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1990年以降の日本の設備投資 -依然残る慎重姿勢と成長期待の弱さ- 2016830経済調査室 田中賢治

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1990年以降の日本の設備投資 -依然残る慎重姿勢と成長期待の弱さ-

2016年8月30日

経済調査室 田中賢治

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1.1990年以降の設備投資を振り返る (マクロ的な視点から)

1

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国内設備投資は緩やかな回復だが、水準は依然低い

(%)

民間企業設備投資(名目、SNA) (%)

(年度) (年度)

(備考)1.内閣府 2.1993年以前は旧統計のため、厳密にはデータに断絶がある。

国内設備投資は、2009年を底に緩やかな回復基調にあり、2015年度には70兆円を回復。ただし、リーマンショック後の深い落ち込みからの持ち直しに過ぎず、過去四半世紀を見渡すと、その水準は高くない。

民間企業設備投資(実質、SNA)

2

(兆円)

水準(右目盛)

前年比伸び率

(兆円、2005年価格)

水準(右目盛)

前年比伸び率

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1990年代半ば以降、設備投資対GDP比は横這い圏内

民間企業設備投資の対GDP比

(備考)1.内閣府 2.1993年以前は旧統計のため、厳密にはデータに断絶がある。

国内設備投資を対GDP比(名目)で見ると、1994年以降、振れを伴いながら14%を中心として横這い圏内の動きが続いている。

3

【名目】 【実質(2005年価格)】 (%) (%)

(年度) (年度)

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(備考)財務省「法人企業統計季報」

法人企業統計(季報)の設備投資

製・非製別、企業規模別で見ても、傾向に大きな違いなし

(兆円)

製造業・非製造業別、企業規模別のいずれも、設備投資の変動パターンに大きな違いはない。ただし、大企業の設備投資の変動幅がやや大きい。

4

(年度) (年度)

【製造業・非製造業別】 【企業規模別】

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0

5

10

15

20

25

30

2000 05 10 15

(兆円)

(年度)

経常利益

設備投資

(備考)1.財務省「法人企業統計季報」 2.全規模

企業収益の改善に比べ見劣りする設備投資

企業収益の改善に支えられ、ここ数年、設備投資は持ち直してきたが、設備投資は、製造業、非製造業とも経常利益を遥かに下回る水準にとどまる。

5

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2000 05 10 15

(兆円)

(年度)

経常利益

設備投資

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

2000 05 10 15

(兆円)

(年度)

経常利益

設備投資

【全産業】 【製造業】 【非製造業】

経常利益と設備投資(法人企業統計)

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設備投資/キャッシュフロー比率

1990年台半ば以降、設備投資はキャッシュフローの範囲内

(%)

1990年代半ばから設備投資はキャッシュフローの範囲内という傾向に変化はない。製造業・非製造業別、企業規模別で見ても、傾向は同じ。

6

(年度) (年度)

【製造業・非製造業別】 【企業規模別】

(備考)1.財務省「法人企業統計季報」 2.キャッシュフロー=経常利益÷2+減価償却費

0

20

40

60

80

100

120

140

160

90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

全産業

製造業

非製造業

0

20

40

60

80

100

120

140

160

90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

大企業

中堅企業

中小企業

(%)

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11

9

8

10

14

16

45

51

38

49

34

43

38

33

48

35

46

37

6

8

6

7

6

5

0 25 50 75 100

過去3年の国内設備投資の水準に対する認識(DBJ調査) (利益水準、事業規模、リーマンショック前の水準などとの比較)

(構成比、%)

非常に 高水準

やや 高水準

やや 抑制的水準

極めて 抑制的水準

7

6

6

9

12

50

47

48

50

54

38

43

45

31

29

5

5

10

5

0 25 50 75 100

非製造業

(692社)

うち卸売・小売

(147社)

うち不動産

(104社)

うち運輸

(147社)

うち電力・ガス

(59社)

(構成比、%)

非常に 高水準

やや 高水準

やや 抑制的水準

極めて 抑制的水準

製造業 (502社)

うち化学 (79社)

うち鉄鋼・非鉄金属 (52社)

うち一般・精密機械 (92社)

うち電気機械 (50社)

うち輸送用機械 (63社)

非製造業 (692社)

うち卸売・小売 (148社)

うち不動産 (105社)

うち運輸 (147社)

うち電力・ガス (59社)

