平成17年3月 島根県...発刊のことば...

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平成17年3月 島根県 トルコギキョウ栽培指針

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Page 1: 平成17年3月 島根県...発刊のことば 本県では、平成12年3月に平成22年を目標年次とし、活力ある農業・農村の 創造を目指して「新農業・農村活性化プラン」を策定し、花きにおいても、この

トルコギキョウ栽培指針                                 

島 

根 

平成17年3月

島根県

トルコギキョウ栽培指針

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発刊のことば

 本県では、平成12年 3月に平成22年を目標年次とし、活力ある農業・農村の創造を目指して「新農業・農村活性化プラン」を策定し、花きにおいても、このプランに沿った生産振興を推進することを目的に、平成13年 3月に「島根の花」振興指針(改訂版)を策定しました。 この振興指針では、県の振興品目を「きく」「トルコギキョウ」「ばら」「シクラメン」「ぼたん」の5品目に絞り込み、生産規模の拡大や国内外の産地間競争に打ち勝つ高品質な花き生産を進めているところです。 なかでも、トルコギキョウは、花色や花型が豊富であることから、全国的に需要が多く、幅広い用途に利用されている品目です。 本県では、ここ数年、順調に生産が伸びており、平成15年の産出額は6,679万円と3年前の1.2倍まで拡大しています。また、これまでトルコギキョウ栽培がなかった地域での導入が進んでいることから、今後も一層の生産拡大が期待されています。 このような中、県では、県内の育種家が作出し、花振興センターで増殖配付を行っている「県オリジナル品種」の導入により、特色ある産地づくりを進めるとともに、農業試験場が開発した種子冷蔵技術の活用による品質及び生産量の向上を推進しています。 また、近年、関心が高まっている鮮度保持技術についても、関係機関と連携しながら、導入産地の拡大を図っています。 そこで、本書は、県の振興方針を鑑みながら、新規導入者の多い「県オリジナル品種」の栽培管理を中心とした構成にするとともに、高品質生産を進める上で重要となる種子冷蔵技術や鮮度保持技術を盛り込んだ内容としております。 この指針が広く活用され、トルコギキョウが「島根の花」ブランドの一翼を担うことを期待し、発刊のことばとします。

平成17年 3月

島根県農林水産部長  

法 正 良 一

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目 次

Ⅰ.トルコギキョウの特性

 1 経営上の特徴と作型選定 ………………………………………… 1 2 生理生態 …………………………………………………………… 2

Ⅱ.栽培管理

 1 県オリジナル品種の栽培管理 …………………………………… 3 2 F1品種の栽培管理    1)平坦地の6~7月出し栽培……………………………………19   2)平坦地の9~10月出し栽培 …………………………………21   3)中山間地の9~10月出し栽培 ………………………………25 3 共通管理   1)土づくり…………………………………………………………27   2)病害虫防除 ……………………………………………………29   3)生理障害 ………………………………………………………32

Ⅲ.出荷調整

 1 出荷調整作業 ………………………………………………………33 2 出荷規格    1)県オリジナル品種………………………………………………37   2)F1品種 …………………………………………………………38

Ⅳ.参考

 1 トルコギキョウにおける県の取組状況……………………………39 2 高鮮度花き流通の現状    1)バケット流通の全国的な動き …………………………………41   2)県内におけるバケット流通の取組状況 ………………………43

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早わかり! この本の使い方Step 1

Step 2

Step 3

参 考

トルコギキョウについて知りたい!

経営上の特徴と作型選定   p.1

生理生態          p.2

トルコギキョウを栽培したい!

県オリジナル 品種の栽培管理

 p.3 ~

【共通管理】土づくり・病害虫防除・生理障害

 p.27~

【F1品種の栽培管理】■平坦地の6~7月出し栽培  p.19~

■平坦地の9~10月出し栽培  p.21~

■中山間地の9~10月出し栽培  p.25~

トルコギキョウを出荷したい!

出荷調整作業     p.33~

出荷規格        p.37~

トルコギキョウに関する最近の動きは・・・?

トルコギキョウにおける県の取組状況  p.39~

  〔参考資料〕高鮮度花き流通の現状  p.41~

『トルコギキョウ栽培』完全マスター !!

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Ⅰ. トルコギキョウの特性 Ⅰ. トルコギキョウの特性

Ⅰ . トルコギキョウの特性

1 経営上の特徴と作型選定

1)経営上の特徴

 トルコギキョウは、水揚げ・花持ちが良く、花色・花型も豊富であることから、年間を通じて安定した需要が見込まれています。 ここ数年、全国の花き卸売市場におけるトルコギキョウの年間取扱量は1億1千万本、単価は95円程度で安定しており、月別の卸売数量及び卸売価格も毎年同じような変動を示しています。 労働時間は、作型により異なりますが一般的にa当たり80時間程度と考えられ、1人当たり10~15aの栽培が可能です。しかし、近年、花蕾整理が一般化し、圃場での摘蕾や収穫後の小花蕾処理に労力が集中することから、品種の組み合わせや作型をずらすなど労力分散を図る必要があります。 生産費では種苗費、園芸施設費及び販売経費の割合が大きく、産地化を図ることにより、資材の共同購入や共同出荷等による経費の節減を図る必要があります。 また、毎年多くの品種が登場していますが、品種選定はその地域で安定して栽培、販売できる品種を中心とした構成とし、新品種の導入に当たっては試作等で生育特性を確認してから導入し、出荷ロスを少なくすることが重要です。産地間競争が激しくなる中、出荷市場や客層等、ターゲットを明確にし、花色、草姿、草丈、開花輪数などを設定し、生産計画と販売戦略を立てた上で取り組むことが必要です。

2)作型選定 

 トルコギキョウは、同じ品種でもわずかな環境の違いから開花輪数、花持ち、草丈、ボリューム等の切り花品質の格差が生じます。したがって、栽培技術はもとより、ロゼット性や生育条件などの生理生態、各品種の特性を十分踏まえ、その地域の気象条件にあった作型選定が必要です。 本県の平坦地では、春先の日照量と気温を活かした6月出荷と最も栽培しやすい7~ 8月出荷、また、ブライダル等で需要が多く価格も安定している10月出荷が有望と考えられます。中山間地では夏季の冷涼な気温を活かし、高品質生産が可能な9~10月出荷が適当と考えられます。

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百万本

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図 -1  平成 15年産 月別トルコギキョウの卸売数量と単価(資料:市場月報)

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5

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1   2   3   4   5   6   7   8   9 10 11 12

出雲

赤名

図 -2  出雲と赤名の月別気温(平均値)(資料:アメダス平年値)

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Ⅰ. トルコギキョウの特性 Ⅰ. トルコギキョウの特性

2 生理生態

 北米大陸中央部が自生地で、リンドウ科に属し、一般的には一年草として扱われます。普通9月に播種すると翌年の初夏に開花します。

1)発芽

 発芽適温は、20~ 25℃前後で、一般的に固定種はF1品種よりやや高いです。光発芽性種子であるため良質な苗を得るには5,000lux 以上の照度が必要で、1,000lux 以下の低い条件では発芽率、子葉展開率が低下し、胚軸が徒長します。

2)ロゼット化

 発芽~本葉3対が展開するまでに、高温や低温、乾燥、低日照など生育に適さない環境に遭遇すると、中心芽の伸長が停止し、横方向に葉が広がっていく状態になります。これを「ロゼット化」といいます。特に、高温期に播種、育苗した場合や育苗期間中から定植初期にかけて用土や圃場が乾燥した場合に多く発生します。  高温による感応は、種子が吸水して、胚が活動し始めた播種直後から始まり、その後の高温を受ける期間が長いほどロゼット化しやすくなります。しかし、本葉2対以上展開した苗は、その後の高温にほとんど感応しません。 ロゼット化が軽い場合は、中心芽の伸長が緩慢になり、側芽の発生が多くなります。なお、ロゼット打破のためには5~10℃で約5週間の低温条件が必要です。  3)温度

 半耐寒性で、5℃でロゼット化し生育を停止します。切り花品質を考慮した場合の栽培適温は夜温15℃前後、昼温25℃程度です。

4)花芽分化

 花芽分化は、節間伸長し、本葉展開節数が早生品種で7~ 8節、晩生品種で9~10節を超えてから温度と日射量により開始します。一般に、最低気温13℃、平均気温22℃を超える頃に花芽分化が始まり、これより高温になると促進されます。また、花芽分化は一定の日射量が必要で、一般的に早生品種は低日射条件で、晩生品種は強日射条件で始まる傾向にあります。なお、花芽分化後に低温や日照不足に遭遇するとブラスチング(p.32参照)が発生します。

5)開花

 トルコギキョウは雄ずい先熟で、雌ずいが展開する頃に葯が開裂して花粉が飛散します。また、雄ずいと雌ずいの距離が近い品種ほど受粉しやすくなります。受粉後は花弁が閉じ、子房の肥大が始まります。

写真 -1 ロゼット化した株

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

Ⅱ.栽培管理

1 県オリジナル品種の栽培管理

1)導入上の注意点

県オリジナル品種は、固定種です。導入に当たっては下記の点に注意が必要です。(1) 県オリジナル品種の優位性は夏季の高温時に最も発揮されます。作型は、各地域での季咲

き栽培が基本となります。(2) 県オリジナル品種は、市販の F1品種と栽培管理が異なります。品種の生育特性を十分理解

した上で栽培することが大切です。(3) 県オリジナル品種の販売ターゲットは、小売り専門店です。小売り専門店が満足する高品

質の切り花生産を目指します。そのためには、徹底した分枝整理、花蕾整理を行います。(4) 県の統一出荷箱(縦箱湿式)を用いた県外出荷を目標とします。

2)作型のポイント

(1) 平坦地における各作型の特徴と栽培のポイント 平坦地での主要作型は、年内定植の 7月出し栽培、3月定植の 7~ 8月出し栽培、4月定植の 8月出し栽培の 3つです。① 7月出し栽培 ■特徴   定植後低温でゆっくり生長し、株がしっかりできることから、ボリュ-ムのある高品質の切り花が得られます。  育苗は温度が確保できる時期であり、加温等の必要がなく、育苗経費は安く済みます。  他の作型に比べ、ハウスの占有期間が約 8か月間と長くなります。  出荷時期となる 7月はあまり高単価が期待できません。  花蕾数が多くボリュ-ムのある切り花となるため、摘蕾等の作業労力は多くかかります。 ■注意点  播種は 9月中旬以降、できるだけ早く行います。  定植は地温の高い 11月中に行います。12月定植では、低温のため活着が遅れます。   定植後は無加温の保温栽培としますが、厳寒期であっても、内張り(天井)を朝には開け、昇温効果を高めるとともに、光が当たるようにします。夕方は早めに内張りを閉め、保温に努めます。② 7~ 8月出し栽培及び 8月出し栽培 ■特徴  平坦地で最も一般的に栽培されている作型です。  育苗は 1~ 3月となるため、加温設備が必要です。   種子の低温処理(以下種子冷蔵)によって、育苗期間が短縮され、定植後の生育も旺盛に

