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口腔カンジダ症に関する最新情報をお届けします Oral Diagnostics Approach No.2 September 2012 ランチョンセミナー1 意外に多い口腔カンジダ症 ─ 口腔カンジダ症を見逃さないためのポイントと有効な抗真菌剤の使い方 ─ 2012623日(土)12:30~13:30 つくば国際会議場 1階大会議室102 日 時 場 所 一般社団法人日本老年歯科医学会 昭和薬品化工株式会社 共 催 独立行政法人 国立病院機構栃木病院 歯科・歯科口腔外科・小児歯科 歯科口腔外科医長 演者  岩渕 博史 先生 東京歯科大学 有床義歯補綴学講座 主任教授 座長  櫻井 薫 先生 一般社団法人日本老年歯科医学会 第23回学術大会 今なぜカンジダ菌が問題になっているか 口腔カンジダ症患者の増加 口腔カンジダ症の原因となっている カンジダ菌は、単独では非常に力が弱 く、ほかの常在菌に紛れてしまうと、 発育することができません。健常者で あれば、その方の持っている免疫力に よって、カンジダ菌の増殖が抑えられ るため、口腔カンジダ症は発症しませ ん。 そのような口腔カンジダ症が、今な ぜ問題になっているのでしょうか。 その理由として、最近特に全身の抵 抗力や免疫力が低下した易感染性宿主 が増え、菌交代現象や日和見感染症に より口腔カンジダ症が増えてきたこと が挙げられます。 易感染性宿主が増加した背景には、 免疫不全状態を生じる疾病、AIDS、 熱傷、悪性腫瘍、肝硬変、膠原病、糖 尿病等の罹患患者の増加、免疫不全状 態を生じさせる各種薬剤、すなわち膠 原病の治療や移植治療などに使われる 免疫抑制剤やステロイド、抗がん剤の 使用の増加のほか、医療の高度化があ ります。医療の高度化によって平均余 命が延び、高齢化が進行し、今まで助 からなかったような方々が助かり、回 復するまでの期間、易感染性宿主とな って、日和見感染症である口腔カンジ ダ症の患者をいっそう増加させていま す。 どのような条件下で発症するか 口腔カンジダ症が発症するためのリ スク要因には、全身的要因と局所的要 因があります(1)。 全身的要因として日和見感染症のほ 独立行政法人国立病院機構栃木病院 歯科・歯科口腔外科・小児歯科 歯科口腔外科医長 社団法人日本口腔外科学会口腔外科専門医(指導医) インフェクションコントロールドクター(ICD) 日本歯科心身医学会認定医 一般社団法人日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 口腔カンジダ症の原因菌であるカンジダ菌は口腔常在菌の 1 つである。そ のため口腔カンジダ症を診断・確定する他覚所見が乏しい症例もあり、誤っ て別の診断をされて症状を悪化させているケースもある。実際には抵抗力や 免疫力が低下した虚弱者・高齢者・要介護者などに口腔カンジダ症の患者が いると思われる。本セミナーでは症状を見逃さないためのポイントと最も効 果的な治療法について、岩渕博史先生にご講演いただいた。 口腔カンジダ症のリスク因子 1

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Page 1: ランチョンセミナー1 意外に多い口腔カンジダ症 Diagnostics Approach % ! Senpuku et al., Systemic diseases in association with microbial species in oral biofilm from

