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資源メジャー・金属部門の動向調査2016 1.1 資源メジャー5社の決算比較 ■売上高 0 50 100 150 200 250 2015年度 BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 (mUS$) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 Rio Tinto Anglo American O&G Coal Iron Ore Al Cu Ni Zn+Pb PGM Diamonds Ind. Minerals Alloys Fert. Products Others Glencore BHP Billiton Vale (mUS$) 図1-1-1 企業別売上推移(2011~2015年度) 出所:SPEEDA(以下、注記が無い場合は同様) 図1-1-2 事業セグメント別売上(2015年度) 出所:各社アニュアルレポート (注)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの売上である。 - 8 - -

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

1.1 資源メジャー5社の決算比較

■売上高

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2015年度

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

(mUS$)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

Rio Tinto Anglo American

O&G Coal Iron Ore Al CuNi Zn+Pb PGM Diamonds Ind. MineralsAlloys Fert. Products Others

GlencoreBHP Billiton Vale

(mUS$)

図1-1-1 企業別売上推移(2011~2015年度)

出所:SPEEDA(以下、注記が無い場合は同様)

図1-1-2 事業セグメント別売上(2015年度)

出所:各社アニュアルレポート(注)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの売上である。

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

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資源メジャー

5社の決算比較

前年に続いて右下がりは変わらず。BHP Billitonのようにノンコアの切り離しや鉄鉱石の増産など、株主からのコンセンサス取得がなかなかチャレンジングな中で、早めに手を打った資源メジャーでさえ、結局は資源価格の下落にはなす術もなく、各社ともトップラインが総崩れとなってしまったのがよくわかる。

尚、BHP BillitonにおいてはSouth 32が切り離しとなった5月以降にセグメントでの認識がされなくなってきていることにより売上高が急減した。

0%

10%

20%

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60%

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100%

Rio Tinto Glencore

O&G Uranium Coal Iron Ore AlCu Ni Zn+Pb PGM DiamondsInd. Minerals Alloys Fert. Products Others

Anglo AmericanBHP Billiton Vale

(mUS$)

図1-1-3 事業セグメント別売上比率(2015年度)

出所:各社アニュアルレポート (注)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの売上である。

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

-15,000

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20,000

GlencoreAnglo AmericanRio TintoBHP Billiton Vale

O&G Coal Iron Ore Al CuZn+Pb Ni PGM Diamonds Ind. MineralsAlloys Fert. Products Others

(mUS$)

-80

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Rio Tinto Anglo American Glencore

O&G Coal Iron Ore Al CuZn+Pb Ni PGM Diamonds Ind. MineralsAlloys Fert. Products Others

(%)

BHP Billiton Vale

■利益

図1-1-4 事業セグメント別EBIT(2015年度)

出所:各社アニュアルレポート(注)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの値である。

図1-1-5 事業セグメント別EBITのシェア(2015年度)

出所:各社アニュアルレポート(注1)Glencoreはトレード部門を除いた、生産部門のみの値である。(注2)EBITは負となることもあるため、絶対値の合計が100%となるよう基準化した。

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

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資源メジャー

5社の決算比較

2014年度同様に、資源メジャーにおけるEBIT(Earnings Before Interest and Tax/金融収支前・税前の営業利益)は鉄鉱石が大きな割合を占めることとなった。各社が鉄鉱石事業で市況低迷にもかかわらず独善的ともいえる増産を続けた理由のひとつがここに見て取れるのではないだろうか。その他では低迷した市況下で銅が各社を通じて比較的EBITに対してPositiveな働きをしている。

他方、大ブレーキとなってしまったのはニッケルとオイル&ガスだった。特に前者はValeにおいて業績における最大の敗因となっているのだが、同社にとって決して本業とはいえない後発事業でのNegativeな影響とあって非常に残念な結果となっている。但し、一部で臆測のあったニッケル事業からの撤退だが、今のところValeは厳しい中でも引き続きニッケルには注力していくようである。

オイル&ガスは2014年11月にOPECの合意見送りが原因となり急落した後、その地合いを引きずり続けたために、この年に大きな影を落とす結果となっている。

そして減損。周知の通りだがこの翌会計年度(2016年)に各社それぞれの創業以来、最大級と言って良いほどの減損額を計上するわけだが、この年はまだその序章ともいえる段階だった。そのような中で発生したSAMARCO(BHP BillitonとVale出資のブラジル鉄鉱石PJ)の鉱滓流出による大事故は不穏な先行きを暗示するような出来事だったが、それはマイニングビジネスにおける潜在的なリスクの大きさをあらためて知らしめるような、鉱業界に暗い影を落とす出来事であったと言えよう。