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

なります。   盆前に出荷でき、高単価を狙える作型です。 ■注意点  定植時期が遅れると切り花品質が低下します。遅くとも4月中旬までには定植を終えます。

(2) 中山間地における各作型の特徴と栽培のポイント① 8~ 9月出し栽培(標高 300 ~ 500m) ■特徴  育苗は 3~ 5月となるため、加温設備が必要です。  種子冷蔵によって、育苗期間が短縮され、定植後の生育も旺盛になります。  8月下旬から 9月上旬に出荷でき、高単価を狙える作型です。 ■注意点  定植時期が遅れると切り花品質が低下します。遅くとも5月中旬までには定植を終えます。② 9月出し栽培(標高 500m以上) ■特徴  育苗は 4~ 5月となるため、加温設備が必要です。  種子冷蔵によって、育苗期間が短縮され、定植後の生育も旺盛になります。  9月に出荷でき、高単価を狙える作型です。 ■注意点   定植時期が遅れると収穫時期も遅れ、出荷率が低下します。遅くとも 5月下旬までには定植を終えます。

対象地域 作 型 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12平坦地 7月出し栽培 ● ◎

7~ 8月出し栽培(種子冷蔵あり) ◎ ●(種子冷蔵なし) ● ◎

8月出し栽培(種子冷蔵あり) ● ◎(種子冷蔵なし) ● ◎

中山間地(標高300~ 500m) 8~ 9月出し栽培

(種子冷蔵あり) ● ◎(種子冷蔵なし) ● ◎

(標高500m以上) 9月出し栽培(種子冷蔵あり) ● ◎(種子冷蔵なし) ● ◎

● 播種  種子冷蔵期間  育苗期間  本圃期間 ◎ 定植  収穫

図 -1 作型図

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

3)品種の紹介

(1) 県オリジナル品種の特性 県オリジナル品種は、本県中山間地で育成された品種で、本県の気象条件に適応したオリジナル性の高い固定種です。 生育はやや緩慢で、生育期間は市販の F1品種に比べ、約 1か月間長くなります。 高温期でも、茎葉は硬く、しまった草姿の切り花になります。 高温期の花持ちの良さには定評があります。

(2) 品種特性 平成 16 年度に配付した県オリジナル品種は 8品種で、各品種名の先頭にある ‘SO’ は ‘しまねオリジナル’ の略称です。① ‘ SO ニューパープル ’ ■市販品種には少ない、濃い紫が特徴 ■花型が洗練されていて、美しい ■生育の揃いが良く、出荷率が高い ■開花は県オリジナル品種の中で、最も遅い

② ‘ SO ホワイトエース ’ ■ 花色はオフホワイト(淡いクリームを帯びた白色)

 ■花弁縁のフリルが優雅 ■茎は硬く、作りやすい ■使用用途が広く、使い勝手が良い

③ ‘ SO ワインフラッシュ ’ ■赤色のフラッシュ(かすり)が特徴 ■市販品種にはない希少な色合い ■生育旺盛で、茎葉が柔くなりやすい ■葉先枯れ症が発生しやすい ■開花は県オリジナル品種の中で、最も早い ■ 生育後半の水分管理が他の県オリジナル品種とは異なるため、定植は別畝とする

写真 -1 ‘ SOニューパープル ’

写真 -2 ‘ SOホワイトエース ’

写真 -3 ‘ SOワインフラッシュ ’

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

 次の 3品種は小輪多花性で、花がさくらんぼの様に小さくて可愛いことから、チェリーシリーズと命名しました。④ ‘ SO チェリー・レッド ’ ■市販品種には少ない濃い赤色 ■花は小さくてかわいらしい ■花蕾数は多い

⑤ ‘ SO チェリー・レッドリング ’  ■濃い赤の覆輪  ■需要の多い覆輪タイプ ■覆輪がやや流れやすい ■小輪で花蕾数が多い

⑥ ‘ SO チェリー・ブルーリング ’ ■濃い青紫の覆輪 ■需要の多い覆輪タイプ ■覆輪の流れが少ない ■小輪で花蕾数が多い ■県オリジナル品種の中で、栽培が最も多い

⑦ ‘ 白小輪(仮称) ’ ■花色は白 ■人気の小輪タイプ ■草丈はやや低い ■生育の揃いが良く、出荷率が高い ■花蕾整理作業が楽な省力品種

写真 -4 ‘ SOチェリー・レッド ’

写真 -5 ‘ SOチェリー・レッドリング ’

写真 -6 ‘ SOチェリー・ブルーリング ’

写真 -7 ‘ 白小輪(仮称) ’

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

⑧ ‘ 赤八重(仮称) ’ ■花色は大変珍しい濃暗赤 ■花の大きさは、中輪タイプ ■県オリジナル品種では初めての重厚な八重 ■八重率は 75%前後 ■市場評価は極めて高い  ■一重も市場出荷可能

 県オリジナル品種の種子配付は、花振興センターが行っています。栽培を希望される方は、最寄りの JA か隠岐支庁農林局または農林振興センターまでご連絡下さい。例年、申し込みは10~ 11月、種子の配付は 1月上旬以降に行っています。一部秋季配付も行っていますので、年内播種を行う場合には、花振興センターまでご連絡ください。

品種名 花色 花径 早晩性 花形 草姿 切花長 茎の堅さ 葉先枯れ症の発生

SO(しまねオリジナル)ニューパープル 濃紫単色 中輪 晩生 漏斗状 頂点~段咲き 高い 普通 無

SO(しまねオリジナル)ホワイトエース オフホワイト 中輪 中生 カップ状 頂点咲き やや低い 極硬い 無

SO(しまねオリジナル)ワインフラッシュ 赤フラッシュ 中小輪 中生 カップ状 段咲スプレー やや低い やや軟ら

かい 中~多

SO(しまねオリジナル)チェリー・レッド 濃赤単色 小輪 中晩生 カップ状 段咲スプレー 普通 ややもろ

い 中

SO(しまねオリジナル)チェリー・レッドリング 濃赤覆輪 小輪 中晩生 カップ状 段咲スプレー 普通 普通 少

SO(しまねオリジナル)チェリー・ブルーリング 青紫覆輪 小輪 中晩生 カップ状 スプレー 普通 普通 無

白小輪(仮称)※ 白 小輪 中生 平わん 段咲き やや低い やや軟らかい 中

赤八重(仮称)※ 濃暗赤 中輪 中晩生 八重 段咲き 普通 普通 無

注)※はH16年度新規配付品種

写真 -8 ‘ 赤八重(仮称) ’

表 -1 県オリジナル品種の特性

写真 -9  県オリジナル品種を用いたアレンジメント

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

4)播種及び育苗管理

(1) 播種準備 育苗トレイは、288 穴を用い、一次根の長さを確保するため、深いタイプのものを選びます。 用土は、物理性が良好(水持ちが良く、排水性が良いもの)で、病原菌等の混入がない清潔なものを準備します。 播種時は、発芽揃いを良くするため、やや高めの温度管理(夜温 20℃、昼温 25℃)とします。播種数日前から温度設定し、温度が保たれることを確認した後に播種を行います。育苗施設には、必ず最高最低温度計を設置し、温度のチェックを毎日行います。 用土を詰める時は、育苗トレイの各セルに用土が均一に入るよう注意します。また、用土詰め後は、育苗トレイを数回振動させ、用土が均一に入っているか再確認します。用土の入った育苗トレイは、播種までの間、育苗する施設内で保管します。なお、この作業は、播種前日までに行うことで、用土が落ち着き、播種時にゆとりを持って作業することができます。 かん水時には、優しく、十分な量をかん水します。かん水は、ハス口を上に向け、少し離れたところから、ゆっくり動かしながら数回往復し、育苗トレイの底から水が落ちるようになるまで行います。一度で難しい場合には、時間をおいて数回に分けて行います。

用土の種類 メーカー 特徴 元肥等 1袋

メトロミックス350 ハイポネックスジャパンピートモスバーミキュライトバークアッシュ

微量 85リットル

タキイセル培土 TM-2 タキイ種苗 ピートモスバーミキュライト

N:120mg/1(肥効期間:10~15日程度)微酸性微量要素入り

50リットル

EE培地 ニッテン 天然ゼオライト無追肥省力型

pH:6.5EC:0.8ms/cmN:730mg/1

50リットル

ガッチリくん トキタ種苗天然ゼオライト肥効が長い無追肥省力型

pH:6.9N:720mg/1 50リットル

エクセルソイルシステム イワタニアグリグリーン(みのる産業)

固化培地(白トレイ付き)気相率が高い熱融着性繊維+培土100℃加熱固化処理済みピートモス

微量 288穴406穴

プラントプラグ サカタのタネ固化培地(トレイ付き)ピートモス、ヤシ殻繊維親水性ウレタンポリマーで加工

EC:0.8~1.2ms/cm(播種10日後から追肥必要)

288穴406穴

表 -2 市販されている主な育苗用土

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

(2) 播種 県オリジナル品種の種子はコーティング加工がしてあります。発芽率は 95%を保証していますので、各セルに 1粒ずつ播種します。 播種後はできるだけ早く、噴霧器を用い、コーティングが完全に溶けるまで噴霧します。播種後コーティングを溶かすまでに時間をおくと(2時間以上)、コーティングが溶けにくくなるので注意します。 トルコギキョウの種子は、好光性種子で、光がないと順調に発芽しません。どのような場合でも覆土は行いません。

(3) 種子冷蔵の効果と方法①種子冷蔵の効果 種子冷蔵の技術は、主に夏季の高温時に育苗する作型において、有効性が認められた技術です。この技術は、吸水させた種子を 10℃の暗黒条件下で 35日間保管した後に、発芽に好適な温度、光条件下におくと、発芽や生育が促進され、ロゼットの発生を低下させる効果があります。県オリジナル品種の育苗においても、種子冷蔵により、発芽や生育が促進され、育苗期間の短縮(35日の種子冷蔵で 10日間程度)が図れます。この技術は、処理が簡単で失敗も少ないのが特徴で、冷蔵庫があれば容易に導入できます。②種子冷蔵の方法 播種準備、播種、播種後のコーティングを溶かすところまでは通常どおり行います。ただし、播種後入庫までの間に強日射条件に 3~ 4時間以上遭遇すると、冷蔵中に発芽が進むことがあるので注意します。 育苗トレイの底から水滴が落ちなくなってから、播種した種子が他に付着しないように水稲の育苗箱で育苗トレイを覆い、ずれないようにガムテープ等で数カ所固定します。 冷蔵中の乾燥を防止するため、黒色のビニル袋(70リットル)に入れます。 10℃の暗黒条件の冷蔵庫内に積み重ね、35日間程度保管します。この間、かん水は必要ありませんが、播種前に十分にかん水しておくことが大前提です。 種子冷蔵を行うと、発芽や生育が促進されるので、通常の育苗より 10日間程度育苗期間が短縮されます。そのため、定植の準備は計画的に行います。

