0907 out l co heavy oil - jogmec石油・天然ガス資源情報...

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- 1 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:2009/7/16 調査部:舩木弥和子 コロンビア:原油、天然ガスともに増産を実現 (Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas、Wood Mackenzie 他) 1.コロンビアの原油生産量は 1999 年の 83.8 万b/d から 2004 年には 55.1 万b/d に急減したが、政府 の外資導入政策が奏功し、探鉱・開発活動が活発化してきた。特に Ecopetrol や Pacific Rubiales による Llanos Basin の重質油開発が進んだことで、原油生産量は増加に転じ、2009 年は 65~70 万 b/d となる 見通しだ。 2.天然ガス生産量も、国内需要増とベネズエラへの輸出により増加している。2008 年に開始されたベネ ズエラへのガス輸出は、同国からの要請もあり、北東部の Ballena ガス田を中心にその量を増加させてい る。 3.Ecopetrol は、2008~15 年に 600 億ドルを投じて、2015 年に同社の生産量を原油換算 100 万 b/d に 増加させることを計画している。そのため、コロンビア国内だけでなく、ペルー、米国メキシコ湾、ブラジ ルなどでも積極的に資産買収や探鉱・開発活動を進めている。 4.コロンビアで活動中の企業は中小規模の企業が多く、2008 年半ば以降の油価下落により財務状況が 悪化し、プロジェクトを遅らせたり、活動を縮小する企業が出現するのではないかと懸念されていた。し かし、これら中小規模の企業が原油生産量を増加させ、同国の主要油田である Cusiana-Cupiagua 油田 や Cano Limon 油田の生産減退を補っている。コロンビアの重質油が、米国市場におけるベネズエラの 重質油減少分を穴埋めする可能性があるとの見方も出ている。 1.重質油開発により原油生産量増加 コロンビアの原油生産量は、1999 年の 83.8 万 b/d をピークに 2000 年代初めに急激に減少した。これ は、主要油田である BP の Cusiana-Cupiagua 油田や Occidental の Cano Limon 油田の生産減退と、契約 条件が厳しく、また、ゲリラ活動が激化したことで探鉱・開発活動が停滞し、大規模な発見がなかったこと によるものだ。 コロンビア政府は、生産量減退に歯止めをかけるため、2003 年に国営石油会社 Ecopetrol とは別に Agencia Nacional de Hidrocarburos(ANH)を設立し、鉱区付与や契約手続きを担当させるとともに、ロイ ヤルティを引き下げたり、生産期間の制限を廃止するなど契約条件を石油会社に有利に変更した。また、 ANH がライセンスラウンドを頻繁に実施し、治安も以前に比べれば回復した。このように政府が積極的に 外資導入政策をとった結果、コロンビアは上流部門での活動を行うことが中南米で最も魅力的な国となり、 契約締結件数が増加し、探鉱・開発活動も活発になった。

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Page 1: 0907 out l co heavy oil - JOGMEC石油・天然ガス資源情報 ......3.Ecopetrolは、2008~15年に600億ドルを投じて、2015年に同社の生産量を原油換算100万b/dに

- 1 - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

更新日:2009/7/16

調査部:舩木弥和子

コロンビア:原油、天然ガスともに増産を実現

(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas、Wood Mackenzie 他)

