1.ダカヒゼ · 2020. 8. 4. · 1.ダカヒゼ 2014 年4...

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1.はじめに 2014 4 月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、エネルギーの安定供給と地球温 暖化対策に貢献する新たな二次エネルギーの一つとして水素が挙げられ、“水素社会”の実 現に向けた取り組みが示されました。同年 6 月には産学官からなる「水素・燃料電池戦略協 議会」が水素・燃料電池戦略ロードマップを策定しました。 その後、家庭用燃料電池の普及が拡大し、燃料電池自動車(FCV)が市販開始され、水素 ステーション(HRS)の整備も着実に進められるなど、水素・燃料電池戦略ロードマップ策 定時から様々な取り組みが進展している状況を踏まえて、2016 3 月にロードマップの内 容が改訂されました。 ロードマップ(改訂版)では、FCV の普及台数を、2020 年度 4 万台、2025 年度 20 台、2030 年度 80 万台としています。この普及台数に合わせた HRS の整備基数として、 2020 年度 160 か所、2025 年度 320 か所としています。 また、このロードマップに掲げられた目標に基づき、 2016 11 月に FC フォークリフト が、 2017 年には FC バスが販売開始となりました。 2030 年には、水素発電の本格導入を目 指しております。 2.FCV の普及および HRS の整備に向けた取り組み 2011 1 月に、水素社会の実現の鍵を握る FCV の国内市場導入と HRS の整備を目指 し、自動車メーカー大手 3 社に加えて、当社を始め、石油メーカー、都市ガス各社などエネ ルギー事業者 10 社の合計 13 社が共同声明を出しました。その内容は、運輸部門の CO2 出量を削減するために、自動車メーカーは FCV 量産車を 2015 年に一般ユーザーへの販売 開始を目指し、エネルギー事業者は FCV 量産車の初期市場創出のため、 2015 年までに FCV 量産車の販売台数の見通しに応じて水素供給インフラの先行整備を目指すものでした。 この共同宣言に呼応し、FCV の購入、HRS の建設・運用に対して、国などからの普及支 援策が整備されました。FCV はトヨタの「MIRAI」、ホンダの「CLARITY FUEL CELLが予定通りに市販され、 2016 年末には日本全体で約 1,800 台が走行しています。また HRS については、 2016 年度末時点で 92 か所の設置が進んでおり、当社もすでに 20 カ所以上の HRS を整備、運用しています。 (写真1) 但し、今後 HRS を増やしていくためには、規制の見直しや技術革新により、1ヶ所 5 円といわれる建設コストを低減していく必要があります。

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  • 1.はじめに

    2014 年 4 月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、エネルギーの安定供給と地球温暖化対策に貢献する新たな二次エネルギーの一つとして水素が挙げられ、“水素社会”の実

    現に向けた取り組みが示されました。同年 6 月には産学官からなる「水素・燃料電池戦略協議会」が水素・燃料電池戦略ロードマップを策定しました。

    その後、家庭用燃料電池の普及が拡大し、燃料電池自動車(FCV)が市販開始され、水素ステーション(HRS)の整備も着実に進められるなど、水素・燃料電池戦略ロードマップ策定時から様々な取り組みが進展している状況を踏まえて、2016 年 3 月にロードマップの内容が改訂されました。

    ロードマップ(改訂版)では、FCV の普及台数を、2020 年度 4 万台、2025 年度 20 万台、2030 年度 80 万台としています。この普及台数に合わせた HRS の整備基数として、2020 年度 160 か所、2025 年度 320 か所としています。

    また、このロードマップに掲げられた目標に基づき、2016 年 11 月に FC フォークリフトが、2017 年には FC バスが販売開始となりました。2030 年には、水素発電の本格導入を目指しております。

    2.FCVの普及および HRSの整備に向けた取り組み 2011 年 1 月に、水素社会の実現の鍵を握る FCV の国内市場導入と HRS の整備を目指

    し、自動車メーカー大手 3 社に加えて、当社を始め、石油メーカー、都市ガス各社などエネルギー事業者 10 社の合計 13 社が共同声明を出しました。その内容は、運輸部門の CO2 排出量を削減するために、自動車メーカーは FCV 量産車を 2015 年に一般ユーザーへの販売開始を目指し、エネルギー事業者は FCV 量産車の初期市場創出のため、2015 年までに FCV量産車の販売台数の見通しに応じて水素供給インフラの先行整備を目指すものでした。