写真 -11 種子冷蔵中の冷蔵庫内の様子写真 -10 水稲の育苗箱で覆った状態

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

(4) 育苗①温度管理 播種後子葉展葉期までは、昼温 25℃、夜温 20℃で管理し、発芽揃いを良くします。その後、昼温は 25℃を目途に換気を行い、夜温は徐々に下げていき、定植の数日前から定植するハウスの温度まで下げます。 育苗時の温度管理で注意する点は、■播種後、子葉展葉までの温度管理は昼温 25℃、夜温 20℃で管理すること、■育苗期間中は、日中の温度を30℃以上の高温にしないこと、■光に十分に当てることです。特にトンネル被覆等を行っている場合、急激な温度上昇を防ぐ目的で、トンネルを遮光資材で被覆することは厳禁です。県内の冬季の日照は、トルコギキョウの生育にとって十分でないため、光が十分当たるように留意します。また、トンネル内の温度上昇が心配される場合には、裾換気を行い、高温を防止します。②かん水 播種後本葉展葉期までは、用土表面を乾かさない管理をします。この時期までは植物体が小さいので、噴霧(噴霧器、ミスト)によるかん水を行います。 本葉展葉時には、根は 3cm程度に伸長しています。かん水は用土表面が乾き気味になってから行います。また、かん水方法は、噴霧からジョウロ、ハス口(いずれも目の細かなものを使用)に切り替え、育苗トレイ底から水が落ちる程度に十分かん水します。③施肥 使用する用土によって異なります。最近では、育苗中に追肥の必要がない用土も販売されています(表Ⅱ- 2参照)。ここでは、基肥が少ない用土を使用した場合の施肥について述べます。 トルコギキョウは、生育初期の子葉、本葉等は極めて小さいのですが、根の生長は旺盛で、子葉展葉時には、1cm弱に伸長しています。そのため、基肥が微量しか入っていない用土では、この時期には肥料が流亡している可能性があります。そこで、播種 1週間後(発芽開始前)から追肥を開始します。追肥の窒素濃度は 100ppm程度とし、週 1回、子葉展葉期まで行います。 子葉展葉期以降は、窒素濃度を 200ppm程度まで上げ、週 1回の間隔で追肥を続けます。本葉展葉期までは噴霧器で、それ以降はジョウロで施用します。1回の施用量は育苗トレイ 1枚当たり 500ml 程度とします。 追肥は定植 2週間前に終えます。定植前は、肥料が切れ気味の管理をすることで、定植後の根の伸長と活着を促します。

0

5

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25

30

播種 1週間 2週間 3週間 4週間 5週間 6週間 7週間 8週間

昼温

夜温

子葉展葉

本葉展葉

定 植

(℃)

図 -2 育苗期の温度管理

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

写真 -13 子葉展葉期の根(根の長さは1cm弱)

写真 -12 子葉展葉期

写真 -15 本葉展葉期の根(根の長さは3cm程度、まだセル底には届かない)

写真 -14 本葉展葉期

〈 参考 液肥の窒素濃度の計算方法 〉

        液肥の窒素成分(%)× 10,000        ─────────────────────  = 希釈倍率(倍)             希望濃度(ppm)         (例1) 窒素濃度10%の液肥を200ppmに希釈したい場合は

            液肥の窒素成分10(%) × 10,000         ───────────────────────  = 希釈倍率500(倍)             希望濃度200(ppm)          (例2) 100ppmの溶液を作成する場合の簡単な計算方法         窒素濃度10%の液肥の場合は          液肥の窒素成分10(%)× 100 = 希釈倍数1,000(倍)

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

5)定植から収穫までの管理

(1) 定植準備 定植準備は定植1か月前から始めます。まず、耕耘前に十分なかん水を行いますが、このかん水は、圃場の水分補給と土壌物理性の維持及び連作障害対策としても有効です。次に良質な堆肥を投入し、深耕ロータリーで耕耘します。 トルコギキョウの好適な土壌 pHは6.5前後で、酸性土壌(pH5.0 ~ 5.5)では、生育不良、生育の不揃い等の障害が発生しやすく、pH7.5 以上のアルカリ性土壌でも生育が阻害されます。ECは土質に関係なく1.0dS/m以上になると枯死株が発生し、切り花品質も低下します。定植前には、必ず土壌分析を行い、好適 pHとなるよう石灰資材等を施用します。ECが高い場合は、定植前の除塩や、減肥を行います。 基肥は、土壌分析の結果に基づき行いますが、F1品種より2~ 3割多く施用します。a当たりの窒素、リン酸、カリの各成分は1.5kg 程度を目安とします。また、県オリジナル品種では、生育前期に十分なかん水が必要なため、かん水チューブを1畝当たり1~2本配置します。畝立て後、かん水チューブでかん水し、土壌を落ち着かせてから、定植床の凹凸を平らに整地します。低温期の定植では、マルチ被覆する等、地温の確保(15℃目標)に努めます。 定植前日には、フラワーネットを張り、苗と定植床に十分なかん水を行います。

(2) 定植 a当たりの定植本数は、2,500本程度とします。分枝整理、花蕾整理等の作業性の点からも、また、秀品率向上のためにも、12cmマス、5目の中1条をあけた4条植えとします。 苗は、本葉2対になるまでに定植を行います。セルの底に根がとぐろを巻く様では遅すぎます。育苗トレイから苗を抜き取り、定植穴をコテ等で開けた後、育苗トレイの用土表面が植え床と同じ高さになるようにし、周りの土を寄せます。この時、寄せた土を押さえると苗の立ち枯れの原因となるので注意します。定植後は、定植床をたたかないように、優しくかん水を行います。

(kg/a)

肥料名 基肥 追肥成  分  量

窒素 リン酸 カリ堆肥 300苦土石灰 15菜種油粕 20 1.0 0.5 0.2OKボーン 10 0.4 2.2珪酸カリ 10 2.0液肥 適宜合計 1.4 2.6 2.2

注)施肥設計は土壌分析の結果に基づいて行います。

表 -3 施肥例

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� � � ����������図 -3 植え付け例

(12cm×5目の4条植え)

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

(3) 定植から発蕾までの管理①かん水 定植後約1か月間、抽だいが始まるまでは、土壌表面が白く乾かないようにかん水を行います。この間に、土壌表面を乾かすと、土壌表面近くから発生する二次根の発生が抑制され、根部、地上部ともに生育が劣ります。  抽だいが進んでくると、土壌表面が乾いてからかん水を行いますが、かん水時には、十分な量をかん水します。少量を何度もやるかん水方法では根の生育が十分でなく、切り花品質も低下します。

写真 -17 定植適期苗(根がセル底でとぐろを巻かない状態)

写真 -16  定植適期苗(本葉1.5~ 2対)

写真 -18 定植1か月後の生育(抽だい開始)

写真 -20 多量少回数かん水による根の状況(根上部からの二次根の発生が多い)

写真 -19 少量多回数かん水による根の状況(根上部からの二次根の発生が少ない)

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

②追肥 追肥は、生育の状況を見ながら行うのが原則ですが、通常は定植1か月までとし、その後は株の吸収力に任せます。特に、定植1か月後から発蕾期までに肥料を効かせると、切り花品質が低下する可能性があります。 1回の施用量は、a当たり窒素成分量で0.1kg程度(窒素濃度300ppmの液肥を a当たり300リットル)を目安とします。③分枝の摘除  抽だいが進むと、地際部から分枝が発生してきます。分枝は、平坦地の定植が早い作型で多く発生しますが、県オリジナル品種の地際部からの分枝発生は、生育が順調な証拠です。しかし、分枝を放置しておくと主枝の生育が劣るので、早期に分枝元からかき取ります。この作業は、生育に応じて、数回に分けて行います。分枝を摘除する部位は、地際部から20cmを目安とし、20cm前後の分枝は摘除します。この時、フラワーネットを20cmの高さに上げ、摘除作業を行うと容易に作業が行えます。これらの分枝摘除により、上位節分枝の発生が促進され、高品質切り花栽培につなげることができます。

写真 -21 多肥による生長点の壊死(このようになると正常な生育は望めない)

写真 -23 中位節からの分枝の発生状況写真 -22 地際部からの分枝の発生状況

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

④葉先枯れ症の発生 葉先枯れ症の発生は、草丈15cm頃から始まり、発蕾期まで続きます。未展開葉の先端部が褐変する軽度のものから、生長点が褐変枯死し、芯が止まり、品質低下を招くものまで様々な程度のものが発生します。特に ‘ワインフラッシュ’ では葉先枯れ症が発生しやすく、‘チェリー・レッド’ ‘白小輪(仮称)’ でも発生がみられます。発生の直接的原因はカルシウム欠乏ですが、曇雨天が続いた後の晴天時や、6~ 7月期の天候不順により、軟弱な生育をした場合に多く発生します。発生までは、カルシウム剤の葉面散布等の効果も期待できますが、発生期の葉面散布は葉先枯れ症の発生を助長する傾向があるので注意が必要です。葉先枯れ症対策として、これといった有効な方法は現在のところありませんが、換気を図り、軟弱な生育を予防することが一番の対策です。平坦地では4月下旬以降ハウスを開放し、がっしりした株に育てます。

写真 -25 分枝摘除後の草姿写真 -24 発蕾前の分枝の発生状況

摘除摘除

写真 -26 軽度の葉先枯れ症(この程度では実害はない)

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

⑤病害虫防除 この時期発生する病害虫としては、アザミウマ類、ヨトウガ類、株腐れ病、灰色かび病、モザイク病等があります。(P.29参照) 県オリジナル品種の中で ‘SOチェリー・レッドリング’ ‘SOチェリー・ブルーリング’ の 2品種は、アザミウマ類の被害を受けやすいので、生育初期からの防除が必要です。

(4) 発蕾から収穫までの管理①かん水  発蕾後も土壌表面が乾いてから十分なかん水を行いますが、かん水間隔は徐々に広げていきます。特に、‘ワインフラッシュ’ は生育旺盛で軟弱になりやすいため、他の県オリジナル品種より乾き気味の管理とし、発蕾以降はかん水を控えます。