2

【製造業】 【非製造業】

自社の設備投資水準に対する自己認識をアンケート調査すると、製造業、非製造業とも、高水準と抑制的の回答が概ね半々。

7

設備投資に積極的と自己評価する企業が意外に多い

(備考)1.日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査」 2.調査時点:2016年6月24日、調査対象:資本金10億円以上の民間法人企業(金融保険業を除く)

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(有効回答社数比、%)

(注)2つまでの複数回答

33

19

3

38

40

9

21

4

3

5

67

20

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1

2

3

4

5

6

製造業

(213社)

非製造業

(291社)

①国内市場の成長が期待できないため

②海外での事業展開を優先

③M&Aを優先

④リスクに対して、より慎重に なっているため

⑤財務体質強化を優先

⑥その他

設備投資を抑制する理由(DBJ調査)

(P7で設備投資が抑制的水準にあると回答した企業による回答)

設備投資が抑制的な背景に「慎重姿勢」と「成長期待の弱さ」

高収益で財務健全化が進むにもかかわらず、設備投資抑制の理由に、「財務体質強化」を挙げる企業が多い。他には、「国内の成長期待の低さ」を指摘する声も。

(備考)1.日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査」 2.調査時点:2016年6月24日、調査対象:資本金10億円以上の民間法人企業(金融保険業を除く)

8

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先行き不透明感は設備投資の天敵

設備投資関数の推計からは、不確実性が設備投資に対してネガティブに働く結果が得られ、先行き不透明感が設備投資を躊躇させる可能性。

9

(備考)Tanaka(2016), “Industrial Characteristics and the Investtment–Uncertainty Relationship: A Panel Study of Data on Japanese Firms”, coming soon

【パネルデータによる設備投資関数の推計】 (1) (2)

Q

LK

CFK

UNCER1

0.0090 ( 29.28)***

-0.1338 (-13.50)***

0.0062 ( 18.31)***

0.0301 ( 27.73)***

0.0718 ( 19.40)***

-0.0912 ( -9.42)***

Adj.R2

Number of Observations

0.123

25,445

0.174

24,971

Q

LK

CFK

UNCER2

0.0079 ( 18.47)***

-0.0785 ( -6.78)***

0.0059 ( 12.89)***

0.0192 ( 12.22)***

0.0670 ( 15.67)***

-0.0648 ( -3.88)***

Adj.R2

Number of Observations

0.118

18,129

0.143

17,938 0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

1991 95 2000 05 10

UNCER1

UNCER2

(年度)

(注)推計期間:1991-2012年度 被説明変数:設備投資/資本ストック LK:土地/資本ストック(1期前) CFK:キャッシュフロー/資本ストック(1期前) UNCER:不確実性指標

(注)UNCER1:売上高増減率の過去3期標準偏差 UNCER2:売上高増減率の将来の予測誤差 (2次の自己回帰モデルによる予測)

【不確実性指標】

不確実性と設備投資(上場企業のデータ分析)

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項目 金額規模 (年間、法人企業全体)

特徴、内容

① 国内有形固定資産投資 (60兆円程度) 生産・営業活動の維持・拡大のために必要な固定資産の取得

② 国内無形固定資産投資 (10兆円程度) ソフトウェアなど

③ 海外有形固定資産投資 (10兆円程度) 海外における有形固定資産投資

④ M&A(国内、海外) (15兆円程度) 事業領域や規模の拡大のために行う 合併や買収

⑤ 研究開発費 (13兆円程度) 将来の技術優位の獲得や新製品開発などのための研究活動

⑥ 人的投資 (定義により異なる) 企業の全般的な競争力向上のために行う人材開発、教育

広義の投資の内容

狭義の投資

広義の投資

合計50兆円程度

企業は設備投資以外にも投資的支出を行う

企業は、将来にわたる成長や企業価値の向上に向けた取り組みとして、設備投資(有形固定資産)以外にも、投資的な支出を行っている。

10

(備考)日本政策投資銀行「設備投資計画調査」

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0

10

20

30

40

50

60

国内での有形固定資産投資 海外での有形固定資産投資 研究開発費 M&A 人的投資 ソフトウェアなどの無形資産投資

鉄鋼・非鉄金属(53社)

化学(82社)

一般・精密機械(91社)

電気機械(53社)

輸送用機械(63社)

その他(161社)

