄付等の内訳 (7)固定資産の増減の内訳 (8)借入金の増減の内訳 (9)役員及びその近親者との取引の内容 (10)その他NPO法人の資産,負債及び正味財産の状態並びに正味財産の増減の状

況を明らかにするために必要事項

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第9章 計算書類の注記

3事業別損益の状況

NPO法人会計基準では,複数の事業を行っている場合には「事業費は,事業別に区

分して注記することができる」とし,また「その場合収益も事業別に区分して表示する

ことを妨げない」とあるので,必ずしも事業費を事業ごとに区分して表示することは義

務ではありません。

しかし,NPO法人が自らの事業費を明らかにすることは,法人がどのような事業を

どれだけ行ったのかという,いわば「活動の証」となるものであり,複数の事業を行う

場合には,「計算書類の注記」で事業ごとに事業費の内訳を表示するか,あるいは,収

益も含めて事業別及び管理部門別に損益の状況を表示するか,いずれかの方法が推奨さ

れています。

また,個々の事業に対する収益を事業費と対応させて各事業の損益を明示することで,

事業を遂行する上でどのような経費がどれだけ必要なのか,その経費に見合う収益が得

られているか,といったさらに多くの情報を提供することが可能になります。

*P179,183,186 を参照ください。

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第9章 計算書類の注記

<例1 事業費の内訳を事業別に表示するパターン>

2.事業費の内訳

事業費の区分は以下の通りです

(単位:円)

A事業費 B事業費 C事業費 合計

(1)人件費

給料手当 1,500,000 1,800,000 3,300,000

臨時雇賃金 1,500,000 1,500,000

法定福利費 150,000 200,000 350,000

人件費計 1,650,000 2,000,000 1,500,000 5,150,000

(2)その他経費

売上原価 300,000 300,000

業務委託費 200,000 800,000 1,000,000

旅費交通費 50,000 30,000 70,000 150,000

地代家賃 450,000 450,000 450,000 1,350,000

減価償却費 50,000 50,000 50,000 150,000

その他経費計 850,000 730,000 1,370,000 2,950,000

合 計 2,500,000 2,730,000 2,870,000 8,100,000

<例2 収益も含めて,事業費及び管理部門別に損益の状況を表示するパターン>

2.事業別損益の状況

事業別損益の状況は以下の通りです

(単位:円)

A事業 B事業 C事業 事業部門計 管理部門 合計

Ⅰ経常収益

1.受取会費 1,000,000 1,000,000

2.受取寄付金 200,000 200,000 300,000 500,000

3.事業収益 2,500,000 1,900,000 2,900,000 7,300,000 7,300,000

4.その他収益 50,000 50,000

経常収益計 2,500,000 2,100,000 2,900,000 7,500,000 1,350,000 8,850,000

Ⅱ経常費用

(1)人件費

役員報酬 600,000 600,000

給料手当 1,500,000 1,800,000 3,300,000 3,300,000

臨時雇賃金 1,500,000 1,500,000 1,500,000

法定福利費 150,000 200,000 350,000 350,000

人件費計 1,650,000 2,000,000 1,500,000 5,150,000 600,000 5,750,000

(2)その他経費

売上原価 300,000 300,000 300,000

業務委託費 200,000 800,000 1,000,000 1,000,000

旅費交通費 50,000 30,000 70,000 150,000 150,000

地代家賃 450,000 450,000 450,000 1,350,000 450,000 1,800,000

減価償却費 50,000 50,000 50,000 150,000 50,000 200,000

消耗品費 60,000 60,000

支払手数料 100,000 100,000

雑費 50,000 50,000

その他経費計 850,000 730,000 1,370,000 2,950,000 710,000 3,660,000

経常費用計 2,500,000 2,730,000 2,870,000 8,100,000 1,310,000 9,410,000

当期経常増減額 0 △ 630,000 30,000 △ 600,000 40,000 △ 560,000

科 目

科 目

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第9章 計算書類の注記

4施設の提供等の物的サービスの受入の内訳

原則的な処理

無償又は著しく低い価格で提供された物的サービスについては,特に会計上の処理や

計算書類への表示は行わない。

(※計算書類への金銭的な表示をする代わりに,事業報告書等にその事実等を表示す

ることができます。)

