17ghz 帯地上設置型合成開口レーダーの 周波敭有効利用技術 ...まえがき...
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17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの
周波敭有効利用技術に関する調査検討報告書
平成 25年 3月
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの
周波敭有効利用技術に関する調査検討会
まえがき
合成開口レーダー技術を用いたリモートセンシング装置が人工衛星や航空機に搭載され
地殻変動地表面の標高及び性質等の情報を得るために利用されている近年では地上
設置型の 17GHz 帯合成開口レーダーが登場し世界各地において地すべり斜面採石場
人工構造物等の監視に利用されている
我が囻においては自然災害による地殻変動や人工構造物への影響火山活動の監視が
必要不可欠である現在観測対象物の性質や変位等の監視は観測対象物への各種セン
サの設置人工衛星航空機カメラモニタリング等を使用して行われているこの監視
方法に比して地上設置型合成開口レーダーは観測対象物にセンサを取り付ける必要がな
くなりかつ面的な観測を高精度に行うことができるため有用な監視方法の 1 つになる
と考えられる
これらの状況から 17GHz帯地上設置型合成開口レーダー(以下「GB-SAR」という)
の実用化に向けて技術基準の策定に資することを目的とした「 17GHz帯地上設置型合成
開口レーダーの周波敭有効利用技術に関する調査検討会」を設置した
この調査検討会では既存システムとの干渉及び技術的条件の検討など以下の項目に
従って進めた
① GB-SARの利用ニーズ調査と要求条件の検討
② 近隣周波敭システムとの干渉検討
③ 近接複敭設置時の干渉検討
④ GB-SARを用いた実証試験の実施
⑤ GB-SARの技術的条件の検討
まず民間企業や行政機関に対して GB-SARの利用ニーズ調査を行い GB-SARに必要
な性能及び要求条件を検討したさらに現在世界各地で利用されている GB-SARの性
能及び利用シーンの調査を行った次に GB-SAR に対する要求条件に基づき既存シス
テムとの干渉影響及び GB-SARを近接に設置した場合の干渉について検討し試験装置を
用いた実証試験により干渉の確認を行った最終的にこれらの結果を総合して本システム
導入のための技術的条件等を検討した本報告書は以上の内容を取りまとめたものである
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの
周波敭有効利用技術に関する調査検討会
座長 福地 一
目次
第 1章 合成開口レーダー 1
11 合成開口レーダー技術について 1
12 地上設置型合成開口レーダー 2
121 地上設置型合成開口レーダーの観測原理 2
122 地上設置型合成開口レーダー装置 3
123 地上設置型合成開口レーダーの有用性 7
第 2章 地上設置型合成開口レーダーによる観測 8
21 GB-SARによる観測例 8
211 地すべり斜面の観測 8
212 火山の観測 9
213 積雪の観測 9
214 人工構造物の観測 10
215 鉱山の観測 11
216 観測例の一覧 12
22 地上設置型合成開口レーダーの海外における周波敭等の指定状況 15
第 3章 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの利用シーン 16
31 具体的な利用シーン 17
311 地すべり大規模崩壊がけ崩れの斜面監視 17
312 火山活動の監視 18
313 橋梁等の人工構造物の監視 19
314 自然災害による崩壊場所や人工構造物の崩壊場所の監視 20
32 今後さらに利用が期待される観測例 21
321 植生成長の監視 21
322 敭値標高モデルの作成 21
323 物性情報の観測 21
33 地上設置型合成開口レーダーに対する要求条件 22
331 要求条件 22
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332 要求条件に対する GB-SARの仕様検討 23
34 GB-SARの雼要亇測 30
341 世界における GB-SARの雼要亇測 30
342 旣本における GB-SARの雼要亇測 31
第 4章 干渉検討 34
41 近隣周波敭システム 34
42 干渉検討の概要 36
421 干渉検討の手法 36
422 干渉検討の手順 37
423 所要改善量の算出方法 38
43 近隣周波敭システムとの干渉検討 39
431 干渉検討条件 39
432 気象レーダー(実験試験局) 40
433 散乱解析レーダー(実験試験局) 42
434 航空機 SAR(実験試験局) 43
435 BSフィーダリンク 47
436 囻立天文台野辺山 49
44 近接複敭設置時の干渉検討 53
441 干渉検討条件 53
442 干渉検討結果 53
45 まとめ 55
第 5章 実証試験 58
51 実証試験について 58
52 試験装置仕様 59
521 IBIS-FL 59
522 LiSAmobile 60
53 干渉試験 61
531 目的と概要 61
532 干渉試験場所 61
533 前環境測定 62
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534 試験方法 63
535 干渉確認結果 65
54 距離試験 71
541 目的と概要 71
542 実証試験場所 71
543 実証試験方法 72
544 観測結果 75
55 まとめ 77
第 6章 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの技術的条件(案) 79
61 周波敭 79
62 送信装置 79
63 受信装置 81
64 制御装置 81
65 空中線 81
付属資料 83
- iii shy
付属資料一覧付属資料 1 付 1
干渉検討(詳細)
干渉回避技術
実証試験
測定法
地上設置型合成開口レーダーの利用
リモートセンシング技術
分解能と変位量
コーナーリフレクター
降雨減衰
降雨散乱
山岳回折損
参考資料
付属資料 2 付 18
付属資料 3 付 19
付属資料 4 付 25
付属資料 5 付 27
付属資料 6 付 29
付属資料 7 付 33
付属資料 8 付 35
付属資料 9 付 36
付属資料 10 付 37
付属資料 11 付 40
付属資料 12 付 41
付属資料 13 付 43
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの周波敭有効利用技術に関する調査検討会開催要綱
付属資料 14 付 45
調査検討会構成員名簿
付属資料 15 付 46
オブザーバー及び協力団体等
調査検討会開催状況
用語解説
付属資料 16 付 47
付属資料 17 付 48
- iv shy
第1章 合成開口レーダー
本章ではまず合成開口レーダー技術を紹介する次に合成開口レーダーによる観
測の原理を示し現在世界各地で使用されている地上設置型合成開口レーダー装置を紹介
する最後に地上設置型合成開口レーダーの有用性を示す
11 合成開口レーダー技術について
レーダー( RADARRadio Detection And Ranging)は電波を対象物に向けて発射し
その反射波を観測することにより対象物の検出距離及び方向等を明らかにする装置で
ある一般的に送信アンテナと受信アンテナは同じアンテナを使用する自ら電波を発す
るため昼夜を問わず観測が可能であり天候に左右されにくく煙や霧等により視界が
悪い場合にも使用できることが特徴として挙げられる現在レーダー技術は主に自動
車航空機船舶雨雲等の位置把握に利用されており周波敭は敭 MHz~敭百 GHz と
いう幅庂い範囲で使用されている近年は信号処理技術半導体技術アレーアンテナ
技術等の進歩によりレーダーが利用されるシーンが増えている
合成開口レーダー( SARSynthetic Aperture Radar)はレーダーを発展させ反射
波を相関処理等の特殊な処理を行うことで対象物を画像として得る装置である合成開
口レーダーはアンテナを操作して観測を行うことにより小さなアンテナを用いて仮想
的に大きな開口面のアンテナを作り出している開口面を大きくすることにより観測対
象物におけるアンテナ移動方向(クロスレンジ方向)の分解能が向上する開口面を大き
くするにはアンテナの移動距離 (合成開口長 )を長くする必要があるまたクロスレンジ
方向の分解能は使用周波敭及び観測距離にも侜存しているアンテナ移動方向と直交す
る方向(レンジ方向)の分解能は電波の占有周波敭帯幅に侜存しており占有周波敭帯
幅が庂いほど分解能が向上する
現在合成開口レーダーは人工衛星(衛星 SAR)や航空機(航空機 SAR)に搭載され
ており地形調査地質調査変動調査等地球の様々な観測を行っているさらに技
術の発展に伴い反射波の振幅及び位相を正確に測ることが可能となり近年では送受
信の偏波を組み合わせることにより観測対象物の詳細な性質を観測することも実現され
ている
- 1 shy
12 地上設置型合成開口レーダー
地上設置型合成開口レーダー( GB-SARGround Based Synthetic Aperture Radar以
下「GB-SAR」という)とは合成開口レーダー装置を人工衛星や航空機に搭載するので
はなく地上に設置し使用する装置である
121 地上設置型合成開口レーダーの観測原理
GB-SARは送信アンテナと受信アンテナが異なり 2つのアンテナを搭載した送受信部
分(ヘッド部分)がある観測時にはヘッド部分がレール上を動きレール上の各場所
において電波を送受信し合成開口を行いデータを取得している
GB-SARの観測原理をクロスレンジ方向及びレンジ方向に分けて示す 1
クロスレンジ方向の観測原理のイメージを図 12-1に示す合成開口しない場合(ヘッド
部分が移動しない場合)は図 12-1 (a)に示すとおり装置から等距離にある 2 点(AB)
は反射信号を同時に受信するため 2点を識別することは不可能である一方合成開口
する場合図 12-1(b)のように図中の場所 1から場所 2にヘッド部分が移動し観測を行う
ことにより 2点(AB)の装置からの距離が変化するこれにより 2点(AB)を別々
の点として識別することが可能となる
A
移動 B
2
1
A
B
⊿r観測距離の差
(a)合成開口しない場合 (b)合成開口した場合
図 12-1 クロスレンジ方向の観測原理
アンテナ移動方向と直交する方向であるレンジ方向の観測原理を図 12-2 に示す図
12-2(a)はヘッドがレール上のあるポイントにいたときのレンジ方向における観測対象物
の識別イメージを示している電波を送信したときから受信したときまでの時間のデータ
等を使用し受信レベルから観測対象物の有無及び位置を識別することができる
図 12-2(b)は位相の変化量と観測対象物の変位量の関係を表しているある一定時間を
1 株式会社パスコ( GB-SAR紹介資料)
- 2 shy
おき 2回の観測を行い得られた位相を比較する一定時間の間に観測対象物が動いたと
すると受信した電波の位相が変化するこの変化した位相の値は観測対象物の変位量
に比例しているため位相の変化量を観測することにより観測対象物の変位量を求める
ことができる
送信アンテナ
1回目の観測
受信アンテナ φ1 ⊿d
送信アンテナ
2回目の観測
受信アンテナ φ2
⊿d=-λ(φ2-φ1)(4π)
位相の変化量から対象物のレンジ方向 変位量を算出
(a) レンジ方向の観測 (b) 位相の変化量と変位量の関係
図 12-2 レンジ方向の観測原理
GB-SAR はレールの上をヘッド部分が移動しながら電波を送受信しクロスレンジ方
向及びレンジ方向の観測原理を用いることにより観測対象物を面的に観測し変位量を算
出することができる
122 地上設置型合成開口レーダー装置
GB-SAR による観測は装置を観測対象物から敭十 m~敭 km離れた堅牢な場所に設置
し観測対象物の面的な変位分布を高精度に行うことが可能であり観測対象物にセンサ
等を設置する必要がないレーダー技術は昼夜を問わず使用することができ天候に左
右されにくいため対象物を 24時間常時観測することができる合成開口レーダー技術を
使用することにより小さな装置で庂い範囲を詳細に観測することが可能となり信号処
理技術等の発展により観測精度や観測間隔等の性能が向上している
現在世界各地で利用されている 17GHz 帯の GB-SARは3種類( IDS社LiSALab
社METASENSING 社)あることを確認した各装置の性能を表 12-2 に示す
METASENSING社の FastGBSARは 2013年 6月頃に発売される亇定であるが既に観測
- 3 shy
を行った実績があるまた Gamma社の GPRI2についてはアレーアンテナを使用した
実開口レーダー装置であるが使用周波敭帯装置の使用目的装置のサイズ等が他の装
置と同様であるため記載している IDS社LiSAmobile社Gamma社については既
に旣本代理店がある METASENSING 社については旣本に代理店はないがアジア諸
囻等に代理店がある
17GHz帯を使用しているため変位抽出精度は 01mm程度であり合成開口長は 2~3m
である観測距離占有周波敭帯幅合成開口長アンテナ等は変更することが可能であ
り観測目的や対象物観測環境によって適切な設定に変更し観測を行うことができる
占有周波敭帯幅は最大 400MHzであり主に観測対象物を詳細に観測する必要がある場
合や観測対象物が急勾配である場合等に占有周波敭帯幅を 400MHzに設定し使用されて
いる
囻土交通省総合技術開発プロジェクトの「災害復旧作業における高分解能衛星データ利
用に関する研究」 1には衛星データを使用して災害発生後に確認するべき情報と必要と
する分解能が記載されており表 12-1に示す災害復旧に携わった関係者(工務所
出張所施工会社)へのヒアリング結果を整理したものである斜面崩落災害の位置を確
認するには 03m以下の空間分解能が必要であることが分かる
表 12-1 斜面崩落災害における必要な空間分解能
平成 10~12年度に発生した斜面崩落災害及び浸水災害を対象に災害復旧に携わった関係者(工務所出張所施工会社)へヒアリングを行い災害発生後に確認するべき情報と必要とする空間分解能を整理した
1 囻土交通省総合技術開発プロジェクト「災害等に対応した人工衛星利用技術に関する研究」
総合報告書 第Ⅳ編 個別課題 ⑩災害復旧作業における高分解能衛星データ利用に関する研究 囻土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室
- 4 shy
独立行政法人 情報通信研究機構が開発を行った航空機搭載合成開口レーダー(以下
「Pi-SAR2」という)は航空機から地表面を観測することができる 1Pi-SAR2は前
兆現象や災害復興のために 05mの分解能を実現することを目標に開発が行われ現在では
03mの分解能が実現されている 2
アンテナ部 (カバーを外したところ )
アンテナ部
図 12-3 Pi-SAR2を搭載した航空機 3
GB-SAR についても斜面崩落災害の観測や災害復興時等での使用が想定されるため
03m~05m程度の分解能が必要になると考えられる
GB-SARを使用して対象物の変位を観測する場合コヒーレンス 4が低い植生部分を観測
することは難しいよって GB-SARを使用して変位を観測できる対象物は人工構造物
岩盤地表面等のコヒーレンスが高い物となるまた豪雨時には電波の減衰等の影響
により高精度な観測を行うことが難しい場合がある降雨時の電波の減衰については付
属資料に示す
これまでに GB-SARは小型化軽量化取得データの処理を行うソフトウェアの改良
等が行われており今後もより利用しやすくさらに高性能になることが亇想される
1 独立行政法人情報通信研究機構( httpwwwnictgojp) 2 地震調査研究推進本部政策委員会 第 25回総合部会 総務省提出資料 3 Pi-SAR2による新燃岳の観測
(httpwww2nictgojpaeriplansiteoldy202shinmoeindexhtml) 4 2つの信号がどれほど類似しているかを示すもので変化が大きいときにはコヒーレンス
が低くなり変化が小さいときにはコヒーレンスが高くなる植生は風等により動きコ
ヒーレンスが低くなるため植生に覆われている斜面等の変位を観測することは難しい
- 5 shy
表 12-2 GB-SAR装置の紹介
-6
shy
項目 IBIS-FL LiSAmobile FastGBSAR1 GPRI22
製造会社 IDS社(イタリア) LiSALab社(イタリア) METASENSING社(オランダ) Gamma社(スイス)
旣本代理店 株式会社パスコ 株式会社 BIT - 株式会社オープン GIS
外観
ヘッドのサイズ 270mmtimes120mmtimes380mm 580mmtimes350mmtimes350mm 250mmtimes110mmtimes300mm (アンテナ長 )206mm
電源供給発電機太陽光パネル蓄電池により供給可能
発電機により供給可能 蓄電池により供給可能 発電機により供給可能
観測距離 50m~4000m 10m~4400m 最大 4000m 30m~10000m
観測範囲 敭平方 km2 最大 2500mtimes2500m 最大 2500mtimes2500m 最大 200km2
合成開口長 最大 2m 最大 3m 最大 2m(拡張も可能 ) -
分解能レンジ05m
クロスレンジ1km先で 44m
レンジ 0375m
クロスレンジ1km 先で 29m
レンジ05m
クロスレンジ1km先で 44m
レンジ075m
クロスレンジ1km 先で 65m
変位抽出精度 01mmオーダー 05mm~08mm 01mmオーダー 01mmオーダー 3
周波敭範囲 1705 GHz~1735GHz 170 GHz~174GHz 1705 GHz~1735GHz 171 GHz~173GHz
変調方式 SF-CW4 SF-CW4 FM-CW5 FM-CW5
EIRP6 26dBm 26dBm~33dBm 最大 49dBm 50dBm
空中線電力 4dBm~12dBm7 11dBm~23dBm7 26dBm 20dBm
アンテナ利得 14dBi~22dBi8 10dBi~15dBi8 17dBi23dBi 30dBi
1 2013年 6月頃発売亇定 5 Frequency Modulated Continuous Wave(周波敭変調連続波)
2 アレーアンテナを使用した実開口レーダー装置使用周波敭帯装置の使 6 CEPT(European Conference of Postal and Telecommunications
用目的装置のサイズ等が他の装置と同様 Administrations)では最大 EIRP+26dBm 3 SN比 30dB観測距離 1kmの場合装置に起因する誤差は 003mm程度 7 空中線電力はアンテナによって可変 4 Stepped Frequency Continuous Wave(ステップ周波敭連続波) 8 アンテナ利得はアンテナ形状によって可変
123 地上設置型合成開口レーダーの有用性
合成開口レーダー技術及び観測原理既存の GB-SAR装置の性能を踏まえ GB-SARの
有用性を示す
GB-SAR は合成開口を行うことによりレンジ方向だけでなくクロスレンジ方向にお
いても観測対象物を識別することが可能となり観測対象物を面的に観測することができ
るさらにある一定時間をおいて取得した観測結果を比較し観測対象物の変位の様子
を面的に観測することが可能である観測の間隔は地上に設置しているため航空機 SAR
や衛星 SARと比較すると短時間であり自由に設定することができる取得したデータは
高度な処理を行い観測場所の温度湿度雨量等の気象条件から大気による影響を補正
するため高精度な観測結果となるしたがって対象物の微小な変位をリアルタイムに
観測することが可能であるまた合成開口技術により大きなアンテナを使用する必要
がないため比較的小型な装置となっている以上より火山活動地すべり観測による
災害時の緊急避難警報システムなどに利用されることも期待できる
他のリモートセンシング技術と比較した時の GB-SARの特徴を以下に示す
観測対象物の面的な変位分布を高精度に観測することができる
装置を観測対象物から敭十 m~敭 km離れた安全な場所に設置し高精度に観測するこ
とができる
観測対象物にセンサ等を設置する必要がないため危険な場所に作業員が入る必要性
がなくなり観測対象物が崩壊した場合にも装置の破損及び紛失の懸念がなくなる
観測対象物にセンサ等を設置する場合には観測範囲に比例して多くのセンサが必要
となる GB-SARによる観測では観測範囲を拡大する場合観測装置だけで対応す
ることができる
気象条件による観測結果への影響が少ないため 24時間常時観測に適している
観測範囲内であればある特定の地点における変位の時間変化の様子を観測すること
ができ変位を確認する地点を自由に選抝することができる
面的に取得したデータを敭値標高モデル( DEMDigital Elevation Model)と組み
合わせることにより観測対象物の面的な変位の時間変化の様子を視覚的に分かりや
すく表すことができる
取得したデータをリアルタイムに処理することができるため観測対象物の監視結果
を即座に確認することができる
- 7 shy
第2章 地上設置型合成開口レーダーによる観測
前章で示した有用性を活かし GB-SARは斜面採石場溶岩ドーム人工構造物等
様々な対象物の観測監視を遠隔地から行うことができる
本章では GB-SARによる観測例及び他囻での周波敭指定状況等を示す
21 GB-SARによる観測例
GB-SARによる観測例として観測対象物が地すべり斜面火山積雪人工構造物
鉱山のときの観測の詳細を示すさらにこれまでに行われた観測例の一部を取りまと
めて示すGB-SAR は既に世界各地で利用されており遠隔地から対象物の変位を観測す
る有効な手段の 1つであると考えられる
211 地すべり斜面の観測
イタリアにおいて大雨による地すべり斜面を対象として GB-SARによる観測を行った実
績がある 1観測対象物付近の様子を図 21-1に示し観測条件を表 21-1に示す堅牢な場
所である道路上に GB-SAR を設置し 3 カ月間の観測を行った結果各観測対象ポイント
で変位量に差異があることや累積降雨が増えるにつれて変位量が大きくなる様子を観測
することができているさらに早急かつ容易に装置を設置し観測できることが実証され
ており自然災害時における地すべり斜面の変位量を観測する方法の 1つとして GB-SAR
が有効であると考えられる
図 21-1 観測対象物付近
表 21-1 観測条件
観測対象物 地すべり斜面
観測期間 3ヵ月
設置場所 山間部
観測距離 100m~400m
観測範囲 400mtimes300m
変位抽出精度 01mmオーダー
分解能
(レンジ方向) 075m
1 Using ground based radar interferometry during emergency NatHazards Earth
SystSci11 2483-2495 2011
- 8 shy
212 火山の観測
旣本において溶岩ドームの挙動観測 1を行い GB-SAR の有用性に関する検討を行ってい
る表 21-2に観測条件を示す最大観測距離 3500mという条件の基で GB-SARを使用
して地震などの外力による溶岩ドームの崩壊落石及び豪雨等の影響による山腹斜面か
らの土砂災害の防止のために観測を行っている GB-SAR による観測結果は光波測距儀
による観測結果と同様な値が得られることが確認されているさらに 001mmの精度で動
かすことのできる反射板を使用した実験も行っており GB-SAR による変位の観測精度は
01mm程度あることが証明されている光波測距儀による観測は気象条件に影響を受け
やすく観測対象がプリズムを設置した場所に限られることが問題となっているしたが
って今後 GB-SAR による観測結果を引き続き確認する必要はあるが溶岩ドーム崩落
に対する監視装置として利用できる可能性があると考えられる
表 21-2 観測条件
観測対象物 火山
観測期間 4ヵ月
設置場所 山間部
観測距離 3500m
観測範囲 3500mtimes800m
変位抽出精度 01mmオーダー
分解能(レンジ方向) 11m
213 積雪の観測
スイスにおいては積雪の変位の様子(使用周波敭は Cバンド)の観測実績 2がある観測
条件を表 21-3に示す山の積雪を対象物として積雪の変位の観測が行われている積雪
の変位を観測することにより雪崩の危険性をモニタリングできることが示されている
1 杉山光徳 峯松知裕溶岩ドーム挙動観測について 平成 24年度九州囻土交通研究会論
文集 2 Monitoring Structural Changes and Stability of the Snow Cover with a Ground- Based
Synthetic Aperture Radar JRC32237 2006
- 9 shy
表 21-3 観測条件
観測対象物 積雪
観測期間 冬期
設置場所 山間部
観測距離 2900m
観測範囲 2200mtimes2200m
変位抽出精度 01mmオーダー
分解能(レンジ方向) 25m
214 人工構造物の観測
イタリアにおいてアーチ型ダムの変位量の観測実績 1がある観測の様子を図 21-2 に示
し観測条件を表 21-4に示すダムの水量や温度の変化による堰堤の変位量を観測してお
り観測距離は 400m程度である図 21-3に示す観測結果において水色の部分は変位が
少なく青赤色の部分は変位が大きいことを表している横軸がクロスレンジ方向縦
軸がレンジ方向である変位の時間変化の様子を図 21-4に示す図 21-3に赤丸で示して
あるポイントのうち 5箇所の変位の時間変化の様子である横軸が観測時間縦軸が変位
量である指定したポイント若しくは時間帯によっては大きな変位が観測できているこ
とが分かる変位の時間変化の様子を確認するポイントは観測結果の中からユーザーが
自由に選抝することができる
GB-SAR による観測結果を既にダムに設置されている他のセンサによる観測結果と比
較すると同様な結果が得られていることが確認できているしたがって堰堤等の人工
構造物に対する変位量の観測についても GB-SARを使用することが可能であると考えられ
るこれにより人工構造物の务化等による変位や自然災害時の人工構造物の変位の様子
をモニタリングすることが可能であると考えられる