②追肥 この時期の追肥は行いません。③分枝整理 発蕾後の分枝整理は、上位から発生した分枝で、花蕾の着いていない弱い枝を摘除します。

写真 -28 重度の葉先枯れ症(生長点の壊死等により正常な切り花は望めない)

表 -4 圃場の水分管理の目安

品種名 定植~抽だい 生育初期 生育中期 発蕾期 開花期

‘ニューパープル’ 多 多 多~中 中 少

‘ワインフラッシュ’ 多 多 多~中 少 無その他県オリジナル品種 多 多 多~中 多~中 少注)県オリジナル品種は固定種です。F1品種に比べ多くの水分を必要とします。  (水分が不足すると切り花長が確保できません。注意しましょう。)

写真 -27 中度の葉先枯れ症(収穫時に葉先の褐変がやや目立つ)

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

④花蕾整理 1番花は発蕾後、早期に摘蕾し、上位節から発生する分枝の生育を助けます(写真Ⅱ-32、Ⅱ-33参照)。 主枝の上位から発生する分枝数が不足する場合(3~ 4本に達しない)は、節の両方から側枝が発生している分枝の頂花を摘除し、分枝の本数を確保します(写真Ⅱ-34参照)。 また、花蕾が分枝の頂花より下の節位にみられる場合には、これらを摘除します(写真Ⅱ-35参照)

写真 -29 摘除する弱い分枝

写真 -31 分枝整理が十分でない場合の草姿(分枝の強弱があり、花蕾のない無駄な分枝が多い)

写真 -30 分枝整理を行った場合の草姿(花蕾のない無駄な分枝がない)

不要な弱い分枝

写真 -33 摘蕾の遅れた1番花写真 -32 1番花の摘蕾期

(発蕾後できるだけ早く摘蕾する)

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

⑤温度管理 通風に心がけ、涼温管理に努めます。⑥病害虫防除 この時期発生する病害虫としては、アザミウマ類、ヨトウガ類、青かび根腐れ病、モザイク病等があります。特に、アザミウマ類の発生が多く、花弁の被害が出やすい時期です。耕種的防除を行いつつ、定期的な農薬散布を行います(p.29参照)。⑦収穫、出荷 開花数が出荷規格以上に達したものを収穫します。収穫は日中の高温時をさけ、できるだけ早朝の涼しい時間帯に行います。

写真 -35 摘除する花蕾(頂花より下の節位から発生した花蕾は摘除する)

写真 -34 分枝が不足する場合の分枝確保法上位分枝数が不足する場合には、節の両方から側枝が発生している分枝の頂花を摘除し、2本の分枝を確保する

写真 -37 分枝・花蕾整理後写真 -36 分枝・花蕾整理前

残す

摘除

残す摘除

( )

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

2 F1 品種の栽培管理

1)平坦地の6~ 7月出し栽培

 平坦部で最も一般的に栽培されている作型です。生育初期が低温に遭遇し、到花日数が長くなるため、ボリュームのある切り花が生産できます。

(1) 作型のポイント

(2) 主な品種の紹介 極早生~早生の F1品種(ピッコロ系、キャンディ系等)で、日持ち性や花色発現が良いもの、茎の硬いもの、時代のニーズを捉えた品種を選定します。

(3) 播種及び育苗管理①播種 9~11月に播種し、播種当日から種子冷蔵を10℃で30~ 40日間行います。この処理により、発芽が揃い、育苗時の高温によるロゼット化が回避できます(p.9参照)。 10月以降の育苗は年間で最も低温、短日期になるため、電熱温床などの加温装置が必要です。②育苗管理 出庫後から発芽まではフィルム被覆による保温と電熱温床で20~ 23℃を確保し、発芽を揃えます。発芽が揃ったら、被覆したフィルムを徐々に取り除き、夜温10~15℃、昼温20~ 25℃を保ちます。その後は育苗トレイの表面が乾燥しないようにかん水します。かん水は温度確保しやすい昼間に行い、地温と温度差の小さい水を用います。

(4) 定植から収穫までの管理①定植準備 定植2週間前には定植床にトンネルを設置し、地温を確保し、定植時の温度ショックを和らげます。その他は、県オリジナル品種の栽培に準じます(p.12)。 基肥は、有機質肥料などの緩効性肥料を主体とし、a当たり窒素、リン酸、カリの各成分量は1.5

作 型 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 126月出し栽培

(種子冷蔵あり) ● ◎(種子冷蔵なし) ● ◎

7月出し栽培(種子冷蔵あり) ◎ ●(種子冷蔵なし) ◎ ●

● 播種  種子冷蔵期間  育苗期間  ◎ 定植  収穫

図 - 4 作型図

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

~2.0kg/aとします。②定植 定植時期は12月中旬~2月中旬で、定植適期は本葉 2.5 対です。低温期に定植する場合は、定植1週間前に育苗温度を下げたり、かん水量を減らすなどして、苗の順化を十分に行います。苗の順化は生育遅延やロゼット化、低節位からの分枝発生などを防ぐ上で重要な作業です。栽植密度は、県オリジナル品種に準じます(p.12)。③かん水 定植直後は十分にかん水し、プラグと土をしっかり馴染ませます。低温期に、活着までのかん水を過剰に行うと新根の発生に逆効果なので、土壌表面が乾燥しない程度に行います。活着以降から花芽分化期頃までは土壌水分が不足しないように、土壌が若干湿っている程度が良く、かん水は土壌の乾き具合や日中のしおれなどを目安に行います。また、かん水は天候の良い日の午前中に行い、夕方には余分な水分が葉に残っていないようにすることで、病害の発生を予防します。 発蕾期以降は、切り花を硬くするためにかん水を徐々に控えます。その場合、1回あたりのかん水量は一定とし、かん水間隔で水分を調整します。④温度管理 定植時からトンネルと内張りで保温し、最低夜温は5℃を目標とします。氷点下になる恐れがあるときは、ストーブ等の補助加温を入れます。2月後半からは日射量が増加し、気温が上昇してくるので昼温が25℃以上にならないように、こまめに換気をします。発蕾期以降は高温により上位節間や花首が伸長しやすくなるので、換気を十分に図ります。⑤追肥 追肥は生育状況を見ながら行いますが、品種による葉色や吸肥性の違い、生育ステージ、基肥の種類、土質などを考慮した上で行います。なお、一般的に淡色系品種の葉色は濃色系品種より薄くなる傾向があります。1回あたりの追肥量は窒素成分量で0.1kg/aとし、基肥との総量で多くともa当たり2.0kg 以下となるように数回に分けて行います。⑥摘蕾 開花輪数とボリューム確保のため、1番花および孫芽の摘蕾は、小豆大のうちに必ず行います。⑦病害虫防除 p.29参照⑧収穫、出荷 p.33参照

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

2)平坦地の9~ 10月出し栽培

(1) 作型のポイント この作型は、定植から収穫までの期間がどの作型よりも短く、3か月程度で出荷が可能です。育苗期間が高温期にあたるので、「ロゼット化しにくい品種」と「種子冷蔵」を組み合わせてロゼット化を回避し、高品質生産を行います。

(2) 主な品種の紹介 育苗時に高温に遭遇してもロゼット化しにくい品種を必ず用います(表Ⅱ-5)。なお、その他の品種を使用したい場合は、各指導機関に相談してください。

(3) 播種及び育苗管理①播種準備 育苗期間が高温期にあたるので、遮光と遮熱のため育苗施設を覆う黒寒冷紗等を準備します。育苗トレイは定植予定本数に対して1割多く準備します。 その他は、県オリジナル品種の栽培に準じます(p.8)。②播種 用土詰めや播種作業は直射日光が当たらない場所で行い、播種後すぐに種子冷蔵を開始します(p.9参照)。なお、トルコギキョウの種子は、吸水開始後、強日照条件に3~ 4時間以上遭遇すると種子冷蔵中に発芽し、成苗率が極端に低下する恐れがあるので、播種後は速やかに種子冷蔵を行います。③育苗管理 必ず育苗施設を黒寒冷紗等で被覆し、通風を良くし、昼夜を通して施設内の温度を可能な限り下げます。 また、ミストかん水等で育苗トレイの表面を乾かさないようにします。特に、種子冷蔵終了後2

作 型 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

9~10月出し栽培 ● ◎

● 播種  種子冷蔵期間  育苗期間  ◎ 定植  収穫

図 -5 作型図

表 -5 適応品種

花色 品種名

紫 系 ‘アリスパープル’、‘メロウパープル’、‘メロウパープルピコ’

桃 系 ‘つくしの羽衣’、‘あずまの小春’、‘メロウピンク’、‘アリスピンク’、‘フローネピンクフラッシュ’

白黄系 ‘あすかの萌黄’、‘アリスホワイト’、‘ピッコログリーン’

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

週間は、高温で最もロゼット感応しやすい時期なので、温度(昼温25℃、夜温15℃を目標)や水分管理には細心の注意を払います。種子冷蔵したトルコギキョウは発芽と生育が早く、出庫後1週間で子葉が展開し、定植適期(本葉2対展開期)まで35~ 40日と非常に短期間です。 追肥は、県オリジナル品種の栽培に準じます(p.10)。

(4)定植から収穫までの管理①定植準備 基肥は速効性肥料を中心に、a当たり窒素、リン酸、カリの各成分量を1.5~ 1.8kg/aとし、窒素成分は硝酸態窒素を主体とします。なお、肥効調整型肥料(被覆タイプ肥料)は、発蕾期以降の肥効によりブラスチングを発生する恐れがあるので使用しません。 定植準備を始める前から、施設を遮光資材(遮光率50%)で全面被覆し、地温を下げ、遅くとも定植予定日の1週間前までには準備を済ませます。 その他は、県オリジナル品種の栽培に準じます(p.12)。②定植 定植適期は本葉2対です。しかし、この時期は気温が高いため苗の生長が早く、定植適期の状態は3~ 5日程度しかないので、定植は本葉1.5対期から開始し、本葉2.5対までに必ず終えるようにします。本葉2.5対を過ぎた苗や極端に生育が遅い苗などは切り花のボリュームが確保できないので定植しません。 定植後はすぐに(2時間以内)十分にかん水をし、活着を促進します。栽植密度は、県オリジナル品種に準じます(p.12)。

写真 -38 圃場準備の様子

〈 参考 適期に定植できないときは… 〉

 圃場準備が間に合わないなど、適期に定植できない場合は緊急的な方法として冷蔵庫内で苗を保存し、苗の生育を遅らせることができます。方法は、入庫前にしっかりとかん水した育苗トレイを種子冷蔵と同様に冷蔵庫内に入れ、温度10℃で保存します。これで5日程度保存できます。出庫後は、育苗トレイを明るい日陰に半日から一日置くなどして、急激な日射量と温度の変化を与えないようにします。