会計処理が容認される場合

①その物的サービスの金額を「合理的に算定できる場合」には,「計算書類に注記」

することができる。

(※注記するか,しないか,は選択できる。)

②その物的サービスの金額を「客観的に把握できる場合」には,注記に加えて「活動

計算書に計上」することができる。

(※活動計算書に計上するかしないかは選択できる。もちろん,注記だけにするこ

とも選択できる。)

NPO法人は,支援者等の好意で,無償又は著しく低い価格で土地・建物等の不動産

やパソコン・車などの動産を使用する等の「物的サービス」の提供を受けることがよく

あります。

このように無償又は著しく低い価格で物的サービスの提供を受けた場合も,パソコ

ン・車などの現物寄付を受けた場合と同じく受取寄付と変わらないため,金銭換算して

計算書類で表現したい場合には,NPO法人会計基準では,それを可能とすることにし

ました。

ただし,これは金銭換算して計算書類で公表したいと望む団体の任意であり,望まな

い団体は,従来どおり,事業報告書で事実や恩恵等を表示するだけでかまいません。

計算書類に計上する方法としては,

という2つがあります。

②の活動計算書に計上するためには,お金で寄付を受け取ったのと同レベルの「客観

的に把握できる」必要があります。一方,①の計算書類の注記だけに記載する場合は,

「合理的に算定できる」レベルで構いません。

何らかの形で金銭換算して計算書類でも公表したいと考える法人は,提供を受けた物

的サービスの重要性と金銭換算のための手間を勘案して,事業報告書に記載することに

加え,計算書類に注記したり活動計算書に計上することを検討してください。

① 計算書類の注記だけ記載し,活動計算書には計上しない

② 活動計算書に計上し,注記にも記載する

80

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第9章 計算書類の注記

5ボランティアによる役務の提供の内訳

原則的な処理

ボランティアによる役務の提供については,特に会計上の処理や計算書類への表示は

行わない。

(※しかし,事業報告書等にボランティア参加の事実等を表示することでより活動の

様子を伝えることができます。)

会計処理が容認される場合

①そのボランティアによる役務の提供が,活動の原価の算定に必要な受入額である。

②そのボランティアによる役務の提供の金額を「合理的に算定できる場合」には「計

算書類に注記」することができる。

(※注記するか,しないか,を選択できる。)

③そのボランティアによる役務の提供の金額を「客観的に把握できる場合」には注記

に加えて「活動計算書に計上」することができる。

(活動計算書に計上するか,しないか,を選択できる。もちろん,注記だけするこ

とも選択できる。)