1.コロンビアの原油生産量は 1999 年の 83.8 万 b/d から 2004 年には 55.1 万 b/d に急減したが、政府

の外資導入政策が奏功し、探鉱・開発活動が活発化してきた。特に Ecopetrol や Pacific Rubiales による

Llanos Basin の重質油開発が進んだことで、原油生産量は増加に転じ、2009 年は 65~70 万 b/d となる

見通しだ。

2.天然ガス生産量も、国内需要増とベネズエラへの輸出により増加している。2008年に開始されたベネ

ズエラへのガス輸出は、同国からの要請もあり、北東部の Ballena ガス田を中心にその量を増加させてい

る。

3.Ecopetrol は、2008~15 年に 600 億ドルを投じて、2015 年に同社の生産量を原油換算100 万 b/d に

増加させることを計画している。そのため、コロンビア国内だけでなく、ペルー、米国メキシコ湾、ブラジ

ルなどでも積極的に資産買収や探鉱・開発活動を進めている。

4.コロンビアで活動中の企業は中小規模の企業が多く、2008 年半ば以降の油価下落により財務状況が

悪化し、プロジェクトを遅らせたり、活動を縮小する企業が出現するのではないかと懸念されていた。し

かし、これら中小規模の企業が原油生産量を増加させ、同国の主要油田である Cusiana-Cupiagua 油田

や Cano Limon 油田の生産減退を補っている。コロンビアの重質油が、米国市場におけるベネズエラの

重質油減少分を穴埋めする可能性があるとの見方も出ている。

1.重質油開発により原油生産量増加

コロンビアの原油生産量は、1999 年の 83.8 万b/d をピークに 2000 年代初めに急激に減少した。これ

は、主要油田である BPの Cusiana-Cupiagua 油田や Occidental の Cano Limon 油田の生産減退と、契約

条件が厳しく、また、ゲリラ活動が激化したことで探鉱・開発活動が停滞し、大規模な発見がなかったこと

によるものだ。

コロンビア政府は、生産量減退に歯止めをかけるため、2003 年に国営石油会社 Ecopetrol とは別に

Agencia Nacional de Hidrocarburos(ANH)を設立し、鉱区付与や契約手続きを担当させるとともに、ロイ

ヤルティを引き下げたり、生産期間の制限を廃止するなど契約条件を石油会社に有利に変更した。また、

ANHがライセンスラウンドを頻繁に実施し、治安も以前に比べれば回復した。このように政府が積極的に

外資導入政策をとった結果、コロンビアは上流部門での活動を行うことが中南米で最も魅力的な国となり、

契約締結件数が増加し、探鉱・開発活動も活発になった。

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- 2 - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

(出所:Ecopetrol 年報)