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

③かん水 定植後2週間までは毎日しっかりかん水し、土壌表面が乾かないようします。この場合、かん水を1日2~ 3回に分け、早朝1回目のかん水はしっかりと、昼間と3時頃のかん水はやや控えて行うことにより、気温や地温を下げる効果が期待できます。また、夜温が25℃を超える日は、夕方に葉水程度のかん水を行うと生育促進を図ることができます。 抽だい後は生育に応じて徐々にかん水量やかん水回数を減らし、発蕾期以降は、切り花を硬くするためにかん水をさらに控えます。 なお、切り花長を確保するために、2~3番花を摘蕾する場合は、かん水を控える時期を遅らせて、4番花以降の花蕾の充実を図ります。④温度管理 定植から発蕾までは一年で最も暑い時期です。遮光、ハウスサイド・入口等の開放や循環扇の設置などにより可能な限り施設内の温度を下げます。遮光は定植後2週間頃までとします。 発蕾期以降も通風を良好にし、室温を下げます。9月以降、夜温が20℃を切るようになれば、夜間はサイドを閉め、収穫期には保温(加温)により15~18℃以上を確保します。⑤追肥 追肥は、定植後1か月まで、週に1回、a当たり窒素成分で0.1kg(窒素濃度300ppmを a当たり300リットル)の液肥をかん水に併せて行います。 この作型では定植後3週間頃には花芽分化を始めるので、それまでの生育が最終的な切り花品質を決定します。したがって、追肥は定植後1か月までの初期重点で行い、定植直後から旺盛に生育させます。

⑥摘蕾 1番花は小豆大のうちに必ず摘み取り、開花輪数とボリュームの確保を図ります。また、草丈確保のために2~ 3番花の摘蕾も必要となる場合があります。 なお、気象条件等により花蕾の充実が遅れ、花蕾数が出荷基準に達しないと予想される場合は無理な摘蕾を避けます。⑦病害虫防除 この作型では、タバコガ類やヨトウ類が発生しやすく、成育も早いので、黄色灯を設置したり、

写真 -39 定植後約30日の様子

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

発生消長を把握し適期防除を徹底します。特に、抽だい初期に芯を食害されると収穫できなくなるので、耕種的防除と予防的薬剤防除を併せて行います(p.29参照)。⑧収穫、出荷 県オリジナル品種に準じます(p.33)。

〈 参考 短日処理による切り花の品質向上方法 〉

 平坦地の9~10月出し栽培は、ロゼット化しにくい品種を種子冷蔵することで、抽だいを促進させる栽培方法です。しかし、定植前後の気象条件が平年値より高温になる場合は、根がしっかり張らないうちに抽だいが始まるため、草丈が十分に確保できないまま1番花が開花したり、軟弱徒長で茎が細くなる恐れがあります。そこで、切り花品質の向上と開花期を遅らせる方法として、短日処理を利用した生育開花調整技術を紹介します。

 短日処理技術とは、花芽分化に必要な日長を人為的に短くし、花芽分化を遅らせ、節数を増加させることで、切り花重を増やし、開花期を遅らせる技術です。 具体的な方法は、夕方5時半から朝8時半の間、畝を100%遮光のシルバーポリフィルムでトンネル状に被覆し、トルコギキョウに夜の時間を15時間と勘違いさせます。この処理は、7月中旬に定植する場合、定植後5日から2週間行います。  留意点としては、トンネルの高さを土壌表面から60cm以上とすること、短日処理中は施設全体の遮光(黒寒冷紗)を継続的に行い、トンネル被覆時における土壌表面の温度が夜間25℃以下、開ける直前には35℃以下になるようにします。

写真 -40 短日処理の様子

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

3)中山間地の9~ 10月出し栽培

(1)作型のポイント 育苗期間が3~ 6月となるため、3月の育苗では温床設備が必要です。 種子冷蔵を行うことで育苗期間が短縮され、定植後の生育も旺盛になります。 ハウスが高温になる場合は、遮光資材が必要です。 9月中旬以降は気温低下・寡日照によって切り花品質および開花率が低下します。3時間程度の電照や保温・加温により切り花品質が向上します。

(2) 主な品種の紹介 品種は中生~晩生品種を用いると切り花長が長くなります。つくしシリーズやエクセルシリーズなどが適します。

(3) 播種及び育苗管理①播種 県オリジナル品種に準じます(p.8)。 3~ 4月に播種する作型では、種子冷蔵を10℃で35日間行うことで、発芽が揃い、育苗時の高温によるロゼット化が回避できます(p.9参照)。②育苗管理 発芽適温は20~ 25℃です。低温期には電熱温床などで温度を確保します。 育苗中は、昼温25℃、夜温15℃で管理します。育苗中の温度が高いほど生育は良くなりますが、軟弱徒長になりやすいため、できるだけ温度の低い環境でかん水を控えるなど抑制的な育苗管理を行って苗の充実を図ります。高温で育苗するとロゼットしやすく、早期開花により切り花品質が低下するので注意します。 かん水は、噴霧設備によるミストかん水が便利ですが、底面給水で育苗することも可能です。 底面給水育苗では、育苗トレイが1cm程度浸かるまで水を貯めて、用土が十分吸水したところで速やかに排水します。育苗トレイの下には角材等を敷き、エアープルーニング(育苗トレイの底

作 型 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 129月出し栽培

(種子冷蔵あり) ● ◎(種子冷蔵なし) ● ◎

10月出し栽培(種子冷蔵あり) ● ◎(種子冷蔵なし) ● ◎

● 播種  種子冷蔵期間  育苗期間  ◎ 定植  収穫

図 -6 作型図

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

部を空気にさらす方法)することで根鉢ができて苗が抜き取りやすくなります。また、本葉展開以後は底面給水によるかん水は中止し、ジョウロやハス口(目の細かなもの)によるかん水に切り替えます。

(4)定植から収穫までの管理①定植準備及び定植 県オリジナル品種に準じます(p.22)。②かん水 県オリジナル品種に準じます(p.23)。③温度管理 トルコギキョウの生育適温は、昼温25℃、夜温15℃が好適であり、花芽分化まではなるべく温度を低めに保つように努め、ボリュームを作ります。高温期はハウスをできるだけ開放し、高温・強日射時期には30~ 45%の遮光を行います。9月以降は徐々に気温が低下してくるので、夜温が20℃を切るようになれば、夜間はサイドを閉め、必要なら加温等を行い15℃以上を確保します。④追肥 県オリジナル品種に準じます(p.23)。⑤摘蕾 開花輪数の確保とボリューム確保のため、1番花の蕾が小豆大のうちに必ず摘み取ります。また、草丈確保のためには頂花だけでなく2~ 3番花の摘蕾も必要となる場合がありますが、気温が低い場合には早期にブラスチングが発生し、輪数が確保できない場合があるので注意します。⑥収穫、出荷 収穫適期は品種により異なりますが、3~ 5輪以上開花した時に、地際から切ります(p.33 参照)。

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

3 共通管理

1)土づくり

(1)土づくり 「土づくり」とは、根が健康に育ち、生育を良くするために行う地下部の環境整備です。良好な土壌環境は、健康な作物生育と品質向上の原点となります。 「土づくり」は、有機物散布や深耕等に手間がかかり、すぐに効果が表れないため敬遠されがちですが、トルコギキョウ栽培の正に基本であり、最も重要な作業です。 

(2)圃場選定・準備 土質は比較的選びませんが、栽培期間が長いので排水、保水性が良く、腐植質に富み地力のある圃場が適しています。圃場は、少なくとも定植1か月前までに有機質を a当たり200kg 以上全面散布し、30cm位の深さに耕起して土壌改善と肥効の持続を促します。 圃場耕起の際は、土壌に適度な水分が含まれた状態で行います。また、土壌診断を行い、pHを6.5程度に矯正しておくことが重要です。 施設内で連作する時などは、立枯れ性病害を防ぐために土壌消毒を行います。

(3)各種有機物の特性と施用量 有機物の施用は、「土づくり」で最も大切な管理作業です。トルコギキョウ栽培では、家畜ふんを含む有機物等の多施用は土壌の塩類濃度上昇や塩基バランスを崩す場合があるので、各種有機物の特徴、特性を理解し、適正な施用を行うことが連作障害を回避する面からも大切です。

表 -6 各種有機物の特性

有機物の種類 原材料

施用効果 成分量(kg/t) 有効成分量(kg/t)

施用上の注意肥料的

化学性改良

物理的改良

窒素

リン酸

カリ

石灰

苦土

窒素

リン酸

カリ

堆肥 稲わら、麦わら等 中 小 中 4 2 4 5 1 1 1 4 安心して施用できる

きゅう肥牛糞尿+敷料豚糞尿+敷料鶏糞+わら等

中 中 中 7 7 7 8 3 2 4 7肥料効果を考えて施用量を決定する大 大 小 14 20 11 19 6 10 14 10

大 大 小 18 32 16 69 8 12 22 15

木質混合堆肥牛糞尿+おがくず豚糞尿+おがくず鶏糞+おがくず

中 中 大 6 6 6 6 3 2 3 5未熟木質があると虫害が発生しやすい中 中 大 9 15 8 15 5 3 9 7

中 中 大 9 19 10 43 5 3 12 9

バーク堆肥 樹皮+おがくず等 小 小 大 5 3 3 11 2 0 2 2 同上

もみ殻堆肥 もみ殻主体 小 小 大 5 6 5 7 1 1 3 4 物理性の改良中心

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(4)土壌の酸度矯正 施設内の土壌は、定期的な土壌診断により好適なpHに管理することが基本です。 土壌診断に依らない長年の慣行的な施肥は、石灰質資材やリン酸資材の多施用によって、土壌のアルカリ化を招くので必ず土壌診断を行います。

(5)適正 ECと塩類集積 施設花き栽培では多肥栽培になりやすく、塩類濃度の上昇(EC1.0dS/m以上)による活着不良、草姿の乱れ、葉色の異常、病害虫の発生等の障害が発生しやすくなるので、おおむね EC0.3 ~0.8dS/m程度が適正範囲です。 定期的な土壌診断がpHと同様に必要です。

表 -7 有機物施用量の目安

(t/10a)

牛糞堆肥 おがくず入り牛糞堆肥 豚糞堆肥 おがくず入

り豚糞堆肥もみ殻入り豚糞堆肥 乾燥鶏糞 わら堆肥 バーク堆肥

切り花類(施設) 3~5 1~ 5 1~ 2 1~ 4 1~ 2 0.3~ 0.4 0.5~ 5 1~ 3

表 -8 土壌が酸性の場合(酸性矯正用炭カル施用量の目安)

(kg/a)