NPO法人は,ボランティアによる無償または著しく低い価格での労力に支えられて

いる部分が非常に多く,これは営利企業などには見られない特色です。一方で,ボラン

ティアの労力を金額評価しないことで,NPO法人の真の活動規模が過小評価されてい

る問題も指摘されています。

営利企業では,事業の実施に必要な労力は金銭を支払って調達するしかないので人件

費の金額が大きくなりますが,NPO法人の場合には,ボランティアで労力が提供され

ると人件費の金額が出てこないため,比較ができず,そのことが行政との契約などでN

PO法人に不利に働く場合があります。

こうした点に対応しようという理由から,NPO法人会計基準では,ボランティアに

よる労力の提供を金銭換算して計算書類でも表現することを可能にすることにしまし

た。ただし,計算書類に計上できるのはそのボランティアによる役務の提供が,「活動

の原価の算定に必要な受入額」である場合だけです。

この取扱いは適正な活動のコストを表示するために行うので,その活動が必要とする

本来の労力を超えてボランティアを受け入れた場合に,その超えている分まで活動計算

書に計上するのはおかしいのです。

ボランティアによる役務の提供も,無償の施設の提供等と同様

という2つがあります。

① 計算書類の注記だけ記載し,活動計算書には計上しない

② 活動計算書に計上し,注記にも記載する

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第9章 計算書類の注記

6使途等が制約された寄付等の内訳

NPO法人に対する資金援助の中には,制約のないものもありますが,使い道が指定

されているものも少なくありません。

「○○の目的のために使ってほしい」という寄付金は多くありますし,助成金や補助

金であれば,使途が指定されていることが通常です。このような使途に制約のある寄付

等を,受け入れた年度に収益として計上して,単純に正味財産を増加させていいかどう

かは疑問です。

例えば,災害などが起こって,その救援のために寄付を募った場合で,寄付金を受け

た会計年度と実際に救援金や救援物資を現地に送った会計年度とがずれている場合,寄

付金を受領した年度で単純に収益として計上して正味財産を増加させてもいいもので

しょうか。

それらの資金は,翌年度以降,災害が起こった現地に渡されることになるので,NP

O法人の自由になるお金が増加したわけではありません。

NPO法人会計基準では,寄付金等については,受け取った年度で収益に計上し,寄

付金等のうち使途に制約があるものはその使途ごとに寄付金等の増加額,減少額,期末

残高を注記することを原則としました。そして,同じ箇所に「当法人の正味財産は××

円ですが,そのうち××円については,○○のために使用する財産です」と示すことに

よって,使途が制約されていることを明示することとしました。

しかし,その寄付金等の重要性が高い場合には,公益法人会計基準にならって,貸借

対照表の正味財産の部を指定正味財産と一般正味財産に区分するとともに,活動計算書

にも指定正味財産増減の部と一般正味財産増減の部の区分を設け,それぞれの動きを表

示することとしました。

NPO法人会計基準の原則 ・受け取った年度で収益に計上する。 ・使途ごとに増加額,減少額,期末残高を注記する。 ・正味財産のうち使途が制約された財産がいくらあるのかを注記する。

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第9章 計算書類の注記

原則的な取扱い

例)今期に集まった寄付金 500 万円は,「○○地震援助事業」のために使用してほしい

と使途が制約された寄付金です。そのうち 200 万円を支援用物資に使用しました。

活動計算書

科目 金額

Ⅰ経常収益

1.受取会費 2.受取寄付金

………

5,000,000

計算書類の注記に,正味財産のうち,使途が制約された金額がいくらあるか明示します。

計算書類の注記

(中略)