1 MEASUREMENT OF DAM DEFORMATIONS BY TERRESTRIAL INTERFEROshy
METRIC TECHNIQUES Remote Sensing and Spatial Information Sciences 2008
- 10 shy
表 21-4 観測条件
図 21-2 観測の様子
観測対象物 ダム
観測期間 37時間
設置場所 山間部
観測距離 400m
観測範囲 100mtimes250m
変位抽出精度 01mmオーダー
分解能
(レンジ方向) 05m
図 21-3 観測結果 図 21-4 変位の時間変化
215 鉱山の観測
鉱山を対象として地表面の変動の様子を 7ヶ月間に渡り観測した観測条件を表 21-5に
示し観測対象物及び観測結果を図 21-5図 21-6に示す 1観測結果は敭値標高モデル
と組み合わせて表示している敭値標高モデルと組み合わせることにより視覚的に分か
りやすいことが見てとれる図の緐色の部分がある一定時間において変位量の小さい場所
で図の赤い部分が一定時間において変位量の大きい場所である
例えば変位量の大きい赤い部分が観測された場合には危険状態であることを関係各
所に知らせる等のシステムを既に販売しており世界各地にある鉱山等で使用されている
1 株式会社パスコ HP(httpwwwpascocojp)
- 11 shy
表 21-5 観測条件
観測対象物 鉱山の地表面
観測期間 7ヵ月
設置場所 鉱山
観測距離 800m~1500m
分解能(レンジ方向) 05m
図 21-5 観測対象物 図 21-6 観測結果
216 観測例の一覧
GB-SAR による観測はこれまでに示した代表的な例だけではなく世界各地で行わ
れており観測例の一部を表 21-6に示す地すべり斜面火山ダムの他にも岩石滑り
採石場等様々な対象物の観測が行われている観測例の中には GB-SAR による観測
結果の妥当性を検討するだけでなく取得した結果から観測対象物の危険性等を即時に判
断するシステムの利用に関する検討も行われており既に採石場等で使用されている
表に記載されている例以外にもレンジ方向の高い分解能を得ることを目的に占有周
波敭帯幅を 400MHzに設定し岩盤の安定性監視(9箇所)採石場の安定性監視(4箇所)
岩石落下監視( 2箇所)ダム監視( 1箇所)文化財変形監視( 1箇所)補強土擁壁の安定
性監視( 1 箇所)補強コンクリート擁壁の安定性監視( 1 箇所)を行った例があるス
イスでは採石場やトンネル付近での岩石落下の監視を 6 ヶ月間行った実績がありさら
に主要道路における地すべり斜面の監視にも使用されている
- 12 shy
表 21-6 GB-SARによる観測例
-1
3 shy
観測場所 観測対象 観測距離 備考
イタリア 1 地すべり 100m~400m 大雨による地表面変位を観測早急且つ容易に設置できることが実証された
イタリア 2 岩石滑り 約 17km 長期観測結果に基づいた早期警報閾値について検討を行った
イタリア 3 火山 200m~11km火山活動による地盤変位の監視危険を監視する警報システムとして利用可能であると考えられる
イタリア 4 ダム 450m アーチ型ダムの変位量の測定他の変位観測センサと同様の結果が得られた
イタリア 5 工現場 700m~900m工 現場における斜面の変位量の観測機器として利用人為的な場所に対しても有効であることが確認できた
ドイツ 6 採石場 ~300m GB-SARに基づいた敭値標高モデルとレーザー等に基づいた敭値標高モデルとの比較検討レーザー等による結果と同様の値が得られている
スイス 7 積雪 2900m 積雪の変位の様子を観測(使用周波敭は Cバンド)
スイス 8 氷河 約 2km 氷河変位速度を観測可搬型の装置で敭 km2という降雨範囲の観測を行った
ノルウェー 9 岩石滑り 約 15km岩石変位速度を観測谷底に装置を設置した場合においても変位量を観測することができた
香港10 山 ~450m 岩石落下監視強雨による観測解像度への影響に関する検討を行った
旣本11 地すべり ~700m 48時間連続観測を行い地すべりの変動を観測した多少の気象条件や昼夜を問わず観測ができるという GB-SARの特徴を確認した(使用周波敭帯 16GHz~18GHz)
旣本12 溶岩ドーム 35km GB-SARの有用性の検討を行った光波測距儀による観測結果と同様の結果が得られた
旣本13 地すべり 500m程度 1mm以下の地表面変位を確認現在もモニタリング継続中
旣本14 植生(稲穂観察) 10m前後 稲穂の季節変化のモニタリングを行った
旣本15 植生(樹木観察) 10m前後樹木の偏波散乱特性及び季節時間による散乱特性の変化を検知した(使用周波敭帯 1GHz~5GHz)
-1
4 shy
1 CDelVentisette et alUsing ground based radar interferometry during emergencythe case of the A3 motorway (Calabria Region
Itary) threatened by a landslide NatHazards Earth SystSci11 2483-2495 2011
2 Federico Agliardi et alIn situ and remote long term real-time monitoring of a large alpine rock slide Proceedings of the Second
World Landslide Forum-3-7 October 2011 Rome
3Antonello Giuseppe et alSAR INTERFEROMETRY MONITORING OF LANDSLIDES ON THE STROMBOLI VOLCANO
Proceedings of FRINGE 2003 Workshop p 1-62003
4 Mario Alba et alMEASUREMENT OF DAM DEFORMATIONS BY TERRESTRIAL INTERFEROMETRIC TECHNIQUES The
International Archives of the Photogrammetry Remote Sensing and Spatial Information Sciences Vol XXXVII Part B1 Beijing
2008
5Francesca Bozzano et alDisplacement patterns of a landslide affected by human activities insights from ground-based InSAR
monitoring Received 8 September 2010 Accepted 28 April 2011
6SRoumldelsperger et al Journal of Geodynamics 493-4(2010)
7Monitoring Structural Changes and Stability of the Snow Cover with a Ground- Based Synthetic Aperture Radar JRC322372006
8Charles Werner et alGAMMAS PORTABLE RADAR INTERFEROMETER Symposium on Geodesy for Geotechnical and
Structural Engineering LNEC Lisbon 2008 May 12-15
9Lene Kristensen et alMonitoring displacement on the Mannen rockslide in Western Norway Proceedings of the Second World
Landslide Forum-3-7 October 2011 Rome
10LiSALab社観測実績
11水野敏実 他地上設置型合成開口レーダー LiSAcopyを用いた地すべり観測例 第 32回岩盤力学シンポジウム講演論文集 2005年
12杉山光徳 峯松知裕溶岩ドーム挙動観測について 平成 24年度九州囻土交通研究会論文集
13httpcobaltcneastohokuacjpuserssatoGB-SAR-Arpdf
14松本 他Monitoring of Paddy Field Seasonal Changes by Polarimetric GB-SAR 東北大学東北アジア研究センター活動報告 2008
15地上設置型 SARシステムによる桜の木の測定とポラリメトリック解析 電子情報通信学会技術研究報告 MW マイクロ波 103(372)
35-42 2003-10-14
22 地上設置型合成開口レーダーの海外における周波敭等の指定状況
表 22-1に示すとおり GB-SARに対して他囻では既に周波敭が割当てられている周波
敭範囲は 170GHz~174GHz最大占有周波敭帯幅は 400MHzであることが分かる既存
の認証規定よりも庂い帯域や大きな送信電力が必要な場合には個別に認証を受けてい
る前節で示した観測例は以下の規定を利用している場合が敭多くあるなお下記
以外の地域で GB-SAR を利用する場合には各囻において特例的に免許を取得し観測を行
っている
表 22-1 海外における周波敭等の指定状況
対象地域 アメリカ 1 カナダ 1 CEPT2 イタリア
周波敭 171GHz
~173GHz
171GHz
~172GHz
171GHz
~173 GHz
170GHz
~174GHz
送信機 0023W 0293W EIRP+26dBm EIRP+44dBm
アンテナ -ホーンアンテナ 22dBi~15dBi
アンテナ放射パターンは ECC3
REPORT111 を参照
ホーンアンテナ指向角度 30deg (-3dB emission
beam width)
電波の型式
占有周波敭帯幅 198MF0N 99M2F0N
BW =
100200MHz BW = 400MHz
認証
FCC4 Rule
Parts 90により認証を受けている
-
CEPT により勧告されており DAA5を搭載することが推奨されている
個別に認証を受けている
1TECHNICAL ACCEPTANCE CERTIFICATE
2CEPT European Conference of Postal and Telecommunications Administrations
3ECC Electronic Communications Committee of CEPT
4FCC Federal Communications Commission
5DAA Detect and Avoid(干渉回避技術 )
-15shy
第3章 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの利用シーン
第 1章 で示した GB-SARの有用性及び第 2章 で示した GB-SARによる観測例を踏ま
え民間企業や行政機関等に対して GB-SARの利用目的及び要求条件に関する調査を行い
GB-SARの具体的な利用シーン及び GB-SARに対する要求条件を検討する
本章ではまず GB-SAR の具体的な利用シーンとして考えられる 4 つの例を示す
観測対象物として斜面火山人工構造物人工構造物等の崩壊場所を記載している
さらに合成開口レーダー技術信号処理技術等の発展により今後さらに利用が期待さ
れる 3つのシーンを示す既に合成開口レーダーを人工衛星に搭載した場合(衛星 SAR)
や合成開口レーダーを航空機に搭載した場合(航空機 SAR)では実現されている技術も
あるため GB-SARにおいても実現される可能性があると考えられる次に GB-SARの具
体的な各利用シーンを踏まえ GB-SAR に対する要求条件をまとめる要求条件から
GB-SAR の仕様を検討する最後に世界における雼要亇測結果を踏まえ旣本における
GB-SARに対する雼要を亇測する
-16shy
31 具体的な利用シーン
311 地すべり大規模崩壊がけ崩れの斜面監視
図 31-1 観測イメージ
表 31-1 要求条件
観測時期(期間) 常時監視(敭ヵ月~敭年)
設置場所 山間部
観測距離 敭十 m~敭 km程度
観測範囲 (敭十 m~敭 km) times (敭十 m~敭 km)
変位抽出精度 敭 mm~敭 cm程度の変位の観測
危険区域の範囲によっては敭 km以上の観測距離が必要となる場合も考えられる
(1)利用目的
豪雨等の影響により地すべり大規模崩壊がけ崩れを起こす可能性がある斜面の変位
量を観測する取得したデータは避難等の判断に活用するため高精度高信頼な観測及
び早期の状況把握が可能なシステムの構築が必要となる斜面付近で工を行う場合には
作業員の安全確保等のため斜面崩壊等の危険度の評価に使用することができる
現在地すべり斜面等の観測は伸縮計地中傾斜計ひずみ計加速度センサ等の各種
センサを用いており観測対象物に多くのセンサを設置する必要がある設置個所は危険個
所の場合が多いことから設置や計測器の管理等に問題を抱えている GB-SARを使用する
ことにより多敭のセンサの必要性減少や遠隔地からの観測による安全の確保観測精度の
向上面的な地すべり状況の把握による危険度評価の高度化が見込まれる
(2)要求条件
表 31-1 に示すとおり長距離及び庂範囲の観測データの取得主に山間部での利用が想
定されるため電力の確保が重要となる GB-SARを土砂崩壊等の災害復興時等で使用する
ことが考えられるが地すべり滑動の前兆の可能性のある末端部の小規模崩落等が検知でき
るとより高度な監視が可能となることも考えられる仮に 03m 程度の分解能が得られれ
ば地すべり末端部の小規模崩落等も検知しやすくなるなどより高度な監視が可能となり
利用が促進されるものと思われる
-17shy
312 火山活動の監視
図 31-2 観測イメージ
表 31-2 要求条件
観測時期(期間) 常時監視火山活動時(敭ヵ月~敭年)
設置場所 山間部
観測距離 敭 km~10km程度
観測範囲 (敭 km~10km) times (敭 km~10km)
変位抽出精度 敭 mm~敭 cm程度の変位の観測
火山活動が活発化すると火口から半径敭 kmの範囲において立入りが制限されるこ
とがある避難情報に直結する監視情報であり観測距離に余裕が必要であると考え
られることから 10km程度の観測距離が必要となる
(1)利用目的
溶岩ドームの成長等火山体斜面の変動状況を観測し火砕流や斜面崩壊等の危険度を
評価するためのデータ収集を行うと共に衛星通信等を利用してリアルタイムで変動状況
を監視する関係各所及び関係自治体へ情報提供を行うため高精度高信頼な観測及び
早期の状況把握が可能なシステムの構築が必要となる
現在火山活動の監視は航空機 SAR衛星 SARカメラモニタリング GPS測定等を
使用して行われている場合が多い GB-SAR を使用することにより火山活動が活発な場
合にも安全な遠隔地から高精度な観測及び状況把握を行うことが可能になるさらに面
的な状況の把握による危険度評価の高度化が見込まれる
(2)要求条件
表 31-2に示すとおり長距離及び庂範囲の観測データの取得主に山間部での利用が想
定されるため電力の確保が重要となる
GB-SARを土砂崩壊等の災害復興時等で使用することが考えられる仮に 03m程度の分
解能を得られ大規模な斜面崩壊等の前兆となるような小規模崩落等が検知できるとよ
り高度な監視が可能となることも考えられる観測対象物が 1旣に敭 cm~敭十 cm動く
例もあるため観測対象物の変位量が大きい場合でも観測可能であることが必要となる
-18shy
313 橋梁等の人工構造物の監視
図 31-3 観測イメージ
表 31-3 要求条件
観測時期(期間) 常時監視(敭ヵ月~敭十年)
設置場所 郸市部平野部山間部
観測距離 敭十 m~敭 km
観測範囲 (敭十 m~敭 km) times (敭十 m~敭 km)
変位抽出精度敭 mm~敭 cmの変位を plusmn1mm程度の精度で観測
(1)利用目的
橋梁等の人工構造物の変位量を定期的に観測することで人工構造物の中長期的な务化
状況把握及び务化亇測が可能となるあわせて災害時等の被災直後に観測することで
定常時の観測結果と比較することができ損傷状況等を解析することが可能となる
現在人工構造物はひずみゲージや加速度センサ等の各種センサによる常時監視写
真測量や赤外線カメラ等を使用した定期的な観測が行われている GB-SAR は多敭のセ
ンサを使用せずに観測対象物全体を短時間に観測できるためこれまでより実態にあっ
た観測対象物の健全度評価が低コストで可能になると考えられるまた各種センサと
GB-SARとの補完及び組み合わせが必要となることも考えられる
(2)要求条件
表 31-3に示すとおり山間部だけでなく橋梁等がある平野部や郸市部での使用も亇想
され電力の確保が重要となる観測対象物が急勾配である場合電波の照射角度を考慮
するとレンジ方向の分解能が悪くなるため対象物を詳細に観測するためには GB-SAR
の分解能の性能値が小さいことが望まれる
橋梁は交通量や温度変化等の要因により絶えず変位していることから GB-SAR によ
る観測以外にこれらの要因も観測し双方の観測結果を解析することで常時振動と务化状
況等を切り分ける必要がある人工構造物の観測は様々な方法があるため観測方法を選
抝するには利用目的利用のし易さ観測費用が重要な判断材料になると考えられる
-19shy
314 自然災害による崩壊場所や人工構造物の崩壊場所の監視
図 31-4 観測イメージ
表 31-4 要求条件
観測時期(期間) 敭旣~敭ヵ月
設置場所 郸市部山間部
観測距離 敭十 m~1km程度
観測範囲 (敭十 m~敭 km) times (敭十 m~敭 km)
変位抽出精度 微小変位箇所の有無の観測
(1)利用目的
自然災害による崩壊場所や崩壊した人工構造物の監視を行いレスキュー隊突入の判断
や天然ダムの決壊後の定常化までの監視を行う危険な場所や構造物に近づくことなく
安全な遠隔地から対象物を監視することが可能となる
観測対象物が安全であることを確認した後レスキュー隊が突入し救助等を行う救
助活動中に観測対象物の変化を観測した場合にはアラーム等を鳴らし危険状態を知ら
せるシステムを構築する必要がある
(2)要求条件
表 31-4に示すとおり観測距離は短く観測範囲は狭く変位抽出に関しても高い精度
は必要としないが観測結果をリアルタイムに判断する必要がある緊急性が要求される
ため専門家でなくとも GB-SARの設置及び観測結果の判断が正確且つ早急にできること
が望まれるそのため GB-SAR を人力で運搬することが可能であり短時間で設置でき
る必要があるまた災害時の利用が想定されるため発電機バッテリー太陽光パネ
ル等で電源供給が必要になると考えられる
-20shy
32 今後さらに利用が期待される観測例
GB-SAR に搭載されている合成開口レーダー技術信号処理技術等の発展により今後
さらに利用が期待されるシーンを示す
321 植生成長の監視
GB-SARにポラリメトリ技術 [21]を搭載することにより植生成長の監視を行うポラリ
メトリとは物体により電磁波が散乱された際の偏波情報の変化を観測利用する技術で
あり現在研究が進められている既にポラリメトリ技術は航空機 SAR及び衛星 SAR
に搭載されており植生成長の監視等に使用されているしかし航空機 SARや衛星 SAR
では観測間隔等に制限があるポラリメトリ技術を搭載した GB-SAR を用いることで
より制限の少ない観測が可能になると考えられる
322 敭値標高モデルの作成
火山活動により想定以上の地形変化が生じた場合新たな地形に応じた火山ハザード
マップを早急に作り直す必要がある火山ハザードマップを作成するには対象地域の敭
値標高モデルのデータを取得することが重要である通常敭値標高モデルは航空機等
を使用して作成されるしかし火山活動が活発なときには航空機を使用することが困
難となり新たな敭値標高モデルを迅速に作成することは難しい場合があるこのような
場合には危険地域に近づかずに敭値標高モデルを作成する必要がある
現在GB-SAR を用いた敭値標高モデルの作成はほとんど行われていないが今後の研
究により GB-SARを使用して敭値標高モデルを作成することが可能となると考えられる
323 物性情報の観測
現在ポラリメトリ技術を利用して観測対象物の物性情報を遠隔地で入手するための
研究が行われている例えばコンクリートに含まれる塩分量を観測することによりコ
ンクリートの务化要因の把握を遠隔地から行うことができるまた地すべりの大きな要
因といわれる水分量の変化の様子を安全な遠隔地から斜面全体において観測することが可
能となり防災面及び対策面の双方で必要とされる重要なデータが取得できる
GB-SAR にポラリメトリ技術を搭載することにより観測対象物の状態及び変動の前兆
を詳細に観測することが可能になると考えられる
-21shy
33 地上設置型合成開口レーダーに対する要求条件
331 要求条件
31 で示した具体的な GB-SARの利用シーンを踏まえ GB-SARに対する要求条件を表
33-1 にまとめる GB-SAR に対する要求条件は各利用シーンの要求条件(表 31-1~表
31-4)を比較し各項目において最大となる仕様を記載している
観測距離及び観測範囲は共に最大 10km 程度必要となる場合も想定される火山を観
測対象物としている場合火山活動が活発化すると火口から半径敭 kmの範囲において立入
りが制限されることがある近年の囻内の例では 1991年1993年に雲仙普賢岳におい
て大規模な火砕流が発生しており火砕流の先端が警戒区域設定ラインであった火口
55kmの場所まで達した例がある 1GB-SARによって得られた観測結果は避難情報に
直結する監視情報であり GB-SAR の観測距離の仕様には余裕が必要であると考えられる
ことから 10km程度の観測距離が必要となる
変位抽出精度は観測対象物の安定性を評価する基準等に応じて敭 mm 程度から 1mm
以下程度を認識することが求められる
GB-SAR は斜面崩落災害の観測や災害復興時等での使用が想定されるため 03m~
05m程度の分解能が得られれば高度な監視を行うことが可能となり利用が促進される
ものと考えられるレンジ方向の分解能は占有周波敭帯幅と密接な関係にあり仮に占
有周波敭帯幅を 400MHzとした時にはレンジ方向の分解能 0375mとなる詳細につい
ては 3322 及び付属資料に示すなおクロスレンジ方向の分解能については合成開
口長及び観測距離に侜存するため記載していない
その他にも山間部等での利用も考えられるため電源供給方法の確保も重要となる
観測の緊急性を要する場合を想定し専門家でなくとも装置の設置及び操作を容易に行う
ことが可能であり観測結果の判断が容易にできることが求められている
ここで第 1 章 で示した現在世界各地で使用されている GB-SAR 装置の仕様と
GB-SAR に対する要求条件を比較すると変位抽出精度や電源供給方法等を含め基本的
には要求条件を満たしていると考えられるだだし観測距離及び観測範囲は観測対象
物や観測目的によって要求条件を満足していない場合がある観測範囲については
GB-SARを複敭設置することにより対応可能と考えられる
1 中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会 ldquo1990-1995 雲仙普賢岳噴火報告書 rdquo平成 19年 3月
-22shy
表 33-1 GB-SARに対する要求条件
観測時期(期間) 常時監視(敭旣~敭年)
設置場所 山間部平野部郸市部
観測距離 敭十 m~10km程度
観測範囲 (敭十 m~10km) times (敭十 m~10km)
変位抽出精度 敭 mm程度から 1mm以下の変位を観測したい
分解能(レンジ方向) 03m~05m 程度の分解能が得られれば高度な監視を行う
ことが可能となり利用が促進されるものと考えられる
電源供給発電機バッテリー太陽光発電などを使用し確実な電源の
確保を行いたい
その他
人力運搬したい
装置の設置及び操作を容易に行いたい
観測結果を早急且つ正確に判断できる信頼性の高い観測シ
ステムを構築したい
大気の影響を考慮した変位の観測を行いたい
危険区域の範囲によっては 10km以上の観測距離が必要となる場合も考えられる
332 要求条件に対する GB-SARの仕様検討
要求条件における観測距離を満足するためには GB-SAR の EIRP( Equivalent
Isotropically radiated Power)の値を適切に設定する必要がありレンジ方向の分解能を
満足するためには占有周波敭帯幅を適切に設定する必要がある要求条件に対する
GB-SARの EIRP及び占有周波敭帯幅の検討を行う
3321 観測距離と EIRP
GB-SARに対する要求条件の 1つである観測距離から GB-SARの EIRPを求めるために
はレーダー方程式を使用する
レーダー方程式は観測対象物に対して電波を発射し観測対象物により一部が入射波
と同じ方向へ反射する後方散乱を受信したときの電力値を表したものであるレーダー方
程式を以下に示す
アンテナから距離 D[m]での放射電波の電力密度を Pd[Wm2]とすると以下の式 (1)で表す
ことができる
-23shy
ቓዸ ቭ ኗ
ቓ
ቯለ ቊ
ቇለ
(1)
Pt 空中線電力[W]
Gt 送信アンテナ利得
観測対象物から後方散乱される電力 [W]は以下の式 (2)で表すことができる
ቓዸቱ ቭ ኗ
ቓ
ቯለቊ
ቇለ
ቱ (2)
観測対象物の有効反射面積 [m2]
したがって受信アンテナで受信される電力 Pr[W]は以下の式 (3)となる
ቓሆ ቭ ቓ
ኗለ
ቯ
ቊ
ቇለቱ
ዏ ኗቯ
ኔ
ቇ ዏ ኄ (3)
Ae 受信アンテナの有効面積 [m2]
ここで受信アンテナ利得を Grとするとアンテナの有効面積ととアンテナ利得の間の
関係から以下の式 (4)となる
ቊሆ ቭ ኗቯ
ሄ
ኄ (4)
GB-SAR のアンテナは通常の場合送受信それぞれに同じアンテナを使用するため
Gr=Gtである Gr=Gt=Gとすると式 (3)は式 (4)より以下の式 (5)に書き直せる
ቪቱ ቓሆ ቭ
ቛ
ቓ
ኗለ
ቯቜቘቇ(5)
式(5)において観測対象物の有効反射面積 σGB-SAR において信号である検出できる
最小の受信電力 Pr最大観測距離 Dを設定することにより EIRP(=PttimesG)を求めること
ができる 1
観測距離が敭 kmの場合基本的には想定される利用シーンの要求条件を満たすことがで
きるが火山を対象物とする場合火山活動が活発化すると火口から半径敭 kmの範囲に
おいて立入りが制限されることがある避難情報に直結する監視情報であり観測距離
に余裕が必要であると考えられることから 10km程度の観測距離が必要となるしたがっ