40

21

42

23

46

8

0

10

20

30

40

50

60

国内での有形固定資産投資 海外での有形固定資産投資 研究開発費 M&A 人的投資 ソフトウェアなどの無形資産投資

製造業合計(503社)

①国内有形

固定資産投資

②海外有形

固定資産投資

③研究開発

④M&A

⑤人的投資

(人材育成)

⑥無形資産投資

(注)2つまでの複数回答

(有効回答社数比、%)

①国内有形

固定資産投資

②海外有形

固定資産投資

③研究開発

④M&A

⑤人的投資

(人材育成)

⑥無形資産投資

(有効回答社数比、%)

企業の「広義の投資」への意識は高い

国内有形固定資産以外にも、将来の成長に向けて、人的投資や研究開発などに高い優先度をおいている企業が多い。

製造業の「広義の投資」の優先度(DBJ調査)

【製造業全体】 【業種別】

(備考)1.日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査」 2.調査時点:2016年6月24日、調査対象:資本金10億円以上の民間法人企業(金融保険業を除く)

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海外生産は輸出を上回る規模

製造業の海外売上高と輸出の関係(イメージ図、2014年度)

(備考)売上高は財務省「法人企業統計」、輸出額は財務省「貿易統計」、その他は経済産業省「海外事業活動基本調査」 のデータを用いて、DBJ作成。異なる統計の組み合わせて作成しているため、厳密には整合性を欠く面がある。

海外 (単位:兆円)

現地日系企業 向け販売

28

海外マーケット 向け輸出

54

現法向け 輸出

21

海外マーケット 向け販売

88

日本

日本マーケット向け販売

330

【日本企業】 総売上高 405

【海外現地法人】

総売上高 130 輸出

75

逆輸入

14

海外での旺盛な設備投資で、製造業の海外での生産能力は拡大。海外現地法人による海外マーケットでの販売額は、輸出金額を上回る水準に成長。

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成長期待の高い海外で積極的なビジネス拡大

(備考)経済産業省「海外事業活動基本調査」

海外現地法人の設備投資 国内と海外の設備投資(名目)の伸び (兆円)

(年度) (年度) (備考)経済産業省「海外事業活動基本調査」、内閣府

国内設備投資

海外設備投資

(前年比、%)

海外への成長期待とリーマンショック後の円高を背景に、海外での設備投資が盛り上がった。

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

13

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海外設備投資は伸び一服だが、高水準横這い

海外設備投資の推移(DBJ調査)

アベノミクスが始まってから円安方向に振れたこともあり、足元、海外設備投資の伸びに一服感が見られるが、依然、水準は高い。

0

100

200

300

400

500

600

02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

(年度)

(2002年=100)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

(年度)

(2002年=100) 【製造業】 【非製造業】 計画 計画

国内設備投資

海外設備投資 (円ベース)

海外設備投資 (米ドルベース)

国内設備投資

海外設備投資 (米ドルベース)

海外設備投資 (円ベース)

14

(備考)1.日本政策投資銀行「設備投資計画調査」 2.点線の米ドルベースは、ドル/円レートの変化率で試算。 2016年度は当行調査の想定為替レート(製造業:112.8円/㌦、非製造業:114.0円/㌦)で試算。

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25.7

18.4

26.6

60.3

44.4 46.7

0

10

20

30

40

50

60

70

2011 12 13 14 15 16

国内供給能力

海外合計

増加 変わらず 縮小

海外供給能力

増加 18.4 41.1 4.0 63.5

変わらず 5.1 26.6 1.7 33.4

縮小 0.3 1.7 1.1 3.1

国内合計 23.8 69.4 6.8 100.0

製造業の中期的(今後3年程度)な国内・海外の供給能力(DBJ調査)

①相対的に海外を強化

②内外ともに増加

③内外ともに維持 ④相対的に国内を強化

(年度)

① ①

④ ④

(構成比、%)

15

製造業の中期的な国内外の供給能力について、2012年度をピークに低下していた「相対的に海外を強化」の構成比が16年度に上向いた。

為替レートが国内外の供給能力のバランスに影響

(備考)1.日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査」 2.調査時点:2016年6月24日、調査対象:資本金10億円以上の民間法人企業(金融保険業を除く)

<2016年度回答詳細>

(2016年度調査有効回答数:353社)