6.使途等が制約された寄付等の内訳

使途が制約された寄付等の内訳は以下の通りです。当法人の正味財産は 1,500 万円で

すが,そのうち,300 万円は,○○地震援助事業に使用される財産です。したがって,

使途等が制約されていない正味財産は 1,200 万円です。

内容 期首残高 当期増加額 当期減少額 期末残高 備考

○○地震

援助事業

合計

0 5,000,000 2,000,000 3,000,000翌期に使用予定

の援助用資金

0 5,000,000 2,000,000 3,000,000

使途が制約される寄付等については,使途ごとに期首残高,当年度の増加額,当年度

の減少額,期末残高を注記します。

※返還義務のある補助金等の会計処理は P72 を参照してください。

※後払いの補助金等の会計処理は P75 を参照してください。

受け取った年度に

収益に計上する。

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第9章 計算書類の注記

7固定資産の増減の内訳

科目 期首取得価額 取得 減少 期末取得価額 減価償却累計額 期末帳簿価額

車両運搬具

合計

2,500,000 1,700,000 4,200,000 2,250,000 1,950,000

2,500,000 1,700,000 0 4,200,000 2,250,000 1,950,000

8借入金の増減の内訳

科目 期首残高 当期借入 当期返済 期末残高

役員借入金 1,200,000 200,000 1,000,000

期首に所有

している固

定資産の取

得価額を記

載します

今期に取得

した固定資

産の取得価

額を記載し

ます。無償で

いただいた

固定資産も

含みます

今期に売

却・除却等を

した固定資

産の取得価

額を記載し

ます

期末に所有

している固

定資産の取

得価額を記

載します

過去の減価

償却費の合

計額を記載

します

期末に所有

している固

定資産の取

得価額から

減価償却累

計額を控除

した金額を

記載します

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第9章 計算書類の注記

9役員及びその近親者との取引の内容

役員及びその近親者との取引は以下の通りです。

科目 計算書類に計上された金額 内役員及び近親者※との取引

(活動計算書)

事業委託費(事業費)

活動計算書計 2,640,000 2,000,000

2,640,000 2,000,000

※役員及び近親者の範囲

①役員(役員に準ずる相談役,顧問等で役員と同様に実質的に法人の経営に従事して

いると認められる者を含む。以下同じ。)

②その近親者(2 親等内の血族,配偶者並びに 2 親等内の姻族とする。以下同じ。) ③役員及びその近親者が支配している法人(役員及びその近親者が支配するという場

合の支配は,理事会や総会など機関意思の決定権を有する場合を意味しています。

具体的にはNPO法人の役員及びその近親者のグループで社員総会の議決権の過

半数を占めている場合や,NPO法人の役員及びその近親者が他の法人の代表取締

役,代表理事など務める場合の当該他の法人が該当します。以下同じ。)

※金額的重要性の判断の目安について 重要性が乏しいとして注記する必要がないのは,活動計算書に属する取引の場合は

100 万円以下,貸借対照表に属する取引については,発生金額及び残高が 100 万円

以下の取引は金額的重要性が低いものと考えています。この 100 万円という金額は,

一つ一つの取引金額ではなく,役員ごとに,かつ勘定科目ごとに,年間の合計金額

で考えます。また貸借対照表に属する取引,つまり固定資産の購入や借入取引など

は,「発生金額及び残高」で考えますから,仮に残高が 100 万円以下であっても,

発生金額が 100 万円を超えていたら注記が必要なので注意してください。

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第9章 計算書類の注記

10 その他NPO法人の資産,負債及び正味財産の状態並びに正味財

産の増減の状況を明らかにするために必要な事項

現物寄付の評価方法(重要性が高いと判断される場合に記載します)

(記載例)現物寄付を受けた固定資産の評価方法は,固定資産税評価額によっていま

す。

事業費と管理費の按分方法(重要性が高いと判断される場合に記載します)