探鉱・開発活動が活発化したことにより、原油生産量は2004年から2006年にかけて55 万b/d台で推

移した後、2007 年には 56.1 万b/d、2008 年には 61.8 万b/d と増加に転じた。ANH の Armando Zamora

氏によると、コロンビアの原油生産量は2009年6月には65.5万b/d まで回復した。Ecopetrol、カナダの

Gran Tierra、Pacific Rubialesなどが増産を計画していることから、原油生産量は今後も当面安定した増加

を続け、2009 年は対前年比約10%増の 65~70 万b/d に達し、2010~11 年にはコロンビアは原油生産

の新たなピークを迎えるとみられている。

コロンビアは 2002 年には 2006 年に、2003 年には 2009 年に石油の純輸入国になる可能性があると言

われていたが、2008 年末の政府の見通しでは 2017 年以前に純輸入国になる可能性はなくなったという

ことだ。

しかし、この原油生産量の増加は、探鉱活動の成果というよりは、2003~08 年に油価が上昇したことで、

Llanos重質油プロジェクトやRubiales油田などの成熟した重質油油田の開発が進められたことによるもの

だ。将来的には新規発見からの生産が大きな役割を果たすことになろうが、今後数年間は Llanos Basin

などの重質油プロジェクトがコロンビアの原油生産を支えていくことになると考えられる。コロンビアの原

油生産量に占める重質油の割合は 2008 年には全生産量の 1/3 であったが、2015 年までには 2/3 を占

めることになる見通しだ。

コロンビアの重質油生産の中心は Llanos Basin だ。Llanos Basin での原油生産は 1970 年代に始まり、

Cusiana-Cupiagua油田やCano Limon油田、Meta川北部の小規模油田で生産が行われてきた。しかし、

Llanos Basin は面積が 26 万km2 と広大で、遠隔地にあること、インフラが整備されず環境や安全面で不

安があること、API 比重 20 度以下の重質油が主であることから、ポテンシャルはあるものの、十分に開発

が行われていなかった。

Ecopetrol は 2000 年以降Apiay、Cubarral 鉱区を中心に Llanos Basin で重質油の探鉱・生産を行って

いる。Ecopetrol は Cubarral 鉱区の Castilla 油田(API 比重 13.2度)をはじめとし、Apiay、Chichimene、

Libertad、Suriaなどの油田の開発に従事しており、2008年には約40坑を掘削、今後もこの水準で掘削を

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

続ける計画である。Apiay、Cubarral 鉱区を開発するため、Ecopetrol は当初パートナーを探していたが、

現在は単独で開発を進めており、2009年はLlanos Basinでの重質油の探鉱・生産に4億ドルを投資する

としている。

Rubiales 鉱区、Piriri 鉱区(2 鉱区合計で面積 569km2)にまたがる Rubiales 油田では、Pacific Rubiales

が探鉱・開発を進めている。Rubiales油田は1982年に発見され埋蔵量が6億bblとされるが、遠隔地にあ

り、また、API比重が12.5度と重質であることから当時は商業生産が難しいと判断され、放置されていた。

2002 年になると Meta Petroleum がオペレーターとなり、6 坑を掘削し、1,000b/d 弱が生産されるようにな

った。2003 年にはさらに 14 坑が掘削され、生産量は 3,800b/d に増加した。2007 年に Meta Petroleum

が Petro Rubiales(後の Pacific Rubiales)に買収され、生産量は 2007 年に 24,500b/d、2008 年に

30,300b/d と急増、現在は 5 万b/d となっている。Pacific Rubiales は PDVSA の元幹部が経営に携わって

おり、ベネズエラでの重質油生産の知識や経験を生かし、生産増を目指している。しかし、現時点では、

生産された原油はトラック 1,400 台で輸送されており、輸送手段が十分でないために生産量が抑えられ

ている。現在、5.3 億ドルを投じて Cusiana 油田まで全長 235km、送油能力 17 万 b/d のパイプラインが

建設されており、2009年第3四半期に完成、2010年初には本格的に稼働が開始され、2011年には送油

能力が 26 万 b/d まで引き上げられる計画である。パイプラインの完成により輸送費が削減され、開発が

順調に進めば、Rubiales 油田は 2009 年末には 10 万b/d を生産し、2012 年から 14 万 b/d のプラトー生

産が期待できるとされている。Pacific Rubiales は Rubiales 鉱区、Piriri 鉱区を取り囲む Quifa 鉱区の探鉱も

行っており、Rubiales 油田が Quifa 鉱区にも広がっている可能性があるという。

Llanos Basin では、Ecopetrol と Pacific Rubiales 以外にも Emerald が Campo Rico 油田、Perenco が

La Gloria、La Gloria Norte 油田で重質油の生産を行っている。

Llanos Basin 以 外 で は

Middle Magdalena Basin と

Upper Magdalena Basin で、

Ecopetrolが7つの油田で1.9

万b/dの重質油を生産してい

る。また、ONGC と Sinopec の

ジ ョ イ ン ト ベ ン チ ャ ー

Mansarovar が Middle

Magdalena Basin の 8 油田で

約2万b/dの重質油を生産し

ており、2012 年までには生産量を 4 万b/d に引き上げる計画である。 (出所:BP統計)

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- 4 - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