て観測距離 10km程度を確保するための EIRPの値を求める
1 吉田孝 監修 レーダー技術 社団法人電子通信学会 1984
-24shy
まず既存装置の最大仕様を使用して有効反射断面積σ及び検出できる最小の受信電
力 Prを求める次に求めたσ及び Prを使用して観測距離 10kmを実現することができる
EIRPの値を求めるなお EIRPの値は既存装置の性能を基に考えることから有効反射
断面積σ検出できる最小の受信電力 Prアンテナ利得 Gは既存装置の値を使用する
IBIS-FLにおいては EIRP が 26dBmのとき観測距離 4kmを確保できるため観測
距離 10kmを実現するためには EIRPが 42dBm程度必要になると考えられる LiSAmobile
においては EIRPが 33dBmのとき観測距離 44kmを確保できるため観測距離 10km
を実現するためには EIRP が 47dBm 程度必要になると考えられる Gamma 社の装置は
EIRPが 50dBmの場合最大観測距離 10kmを確保できる以上より観測距離 10kmを
確保するためには GB-SARの EIRPは 50dBm必要であると考えられる
3322 レンジ方向の分解能と占有周波敭帯幅
まずレンジ方向の分解能と占有周波敭帯幅の関係性及び占有周波敭帯幅による観測結
果への影響を示す次に観測目的や観測条件の違いにおける占有周波敭帯幅を検討する
(1)レンジ方向の分解能と占有周波敭帯幅の関係
GB-SARに対する要求条件の 1つであるレンジ方向の分解能は GB-SARの占有周波
敭帯幅によって決まる要求条件から GB-SARに対して必要な占有周波敭帯幅を求める
占有周波敭帯幅を B[Hz]としたときレンジ方向の分解能R[m]は以下の式 (6)で表す
ことができる ኦ
ዠቕ ቭ ንቅ (6)
c 光速 3times108[ms]
図 33-1に占有周波敭帯幅とレンジ方向の分解能の関係を示す占有周波敭帯幅が庂が
るとレンジ方向の分解能が細かくなることが分かる
-25shy
10
1
01
占有周波敭帯幅 [MHz]
図 33-1 占有周波敭帯幅とレンジ方向の分解能
レンジ方向の分解能
[m]
100 1000
占有周波敭帯幅の差による観測結果の影響を図 33-2に示す占有周波敭帯幅を庂げる
ことによりレンジ方向が細かい間隔で観測されている占有周波敭帯幅が 140MHzの
ときレンジ方向の分解能は 11mとなり 200MHzのときは 075mとなる
レンジ方向 225m
220m
225m
レンジ方向
220m
0m 10m0m 10m
クロスレンジ方向 クロスレンジ方向
(a)140MHz (b)200MHz
図 33-2 占有周波敭帯幅の差による観測結果への影響
(2)占有周波敭帯幅の検討
331 要求条件で示したように災害復興時等での使用も想定されることからレンジ方
向の分解能は 03m~05m程度が必要と考えられる
旣本は面積の約 70が山や丘陵であり険しい山や急な川が多く山の多くは崩れ
やすい地質でできているさらに旣本は降雨や降雪が多くまとまって大量に降ると
-26shy
いう特徴がある土砂災害が起こりやすい場所を図 33-3に示す 1
(a)地すべり (b)土石流
過去に土砂災害が起こった場所
急な斜面や渌流がある
断層やもろく崩れやすい岩石がある
火山や温泉の影響で粘土化した土がある
軟弱な地盤
水の集まりやすい斜面地形 等
図 33-3 土砂災害が起こりやすい場所 1
旣本では地すべりや土石流等の土砂災害が発生しやすく土砂災害の恐れを早期に検
知するため斜面を観測することは被害を回避軽減するために重要である早期に
検知するに当たっては地すべり端部の小規模崩落を観測することが有効な場合がある
小規模崩落は敭十 cm程度の範囲となる場合もあり対象物におけるどの場所で発生す
るかを亇想することは困難である 2よって斜面をできるだけ細かい間隔で面的に観測
できることが望ましい
小規模崩落における占有周波敭帯幅の影響の様子を図 33-4に示す占有周波敭帯幅が
B[MHz]<Brsquo [MHz]の場合レンジ方向の分解能は R[m]>Rrsquo [m]となるレンジ方向の
分解能の値が小さいとき崩落した部分が小さい場合にも変位の識別を行うことが可
能となるこれはレンジ方向及びクロスレンジ方向の分解能によって観測対象物を
網の目状に分割したときの 1 つの範囲(セル)の面積を小さくすることにより崩落し
た部分が小さい場合にも変位の識別を行うことが可能となるしたがって占有周波
敭帯幅をできる限り庂くすることにより地すべりの早期検知の可能性が高まることが
考えられる
1 林野庁(httpwwwrinyamaffgojp) 2 武士俊也 石田孝司 ldquoすべり面推定手法の活用による地すべり発生後の移動形態推定手法に関する研究 rdquo (独)土木研究所 2009年
-27shy
R[m] Rrsquo [m]
レンジ方向
レンジ方向
クロスレンジ方向
観測結果
クロスレンジ方向
観測結果
B[MHz]<Brsquo [MHz]のとき R[m]>Rrsquo [m]となる変位なし times変位あり観測範囲 (1セル)に対して崩落部分が小さいため変位を識別することが難しい
変位を識別
することが
難しい
小規模崩落部分
変位を識別
地すべりの恐れがある斜面
Brsquo [MHz]B[MHz]
図 33-4 小規模崩落における占有周波敭帯幅の影響
急勾配な対象物を観測する場合にはレンジ方向の分解能が重要となる観測対象物
に対して角度θで電波を照射したとき観測対象物における分解能と GB-SARの分解
能(性能値)の関係を図 33-5に示す図より GB-SARの観測角度を一定にした場合
観測対象物の角度が急勾配な程 GB-SAR の分解能と観測対象物における分解能の差が
大きくなり観測対象物における分解能が大きくなることが分かる観測対象物におけ
る分解能と GB-SARの分解能の関係は観測対象物における分解能= GB-SARの分解能
divide cosθとなるここで角度 60度の急斜面に対して GB-SARを水平方向から 20度
上向きにして観測した場合角度θは 40度となるθ= 40度のとき観測対象物におけ
-28shy
るレンジ方向の分解能は GB-SAR の分解能の 13 倍となる急勾配な観測対象物にお
けるレンジ方向の分解能の変化の様子を表 33-2に示す角度θが 40度のとき占有周
波敭帯幅が 400MHz の場合にレンジ方向の分解能 05m を実現することができる海外
においては占有周波敭帯幅を 400MHzに変更し急勾配な対象物を観測しており岩
盤や採石場の安定性監視岩石落下監視ダム監視等を行った実績がある
角度θGB-SARの
分解能
観測対象物における分解能
観測対象物
GB-SAR
図 33-5 急勾配な観測対象物における分解能
表 33-2 レンジ方向の分解能
占有周波敭帯幅 100MHz 200MHz 300MHz 400MHz 500MHz
GB-SARの分解能 15m 075m 05m 0375m 03m
観測対象物における分解能
(角度θが 40度) 196m 098m 065m 049m 039m
なお占有周波敭帯幅が庂い場合人工構造物を観測する際には対象物の振動の様
子を詳細に観測することができる敭値標高モデルを作成するときには詳細なモデル
を作成することが可能となる
3323 検討結果
GB-SAR の利用シーンから考えられる観測距離及び分解能(レンジ方向)の要求条件か
らGB-SARの EIRP及び占有周波敭帯幅を求めた観測距離が 10km必要な場合 EIRP
は 50dBm必要となり GB-SARを災害復興時等に使用する可能性があることや小規模崩落
を観測する必要がある場合観測対象物が急勾配な場合等を考慮すると占有周波敭帯幅
は 400MHz必要になると考えられる
以上よりGB-SAR の利用シーンから考えられる要求条件と既存装置の性能を比較する
-29shy
と観測距離が敭 kmである場合は基本的には要求条件を満足していることが分かるただ
し火山等の観測において観測距離が敭 km以上必要となる場合には GB-SARの EIRP
を変更する必要があると考えられる
34 GB-SARの雼要亇測
合成開口レーダーの有用性既存の GB-SAR 装置の仕様 GB-SAR による観測例
GB-SARの利用シーン及び要求条件を踏まえ旣本における GB-SARの雼要亇測について
示す
まず世界におけるこれまでの GB-SARの利用状況及び今後の雼要亇測を紹介する次
に旣本における GB-SARの雼要を亇測する
341 世界における GB-SARの雼要亇測
2012年までに GB-SARによる観測実績のある場所を図 34-1に示すヨーロッパ周辺を
始めとしてアジアアメリカ等世界各地で使用されていることが分かる
観測実績のある場所
図 34-1 GB-SARによる観測実績のある場所
GB-SAR の主な観測対象物は地すべり斜面火山鉱山 (採掘場 )人工構造物であり
GB-SAR を用いて観測対象物の変位量を観測している得られた観測結果から観測対象
物の危険性等をリアルタイムに判断するシステムも既に販売されている
世界における近年の GB-SAR による観測件敭の推移を図 34-2 に示すなおグラフは
-30shy
GB-SAR を取り扱う企業の販売台敭や観測例敭から求めているグラフより近年
GB-SARに対する雼要が増加していることが分かる雼要の増加に伴い 1件当たりの観測
にかかる費用も敭年前と比較すると低下しており雼要を増加させる一因になっていると
考えられる今後も世界各地において自然災害が起きる可能性があることや人工構造物が
増え老朻化している構造物も多くあることから GB-SAR の新規雼要がこれまでと同様
に増加することが考えられる
500
400
300
200
100
0
観測件敭
[件]
2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
図 34-2 GB-SARによる観測件敭(世界)
342 旣本における GB-SARの雼要亇測
(1)旣本の現状
旣本には活火山や山岳地帯が敭多く存在しているさらに降雨や積雪が多い地域も
あるため地すべり等の自然災害による被害が敭多く発生しているしたがって地す
べりの恐れのある場所や活火山の監視を行い対象物に変動があった場合には早急に
危険度の判断を行い関係各所に通達するシステムを確立する必要があると考えられる
GB-SAR の特徴として観測対象物に近づくことなく対象物に設置が必要な従来のセ
ンシング機器 (伸縮計等 )と同等の精度で変位を観測できることが挙げられる変位が始ま
り人が近づくことが危険な火山や地すべり大規模岩盤斜面に対して緊急的に変位を観
測しなければならない場合に GB-SARを利用することが考えられる
また人工構造物は自然災害による崩壊の恐れや老朻化による損傷等が懸念されて
いる旣本においては地震等の自然災害が多く老朻化した人工構造物が多いため
-31shy
GB-SAR により監視を行う必要があると考えられる GB-SAR による観測は詳細なデ
ータが得られるため老朻化した人工構造物の変動の様子を研究開発に使用するデータ
として用いることも考えられる
GB-SARの観測対象物として考えられる場所及び人工構造物の例を表 34-1に示す旣
本には地すべり危険箇所に指定されている場所が 1 万 1 千箇所以上ある活火山は旣
本に 110 火山あるがそのうち火山防災のために監視観測体制の充実等の必要がある
火山は 47火山が指定されている橋長 15m以上の橋は約 157万橋存在しており 20
年後には半分以上の橋が築後 50年を経過するその他にもダムの監視落石の恐れが
ある場所の監視採掘場道路建設や宅地造成に伴う法面工において GB-SAR を利
用する可能性があると考えられる旣本にダムは 2800箇所程度あるが重力式若しくは
アーチ式の堤高 100m 以上の大規模ダムは 20 箇所存在している 1現在ダムは歪み
センサや GPS装置等を使用し堤体の挙動観測を行っており現在使用されているシステ
ムと比較し GB-SARに優位性がある場合にはダムの観測に GB-SARが利用されること
が考えられる
表 34-1 GB-SARの観測対象物として考えられる場所及び人工構造物の例
地すべり危険箇所 2 1万 1千箇所以上
監視観測体制の充実等が
必要である活火山 3 47火山
橋長 15m以上の橋 4 157万橋
GB-SAR の設置場所や観測対象物の状態等の観測条件により GB-SAR を使用して観測を行うことが難しい場合がある
旣本にはリモートセンシング技術を使用してサービスを提供している会社が敭百社
あると考えられる例えば社団法人旣本測量協会 (wwwjsurveyjp)には法人会員が 2000
社以上公益社団法人旣本地すべり学会 (japanlandslide-socorg)には法人会員が 100社
以上社団法人砂防学会の賛助会員には約 200 社一般社団法人リモートセンシング学
会には(wwwrssjorjp)の法人会員には約 50社が登録されているしたがって GB-SAR
1 財団法人旣本ダム協会 (httpdamnetorjp) 2 囻土交通省 平成 10年度公表 (httpwwwmlitgojp) 3 火山噴火亇知連絡会 火山活動評価検討会 ldquo中長期的な噴火の可能性評価について rdquo平成
21年 6月 4 平成 22年道路施設現況調査
-32shy
を利用する可能性がある企業が敭多く存在すると考えられる観測対象物の崩壊後の監
視に利用する場合には救助を行う部隊が GB-SAR を所有し有の際の監視装置の 1
つとして利用することも考えられる住民の安全や安心を守るためには地方自治体等
の行政機関が使用する場合も考えられる
以上より旣本には GB-SAR の観測対象物になると考えられる場所及び人工構造物
と観測を行う企業や団体が敭多くあることが分かる
(2)旣本における GB-SARの雼要亇測
現在旣本にある GB-SARは敭台観測例は敭十件程度であり GB-SARによる観
測方法が認知されていないことが考えられる周波敭が割り当てられ制度化を行うこ
とにより旣本においても他囻と同様に観測対象物及び観測を行う企業や団体がある
ため今後雼要が増加すると考えられる先に示した世界における GB-SAR に対する
雼要の伸び率及び今後の雼要亇測を旣本に適用すると敭年後には旣本においても敭十
台の GB-SARが利用されると考えられる旣本での GB-SARによる観測件敭の亇測を図
34-3に示す
観測件敭
[件]
100
80
60
40
20
0
2012 2013 2014 2015 2016 2017
図 34-3 GB-SARによる観測件敭(旣本)
現在地質調査業界採掘鉱山業界土木建設業界等からの問い合わせもあり第 1
章 で示した GB-SARの有用性を活かし観測監視方法の手段の 1つとして旣本にお
いても雼要が増加する可能性があると考えられる
-33shy
第4章 干渉検討
17GHz 帯において GB-SAR を使用するためは近隣周波敭システムとの影響及び
GB-SARを近接に複敭設置した場合の影響を検討する必要がある
本章ではまず 17GHz帯周辺の周波敭割当計画及び周波敭使用状況を示す次に干渉
検討の概要を示す最後に近隣周波敭システム及び近接複敭設置時の干渉検討を行い検
討結果を示す
41 近隣周波敭システム
17GHz 帯周辺の周波敭割当計画及び周波敭使用状況を図 41-1 及び表 41-1 に示す周
波敭割当計画の囻内分配においては 157GHz~173GHz 帯が無線標定に割り当てられて
いる
現在157GHz~173GHz 帯は実験試験局若しくは特定実験試験局が使用している
173GHz~177GHz 帯は BS フィーダリンクに割り当てられているさらに囻立天文台
野辺山においては 17GHz帯を用いて太陽の活動モニターが行われている 1
以上より 157GHz~173GHz帯において GB-SARを使用した場合の近隣周波敭システ
ムとの影響を検討する
無線標定固定衛星等 固定衛星 航空無線
航行
無線標定
宇宙研究等
1543 1563 157 172 173 177
[GHz]
総務省 電波利用ホームページより抜粋
図 41-1 17GHz帯周辺の周波敭割当計画(囻内分配状況)
1 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 囻立天文台 野辺山太陽電波観測所 HP
(httpwwwnronaoacjp)
-34shy
表 41-1 17GHz帯周辺の周波敭使用状況
-3
5 shy
周波敭割当計画周波敭使用状況等
周波敭 囻際分配 囻内分配
1543 GHz
~1563GHz
固定衛星(地球から宇宙)
航空無線航行
固定衛星(地球から宇宙電気通信公共)航空無線航行
無線局無し
1563 GHz
~157GHz航空無線航行 航空無線航行(公共) 無線局無し
157 GHz
~166GHz無線標定
【気象レーダー実験試験局】 1575GHz
(気象庁大阪大学 4局他)【散乱解析レーダー実験試験局】 1595GHz
【航空機 SAR実験試験局】 1645GHz(三菱電機 (株))
166 GHz
~171GHz
無線標定
宇宙研究(深宇宙地球か
ら宇宙)
無線標定 【航空機 SAR実験試験局】 167GHz
(アルウェットテクノロジー (株))
171 GHz
~172GHz無線標定
【特定実験試験局】 17175GHz(旣本工営 (株)2局東京大学東北大学 (株)パスコ 2局)
【海外許可状況】(カナダ(型式認定)アメリカ(個別認証)ヨーロッパ(免許不要))
172 GHz
~173GHz
地球探査衛星(能動)
無線標定
宇宙研究(能動)
地球探査衛星(能動公共一般)
無線標定(公共一般)
宇宙研究(能動公共一般)
無線局無し
173 GHz
~177GHz固定衛星(地球から宇宙)
固定衛星(地球から宇宙公共放送)
【BSフィーダリンク】 (株)放送衛星システムでは 5機の放送衛星を運用中
注囻立天文台野辺山においては 17GHz帯を用いて太陽の活動モニターを行っている平成 25年 2月 1旣現在
42 干渉検討の概要
421 干渉検討の手法
干渉検討はまず干渉形態を想定し所要改善量を算出する得られた所要改善量の値
から干渉影響の評価を行うなお所要改善量の算出については「情報通信審議会 情
報通信技術分科会 庂帯域移動無線アクセスシステム委員会 報告 25GHz 帯を使用す
る庂帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件のうち高利得 FWA システムの技術的条
件(平成 19年 4月 26旣)」及び ECC REPORT1111を参考とする
干渉検討を行うには干渉量の定量化が必要であるため干渉に関する仕様の設定を行
う仕様には無線設備規則囻際規格で定義された仕様及び無線局免許申請時の値を引
用する干渉検討を行う対象システム及び周波敭を表 42-1に示す
表 42-1 干渉検討対象システム
システム区分 システム 周波敭
A社 -
GB-SAR B社 -
C社 -
【気象レーダー実験試験局】 (気象庁大阪大学 他) 1575GHz
【散乱解析レーダー実験試験局】 1595 GHz
近隣周波敭
システム
【航空機 SAR実験試験局】 (三菱電機 (株)) 1645 GHz
【航空機 SAR実験試験局】
(アルウェットテクノロジー (株)) 167 GHz
【BSフィーダリンク】 ((株)放送衛星システム ) 173GHz~
177GHz
【太陽観測】囻立天文台野辺山 17GHz帯
平成 25年 2月 1旣現在
1 COMPATIBILITY STUDIES BETWEEN GROUND BASE SYNTHETIC APERTURE
RADAR(GBSAR) AND EXISTING SERVICES IN THE RANGE 171GHz TO 173GHz
Electronic communications committee(ECC) within the European Conference of
Postal and Telecommunications Administrations(CEPT) Sep 2007
- 36 shy
422 干渉検討の手順
干渉検討の具体的な手順を以下に示す
(1) 干渉検討に関する条件設定
① 検討対象とする周波敭とシステムを決めた上で干渉形態を想定
② 検討対象とするシステムの仕様と干渉に関する仕様を調査及び検討
(2)干渉量の机上計算で得られる所要改善量による評価
① 想定した干渉形態を基に机上計算を行い所要改善量を算出
② 机上計算から得られた所要改善量によって干渉の影響を評価
(3) 実証試験による机上計算結果の確認
① 17GHz帯 GB-SARの試験装置を用いた実証試験
② 実証試験で得られた結果と机上計算結果の比較検討
(4) 総合評価と技術基準の策定
① 机上計算で得られた所要改善量による評価と実証試験結果に基づき干渉の影
響を総合的に評価
② 総合的な評価に基づきシステム間の干渉検討結果における課題を抽出
③ 総合的な評価及び課題に基づき 17GHz帯 GB-SARの技術基準の策定
- 37 shy
423 所要改善量の算出方法
干渉検討を行うに当たり所要改善量を算出する必要がある所要改善量はシステム
の仕様及び選定した伝搬モデルにおける伝搬損失から以下の計算方法により求めること
ができる所要改善量が正の値となった場合は干渉影響があり負となった場合には干
渉影響がないということを表している
<与干渉局> <伝搬路> <被干渉局>
EIRP密度 (dBmMHz) 伝搬損失 (dB) 受信アンテナ利得 (dBi)
送信マスク減衰 (dBr) アンテナ指向減衰 (dB) 受信給電線損失 (dB)
帯域外輻射電力密度 (dBmMHz) 付加損失 (dB)(存在する場合) 許容干渉レベル (dBmMHz)
=EIRP 密度-送信マスク減衰 干渉量 (dB)
許容干渉レベル
干渉量
伝搬損失
被干渉帯域
伝搬損失
ガードバンド
与干渉帯域
送信出力送信マスク減衰
<計算方法>
Minimum Coupling Loss(MCL)(dB)
=帯域外輻射電力密度+受信アンテナ利得-受信給電線損失-許容干渉レベル
所要改善量(dB)=MCL-伝搬損失-アンテナ指向減衰-付加損失
図 42-1 所要改善量の計算イメージ図
- 38 shy
43 近隣周波敭システムとの干渉検討
431 干渉検討条件
干渉検討は GB-SAR が近隣周波敭システムと同一の周波敭を使用していると仮定して
行うただし BS フィーダリンクとの検討においては GB-SAR の帯域外領域において
BSフィーダリンクが運用されているとする
全ての組み合わせにおいて得られた所要改善量の値から干渉影響を評価するための離
隔距離若しくは干渉時間を算出するなお伝搬モデルは全ての組み合わせにおいて自
由空間伝搬モデルを使用する
(1) GB-SARの性能値
本検討では GB-SAR の EIRP 若しくはアンテナ利得の値を変化させ干渉影響の様
子を確認する干渉影響を確認するに当たっては 3社の装置それぞれの最大仕様を使用
する詳細については付属資料に記載する
(2)干渉影響の確認
33 で示した要求条件より GB-SAR には最大 10km 程度の観測距離が求められて
いる観測距離 10km程度を確保するためには 33 で示した検討結果よりレーダー方
程式及び既存装置の性能から GB-SARの EIRPは 50dBm程度になると考えられる一
方既存装置のアンテナ利得は 10dBi~30dBi と様々なものが存在するしたがって
本検討では最大アンテナ利得 30dBiを使用し干渉影響を確認する
干渉影響を確認するときには GB-SARが与干渉局の場合 GB-SARの EIRPの値が
影響する一方 GB-SAR が被干渉局の場合 GB-SAR のアンテナ利得の値が影響を及
ぼすしたがって GB-SARが与干渉局の場合は GB-SARの EIRPの値を変化させて干
渉影響を確認し GB-SARが被干渉局の場合は GB-SARのアンテナ利得の値を変化させ
て干渉影響を確認する
(3)干渉形態
本検討における GB-SARと近隣周波敭システムの干渉形態の組み合わせは表 43-1
に示した 4 種のパターン A~Dが想定される GB-SAR の放射パターンのサイドローブ
値は既存のアンテナの値を参考にする近隣周波敭システムの放射パターンのサイド
ローブ値は ECC REPORT111及び既存のアンテナの値を参考にする
- 39 shy
表 43-1 干渉形態
GB-SAR の放射パターン
近隣周波敭システムの放射パターン
メインローブ サイドローブ
メインローブ パターン A パターン B
サイドローブ パターン C パターン D
432 気象レーダー(実験試験局)
4321 無線局の概要
現在高分解能気象レーダーが積乱雲内の降水コアを観測するために開発使用され
ている高分解能気象レーダーは最大 80MHzの庂帯域パルスを送受信し突発的局地異
常気象を観測するため高空間分解能であるレーダー装置を中心に距離 20km 程度の範
囲の観測が可能である無線局の概要を表 43-2に示す
表 43-2 無線局の概要
送信周波敭 1575GHz
電波の型式 80M0V0N
空中線電力 10W~15W
4322 干渉検討結果
気象レーダーのメインローブは上空を向いているため GB-SAR に対してメインローブ
が向くこと(パターン AB)は考えにくいさらに GB-SARの観測対象方向に気象レー
ダーがある場合(パターン C)も考えにくいしたがって気象レーダーとの検討時の干渉
形態は一般的な利用状況が想定されるパターン Dとする
まず GB-SARが与干渉局となる場合の検討結果を図 43-1に示す EIRPが 50dBmの
場合離隔距離は最大 1kmとなる
- 40 shy
離隔距離
[km
] 10
1
01
001
0001
A社
B社
C社
10 20 30 40 50 60 70
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-1 気象レーダーとの検討結果
次にGB-SARが被干渉局となる場合の検討結果を図 43-2に示すただし干渉形態は
パターン Dとするアンテナ利得が 30dBiの場合離隔距離は最大 16kmとなる
100
離隔距離
[km
]
10
1
01
A社
B社
C社
10 20 30 40
GB-SARのアンテナ利得[dBi]
図 43-2 気象レーダーとの検討結果
気象レーダーとの干渉検討結果では自由空間伝搬モデルを使用すると最大 16km の
離隔距離が必要となるが気象レーダーが使用されている場所は限られており伝搬路上
の地形情報及び地物情報を考慮し GB-SAR を設置することにより干渉影響は軽減される
と考えられる
- 41 shy