詳細を見てみてみよう。メジャーの中で2015年度会計における最大の減損となる8,926百万 US$を出しているValeだが、Nickel事業が半分以上を占めている。カナダのNewfoundlandで3,460百万US$、ニューカレドニアで1,462百万 US$をそれぞれ計上している。更に2,403百万US$をモザンビークの石炭事業で主に市況の悪化と物流コストの上昇を理由に計上している。

-13.9

10.5

-22.5

5.7

-2.6

4% 2% 4% 2% 1%

-2500

-2000

-1500

-1000

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0

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1000

1500

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

売上高営業利益率(%) 売上高に占める支払い利息割引料の割合

(%)

図1-1-6 各社の売上に占める原価及び金利の割合(2015年度)

- 11 -- 10 -

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

さて、総額でValeに次ぐ規模の7,210百万US$を減損計上しているGlencoreはアセットの件数も多く少々複雑だが、大きいものから見てみるとニューカレドニアのニッケルアセット(Koniambo)にて3,989百万 US$の減損を計上している。次に大きなものはアフリカ(チャド)のエネルギーアセットで1,031百万 US$の減損となっている。それ以外にも多種のアセットにて大小の減損を計上しているのだが、目立つのはアフリカの資産が多いこと。やはりこのあたりに、後発のメジャーとしてのあせりが結果として「高値づかみ」を招いたことが表れていると言えるのではないだろうか。

BHP Billitonは発表した減損額の殆どが米国のシェールガス事業で、4つのアセットにて約7,184百万 US$という巨額の減損を計上した。もちろん油価の下落が原因であり、掘削装置を段階的に減らすなど投資を抑制してきたものの、さらにシェールガスの掘削装置の配置場所を3月までに現在の7カ所から5カ所に削減するなどの措置を取らざるを得なくなった。

EBITを大きく下げながらも他社に比べると総減損額(5,229百万 US$)の少なかったAnglo Americanだが、その大半は予想通りブラジルの鉄鉱石(Minas Rio)で2,503百万 US$の減損を計上するに至っている。ちなみに同PJでの減損はこれで3年間続いているが、市況悪化のなかでランプアップ時期が重なるという災難のような状況によりもたらされたもの。同社も本業回帰を目指すものの重過ぎる非本業となっている。

最後にもっとも減損額の少なかったRio Tintoだが、西アフリカのギニア内陸の鉄鉱石PJ「Shimandou」において2,039百万ドルの減損を計上しているが、総額で2,791百万 US$のうち、ほぼ本PJによる減損が占めるといっても良い規模である。尚、本件は同国の政治的な問題も背景にあり非常に混迷したが、最終的にRio Tintoは2016年下期に入り、権益すべてを中国企業へ売却するとのアナウンスを行っており、現在最終調整中との理解である。

こうして見ると当然ながら資源価格の予想以上の悪化が多くの減損を招いているわけだが、各社において比較的「本業以外」と目される事業や、地域で言うとアフリカなど比較的新興地域での損失が目立っているように思う。どうしても後発で手をつけたいわば「高値づかみ」したとされてしまう部分であるから当然といえば当然ではあるが、そこに多くの資金をつぎ込んだ企業において大きな傷口となっている。

さて利益だが、各社とも資産の売却(この資源価格の低迷の折なかなか進まず)や従業員の大幅カット、配当の見送りなどを相次いで発表するも、チャートを見て明らかなように、結果的に「水面」に顔を出したメジャーは一社もなかったという非常に特筆すべき結果となった。

昨年までは「二極化している」とみていた資源メジャーの利益だが、ここに来て各社ともに極めて厳しい状況に陥っている。

個別に説明を加えるに至らぬほどに各社の利益は相当痛んでいる。特にValeは相当厳しいのが見て取れ、一過性であることを祈るばかりであるが、こればかりは資源価格次第ということであろう(図1-1-7)。

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

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資源メジャー

5社の決算比較

-6,235

-28

-16,719

-5,128 -6,622

7,394

2,791

8,926

5,229 7,120

0 271,456

11 368

-20,000

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-5,000

-

5,000

10,000

15,000

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

EBIT 減損 資産売却

(mUS$)

図1-1-7 EBIT、資産売却額、および減損(2015年度)