2.天然ガス生産量も増加、ベネズエラに輸出

コロンビアでは、天然ガスは主に Cusiana-Cupiagua 油田と Guajira 北部の Ballena ガス田で生産され

ているが、近年、国内需要増に対応し、また、ベネズエラへガスを供給する必要もあり、生産量が増加し

ている。特に Ballena ガス田の生産量は急増している。同ガス田のオペレーターの Chevron は 3 年間に

3 億ドルを投じ、生産量を 700 MMcf/d まで増加させた。Ballena ガス田で生産されるガスの約半分はベ

ネズエラに輸出され、残りは国内に供給されている。

ベネズエラでは天然ガス 6,000MMcf/d が生産されているが、このうち 70%が燃料や油層への圧入な

ど石油生産用として消費されているため、ガス不足の状態にある。そこで、ベネズエラとコロンビアは、両

国間にパイプラインを敷設し、2008 年に 50MMcf/d、2009~10 年に 150MMcf/d、2011 年に 100MMcf

/d のガスをコロンビアから輸出、2012 年からはパイプラインを逆走させ、16 年間にわたり 150MMcf/d の

ガスをベネズエラが輸出することで合意した。2007 年 10 月 12 日に、両国間に全長 224km、送ガス能力

500MMcf/dのパイプラインが開通し、2008年1月よりBallena ガス田からベネズエラのMaracaibo湖周辺

にガスが供給されている。ベネズエラ側の要求にこたえ、コロンビアからは2008年1~10月に139 MMc

f/dと合意した以上のガスが供給された。このため、Ecopetrol によると 2008 年の Guajira 州のガス生産量

は計画よりも 13%多くなったという。2009 年 4 月には、ベネズエラがコロンビアに天然ガス輸出量をさら

に引き上げ、300MMcf/d にするよう求めた。その結果、2009 年 6 月のコロンビアからベネズエラへの天

然ガス輸出量は350MMcf/dとなった。ベネズエラは天然ガスの豊富な東部と西部をパイプラインで結び

天然ガスを西部に供給する計画で、2004 年以降パイプラインの建設が行われているが、技術、資金の

両面から建設は遅れている。ベネズエラ国内には、必要なガスは当面コロンビアから輸入すればよいの

で、建設を急ぐ必要はないとの考えもあると言われている。

一方、コロンビアの天然ガス消費量も過去5年間に急増し、2004年の630MMcf/dから現在は850MM

cf/d となっている。経済危機の影

響はあるものの、コロンビアのガ

ス需要は今後も増加が見込まれ、

2020 年には 1,200~1,400MMcf/

dとなる見通しで、200~400MMcf

/d のガスが不足することになる。

コロンビア政府は、ONGC、Hess、

Petrobras、Ecopetrol が 2007 年に

鉱区を取得したカリブ海沖合鉱区

で天然ガスが発見、生産されることを期待している。 (出所:BP 統計)

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- 5 - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