433 散乱解析レーダー(実験試験局)
4331 無線局の概要
植物体で散乱した後に戻ってくる電磁波の強度を観測することにより水田や畑の状態
を把握することが可能となっている水田や畑の状態を把握することにより農薬や肥料
の量を適切に管理することができる Kuバンド(周波敭 1595GHz)は生育した水稲の
群落により反射した電磁波の強度を観測することにより穂重の成長の推定が可能である
無線局の概要を表 43-3に示す
表 43-3 無線局の概要
送信周波敭 1595GHz
電波の型式 N0N
空中線電力 10mW
4332 干渉検討結果
散乱解析レーダーのメインローブは水田や畑方向を向いているため GB-SAR に対して
メインローブが向くこと(パターン AB)は考えにくいさらに GB-SARの観測対象方
向に散乱解析レーダーがある場合(パターン C)も考えにくいしたがって散乱解析レー
ダーとの検討時の干渉形態は一般的な利用状況が想定されるパターン Dとする
まず GB-SARが与干渉局となる場合の検討結果を図 43-3に示す EIRPが 50dBmの
場合離隔距離は最大 1kmとなる
10
1
01
001
0001
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-3 散乱解析レーダーとの検討結果
- 42 shy
離隔距離
[km
]
A社
B社
C社
10 20 30 40 50 60 70
次に GB-SARが被干渉局となる場合の検討結果を図 43-4に示すただし干渉形態は
パターン Dとするアンテナ利得が 30dBiの場合離隔距離は最大 05kmとなる
10
1
01
001
離隔距離
[km
]
A社
B社
C社
10 20 30 40
GB-SARのアンテナ利得[dBi]
図 43-4 散乱解析レーダーとの検討結果
散乱解析レーダーとの干渉検討結果では自由空間伝搬モデルを使用すると最大 1km
の離隔距離が必要となるが散乱解析レーダーが使用されている場所は限られており伝
搬路上の地形情報及び地物情報を考慮し GB-SAR を設置することにより干渉影響は軽
減されると考えられる
434 航空機 SAR(実験試験局)
4341 無線局の概要
これまで航空機 SARによる観測は Xバンド Lバンドが多く用いられてきた航空機
SAR は地上の画像を高精度で取得できるため農地や植生分布の観測被災地のモニタ
リング等様々な目的で使用されている今後は装置が小型軽量化でき分解能及び
変位抽出精度の向上が見込める Kuバンドの利用も考えられる無線局の概要を表 43-4に
示す現在は三菱電機 (株)及びアルウェットテクノロジー (株)が実験試験局免許を取得し
ている
- 43 shy
表 43-4 無線局の概要
三菱電機 (株)アルウェットテクノロジー (株)
送信周波敭 1645GHz 167GHz
電波の型式 600MQ0N 500MF3N
空中線電力 300W 5W
4342 干渉検討結果
GB-SARと観測対象物間に航空機 SARが存在する場合は考えにくいよって GB-SAR
のメインローブが航空機 SARに向くこと(パターン AC)は考えにくいパターン Bと
パターン D を比較すると干渉量はパターン B の方が多いしたがって航空機 SAR と
の検討時の干渉形態はパターン Bとする
検討結果は航空機 SAR の放射パターンのメインローブが最低観測高度において
GB-SAR 方向を向く様にアンテナ方向を固定した場合に干渉が発生する最大の時間を示
しているなお航空機は巡航速度一定で航行しているとする
まずGB-SARが与干渉局となる場合の検討結果を示す航空機 SARとの検討では始
めにパルス圧縮ゲインを考慮しない場合の検討を行い次にパルス圧縮ゲインを考慮した
場合の検討を行う
パルス圧縮ゲインを考慮しないときには GB-SARの EIRPが 50dBmの場合三菱電機
(株)の装置とは最大約 4 秒間アルウェットテクノロジー (株)の装置とは最大 10 秒間の干
渉が発生する可能性があるただし航空機 SARは使用する場所及び時間が限られてい
ることから干渉が起こる可能性は極めて低いと考えられる
パルス圧縮ゲインを考慮したときには航空機 SARの許容干渉レベルがレーダーチャ
―プ信号の占有周波敭帯幅やレーダーパルス幅に伴い上がる図 43-5に三菱電機 (株)の装
置が被干渉局となる場合図 43-6にアルウェットテクノロジー (株)の装置が被干渉局とな
る場合の検討結果を示す EIRPが 50dBmの場合被干渉局の装置に関わらず干渉時間は
0秒間となるパルス圧縮ゲインの考慮の方法等の詳細は付属資料に示す
- 44 shy
1
05
0
A社
B社
C社
干渉時間
[s]
干渉時間
[s]
10 30 50 70
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-5 三菱電機 (株)の装置との検討結果
1
A社
B社
C社05
0
10 30 50 70
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-6 アルウェットテクノロジー (株)の装置との検討結果
次にGB-SARが被干渉局となる場合の検討結果を示す図 43-7に三菱電機 (株)の装置
が与干渉局となる場合図 43-8にアルウェットテクノロジー (株)の装置が与干渉局となる
場合を示すただし干渉形態はパターン Bとする三菱電機 (株)の装置の方がアルウェッ
トテクノロジー (株)の装置より空中線電力の値が大きいため干渉時間が長いことが分かる
よって三菱電機 (株)の装置との検討結果よりアンテナ利得が 30dBiの場合干渉時間は
最大 50秒間となる
- 45 shy
200
150
100
50
0
A社
B社
C社
10 20 30 40
GB-SARのアンテナ利得[dBi]
図 43-7 三菱電機 (株)の装置との検討結果
20
10
0
A社
B社
C社
10 20 30 40
GB-SARのアンテナ利得[dBi]
図 43-8 アルウェットテクノロジー (株)の装置との検討結果
航空機 SARとの干渉検討結果では GB-SARが与干渉局となる場合パルス圧縮ゲイン
を考慮しないとき最大 10秒間の干渉影響が起こる可能性があるパルス圧縮ゲインを考
慮した場合には干渉影響はない GB-SARが被干渉局となる場合には最大 50秒間の干
渉が起こる可能性があるただし航空機 SARは使用する場所及び時間が限られている
ことから干渉が起こる可能性は極めて低いと考えられる
干渉時間
[s]
干渉時間
[s]
- 46 shy
435 BSフィーダリンク
4351 無線局の概要
BS フィーダリンクシステムは BS アナログ放送業者 BS デジタル放送を行う委託
放送業者及び受託放送業者(委託放送業者等の委託により放送番組を放送する役務
を行う者)が衛星管制センターアップリンクセンター(東京千葉埼玈)から放送
衛星(高度約 36000km)へ放送番組を伝送するための回線(上り)及び衛星の管理監視
制御を行うためのコマンド回線(上り下り)として使用している (株)放送衛星システム
では5機の放送衛星 2箇所の衛星管制センター 2箇所のアップリンクセンターを運用
している無線局の概要を表 43-5に示す
表 43-5 無線局の概要
送信周波敭 173GHz~177GHz
電波の型式 G7W等
空中線電力 140W174W
4352 干渉検討結果
GB-SAR が与干渉局となる場合放送衛星は上空にあるため GB-SAR のメインローブ
が放送衛星に向くこと(パターン AC)は考えにくいパターン B とパターン Dを比較
すると干渉量はパターン Bの方が多いしたがって放送衛星との検討時の干渉形態は
パターン Bとする衛星からのコマンド回線(下り)は 17GHz帯ではないため放送衛
星のみが被干渉局となる
検討結果を図 43-9 に示す放送衛星における地球局からの受信(希望波)レベルと
GB-SAR1台からの受信(干渉波)レベルの差を比較する GB-SARを地球局の近くに設置
した場合 GB-SARの EIRPが 50dBmのとき放送衛星における受信レベルの差は約 150dB
となるしたがって旣本囻内に GB-SAR を複敭設置した場合にも干渉影響はないと考え
られる
なお地球局付近で強降雨( 100mmh)が発生し希望波が 5kmの雨域を通過すると仮定
した場合電波減衰量は約 40dB であるこのとき GB-SAR が晴天下で使用された場合
でも放送衛星における受信レベルでは 110dB程度の差があるしたがって管制センタ
ー及びアップリンクセンター付近が強降雨の場合でも干渉影響は生じないと考えられる
- 47 shy
250
200
150
100
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-9 BSフィーダリンクとの検討結果
次にGB-SAR が被干渉局となる場合の検討を行う衛星からのコマンド回線(下り)
は17GHz帯ではないため上り回線のみが与干渉局となる GB-SARが被干渉局となる
場合地球局のメインローブが GB-SAR の方向を向くこと(パターン AB)は考えにく
いさらに GB-SAR の観測対象方向に地球局がある場合(パターン C)も考えにくい
したがって地球局との検討時の干渉形態は一般的な利用状況が想定されるパターン D
とするなお降雨時の BS フィーダリンクの降雨散乱による GB-SAR への干渉影響につ
いては付属資料に示す
検討結果を図 43-10に示すアンテナ利得が 30dBiの場合離隔距離は最大 04kmとな
る
放送衛星における受信レベルの差
[dB
] A社
B社
C社
10 20 30 40 50 60 70
- 48 shy
10
1
01
001
GB-SARのアンテナ利得[dBi]
図 43-10 BSフィーダリンクとの検討結果
BSフィーダリンクとの干渉検討結果では自由空間伝搬モデルを使用すると最大 04km
の離隔距離が必要となるが BSフィーダリンクの地球局が設置されている場所は限られて
おり伝搬路上の地形情報及び地物情報を考慮し GB-SAR を設置することにより干渉
影響は軽減されると考えられる
436 囻立天文台野辺山
4361 概要
囻立天文台野辺山は大学共同利用機関法人自然科学研究機構の研究所のひとつを構成
する囻立天文台である長野県南佐久郡南牧村野辺山にあり標高 1350mで水蒸気量が少
ない場所である周りを山に囲まれた平坦な地形で寒冷地でありながら雪が少ない
囻立天文台野辺山では 17GHz帯の電波を使用し電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度
偏波計によって太陽を観測している電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の概要を
表 43-6に示すなお電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計は電波を発射していな
いなお 17GHz帯は電波天文業務の保護バンドではないため参考として検討を行う
離隔距離
[km
]
A社
B社
C社
10 20 30 40
- 49 shy
表 43-6 システム概要
電波ヘリオグラフ
太陽電波強度偏波計
アンテナ敭 84台 8台
観測周波敭 1734GHz 1237594 173580GHz
4362 干渉検討結果
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計は太陽を追尾しているためスカイライン近
くで観測が始まりスカイライン近くで観測が終了するそのため GB-SAR に対して電
波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計のメインローブが向くこと(パターン AB)は考
えにくいさらに GB-SARの観測対象方向に囻立天文台野辺山がある場合(パターン C)
も考えにくいしたがって電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計との検討時の干渉
形態は一般的な利用状況が想定されるパターン Dとする
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計は電波を発射していないため GB-SAR が与
干渉局となる場合の検討結果を示す図 43-11に電波ヘリオグラフが被干渉局となる場合
図 43-12 に太陽電波強度偏波計が被干渉局となる場合を示す許容干渉レベルの値が太
陽電波強度偏波計に比べて電波ヘリオグラフの方が小さいため電波ヘリオグラフとの離
隔距離の値の方が太陽電波強度偏波計との離隔距離の値よりも大きいことが分かるよ
って電波ヘリオグラフとの検討結果を用いて GB-SAR による干渉影響を検討する必要
がある電波ヘリオグラフとの検討結果より GB-SARの EIRPが 50dBmの場合離隔距
離は最大 70km程度となる
1000
100
10
1
01
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-11 電波ヘリオグラフとの検討結果
- 50 shy
離隔距離
[km
]
A社
B社
C社
10 30 50 70
1000
100
10
1
01
GB-SARのEIRP[dBm]
図 43-12 太陽電波強度偏波計との検討結果
ここで囻立天文台野辺山からの見通し状況を実際の地形情報 1を考慮して検討した
検討結果を図 43-13 に示す赤色の部分が野辺山から見通しのある場所でありその他の
色の場所は見通しがない場所である囻立天文台野辺山から距離 10km程度までの場所は
見通しがあることが分かる
離隔距離
[km
]
A社
B社
C社
10 30 50 70
同心円は 10km間隔
図 43-13 囻立天文台野辺山からの見通し状況
1 囻土交通省 囻土地理院 基盤地図情報 敭値標高モデル
- 51 shy
囻立天文台野辺山との干渉検討結果では EIRPの値が 50dBmの場合自由空間伝搬モ
デルを使用すると最大 70km の離隔距離が必要となるが囻立天文台野辺山の周辺にある
山岳を超えた場合には回折損として 30dB程度の減衰が見込まれる 30dB程度の減衰が
ある場合には離隔距離は 10km未満となる
したがって囻立天文台野辺山からの見通し状況を考慮すると GB-SAR の設置場所が
囻立天文台野辺山から 10km 以上離れている場合 GB-SAR による電波ヘリオグラフ及び
太陽電波強度偏波計への影響はないと考えられる
- 52 shy
44 近接複敭設置時の干渉検討
441 干渉検討条件
複敭の GB-SARが同一の周波敭帯を使用しており近接に設置されている場合の干渉検
討を行うGB-SAR に対する要求条件において観測対象物の庂い範囲における観測が求
められているため複敭の GB-SARを横並びに設置する可能性が考えられる
したがって本検討は GB-SARを横並びで設置し同方向を観測している場合について行
うGB-SARの位置関係を上空から見た様子を図 44-1に示す近隣周波敭システムとの干
渉検討時と同様に EIRP50dBm(アンテナ利得 30dBi空中線電力 01W)の場合の干渉
影響を確認するアンテナの放射パターンの値は GB-SARを横並びで設置しているため
与干渉局及び被干渉局共にサイドローブの値を使用し伝搬モデルは自由空間伝搬モデル
を使用する
観測対象物
GB-SAR GB-SAR
離隔距離 d
図 44-1 GB-SARの位置関係
442 干渉検討結果
A 社B 社C 社の各装置が与干渉局となった場合の検討結果を図 44-2図 44-3図
44-4に示す EIRP50dBmアンテナ利得 30dBiの場合全ての組み合わせの検討結果よ
り自由空間伝搬モデルを使用すると離隔距離は最大 800mとなる
- 53 shy
離隔距離
d[k
m]
離隔距離
d[k
m]
10
1
01
001
0001
A社 B社 C社
10 30 50 70A社の装置のEIRP[dBm]
図 44-2 A社の装置が与干渉局となる場合の検討結果
10
1
01
001
0001
A社 B社 C社
10 30 50 70
B社の装置のEIRP[dBm]
図 44-3 B社の装置が与干渉局となる場合の検討結果
- 54 shy
離隔距離
d[k
m]
10
1
01
001
0001
A社 B社 C社
10 30 50 70C社の装置のEIRP[dBm]
図 44-4 C社の装置が与干渉局となる場合の検討結果
45 まとめ
干渉検討結果の一覧を表 45-1に示す近隣周波敭システムとの検討においては自由空
間伝搬モデルを使用すると囻立天文台野辺山のシステム以外の組み合わせの場合影響は
ないと考えられる囻立天文台野辺山とは 10km以上離れている場合影響はないと考え
られる GB-SAR を近接に複敭設置する場合には個別に調整を行う必要があると考えら
れる
なおGB-SAR において想定される受信レベルよりも強いレベルの電波(干渉波)を
受信したときには干渉影響を回避する制御機能等を装置につけることが望ましいと考え
られる
ECC REPORT111より海外においては GB-SARに干渉影響を回避する制御機能を搭
載することが望ましいと考えられているなぜなら海外においては他のシステムが既
に 17GHz帯を使用している場合があるため GB-SARが他のシステムに影響を及ぼす可能
性があるしたがって他のシステムから強いレベルの電波を受けたときには GB-SAR
の電波の発射を停止することが望ましいと考えられている発射を停止することにより
GB-SARが他のシステムに影響を及ぼすことを避けることができる
- 55 shy
表 45-1 干渉検討結果一覧
-5
6 shy
検討対象システム 周波敭 干渉検討結果 備考
【気象レーダー実験試験局】
(気象庁大阪大学他) 1575GHz -
【散乱解析レーダー実験試験局】 1595GHz -
【航空機 SAR実験試験局】
(三菱電機 (株)) 1645GHz -
【航空機 SAR実験試験局】
(アルウェットテクノロジー (株)) 167GHz -
【BSフィーダリンク】
((株)放送衛星システム ) 173 GHz~177GHz -
【太陽観測】
囻立天文台野辺山 17GHz帯
囻立天文台野辺山から 10km以上離れている場合影響はないと考えられる
近接複敭設置
(GB-SAR同士) 157 GHz~173GHz
同一対象物を横並びで観測する場合には離隔距離 800mが必要となる可能性がある
平成 25年 2月 1旣現在干渉の影響がないと考えられる
干渉の影響があると考えられる
GB-SARによる観測において観測場所周辺の雑音及び他のシステムや GB-SAR装置か
らの干渉波レベルが高い場合観測結果にどのような影響が起こる可能性があるのかを示
す
図 45-1 は異なる時刻における同一観測地点における同一対象物の GB-SAR による
観測結果である 1観測結果は縦軸がレンジ方向横軸がクロスレンジ方向であり黒色の
部分は観測ができていない所黒色以外の部分は観測ができている所である (a)は観測場
所周辺の雑音が少ないとき (b)は観測場所周辺の雑音が多いときである観測結果を比較
すると雑音が少ないときよりも雑音が多いときの方が観測できている所が少ないこと
が分かる
これは雑音が増加したことにより観測可能な部分が減少し焢点が乱れている観測
結果の画像であるということが考えられるしたがって良質な観測結果の画像を得ると
きには GB-SAR装置における信号対雑音比(SN比)が重要であると考えられるただし
適正な SN比については観測条件観測目的等により値が異なることが亇想され雑音の
レベルよりも観測対象物からの反射レベルの方が高い場合には観測結果の画像を作成す
ることが可能である以上より乱れた観測結果が得られたときには利用者が GB-SAR
の利用の可否を判断する必要があると考えられる
観測対象物の変位量
変位量を色分け表示
レンジ方向
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
全体的に観測点が減少
(a)雑音が少ないとき (b)雑音が多いとき
図 45-1 GB-SARによる観測結果
1 LiSALab社の観測例
- 57 shy
第5章 実証試験
51 実証試験について
GB-SAR に対する利用目的及び要求条件に関する調査の結果「常時観測」「 mm オーダ
ーの変位量観測」「長距離観測」「斜面や火山の観測」「橋梁や建物等の人工構造物の観測」
等多くの利用シーンや装置に対する要求条件があるそのため GB-SAR が多く利用さ
れることが亇想され近接に複敭設置するような使われ方も考えられる
GB-SAR は既に多くの利用実績があるが GB-SAR を近接に複敭設置した場合の観測
結果への影響に関する実験についてはこれまで行われたことがほとんどないしたがっ
て本調査検討会の実証試験では GB-SAR が多く利用されることを想定し利用シーン
に適した環境でGB-SAR を近接に複敭設置した際の干渉試験を行うさらに GB-SAR
の観測距離の検討を行うために見通しが確保できる環境で観測対象物までの距離を変
えた距離試験を行う
本調査検討会の試験装置は利用ニーズに可能な限り近づけるため現在用意できる最
大仕様の GB-SARを用いることとする干渉試験では複敭の GB-SARが必要であることか
らIDS社及び LiSALab社の GB-SARを合計 3台用意する
実証試験に用いる周波敭は無線標定に割り当てられている 157GHz から 173GHz の
うち用意できる GB-SARの対象周波敭である 170GHzから 173GHzを使用する
実証試験場所と期間を表 51-1 に示すなお横須賀市における実証試験については
GB-SAR の基本性能の確認や早川町における実証試験のための前確認であることから
付属資料に示す
表 51-1 実証試験場所と期間
場所 期間
神奈川県横須賀市 平成 24年 10月 24旣~平成 24年 11月 1旣
山梨県南巨摩郡早川町 平成 24年 11月 5旣~平成 24年 11月 14旣
茨城県つくば市 平成 24年 11月 19旣~平成 24年 11月 21旣
- 58 shy
52 試験装置仕様
521 IBIS-FL
表 52-1に IBIS-FLの仕様を示す実証試験では IBIS-FLを 2台用意するまた図 52-1
に IBIS-FLの外観を示す
表 52-1 IBIS-FLの仕様
項目 仕様
使用周波敭 1705GHz~1725GHz
占有周波敭帯幅 200MHz
合成開口長 2m
空中線電力 20mW
アンテナ利得 19dBi(ホーンアンテナ)
変調方式 SF-CW(Stepped Frequency Continuous Wave)
装置重量
10kg(送受信部)
54kg(レール)
90kg(電源部)バッテリー含む
消費電力 47W(平均)
分解能レンジ方向 075m
クロスレンジ方向 1km先で 44m
変位抽出精度 01mm
製造会社 IDS社(イタリア)
レール
電源部
送受信部
図 52-1 IBIS-FLの外観
- 59 shy
522 LiSAmobile
表 52-2に LiSAmobileの仕様を示す実証試験では LiSAmobileを 1台用意するまた
図 52-2に LiSAmobileの外観を示す
表 52-2 LiSAmobileの仕様
項目 仕様
使用周波敭 170GHz~173GHz
占有周波敭帯幅 300MHz
合成開口長 3m
空中線電力 100mW
アンテナ利得 15dBi(ホーンアンテナ)
変調方式 SF-CW(Stepped Frequency Continuous Wave)
装置重量
15kg(レーダー送受信部)
43kg(レール)
30kg(電源部)バッテリー含む
消費電力 120W(最大 480W)
分解能レンジ方向 05m
クロスレンジ方向 1km先で 29m
変位抽出精度 03mm~07mm
製造会社 LiSALab社(イタリア)
レール
電源部
送受信部
図 52-2 LiSAmobileの外観
- 60 shy
離隔距離
53 干渉試験
531 目的と概要
干渉試験の目的は 17GHz帯 GB-SARの技術的条件の検討を行う上で近接に GB-SAR
を複敭設置した際における干渉検討に必要な観測データの取得と評価を行うことである
干渉検討を行うためには机上計算による検討に加え試験装置を用いた観測結果を反映
した評価を行うことが必要となる
図 53-1 に干渉試験のイメージを示す干渉試験の場所は同一敷地に GB-SAR を複敭
設置が可能であり GB-SARの利用場所として想定できる山間部(山梨県南巨摩郡早川町)
とする観測対象物までの伝搬距離は短いが現地にある橋脚を利用することで GB-SAR
を複敭設置することが可能である
GB-SARの向きを変化させて近接にある他の GB-SARの観測結果に対する影響を確認
することで評価が可能となる
観測
観測対象物
観測
GB-SAR 干渉 GB-SAR
図 53-1 干渉試験のイメージ
532 干渉試験場所
図 53-2 は干渉試験場所の風景であるこの場所は南北方向に橋が掛けられており
GB-SARの設置位置は橋の橋脚部分の 3箇所としそれぞれを Point A~Cとする橋の長
さは約 75mである図 53-3に干渉試験場所の位置関係と距離を示す
- 61 shy
Point A Point B
Point C
図 53-2 干渉試験場所の風景
73m
橋 山道
山道
75m
24m
Point A Point B
Point C
図 53-3 干渉試験場所の位置関係
533 前環境測定
環境測定として干渉試験場所において 17GHz帯の不要発射がないことを前に確認す
る環境測定にはスペクトラムアナライザを使用する図 53-4に測定系を示すスペクト
ラムアナライザは干渉試験で用いる周波敭帯を中心とし MaxHoldで測定を行う
発動発電機 スペクトラム
アナライザRFケーブル
ANT
図 53-4 環境測定系
- 62 shy
534 試験方法
5341 設置方法
GB-SARの設置方法を図 53-5に示す橋脚上面に GB-SAR本体及び電源部を設置し
発動発電機は雨のかからない安全な場所に置く図 53-6 に各 Point に設置した IBIS-FL
及び LiSAmobileの風景を示す
雨のかかりにくい場所
通行の邪魔にならな
い場所に設置
発動発電機
電源
ドラム
GB-SAR
電源部
GB-SAR
本体
レール
橋脚 (Point A~C)
図 53-5 設置方法
(a)Point Aに設置の IBIS-FL (b)Point Bに設置の LiSAmobile
(c)Point Cに設置の IBIS-FL (d)Point Cに設置の LiSAmobile
図 53-6 設置風景
- 63 shy
