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1 2011 2011 2011 2011 年度 年度 年度 年度 上智大学経済学経営学科 上智大学経済学経営学科 上智大学経済学経営学科 上智大学経済学経営学科 網倉 網倉 網倉 網倉 卒業論文 卒業論文 卒業論文 卒業論文 「理論と 理論と 理論と 理論と市場 市場 市場 市場分析用いた 分析用いた 分析用いた 分析用いた 10 10 10 10 年後の携帯市場予測 年後の携帯市場予測 年後の携帯市場予測 年後の携帯市場予測」 上智大学経済学経済学科 上智大学経済学経済学科 上智大学経済学経済学科 上智大学経済学経済学科 4 学年 学年 学年 学年 A0841323 A0841323 A0841323 A0841323 宮澤 宮澤 宮澤 宮澤 秀

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目次

1、卒業論文の概要

2、仮定Ⅰ「10 年後の携帯市場のシェア」

3、検証Ⅰ 「携帯電話の発展の歴史」

4、分析Ⅰ 「30 年間の発展から読み取れること」

5、仮定Ⅱ 「携帯電話の限界とスマートフォンの可能性」

6、検証Ⅱ 「スマートフォンは携帯市場をどう動かしたか」

7、分析Ⅱ 「スマートフォンの成長性」

8、結論 「携帯電話の最終系としてのスマートフォン」

9、参考資料

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概要概要概要概要

私は今年上智大学を卒業後、金融機関で働くことになる。そこで、これから社会に出て必要になるだ

ろう能力を鍛えるために、この卒業論文を書こうと考えた。私にこれから必要な能力の一つが未来を予

測する力である。株は上がるのか下がるのか、会社は発展するのか潰れるのか、世界各国の景気は上

向くのか後退するのか、それら全ての予測は私が未来を当てる能力の精度にかかってくると考える。そ

して、ただ当てずっぽうに未来を予測しても当たるわけがない。未来を当てるのに必要なのは、理論を

用いること、そして現在の市場動向の分析と過去のデータの分析である。理論を学び、過去を知り、現

在を知ることで、ようやく未来が見えてくるのではないかと私は考えている。そして今回、私が卒業論文

でケースとして取り上げるのが携帯市場である。私は 21 世紀という時代の寵児ともいえるものが携帯電

話だと考えている。携帯電話ほど短期間で目覚ましい進化を遂げ、時代を反映している商品はない。

2012 年現在、スマートフォンが日本中を席巻している。10 年後の携帯市場はスマートフォンで埋めつく

されるのか、はたまたガラパゴス携帯が盛り返すのか、もしくはまた新たな携帯端末が登場するのか、多

角的な視点で検証し、未来を予測する。

<<<<10101010 年後の携帯市場の年後の携帯市場の年後の携帯市場の年後の携帯市場の仮定仮定仮定仮定Ⅰ>Ⅰ>Ⅰ>Ⅰ>

10 年後はスマートフォンが 9 割、ガラパゴス携帯が 1 割程度になっていると予想する。また、イノベー

ションは起きておらず、新型の携帯端末は登場していないと考える。

(注)ガラパゴスケータイ:スマートフォン以前の高機能型携帯の総称。フィーチャーフォンという呼ばれ

方でスマートフォンと区別されることもある。(スマートフォンについては検証Ⅱを参照)

検証Ⅰ検証Ⅰ検証Ⅰ検証Ⅰ <携帯電話の発展<携帯電話の発展<携帯電話の発展<携帯電話の発展の歴史>の歴史>の歴史>の歴史>

発展の歴史を 3 カテゴリーに分ける。

1、見た目の変化(軽量化、タブレット化)

2、企業数、料金、及び加入者

3、機能(メール、カメラ、ネット……) ☆機能については仮定Ⅱの中で追って説明する。

1、 見た目の変化

車載型電話として始まった携帯電話だが、時代とともに軽量化、コンパクト化が進んでいる。ショルダ

ーバッグ型に始まり、折り畳み型、スライド型など様々な携帯電話が登場した。また、スマートフォンはタ

ブレット型特有の、独特のフォルムをしている。(次ページの図 1 参照)