3.Ecopetrol、生産量倍増を計画

Ecopetrol は、2008~15 年に 600 億ドルを投じて、2015 年に同社の生産量を原油換算 100 万 b/d に

増加させ、PIW 誌の石油会社ランキングの順位を 38 位から 27 位に上げることを計画している。

Ecopetrol の生産量は 2007 年が原油換算で 39.9 万b/d、2008 年が 44.7 万 b/d で、2009 年は 50 万

b/d を予定しており、2015 年までに 100 万 b/d を生産するためには、少なくとも年 10%の割合で生産量

を増加させていく必要がある。2015年の生産量の3/4は国内の生産で、重質油やEORを用いた成熟油

田からの生産になる見通しであるが、Ecopetrol はコロンビア国内だけでなく、ペルー、米国メキシコ湾、

ブラジルなどでも精力的に探鉱・開発を行っている。

Ecopetorl は、投資額 600 億ドルのうち約 100 億ドルは資産買収に使う計画であるとしている。また、

2008 年は探鉱・開発及び資産買収に 46 億 2,000 万ドルを投じ、2009 年はこれを 62 億 2,000 万ドルに

増加させるとしていたが、7 月になりこれを 70 億ドルに引き上げると発表した。

投資資金を確保するために、Ecopetrolは2007年に株式の20%売却を決定し、10.1%を売却、32億ド

ルを得ている。また、2009 年5 月には地元銀行団から 10 億ドルの融資をえることに成功し、現在は社債

15 億ドルの発行を計画している。

Ecopetrol の国別の主要な資産買収や探鉱・開発などの状況を以下にまとめた。

(1)コロンビア国内

2007 年11 月、Ecopetorol は BP と Total に対して、2010 年7 月から 2020 年3 月までの間に順次契約

が終了する Cusiana-Cupiagua 油田の 5 件のライセンスの延長を認めないことを決定した。現在は BP と

Total、Ecopetrol が権益を保有し、BP がオペレーターを務めているが、契約終了後は、Ecopetrol が権益

の 100%を保有し、オペレーターを引き継ぐこととなる。Cupiagua 油田は 1980 年代に、Cusiana 油田は

1992 年に発見された。1994 年に生産が開始され、生産量は 1999 年のピーク時には 43.1 万 b/d となっ

たが、2007 年には 10.4 万 b/d まで減少した。Cusiana-Cupiagua 油田の原油の残存埋蔵量は 1 億 800

万bblであるが、ガスの埋蔵量は3.5Tcfで、北部に隣接するFlorena、Pauto、Volcanera、Deleガス田の埋

蔵量1.2Tcfとあわせると4.7Tcfとなる。Cusiana-Cupiagua油田の随伴ガスは回収率を上げるため、また、

ガス市場がないため、これまで再圧入されていたが、ガス需要の増加から、今後はガスの生産に期待が

集まっている。

Ecopetrolは、2009年3月10日に、フランスのMaurel & Promからコロンビアの子会社Hocol Petroleum

を 5 億8,000 万ドルで買収した。Maurel & Prom は 2005 年に Knightsbridge Petroleum などからコロンビ

アの資産を買収してコロンビアに参入、Hocol Petroleum として活動を行ってきた。Hocol Petroleum は

Upper Magdalena Valley の Palermo 鉱区や Rio Parez 鉱区、Llanos Basin の Casanare 鉱区や Guarrojo

鉱区で生産を行っており、2008年の生産量は1.5万b/dであった。これらの鉱区の生産量は、2009年に

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- 6 - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

は 2.2 万b/d に増加する見通しである。また、Hocol Petroleum は Llanos Basin を中心に 16 の鉱区で探

鉱を行っており、Ecopetrol はこのうち SN-9、Muisca、Sabanero、Tangara 鉱区を除いた 12 の鉱区の権益

も取得することになった。加えて、Ecopetrol は Hocol Petroleum が保有していた Oleoducto del Alto

Magdalena(OAM)パイプラインの権益の 36.12%と Oleoducto de Colombia(ODC)パイプラインの権益の

21.72%を取得し、もともと保有していた権益と合わせてそれぞれのパイプラインの権益比率を 85.12%、

65.57%とすることとなった。OAMパイプラインはUpper Magdalena Valleyに沿ってTenay から Vasconia

まで全長398km、送油能力9.5 万b/d、ODC パイプラインは Vasconia からカリブ海岸の Coveñasまで全

長483km、送油能力22 万b/d のパイプラインである。

さらに、Ecopetrol は、3 月16 日には Enbridge から Ocensa パイプラインの権益の 24.7%を 4 億ドルで

買収し、コロンビア国内のパイプライン網に対する影響力を強めている。Ocensa パイプラインは

Cusiana-Cupiagua 油田とCoveñas を結ぶパイプラインで、全長は 829km、送油能力は 65 万b/dである。

Enbridge は 1995 年に Ocensa の権益を取得しオペレーターになった。Ecopetrol はすでに Ocensa パイ

プライン権益の 35.3%を保有していたので、この買収により同パイプラインの 60%を保有することとなり、

オペレーターとなった。

(2)ペルー

Ecopetrol は 2006 年 8 月、Ucayali Basin の Block90 の権益の 49.5%を RepsolYPF より取得、2007 年

10 月には、Maranon Basin の Block101 の権益の 30%を Occidental より取得した。また、2007 年のライセ

ンスラウンドでは Talisman55%、Ecopetrol45%のコンソーシアムで Maranhao Basin の Block134 を取得し、

さらに、Maranon Basin の 6 つの鉱区について Petrobras、Petroperu と Technical Evaluation Agreement

(TEA)を締結した。

2009 年に入り、Ecopetrol はこれまで以上に積極的にペルーへの参入を進めている。

Ecopetrol は、2 月には、KNOC と共同で、ペルーで探鉱・開発を行う Petro-Tech Peruana を所有する

Offshore International Group を 9 億ドルで買収した。Petro-Tech Peruana はペルー北西部沖合 Talara

BasinのBlock Z2B(水深15~120m)でAPI比重36度の原油12,500b/dとガス18MMcf/dを生産中で、

Ecopetrol は 3~5 年以内に同鉱区内で 200 坑を掘削し、生産量を倍増させる計画である。Petro-Tech

Peruana は Block Z2B のほかに、ペルー沖合の 10 鉱区を保有し(全ての鉱区で権益100%)、探鉱を行

っており、Ecopetrolはこれらの鉱区も取得することになる。さらに、Ecopetrol は Petro-Tech Peruana が保

有していた沖合掘削リグ 6 基をはじめとするサービス部門も引き継ぐこととなり、サービス部門のコスト高

の中、必要な時に掘削等の活動ができるようになった。

Ecopetrol は 3 月には、Petrobras から Ucayali Basin の Block 110 の権益の 50%と MaranonBasin の