-50.0

-45.0

-40.0

-35.0

-30.0

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-15.0

-10.0

-5.0

0.0

-18,000

-16,000

-14,000

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

EBIT 百万米ドル 当期純利益 百万米ドル 売上高当期利益率% ROA %

BHP Billiton

図1-1-8 EBIT、当期純利益、およびROA (2015年度)

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

■配当

各社ともに大きな決断を強いられた年であった。特に2001年にBHPとBillitonが合併して以来、一度も期末配当性向を下げたことのないBHP Billitonもその聖域に手を付けざるを得なかったが、相当な苦渋の選択だったことが伺える。

欧米企業において配当は極めて重要であるわけだが、前述の利益の項でお分かりの通り、その原資がほぼ無かったことからどうしようもなかったのが当期であり、結果として図1-1-9のようにならざるを得なかった。もちろん各社とも不安定・不透明に備えてキャッシュを強く意識している結果でもある。

収益さえあれば、株主に還元するか若しくは再投資に回すのか選択肢はあるわけだが今期はどうにもならなかった。

企業にとって再投資は資産の減耗に備える意味でも必須であり、その上資源企業の場合は将来に備えての探鉱費も極めて重要であるが、このような状況下では資源メジャーに限らず、如何ともしがたいということである。

このような状況が続いてしまうと資源の開発の遅れにつながり、やがて「足りない」という事態になる鉱種も出てくるであろう。歴史は常に繰り返しているわけだが、まさに今期はその過渡期ともいえる時期かもしれない。

図1-1-9 配当金、EPS、および配当性向(2015年度)

一株当たりの配当金(左軸/ ) (左軸/ ) 配当性向(右軸/ )

(US$)1

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0

3

2

1

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-1

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-5

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

1-

資源メジャー

5社の決算比較

6

5

4

3

2

1

02011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

BHP Billiton Ltd Rio Tinto plc Vale SA Anglo American plc Glencore plc

(mUS$)

図1-1-10 配当金の推移 (2011~2015年度/US$)

(注)�一般に、配当性向は配当金を当期純利益で除した値であることから、分母が負の場合(=当期の純利益が負の場合)はこの値は計算されない。

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

(US$)

BHP Billiton Ltd Rio Tinto plc Vale SA Anglo American plc Glencore plc

0.0

100.0

200.0

300.0

400.0

500.0

600.0

700.0

800.0

900.0

BHP Billiton Ltd Rio Tinto plc Vale SA Anglo American plc Glencore plc

(%)

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

図1-1-12 配当性向の推移 (2011~2015年度)

(注)�一般に、配当性向は配当金を当期純利益で除した値であることから、分母が負の場合(=当期の純利益が負の場合)はこの値は計算されない。

図1-1-11 EPSの推移 (2011~2015年度)

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

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資源メジャー

5社の決算比較

■資産および負債

BSについては、商社機能を含むGlencoreと鉱山会社を単純に比較することは必ずしも意味がないため、Glencoreの数値はあくまで参考程度とされたい。

0

20

40

60

80

100

120

140

-

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

総資産 自己資本 有利子負債 DER

DER

[%]

GlencoreAnglo AmericanRio TintoBHP Billiton Vale

(mUS$)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

(%)

図1-1-14 流動資産に占める在庫の割合(2015年度)

図1-1-13 総資産、自己資本、有利子負債、及びDER(2015年度)

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

昨期まであまり大差のなかった各社のDERにばらつきが出始めている。特にGlencoreとAnglo Americanで大きく伸びているが、昨年比で各社ほぼ倍増もしくはそれに近い水準となっている。各社とも営業キャッシュフローが伸びない中で資金調達に苦心しているのが良くわかるが、資産の売却も思うようにキャッシュを生みにくい環境下で金融機関からの借り入れに対する依存度が高くなっている。

前回に引き続き当座比率に目を向けてみよう。まずはAnglo Americanが141%と昨年同様に良好である。ついでBHP Billiton 109%、Rio Tinto 107%となっているがVale 48%、Glencore 32%というのは昨年同様で芳しくないのが気にかかる。

一方、流動比率だが昨年同様Glencore 121%、BHP Billiton 127%の二社が変わらず低い。Rio Tinto 173%、Vale 189%、Anglo American 213%となっていて少し差が大きいのがわかる。これら短期的な指標は昨年とあまり変わりがないことがわかるが大きく改善したわけでもない、ということである。

長期的な財務安定性については、自己資本比率などを見るも昨年と大きく変わっていない。よって引き続き金利の引き上げなどで大きく金利収支が悪化する恐れは継続しているとみるべきである。