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図 1 携帯電話の見た目の変化

2, 企業、料金、加入者及び通信システムの変遷

1979 年 移動電話サービス開始当時 (第一世代)⇒補償金 20 万円、加入料金 8 万円、基本料金 3

万円、通話料金 1 分 100 円(図 2 参照)

1985 年 電気通信事業自由化 ⇒ 日本移動通信(IDO)と関西セルラー(DDI)などが新規参入、

NTT の独占終わる

1992 年 NTT 移動体通信部門分社化 NTT ドコモ誕生⇒携帯ビジネス本格化

1993 年 契約者数 180 万人突破 アナログ方式に限界が訪れ、デジタル方式導入(第二世代)

2000 年 IDO と DDI 合併 au 誕生、同年に KDD、第二電電と合併して KDDI 誕生⇒競争激化

2001 年 NTT ドコモ CDMA 方式採用、データレートの高速化(第三世代)

2006 年 ソフトバンクがボーダフォン(旧 J フォン)買収⇒携帯三国時代突入

2012 年 第四世代移動通信システムを導入予定⇒さらに通信システム発展か!?

☆2012 年 1 月現在の状況

加入者数 1 億 2000 万人突破(図 3 参照)

機種代金最安値 0 円、新規加入手数料 0 円、通話料や基本料金も競争争激化で格安。(図 4 参照)

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図 2 円の対ドル為替レートの推移

図 3、携帯電話の累計契約数

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図 4、NTT ドコモの基本料金プラン(2012 年 1 月現在)

分析Ⅰ「分析Ⅰ「分析Ⅰ「分析Ⅰ「30303030 年間の発展年間の発展年間の発展年間の発展から読み取れること」から読み取れること」から読み取れること」から読み取れること」

まず驚くべきことは、発売当時の携帯電話の金額の高さである。図1から分かるように当時の円ドル為

替レートが 1 ドル 160 円と今の倍ほどの円安とはいえ、初期費用に 30 万、持っているだけで 3 万円と

いうのはかなりの高所得層でないと支払えない額だ。当時の携帯電話は富裕層の象徴のような存在で

あったというがそれも納得できる。そして、価格の下落が始まったのは電気通信事業が自由化され、通

信事業が競争事業になってからである。ここから、価格の下落と携帯電話の大衆化が一気に加速して

いく。何社もの企業が通信事業に新規参入し淘汰され、合併していった。そして現在のビッグ 3 体制(ド

コモ、au,ソフトバンク)が整ったのである。この体制になってからは3社間の顧客獲得競争、価格値下げ

競争が激化し、2006 年に携帯電話の番号ポータビリティーが実施されるようになってからは、競争は熾

烈を極めるようになる。0 円携帯の登場、新規加入手数料 0 円、他社からの乗り換え手数料全額負担な

ど、ダンピング並みの価格競争が始まり、それと相まって契約者数は増えていった。2012 年現在では、

携帯電話の契約者数と日本の人口がほぼ同じである。携帯電話を複数台持つ個人がいるとはいえ、統

計的にはまさに一人一台の時代が実現したのだ。つまり、ここで強調しておきたいのだが携帯電話は持

っていて当たり前の時代に既になっており、大事なことは今後どのタイプの携帯が時代を制するかという

ことなのである。この話に関連して、ビッグ 3 が現在激戦を繰り広げているのがスマートフォン競争である。

2010 年以降は電話とネットが融合したスマートフォンが携帯市場のメインになっていることは誰の目から

見ても明らかだ。その背景や、今後のスマートフォン競争については次の検証Ⅱで追って説明する。

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3、機能の変遷<<<<10101010 年後の携帯市場の年後の携帯市場の年後の携帯市場の年後の携帯市場の仮定仮定仮定仮定ⅡⅡⅡⅡ:携帯電話の限界とスマートフォンの可能性:携帯電話の限界とスマートフォンの可能性:携帯電話の限界とスマートフォンの可能性:携帯電話の限界とスマートフォンの可能性>>>>

携帯に加える機能にはもはや限界があるのではないか?また、これ以上の機能を付加することができ

ないなら、これからは料金や通信速度の勝負になってくるため、スマートフォンを超える新型携帯端末は

登場しないのではないか?