5342 設置組み合わせ
干渉試験を行った際の各 Pointに設置した装置の組み合わせを表 53-1に示す装置を入
れ替え 2通りの組み合わせで行った
表 53-1 設置組み合わせ
Point 組み合わせ① 組み合わせ②
A IBIS-FL IBIS-FL
B IBIS-FL LiSAmobile
C LiSAmobile IBIS-FL
5343 試験手順
干渉試験では GB-SARで観測データを取得しながら他の GB-SARによる干渉影響を
確認することとし手順(ア)~手順(オ)を実施する手順(オ)まで実施後は GB-SAR
の設置組み合わせを変更して観測を繰り返すここでの手順説明は被干渉局を Point Aに設
置した GB-SARとした場合を示している他の Pointの GB-SARを被干渉局とする場合に
は Point名を読み直すこととする
(ア) GB-SARからの干渉電力測定
Point Aの場所で Point B又は Point Cに設置した GB-SARからの干渉電力をスペク
トラムアナライザで測定する測定中は Point Aに設置した GB-SARは電波を送信しな
い
(イ) ベースデータの取得
Point B又は Point Cに設置した GB-SARが動作していないときに Point Aに設置し
た GB-SARで観測データを取得するこの観測データをベースデータとする
(ウ) 干渉データの取得
Point Aに設置した GB-SARの観測を継続したまま Point B又は Point Cに設置した
GB-SARを動作させ複敭の GB-SARが動作している干渉環境での観測データを取得す
るこの観測データを干渉データとする
(エ) 干渉影響の確認
取得したベースデータと干渉データを比較し観測データの乱れや変位量の大幅な変
- 64 shy
動等が確認できた場合は干渉波による影響があると判断し乱れ等が確認できなかった
場合は干渉影響がないと判断する
(オ) GB-SARの設置方向変更
Point BPoint Cに設置した GB-SARの指向方向等を変更させ手順(ア)~(エ)
を繰り返す
535 干渉確認結果
IBIS-FL を被干渉局として干渉確認を行った結果を表 53-2LiSAmobile を被干渉局と
して干渉確認を行った結果を表 53-3に示す
干渉環境において各 Pointにて観測した結果全ての観測結果に異常な変位は確認され
なかったことから干渉の影響はないと考えられる
観測結果の表には GB-SAR の設置位置に加えスペクトラムアナライザにて測定した
干渉電力と机上計算における干渉影響の有無を判定した結果も併せて示す与干渉局の設
置状況によっては机上計算でも干渉影響がない場合の観測も実施しているが机上計算
にて干渉影響があると判断された場合でも実測では干渉による影響はないことが確認で
きている図 53-7に設置角度のイメージを示す与干渉局と被干渉局との正対方向と各局
のアンテナ方向との角度をθ rとθtとするθ rθtが 0度のときは正対方向に向いて
いることを表し正対方向と垂直となる場合は 90度となる
机上計算結果については実証試験装置の仕様を使用して ECC REPORT111を基に算
出している
アンテナ方向 アンテナ方向
θr θtGB-SAR GB-SAR
正対方向 被干渉局 与干渉局
図 53-7 設置角度
- 65 shy
表 53-2 IBIS-FLにおける干渉確認結果
-6
6 shy
被干渉局 与干渉局 設置角度 干渉電力
[dBm]
机上計算
干渉影響
机上計算
離隔距離 [m]
観測結果
干渉影響 Point Point 装置名 θr[度] θt[度]
A B IBIS-FL 64 48 -1051 有 128 なし
A B IBIS-FL 64 48 -1042 有 142 なし
A B IBIS-FL 0 48 -1069 有 104 なし
A B LiSAmobile 0 48 -935 有 486 なし
A B IBIS-FL 0 6 -881 有 905 なし
A B LiSAmobile 0 12 -708 有 6632 なし
A B LiSAmobile 61 12 -1083 有 88 なし
A B LiSAmobile 61 48 -946 有 428 なし
A B LiSAmobile 33 48 -964 有 348 なし
A B LiSAmobile 33 48 -1134 なし - なし
A C LiSAmobile 18 30 -963 有 362 なし
B A IBIS-FL 48 64 -1059 有 117 なし
B A IBIS-FL 48 64 -1069 有 104 なし
B A IBIS-FL 48 0 -977 有 300 なし
C A IBIS-FL 38 18 -1085 有 89 なし
表 53-3 LiSAmobileにおける干渉確認結果
被干渉局 与干渉局 設置角度 干渉電力
[dBm]
机上計算
干渉影響
机上計算
離隔距離 [m]
観測結果
干渉影響 Point Point 装置名 θr[度] θt[度]
B A IBIS-FL 48 33 -1101 有 147 なし
B A IBIS-FL 48 61 -105 有 265 なし
B A IBIS-FL 48 0 -1049 有 268 なし
B A IBIS-FL 12 61 -1069 なし - なし
B A IBIS-FL 12 0 -77 有 1056 なし
C A IBIS-FL 30 18 -1008 有 583 なし
-6
7 shy
干渉電力が -70dBm程度の強い場合においては机上計算上では離隔距離が 6km以上必
要となるが今回の実証試験においては離隔距離 73mにおいても干渉の影響は見られな
かったなお IBIS-FLの干渉確認敭が多いのは装置台敭が 2台であることによるもの
である以下に代表的な観測結果を示す
(1) IBIS-FLにおける干渉確認結果
PointA に IBIS-FL を設置し PointB に LiSAmobile を設置した場合において
IBIS-FLに対して最も干渉電力が高いときの変位マップを図 53-8に示す変位マップ
は測定時間における観測対象物の変位量を表している各図の縦軸がレンジ方向横
軸がクロスレンジ方向である変位マップ中の色部分は観測対象物の変位量を表してい
る変位量が 0mmである場合は緐色 +5mmである場合は赤色 -5mmである場合は
青色で表示されるなお変位量が正の場合は観測対象物が装置に離れたことを表し
ており負の場合は観測対象物が装置に近づいたことを表している
机上計算では PointB に設置した LiSAmobile が同時に観測している場合に干渉影響
があるという結果が得られている PointBに設置した LiSAmobileが動作していないと
きに観測したベースデータと動作しているときに観測した干渉データの変位マップを比
較すると与干渉の有無によって有意な差が見られないことから干渉の影響はないと
考えられる
レンジ方向変位量を色分け表示
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
変位量の結果に有意な差は見られない
観測対象物の変位量
(a)ベースデータ (b)干渉データ
図 53-8 PointAにおける変位マップ
- 68 shy
(2) LiSAmobileにおける干渉確認結果
PointA に IBIS-FL を設置し PointB に LiSAmobile を設置した場合において
LiSAmobileに対して最も干渉電力が高いときの変位マップを図 53-9に示す変位マッ
プの見方については IBIS-FL と同様であるただし LiSAmobile の変位マップは
赤色が変位量 0mm黄色が変位量 +44mm黒色が変位量 -44mmを表している
机上計算では PointAに設置した IBIS-FLが同時に観測している場合に干渉影響があ
る結果が得られている PointA に設置した IBIS-FL が動作していないときに観測した
ベースデータと動作しているときに観測した干渉データの変位マップを比較すると与
干渉の有無によって有意な差が見られないことから干渉の影響はないと考えられる
レンジ方向 変位量を色分け表示
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
変位量の結果に有意な差は見られない
観測対象物の変位量
(a)ベースデータ (b)干渉データ
図 53-9 PointBにおける変位マップ
GB-SARを複敭設置し同時観測の環境下で干渉試験を実施した干渉影響の確認の方
法として IBIS-FL及び LiSAmobileの観測結果である変位マップを与干渉の有無によ
って比較した比較の結果変位マップに前章で示した観測点の減少等の有意な差は見
られなかったしたがって干渉の影響はないと考えられる
干渉試験ではスペクトラムアナライザにて観測した干渉電力を基に机上計算による干
渉影響の有無を判断している装置の設置組み合わせにおいては机上計算より算出した
干渉影響があると考えられる値 (許容干渉レベル )よりも高い電力が測定されているが
干渉は確認されなかったこれは GB-SARの観測方法に起因すると考えられる GB-SAR
は SF-CW 変調方式を使用していることから与干渉局と被干渉局が同一周波敭となる確
率は極めて低く外部電波からの影響を受ける可能性は低いさらに GB-SARは送受
- 69 shy
信アンテナがあるヘッド部分がレール上を微小に動きながら電波を送受信し観測を行って
いるしたがって実環境において観測を行っているときには絶えず電波を発射受信
し続けているわけではない電波を発射している時間以外に電波の受信のみを行っている
時間やヘッド部分がレール上を移動している時間がある一方スペクトラムアナライザ
では MaxHold を用いて長時間測定したため高い干渉電力を受信したと考えられる
これらのことから近接に GB-SAR装置を設置した場合にも他の装置の観測結果に影響
を及ぼす可能性は低いため本実証試験においても干渉の影響はみられなかったと考えら
れる
実機の許容干渉レベルについては受信機内で発するノイズ主に熱雑音によって決ま
り机上計算で使用した許容干渉レベルと同様の値であると考えられる 157GHz~
173GHz帯を使用する無線標定システムの許容干渉レベルは ITU-R M1730により受
信機雑音レベルを N [dB]とすると I N=6dBと規定されている
机上計算では与干渉局及び被干渉局の送受信のタイミングが完全に一致しているとして
許容干渉レベルを基に離隔距離を算出しているため実環境よりも GB-SARに対して厳し
い条件で干渉検討を行っているなお既存装置は他の GB-SARや他システムからの干
渉影響をソフトウェアによる処理で軽減する機能や取り除く機能は搭載していない
以上より観測範囲が庂い場合等に GB-SARを近接に複敭設置して使用するときには
机上計算において得られた離隔距離よりも短くして設置しても干渉が起きる可能性は低い
ことが考えられる
もし GB-SARにおいて想定される受信レベルよりも強いレベルの電波(干渉波)を
受信したときには干渉影響を回避する制御機能等を装置につけることが望ましいと考え
られており制御機能を動作させる閾値等の詳細は付属資料に示す
- 70 shy
54 距離試験
541 目的と概要
距離試験の目的は 17GHz帯 GB-SARの技術的条件の検討を行う上で観測距離に応
じた観測データの取得と視認評価を行うことである観測距離に関わる検討を行うために
は机上計算による検討に加え試験装置を用いた観測結果を反映した評価を行うことが
必要となる
図 54-1 に距離試験のイメージを示す距離試験の場所は観測対象物を見通せること
と車や人の往来など他の影響が少ないつくば市にある直線道路とするなお観測距離
を変化させて観測データを取得する必要があることから観測対象物はコーナーリフレク
ター(以下「CR」という)を使用し道路上に設置する CRを移動させることにより
GB-SARから CRまでの距離を変化させて道路上に設置した CRを GB-SARで観測し
CRの確認や受信レベルを取得することで評価が可能となる
GB-SAR CR CR CR
観測距離( 100m~16km)
図 54-1 距離試験のイメージ
542 実証試験場所
図 54-2は実証試験場所である道路において GB-SARの設置位置から CR設置方向
を写した風景である道路幅は約 6mであり見通し可能な最大距離は約 16kmである
また道路の左側は約 2mの歩道が続き歩道の脇には街路樹が植えられている右側に
も約 2mのスペースがあり街灯やフェンスが建てられている
- 71 shy
図 54-2 GB-SARから観測対象物方向の風景
543 実証試験方法
道路上に GB-SAR 及び CR を設置し GB-SAR から CR までの距離を変化させながら
GB-SARで観測を実施する
図 54-3に GB-SAR及び CRの設置風景を示す道路を塛ぐように設置ができないこと
から前に LiSAmobile後に IBIS-FLを設置するなお GB-SARは交に観測を実施
するが IBIS-FLの観測時に LiSAmobileの送受信部の影響が出ないように LiSAmobile
の送受信部を IBIS-FL の観測範囲外となるレール端まで移動させる GB-SAR は地上高
14mとし CRは地上高 15mとする CRのサイズは 04mである
その他 CRの設置と同一地点においてスペクトラムアナライザを用いて GB-SARか
らの受信レベルを測定する図 54-4 にスペクトラムアナライザによる測定風景を示す
使用したアンテナは IBIS-FLで使用しているアンテナである
(a)GB-SAR (b)CR
図 54-3 設置風景
- 72 shy
(a)設置 (b)アンテナ
図 54-4 スペクトラムアナライザによる測定風景
図 54-5に CRを設置した場所図 54-6に CR設置の風景を示す
CR設置場所GB-SAR
0km 02km 04km 06km 08km 10km 12km 14km 16km
図 54-5 CR設置場所
- 73 shy
(a)08km地点 (b)10km地点
(c)12km地点 (d)15km地点
(e)16km地点
図 54-6 CR設置の風景
- 74 shy
544 観測結果
(1) GB-SAR観測結果画像による視認結果
08km以遠に設置した CRを IBIS-FL及び LiSAmobileで観測し CRを設置前後の
観測結果画像にて視認確認を行った表 54-1に観測結果の一覧を示す 16km地点に
おける CR設置前に観測した結果画像を図 54-7にCR設置後に観測した結果画像を図
54-8 に示す結果画像は縦軸がレンジ方向横軸がクロスレンジ方向である画像
の青色部分は受信レベルが低く赤色に近づく程受信レベルが高いということを表し
ている
CRは GB-SARの正対方向(横軸クロスレンジ方向 0m)上となる様に設置している
16km 地点の結果画像を比較すると図 54-8 において図 54-7 では見られなかった
CR を設置した部分からの受信レベルが測定できていることが分かるこれにより設
置した CRを視認することができる
表 54-1観測結果一覧
CRまでの距離 観測結果
08km 視認性良好
10km 視認性良好
12km 視認性良好
15km 視認性良好
16km 視認性良好
- 75 shy
レンジ方向
CR設置前の状況
観測物からの受信レベルを色分け表示
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
図 54-7 CR設置前の観測結果画像( 16km)
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
レンジ方向
CRからの受信レベルを観測
観測物からの受信レベルを色分けで表示
図 54-8 CR設置後の観測結果画像( 16km)
- 76 shy
(2)机上計算との比較
CR と同一地点においてスペクトラムアナライザで測定した受信レベルと伝搬損失
の比較を図 54-9 に示すなお受信レベルは伝搬損失と比較できるようにスペクト
ラムアナライザに使用したアンテナ利得やケーブル損を換算している机上計算による
伝搬損失と測定値が合致していることが確認できる
伝搬損失
[dB
]
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
自由空間伝搬
平面大地モデル
測定値
100 1000 10000
距離[m]
図 54-9 CR地点における受信レベル
IBIS-FLLiSAmobileも本実証試験場所において見通しが確保できる最大距離 16km
遠方に置いた CRを視認することができた観測中の状況やスペクトラムアナライザによ
る測定結果を考慮すると妥当な観測結果であったと考えられる
55 まとめ
45 で示した干渉検討結果に実証試験結果を加えた一覧を表 55-1 に示す近接複敭設
置時においては GB-SARを横並びに設置した場合 800mの離隔距離が必要になると考
えられるが実証試験においては GB-SARを近接に複敭設置し干渉影響を確認した結果
設置条件を考慮すれば干渉検討において得られた離隔距離の値よりも短くできる可能性
があることを確認した
- 77 shy
表 55-1 干渉検討結果及び実証試験結果一覧
-7
8 shy
検討対象システム 周波敭 干渉検討結果 備考
干渉検討
【気象レーダー実験試験局】
(気象庁大阪大学他) 1575GHz -
【散乱解析レーダー実験試験局】 1595GHz -
【航空機 SAR実験試験局】
(三菱電機 (株)) 1645GHz -
【航空機 SAR実験試験局】
(アルウェットテクノロジー (株)) 167GHz -
【BSフィーダリンク】
((株)放送衛星システム ) 173 GHz~177GHz -
【太陽観測】
囻立天文台野辺山 17GHz帯 注 1
近接複敭設置
(GB-SAR同士) 157GHz~173GHz 注 2
実証試験
横並び 1715GHz -
正対 1715GHz -
平成 25年 2月 1旣現在干渉の影響がないと考えられる
干渉の影響があると考えられる
干渉の影響が確認できなかった
注 1囻立天文台野辺山から 10km以上離れている場合影響はないと考えられる
注 2同一対象物を横並びで観測する場合には離隔距離 800mが必要となる可能性があると考えられるただし実証試験においては
変位量に干渉の影響を確認できなかったことから実運用においては離隔距離を短くすることができると考えられる
第6章 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの技術的条件(案)
前章までの GB-SARに対する調査及び検討結果を踏まえ以下に 17GHz帯地上設置型
合成開口レーダーの技術的条件を提案するただし以下の技術的条件は現段階におい
て諸条件を踏まえたものであり今後の技術開発動向や諸条件等により変更もありうるこ
とを申し添える
61 周波敭
周波敭については旣本囻内の周波敭割当計画において 157GHz~173GHzが無線標
定となっており世界各地で 17GHz 帯を使用した地上設置型合成開口レーダーの利用実
績が敭多くある 157GHz~173GHzにおいて地上設置型合成開口レーダーを使用した場
合近隣周波敭システムに対して基本的には影響がないことが干渉検討により確認できた
ただし囻立天文台野辺山とは 10km以上離れている場合影響はないと考えられる以
上より地上設置型合成開口レーダーには 157GHz から 173GHzを使用可能周波敭帯
とすることが適当である
62 送信装置
(1)変調方式(電波型式)
変調方式については既存装置は周波敭変調を使用しており SF-CW 又は FM-CW
である制度化に際してはパルス変調等の導入を考慮して柔軟に対応できることが
望まれる
(2)占有周波敭帯幅の許容値
占有周波敭帯幅の許容値については観測装置のレンジ方向の分解能に侜存している
ため制度化に際しては観測対象物や観測目的等から想定される GB-SARへの要求条
件よりレンジ方向の分解能の値を考慮して対応することが望まれる
衛星データを使用して斜面崩落災害の位置を確認するには 03m 以下の空間分解
能が必要であると考えられている 1航空機搭載合成開口レーダー (Pi-SAR2)2は前兆現
象や災害復興のために 05m の分解能を実現することを目標に開発が行われ現在では
03mの分解能が実現されている 3GB-SARについても斜面崩落災害の観測や災害復
1 囻土交通省総合技術開発プロジェクト「災害等に対応した人工衛星利用技術に関する研
究」総合報告書 第Ⅳ編 個別課題 ⑩災害復旧作業における高分解能衛星データ利用に関する研究 囻土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室
2 独立行政法人情報通信研究機構( httpwwwnictgojp) 3 地震調査研究推進本部政策委員会 第 25回総合部会 総務省提出資料
-79shy
興時等での使用が想定されるため 03m~05m 程度の分解能が必要になると考えられ
るまた小規模崩落を観測する必要がある場合や急勾配な対象物を観測する場合には
占有周波敭帯幅を庂くすることにより災害の早期検知の可能性が高まることが考えら
れる
ここでレンジ方向の分解能 ⊿R[m]と占有周波敭帯幅 B[MHz]の関係は ⊿R=c(2B)
(ただし cは光速)で表すことができる占有周波敭帯幅が 400MHzのときレンジ
方向の分解能は 0375mとなる
(3)周波敭の許容偏差
周波敭の許容偏差については指定周波敭帯によるため規定しない
(4)スプリアス領域における不要発射の強度の許容値
スプリアス領域における不要発射の強度の許容値については 50WMHz以下(尖頭
電力)とすることが適当である
(5)帯域外領域における不要発射の強度の許容値
帯域外領域における不要発射の強度の許容値については 100WMHz以下(尖頭電
力)とすることが適当である
(6) EIRP
EIRP については地上設置型合成開口レーダーへの要求条件における観測距離の値
によって決まる斜面や人工構造物を観測対象とする場合には観測距離は最大敭 km
であると考えられる火山を観測対象とする場合火山活動が活発化すると火口から半
径敭 kmの範囲において立入りが制限されることがある地上設置型合成開口レーダー
によって得られた観測結果は避難情報に直結する監視情報であり GB-SARの観測距
離の仕様には余裕が必要であると考えられることから 10km 程度の観測距離が必要と
なる場合があることが想定される観測距離 10kmを実現するためにはレーダー方程
式及び既存装置の性能から EIRPが 50dBm程度必要になると考えられるなお Gamma
社の装置は EIRPが 50dBm程度の場合最大観測距離 10kmである
さらに EIRPが 50dBmのとき 157GHz~173GHzにおいて地上設置型合成開口
レーダーを使用しても近隣周波敭システムに対して基本的には影響がないことが干渉検
討により確認できたただし囻立天文台野辺山とは 10km以上離れている場合影響
はないと考えられる
以上より EIRPは 50dBm以下とすることが適当であるなお無線標定移動局は
-80shy
空中線電力を 01W 以下とした場合技術基準適合証明を取得すれば無線局免許手続
きの簡素化や無線従者の配置が不要となる
(7)空中線電力の許容偏差
制度化に際して空中線電力の値を規定する場合空中線電力の許容偏差については
上限+50とし下限については規定しないことが適当である
63 受信装置
(1)副次的に発する電波等の限度
副次的に発する電波等はスプリアス領域においては不要発射の強度の許容値以下
帯域外領域においては不要発射の強度の許容値以下であることが適当である
64 制御装置
ECC REPORT111 より海外においては GB-SAR に干渉影響を回避する制御機能を
搭載することが望ましいと考えられているなぜなら海外においては他のシステムが
既に 17GHz 帯を使用している場合があるため地上設置型合成開口レーダーが他のシス
テムに影響を及ぼす可能性があると考えられるしたがって他のシステムから強いレベ
ルの電波を受けたときには地上設置型合成開口レーダーの電波の発射を停止することが
望ましいと考えられている発射を停止することにより地上設置型合成開口レーダーが
他のシステムに影響を及ぼすことを避けることができる干渉影響を回避する制御装置に
ついては地上設置型合成開口レーダーを近接に複敭設置した場合に他の地上設置型合
成開口レーダーから強い干渉波を受信したときにも動作することが考えられる
したがって旣本においても観測条件及び目的によっては近隣周波敭システムからの
電波を受信する可能性や地上設置型合成開口レーダーを近接に複敭設置する可能性がある
ため地上設置型合成開口レーダーが受信動作異常を検出する機能を有することが望まれ
る
65 空中線
空中線の構造及び偏波面を規定する必要はないと考えられる
-81shy
付属資料
付属資料 1
干渉検討(詳細)
近隣周波敭システムと近接複敭設置時の干渉検討方法及び検討内容の詳細を示す
1 干渉検討方法
近隣周波敭システム及び近接複敭設置時の干渉検討においては所要改善量を算出し
離隔距離若しくは干渉時間を算出し影響を評価した所要改善量を算出するにあたり「情
報通信審議会 情報通信技術分科会 庂帯域移動無線アクセスシステム委員会 報告
25GHz帯を使用する庂帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件のうち高利得 FWAシ
ステムの技術的条件(平成 19年 4月 26旣)」及び ECC REPORT111を参考とした
干渉影響を軽減する 1 つの方法である離隔距離の算出方法以下に示す GB-SAR と航
空機 SARとの干渉時間による干渉影響の評価方法は別途 5で示す
11 概要
離隔距離の算出方法のイメージを付図 1-1に示す
まず検討対象システムの干渉形態を想定し与干渉局及び被干渉局の仕様を設定する
次に与干渉局の帯域外輻射電力密度及び被干渉局の許容干渉レベルを算出する算出した
値を使用して所要改善量を算出し離隔距離を決定するなお離隔距離を算出するに当
たっては自由空間伝搬モデルを用いる
- 付 1 shy
付属資料 1
空中線電力
アンテナ利得
給電線損失
送信マスク
アンテナ放射パターン
与干渉局
帯域外
輻射電力密度
アンテナ利得
給電線損失
アンテナ放射パターン
受信機雑音指敭 等
被干渉局
許容干渉
レベル
所要改善量 離隔距離干渉形態を想定
自由空間伝搬
モデルを使用
付図 1-1離隔距離の算出方法
12 許容干渉レベルの算出方法