口腔カンジダ

症に関する最

新情報をお届

けしますOral

Diagnostics ApproachNo.2 September 2012

ランチョンセミナー1

意外に多い口腔カンジダ症─ 口腔カンジダ症を見逃さないためのポイントと有効な抗真菌剤の使い方 ─

2012年6月23日(土) 12:30~13:30つくば国際会議場 1階大会議室102

日 時

場 所

一般社団法人日本老年歯科医学会昭和薬品化工株式会社

共 催

独立行政法人国立病院機構栃木病院歯科・歯科口腔外科・小児歯科 歯科口腔外科医長演者 岩渕 博史 先生

東京歯科大学有床義歯補綴学講座 主任教授座長 櫻井 薫 先生

一般社団法人日本老年歯科医学会第23回学術大会

今なぜカンジダ菌が問題になっているか

口腔カンジダ症患者の増加

口腔カンジダ症の原因となっている

カンジダ菌は、単独では非常に力が弱

く、ほかの常在菌に紛れてしまうと、

発育することができません。健常者で

あれば、その方の持っている免疫力に

よって、カンジダ菌の増殖が抑えられ

るため、口腔カンジダ症は発症しませ

ん。

そのような口腔カンジダ症が、今な

ぜ問題になっているのでしょうか。

その理由として、最近特に全身の抵

抗力や免疫力が低下した易感染性宿主

が増え、菌交代現象や日和見感染症に

より口腔カンジダ症が増えてきたこと

が挙げられます。

易感染性宿主が増加した背景には、

免疫不全状態を生じる疾病、AIDS、

熱傷、悪性腫瘍、肝硬変、膠原病、糖

尿病等の罹患患者の増加、免疫不全状

態を生じさせる各種薬剤、すなわち膠

原病の治療や移植治療などに使われる

免疫抑制剤やステロイド、抗がん剤の

使用の増加のほか、医療の高度化があ

ります。医療の高度化によって平均余

命が延び、高齢化が進行し、今まで助

からなかったような方々が助かり、回

復するまでの期間、易感染性宿主とな

って、日和見感染症である口腔カンジ

ダ症の患者をいっそう増加させていま

す。

どのような条件下で発症するか

口腔カンジダ症が発症するためのリ

スク要因には、全身的要因と局所的要

因があります(1)。

全身的要因として日和見感染症のほ

独立行政法人国立病院機構栃木病院  歯科・歯科口腔外科・小児歯科 歯科口腔外科医長社団法人日本口腔外科学会口腔外科専門医(指導医)インフェクションコントロールドクター(ICD)日本歯科心身医学会認定医一般社団法人日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

 口腔カンジダ症の原因菌であるカンジダ菌は口腔常在菌の 1つである。そのため口腔カンジダ症を診断・確定する他覚所見が乏しい症例もあり、誤って別の診断をされて症状を悪化させているケースもある。実際には抵抗力や免疫力が低下した虚弱者・高齢者・要介護者などに口腔カンジダ症の患者がいると思われる。本セミナーでは症状を見逃さないためのポイントと最も効果的な治療法について、岩渕博史先生にご講演いただいた。

口腔カンジダ症のリスク因子

1

Page 2: ランチョンセミナー1 意外に多い口腔カンジダ症 Diagnostics Approach % ! Senpuku et al., Systemic diseases in association with microbial species in oral biofilm from

か、抗菌剤の長期使用によって口腔常

在菌叢が変化(2)し、菌交代現象が

起きていることが挙げられます。

口腔の日和見菌の中ではカンジダ菌

(Candida albicans)の占める割合が圧

倒的に多く、自立高齢者で 3割、要介

護高齢者で 4割以上の方から検出され

ています 1 )(3)。さらに、寝たきり

度が重くなればなるほど、カンジダ菌

をはじめとする日和見菌の検出率も高

まります 1 )。

局所的因子として、義歯の使用、口

腔乾燥症、口内炎、口腔環境の悪化が

問題となっています。カンジダ菌は付

着能がきわめて弱いですが、義歯を使

用していたり口腔乾燥症や口

内炎があったりすると、粘膜

の表面にカンジダ菌が付着し

やすい状態ができ、そこに付

着して定着し、菌糸を伸ばし

て病原性を示します。よって、

カンジダ菌を増やさないため

には、このような局所的因子

を制御することが重要なポイ

ントになります。

また、残存歯数がない総義

歯の方よりも、残存歯数の多

い方のほうがカンジダ菌の菌

数が増加することがわかって

います 1 )。このことから、歯

のケアが非常に重要になって

きます。

残存歯数が多い方のカンジダ菌の菌

数が増加する理由として、う蝕や歯周

病に関連する菌との関係がよく報告さ

れています。有名なのは「根面う蝕の

原因菌となる乳酸桿菌とC. albicansは

共存共栄状態にある」です。その他、

ブドウ球菌や、黒毛舌の原因となる黒

色色素産生菌とカンジダ菌との関係も

指摘されています。

手術前後でも体の抵抗力が下がるこ

とから、カンジダ菌の菌数がかなり増

えることがわかっています 2 )。そのた

め、周術期の口腔機能管理に関しても、

このカンジダ菌をターゲットにする必

要があります。

カンジダ菌とはどのようなものか

口腔カンジダ症も深在性カンジダ症に

最初に、よく誤解されるカンジダ症

全体の分類の話をします。

どこにカンジダ菌が感染したのかと

いう分け方では、大きく「表在性カン

ジダ症」と「深在性カンジダ症」があ

ります。一般的に表在性カンジダ症は

粘膜・皮膚型カンジダ症で、これが通

常の口腔カンジダ症(皮膚カンジダ症)