3.1 今まで加えられてきた機能

例)メール、カメラ、ビデオ、テレビ、財布、GPS、ネット、ゲーム……

この辺りまでは良かったが開発が後半になるにつれてかなり強引に携帯に機能を付加して差別化を

図っていた⇒チャット、血圧計、体脂肪計、口臭チェック…… これらは無駄な機能なのでは!?

(図 5 参照)

図 5 携帯に必要ない機能調査(2009 年 3 月実施、有効回答数 15628)

3.2 スマートフォンの無限の可能性

スマートフォンはアプリのダウンロードにより本体をカスタマイズしていく方式。この方式なら無限の進

化が可能になる。(AppStore のアプリは 10 万種以上、今後ますます増える予定)

自分で機能を追加していくのなら自分にとって一番良い携帯が作れるのではないか!?

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検証Ⅱ検証Ⅱ検証Ⅱ検証Ⅱ <<<<スマートフォンスマートフォンスマートフォンスマートフォンは携帯市場をどう動かしたか>は携帯市場をどう動かしたか>は携帯市場をどう動かしたか>は携帯市場をどう動かしたか>

1,スマートフォンの登場

スマートフォンとは何なのか?スマートフォンは携帯電話というよりパソコンに近い。一言でいえば、通

話機能をもった PDA(携帯情報端末)である。アップル社が米国で 2007 年 6 月 29 日に発売した

iPhone オリジナルが定義的には世界初のスマートフォンとされている。その後 2008 年に発売された

iPhone3Gの販売権をソフトバンクが獲得し日本での販売が開始された。他社もこれに追随し、2010 年

にNTTドコモがXperiaで、au は IS03 でスマートフォンに参入した。(それ以前にもスマートフォンに近

いものは発売されていたが,現在それはスマートブックとして区分けされている。図 6 参照)

図 6 スマートブックとスマートフォン ((例)au の IS01 と IS03)

2、スマートフォンの汎用性

スマートフォンは今までの「電話する」携帯電話のイメージを大きく覆した。スマートフォンは電話だけ

に留まらず、他のデジタル機器をすべて詰め込んだまさにオールインワンの携帯端末なのである。図 7

を見てもらえばわかりやすいと思うが、スマートフォン一台で全ての携帯するタイプのデジタル機器の代

用ができることが分かってもらえると思う。

図 7 スマートフォンは他の携帯デジタル機器の代用をすることができる(Excel で作成))

パソコン 携帯電話 ゲーム機

デジカメ スマートフォン 携帯音楽プレイヤー

電子手帳 電子辞書 カーナビ

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3、スマートフォンの異常なまでの人気

1 で述べたように、スマートフォンはまだ日本で発売されてから 3 年足らずしか経っていない。しかし、

携帯電話市場におけるスマートフォン比率は 2011 年 7 月に販売台数ベースで 49 パーセントと約半分

に達している。ある総研会社の予測では 4 年後には 74 パーセントに達するという予想もされている。こ

のペースで進めば 10 年後にスマートフォンが 9 割を超える可能性は大いに有り得るのではないだろう

か。

4、各キャリアのスマートフォンに対する力の入れ具合

日本を代表する 3 キャリア全てにおいて見事なまでに 2010 年冬と 2011 年冬においてスマートフォ

ンと携帯電話の比重が逆転している。(図 8 参照)この表だけをみると、各社ともにこれから益々スマート

フォン戦略に力を入れていくのではないかと推測される。

図 8 2010 年冬から 2011 年冬までの四半期ごとの各キャリアの携帯電話とスマートフォンの対称表

(Excel で作成)