    この共同宣言に呼応し、FCV の購入、HRS の建設・運用に対して、国などからの普及支援策が整備されました。FCV はトヨタの「MIRAI」、ホンダの「CLARITY FUEL CELL」が予定通りに市販され、2016 年末には日本全体で約 1,800 台が走行しています。また HRSについては、2016 年度末時点で 92 か所の設置が進んでおり、当社もすでに 20 カ所以上のHRS を整備、運用しています。

(写真1)

    但し、今後 HRS を増やしていくためには、規制の見直しや技術革新により、1ヶ所 5 億円といわれる建設コストを低減していく必要があります。

    s-hasakaタイプライターテキストIOMA Broadcaster 2017 第3四半期

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    s-hasakaタイプライターテキスト水素ステーション(Hydorgen Refueling Station)普及に向けた日本の動き

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    s-hasakaタイプライターテキスト岩谷産業株式会社

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  • 写真1 イワタニ HRS 芝公園

    3.HRS規制見直しへの取り組み 日本の HRS 関連の規制見直しに向け、民間企業も取り組んでいます。ここでは Q&A の形でご紹介します。

    Q1:当社が参画している HRS 関連の規制見直しや整合化活動とは、どのような活動でしょうか?また、いつ頃から参加していますか?

    A1:日本の HRS 関連の規制見直しは、民間企業側の取り組みについて、主に燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が取り纏めています。この FCCJ は、大手ガスメーカーのほか、石油メーカー、都市ガス各社などエネルギー事業者や、大手自動

    車メーカーが会員となっている業界団体であり、当社も深く関与しています。

    エネルギー事業者から HRS 普及の阻害要因となる規制見直し項目を抽出、意見集約し、優先順位を付けて国と協働で取り組んでおり、当社は 2001 年からFCCJに参画し、規制見直しや整合化活動にも取り組んでいます。

    Q2:各々の活動は何を目的としているのですか?

    A2:FCCJ には「水素インフラサブワーキング」が設けられています。 更に、その下位に規制見直しタスクフォースが設けられています。

    上記 A1 に記載の優先順位付けされた規制見直し項目に、それぞれ推進リーダーを選任して取り組んでいます。例えば、既に作業の終わった「液化水素貯蔵

  • 型 HRS 基準の整備」や、現在進めている「液化水素ポンプ式 HRS 基準の整備」は、当社がリーダーを担っています。

    その他にも、これまでに 13 件の規制見直し項目について省令改正等の法的措置が完了し、現在も 11 件について見直しに向けた検討が進められています。

    Q3:これまでにどのような成果がありましたか?

    A3:主なものは、次の通りとなります。

    ・40MPa の HRS 基準の整備(平成 17 年 3 月) ・HRS とガソリンスタンドの併設(平成 24 年 5 月) ・82MPa の HRS 基準の整備(平成 24 年 12 月) ・液化水素貯蔵型 HRS 基準の整備(平成 26 年 11 月) ・市街地における水素保有量の上限の撤廃(平成 26 年 12 月) ・プレクール設備の無人運転を可能とした(平成 28 年 2 月)

    Q4:水素自動車の生産計画、HRS の増設計画に対し、これらの活動がどのように結びついていますか?

    A4:水素自動車については、車載容器の型式承認に係る合理化が検討され、従来のガ

    ソリン車等と同じようにライン生産が可能となるよう、規制見直しの動きが進

    んでいます。

    HRS については、ガソリンスタンドへの併設が可能となり、市街地での設置基準が制定されるなど、これまでの規制見直しにより適所に HRS を建てられるようになりました。

    また、コスト削減につながる規制見直しも進んでおり、今後、HRS の整備が加速していくことが期待されます。さらに、HRS の数が増えることにより、FCV ユーザーの利便性向上に繋がるものと期待しています。