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当科では、脳卒中を中心に、脳腫瘍(良性、悪性)、頭部外傷、脊椎脊髄疾患、顔面けいれん、三叉神経痛など幅の広い診療を行っています。また、腰椎椎間関節症候群、仙腸関節炎などの腰痛疾患に対する関節ブロック、高周波熱凝固療法も行っています。平成26年2月、脳卒中センターを設置して、重症脳卒中患者に対する院内体制を整備するとともに、一般的な急性期治療やリハビリテーションにおけるチーム医療を強化しました(表1)。また、同年10月には、直通電話による脳神経外科(脳卒中)ホットラインも開始しました。夜間、休日は、オンコール体制にしていますが、週に3回程度は当科スタッフが当直しており、来院後から初期対応を行うこともあります。
当科は、以前からNTT回線を使用した院外画像診断システムを導入しています。当直日以外では、連絡を受けたオンコール医が自宅、あるいは、外出先から頭部CT、MRIの画像を検査後15分以内に全て確認して、診断を行っています。本システムの導入により、脳外科医が不在でも小さい脳梗塞、ごく少量のくも膜下出血、軽症の脳挫傷等の診断を確実に行うことができています。そのため、オンコール医が病院に到着する前から適切な初期対応を患者に提供でき、さらに、治療開始までの時間も短縮しています。脳腫瘍、血管障害、脊椎脊髄疾患、顔面けいれん、三叉神経痛などについては、低侵襲性と安全性を念頭に置き、患者、家族の希望を確認して治療方針を検討しています。
特 色
表1 脳卒中センタースタッフ
センター長 脳神経外科 香川 昌弘(部長)副センター長 脳神経外科 井 陽輝(副部長)スタッフ 脳神経外科 大久保修一(副部長)、 武澤 正浩(副部長)、
石川 桃神経内科 峯 秀樹(部長)循環器科 瀧波 裕之(副部長)腎臓内科 横山 倫子(副部長)腎不全外科 山中 正人(部長)看護部 高橋 人己(脳卒中センター看護師長)、
草薙 照美(ICU看護師長)リハビリ科 PT;諏訪 勉、 谷本 海渡、 渡邊 将平
OT;香川 祥子ST;西村 幸代
薬剤部 木村 友美、 北山 由佳医療社会事業部 大浦真奈美
12 脳神経外科・脳卒中センター
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脳梗塞当科の入院患者において、脳卒中患者が占める割合は約6割で、そのうちの65%が脳梗塞患者です(図1、2)。保存的治療、リハビリテーションが中心になりますが、頭頚部主幹動脈に狭窄、閉塞がある場合には、3T-MRIにてPerfusion�MRIを行い脳循環の評価を行っています。Misery�perfusion(貧困灌流)が確認されれば、浅側頭動脈-中大脳動脈血管吻合術を勧めることもあります。また、最近は、高齢者を中心に心房細動、心不全、腎機能障害に関連した脳梗塞が増えており、循環器科、腎臓内科、腎不全外科と共診する症例が増加しています。
対象疾患
くも膜下出血、未破裂脳動脈瘤手術用顕微鏡を用いた脳動脈瘤ネッククリッピング術、脳血管内治療によるコイル塞栓術を、症例に応じて選択しています。クリッピング術においては、術中に蛍光血管撮影を行い、ネッククリッピングの確実性と安全性を高めています。
20092008
(63%)(63%)(59%)
(61%)(52%)(58%)
(64%)(58%)(64%)
(60%)(57%)
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2017
(56%)
2016
全入院患者 脳卒中患者 ( )は、入院患者における脳卒中患者の占める割合
0
200
400
600
患者数(人)
図1 2008~2017年 入院、脳卒中患者数
図2 2015年 全入院患者(469人)の疾患頻度、および、血管障害の病型別頻度血管障害脳腫瘍頭部外傷慢性硬膜下腫瘍脊椎その他
脳内出血くも膜下出血一過性脳虚血発作未破裂動脈瘤脳梗塞その他
血管障害60%
脊椎4%
その他12%
脳梗塞65%
くも膜下出血5%一過性脳
虚血発作5%
未破裂動脈瘤2%
その他3%
脳内出血20%
脳腫瘍5%
慢性硬膜下血腫8%
頭部外傷11%
脳神経外科・脳卒中センター血液内 1
腎 外 18
小児外 9
麻 酔 26
臨床工 35
循環器 5
化学療 22
整形外 14
病 理 31
内分泌 3
眼 科 20
救 急 28
血管治療 37
呼吸器 39
腎臓病 41女性外来 42
下 肢 44
N S T 46
褥 瘡 48
呼吸内 7
放治療 24
皮 膚 16
検 査 33
腎臓内 2
産婦人 19
胸乳外 11
消化外 10
歯 科 27
看 護 36
神経内 6
放診断 23
リ ハ 15
薬 剤 32
消化内 4
耳鼻咽 21
心臓外 13
健 診 30
心不全 29
消化器 38
生殖医療 40
緩 和 43
呼吸ケア 45
認知症 47
小 児 8
放核医 25
泌尿器 17
超音波 34
脳 外 12
81