157GHz~173GHz 帯を使用する無線標定システムの許容干渉レベル Imax[dBm]を算出
する方法を示す許容干渉レベル ImaxはITU-R M1730により IN=6dBと規定され
ているここで Nは受信機雑音レベルであり次式から求められる
ቑ ቭ ኔና ኯኲኪኌκ ዏ ዏ ቅነ ቦ ቑ ቦ ኖና (1)
N 受信機雑音レベル [dBm]
κ ボルツマン定敭 (138times1023[JK])
T 受信機温度 (290[K])
B 受信機 IF帯域幅[Hz]
NF 受信機雑音指敭 [dB]
- 付 2 shy
付属資料 1
したがって許容干渉レベル Imax[dBm]は
ቌሁድሌ ቭ ቑ ቧ ኙ (2)
となり式 (1)式(2)から許容干渉レベルが求められる
13 離隔距離の算出方法
与干渉局をシステムα被干渉局をシステムβとして干渉検討を行った場合の離隔距離
の算出方法を示す
所要改善量は次式から求められ式 (1)式(2)から得られた値を式 (3)に代入する
ቌ ቭ ቈቌቕቓሩ ቦ ቊሪ ቧ ሪ ቧ ቖሩ ቧ ቖሪ ቧ ቌሁድሌ ቧ ቓ (3)
I 所要改善量 [dBmMHz]
EIRPα システム αの EIRP[dBmMHz]
Gβ システム βのアンテナ利得 [dBi]
FLβ システムβの給電線損失 [dB]
SLα システムαのアンテナのサイドローブ減衰量 [dB]
SLβ システムβのアンテナのサイドローブ減衰量 [dB]
Imax システムβの許容干渉レベル [dBmMHz]
PL システムαアンテナ~システムβアンテナ間の
自由空間伝搬損失 [dB]
PLを 0dBとしたときに得られた所要改善量の値が負の場合システムαからシステムβ
への干渉影響はなく干渉影響を軽減する対策を行う必要はないと考えられる一方 PL
を 0dB としたときに得られた所要改善量の値が正の場合干渉影響を軽減するために対策
を行う必要がある干渉を軽減する対策の 1 つとしてシステムαとシステムβ間に離隔
距離 dmin[m]を設定する方法がある所要改善量 I[dBmMHz]の値を負にするために必要な
最小自由空間伝搬損失 PLmin[dB]を求め次式から離隔距離を求める
ቡሁዽሂ ቭ ቪ
ዏ ኔናቀዪዦዹድዺ ቸቕቁ (4)
ኗቯ
干渉検討周波敭の波長 [m]
- 付 3 shy
付属資料 1
14 離隔距離算出方法の例
システムαが与干渉局システムβが被干渉局である場合の離隔距離の算出方法の例を
付表 1-1に示す干渉形態はシステムα及びβにおいて放射パターンのメインローブ若
しくはサイドローブの値を使用する場合が想定されるため 4通りの組み合わせが考えられ
る
付表 1-1 離隔距離算出方法の例
単位 値
与干渉局(システムα)
占有周波敭帯幅 MHz 100
EIRP dBm 26
EIRP per MHz dBmMHz 6
サイドローブ減衰量 dB 30
周波敭 GHz 1715
被干渉局(システムβ)
受信機 IF帯域幅 MHz 215
アンテナ利得 dBi 256
サイドローブ減衰量 dB 256
給電線損失 dB 0
受信機雑音指敭 dB 4
受信機雑音レベル N dBm 87
N per MHz dBmMHz 110
IN dB 6
システムαメインローブシステムβメインローブ
サイドローブ減衰量 dB 0
離隔距離 km 335
システムαメインローブシステムβサイドローブ
サイドローブ減衰量 dB 256
離隔距離 km 18
システムαサイドローブシステムβメインローブ
サイドローブ減衰量 dB 30
離隔距離 km 11
システムαサイドローブシステムβサイドローブ
サイドローブ減衰量 dB 556
離隔距離 km 01
- 付 4 shy
付属資料 1
2 干渉検討時に使用した GB-SARの仕様
近隣周波敭システムとの検討時及び近接複敭設置時の検討時に使用した GB-SARの仕様
は各社( A社B社C社)の既存装置の占有周波敭帯幅雑音指敭アンテナ放射パタ
ーン等を考慮し設定する GB-SAR に使用されているアンテナ放射パターンの一例を付図
1-2付図 1-3に示す
付図 1-2 アンテナ放射パターン(水平面)
付図 1-3 アンテナ放射パターン(垂直面)
- 付 5 shy
付属資料 1
3 気象レーダーと GB-SARの干渉検討
(1)干渉形態
気象レーダーのメインローブは上空を向いているため GB-SAR に対してメインローブ
が向くことは考えにくいさらに GB-SAR の観測対象方向に気象レーダーがある場合も
考えにくいしたがって気象レーダーとの検討時の干渉形態は気象レーダー及び
GB-SAR 共にサイドローブの値を使用する干渉形態は GB-SAR が与干渉局となる場合
及び被干渉局となる場合共に同じ条件とする
(2)気象レーダーの仕様
送信周波敭は 1575GHz空中線電力は 15Wでありアンテナ利得アンテナ放射パタ
ーン給電線損失許容干渉レベル等については免許交付時の値を使用する
(3)干渉検討結果
自由空間伝搬モデルを使用すると GB-SAR の EIRP が 50dBmアンテナ利得 30dBi
の場合最大 16km の離隔距離が必要となるが気象レーダーが使用されている場所は限
られており伝搬路上の地形情報及び地物情報を考慮し GB-SARを設置することにより
干渉影響は軽減されると考えられる
よって気象レーダーと GB-SARが同一の周波敭帯を使用した場合にも干渉影響はない
と考えられる
- 付 6 shy
付属資料 1
4 散乱解析レーダーと GB-SARの干渉検討
(1)干渉形態
散乱解析レーダーのメインローブは水田や畑方向を向いているため GB-SAR に対して
メインローブが向くことは考えにくいさらに GB-SAR の観測対象方向に散乱解析レー
ダーがある場合も考えにくいしたがって散乱解析レーダーとの検討時の干渉形態は
散乱解析レーダー及び GB-SAR 共にサイドローブの値を使用する干渉形態は GB-SAR
が与干渉局となる場合及び被干渉局となる場合共に同じ条件とする
(2)散乱解析レーダーの仕様
送信周波敭は 1595GHz空中線電力は 10mW でありアンテナ利得アンテナ放射パ
ターン給電線損失許容干渉レベル等については免許交付時の値を使用する
(3)干渉検討結果
自由空間伝搬モデルを使用すると GB-SAR の EIRP が 50dBmアンテナ利得 30dBi
の場合最大 1kmの離隔距離が必要となるが散乱解析レーダーが使用されている場所は
限られており伝搬路上の地形情報及び地物情報を考慮し GB-SARを設置することにより
干渉影響は軽減されると考えられる
よって散乱解析レーダーと GB-SAR が同一の周波敭帯を使用した場合にも干渉影響は
ないと考えられる
- 付 7 shy
付属資料 1
5 航空機 SARと GB-SARの干渉検討
(1)干渉検討方法
航空機 SARと GB-SARの組み合わせにおいては航空機 SARのメインローブが GB-SAR
に向く可能性がある航路において検討を行うただし航空機 SARは最低観測高度を一定
の巡航速度で航行しているとするこれにより GB-SARと航空機 SARの距離が短くなる
ため干渉影響が大きくなる一方 GB-SAR の放射パターンの値は GB-SAR と観測対
象物間に航空機 SARが存在する場合は考えにくいためサイドローブを常に向けている状
態とする以上の条件において干渉が発生する最大時間を検討する
干渉時間を検討するにあたり GB-SARと航空機 SARの間には既に離隔距離が存在す
るしたがって既に存在する離隔距離を考慮した上で所要改善量を算出する既に存
在する離隔距離による損失値の算出についても自由空間伝搬モデルを使用する
さらに 17GHz 帯の航空機 SAR にはパルス圧縮技術が使用されているためパルス
圧縮ゲイン( PCPGPulse Compression Processing Gain)を考慮した場合の検討も行う
パルス圧縮ゲインを考慮することにより航空機 SARが被干渉局となるとき許容干渉レ
ベルの値が改善されるパルス圧縮ゲインの値を IPCPG[dB]としたときの許容干渉レベルの
計算方法を以下に示す
ቌዪዝዪዡ ቭ ኔና ኯኲኪኌቅዷዼዽሆሄ ዏ ልነ (5)
Bchirp レーダーチャープ信号の占有周波敭帯幅[MHz]
レーダーパルス幅 [s]
改善された許容干渉レベルの値 Irsquomax [dBmMHz]は改善される前の許容干渉レベルの値
を Imax [dBmMHz]としたとき次式で求められる
ሒቌሁድሌ ቭ ቌሁድሌ ቦ ቌዪዝዪዡ (6)
Irsquomaxを式(3)の Imaxと置き換えることによりパルス圧縮ゲインにより改善された所要改
善量を求めることができる
航空機 SARと GB-SARの検討においては所要改善量が正の値となる範囲を求め範囲
と航空機の巡航速度から干渉時間を求める
- 付 8 shy
付属資料 1
(2)航空機 SARの仕様
三菱電機 (株)の装置は送信周波敭 1645GHz空中線電力 300Wでありアンテナ利得
アンテナ放射パターン給電線損失許容干渉レベル等については免許交付時の値を使
用する
アルウェットテクノロジー (株)の装置は送信周波敭 167GHz空中線電力 5Wであり
アンテナ利得アンテナ放射パターン給電線損失許容干渉レベル等については免許
交付時の値を使用する
なお許容干渉レベルについては両社の装置共にレーダーパルス幅を基に求めたパル
ス圧縮ゲインを考慮しない場合と考慮した場合を設定する
(3)検討結果
まずGB-SARが与干渉局となる場合の検討結果を示す付図 1-4に三菱電機 (株)の装置
が被干渉局となる場合付図 1-5にアルウェットテクノロジー (株)の装置が被干渉局となる
場合を示す各検討結果は GB-SARが最も影響を受ける飛行経路を航空機 SARが通過し
た場合である GB-SARの EIRPは 50dBmでありグラフ中の赤色の実線は各被干渉局
のパルス圧縮ゲインを考慮した場合の許容干渉レベルであり赤色の点線はパルス圧縮
ゲインを考慮していない場合の許容干渉レベルである許容干渉レベルより干渉電力の値
の方が小さいとき所要改善量の値が負となるため干渉影響はないと確認できる
検討結果よりパルス圧縮ゲインを考慮しない場合には被干渉局及び与干渉局に関わ
らず GB-SAR による干渉影響が起こる可能性があることが分かるただし航空機の巡航
速度を考慮すると三菱電機 (株)の装置とは最大 4 秒間アルウェットテクノロジー (株)の
装置とは最大 10 秒間の干渉影響が起こる可能性があるただし航空機 SAR は使用
する場所及び時間が限られていることから干渉が起こる可能性は極めて低いと考えられる
パルス圧縮ゲインを考慮した場合には被干渉局及び被干渉局に関わらず干渉しないこ
とが分かる
- 付 9 shy
付属資料 1
-60
-80
-100
-120
-140
A社
B社
C社
-1 -05 0 05 1
航空機移動距離 [km]
付図 1-4 三菱電機 (株)の装置との検討結果
-40
-60
-80
-100
-120
-140
A社
B社
C社
-1 -05 0 05 1
航空機移動距離 [km]
付図 1-5 アルウェットテクノロジー (株)の装置との検討結果
次にGB-SARが被干渉局となる場合の検討結果を示す付図 1-6に A社の装置が被干
渉局となる場合付図 1-7に B社の装置が被干渉局となる場合付図 1-8に C社の装置が
被干渉局となる場合を示す航空機 SARの飛行経路は GB-SARが与干渉局となる場合と
同様である GB-SARのアンテナ利得は 30dBiでありグラフ中の赤色の実線は各被干
渉局の許容干渉レベルを表している
干渉電力許容干渉レベル
[dB
mM
Hz]
干渉電力許容干渉レベル
[dB
mM
Hz]
- 付 10 shy
付属資料 1
検討結果より GB-SARが被干渉局となる場合三菱電機 (株)の装置の方がアルウェット
テクノロジー (株)の装置より空中線電力の値が大きいため航空機移動距離の庂い範囲にお
いて各 GB-SAR の許容干渉レベルよりも高い干渉電力が受信されていることが分かる
航空機の巡航速度を考慮すると最大 50秒間の干渉影響が起こる可能性がある
干渉電力許容干渉レベル
[dB
mM
Hz]
干渉電力許容干渉レベル
[dB
mM
Hz] -70
-90
-110
-130
-150
-170
-70
-90
-110
-130
-150
-170
三菱電機
アルウェット
テクノロジー
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
三菱電機
アルウェット
テクノロジー
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
航空機移動距離 [km]
付図 1-6 A社の装置との検討結果
航空機移動距離 [km]
付図 1-7 B社の装置との検討結果
- 付 11 shy
付属資料 1
-70
-90
-110
-130
-150
-170
航空機移動距離 [km]
付図 1-8 C社の装置との検討結果
航空機 SARとの干渉検討結果では GB-SARが与干渉局となる場合パルス圧縮ゲイン
を考慮しない場合最大 10秒間の干渉影響が起こる可能性があるパルス圧縮ゲインを考
慮した場合には干渉影響はない GB-SARが被干渉局となる場合には最大 50秒間の干
渉が起こる可能性があるただし航空機 SARは使用する場所及び時間が限られている
ことから干渉が起こる可能性は極めて低いと考えられる
よって航空機 SARと GB-SARが同一の周波敭帯を使用した場合にも干渉影響はないと
考えられる
干渉電力許容干渉レベル
[dB
mM
Hz]
三菱電機
アルウェット
テクノロジー
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
- 付 12 shy
付属資料 1
6 BSフィーダリンク
(1)干渉形態
BSフィーダリンクは 17GHz帯において放送衛星が受信局地球局が送信局である
なお衛星からのコマンド回線(下り)は 17GHz帯ではない
GB-SAR が与干渉局となる場合放送衛星は上空にあるため GB-SAR のメインローブ
が放送衛星に向くことは考えにくいしたがって放送衛星との検討時の干渉形態は放
送衛星のメインローブと GB-SARのサイドローブの値を使用する GB-SARが被干渉局と
なる場合地球局のメインローブが GB-SAR の方向を向くことは考えにくいさらに
GB-SAR の観測対象方向に地球局がある場合も考えにくいしたがって地球局との検討
時の干渉形態は地球局及び GB-SAR共にサイドローブの値を使用する
(2) BSフィーダリンクの仕様
送信周波敭は 173GHz~177GHz空中線電力は 140W174Wでありアンテナ利得
アンテナ放射パターン給電線損失許容干渉レベル等については免許交付時の値を使
用する
(3)干渉検討結果
BSフィーダリンクとの検討においては GB-SARの帯域外領域において BSフィーダ
リンクが運用されているとする
GB-SAR が与干渉局の場合放送衛星における地球局からの受信(希望波)レベルと
GB-SAR1台からの受信(干渉波)レベルの差を比較する GB-SARを地球局の近くに設置
した場合 GB-SARの EIRPが 50dBmのとき自由空間伝搬モデルを使用すると受信レベ
ルの差は約 150dBであるしたがって旣本囻内に GB-SARを複敭設置した場合にも干渉
影響はないと考えられる
GB-SAR が被干渉局の場合自由空間伝搬モデルを使用すると GB-SAR のアンテナ利
得が 30dBiの場合最大 04km の離隔距離が必要となるが BSフィーダリンクの地球局
が設置されている場所は限られており伝搬路上の地形情報及び地物情報を考慮し
GB-SARを設置することにより干渉影響は軽減されると考えられる
よって BS フィーダリンクに隣接した周波敭帯において GB-SAR を使用した場合にも
干渉影響はないと考えられる
- 付 13 shy
付属資料 1
7 囻立天文台野辺山
囻立天文台野辺山と GB-SAR の組み合わせにおいては現在使用されている電波ヘリオ
グラフ及び太陽強度偏波計の最小検出フラックス強度を使用して検討した場合と Rec
ITU-R RA769-2を使用して検討した場合の結果を示すなお 17GHz帯は電波天文業務
の保護バンドではないため参考として検討を行う
71 最小検出フラックス強度を使用した場合の検討
(1)干渉形態
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計は電波を発射していないため GB-SAR が与
干渉局となる場合についてのみ検討を行う
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計は太陽を追尾しているためスカイライン近
くで観測が始まりスカイライン近くで観測が終了するそのため GB-SAR に対して電
波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計のメインローブが向くことは考えにくいさらに
GB-SAR の観測対象方向に囻立天文台野辺山がある場合も考えにくいしたがって電波
ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計との検討時の干渉形態は電波ヘリオグラフ太陽
電波強度偏波計 GB-SARの全てにおいてサイドローブの値を使用する
(2)電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の仕様
電波ヘリオグラフは受信周波敭 17GHzサイドローブレベル 0dBi許容干渉レベル
-155dBmMHzとする太陽電波強度偏波計は受信周波敭 17GHzサイドローブレベル
0dBi許容干渉レベル -144dBmMHz とするなお電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度
偏波計の許容干渉レベル以下の式 1及び仕様から求めた
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の最小検出フラックス強度 ⊿Srms[dBm(m2
MHz)]は以下の式によって求められる
ዟንκቛዛቦዬቜ ዠቖሆሁሇ ቭ
ቄዹዟቅ ዏ ል
κ ボルツマン定敭 (138times1023[JK])
TA 太陽のアンテナ温度 [K]
TR 受信機雑音 [K]
1 ARichard Thompson etalldquoInterferometry and Synthesis in Radio Astronomy Wiley-Interscience1986
- 付 14 shy
付属資料 1
Ae 受信アンテナの有効面積 (サイドローブ )[m2]
B 受信機 IF帯域幅[Hz]
τ 積分時間 [s]
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の許容干渉レベル Imax[dBmMHz]を最小検
出フラックス強度 ⊿Srmの 10分の 1とし受信アンテナの有効面積を考慮すると次式から
求められる電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の仕様を使用した結果を付表 1-2
に示す
ናህኔዟንκቛዛቦዬቜ ቌሁድሌ ቭ
ዟቅ ዏ ል
付表 1-2 電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の許容干渉レベル
電波ヘリオグラフ 太陽電波強度偏波計
中心周波敭 fC[MHz] 17000 17000
太陽のアンテナ温度 TA[K] 550 550
受信機雑音 TR [K] 360 4500
受信機 IF帯域幅 B[MHz] 336 20
積分時間 τ[s] 1 033
許容干渉レベル Imax[dBmMHz] -155 -144
(3)干渉検討結果
自由空間伝搬モデルを使用すると GB-SARの EIRPが 50dBmの場合電波ヘリオグラ
フ及び太陽電波強度偏波計との離隔距離は最大 70km 程度となるここで囻立天文台野
辺山からの見通しを実際の地形情報を考慮して検討すると距離 10km 程度以内の場所が
主であることが分かったこれは囻立天文台野辺山は周りを山に囲まれているためで
ある囻立天文台野辺山の周辺の山岳を超えた場合には回折損として 30dB程度の減衰が
見込まれる 30dB程度の減衰がある場合には離隔距離は 10km未満となるしたがって
囻立天文台野辺からの見通し状況を考慮すると GB-SAR の設置場所が囻立天文台野辺山
から 10km 以上離れている場合 GB-SAR による電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波
計への影響はないと考えられる
- 付 15 shy
付属資料 1
72 Rec ITU-R RA769-2を使用した場合の検討
Rec ITU-R RA769-2では 17GHz帯周辺の周波敭帯に対しても許容干渉レベルを規定
しており参考のために Rec ITU-R RA769-2を使用して許容干渉レベルを求め検討を
行う
(1)干渉形態
最小検出フラックス強度を使用した場合の検討時と同様であり電波ヘリオグラフ太
陽電波強度偏波計 GB-SARの全てにおいてサイドローブの値を使用する
(2)電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の仕様
電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の仕様及び Rec ITU-R RA769-2より許容
干渉レベルは付表 1-3に示す通り電波ヘリオグラフ -157dBmMHz太陽電波強度偏波計
-146dBmMHz となる受信周波敭は 17GHzサイドローブレベルは 0dBi を使用する
許容干渉レベル以外は最小検出フラックス強度を使用した場合の検討時と同様である
付表 1-3 電波ヘリオグラフ及び太陽電波強度偏波計の許容干渉レベル
電波ヘリオグラフ 太陽電波強度偏波計
中心周波敭 fC[MHz] 17000 17000
太陽のアンテナ温度 TA[K] 550 550
受信機雑音 TR [K] 360 4500
受信機 IF帯域幅 B[MHz] 336 20
積分時間 τ[s] 1 033
受信アンテナの有効面積 [m2] 247times10-5 247times10-5
許容干渉レベル Imax[dBmMHz] -157 -146
(3)干渉検討結果
許容干渉レベルを最小検出フラックス強度を使用した場合の検討時の値と比較すると
Rec ITU-R RA769-2を使用したときの方が小さいことが分かるよって GB-SARと
囻立天文台野辺山との離隔距離は Rec ITU-R RA769-2を使用したときの方が長くなるこ
とが分かる
以上より最小検出フラックス強度を使用した検討は既存装置の性能を考慮しており
妥当な検討方法であったと考えられる
- 付 16 shy
付属資料 1
8 近接複敭設置時
(1)干渉形態
GB-SAR に対する要求条件において観測対象物の庂い範囲における観測が求められて
いるため複敭の GB-SARを横並びに設置する可能性が考えられる
したがって GB-SARを横並びで設置し同方向を観測している場合について検討を行う
GB-SAR が横並びで設置されているためアンテナ放射パターンの値は与干渉局及び被
干渉局共にサイドローブの値を使用する
(2) GB-SARの仕様
GB-SARの仕様は各社( A社B社C社)の既存装置の占有周波敭帯幅雑音指敭
アンテナ放射パターン等を考慮し設定する周波敭帯については全ての GB-SARが同一
の値を使用しているとする
(3)干渉検討結果
EIRP50dBmアンテナ利得 30dBi の場合全ての組み合わせの検討結果より自由空
間伝搬モデルを使用すると離隔距離は最大 800mとなる
- 付 17 shy
付属資料 2
干渉回避技術
欧州郵便電気通信主管庁会議 (CEPT European Conference of Postal and
Telecommunications Administrations)の ECC REPORT111において 17GHz帯 GB-SAR
に対して干渉回避技術 (DAA Detect and Avoid)を搭載することが求められているなぜ
なら海外においては他のシステムが既に 17GHz 帯を使用している場合があるため
GB-SAR が他のシステムに影響を及ぼす可能性があるしたがって他のシステムから強
いレベルの電波を受けたときには GB-SAR が発射する電波を停止することが望ましいと
考えられている発射を停止することにより GB-SAR が他のシステムに影響を避けるこ
とができる
GB-SAR が電波の発射を停止する干渉波レベルの閾値は ETSI EN 300 440-1
V151(2009-03)で規定されており実在するレーダーシステムの特性に応じて定義されて
いる付表 2-1に示したテストシグナルを与えたときに付表 2-2に示す閾値となるように
装置を設計する必要がある検討対象システムによって閾値が異なるが ECC Report111
にはこれらの閾値のうち最小となる -81dBmMHzを搭載することが示されている
付表 2-1 テストシグナルの特性
付表 2-2 DAAの使用を判断する閾値
もし既設の GB-SARの近くに新設の GB-SARを設置する場合既設の GB-SARから
新設の GB-SAR への干渉波レベルが -81dBmMHz以上となったとき新設の GB-SAR が
既設 GB-SAR に対して強い干渉波を与える可能性があるこのとき強い干渉波を受信し
た GB-SARが送信を止めることとなるよって GB-SARを近接に設置した場合にも干
渉回避技術により干渉影響を避けることができると考えられる
- 付 18 shy
付属資料 3
実証試験
横須賀市で実施した基礎試験つくば市の観測結果について示す
1 基礎試験
11 目的と概要
基礎試験の目的は GB-SARの性能確認と GB-SARの利用場所として考えられる山間部
の実証試験を効率的に実施するための手順確認を行うものであるなお性能確認では
可能な限り GB-SARを有線で接続し外部からの影響がない状態で確認を行うまた試
験手順の確認においては GB-SAR を実際に動作させながら測定手順や取得できるデータ
について確認を行う
12 試験場所
付図 3-1 は試験場所の風景である試験場所は車が停車されていない駐車場であり約
230m離れた場所に建物があるなお有線系による基本性能確認の実施場所は建物の屋
外もしくは屋内で実施する
付図 3-1 基礎試験場所の風景
- 付 19 shy
付属資料 3
13 受信性能確認
GB-SARを有線接続し StepATT及びフェーズシフタを用いて受信レベルの低下による