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

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資源メジャー

5社の決算比較

  設備投資【CAPEX】について生産設備は時間が経過するにつれて、機械的な劣化や技術の陳腐化が不可避的

に進行するため(資産価値の減少)、そこから産み出される生産量も漸減していく。従い、資源企業が業界でのポジション(生産量)を維持・拡大するためには、継続的な設備投資(有形固定資産の取得)が不可欠となる。一般的に、減価償却費程度の設備投資では生産能力の維持にしかならず、減価償却費以上の設備投資によって生産量の拡大が初めて達成される。逆に言えば、減価償却費を割り込むような設備投資額が長く続く場合、そうした企業はいずれ衰退すると考えられる。

  『設備投資の原資』企業活動は「設備投資が生み出したキャッシュ(単年度の営業CF)を再び設

備投資に回す事でキャッシュの規模(FCFの累計)を拡大していくサイクル」と解釈できる。従い、製造設備が新たに獲得したキャッシュである営業CFが設備投資の原資のベースとなる。理想的なサイクルは、既存の事業が十分な営業CFが生み出しており、当該事業の維持に必要な設備投資(減価償却費相当)に加えて、事業の拡大に必要な新規の設備投資(既存事業の拡大、もしくは新規事業への参入)までも負担できる状態である。逆に、営業CFが減少すれば、既存事業の維持に必要な設備投資が優先され、事業規模の拡大への設備投資は抑制される。

- 2,000 4,000 6,000 8,000

10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000

CAPEX 営業CF 減価償却費

BHP Billiton Rio Tinto Vale Anglo American Glencore

図1-1-15 CAPEXと減価償却費、営業CF(2015年度)

(前年度版を一部修正して再掲載)

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

■投資【M&A】

2015年も幾つかのM&A案件が浮上し、そして合意に至った大型案件も出てきている。Anglo Americanは8月にチリの代表的な銅アセット「Mantos Blancos」「Mantoverde」の売却に関しAudley Capital Advisors(英)との間で合意に至ったと発表した。約3億US$のキャッシュ前払い条件との噂も流れたが同社にとっては久々の大型M&Aと思われた。またSouth32(同年5月にBHP Billitonよりアルミニウム、ニッケル等のセグメントで分離独立した準メジャー)がAnglo Americanのニオブとリン事業に興味を示しているという報も流れたが、いずれにしてもAnglo Americanにおける本業回帰への資産整理ということでは、決して不自然なものではなかった。

同様に最も厳しい環境におかれていたGlencoreでも動きがあった。フィリピン南部のミンダナオ島で保有していた銅・金アセットであるTampakan PJの権益(62.5%)をすべて同PJのパートナーであるIndophil社に売却。想定金額は208百万US$と言われている。また同年暮れには農業部門の売却の噂が流れたが、これはその後2016年に入りカナダのペンションファンドに部分売却された。また同時期に売却目標としていた豪州の銅アセットであるCOBARも売却に向けて交渉中と噂されている。

次の図は事業売却にかかわるCFと減損をグラフにしたものである。3年連続伸びを見せていた事業売却額だが、2015年には大きく下振れた。これは資源価格の下落が止まらないため、資産の売却時に損失が出やすい状況にあったことも一因であろうと思われる。また同時にどのような企業であってもこのような資源価格の中で新たに資産を買い増しするという機運ではなかったことで買い手不足だったことも容易に想像できる。それは、事業買収CFも大きく縮小していることからも見て取れるのではないだろうか。

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資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

1-

資源メジャー

5社の決算比較

-20,000

-30,000

-10,000

0

20,000

30,000

40,000

事業売却CF 事業買収CF 減損額

(MU$)

20152014201320122011

6社合計

10,000

-10,000

-15,000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

事業売却CF 事業買収CF 減損額

(MU$)

20152014201320122011

BHP Billiton

図1-1-16 事業売却CF、事業買収CF、及び減損額のメジャー6社合計(2011~2015年度)

*事業売却CF、事業買収CFについては2015年のみBHP該当データ非公表につき5社合計

図1-1-17 BHP Billitonの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額(2011~2015年度)

*事業売却CF、事業買収CFについては2015年のみBHP該当データ非公表につき5社合計

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

-1,0000

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

事業売却CF 事業買収 CF 減損額

20152014201320122011

Rio Tinto(mUS$)

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

事業売却CF 事業買収CF 減損額

20152014201320122011

Anglo American(mUS$)

図1-1-19 Anglo Americanの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額(2011~2015年度)

図1-1-18 Rio Tintoの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額(2011~2015年度)