高血圧性脳内出血軽症例は、血圧管理を中心とした保存的治療で対応します。脳内血腫量が30mlを超え、意識障害、神経症状が強い時には、定位的脳内血腫ドレナージ術、または、内視鏡下脳内血腫除術を検討します(図3)。内視鏡下脳内血腫除去術は、従来の顕微鏡下開頭血腫除去術よりも侵襲性が低く、手術時間も短時間で、症例によっては局所麻酔下でも実施できるため、最近では開頭血腫除去術を行うことが少なくなりました。
頚部内頚動脈狭窄症頚動脈ステント留置術を行っています。(脳動脈瘤コイル塞栓術、頚動脈ステント留置術などの血管内治療は、香川大学脳神経外科の血管内治療グループとともに実施しています。)
脳腫瘍当科で手術を施行している主な良性脳腫瘍は、下垂体腺腫と髄膜腫です。下垂体腺腫に対しては、内視鏡下経鼻経蝶形骨洞手術を施行し、術前後のホルモン補充療法は内分泌代謝科とのチーム医療で対応しています。症例は多くありませんが、トルコ鞍近傍などの髄膜腫に対しては頭蓋底外科的アプローチを行うこともあります。膠芽腫、悪性リンパ腫などの悪性脳腫瘍に対しては、摘出術、生検術にて診断を行い、術後放射線治療、化学療法を実施しています。転移性脳腫瘍に対しては、局在、サイズ、個数、神経症状の有無などから、摘出術、ガンマナイフ治療、全脳照射などを症例ごとに選択します。また、多発症例においては、術前から摘出術と術後放射線治療を組み合わせた治療計画を検討しています。
顔面けいれん・三叉神経痛保存的治療無効例に、神経血管減圧術を施行してい
ます。時に太い椎骨動脈が神経圧迫の一因になっていることもありますが、これまで、フィブリン糊による貼り付けを工夫することで、対応できています。また、術中に脳べらを使用しない工夫を行い、小脳への圧迫、聴神経への負担を軽減した手術を行っています。
脊椎・脊髄疾患脊椎の変性疾患(頚椎、腰椎椎間板ヘルニア、頚部、腰部脊柱管狭窄症)を中心に、脊髄腫瘍、キアリ奇形1型、脊髄空洞症などの診療、手術を行っています(図4)。手術用顕微鏡を使用し、器具、開創器などを工夫することで侵襲性の低減を図っています。腰痛、下肢痛を呈する腰椎椎間関節症候群に対しては、椎間関節ブロックを行っています。強い腰痛を訴えても、部位を確認すると仙腸関節炎による殿部痛であることをよく経験します。これに対しては、仙腸関節ブロックにて診断と疼痛コントロールを行っています。なお、仙腸関節炎に対する理学療法は、他院に紹介し、受けていただいています。
脳神経外科・脳卒中センター
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図1、2、5に最近の新規入院患者数と脳卒中患者の占める割合、全入院患者の疾患頻度と脳血管障害の病型別頻度、手術件数の推移を提示しています。
診療実績
頚動脈狭窄症外来:第2、4水曜日午後 (武澤)頭痛・肩こり外来:第1、3、5金曜日午後 (香川)脳腫瘍:水曜日午前 (香川)脳卒中:�水曜日午前・金曜日午前 (井)�
月曜日午前・金曜日午前 (武澤)
脊椎・脊髄:月曜日午前 (香川)三叉神経痛・顔面けいれん:木曜日午前 (香川)
専門外来
図5 2009~2017年 手術件数
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2009
0 50 100 150
脳腫瘍 摘出術脳腫瘍 その他血管障害 クリッピング血管障害 その他外傷 開頭術慢性硬膜下血腫水頭症 シャント術脊椎脊髄神経血管減圧術血管内手術その他
122
93
135
133
134
72
72
66
91
脳神経外科・脳卒中センター血液内 1
腎 外 18
小児外 9
麻 酔 26
臨床工 35
循環器 5
化学療 22
整形外 14
病 理 31
内分泌 3
眼 科 20
救 急 28
血管治療 37
呼吸器 39
腎臓病 41女性外来 42
下 肢 44
N S T 46
褥 瘡 48
呼吸内 7
放治療 24
皮 膚 16
検 査 33
腎臓内 2
産婦人 19
胸乳外 11
消化外 10
歯 科 27
看 護 36
神経内 6
放診断 23
リ ハ 15
薬 剤 32
消化内 4
耳鼻咽 21
心臓外 13
健 診 30
心不全 29
消化器 38
生殖医療 40
緩 和 43
呼吸ケア 45
認知症 47
小 児 8
放核医 25
泌尿器 17
超音波 34
脳 外 12
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地域の先生方へ当院では、独自の脳卒中疑い患者診療フローチャート作成しています。また、夜間、休日は、院外画像診断システムを利用したオンコール体制をとり、当直医と連携した診療を行っています。そのため、脳外科医が院内に不在でも、患者の来院から検査、診断、治療方針の決定は、平日の日中とほぼ同様の診療レベルを維持しています。また、平日の日中は当科のスタッフが脳神経外科(脳卒中)ホットラインにて救
急疾患に対応していますので、先生方からの連絡から入院決定までの時間が以前より短縮しています。脳外科的な緊急対応が必要な患者がいれば、ぜひ、ホットラインをご利用ください。脳腫瘍、脊椎脊髄疾患、顔面けいれんなどにつきましては、術中モニタリングを使用して、安全性を担保しながら手術を行っています。これらの疾患につきましても、ご紹介いただければ、丁重に診察させていただきます。