といわれます。それに対し、深在性カ

ンジダ症は全身性カンジダ症(全身感

染型)、深部・内臓カンジダ症といわ

れます。

最近話題になっているのは、口腔内

のカンジダ菌が唾液と一緒に誤嚥され

て真菌性肺炎もしくはカンジダ性肺炎

が起きているのではないか、というこ

とです。いくら抗菌剤を使ってもなか

なか治らない難治性の肺炎は、カンジ

ダ菌が影響しているのではないかと疑

うべきであるとされています。

このようなカンジダ症だけが深部・

内臓カンジダ症と思われていますが、

「深在性カンジダ症=皮下性カンジダ

症(皮下組織感染型)」です。つまり、

粘膜や皮膚の表面にカンジダ菌が付着

して、それが徐々に深部に侵攻してい

き、皮下組織・粘膜下組織にまで達し

たものを深在性カンジダ症といいます。

そうなると口腔カンジダ症でも、長

い期間感染していると、付着していた

カンジダ菌が菌糸を伸ばし、口腔粘膜

上皮内に入り、最終的には粘膜上皮下

組織まで達し重篤化しますので、口腔

カンジダ症でも深在性のカンジダ症と

なります。

皮下組織・粘膜下組織までカンジダ

菌が侵攻しだすとカンジダ抗原が産生

され、深在性カンジダ症の特異的なマ

ーカー(カンジテック™ など)が陽性

になります。そのため、口腔カンジダ

症でもカンジダ菌が粘膜上皮下組織な

どに入ると、このマーカーが陽性にな

ることがあります。

このような深在性の口腔カンジダ症

は、ただ単にうがいをしたりぬぐった

りしただけでは、決して治りません。

白い斑点や偽膜が口腔内にできたとき、

ポビドンヨード製剤でうがいをすると

表面はきれいになり、治ったと勘違い

する方がいますが、カンジダ菌の菌糸

は口腔粘膜上皮内に残っているため、

多くの場合再発をしてきます。

見逃しやすい口腔カンジダ症

次に、口腔カンジダ症に限った臨床

的な分類(4)にそって症例の説明を

します。

 [症例 1 ]は急性偽膜性カンジダ症の

症例です(5)。白い斑点や偽膜がで

きる病型で、内科や小児科では鵞口瘡

とも呼ばれます。

Oral Diagnostics Approach

%

Senpuku et al., Systemic diseases in association with microbial species in oral biofilm from elderly requiring care. Gerontology 2003; 49: 301-309.

歯垢における日和見菌検出率(自立高齢者と要介護高齢者の比較)1)

口腔内細菌数

年 齢

口腔細菌叢の変化

2

3

Page 3: ランチョンセミナー1 意外に多い口腔カンジダ症 Diagnostics Approach % ! Senpuku et al., Systemic diseases in association with microbial species in oral biofilm from