5.スマートフォンの登場に対する日本国民の反応

5.1 普及率

「急に売れ始めるにはワケがある(著、マルコム・グラッドウェル)」を授業で扱った際に、キャズムを超

えた例としてスマートフォンを扱った。その際に、スマートフォンの普及率は 2011 年 10 月時点で 22,9

パーセントであることが分かった。これは、日本の人口を 1億 3000万人とすると、約 3000万人にも及ぶ。

これだけの契約数がわずか 3 年足らずで達せされたのである。携帯電話がサービススタートから 180 万

件突破するまでに 14 年もかかったことを考えると、これは恐ろしいスピードである。

2010年冬モデル 2011年春モデル 2011年夏モデル 2011年冬モデルDocomo 携帯 4機種 0機種 5機種 9機種

スマートフォン 2機種 0機種 4機種 10機種au 携帯 4機種 6機種 7機種 2機種

スマートフォン 2機種 3機種 6機種 9機種Softbank 携帯 11機種 0機種 2機種 0機種

スマートフォン 5機種 0機種 9機種 9機種

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5.2 購入動機

図 9 は授業でも扱ったグラフだが、やはりPCサイトを閲覧できるという回答が図抜けて高い。しかし、

その一方で色々なことができそうと言う抽象的な理由が女性に多いのも特徴的である。これは、スマート

フォンをヴィトンやグッチと同様に一種のブランド力に惹かれて購入した場合や、もしくは友達が持って

いて何となくよさそうだったからといった理由で購入した場合が考えられる。また、授業で教授が指摘し

たように、表には出てこない理由も多数あると考えられる。

図 9 スマートフォンの購入動機(2011 年 2 月実施、有効回答数 412)

5.3 購入後の満足度

図 10 をみると購入後の満足度として意外なことにデザインが上位にランクしている。これは、機能性

重視の購買層(イノベーターやアーリーアドプター)よりも、オシャレ目的や何となく購入したという購買

層(アーリーマジョリティーやレイトマジョリティー)の方が多いのではないかということが伺える。(イノベー

ター理論については結論で説明する)

図 10 スマートフォンに満足している点(2011 年 2 月実施、有効回答数 412)

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5.4 スマートフォンの欠点

図 11 をみるとスマートフォンの欠点がほとんど改善可能だということが分かる。調査会社がこの意識

調査を行ったのは 2011 年 2 月 17 日~2 月 18 日なので約 11 カ月の間にこの欠点の大半が改善され

た。各キャリアが販売している 2011 年冬モデルの殆どが防水機能付きで赤外線やおサイフケータイと

いった従来の携帯電話の機能をスマートフォンに付加することに成功している。バッテリーの持ちも以前

に比べれば大分ましになっただろうし、これからも進化していくだろう。通話エリアや電波の悪さも現在各

キャリアが必死になって改善中である。

図 11 スマートフォンの欠点(2011 年 2 月実施、有効回答数 412)

分析Ⅱ分析Ⅱ分析Ⅱ分析Ⅱ「スマートフォンの成長性」「スマートフォンの成長性」「スマートフォンの成長性」「スマートフォンの成長性」

検証Ⅱで携帯電話の発展に陰りがみえてきたこと、そして、スマートフォンが日本で非常に受け入れ

られていることが分かる。スマートフォンは携帯電話の 5 倍以上のスピードで普及しており、その勢いは

留まることを知らない。また、スマートフォンの性能はいまだ発展途上にあり、コスト高や操作性、バッテリ

ーなどに関してはまだまだ改善の余地があると考えられる。分析Ⅰ、分析Ⅱをまとめた結果は次の結論

部で述べるとする。

結論結論結論結論 <携帯電話の最終系としてのスマートフォン><携帯電話の最終系としてのスマートフォン><携帯電話の最終系としてのスマートフォン><携帯電話の最終系としてのスマートフォン>

ここまで長々と分析を続けてきたが、私が結局言いたいことは、スマートフォンは携帯電話の進化の

最終形なのではないか、そして 30 年に渡る携帯電話の発展の歴史がスマートフォンの登場によってつ

いに終わりを迎えたのではないかということである。私がそう考える理由は 2 点ある。まず、携帯電話に

付加する機能の限界である。検証Ⅰで述べたように、携帯電話は恐るべきスピードで進化してきたが、

近年その進化に陰りが見えてきているような気がする。というか、これ以上付加する機能が見つからなく

なったのではないかと私は考えている。挙句の果てが、体脂肪計や口臭チェックなどといったいわゆる

無駄な機能の追加である。このように無駄な機能を付加して携帯電話を複雑化し、使いづらくしていて

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は、それこそ生活を便利にする意義を持つ携帯電話の本末転倒なのではないかと私は考える。そして、