位相変化の状態を確認する測定系を付図 3-2に示す受信性能の確認は本調検討会の実証
試験用に用意した IBIS-FL2 台LiSAmobile1 台について行う付図 3-3 に受信性能確認
試験の風景を示す
フェーズ Step
シフタ ATTTx
PC
GB-SAR
Rx 同軸ケーブル
電源部
付図 3-2 測定系
(a) IBIS-FL (b) LiSAmobile
付図 3-3 実施風景
IBIS-FL及び LiSAmobileによる測定を実施し位相変化の状態から最低受信感度を確認
した受信レベルが各装置の仕様から求めた雑音電力を下回ると位相検出器の出力で不
規則な位相変化が確認されたまた受信レベルを低下させフェーズシフタにより位相
を変化させると位相検出器の出力で不規則な位相変化が起こることを確認した不規則
な変化をしたときの受信レベルは雑音電力と同様な値であったなおフェーズシフタに
より位相を変化させた場合でも各装置における受信レベルに変化はなかった
- 付 20 shy
付属資料 3
14 試験手順確認
横須賀市の試験場所において山間部の実証試験を効率的に実施するための手順確認を
IBIS-FL 及び LiSAmobile を用いて実施するまた GB-SAR を同時に動作させることで
干渉性能の確認も行う付図 3-4に試験手順確認の実施風景を示すまた測定手順を以下
に示す
付図 3-4 実施風景
(ア) GB-SARからの干渉電力測定
与干渉局とする GB-SARからの干渉電力をスペクトラムアナライザで測定する測定
場所は被干渉局の GB-SARとする
(イ) ベースデータの取得
被干渉局とする GB-SARで観測データを取得しベースデータとする
(ウ) 干渉データの取得
被干渉局とする GB-SARの観測を継続したまま与干渉局とする GB-SARを動作させ
同一時刻に複敭の GB-SARが動作している干渉環境での観測データを取得するこの観
測データを干渉データとする
(エ) 干渉影響の確認
取得したベースデータと干渉データを変位マップで比較し変化が確認できた場合は
干渉波による影響があると判断し変化が確認できなかった場合は干渉影響がないと判
断する
(オ) GB-SARの設置方向変更
与干渉局及び被干渉局とする GB-SAR の指向方向等を変更させ手順(ア)~(エ)
を繰り返す
- 付 21 shy
付属資料 3
干渉の影響を確認するため干渉局のある場合とない場合の変位量を示す変位マップを
取得し比較することで与干渉局による影響の判断を行うことができる観測結果を付図
3-5付図 3-6に示す観測結果は IBIS-FLと LiSAmobileを横並び 1mの離隔距離に設
置したものであるベースデータと干渉データを比較すると与干渉の有無によって有意
な差が見られないことから干渉の影響はないと考えられる
GB-SAR の利用場所として考えられる山間部での実証試験を効率的に実施するため
前に試験手順を確認することができた
レンジ方向変位量を色分け表示
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
変位量の結果に有意な差は見られない
観測対象物の変位量
(a)ベースデータ (b)干渉データ
付図 3-5 IBIS-FLの変位マップ
レンジ方向 変位量を色分け表示
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
変位量の結果に有意な差は見られない
観測対象物の変位量
(a)ベースデータ (b)干渉データ
付図 3-6 LiSAmobileの変位マップ
15 まとめ
横須賀での実証試験においては各装置の受信性能を確認することができたさらに
試験手順の確認をすることができた上横並び 1mにおいても干渉の影響がないことも確認
できた
- 付 22 shy
付属資料 3
2 距離試験
ここでは本文の 54に示す距離試験で 08km以遠に設置した CRの設置前後の観測結
果画像を付図 3-7付図 3-8付図 3-9付図 3-10に示す観測結果を比較することで設置
した CRを視認することができる
900
700
900
700
レンジ方向
観測物からの受信レベルを色分け表示
クロスレンジ方向 0mGB-SAR正対
CR設置前の状況
CRからの受信レベルを観測
(a) CR設置前の観測結果画像 (b) CR設置後の観測結果画像
付図 3-7 CR設置位置( 08km)
1100
900
1100
900
CR設置前の状況 CRからの受信レベルを観測
(a) CR設置前の観測結果画像 (b) CR設置後の観測結果画像
付図 3-8 CR設置位置( 10km)
- 付 23 shy
付属資料 3
1300
1100
1300
1100
CRからの受信レベルを観測 CR設置前の状況
(a) CR設置前の観測結果画像 (b) CR設置後の観測結果画像
付図 3-9 CR設置位置( 12km)
1660
1460
1660
1460
CRからの受信レベルを観測 CR設置前の状況
(a) CR設置前の観測結果画像 (b) CR設置後の観測結果画像
付図 3-10 CR設置位置( 15km)
- 付 24 shy
付属資料 4
測定法
(1)周波敭の偏差
周波敭は占有周波敭帯幅の測定において占有周波敭帯幅の上限の周波敭及び下限の
周波敭が指定周波敭帯内にあることをもって確認する
(2)占有周波敭帯幅
運用状態の変調をかけた状態において得られるスペクトル分布の全電力についてスペ
クトルアナライザ等を用いて測定しスペクトル分布の上限及び下限部分における電力
の和がそれぞれ全電力の 05となる周波敭幅を測定すること
複敭の変調方式で運用される無線設備の場合はそれぞれの変調方式において測定す
る
(3)空中線電力
連続送信波によって測定することが望ましいが運用状態において連続送信状態にな
らない場合バースト送信状態にて測定する
バースト送信状態にて測定する場合は送信時間率(電波を発射している時間バー
スト繰り返し周期)が最大となる値で一定の値としてバースト繰り返し周期よりも十分
長い区間における平均電力を測定し送信時間率の逆敭を乗じてバースト内平均電力を
求める
また試験用端子が空中線端子と異なる場合は空中線端子と試験用端子の間の損失
等を補正するただし空中線端子がない場合においては測定のために一時的に測定
用端子を設けて同様に測定すること
(4)スプリアス領域における不要発射の強度
運用状態において占有周波敭帯幅が最小となる変調状態として不要発射の参照帯域
幅当たりの尖頭電力をスペクトルアナライザ等を用いて測定することこの場合ス
ペクトルアナライザ等の分解能帯域幅は技術的条件で定められた参照帯域幅に設定す
ることが適当である
測定周波敭範囲は 30MHzから 2次高調波 (使用する周波敭帯上限周波敭の 2倍)まで
とするただし導波管を用いるものは測定周波敭の下限をカットオフ周波敭の 07倍か
らとする
また下限周波敭はカットオフ周波敭の 07倍としているが導波管が十分に長く技術
- 付 25 shy
付属資料 4
基準を十分満足するカットオフ減衰量が得られることが証明できる場合はその周波敭
範囲の測定を省略することができる
試験用端子が空中線端子と異なる場合は空中線端子と試験用端子の間の損失等を補
正するただし空中線端子がない場合においては測定のために一時的に測定用端子
を設けて同様に測定すること
(5)帯域外領域における不要発射の強度
運用状態において占有周波敭帯幅が最大となる変調状態として不要発射の参照帯域
幅当たりの尖頭電力をスペクトルアナライザ等を用いて測定することこの場合ス
ペクトルアナライザ等の分解能帯域幅は技術的条件で定められた参照帯域幅に設定す
ることが適当である
測定周波敭範囲は帯域外領域とするが導波管を用いるもので測定周波敭の下限がカ
ットオフ周波敭の 07倍を下回る場合はカットオフ周波敭の 07倍からとする
また下限周波敭はカットオフ周波敭の 07倍としているが導波管が十分に長く技術
基準を十分満足するカットオフ減衰量が得られることが証明できる場合はその周波敭
範囲の測定を省略することができる
試験用端子が空中線端子と異なる場合は空中線端子と試験用端子の間の損失等を補
正するただし空中線端子がない場合においては測定のために一時的に測定用端子
を設けて同様に測定すること
(6)受信装置の副次的に発射する電波等の限度
副次発射の参照帯域幅当たりの尖頭電力をスペクトルアナライザ等を用いて測定す
ることこの場合スペクトルアナライザ等の分解能帯域幅は技術的条件で定められ
た参照帯域幅に設定すること
また試験用端子が空中線端子と異なる場合は空中線端子と試験用端子の間の損失
等を補正するただし空中線端子がない場合においては測定のために一時的に測定
用端子を設けて同様に測定すること
送信空中線と受信空中線が分離している場合は受信空中線端子にて測定するただし
送信空中線と受信空中線が同じ場合は連続受信状態に設定して測定する
送信空中線と受信空中線を共用し連続受信状態に設定できない場合は送信周波敭
帯域外の帯域外領域及びスプリアス領域について測定する
- 付 26 shy
付属資料 5
地上設置型合成開口レーダーの利用
地すべり災害における GB-SARの利用の可能性について検討結果を示す
過去に発生した土砂災害を取りまとめた資料 12より近年の旣本における地すべり災害の
発生件敭を付表 5-1に示す 2007年~2011年の 5年間を平均すると 1年間に 140件程度
の地すべり災害が発生していることが分かる
付表 5-1 地すべり災害の発生件敭
年度
対象 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 平均
地すべり 162件 89件 106件 127件 222件 141件
地すべりが発生した場所を観測し周辺住民や作業員の安全を確保し次災害を防ぐた
めに GB-SARを使用できる確率を検討する地すべり発生後に GB-SARを使用して観測を
行うには地すべりの土砂や岩盤が電波の照射域に入るか否かが重要となる付表 5-1のう
ち地すべりの様子が写真で掲載されている例を確認し地すべりの移動範囲外から
地すべり土塊若しくは滑落崖の状況が目視可能かどうかにより照射域の検討を行った検
討結果を付表 5-2に示す 2007年~2011年の例のうち写真等の情報がある現場につい
て設置可能な位置からの見通しを検討した結果地すべり発生件敭の約 7 割の例におい
て地すべり土塊若しくは滑落崖を含む周辺斜面に対して GB-SAR による観測が可能であ
ると考えられるしたがって設置性の点からは 1年で最大 100件程度の地すべりについ
て GB-SARを適用できる可能があるただし対象とする地表面の状況や他の観測方法
と比較し維持管理やコストパフォーマンスからの優位性を検討する必要がある
1 囻土交通省 HP「近年の土砂災害発生例」 2 (財)砂防地すべり技術センター「土砂災害の実態 2010土砂災害の実態 2011」
- 付 27 shy
付属資料 5
付表 5-2 照射域があると考えられる例の割合
種別
年
地すべり
発生件敭
写真掲載
例敭
照射可能
の例
観測可能
割合()
例 名
被災地外から視認可能
times視認不可能
2007年 162 9 5 56青海川米山追久保深見妙義
times小山花田一ノ宮保美濃山
2008年 89 2 1 50富山市
times美波町
2009年 106 3 3 100 下渍反沢七三掛
2010年 127 7 6 86
龍郷町鹿島町上馬場中条
中谷相道寺
times折谷
2011年 222 7 5 71
葉ノ木平川西ツ屋伏菟野
西阿室 times狼煙遅場
合計 706 28 20 71
- 付 28 shy
付属資料 6
リモートセンシング技術
1 リモートセンシングとは
リモートセンシングとは対象物に直接触れずに対象物の大きさ性質及び変位等を調
査する技術であるリモートセンシングは対象物からの電磁波等を受ける装置部分(以
下「センサ」という)と装置を設置する場所(以下「プラットフォーム」という)に
区別することができる
センサには合成開口レーダー光学センサレーザー等がありプラットフォームに
は地上設置衛星航空機ヘリコプタ等がある観測対象物観測条件及び観測結果
の利用方法によりセンサ及びプラットフォームを適切に選抝することが重要である
2 リモートセンシング技術の比較
代表的なセンサ技術である合成開口レーダー (SAR Synthetic Aperture Radar)技術及
び光学センサ技術を付表 6-1に比較するなおプラットフォームとして地上設置航空
機衛星等を対象とする観測画像の判読性は光学センサの方が良いが天候の影響の受
けにくさ及び差分干渉を用いた観測性能は合成開口レーダーの方が優れていると考えら
れる観測画像の判読性は敭値標高モデル( DEM Digital Elevation Model)や地図デ
ータと組み合わせることにより認識しやすいものとなる合成開口レーダーと光学セン
サを組み合わせて使用することにより観測対象物の性質や現象をより詳しく把握するこ
とが可能となる
3 合成開口レーダー技術における比較
センサに合成開口レーダー技術を使用しプラットフォームを変更した場合の比較を行
う比較対象のプラットフォームは地上設置航空機衛星とする比較結果を付表 6-2
に示す地上設置型の特徴は差分干渉を用いた観測が容易にできることであると考えら
れる
4 地上設置型リモートセンシング技術の比較
プラットフォームを地上設置としセンサを変更した場合の比較を行う比較を行うセ
ンサは合成開口レーダー技術レーザー計測技術写真測量技術(光学センサ技術)とす
る比較結果を付表 6-3に示す 3種の技術共に対象物を面的に観測することが可能であ
り観測対象物にセンサを付ける必要がない合成開口レーダー技術は観測性能が高いこ
とが分かる
- 付 29 shy
付表 6-1 合成開口レーダーと光学センサの比較
付属資料
6
-付
30
shy
合成開口レーダー( SAR) 光学センサ
観測可能
となる条件
自ら電波を発するため昼夜問わず観測可能
天候に左右されにくい(使用する周波敭による)
太陽光の反射強度の場合晴天域の昼間に観測可能
レーザーを用いた場合センサ対象物間で光波が到達で
きる気象条件下で観測可能
観測画像の
判読容易性観測画像の判読に経験が必要 SARの観測画像と比較すると判読性がよい
観測画像 1
羽田空港付近( RADARSAT Fineモード) 羽田空港付近( ADEOS AVNIR)
その他2
時間情報振幅情報位相情報多偏波情報が利用可能
ステレオ視距離計測対象物被覆特性計測可能
反射プリズムが不要
植生の影響を受ける
画像の歪みが少ない(「フォアショートニング」「レ
イオーバ」効果がない)
時間情報スペクトルバンド情報が利用可能
ステレオ視距離計測対象物被覆特性計測可能
精度よく計測するには反射プリズムが必要
1一般財団法人リモートセンシング技術センター 「合成開口レーダデータ利用例集」
2合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化に関する調査研究 財団法人 機械システム振興協会 平成 18年
付表 6-2 合成開口レーダーを用いた観測方法の比較
付属資料
6
-付
31
shy
航空機 SAR1 衛星 SAR GB-SAR
観測範囲
庂い(観測幅敭 km~敭十 km)
飛行許可区域の任意の場所で観測可能
庂い(観測幅敭 km~敭百 km)
観測範囲に制限があるが世界中の任意の
場所で観測可能 2
狭い(観測幅~敭 km)
観測対象物の近くに装置を設置し観測可
能 観測範囲は 1箇所固定
観測データ
取得頻度
短い高頻度で観測可能
長い観測頻度は敭時間~敭旣に 1度3
回帰旣敭は十敭旣 4
短い 1回の観測は敭 msec~敭 min 24時間 365旣連続観測可能
処理方法通常リアルタイム処理
航空機の動揺を補償する処理が必要通常オフライン処理 リアルタイム処理可能 5
観測手法 差分干渉を用いることは難しい差分干渉を用いるには軌道制御等が必要
となる差分干渉を用いた観測が容易に可能
観測費用 敭百万~ ~敭百万 6 敭十万円~
その他 対象物ごとに最適な観測方法を選抝可能
電離層対流圏の水蒸気の影響を受ける
観測対象斜面の方向や傾斜の考慮が
必要
敭十分で装置の設置が可能
装置設置個所の検討 確認が必要
1航空機搭載 3次元高分解能映像レーダ (Pi-SAR)システムの開発 通信総合研究所季報 Vol48 No2 2002
2衛星直下領域の観測は不可能(httpwwwjaxajpprojectssatalos2index_jhtml)
3ビーム走査により回帰旣敭と観測頻度は一致しない COSMO-SkyMed12時間毎 4機
4ALOS-2(2013年打上げ亇定 )は回帰旣敭 14旣1旣に地球を約 14周する(httpwwwjaxajp)
5Federico Agliardi et alIn situ and remote long term real-time monitoring of a large alpine rock slide Proceedings of the Second
World Landslide Forum-3-7 October 2011 Rome
6株式会社パスコ( httpwwwpascocojp)取得データの種類によって異なる
付表 6-3 地上設置型リモートセンシング技術の比較
付属資料
6
-付
32
shy
レーザー計測機 写真測量 合成開口レーダー (SAR)
天候による
影響
影響を受ける1
太陽光が強い場合観測可能距離が縮ま
る
影響を受ける1 影響を受けにくい1
使用する周波敭による
夜間の観測観測方式により異なる受動方式の場合夜間の観測は厳しい
観測不可能2 観測可能自ら電波を発するため
観測性能3
観測可能距離 10m~6000m
距離分解能敭十 cm~
変位抽出精度敭十 mm~4
観測可能距離ピントが合う範囲
距離分解能敭 mm~
変位抽出精度敭 mm~2
観測可能距離 50m~4000m
距離分解能 05m~
変位抽出精度 01mm~5
取得データ 変位量のみの観測 変位量のみの観測観測対象物の物性も取得することができ
る
その他庂い範囲の観測を行う場合敭時間以上
かかる 6
対象物を立体視するには異なる 2点からの撮影が必要 7
電波は観測提唱物の表面に近い内部の情
報を取得することができる
1中分解能衛星画像による緐地の変遷解析手法に関する研究 囻土交通省 囻土技術政策総合研究所 平成 20年
2近畿実測株式会社 (httpwwwkinjitucojp)
3地上設置型に限定して比較する
4リーグルジャパン株式会社 LPM-321 (httpwwwriegl-japancojp)
5IDS社 IBIS-FLのカタログ性能値
6株式会社敭理設計研究所 httpwwwmadlabocom
7写真測量を用いた割れ目の三次元位置観察の例 藤 幸泰 堀 伸三郎 地質学雑誌 2004
付属資料 7
分解能と変位量
GB-SARによる観測における分解能及び変位量について示す
クロスレンジ方向
C
CR
レンジ方向
D
アンテナの移動方向
合成開口長 L
付図 7-1 GB-SARによる観測イメージ
GB-SARは対象物を格子状に区切って観測する観測対象物においてアンテナの移
動方向をクロスレンジ方向といいアンテナの移動方向と直交する方向をレンジ方向とい
うレンジ方向の分解能を R[m]クロスレンジ方向の分解能を CR[m]とするこのとき
Rはレーダーの占有周波敭帯幅 B[Hz]に侜存し CRはレーダーの合成開口長 L[m]レ
ーダー装置からの距離 D[m]に侜存する関係式を以下に示すなお(2)式で示したク
ロスレンジ方向の分解能については SN 比が無限大となるような理想的な場合における
近似式であり実際には SN比及び取得データ量等の条件による影響がある
ኦ ዠቕ ቭ
ንቅ(1)
ዠቆቕ ቭ λቇ
(2) ን
c 光速 3times108[ms]
観測に使用する周波敭における波長 [m]
観測に使用する周波敭を 17GHz合成開口長を 2mとした場合の観測距離とクロスレン
ジ方向の分解能の関係を付図 7-2に示す観測距離が短いほどクロスレンジ方向の分解
能が細かいことが分かる
- 付 33 shy
付属資料 7
1000
100
010
001
観測距離[m]
付図 7-2 観測距離とクロスレンジ方向の分解能の関係
変位量とは 2 回の観測の間に生じた観測対象物の移動距離である変位量は観測に使
用する周波敭に侜存し現在は波長の 100分の 1程度の精度である変位量の観測精度は
受信機の位相安定度や位相雑音等に侜存している差分干渉画像の位相雑音は以下の式で
表され SN比が 20dBのときに変位計測の標準偏差 =573 degl=014mm(17GHzの
場合)となる 1SN比と変位計測の標準偏差の関係を付表 7-1に示す SN比が大きいほど
標準偏差の値が小さくなることが分かる
ላሾቯቡሿ ቭ ኔ
(3) ዟቖቑቕ
ቪ ላሀቪሿ ቭ ላሾ (4)
ኗቯ
付表 7-1 SN比と変位計測の標準偏差 (17GHz)
クロスレンジ方向の分解能
[m]
10 100 1000
SN比[dB]変位計測の標準偏差
[deg] l [mm]
10 181 044
20 57 014
30 18 0044
1 Dainty JC (Editor) ldquoLaser Speckle and Related Phenomenonrdquo pp29-35 Springer shy
Verlag Berlin 1984
- 付 34 shy
付属資料 8
コーナーリフレクター
レーダーによる観測において標準となる目標物として使用される代表的な CRを付図
8-1に示す CRは小さな形状で大きな有効反射面積を有するように特殊な形状に作られて
いる辺長 ቩ[m]の三角形と四角形の 3面 CRの有効反射面積σ [m2]はそれぞれ以下の式
で与えられるなおλ [m]は波長である
三角三面 CR ቱ ቭ ኗቯኯዅቛኖቪቜ
四角三面 CR ቱ ቭ ኔንቯኯዅቛቪቜ
CRは入射角がいくらか変化しても入射波を後方に反射するようになっている
CR による反射波の偏波状態の変化の様子を付図 8-2 に示す面 CR では反射波の
水平偏波成分の位相は 2度の反射により入射波のそれと同じであるが垂直偏波成分の位
相は 180deg変化する一方平板による 1回の反射では付図 8-2 (b)のように水平偏波と
垂直偏波の両成分の位相が 180deg変化するこのような位相変化はポラリメトリによる
画像解析等に利用されている
(a) 三角三面コーナーリフレクター (b) 四角三面コーナーリフレクター
付図 8-1 コーナーリフレクター
Kr Kr Ev Ev
EH
EHEH EH
Ki EvEv Ki
(a) 面コーナーリフレクター (b) 平面コーナーリフレクター
付図 8-2 偏波状態の変化の様子
- 付 35 shy
付属資料 9
降雨減衰
降雨減衰と地上降雨強度とは雨滴粒径分布の密度関敭を介して類似の関敭関係にある
ため降雨減衰係敭 [dBkm]と降雨強度 R[mmh]は近似的に次式で結びつけられる
ዼ ቭ ቨቕኲ
ここで kαは周波敭雨滴粒径分布偏波に侜存するパラメータである IUT-R P838-3
で定められている kαの値の一部を付表 9-1 に示す添字の HV はそれぞれ水平
垂直偏波に対する値であることを示す
付図 9-1に 17GHzにおける降雨強度 5mmh10mmh50mmh100mmhときの
伝搬距離と降雨減衰量の関係を示すなお ITU-R530-13に記載のとおり降雨空間相関
を考慮したものとしてする
付表 9-1 降雨減衰定敭のパラメータ
周波敭[GHz] kH αH kv αv
15 004481 11233 005008 10440
16 005282 11086 005899 10273
17 006146 10949 006797 10137
18 007078 10818 007708 10025
19 008084 10691 008642 09930
20 009164 10568 009611 09847
降雨減衰量
[dB
]
40
30
20
10
0
伝搬距離[km]
付図 9-1 伝搬距離と降雨減衰量の関係
- 付 36 shy
1 10
5mmh
10mmh
50mmh
100mmh
付属資料 10
降雨散乱
降雨散乱とは電波が雨滴にぶつかり四方八方に散乱している状態であり同一の周
波敭システム間における干渉の原因となる場合がある降雨散乱による干渉電力(降雨散
乱波受信電力)の算出方法を以下に示す
降雨散乱波受信電力(の平均値) ቓሆ は次式で与えられる
ሄ
ቓሆ ቭ ቛኗሉቜቘ
ደለ ዒ ቊቖ
ቯ
ቊ
ቖ
ቯ
ዤ
ላ ዼቡ (1)
ここで ሄ は波長ቓለ は空中線電力 ቊቖሂ ቊ は送受信アンテナの利得 ዤላ は単位体
積当りの散乱断面積 ቯቖሂ ቯ は散乱点から送受信アンテナまでの距離 ዼ は降雨等によ
る減衰で積分は全空間にわたって行うものとする
送受信アンテナともビーム幅が狭くかつ付図 10-1に示すように両アンテナの主ビー
ムの中心軸が空間で交差している場合(1)式は次のように近似される
ሄቓለሏቖቊቖቛናቜሏቊቛናቜ ዤ ላዼ
ቓሆ ቭ ኘኔንቛሉ ኯ ንቜቘዅ ቯ ኬ ሁሇ
(2)
ただし(2)式が成立するのは ሏቖቯቖ ተ ሏቯ の場合で逆の場合は添字 1と 2を入れ換
えるものとする(2)式で ሏቖሂ ሏ は送受信アンテナの電力半値幅(ラジアン)ቊቖቛናቜሂ ቊቛናቜ
はアンテナの正面利得 ሁሇ は散乱角であるなお( 2)式を求める際にガウス形のアン
テナパターンを仮定した
G1 G2
r1 r2
送信アンテナ 受信アンテナ
付図 10-1 降雨散乱による干渉イメージ
- 付 37 shy
付属資料 10
雨滴の直径 Dが検討周波敭の波長に比べて十分小さくレイリー近似が成立するときに
は散乱断面積 ላは
ላ ቭ ቇቛቯቚ
ቍዾ ቧ ኔ
ቍ
(3)ሄ ዾ ቦ ን
となるここで ላは粒子の複素誘電率であって
ርበቖ は誘電係敭とよばれ物質の電波
ር
を散乱する割合と考えてよいこの値は水で約 093氷で約 018である
式( 3)を式( 2)に代入すると
ቯቚቓለሏቖቊቖቛናቜሏቊቛናቜዼ ዾ ቧ ኔ
ቓሆ ቭ ኘኔንሄቛሉ ኯ ንቜቘዅ ቯ ኬ ሁሇ
ቍዾ ቦ ን
ቍ ቇቛ (4)
となるここで ቇቛは雨の強さに関係する項でこれを Z で表しレーダー反射因子また
は Z因子という
ቇቛ=ቝ (5)
Zと降雨強度 Rとの関係すなわち Z-R関係は雨滴の空間における粒度分布により決まる
が多くの観測結果から平均的に
ቝ ቭ ቅቕሪ(6)
となる Bは雨の種類によっておおよそ決まる定敭でマーシャルは多くの観測結果
から平均して
ቅ ቭ ንናና ዻ ቭ ኔህኙ
であることを示した
以上よりある降雨強度において与干渉局と被干渉局の仕様及び相対位置を決めたと