 [症例 2 ]は慢性肥厚性カンジダ症の

症例です(6)。全身性エリテマトー

デス(SLE)に罹患している方で、ス

テロイドを長期投与していたところ口

腔カンジダ症を発症しました。

 [症例 3 ]は慢性萎縮性カンジダ症(紅

斑性カンジダ症、赤いカンジダ症)の

症例です(7)。義歯の床下粘膜にこ

のように赤くただれた所見があれば、

最初に口腔カンジダ症を疑ってくださ

い。単なる粘膜炎、義歯による擦過と

勘違いされ、ステロイド軟膏が塗られ

てしまうことが多いのですが、口腔カ

ンジダ症の場合、いくら塗っても治り

ませんし、塗れば塗るほど症状が悪化

していきます。

 [症例 4 ]は特殊な慢性粘膜皮膚カン

ジダ症の症例です(8)。諸説ありま

すが、カンジダ菌の特異的抗体が先天

的に欠落することによって生じ、内分

泌異常を伴うことが多く、全身のいろ

いろな部分にカンジダ症や真菌症が発

症する病態です。

 [症例 5 ]は口角炎の症例です(9)。

WHOでは「両側の口角炎の原因は口

腔カンジダ症」とされています。こう

した場合、胃が悪いなどということで

はなく、口腔カンジダ症を疑って抗真

菌剤を使ってください。

 [症例 6 ]は正中菱形舌炎の症例です

(�)。これもカンジダ菌が原因とされ

ています。

その他、私の行った調査では、がん

治療で化学療法をやった方や、化学療

法と放射線治療を併用した方の半数近

くの方からカンジダ菌が検出され、か

なりの高頻度で口腔カンジダ症を合併

していました。

また、長期入院患者・老健施設入居

者、人工呼吸器装着者、HIV感染患者

に口腔カンジダ症が多くみられました。

変わったところでは、カンジダ菌が不

妊症に影響していたと疑わせる症例も

ありました。

口腔カンジダ症の治療法

抗真菌剤の有効な使い方

主な抗真菌剤のうち、口腔カンジダ

症の治療に適応のあるものを赤字で示

しました(�)。また、�に口腔カン

ジダ症の治療における処方の実際をま

とめました。

処方の第 1選択薬として挙げられて

Oral Diagnostics Approach

口腔カンジダ症の臨床的分類疾患名 症状 好発部位 特徴

急性偽膜性カンジダ症 灰白色、苔状の偽膜性炎症 口腔粘膜全体 急性経過。鵞口瘡(thrush)ともいう

慢性肥厚性カンジダ症 肉芽腫型白斑型

頬粘膜・口角舌・口蓋

慢性経過。肥厚性、肉芽腫性カンジダ性白板症

慢性萎縮性カンジダ症紅斑性カンジダ症

紅斑型びらん型

口蓋・歯肉口角

義歯床下カンジダ症口角びらん

慢性粘膜皮膚カンジダ症 肉芽腫型、ときにびらん型

口腔は粘膜全体、他に皮膚・爪

内分泌異常を伴うことが多い。カンジダ特異的な細胞性免疫不全

(西山茂夫『口腔粘膜疾患アトラス』文光堂・1982年、松田登・藤林孝司『口腔粘膜疾患の診断と治療』書林・1983年より一部改変)4

主な抗真菌剤一般名 商品名 剤形(容量) 特徴

ポリエン系 nystatin ナイスタチンⓇ 錠剤(50万単位) 腎障害amphotericin B ファンギゾンⓇシロップ シロップ(100mg/mL) ほとんど血中移行しない

イミダゾール系 miconazole フロリード™ゲル ゲル経口用( 2 %) ほとんど血中移行しないトリアゾール系 fluconazole ジフルカンⓇ カプセル(50mg、100mg) 半減期長い

itraconazole イトリゾールⓇ カプセル(50mg)内用液( 1 %)

腎障害少ない

[症例 6 ]

�正中菱形舌炎

[症例 5 ]

9口角炎

[症例₄]

8慢性粘膜皮膚カンジダ症

[症例₁]

5急性偽膜性カンジダ症

[症例₂]

6慢性肥厚性カンジダ症

[症例₃]

7慢性萎縮性カンジダ症

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いるフロリード™ ゲル経口用 2%には

現在 5 gチューブ(�左)と、最近発

売された20gチューブ(�右)があり

ます。

私が勧めている処方の仕方は、 1日

5 gを 1 日 3 回に分け、毎食後口腔内

に塗布(添付文書通りの用法・用量は

1日10~20gを 1日 4回に分けて使用)