もう一点はスマートフォンの持つ柔軟性にこそある。スマートフォンはあらかじめ機能を付加されている携

帯電話と異なり、初期状態では必要最低限の機能しかついていない。それで満足なシンプルユーザー

はそのまま使えば良い。しかしそれで満足できないコアなユーザーはアプリケーションをマーケットから

ダウンロードすることでスマートフォンを自分のオリジナルにカスタマイズしていくことが出来るのである。

つまりスマートフォンは様々なタイプのユーザー(イノベーター、アーリーアドプター、アーリーマジョリテ

ィ、レイトマジョリティ)に対応できるのだ。(イノベーター理論については図 12 を参照)ユーザーは携帯

電話に対しては受動的だが、スマートフォンに対しては能動的になれるとも言い換えてもよい。イノベー

ターは恐らくスマートフォンを恐ろしく複雑な携帯端末に作り替えるのであろうし、レイトマジョリティは初

期状態からほとんどいじらずに、必要最低限の機能しか持たない携帯電話としてスマートフォンを使うの

であろう。そして、スマートフォンが自分好みにカスタマイズできる以上、購入した顧客の満足度は高い。

それならばもう携帯市場にイノベーションは起きないのではないか。もちろん私は技術屋ではないので、

スマートフォンを超えるハイスペック携帯の開発が可能かどうかということに関して、技術的な側面での

議論はここではできない。しかし、経済学的観点から考えると、世界はこれ以上ハイスペックな携帯は求

めていないのではないかというのが私の考えである。

散々スマートフォンを褒め称え、擁護している私だが、10 年後のスマートフォンシェア予想を 10 割で

はなく 9 割といったのは理由がある。それはイノベーター理論におけるラガードの存在である。彼らはい

わゆる超保守的な集団で、どんなにスマートフォンの実用性が高く、どんなにスマートフォンが携帯電話

に勝っていたとしても、スマートフォンになびくことはない。彼らだけは、10 年後にスマートフォンが携帯

市場の大多数を占めており、携帯電話が過去の遺物のような存在になっていたとしても、携帯電話を使

い続けるであろう。そして、各キャリアも対ラガード対策として、細々とだが携帯電話を生産し続けるはず

である。つまり、ガラパゴスケータイの絶滅は恐らくないと私は予想する。

以上が、私の仮定の根拠である。では、今後の市場動向はどうなるのであろうか。スマートフォンが進

化の究極系な以上、各キャリアはこれからこぞってスマートフォンのグレードアップ、そして機能面以外

の勝負に出てくるのでないかと私は予想する。スマートフォンのグレードアップに関してはタッチパネル

の感度やバッテリーの持ちにはまだまだ改善の余地があるだろうし、3Dを導入することも十分可能であ

ろう。もしかしたら、スターウォーズばりの立体ホログラム通信が可能になるかもしれない。(図 13 参照)

加えて、消費者にとっては嬉しいことだが、価格競争や通信エリア、通信スピード競争は今後益々激しく

なっていくこともほぼ間違いない。現時点でのスマートフォンの欠点の一つである本体価格の高さ(価格

帯 4~6 万円)や、通信費の高さ(価格帯 5000 円~1 万円)は 10 年後には半値くらいになっているので

はないだろうか。そして通信スピードや通信エリアも今の競争の熾烈さから察するに、10 年後には全くス

トレスを感じないレベルにまで達しているのではないだろうか。

ここまで様々な憶測をデータや理論を用いて打ち立ててきたが、10 年後のスマートフォン:ガラパゴス

携帯比率は 9対 1なのか、スマートフォンを超える携帯端末の登場があるのか、価格は下落し通信は発

展するのか、結局それら全ては10年後の2022年に自然と分かることである。自分の打ち立てた仮説が

正しかったことを信じたい。

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図 12 エベレット・M・ロジャースによるイノベーター理論の五分類にスマートフォンを当てはめる

(Excel で作成)