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期待成長率と設備投資の相関は高い

アベノミクス前の閉塞感は和らいだが、国内の成長期待は今ひとつ。 企業が国内で有望な投資機会を見つけられない、あるいは、投資機会があっても投資に踏み切る決断ができずにいる可能性。

(%) 企業の期待成長率(今後5年間)と設備投資

企業アンケートの 期待成長率(右目盛)

設備投資の伸び

(年度)

16

(%)

(備考)内閣府「企業行動に関するアンケート調査」(毎年1月)、「国民経済計算」

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

30

80 85 90 95 00 05 10 15

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0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

2000年以降の設備投資は期待成長率を満たす水準ではない

足元の設備投資の伸び率は、1%を下回る期待成長率と整合的なものでしかなく、設備投資はまだ本格回復とは言えない。

(%) 企業の期待成長率

企業アンケートの 期待成長率 (今後5年間)

設備投資から逆算した 期待成長率

(備考) 1.企業アンケートの期待成長率は、内閣府「企業 行動に関するアンケート調査」(毎年1月)による 2.設備投資から逆算した期待成長率は、内閣府

「国民経済計算」「民間企業資ストック統計」によりDBJ試算。

3.以下の関係式に基づき、設備投資の伸びから、それと整合的な期待成長率を逆算したもの。

(年度)

I/K-1=I/I-1・I-1/K-1=Y*+γ+δ

Y*:期待成長率 γ:資本係数の上昇トレンド δ:減耗率

17

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世界経済の潜在成長率はリーマン・ショック前を下回る

潜在成長率(IMF推計)

2.2

1.3 1.6

0

1

2

3

4

01~07年 08~14年 15~20年

(年平均、%)

6.7 6.3

5.2

0

2

4

6

8

01~07年 08~14年 15~20年

(年平均、%)

(備考)IMF

【先進国】 【新興国】

資本ストック 要因

労働要因

TFP要因

IMFによると、先進国・新興国とも潜在成長率がリーマンショック前よりも低下。 人口高齢化に伴う労働投入の伸び悩みだけでなく、資本蓄積鈍化も影響。

18

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投資機会の減少は世界的な傾向

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

90 95 00 05 10

(90年=0)

07年春予測

実績

世界の民間投資(2007年時点予測と実績との乖離)

(備考)1.IMF 2.実質値、Log表示

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

90 95 00 05 10

(90年=0)

07年春予測

実績

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

90 95 00 05 10

(90年=0)

07年春 予測

実績

(暦年)

【先進国】 【新興国(除く中国】 【中国】

(暦年) (暦年)

リーマン・ショック以降、世界的に民間投資の下ぶれが見られ、それが成長を鈍化させるとともに、その後の潜在成長率の低下につながった。これが、将来の成長期待を低下させ、足元の民間投資を抑制する悪循環を生んでいると、IMFは指摘。

19

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2.イノベーションと設備投資 (ミクロ的な視点から)

20

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個別企業の設備投資はマクロ統計よりも山谷激しい動き

設備投資には、一旦行われると、その設備を容易に廃棄できない性質がある(設備投資の不可逆性)。

市場価格や将来収益などの不確実性が高い場合、将来見通しが良くなるまで設備投資を手控えるのが合理的。

環境が好転し、一気に設備投資が行われると、その企業の設備投資の時系列に断続性が生じ、設備投資の大きな山ができる(投資スパイク)。

この傾向は、まだ市場が育っていない分野や、投資規模が大きくなるほど強い。従って、大型投資は、新たな技術革新や新製品を導入した際に実施されることが多い。

21

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設備投資低迷の背景に大型投資の低迷

90年代までは、大型投資の動きが設備投資全体の動きを形作った。2000年代は大型投資が低迷。

22

(出所)田中賢治・宮川努「大型投資は企業パフォーマンスを向上させるか」“RIETI Discussion Paper Series”,09-J-032

資本ストックに対する設備投資の比率

0

2

4

6

8

10

12

14

16

80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06

設備投資全体

大型投資以外の設備投資

大型投資

(年度)

(%) 日本政策投資銀行の『企業財務データバンク』を用いて、上場企業の大型投資を分析。

対象企業数は、全産業2,558社(製造業1,480社,非製造業1,078社)

設備投資/資本ストック比率が20%超の場合、大型投資を実施したとみなす。

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-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06