して、 7~14日は使うというものです。

3~ 4 日で見た目上よくなりますが、

ここで治療をやめるとカンジダ菌が残

ってしまい再発することが多いです。

再発を繰り返すのは使用量が少ないた

めであるので、 7~14日は十分な量を

使ってください。

20gチューブの場合、 1 日 5 g使う

とすると 4日分です。20gチューブを

2本処方すると 8日分あるので、だい

たい 1人の患者さんの治療にちょうど

よい量です。もちろん 3本、12日分処

方していただいても結構です。

軽~中症の方には 2本、重症の方に

は 3本ぐらい処方しないと効果があり

ません。塗布された薬剤が唾液に希釈

されてしまうため、十分な量を使わな

いとうまく効果が現れません。

大型の有床義歯を装着している方の

場合、フロリード™ ゲル経口用 2 %の

義歯基底面少量塗布療法をお勧めして

います 3 )。義歯の基底面(粘膜面)に

1日わずか 1 g、 2 週間塗ります。そ

の臨床的効果・真菌学的効果はデータ

にもはっきり現れています(�)。

義歯の基底面(粘膜面)に塗ってそ

のまま装着させるため密閉療法となり、

塗布部にフロリード™ ゲル経口用 2%

が長時間停滞します。

第 2選択薬はイトリゾールⓇ 内用液

1 %です。 1 回20mL、 1 日 1 回内服

します。しかし、下痢の副作用が非常

に多いため、下痢をする方には標準量

を半分にして 1 回10mL、朝晩 2 回、

2分間含嗽療法を行います。

イトリゾールⓇ 内用液 1 %を内服し

た場合、臨床的効果は有効率90.3%、

真菌学的効果は消失71%で、内用液含

嗽療法の場合、臨床的効果は有効率72

%、真菌学的効果は消失68% 4 )でした。

第 1・ 2選択薬の両方が使えない場

合、第 3選択薬であるファンギゾンⓇ

シロップ100mg/mLを使います。これ

は味が良くないので原液をそのまま使

っている先生は少ないと思います。

一般的には、ファンギゾンⓇシロッ

プ100mg/mL(10mL)に蒸留水(490 

mL)を加え 2 %溶液に調製し、 1回

20mL、 1 日 3 回、 1 ~ 2 週間、毎食

後うがいします。その臨床症状の改善

率は自験例で66.1%、真菌学的効果の

消失は55%でした。

これら 3剤の特徴と注意(�)、効

果を十分踏まえたうえで処方するよう

にしてください。

なお、ファンギゾンⓇシロップ100mg/ 

mLはうがいをして使う方が多く、フ

ロリード™ ゲル経口用 2%も局所塗布

をして使っている先生がたくさんいま

す。しかし両製剤とも診療報酬請求上

は外用剤ではなく内服薬で、内服処方

しないと返戻されてしまいますので、

その点を注意して使用してください。

1 )Senpuku, et al:Systemic diseases in association with microbial species in oral biofilm from elderly requiring care. Gerontology, 49:301-309, 2003.

2 )Senpuku, et al:Post-operative infection by pathogenic micro-organisms in the oral cavity of patients with prostatic carcinoma. Journal of International Medical Research, 34:95-102, 2006.

3 ) 岩渕博史ら:ミコナゾールゲルの義歯基底面少量塗布療法.歯薬療法,19:22-27, 2000.

4 )岩渕博史ら:口腔カンジダ症に対するイトラコナゾール内用液(ITCZ-OS)の有効性の検討.新薬と臨床,56:1607-1614, 2007.

◆企画・発行:昭和薬品化工株式会社 〒104-0031 東京都中央区京橋二丁目17番11号 Tel 03-3567-9571 Fax 03-3561-0613 http://www.showayakuhinkako.co.jp

◆編集・制作:株式会社ひでじま 〒113-0033 東京都文京区本郷二丁目16番8号

D6298105E2012年 9 月(A-1209HI)

処方の実際

◆第 1 選択薬フロリード™ ゲル経口用 2 %(ミコナゾールゲル)5 gまたは20g1 日 5 gを 3 回に分け、毎食後口腔内に塗布  7 〜14日量

(保険請求上は 1 日10〜20gを 4 回に分け○日間としないと査定の可能性あり)大型の有床義歯を装着している場合義歯基底面少量塗布療法

◆第 2 選択薬イトリゾールⓇ 内用液 1%(イトラコナゾール内用液)1 回20mL  1 日 1 回 夕食前口腔内全体に薬を行きわたらせた後飲み込む 7日分下痢症状が強い場合イトリゾールⓇ内用液 1 %含嗽療法

◆第 3 選択薬ファンギゾンⓇシロップ100mg/mL

(アムホテリシンBシロップ)10mL+蒸留水490mL溶液( 2 %溶液)1 回20mL  1 日 3 回 毎食後含嗽  8 日分

(保険適用外として扱われる可能性あり)�

フロリード™ ゲル経口用2 %の義歯基底面少量塗布療法の臨床的効果・真菌学的効果3)

臨床的効果著明改善   6/10(60.0%)改  善   2/10(20.0%)不  変   2/10(20.0%)悪  化   0       

真菌学的効果消  失   6/10(60.0%)減  少   3/10(30.0%)不  変   1/10(10.0%)悪  化   0       

薬剤の特徴と注意

◆フロリード™ ゲル経口用 2 %(ミコナゾールゲル)口角炎や病変局所に塗布して使用可。飲み込みできない患者にも局所塗布可。妊婦への投与は禁忌。ハルシオンⓇやリポバスⓇなどとは併用禁忌。ワルファリンとは併用注意。

◆イトリゾールⓇ内用液 1%(イトラコナゾールシロップ)重症の口腔カンジダ症に対して有効。経腸栄養の患者でも胃管などより注入可。妊婦への投与は禁忌。下痢の発生がやや多い。ハルシオンⓇやリポバスⓇなどとは併用禁忌。ワルファリンとは併用注意。

◆ ファンギゾンⓇシロップ(アムホテリシンBシロップ)ほとんど血中に移行しないため、副作用が少なく、局所治療に適する。他剤との相互作用がほとんどなく、服用薬の多い高齢者にも使用しやすい。ワルファリン服用患者にも使用可。本来、小児用なので小児にも投与可能である。妊婦へは慎重投与。特有な臭いがある。

�フロリード™ ゲル経口用 2 %