(注1)イノベーター理論とは

イノベーター理論とは 1962 年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授

(Everett M. Rogers)が提唱したイノベーション普及に関する理論で、商品購入の態度を新商品購入

の早い順に五つに分類したもの。

(注 2)普及率 16%の論理

イノベーター理論の分類の中で、イノベーターは少人数であり、重視するポイントが商品の新しさその

もので、商品のベネフィットにあまり注目していない。一方、アーリーアダプターは新しいベネフィットに

注目していて、他の消費者への影響力が大きいことから、新しいベネフィットを自らのネットワークを通じ

て伝えてくれる。イノベーターとアーリーアダプターは合わせても市場全体の 16%しかないが、この2者

まで普及するかどうかが次のアーリーマジョリティ、レイトマジョリティに広がるかどうかの分岐点になる。こ

のことから、ロジャース教授はアーリーアダプターを重視し、「普及率 16%の論理」として提唱している。

「普及率 16%の論理」に対して、米・マーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーア(Geoffrey

                      スマートフォンに対する感応度

1.イノベーター冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人。市場全体の2.5%

  いわゆる機械オタクとして実用性やコストパフォーマンスを度外視して真っ先に購入する

2.アーリーアダプター流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%

  商品の発売と同時にそれが自分にとって実用的かどうか判断し、スマートフォンを有効に利用する

3.アーリーマジョリティ比較的慎重派な人。平均より早くに新しいものを取り入れる。ブリッジピープルとも呼ばれる。市場全体の34.0%

  流行に敏感で、スマートフォンが流行になる前後でスマートフォンを購入する

4.レイトマジョリティ比較的懐疑的な人。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする。フォロワーズとも呼ばれる。市場全体の34.0%

  スマートフォンが完全に流行になった後に、「周りが持っているから」、「便利そうだから」といった理由でなんとなく購入する

5.ラガード最も保守的な人。流行や世の中の動きに関心が薄い。イノベーションが伝統になるまで採用しない。伝統主義者とも訳される。市場全体の16.0%

  周囲の大多数がスマートフォンを持っていても、「難しそうで使えない」、「すぐ壊れそう」などの言い訳により購入を回避する

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A. Moore)は、ハイテク産業の分析から、アーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間には容易に超

えられない大きな溝(Chasm:キャズム)があることを示している。この溝を超えないと小規模のまま市場

から消えていくため、アーリーアダプターを捉えるマーケティングだけでなく、アーリーマジョリティに対す

るマーケティングも必要という「キャズム理論」を説いている。

図 13 近い未来に完成するかもしれない!?スマートフォンによる立体ホログラム通信

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<参考資料>

パソコンサイト

①NTT ドコモ オフィシャルウェブサイト

http://www.nttdocomo.co.jp/

②au by KDDI オフィシャルウェブサイト

http://www.au.kddi.com/

③ソフトバンクモバイル オフィシャルウェブサイト

http://mb.softbank.jp/mb/customer.html

④アップル社 オフィシャルウェブサイト

http://www.apple.com/jp/

⑤携帯電話の歴史:携帯電話情報サイト

http://www.doplaza.jp/museum/index.html

⑥図録円の対ドル・対ユーロ為替レートの推移

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5070.html

⑦「こんなものいらない!」携帯電話で無くても良い機能・サービスのトップは!?

http://www.garbagenews.net/archives/546038.html

⑧社団法人 電気通信事業者協会

http://www.tca.or.jp/database/

⑨マクロミル 公開調査データ 「スマートフォンに関する調査」

http://www.macromill.com/r_data/20110228smartphone/index.html

本・雑誌

①『イノベーションの普及』 著者:エベレット・M・ロジャース

②『キャズム:ハイテクをブレークさせる「超」マーケティング理論』 著者:ジェフリー・ムーア

③『クチコミはこうしてつくられる:おもしろさが伝染するバズ・マーケティング』 著者:エマニュエル・ロー

ゼン

④『急に売れ始めるにはワケがある:ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』 著者:マルコム・グ

ラッドウェル

⑤「スマホ最前線」 週刊東洋経済 2011 年 10 月 8 日号

⑥「徹底解剖スマホ 100」 日経ビジネス 2011 年 12 月 12 日号