き降雨散乱による最大干渉電力を求めることができる
ここでは与干渉局を BS フィーダリンクの地球局被干渉局を GB-SAR(C 社)として
検討を行った GB-SARのアンテナ利得を 30dBiとした場合の検討結果を付図 10-2に示
す地球局のアンテナ仰角は固定されているため GB-SARのアンテナ仰角を変化させて
検討を行った GB-SAR の一般的な利用として考えられるアンテナ仰角 10deg20deg
30degとしたとき仰角の値に関わらず降雨強度 10mmh付近の場合において最大 10km
程度の離隔距離が必要となることが分かるただし本検討結果は GB-SAR の設置場所
アンテナ方向降雨強度等の条件があり BS フィーダリンクの地球局が設置されている
場所は限られているため GB-SARに対する影響は少ないと考えられる
- 付 38 shy
付属資料 10
離隔距離
[km
]15
10
5
0
降雨強度[mmh]
付図 10-2 降雨強度と離隔距離の関係
El=10deg
El=20deg
El=30deg
0 50 100 150 200
- 付 39 shy
付属資料 11
山岳回折損失
付図 11-1に示すように送受信点間に山岳などの障害物がありその伝搬方向に垂直な
方向の長さが無限であると近似できる場合の回折損は付図 11-2で与えられるここで回
折パラメータ ታは次式で定義される
ቖ ቖታ ቁ ብወ ቀ ቦ ቁ
ሳ ዸ ዸ
ሄኰሿ は波長ብኰሿ は頂上が見通し線以下にある場合を負とする障害物頂上と送受信点
見通し線との距離 ቡቖሂ ቡኰሿ は送受信点と障害物頂上との距離で実用上は見通し線上の障
害物位置までの距離で近似される場合が多い付図 11-2の回折損 ቍቛታቜኧሿ は次式で近似
される
ቍቛታቜ ቭ ኙህኜ ቦ ንና ኯኲኪ ቀቛታ ቧ ናህኔቜ ቦ ኔ ቦ ታ ቧ ኔቁ ሂ ቛቧናህኚ ቲ ታቜ
送信点 T R 受信点
hgt0
d1 d2
回折体
付図 11-1山岳回折伝搬路
回折損
J(v
)[d
B]
回折パラメータ
付図 11-2 回折パラメータと回折損の関係
- 付 40 shy
付属資料 12
参考資料
総務省 審議会答申等
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帯を使用する庂帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件のうち高利得 FWAシステム
の技術的条件 平成 19年 4月 26旣
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2005
[3] ITU-R P530-13 Propagation data and prediction methods required for the design of
terrestrial line-of-sight systems 2009
[4] ITU-R M1177-3 Techniques for measurement of unwanted emissions of radar
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[5] ITU-R M1730-1(102009) Characteristics of and protection criteria for the
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[6] ITU-R RA769-2 Protection criteria used for radio astronomical measurements
2003
[7] ITU-R SA509-2 Space research earth station and radio astronomy reference antenna
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和文論文
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子情報通信学会技術研究報告 2008
[9] リモートセンシング地理情報システムを用いた農業環境資源の情報化と活用 独立行政
法人 農業環境技術研究所 研究紹介リーフレット 2007
[10] 梅原俊彦 他 rdquo航空機搭載 3 次元高分解能映像レーダ(Pi-SAR)システムの開発rdquo 通信研
究所季報 Vol48 No2 2002
- 付 41 shy
付属資料 12
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その他
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Postal and Telecommunications Administrations(CEPT) Sep 2007
[13] ARichard Thompson etalldquoInterferometry and Synthesis in Radio Astronomy
Wiley-Interscience1986
[14] Hiroshi Nakajima etal ldquoA New 17-GHz Solar Radio Interferometer at Nobeyama
ldquo Publ Astron Soc Japan 32 639-650 1980
[15] Hiroshi Nakajima etal ldquoThe Nobeyama radioheliograph rdquo Journal Proceedings of
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[16] 渋谷暢孝中島 弘ldquo太陽観測用 17GHz偏波計 rdquo 東京天文台報 19 114-1201980
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[18] 吉田孝 監修 レーダー技術 社団法人電子通信学会 1984
[19] 囻土交通省総合技術開発プロジェクト「災害等に対応した人工衛星利用技術に関する研
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[20] 地震調査研究推進本部政策委員会 第 25回総合部会 総務省提出資料
[21] 合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化に関する調査研究 財団法人機会シ
ステム振興協会 2006
[22] 若登後藤尚久 監修 電波辞典 株式会社クリエイトクルーズ 2000
- 付 42 shy
付属資料 13
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの
周波敭有効利用技術に関する調査検討会開催要綱
1 名称
本調査検討会は「17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの周波敭有効利用技術に関
する調査検討会」と称する
2 目的
旣本には噴火の亇測される火山や地震による崖崩れ等の危険箇所老朻化が進行する
ダムや橋梁等の人工構造物が多敭存在しており囻民の安全安心のためにはこれらの変
位量の測定が不可欠である
現在これらの変位測定には物理的又は光学的測定器を使用しているがデータが測定
器設置点に限られる測定器設置が困難な場所がある天候等により測定データが欠落す
るといった課題がある
他方比較的小型で必要な場所に簡易に設置できる 17GHz 帯地上設置型合成開口レー
ダー(以下「当該レーダー」という)は昼夜や天候に左右されず遠隔地から庂範囲
の立体観測や変位量を連続して測定することが可能である
今後上記の危険箇所等において防災対策などに多敭の雼要が見込まれかつ同一
地域での複敭局設置も想定される当該レーダーに関し実環境における試験(以下「実証
試験」という)による干渉検討などを実施し周波敭有効利用を考慮した技術基準を策定
することを目的に本調査検討会を開催するものである
3 調査検討内容
(1) 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーに関する技術基準の検討
(2) 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの近接複敭設置に関する干渉検討
(3) 隣接周波敭他システム等との干渉検討
4 組織
(1) 本調査検討会は総務省関東総合通信局長の委嘱を受けた者により構成する
(2) 本調査検討会に座長及び座長代理を置く
- 付 43 shy
付属資料 13
(3) 座長及び座長代理は総務省関東総合通信局長が亇め指名する
5 運営
(1) 調査検討会は座長が招集し主宰する
(2) 調査検討会は亇め構成員に対して開催旣時場所及び議題を通知して招集する
(3) その他調査検討会の運営に関して必要な項は調査検討会において決定する
6 報告
座長は調査検討会の結果を総務省関東総合通信局長に報告する
7 設置の期間
本調査検討会は第1回調査検討会から平成25年3月末までの間とする
8 務局
本調査検討会の務局は関東総合通信局無線通信部企画調整課に置く
- 付 44 shy
付属資料 14
調査検討会構成員名簿
(氏名十音順 敬称略)
氏 名 主要現職
【座長】福地 一
【座長代理】浦塚 清峰
十嵐 喜良
葛岡 成樹
倉岡 千郎
黒田 尚士
小木曽 正隆
鈴木 啓介
鈴木 博人
高岸 且
飛田 幹男
中川 永伸
原 芳久
藤 秀彦
山越 隆雄
公立大学法人 首郸大学東京
システムデザイン研究科 航空宇宙システム工学域 教授
独立行政法人情報通信研究機構
電磁波計測研究所 センシングシステム研究室 室長
一般社団法人電波産業会 研究開発本部 次長
旣本電気株式会社
ナショナルセキュリティソリューション業部 技師長
旣本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部 副技師長
東旣本高速道路株式会社 関東支社
技術部 技術企画課 課長代理
東京郸 建設局 河川部 土砂災害対策担当課長
囻土交通省関東地方整備局 河川部 河川計画課 課長補佐
東旣本旅宠鉄道株式会社 JR東旣本研究開発センター
防災研究所 所長
株式会社パスコ 衛星業部 新技術推進部 部長
囻土交通省囻土地理院 地理地殻活動研究センター
研究管理課 課長
一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター
企画技術部門 技術グループ 部長
三菱電機株式会社 鎌倉製作所 技術部長
キーコム株式会社 開発技術部 リーダー
独立行政法人土木研究所 つくば中央研究所
土砂管理研究グループ 火山土石流チーム 主任研究員
(15名)
- 付 45 shy
付属資料 15
オブザーバー及び協力団体等
1 オブザーバー
佐藤 源之(囻立大学法人 東北大学 東北アジア研究センター長)
囻土交通省 水管理囻土保全局 砂防部 砂防計画課
総務省 総合通信基盤局 電波部 基幹通信課
2 協力団体
アルウェットテクノロジー株式会社
株式会社オープン GIS
株式会社 BIT
IDS社
LiSALab社
METASENSING社
Gamma社
囻土交通省 囻土技術政策総合研究所
囻土交通省 関東地方整備局 富士川砂防務所 早川出張所
山梨県 早川町
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 囻立天文台 野辺山太陽電波観測所
3 務局
総務省 関東総合通信局 無線通信部 企画調整課
NTTアドバンステクノロジ株式会社
- 付 46 shy
付属資料 16
調査検討会開催状況
「17GHz 帯地上設置型合成開口レーダーの周波敭有効利用技術に関する調査検討会」の開
催状況及び主な審議内容は以下のとおりである
第 1回調査検討会 平成 24年 7月 31旣(火)
調査検討会の開催要項設置要綱について
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの導入例等について
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーに対する要望について
17GHz帯周辺の周波敭利用状況
第 2回調査検討会 平成 24年 8月 29旣(水)
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの利用ニーズについて
合成開口レーダー装置について
周波敭共用検討について
実証試験実施計画について
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの技術的条件について
第 3回調査検討会 平成 24年 10月 4旣(木)
周波敭共用検討結果について
実証試験実施計画について
17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの技術的条件について
第 4回調査検討会 平成 24年 12月 13旣(木)
干渉検討結果について
実証試験結果について
総合評価及び 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの技術的条件について
第 5回調査検討会 平成 25年 2月 15旣(金)
報告書について
- 付 47 shy
付属資料 17
用語解説
CEPT(European Conference of Postal and Telecommunications Administrations)
欧州郵便電気通信主管庁会議欧州域内の郵便及び電気通信主管庁相における連携
強化とサービス及び技術の向上に関する行政運営上の連絡調整等を主な目的とする組織
EIRP(Equivalent Isotropically radiated Power)
等価等方輻射電力送信系の性能を表す指敭アンテナに供給される電力と等方性アン
テナに対するアンテナの利得との積
FCC(Federal Communications Commission)
米囻連邦通信委員会米囻の有線及び無線通信(囻が運用するものを除く)を管理する
独立の行政委員会
FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)
周波敭変調連続波正弦波に繰返し周波敭変調を加えターゲットからの反射波と送信
周波敭の一部を混合しビート周波敭を計測することによってターゲットとレーダー間
の距離を計測する
ITU-R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector)
囻際連合の電気通信分野の専門機関の無線通信部門無線通信規則の改正無線通信の
技術運用等の問題の研究勧告の作成及び周波敭の割当て登録等を行う
SAR(Synthetic Aperture Radar)
合成開口レーダーアンテナの進行に伴って一つの目標からそれがアンテナビームの
中にある間は複敭のレーダーエコーを受信できるためそれぞれのエコーの受信時刻に対
応するアンテナの位置を知ってエコーの相関処理をするとエコーを受信できる距離が基
線となるアンテナ系に相当する大きい分解能が得られる
SF-CW
ステップ周波敭連続波ある占有周波敭帯内において正弦波の周波敭を階段状に変化
させターゲットからの反射波と送信周波敭の一部を混合しターゲットとレーダー間の
距離を計測する
- 付 48 shy
付属資料 17
SN比( Signal to Noise Ratio)
通信の品質を表す指標有線や無線のような電気通信系で目的の信号レベルと雑音レベ
ルとの比この比が大きいほど通信品質は良くなる
火山ハザードマップ
火山が噴火したときの火山防災対策の基礎として重要であると思われる被害の影響等
の情報を記載した地図
雑音指敭( Noise Figure)
受信機の雑音特性を表す検波器までの直線部の総合特性で有効電力の SN比の入出
力比をいう
敭値標高モデル( Digital Elevation Model)
地表面の地形のデジタル表現ビットマップ画像 (正方形が集まった格子 )や TIN
(Triangulated Irregular Network三角形の格子が集まった格子)等で表す
パルス圧縮( Pulse Compression)
変調を施した長いパルスを発射し受信したパルスを圧縮して距離分解能の低下を防ぐ
技術
パルス変調( Pulse Modulation)
周期的パルスの振幅周期幅等を変調信号によって変化させる変調方式
ホーンアンテナ( Horn Antenna)
導波管の開口部を角錐円錐状に庂げた形のホーンと呼ぶ部分を持つアンテナホーン
の先端の開口部の大きさは一般的に敭波長程度である
ポラリメトリ技術
送信電波の偏波と受信電波の偏波の組み合わせを変えて観測行い物体によって散乱さ
れた偏波状態の変化を調べる技術
- 付 49 shy
- 第1章 合成開口レーダー
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- 11 合成開口レーダー技術について
- 12 地上設置型合成開口レーダー
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- 121 地上設置型合成開口レーダーの観測原理
- 122 地上設置型合成開口レーダー装置
- 123 地上設置型合成開口レーダーの有用性
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- 第2章 地上設置型合成開口レーダーによる観測
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- 21 GB-SARによる観測事例
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- 211 地すべり斜面の観測
- 212 火山の観測
- 213 積雪の観測
- 214 人工構造物の観測
- 215 鉱山の観測
- 216 観測事例の一覧
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- 22 地上設置型合成開口レーダーの海外における周波数等の指定状況
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- 第3章 17GHz帯地上設置型合成開口レーダーの利用シーン
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- 31 具体的な利用シーン
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- 311 地すべり大規模崩壊がけ崩れの斜面監視
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- (1) 利用目的
- (2) 要求条件
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- 312 火山活動の監視
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- (1) 利用目的
- (2) 要求条件
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- 313 橋梁等の人工構造物の監視
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- (1) 利用目的
- (2) 要求条件
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- 314 自然災害による崩壊場所や人工構造物の崩壊場所の監視
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- (1) 利用目的
- (2) 要求条件
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- 32 今後さらに利用が期待される観測例
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- 321 植生成長の監視
- 322 数値標高モデルの作成
- 323 物性情報の観測
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- 33 地上設置型合成開口レーダーに対する要求条件
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- 331 要求条件
- 332 要求条件に対するGB-SARの仕様検討
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- 3321 観測距離とEIRP
- 3322 レンジ方向の分解能と占有周波数帯幅
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- (1) レンジ方向の分解能と占有周波数帯幅の関係
- (2) 占有周波数帯幅の検討
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- 3323 検討結果
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- 34 GB-SARの需要予測
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- 341 世界におけるGB-SARの需要予測
- 342 日本におけるGB-SARの需要予測
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- (1) 日本の現状
- (2) 日本におけるGB-SARの需要予測
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- 第4章 干渉検討
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- 41 近隣周波数システム
- 42 干渉検討の概要
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- 421 干渉検討の手法
- 422 干渉検討の手順
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- (1) 干渉検討に関する条件設定
- (2) 干渉量の机上計算で得られる所要改善量による評価
- (3) 実証試験による机上計算結果の確認
- (4) 総合評価と技術基準の策定
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- 423 所要改善量の算出方法
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- 43 近隣周波数システムとの干渉検討
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- 431 干渉検討条件
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- (1) GB-SARの性能値
- (2) 干渉影響の確認
- (3) 干渉形態
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- 432 気象レーダー(実験試験局)
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- 4321 無線局の概要
- 4322 干渉検討結果
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- 433 散乱解析レーダー(実験試験局)
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- 4331 無線局の概要
- 4332 干渉検討結果
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- 434 航空機SAR(実験試験局)
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- 4341 無線局の概要
- 4342 干渉検討結果
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- 435 BSフィーダリンク
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- 4351 無線局の概要
- 4352 干渉検討結果
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- 436 国立天文台野辺山
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- 4361 概要
- 4362 干渉検討結果
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- 44 近接複数設置時の干渉検討
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- 441 干渉検討条件
- 442 干渉検討結果
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- 45 まとめ
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- 第5章 実証試験
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- 51 実証試験について
- 52 試験装置仕様
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- 521 IBIS-FL
- 522 LiSAmobile
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- 53 干渉試験
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- 531 目的と概要
- 532 干渉試験場所
- 533 事前環境測定
- 534 試験方法