大型投資の変動

個別企業の大型投資

大型投資を行った企業数の変動

大型投資を実施する企業の数が減少

大型投資の変動は、大型投資を行った企業数の変動による。2000年代の低迷も企業数の減少が原因。

23

(出所)田中・宮川「大型投資は企業パフォーマンスを向上させるか」“RIETI Discussion Paper Series”,09-J-032

大型投資の変動の要因分解

(年度) 0

5

10

15

20

25

30

35

40

80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06

全産業

製造業

非製造業

(%)

(年度)

大型投資を実施した企業の割合

))(

ln())(

)(ln()

)(ln(

K

ISK

ISK

ISI

K

ISI

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【参考】大型投資の効果の分析手法

(1)Probit推計で大型投資を行う確率を求める 大型投資が起きたときを1、そうでないときを0とするprobit推計。 説明変数:TobinQ、キャッシュフロー、負債比率、3大株主持株比率、相対的TFP、同一産業での大型投資の比率、実質為替レート、規制変数、不確実性。

(2)マッチング ほぼ同様の確率(企業属性がほぼ同じ)でありながら、大型投資を行った企業とそうでない企業があり、これらを対応(Propensity Score Matching)

(3)DID分析(Difference in Difference) 両グループ間に企業パフォーマンスに格差が存在するかを以下で推計

y:大型投資ダミー (実施:1、実施せず:2)

パフォーマンス指標:実質売上高(SALES)、期末従業員数(L)、労働生産性(Y/L)、総資産利益率(ROA)

※ROA1は償却後税引後利益、ROA2は償却前税引後利益を採用

24

(出所)田中・宮川「大型投資は企業パフォーマンスを向上させるか」“RIETI Discussion Paper Series”,09-J-032

112111 ttftftft yzz

大型投資の効果を見極めるため、大型投資を行った企業とそうでない企業の、その後のパフォーマンスを、以下の手順で比較

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大型投資後に企業パフォーマンスが改善

25

(出所)1.田中・宮川「大型投資は企業パフォーマンスを向上させるか」“RIETI Discussion Paper Series”,09-J-032 2.カッコ内はt値

推計期間:1983-1991

企業パフォーマンス指標

ROA1 -0.0029 ( -2.60 ) *** -0.0041 ( -3.35 ) *** -0.0031 ( -2.38 ) **

ROA2 0.0017 ( 1.51 ) -0.0002 ( -0.13 ) 0.0005 ( 0.34 )

推計期間:1992-1997

企業パフォーマンス指標

ROA1 -0.0010 ( -0.74 ) -0.0014 ( -0.81 ) -0.0011 ( -0.58 )

ROA2 0.0029 ( 2.15 ) ** 0.0024 ( 1.38 ) 0.0016 ( 0.84 )

推計期間:1998-2006

企業パフォーマンス指標

ROA1 -0.0014 ( -0.67 ) 0.0002 ( 0.09 ) 0.0001 ( 0.04 )

ROA2 0.0041 ( 1.94 ) * 0.0062 ( 2.53 ) ** 0.0053 ( 2.07 ) **

1年後 2年後 3年後

1年後 2年後 3年後

1年後 2年後 3年後

全産業(推計期間:1983-2006)

企業パフォーマンス指標

SALES 0.0642 ( 8.43 ) *** 0.0639 ( 6.95 ) *** 0.0570 ( 5.37 ) ***

L 0.0471 ( 6.74 ) *** 0.0533 ( 7.22 ) *** 0.0555 ( 5.90 ) ***

Y/L 0.0344 ( 2.12 ) ** 0.0248 ( 1.34 ) 0.0120 ( 0.56 )

ROA1 -0.0023 ( -2.39 ) ** -0.0034 ( -3.03 ) *** -0.0034 ( -2.88 ) ***

ROA2 0.0030 ( 2.96 ) *** 0.0017 ( 1.49 ) 0.0013 ( 1.07 )

1年後 2年後 3年後

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技術革新が設備投資を誘発

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1990年代 2000年代 2000年代

前半 後半 前半 後半 前半

デジタル化

固定通信デジタル化(通信)

デジタル家電(電気機械) 地上波デジタル化(放送) デジタル家電(電気機械)

IT・ ネットワーク化

移動通信・光ファイバー敷設(通信) 印刷用塗工紙(紙パルプ)

移動通信・光ファイバー敷設(通信)