Block 117 の権益の 25%を取得、4 月には MaranonBasin の Block 158 を Talisman55%、Ecopetrol45%

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

の権益比率で取得している。

(3)米国メキシコ湾

Ecopetrol は、2007 年 12 月に、Garden Banks の Shell がオペレーターを務める鉱区の権益の 25%を

取得した。

その後、2008 年9 月に Chevron の K2 プロジェクトの権益の 9.2%を 5.1 億ドルで取得、10 月に BP の

2つの鉱区にファームイン、11月にEniの所有する鉱区の権益の20~25%を取得、12月にStatoilHydro

がオペレーターを務めるプロジェクトの権益の 20~30%を取得、と 2008 年後半に積極的に米国メキシコ

湾の権益を取得した。

さらに、2009 年3 月に行われた OCS リースで、Ecopetrol は 2,056 万ドルで 26 鉱区を落札し、落札鉱

区数では Shell、BHP、BP に次いで第 4 位、最高額入札総額では第 10 位となった。Ecopetrol は落札し

た 26 鉱区のうち 11 鉱区で RepsolYPF とパートナーを組んでいる。

Ecopetrol は、米国メキシコ湾への参入により、同社のプレゼンスを高めるとともに、StatoilHydro などと

組むことで、深海での探鉱・開発技術を習得し、その技術をコロンビア沖合での探鉱・開発に生かしたい

と考えていると思われる。

(4)ブラジル

Ecopetrol は、2007 年の第 9 次ライセンスラウンドで、Campos Basin、Santos Basin、Para-Maranhao

Basin の合計 6 鉱区を Petrobras などとともに落札、取得した。2009 年 4 月には、Ecopetrol は Anadarko

より Campos Basin の BM-C-29 鉱区(面積 179km2、水深 30~100m)の権益の 50%を取得した。なお、

Ecopetrol は 2006 年に実施された第 8 次ライセンスラウンドで Petrobras とともに Tucano Basin の

TUC-T-156 鉱区を落札したが、ライセンスラウンド自体が中断されてしまい、ペンディングの状態にあ

る。

4.終わりに

コロンビアで探鉱・開発を行っている石油会社は、中小規模の企業が多い。そのため、2009 年初には

油価下落や世界的な金融危機の影響で、これらの企業の財務状況が悪化し、資金不足からプロジェクト

に遅れが出たり、ライセンスが返還されるような事態になったり、また、Ecopetrol も重質油開発を遅らせる

ようなことになり、コロンビアは試練の時を迎えるのではないかと懸念されていた。しかし、コロンビアでは

これらの企業が生産量を伸ばし、Cusiana-Cupiagua 油田や Cano Lilmon 油田の生産量減退分を埋める

という重要な役割を果たしている。油価も一時期よりは回復し、政府やEcopetrolなどが道路建設、パイプ

ライン、製油所、アップグレーダーなど重質油開発に必要なインフラの建設、拡張を進めていることから、

今後も生産増は続くと考えられる。カルタヘナやCoveñasからヒューストンまでは船で36時間と距離的に

Page 8: 0907 out l co heavy oil - JOGMEC石油・天然ガス資源情報 ......3.Ecopetrolは、2008~15年に600億ドルを投じて、2015年に同社の生産量を原油換算100万b/dに

- 8 - Global Disclaimer(免責事項)

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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

も近く、コロンビアの原油が米国市場でのベネズエラの重質油減少分を補う可能性があるとの見方も出

てきており、今後が注目される。

コロンビアの主要油・ガス田、原油パイプライン図

(各種資料より作成)