土性 pH

5.0 5.2 5.4 5.6 5.8 6.0 6.2 6.4

砂壌土 38 33 28 23 18 13 8 2.5

壌土 51 44 37 30 24 17 10 3.5

注1)改良目標 pH6.5(H2O)に要するa当たりkg注 2)腐植が5%以上の場合は表数値の50%増。埴壌土、埴土は20%増、50%増とする。

表 -9 土壌がアルカリ性の場合(pH調整剤使用の目安)

pH調整資材 pHを1.0 下げるための量(kg/a) 施用上の注意

未調整ピートモス 120~130 pH3程度で緩衝能が大きい

注1)作土深10cm換算注2)使用量は壌土条件により異なるので、一度に矯正するのではなく段階的に矯正する。

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Ⅱ.栽培管理 Ⅱ.栽培管理

2)病害虫防除

(1)アザミウマ類①生態  展葉期~開花期にかけて付近の雑草などから飛来し、新芽を吸汁したり、花弁に潜り込んで産卵、加害します。加害された葉はケロイド状になり、花弁はかすり状に白~褐色に変色します。②防除のポイント 発生初期に防除を徹底するとともに、定期的に予防散布をします。圃場周辺の雑草は開花前に刈り取っておきます。

(2)ハスモンヨトウ、ヨトウガ、タバコガ類①生態 ハスモンヨトウ、ヨトウガとも若齢幼虫までは葉裏に群がって表皮のみ残して葉肉を食害します。成虫が卵塊を産みつけるので被害は局部的に発生します。中齢以降、単独で食害するようになり、主として夜間に葉や蕾を食べます。 タバコガ類は、卵を植物体上に1個ずつ産みつけます。幼虫は、主に蕾や花の中に入って食害するため、花弁に穴があき、商品価値をなくすため被害が大きくなります。

写真 -42 葉の被害写真 -41 花の被害

写真 -44 黄色灯写真 -43 食害の様子

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②防除のポイント 薬剤による防除は、中齢以降になると効果が劣るので、早期発見に努め、若齢幼虫期(加害初期)に重点を置きます。また、集団で食害している若齢幼虫を被害葉とともに切り取ってつぶします。耕種的防除方法として、ハウスの開口部を防虫ネット(4mm目合以下)で被覆し、侵入を防ぐか、施設内に黄色灯を設置します。

(3)モザイク病(ウイルス病)①病徴 葉に白色のえそ斑点を生じるものが主流で、このえそは茎に出ると立枯れ症状になります。また、感染するウイルスの違いにより葉にアザミ状や流線状、稲妻紋様の退緑斑点を生じます。 ②防除のポイント  このウイルスは、施設外から入ってきたアブラムシにより行きずり感染するものが大部分なので、圃場でアブラムシが発生していなくてもモザイク病は発生します。したがって、殺虫剤によるアブラムシの防除は効果が低く、多発地では施設の開口部を寒冷紗等で覆い、保毒アブラムシを入れないようにします。発病株は焼却処分とします。

(4)灰色かび病①病徴 花弁では直径2~ 3mmの小斑点を生じ、しだいに拡大して水浸状となり、花弁全体が腐敗します。茎葉には、花芽分化期~開花期に多く発生し、初め灰褐色になり、しだいに褐変して病斑に灰色のかびを生じ、被害部分より上部が枯死します。特に葉先枯れ症(p.32参照)によって壊死した部分で多発します。 ②防除のポイント 本病は20℃前後の多湿時に大量の胞子を作り空気伝染するので、栽植間隔を広げたり、適正な

写真 -45 キュウリモザイクウイルス(CMV)の病微

写真 -47 蕾の病徴写真 -46 茎の病徴

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施肥およびかん水、強制換気等により、施設内が低温、過湿にならないようにします。通路にもみ殻を敷くなどしても発病防止に効果があります。発病株は焼却処分とします。

(5)斑点病①病徴 主に、育苗中に発生します。初め、葉に小さな白色斑点となって発病し、やがて斑点は拡大し、その数も増加します。斑点は、初めは白いですが、やがて黒いすす状のものがつきます。症状が進むと、斑点同士が融合し、地際部分に発病し、苗立枯れとなり、育苗トレイ内で坪枯れ状になることもあります。②防除のポイント  本病は過湿条件で多発するため、本葉展開期以降、過湿にならないようにし、また苗の葉が重なり合う前の早めの定植を心がけます。定植時に病斑のある苗は植え付けないようにします。なお、県オリジナル品種は、F1品種と比較してやや発生しやすい傾向にあります。

(6)立枯病、茎腐れ病、根腐れ病等①病徴 栽培圃場内で散見的に立枯れ症株が発生します。これらのほとんどは、根または地際部を侵される土壌伝染性の病害で、立枯病、茎腐れ病はフザリウム属菌、根腐れ病はピシウム属菌、株腐れ病はリゾクトニア属菌、青かび根腐れ病はペニシリウム属菌によって発生します。②防除のポイント 通常の土壌消毒で同時防除されますが、栽培中に発生した場合は病原菌の種類により防除方法が異なるため、病徴を専門書で確認または指導機関に診断を依頼して、的確な防除を行います。

写真 -48 病微

写真 -50 株腐れ病写真 -49 青かび根腐れ病

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3)生理障害

(1) 葉先枯れ症 上位節にある組織の柔らかい葉の先が、白ないし褐色に枯れる症状。症状が軽い場合は、収穫期に中位節の葉先が若干褐色になる程度ですが、激発した場合は生長点が壊死し、草姿が乱れます(p.15参照)。 発生は、軟弱な生育となる花芽分化後の節間伸長期に高温、強日射、ハウスの換気不足等の条件が重なると起きます。特に、6~7月の梅雨期間中や高温多湿の夜が明けた「梅雨の晴れ間」で激発します。 対策として、葉先枯れ症が発生しにくい品種を用いるのが重要です。しかし、発生が予想される場合は、予め遮光したり、ハウス内に循環扇を設置し、通風を良好にするなどします。また、カルシウムの葉面散布を定植1か月後から2週間毎に行うと発生が軽減されます。

(2) 茎折れ 発蕾期以降、上位節間や花柄が急激に伸びる時期に極端な乾燥後、過度のかん水を行うと発生しやすくなります。また、日中の高温でしおれ、夜間回復することを繰り返すと機械的に折れる場合もあります。発生には品種間差が認められ、草丈が長く、生育の盛んな品種に多く発生します。 対策としては、発生しにくい品種を選定し、密植を避けるとともに、発蕾期以降は蒸らさないよう換気を十分に図り、過度なかん水を控えます。 なお、開花期以降、同様な症状で、茎が非常にもろく折れやすくなることがあります。これは茎中心の髄部分が大きくなり、相対的に表皮の割合が低下したため、構造的に弱くなったことが原因です。対策は花芽分化以降の土壌水分と肥料が急激に減少しないような管理をします。

(3) ブラスチング 花蕾が生長途中で生育停止し、黄変する現象で、10月以降の平坦地の秋出し栽培や中山間地の抑制栽培で発生しやすくなります。原因は、出蕾期以降の低日射、低温等が花蕾の発達を阻害させるからと言われています。対策は、栽植間隔を広げ、株全体に光が当たるようにするとともに、加温を18℃以上に設定し、かつ孫芽の摘蕾処理を早期に行い、花芽を充実させます。また、電照処理(18時間日長)による防止効果も認められています。

写真 -52 ブラスチング写真 -51 茎折れ

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Ⅲ.出荷調整 Ⅲ.出荷調整

Ⅲ.出荷調整

1 出荷調整作業

1)出荷作業に当たって

 花き経営では出荷作業も花き評価を高めるために重要な技術となっています。「品質と日持ちの良い切り花を安心して購入したい」という消費者の要求に応えるには収穫、調整、選別、荷造り、予冷等一連の出荷作業を的確に行う必要があります。また、この要求に対応することにより産地評価を高めることが可能となります。特に本県の花は夏~秋の高温期に出荷する場合が多く、「高品質生産」と「品質維持」による「高品質供給」に努める必要があります。    2)トルコギキョウの日持ち特性

 トルコギキョウは、エチレンに対する感受性が比較的高いので、花の老化を遅延させるには鮮度保持剤(STSをはじめとしたエチレン阻害剤)による前処理が効果的です。また、蕾の開花を促進するためには糖を含む品質保持剤(抗菌剤)での後処理が有効であるとされています。この他、受粉や柱頭及び花柱が障害を受けることによっても日持ちが短縮するとされ、収穫から出荷、さらに流通段階を通して、なるべく丁寧に取り扱うことが望まれます。また、本県の場合、出荷期が高温期であるため、出荷作業は涼温下での作業が望ましく、さらに予冷から流通段階での一貫したコールドチェーン(10~15℃)の整備が望まれています。 以上のことを基にして、トルコギキョウの出荷作業の手順と留意点は下記のとおりです(県オリジナル品種の収穫調整方法については表Ⅲ-1、出荷規格は表Ⅲ-2及び表Ⅲ-3を参照)。

3)トルコギキョウの出荷作業手順と留意点

(1) 収穫 適切な「切り前」(収穫適期)で収穫します。 一般的な切り前は、蕾を含めた全小花のうち、3分の1が開花し、3分の1が開花直前の蕾の状態で収穫します。なお、開花が期待できない小さな蕾(小花蕾)や、すでに開葯してしまった花(ふけ花)は、老化が進行しているため取り除きます。 県オリジナル品種では、独自の出荷規格があり、開花輪数及び着蕾数が決まっているので、これに準じます(写真Ⅲ-1)。  収穫は、朝夕の涼しい時間帯に良く切れる刃物を用いて採花し、収穫後は、素早く風の当たらない日陰に移動させます。

(2) 調整・鮮度保持剤処理(前処理) できるだけ早く鮮度保持剤で処理を行います。0.1~ 0.2mMの濃度のSTS処理により日持ちが延長します。

写真 -1 県オリジナル品種の切り前

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Ⅲ.出荷調整 Ⅲ.出荷調整

 県オリジナル品種では、クリザールK-20Cの1000倍液で10時間処理を推奨しています。 なお、鮮度保持剤は、清潔な容器に毎回必要量を調整して取り替えます。処理は常温で行い、処理後は清水につけて保管します。 調整は、出荷規格に合わせ、下葉かき、小花蕾・ふけ花等の摘蕾、摘花を行うとともに選別を徹底します。作業は直射日光の当たらない選花場で行い、衛生管理も徹底します。また、作業者に合わせた作業台、椅子等を準備するなど、良好な作業環境の整備に努めます。