(記載例)各事業の経費及び事業費と管理費に共通する経費のうち,給料手当及び旅

費交通費については従事割合に基づき按分しています。

重要な後発事象

貸借対照表日後に発生した事象で,次年度以降の財産又は損益に重要な影響を及ぼす

ものを記載します。例えば,自然災害等による重大な損害の発生,重要な係争事件の

発生又は解決,主要な取引先の倒産等について記載します。

(記載例)平成○○年○月○日,△△事務所が火災により焼失したことによる損害額

は□□円,契約金額は××円です。

その他の事業に係る資産の状況

その他の事業に固有の資産で重要なもの及び特定非営利活動に係る事業・その他の事

業に共通で使用している重要な資産の残高状況について記載します。

注記の対象とするものとしては,以下のようなものが考えられます。

・その他の事業のためだけに使われる重要な在庫

・その他の事業のためだけに使用する重要な建物や車両運搬具など

・本来事業に当面使われる予定がない重要な定期預金や有価証券

・本来事業とその他の事業に共用されている固定資産で重要性が高いもの

なお,ここで注記を求められているのは「資産」だけですので,「負債」の注記は求

められていません。

(記載例)その他の事業に係る資産の残高は,土地・建物が○○円,棚卸資産が△△

円です。特定非営利活動に係る事業・その他の事業に共通で使用している

重要な資産は土地・建物が□□円です。

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第9章 計算書類の注記

参考

NPO法第 5 条第 1 項において,「特定非営利活動法人は,その行う特定非営利活動に

係る事業に支障がない限り,当該特定非営利活動に係る事業以外の事業を行うことがで

きる。」と規定されています。

さらに,NPO法第 5 条第 2 項において,「その他の事業に関する会計は,当該特定

非営利活動法人の行う特定非営利活動に係る事業に関する会計から区分し,特別の会計

として経理しなければならない。」と規定されています。

そのため,法人が,定款に掲げるその他の事業を行っている場合には,その他の事業

の会計を特定非営利活動に係る事業の会計と区分して表示しなければいけません。

しかし,定款に「その他の事業」は掲げていても,実際にはその他の事業を行ってい

なければ,その他の事業の金額はすべて 0 円になります。このような場合には,活動計

算書にその他の事業の欄を設ける必要はありません。活動計算書の脚注に「今年度はそ

の他の事業を実施していません。」と記載します。

従来,その他の事業を実施しているNPO法人に対しては,財産目録,貸借対照表,

収支計算書及び収支予算書について,特定非営利活動に係る事業のものとは別に,各々

その他の事業に係るものの作成が求められてきました。

NPO法人会計基準では,その他の事業を行っている場合には,活動計算書は区分し

て表示しますが,貸借対照表を区分して表示するかどうかは,法人の任意となっていま

す。

その理由は,貸借対照表も区分することになると,実務的には相当複雑になり,計算

書類を作成するNPO法人にとって事務負担が増大しますし,活動計算書の区分だけで

十分理解されるためです。

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第 10 章 決算書からわかること

第 10 章 決算書からわかること

1手元資金の把握

潤滑に資金繰りができるように, 低限必要な手元資金を把握しておくことは重要で

す。団体の運営をしていくうえで,手元にすぐに使えるお金がないと資金ショートして

しまいます。事業高が大きくなっても,毎月の給与などの支払いのための資金繰りに苦

労しているところも見受けられます。また,資金繰りに苦労する状況ではないけれども,

いったいどのくらい手元にあればよくて,使ってもいいのはどれくらいなのかを知って

おくことは重要です。

手元資金は,月平均概算支出額の2か月相当額は必要です。

計算式 (現金+普通預金)÷1 か月平均概算支出額※

⇒2 か月分前後あることが望ましい 現在の手元資金は,必要 低限の額を満たしているのかを見る指標です。 ※1 か月平均概算支出額=年間総支出÷12 か月

計算例 現金 10 万円+普通預金 200 万円=手元資金 210 万円…① 1 か月の平均支出額 年 1200 万円÷12 か月=100 万円…②

① 210 万円 ÷ ②100 万円=2.1 か月 例えば,別冊 P177,178 の記載例2をみてみましょう。

1,700,000 ÷ (9,410,000 ÷ 12 か月) = 2.16 ⇒2か月以上

2 か月分以上 その手元資金源は何ですか? 前期からの繰越額→今期は繰越が減少していませんか? 借入金→借入金を一気に返済しても手元に資金が残る余裕がありますか?

1 か月分以上

2 か月分未満 毎月資金繰りがぎりぎりで,苦しくありませんか? 入金を待って支払をしているのでは? 役員からの借入&返済で,支払を切り抜けていませんか?

1 か月分未満 スタッフや関係者への支払ができなくなったことはありませんか? そもそも事業が「事業」として成り立っていますか?

一般的に,事業を継続的に運営している団体の場合には,手元にある資金が月平均支

出額の 低 2 か月分相当額が必要です。少なくともその金額があれば毎月の支払業務が

滞ることもなく,また予定していた入金が少し遅れたような場合にも 1 か月程度は耐え

ることができます。逆に 1 を切るようであれば,次の 1 か月分の支払予定額にも満たな

いことになり,事業が動かなくなります。

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第 10 章 決算書からわかること

借入金依存度とその原因を知っていますか?