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1-

資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

1-

資源メジャー

5社の決算比較

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

事業売却CF 事業買収CF 減損額

20152014201320122011

Vale(mUS$)

図1-1-20 Valeの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額(2011~2015年度)

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

事業売却CF 事業買収CF 減損額

20152014201320122011

Glencore(mUS$)

図1-1-21 Glencoreの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額(2011~2015年度)

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

事業売却CF 事業買収CF 減損額

20152014201320122011

Xtrata

Glencoreと合併

(mUS$)

図1-1-22 Xtrataの事業売却CF、事業買収CF、及び減損額(2011~2015年度)

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1-

資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

1-

資源メジャー

5社の決算比較

■キャッシュフロー分析

まず5社全体のグラフを見てみよう。予想通りというか必然的に営業CFと投資CFが著しく縮小している。そしてその結果として前年度まではほぼ5社で一定値を保っていた配当も2015年度は激減しているのは特徴的ではなかろうか。そうなると当然ながら市場環境は資産の切り売りにもっとも向かない時期を迎えたこともあり、事業売却CFが殆んど出ていないのも良くわかるが、有効な資産ポートフォリオを組みなおし、経営資源をシフトしていくべきところであったにもかかわらず、思ったようにその入れ替えが進まなかったことがここから見て取れるのではないだろうか。

少し気になったのは財務キャッシュフロー。当期も全体で大きなマイナスとなっている。前年も触れたが一部のメジャーでは2012年に大型の調達を行っているため、この年はポジティブとなっている。それも一因となりGlencoreとRio Tintoを中心にネガティブな財務CFが発生しているようだ。尚、これらの数値は当然ながらNetであり、詳細を見てみると、各社調達も行っているのがわかる。つまり大型の償還が続く傾向は今しばらく変わらないと見るのが妥当であるため、今後の金利上昇に伴い金利収支の悪化による経営数値の下振れリスクを一部では内在していることになる。

もう一つ気にかかるのはCAPEX(設備投資)がここ数年来漸減傾向を続けていること。やはり各種操業機器の老朽化や操業の効率化にはどんどん投資していかねばならないのは鉱業ビジネスでも同じである。やがて収益への悪影響を与え始める要因になることが危惧されるが、そろそろそのボディーブローが効きはじめるのではと気にかかるところではある。

-80,000

-60,000

-40,000

-20,000

-

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

営業 CF 減価償却費 投資 CFCAPEX 事業売却 CF 事業買収 CF財務 CF 短期借入金 長期借入金配当金 現金等期末残高

20152014201320122011

(MU$)

図1-1-23 メジャー5社の各種CF合計(2011~2015年度)

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

2015201420132012201140,000

30,000

20,000

10,000

-

10,000

30,000

20,000

営業 CF 減価償却費 投資 CFCAPEX 事業売却 CF 事業買収 CF財務 CF 短期借入金 長期借入金配当金 現金等期末残高

(mUS$)

-80,000

-60,000

-40,000

-20,000

-

20,000

40,000

60,000

80,000

営業 CF 減価償却費 投資 CFCAPEX 事業売却 CF 事業買収 CF財務 CF 短期借入金 長期借入金配当金 現金等期末残高

20152014201320122011

100,000(mUS$)

図1-1-7 EBIT、資産売却額、および減損(2015年度)

図1-1-25 Rio Tintoの各種CF(2011~2015年度)

- 26 -

1-

資源メジャー

5社の決算比較

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

1-

資源メジャー

5社の決算比較

2015201420132012201115,000

10,000

5,000

-

5,000

15,000

10,000

営業 CF 減価償却費 投資 CFCAPEX 事業売却 CF 事業買収 CF財務 CF 短期借入金 長期借入金配当金 現金等期末残高

(mUS$)

20,000

15,000

10,000

5,000

-

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

営業 CF 減価償却費 投資 CFCAPEX 事業売却 CF 事業買収 CF財務 CF 短期借入金 長期借入金配当金 現金等期末残高

20152014201320122011

(mUS$)

図1-1-26 Anglo Americanの各種CF(2011~2015年度)

図1-1-27 Valeの各種CF(2011~2015年度)

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資源メジャー・金属部門の動向調査2016

20152014201320122011

(mUS$)

-15,000

-10,000

-5,000

-

5,000

15,000

10,000

営業 CF 減価償却費 投資 CFCAPEX 事業売却 CF 事業買収 CF財務 CF 短期借入金 長期借入金配当金 現金等期末残高

図1-1-28 Glencoreの各種CF(2011~2015年度)

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資源メジャー

5社の決算比較