移動通信・光敷設・データセンター(通信) 半導体・液晶・電子部品・ 二次電池(電気機械) 電子材料(化学) 液晶ガラス基板(窯業土石)

移動通信大容量化・データセンター(通信) フラッシュメモリ・センサー・電子部品(電気機械) 電子材料(化学)

Eコマース 物流センター(運輸) 物流センター(運輸) 物流センター(運輸)

エコカー

エコカー(自動車) エコカー部材・二次電池(電気機械、化学、窯業土石)

エコカー(自動車) エコカー部材(電気機械、化学、窯業土石)

高機能素材 不織布(繊維) ABS樹脂(化学) 炭素繊維(繊維)

炭素繊維(繊維) ハイテン(鉄鋼)

環境・省エネ 技術

低ベンゼン化(石油) 軽油脱硫化(石油) 太陽電池・LED(電気機械) 太陽光発電(電力) 太陽電池(電気機械)

健康・ ヘルスケア

健康食品(食品) 医療機器(精密機械)

健康食品(食品) 医療機器(精密機械)

半導体・液晶・電子部品・二次電池(電気機械) 電子材料(化学) 液晶ガラス基板(窯業土石) シリコンウエハ、光ファイバー(非鉄金属) 半導体製造装置(精密機械)

(備考)日本政策投資銀行「設備投資計画調査」より作成。

技術革新から誘発された設備投資の例

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【参考】産業別の設備投資実績

27

(出所)1.日本政策投資銀行「設備投資計画調査」より作成 2.対象企業は大企業(資本金10億円以上)

産業別の設備投資の伸び 年度 1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

全産業 14.9 8.2 -7.4 -11.4 -8.0 2.3 6.0 -1.5 -8.0 -8.4 4.1 -9.1 -10.3 -1.1 1.7 8.5 7.7 7.7 -7.1 -16.7 -2.5 -2.1 2.9 3.0 6.3 4.8

食品 2.8 -7.7 3.0 -8.0 -17.4 -7.9 -1.1 13.5 -12.1 -2.7 -3.2 -5.4 -14.6 -11.2 11.5 7.7 -11.1 4.2 -10.5 2.5 -10.9 0.4 11.4 1.0 3.5 -5.0

繊維 10.5 1.9 -1.5 -30.8 -11.6 0.8 -29.3 2.7 -5.4 -12.8 -19.8 3.7 -13.4 -1.8 -18.9 69.9 -31.7 63.1 -12.1 -63.8 8.0 -15.1 36.0 4.5 -8.2 18.1

鉄鋼 23.6 25.1 -10.9 -21.3 -14.6 4.1 -19.1 -12.0 0.3 -14.0 -21.1 7.5 -20.9 20.2 6.8 36.9 35.8 7.8 10.3 2.8 -26.6 -10.9 7.7 -13.5 10.7 -2.8

石油 22.7 35.8 10.1 -13.4 -16.1 -7.5 -22.0 -32.2 -32.5 -32.3 -36.8 34.7 32.3 -11.1 28.1 2.3 79.9 -20.2 7.1 32.7 -51.1 -23.0 14.4 19.2 27.2 -20.4

化学 14.6 9.5 -17.5 -27.1 -17.1 6.1 8.9 14.5 -10.2 -22.4 10.1 6.8 -19.1 5.3 17.5 5.3 13.2 9.5 -10.4 -23.9 6.0 -6.4 10.3 -12.6 8.7 0.9

窯業・土石 25.9 6.7 -22.4 -27.4 -14.3 15.4 -1.3 -1.0 -9.5 -20.2 37.1 -7.2 -31.7 8.3 29.1 30.9 16.1 13.7 13.4 -31.3 37.7 -20.6 -36.4 4.1 4.8 13.3

非鉄金属 48.0 19.2 -17.2 -22.5 -15.5 11.7 18.5 2.4 -25.4 -30.5 64.3 10.4 -44.6 12.9 16.4 14.8 18.5 36.1 -0.5 -50.9 -14.3 14.1 2.6 -10.9 -13.8 30.8

紙・パルプ -5.4 -41.6 -15.2 -5.9 -28.6 53.1 36.1 4.8 -33.8 -29.4 24.2 16.4 -19.7 -9.1 -7.2 25.6 34.4 24.4 -38.1 -42.9 -13.2 38.2 -27.7 39.7 -12.7 3.2