計算式 (借入金÷総資産)×100 借入金にどれだけ依存しているかを見る指標です。

計算例 貸借対照表の負債の部「借入金」 100 万円…① 貸借対照表の資産合計(総資産) 460 万円…② (①100 万円÷②460 万円)×100=21.7%

100%未満 どこから借入しているのか,返済期限は守られているのか,借入金残高

が増加していないか,などを確認しましょう。

100%以上 危険です。運営が成り立っていないのではありませんか。

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第 10 章 決算書からわかること

2財務安全性の確認

NPO法人を継続して,安定的に運営するためには資金が効率よく循環することが大

切です。いつでも利用可能な流動資産である現預金の有り高を比較検討することによっ

て,団体が安定的に運営できるか否かをみてみましょう。 NPO法人は,活動計算書を会議等の資料に利用することは多いのですが,貸借対照

表を,運営判断の資料に利用することは少ないといえます。しかし,貸借対照表にはい

ろんな重要な情報が隠れています。

期首と期末の現預金の差額について考えてみましょう。

計算式 (期末現預金有高÷期首現預金有高)×100 現預金有高=手許現金+小口現金+預金 期首と期末の現預金有高を比較することで,団体の財政状況を把握する指

標です。

計算例 期末現預金有高 450 万円…① 期首現預金有高 300 万円…② (①450 万円÷②300 万円)×100=150%

100%未満 前期より現預金残高が大きく減少しました。 今期は何が原因で前期末よりも現預金が減少したのか検討してみまし

ょう。 収入は前期に比べて減少していませんか。また経費は前期に比べて増加

していませんか。 今期と前期を比較してみると,収入の割合に比べて経費の割合が増加し

ている可能性があります。 固定資産の取得など,現預金が減少した原因は分かっていますか。

100%以上 前期より現預金残高が大きく増加しました 前期に比べて今期は効率よく比較的経費を抑えて収入を得ることがで

きました。 現預金は増えているけれど,借入金により増えたのではよくありませ

ん。

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第 10 章 決算書からわかること

今,手持ちの財産で負債を補えますか。 手持ちの財産より,借入金や未払金が多くなってしまっては,継続的な活動ができな

くなります。建物の建設や改装を借入金で補っている場合などは特に注意が必要です。

手元に資金があっても,実は使えないお金ということもあり得ます。事業の収益性の確

保とともに,借入金などに頼らない資金構造をつくることが大切です。

財務的安定性の目安!200%ありますか?

計算式 (流動資産÷流動負債)×100 さしあたって支払わなければならない債務(流動負債)を,支払うだけの

手持ち資産(流動資産)があるかを見る指標です。

計算例 貸借対照表の流動資産合計 300 万円…① 貸借対照表の流動負債合計 150 万円…② (①300 万円÷②150 万円)×100=200%

流動資産とは現金,預金,未収金,売掛金,仮払金,棚卸資産などが含まれ,流動負

債とは未払金,買掛金,預り金,仮受金,短期借入金などで構成されています。

200%以上 財政状態は良好です。負債を払っても資金には余裕があります。

100~200% 負債は払えますが,その後の資金繰りの余力が問題となるでしょ

う。

100%未満 財政状態は悪化しています。手持ち資産で負債が払えません。

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第 10 章 決算書からわかること

次の課題解決に取り組む余力はありますか。 NPO法人として,次年度に新しく解決すべき課題に取り組むためには先立つ資金が

必要です。また,団体として,安定的なサービスの提供や社会的弱者への寄り添い,地

域への情報発信など本来の活動を継続していくためには,毎事業年度ごとに計画的な繰

越も必要不可欠です。決算の結果,たまたま繰越したとか足りないというのではなく,

常に正味財産を意識しながら次年度への計画的は繰越ができるようにしましょう。

次期課題解決に取り組むための体力はありますか?