(3) 荷造り 出荷規格に合わせて箱詰めします。出荷箱には、10本をゴムバンド等で結束して1束とし、有孔スリーブ等の花包みを使用して規定の入り数で箱詰めします。 最近は、日持ち性向上のためにバケット流通等の湿式輸送に取り組む事例が増えています。湿式輸送では切り花に絶えず水分が補給されるため、鮮度が高い状態を維持できます。 本県では、平成16年度に湿式輸送が可能な県統一出荷箱を作製し、品質保持剤としてクリザールバケット500倍液の使用を推奨しています。

(4) 予冷(保管) 出荷までは、10~15℃の冷蔵庫等で予冷、保管します。7℃以下の低温での保管は、結露や吸水不良をおこしやすくなるので注意します。

(5) 出荷 出荷は、集荷場または市場の決められた時間に行います。また、輸送中に荷傷みしないよう、風、雨、振動等に気をつけます。

〈 参考 トルコギキョウ県統一出荷箱の特徴 〉

 本県では平成16年度に高品質花き供給に関する情報収集、試作を行いながら、生産者、JA全農しまね、メーカー等と協議を重ね、次のような特徴を持つ出荷箱を作製しました。1)湿式(縦)、乾式(横)両輸送に対応可能な出荷箱 湿式輸送が必要な市場には湿式方式で出荷し、必要性の少ない市場には従来通りの乾式方式で出荷が可能です。湿式輸送ではビニル袋装着による箱一体組立方式「バッグボックス」を考案し、箱組立の簡易化と低コスト、省資源化を図りました。2)通風穴の設置と片面扉の採用 箱上面、側面に通風穴を開けることにより、湿式箱で問題となる蒸れを防止しました。また、品質低下の防止と花詰め作業を容易にするために片面扉としました。3)草丈80 cmが 40本収納できる箱サイズ 縦箱としては最大サイズ(H900mm×W340mm×D180mm)ですが、少量ロットでの出荷も可能です。4)エコロジー(再利用)を考慮した材質 湿式輸送のために生じるゴミの減量化に努めました。箱はステープルを使用せず、糊留めとしました。5)その他の工夫として、作業性、デザイン、低コスト化を強く意識して作製しました。

写真 -2県統一出荷箱

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Ⅲ.出荷調整 Ⅲ.出荷調整

表 -1 トルコギキョウ県オリジナル品種の収穫調整方法

作業名 作業項目 作  業  内  容 必 要 資 材

収 穫 収穫時期 可能な限り早朝の涼しい時間帯に収穫する。収穫後は、素早く風の当たらない日陰に移動し、できるだけ早く鮮度保持処理を開始する。

調 整 調整手順 ①収穫物の鮮度保持処理を行う。  クリザールK-20Cの1000倍液で10時間処理を行う(常温で処理)。処理後は、水に漬けて保管する。②下葉かきを行う。 下葉は、切り花長の約1/4程度を除去する。③小花蕾及び咲き過ぎの花を摘除する。  できるだけはさみを使用せず、枝元から摘除する。‘ニューパープル’、‘ホワイトエース’、‘ワインフラッシュ’、‘赤八重’ は1枝に1花1蕾を基本とし、小花は摘除する。‘ニューパープル’、‘ワインフラッシュ’ は、柱頭が全開した花を摘除する。  ‘チェリーシリーズ’、‘白小輪’ は、1枝に2花1~ 2蕾を基本とし、小花は摘除する。④開花した花の先端で長さを50~ 80cmに揃える。⑤出荷規格表に準じて規格分けをする。⑥10本1束で結束する。

クリザールK-20C

輪ゴム310番

保 管 温度・出庫後の管理

10~15℃の冷蔵庫で保管する(7℃以下にしない)。出庫後は、涼しい場所に置き、水滴がなくなってから包装、箱詰めする。

箱詰め 包  装出荷箱作成

品質保持剤

荷造り(花詰め)

不織布で包装する。出荷箱を作成する。①後ろふたを閉め、荷造りテープで3カ所留める。②後ろタレを下ろし、荷造りテープで2カ所留める。③後面フック右側(または左側)2カ所に輪ゴムをかける。④ビニル袋を取り付け、品質保持剤を入れる。  バケット内部にビニル袋をしっかり入れる。ビニル袋の口を後面の穴から通し、フックにかけ、荷造りテープで留める。  ビニル袋へ品質保持剤(クリザールバケット500倍液、500cc)を入れる。①花を入れる。  出荷規格に準じた詰め数を入れる。花が底面に確実につくようセットする。この際、切り口を揃え、ビニル袋に穴が開かないよう気をつける。②前ふたを閉め、荷造りテープで3カ所留める。③オリジナルシールを貼る。

不織布70cm×45cm出荷箱荷造りテープ(白)

輪ゴム310番ビニル袋(14号、0.08mm)

クリザールバケット

オリジナルシール

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Ⅲ.出荷調整 Ⅲ.出荷調整

図 -2 花蕾整理の方法(咲きすぎた場合)

図 -1 花蕾整理の方法(通常の場合)

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Ⅲ.出荷調整 Ⅲ.出荷調整

2 出荷規格

1)県オリジナル品種

表 -2 県オリジナル品種の出荷規格

(1) 等級 (品質)

評価項目等  級

秀 優 良

草 姿

( 葉・花・茎の バランス  )

葉の光沢、形状とも良好で、花・茎・葉・側枝のバランスが特に良好なもの。 茎の曲がりがなく、堅くしまっており、花蕾部の垂れがないもの。

葉の光沢、形状とも良好で、花・茎・葉・側枝のバランスが良好なもの。茎の曲がりが少なく、花蕾部の垂れがないもの。

優品に次ぐもの。

花・蕾(花型・花色)

品種本来の特性をそなえ、花色が鮮明で、痛んだ花弁もなく、花首の垂れがないもの。開花した花と蕾のバランスが特に良いもの。

品種本来の特性をそなえ、花色が鮮明で、痛んだ花弁も少なく、花首の垂れがないもの。 開花した花と蕾のバランスが良いもの。

優品に次ぐもの。

病虫害被害 認められないもの。 ほとんど認められないもの。 目立たないもの。

損 傷

( 日焼け・薬害 ・すり傷等  )損傷が認められないもの。 葉先枯れ、摘蕾、側枝除去跡が目立たないもの。

損傷がほとんど認められないもの。 葉先枯れ、摘蕾、側枝除去跡があまり目立たないもの。

損傷が僅かに認められるもの。 葉先枯れ、摘蕾、側枝除去跡がやや目立つもの。

(2) 階級(草丈)・等級(輪数)

品 種 名 階 級( 草 丈 )

等 級 (輪 数) 備 考(着花・着蕾数)秀 優・良

‘ニューパープル’ 80 cm 5輪以上 4輪

1枝に1花・ 1蕾を基本とする。

‘ホワイトエース’ 70 cm 5輪以上 4輪

‘ワインフラッシュ’ 60 cm 4輪以上 3輪

‘赤八重(仮称)’ 50 cm 3輪以上 2輪

品 種 名 階 級( 草 丈 )

等 級 (輪 数) 備 考(着花・着蕾数)秀 優・良

‘チェリー・レッド’ 80 cm 8輪以上 7~ 6輪

1枝に 2花・ 1~ 2蕾を基本とする。

‘チェリー・レッドリング’ 70 cm 8輪以上 7~ 6輪

‘チェリー・ブルーリング’ 60 cm 6輪以上 5~ 6輪

‘白小輪(仮称)’ 50 cm 4輪以上 3輪

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Ⅲ.出荷調整 Ⅲ.出荷調整

2)F1品種

表 -3 F1品種の出荷規格

(1) 等級 (品質)

評価項目等  級

秀 優 良

草 姿

( 葉・花・茎の バランス  )

葉の光沢、形状とも良好で、花・茎・葉・側枝のバランスが特に良好なもの。茎の曲がりがなく、堅くしまっており、花蕾部の垂れがないもの。

葉の光沢、形状とも良好で、花・茎・葉・側枝のバランスが良好なもの。茎の曲がりが少なく、花蕾部の垂れがないもの。

優品に次ぐもの。

花・蕾(花型・花色)

品種本来の特性をそなえ、花色が鮮明で、痛んだ花弁もなく、花首の垂れがないもの。開花した花と蕾のバランスが特に良いもの。

品種本来の特性をそなえ、花色が鮮明で、痛んだ花弁も少なく、花首の垂れがないもの。 開花した花と蕾のバランスが良いもの。

優品に次ぐもの。

病虫害被害 認められないもの。 ほとんど認められないもの。 目立たないもの。

損 傷

( 日焼け・薬害 ・すり傷等  )損傷が認められないもの。 葉先枯れ、摘蕾、側枝除去跡が目立たないもの。

損傷がほとんど認められないもの。葉先枯れ、摘蕾、側枝除去跡があまり目立たないもの。

損傷が僅かに認められるもの。葉先枯れ、摘蕾、側枝除去跡がやや目立つもの。

(2) 階級 (草丈) 80 cm ・ 70 cm ・ 60 cm ・ 50 cmとする。

写真 -3 出荷調整作業

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Ⅳ.参考 Ⅳ.参考

Ⅳ.参考

1 トルコギキョウにおける県の取組状況

1)県全体の生産状況

 トルコギキョウは、県産切り花類のなかで、安定して伸びてきた品目の一つです。本県では、平坦地から中山間地まで、県下全域で栽培されています。 近年のトルコギキョウの生産状況については、図Ⅳ-1及び表Ⅳ-1のとおりです。なかでも、産出額については、平成13年以降、毎年順調に伸びています。また、平成15年産の10a当たり生産量は22千本と、平成11年産の1.2倍まで増加しています。

2)県内産地の状況

 本県のトルコギキョウは、主に松江圏域、木次圏域、出雲圏域、川本圏域で生産されています。各産地の状況を生産量でみると、奥出雲町、雲南市、出雲市、川本町の順で多く栽培されており、この4市町で県全体の78%を占めています。また、最近は、これまで栽培実績のなかった地域においても、トルコギキョウを導入する動きが出ています。 出荷市場については、県内市場だけでなく、広島や岡山、山口、大阪方面等に出荷されています。

図 -1 トルコギキョウの生産面積、生産量及び産出額の推移(H11~ 15年産:島根県農林水産部生産振興課調べ)

表 -1 平成15年産トルコギキョウの生産実績(島根県農林水産部生産振興課調べ)

栽培農家数(戸) 生産面積(a) 生産量(千本) 産出額(千円) 平均単価(円)