電気機械 21.1 -1.4 -33.7 -15.9 19.9 25.8 2.0 -1.1 -21.9 0.0 38.7 -34.3 -20.9 34.8 8.4 3.2 15.1 8.3 -31.1 -35.1 9.2 -3.6 -15.4 -3.6 -4.0 32.5

一般機械 32.2 1.2 -15.5 -29.3 -16.6 8.4 21.2 12.4 -6.9 -28.3 0.6 -3.3 -18.7 4.6 35.9 30.3 8.7 6.9 4.2 -43.4 -10.9 18.3 8.8 -14.2 -3.9 11.6

精密機械 0.5 -0.4 -44.4 -20.2 -8.9 9.2 18.2 24.3 -3.3 -29.2 34.2 -6.0 -20.2 29.5 31.0 5.4 -0.2 15.0 -26.4 -38.1 4.8 25.0 -12.0 7.4 -1.4 25.5

輸送用機械 30.3 5.2 -23.3 -36.2 -16.9 8.6 21.9 16.6 -2.9 -19.2 -3.7 2.0 1.5 2.5 23.9 23.6 -1.5 1.4 -7.3 -45.9 -10.2 -2.6 17.9 3.7 11.0 13.4

通信・情報 5.3 4.7 3.1 0.1 -3.2 13.7 28.0 -6.1 3.7 -12.5 2.1 -10.8 -14.2 -3.8 1.2 9.5 3.5 -4.8 3.5 -6.1 -0.9 5.7 5.1 0.7 -0.8 -13.8

運輸 14.6 9.5 -0.4 -5.9 -10.9 -7.4 12.4 -10.2 -8.8 -2.7 -5.0 -7.1 15.8 -9.3 -6.9 1.8 14.8 21.9 -15.2 3.4 -1.5 -4.4 1.9 7.7 7.4 13.1

電力・ガス 8.8 13.8 8.5 8.4 -6.1 -4.9 -2.9 -7.6 -7.6 -6.3 -8.9 -10.2 -19.0 -16.6 -17.7 3.2 -1.7 23.0 10.6 -4.4 4.6 0.0 -1.4 -4.4 1.0 13.0

建設 36.6 26.5 0.4 -20.5 -16.9 -21.5 -8.8 -10.5 -16.6 -35.0 -5.4 -0.5 6.0 -7.2 9.1 -2.1 25.2 7.3 41.7 -31.5 41.5 -8.5 20.3 13.1 36.5 -13.8

卸売・小売 16.4 25.8 -15.5 -20.2 -5.6 -3.1 10.5 -7.0 -1.7 -8.5 6.6 -19.5 2.8 9.8 9.0 -1.9 -3.7 5.8 8.2 -9.9 -13.1 0.1 21.6 11.2 0.7 -8.9

不動産 15.5 0.5 5.4 -17.3 -16.4 -19.3 -18.3 2.0 -19.2 -19.2 17.7 -19.5 -0.6 -8.8 2.5 29.2 17.6 29.3 -13.3 -13.3 12.5 -18.3 -15.5 32.1 38.4 6.1

リース 10.1 6.4 -6.6 -6.9 -1.8 6.3 7.8 5.1 -6.5 7.6 5.4 3.1 -4.4 -2.3 -4.8 1.5 0.6 -7.0 -13.9 -2.8 14.0 -31.0 35.7 8.6 61.8 14.6

(前年比、%)

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3.設備投資の復活には何が必要か

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中期的な成長市場開拓の取り組み (DBJ調査)

(構成比、%)

本業優先で、 取り組む予定はない

今後取り組む予定がある

取り組んでいる

国内成長市場開拓の取り組み具体事例(DBJ調査)

業種 取り組み事例

製造業

化学 再生・細胞医薬、癌治療、ジェネリック医薬品、 ファインケミカル、メタノール型燃料電池、電子材料

一般機械 医療機器、3Dプリンター、水素事業、水処理関連、 介護事業、ロボット分野

電気機械 医療分野、パワーエレクトロニクス、 電気自動車用モータ、自動運転、次世代エネルギー

輸送用機械 医療用部材、モータ動力部品、 ロボティックサポートデバイス

非製造業

運輸 マンション分譲、植物工場、空港運営、港湾運営 観光関連事業、高齢者事業、保育事業

卸売・小売 電力自由化、高齢者事業、通信、Eコマース

建設・不動産 ホテル事業、商業事業、環境事業、農業、物流事業

(注)成長市場開拓=現在の中核事業以外の新たな事業やサービスの展開

35 32

8 9

58 59

0

20

40

60

80

100

製造業

(505社)