計算式 (正味財産合計額÷総資産)×100 どれだけ効率よく資金を回転させて運営し,次期事業のために残せている

かを見る指標です。

計算例 貸借対照表の正味財産合計額(次期繰越収支差額)300 万円…① 貸借対照表の資産合計 460 万円…② (①300 万円÷②460 万円)×100=65.2%

50%未満 負債の部の金額が,大きくなっていませんか? 貸借対照表の負債の部に計上されている金額を検証して,50%未満にな

る原因を探りましょう。 未払金や借入金が過大になっている可能性が考えられます。

50%以上 繰越を生かせていますか? 繰越として 低限残しておくべき額を把握しましょう 団体の質の向上のためにも,スタッフやボランティアのレベルアップに

向けての配慮,福利厚生の充実などに視点を向けることも重要です。 さまざまな事象を想定した危機管理のための準備も検討が必要です。

貸借対照表の負債の額がどれだけあるかによって,この計算式の答えは変わります。

例えば,負債がゼロで現金と預金だけの場合,結果は 100%となります。

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第 10 章 決算書からわかること

3事業別収益の把握

NPOであっても収益性は重要です。 NPOとは,民間非営利組織です。「非営利組織だから利益を上げてはならない」と

いう考え方では,社会的に価値のある活動にも限界がでてきます。NPO法人として組

織を維持してミッション実現のための活動を継続していくために収益性は重要です。次

の活動につなげていくためにも,各プロジェクトの収益性を検討すべきです。

プロジェクト(事業)が赤字になっていませんか?

計算式 (プロジェクト事業費÷プロジェクト収益)×100 そのプロジェクトはどれくらい収益力があるかを見る指標です。プロジェ

クトごとに計算します。そのためには,共通する経費の按分が重要です。

計算例 プロジェクトの事業費 115 万円…① プロジェクトの収益(助成金・補助金等含む) 120 万円…② (①115 万円÷②120 万円)×100=95.8%

100%超 赤字です。高い方が収益性は悪化しています。 収入より支出が多かったことになり,収益性は悪化しています。

100% トントンです。 収入はすべて支出に使い切りました。ただし,次期に繰り越せる資産は

ありませんでした。

100%未満 黒字です。低い方が収益性は高まっています。 収入より支出が少なかったことにより,利益を確保しました。

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第 10 章 決算書からわかること

前期と比べて収入は増えていますか?減っていますか? 前期あるいは 3 期間を比較し,なぜ違うか,どこが伸びたか,あるいは減ったかを分

析すること団体の現状を知るために必要なことです。そしてその理由を考えてみるとい

うことは,団体の発展に必ずつながります。

前年,前々年度と比較することで,わかることがあります!

計算式 1 まずは,全体の収入を比較してみます。 (今期総収入÷前期総収入)×100 今期は前期に比べて,収入が増えたのかをみる指標です。

100%以上 総収入が前期より増加しました。

100%未満 総収入が前期より減少しました。

NPO法人の総収入の構成は事業収入はもとより,受取会費,受取寄付金,受取助成

金等,その他の収入などで構成されており,どの収入が伸びたかあるいは減少したかを

分析する必要があります。

計算式 2 次に事業全体,又は特定の事業収入を比較してみます。 (今期事業収入÷前期事業収入)×100 今期は前期に比べて,収入が増えたのかをみる指標です。

100%以上 事業収入が前期より増加しました。

100%未満 事業収入が前期より減少しました。

収益性は,収入の増加でははかれません。収入の増加以上に支出が増加していると,

収益性としては悪化していることもあります。 比較分析を行う時は,増減比率や額,理由の分析なども必要です。内部的な理由によ

り悪化した場合は改善策の検討も必要となるでしょう。

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