県オリジナル品種 32 77 79 6,352 80.4

 うち県内出荷分 - - 56 3,493 62.4

   県外出荷分 - - 23 2,859 124.3

F1品種 - 227 583 60,433 103.7

トルコギキョウ合計 62 304 662 66,785 100.9

注)-はデータなし

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Ⅳ.参考 Ⅳ.参考

3)県の振興方策

 県は、トルコギキョウの生産振興において、次のような取り組みを推進しています。 一つめは、「県オリジナル品種を活用した産地づくり」です。 県では、県内の育種家が育成した8品種(平成17年3月現在)を「県オリジナル品種」に位置付け、県内の生産者へ配付しています。この品種は、高温期でも茎の硬いしっかりした草姿が得られることから、主に県外市場において、高単価で取引されています。 また、県オリジナル品種は、市販のF1品種と栽培方法が異なるため、品種特性の把握やこの品種に適した栽培技術の習得が不可欠です。そのため、花振興センターでは、生産者や指導者等を対象とした研修会や検討会を開催することで、技術の普及定着に努めています。  2つめは、「高品質・安定生産技術の開発・普及」です。 県では、平坦地及び中山間地の気象条件を活かした作型を推進しています。具体的には、平坦地は6~7月出し栽培と9~10月出し栽培を、中山間地は冷涼な気候を活かした9~10月出し栽培を推進しています。 なかでも、9月以降の出荷については、需要が多い上に他産地との競合も少ないことから、全国的に安定した単価で取引される傾向にあります。 しかし、県産のトルコギキョウは、県オリジナル品種、F1品種ともに7~ 8月頃の出荷がほとんどです(表Ⅳ-2参照)。 そこで、農業試験場では、平成15年度に、種子低温処理による秋出し栽培技術を確立しました。 今後は、この技術の普及を早急に進めることで、継続かつ安定的な供給を進めます。

 3つめは、「高鮮度流通技術の確立」です。 県では、切り花の鮮度保持輸送を推進することで、日持ちの良い花きの供給に努めるとともに、商品の高付加価値化や消費者等に支持される花作りを目指しています。その中で、トルコギキョウの鮮度保持輸送については、平成15年度から川本圏域での取り組みが始まっており、主に県外市場において高い評価を得ているところです。また、平成16年度には、県統一の出荷箱が完成し、各地域への広がりが期待されています。

 今後は、これらの取り組みに力点をおくことで、高品質で安定供給のできる産地づくりを目指すとともに、トルコギキョウを活用した「島根の花」ブランドの確立を図ります。

表 -2 県産トルコギキョウの月別出荷実績(H16年産)

7月 8月 9月

出荷量(本) 8,120 8,390 2,910

平均単価(円) 63.1 78.3 81.1

注)JA全農しまね調べ  調査対象は、共販出荷に取り組む生産者(組織)  平均単価は、出荷金額/出荷量から算出した

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Ⅳ.参考 Ⅳ.参考

2 高鮮度花き流通の現状

1)バケット流通の全国的な動き

 我が国の花きの需要は、これまで順調に拡大してきましたが、平成12年前後をピークに減少に転じています。現在の需要形態をみると、家庭用の需要割合がやや伸びているものの、これまで主体であった業務需要が大きく減少しています。 このような中で、花きの需要を拡大するためには、家庭内需要へ目を向けることが必要です。加えて、家庭内需要を拡大するためには、日持ち性の優れた切り花を消費者が納得する価格で安心して購入できるよう、供給体制を整えることが不可欠です。 そこで、消費者等に対してより日持ちの良い切り花を提供することを目的に、全国的にバケット低温流通の取り組みが広がりつつあります。バケット低温流通による切り花の出荷量は、近年、急速に増加しており、平成15年には切り花出荷量全体の3.6%を占めるようになりました(表Ⅳ-4参照)。 現在のバケット低温流通における出荷・輸送形態は、プラスチック等のバケットに注水し、そのまま出荷・輸送するタイプ(再利用タイプ)と簡易な容器に注水し、縦箱に入れるなどして出荷・輸送するタイプ(ワンウェイタイプ)とに大別されます。 全国的にこの出荷・輸送形態の普及が進んでいる品目は、「かすみそう」「ばら」「トルコギキョウ」です。そのうち、かすみそうについては、出荷数量の約34%にバケット低温流通が導入されています。また、トルコギキョウについては、出荷数量の約11%にバケット低温流通が導入され、うち約4%が再利用タイプとなっています。 今後は、生産者や出荷団体、卸売・仲卸、小売等関係者の協力を得ながら、バケット低温流通の合理化・効率化を進めるとともに、花きの用途に的確に対応した生産・流通体制の整備を進めることで、新たな需要拡大が期待されています。

〈 参考 主な鮮度保持容器の紹介 〉

(1) 再利用タイプ■ELFシステム:   水を張ったバケットに切り花を立てて流通させ、使用後のバケットは回収して再利用、再生を行う流通システム。切り花の鮮度が保持しやすく、ダンボール等のごみが減量します。

■SCバケットレンタルシステム:   主な特徴は、ELFシステムと同じですが、水を入れたバケットにダンボール製のスペーサーをセットできるので、積み重ねて輸送することができます。

(2) ワンウェイタイプ■花カーゴ、花だるま:   既存のダンボール箱の下部にバケット(花カーゴ、花だるま)を納めることで、縦箱湿式の流通を可能にします。ダンボール箱が輸送途中で倒れても、水がこぼれない構造になっています。

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Ⅳ.参考 Ⅳ.参考

表 -3 再利用タイプのバケット低温流通実績の推移(出荷量:百万本、バケット率:%)

切り花合計 きく ばら カーネーション トルコギキョウ かすみそうバケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

H8 10 0.17 0 0.00 8 1.62 0 0.00 - - - -H9 10 0.18 0 0.00 8 1.73 0 0.00 - - - -H10 11 0.20 0 0.00 9 1.99 0 0.00 - - - -H11 15 0.26 4 0.19 9 1.88 0 0.00 - - - -H12 19 0.35 4 0.18 13 2.75 0.2 0.03 - - - -H13 34 0.63 5 0.25 20 4.48 1 0.21 - - - -H14 56 1.04 6 0.32 35 7.93 3 0.63 - - - -H15 84 1.59 13 0.66 39 9.51 5 0.98 5 3.76 5 5.78資料:出荷量は、農林水産省統計情報部「花き生産出荷統計」   バケット出荷量は、農林水産省生産局花き対策室及び(社)日本花き卸売市場協会調べ注1)平成15年の出荷量は概数値  2)トルコギキョウ、かすみそう、ガーベラは平成15年調査から実施  3)その他の切り花は、ガーベラ、アルストロメリア、デルフィニウム、ストックなど  4) 調査対象卸売市場会社数は、164社。このうち、バケットの取扱実績のある卸売会社数は72社(前年比

136%)  5)「バケット率」とは、全出荷量に対するバケット出荷量の割合

*バケット低温流通実績調査については、以下の①②の要件を満たすものを対象とした ① 出荷・輸送形態については、プラスチック等のバケットに注水し、そのまま出荷・輸送するもの、または簡易な容器に注水し、縦箱に入れるなどして出荷・輸送するもの

 ② 流通時については、常時低温であること、または出荷前の予冷や輸送時の冷凍車、卸売市場の冷蔵庫により、一時的に低温で流通しているもの

表 -4 バケット低温流通実績(出荷量:百万本、バケット率:%)

切り花合計 きく ばら カーネーション トルコギキョウ かすみそうバケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

バケット出荷量

バケット率

H14 106 1.96 7 0.36 60 13.76 3 0.68 - - - -H15 189 3.55 13 0.67 72 17.37 9 1.88 13 10.54 27 33.75資料:出荷量は、農林水産省統計情報部「花き生産出荷統計」   バケット出荷量は、農林水産省生産局花き対策室及び(社)日本花き卸売市場協会調べ注1)「バケット低温流通実績」は、再利用タイプとワンウェイタイプの合計。この合計の調査はH14から実施  2)平成15年の出荷量は概数値  3)その他の切り花は、ガーベラ、アルストロメリア、デルフィニウム、ストックなど  4)「バケット率」とは、全出荷量に対するバケット出荷量の割合

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Ⅳ.参考

2)県内におけるバケット流通の取組状況

 県では、トルコギキョウの高品質化を図るため、日持ちの良い切り花の安定供給を目的とした高鮮度流通システムの確立・普及を推進するとともに、湿式輸送を導入する品目や取り組み産地の拡大を進めています。 平成16年度現在、県内で湿式輸送が実用化、または実用化に向けた検討が進められているのは、「トルコギキョウ」「ばら」「ぼたん切り花」「スターチス宿根草」です。 このうち、ぼたん切り花は、県産切り花の中でいち早く湿式輸送の導入が検討されてきた品目で、平成14~16年度にかけて、ぼたん切り花専用鮮度保持剤の開発や高鮮度出荷体制の整備が進められています。 その結果、観賞期間の長期化を図ることができ、これまで取引のなかった市場への出荷も始まりました。さらに、平成16年度は、国庫事業「生産振興総合対策事業」と県単事業「花き生産高度化対策事業」を活用することで、湿式輸送が可能な専用出荷箱の作製に取り組んでいます。 この品目については、早期に湿式輸送技術の定着を進めることで、一層の販路拡大と新たな需要開拓が期待されています。 また、トルコギキョウの湿式輸送は、平成15年度から川本圏域で実施されています。この取り組みは、平成16年度に県統一の出荷箱が作製されたことで、各地域での導入が急速に広がりつつあります。なお、トルコギキョウにおける平成15年産の湿式輸送導入割合は、1.4%と全国値(10.5%)には及びませんが、今後の導入拡大に期待が集まっているところです。 さらに、湿式輸送の導入が検討されているのが、松江圏域(安来地域)で生産されているスターチス宿根草です。この品目は、平成17年度からの実用化に向け、出荷経費と作業労力の削減を目的とした専用出荷箱の作製に取り組んでいます。 このような状況の中、県では、上記3品目(「トルコギキョウ」「ぼたん切り花」「スターチス宿根草」)における湿式輸送の普及定着と新規導入産地の掘り起こしを継続的に進めることで、日持ちの良い消費者に支持される切り花の供給を目指します。 また、ばらについては、全国的に取り組みが多いものの、県内での導入が進んでいない現状を鑑みながら、早急に導入産地の育成を推進します。 今後は、県全体を対象とした湿式輸送体制の構築及び鮮度保持技術の普及に取り組むことで、切り花の高品質化を進めます。

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編 集 及 び 執 筆 者

全国農業協同組合連合会島根県本部

島根県中山間地域研究センター

島 根 県 農 業 経 営 課

島 根 県 農 業 試 験 場

島 根 県 花 振 興 セ ン タ ー

島 根 県 生 産 振 興 課

上 田 恒 男

田 中 博 一

川 村  通 

播 磨 邦 夫

金 森 健 一

坂 本  久 

稲 村 博 子

松 山 朋 子

編 集 及 び 執 筆 者