非製造業

(686社)

中期的な成長市場開拓(現在の中核事業以外の新たな事業やサービスの展開)に取り組む企業は、製造業、非製造業とも4割程度にとどまる。

(備考)1.日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査」 2.調査時点:2016年6月24日、調査対象:資本金10億円以上の民間法人企業(金融保険業を除く)

本業以外に一歩踏み出す取り組みがやや弱い

29

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0

10

20

30

40

50

60

70

80製造業(272社)

非製造業(314社)

市場開拓や新規事業に取り組む理由 (DBJ調査)

①将来の新たな収益

の柱とするため

②事業多角化の一環

③株主・投資家の

成長期待に対応

④他社に遅れを

とらないため

⑤既存事業の収益力

低下傾向のため

⑥既存事業との

シナジー

⑦今後の高い成長が

見込まれるため

⑧社員の雇用機会

確保のため

⑨その他

(注)2つまでの複数回答

(有効回答社数比、%)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1 2 3 4 5 6 7 8 9

製造業(210社)

非製造業(378社)

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)

既存事業で収益確保

や成長が見込まれる

海外展開による成長

が見込まれるため

既存事業の収益力

向上を優先

人材不足

財務余力の不足

不採算事業の

縮小を優先

過去に失敗した経験

があるため

親会社、株主の意向

で事業分野を限定

その他

(注)2つまでの複数回答

市場開拓や新規事業に取り組まない理由 (DBJ調査) (有効回答社数比、%)

既存事業優先で成長市場開拓に二の足

市場開拓や新規事業に取り組まない理由として、「既存事業の収益力向上を優先」や「既存事業での収益確保や成長が見込まれる」などの回答が多い。

(備考)1.日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査」 2.調査時点:2016年6月24日、調査対象:資本金10億円以上の民間法人企業(金融保険業を除く)

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内需の掘り起こしが求められる

製造業・非製造業 共通の課題

低い期待成長率と盛り上がりを欠く設備投資の悪循環を断ち切るには、企業側の一歩踏み込んだリスクテイキングが求められる。

企業側が、一歩踏み込んで、内需の掘り起こしが広がれば、国内で設備投資は盛り上がる。

不満があるところにビジネスチャンスは存在する。ニーズに応えることでビジネスは広がる。

非製造業の課題

内需の掘り起こしには、非製造業の役割が重要。 例えば、日本は高齢化の先進国。生活周りの潜在需要は大きい。まだ十分に供給されていないサービスを掘り起こすことは可能。

(高齢者にやさしいまち作り、介護・医療、家事など)

製造業の課題

本業の海外展開だけでなく、国内に目を向けると、製造業の技術を生かしたソリューションが求められている課題が山積。

掘り起こされたニーズに対応した新しいサービスを提供するためには、製造業の技術開発が欠かせない。

今後は、製造業と非製造業が垣根を越えて、業際分野での連携が重要となってくる。

31

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暫定的な見解

企業収益の改善ペースに比べ、設備投資の改善は見劣りし、まだ設備投資の本格回復にはほど遠い。

過去四半世紀を振り返ると、需要側のニーズと供給側の新しい技術・アイデアが結びつくことで、新しいビジネスが生まれ、設備投資が行われてきた。

足元、将来の成長市場とみられる分野でも、本業以外には二の足を踏む傾向が強く、設備投資が力強さを欠く背景の一つに企業側の「慎重姿勢」が指摘できる。

設備投資が力強さを欠く二つ目の理由は「低い成長期待」。生活防衛の意識が強く、成長期待の低い日本社会では、埋もれたニーズが浮かび上がりにくい。

投資不足は世界的な課題。一方、IOTやAIなどの、今後のビジネスや社会を大きく変える可能性のあるイノベーションが、世界的レベルで開花しようとしている。

企業が、イノベーションに積極的に取り組むとともに、国内ニーズに真剣に向き合い潜在需要を掘り起こすことで、新しいビジネスが生まれる。今後は、チャレンジ精神と一歩踏み込んだリスクテイクが求められる。

32

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