自然の輝きをそのまま残したい - ync.ne.jp · 5 よみカル no.295 よみカル...

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よみカル No.295 4 よみカル No.295 5 ●原田昭子さんの講座 恵比寿 第3水曜10:30〜15:00 第4土曜10:30〜12:30 町屋  第2・4火曜13:00〜15:00 横浜  第1水曜13:00〜15:00 ●原田昭子さんが主宰する東京押花文化普及協会の講座 荻窪(堀菊枝さん) 第2・4金曜10:15〜12:15 錦糸町(金子リヨさん) 第2・4火曜10:00〜12:00 柏(同上) 第2水曜13:00〜15:00 北千住(深津瑞枝さん) 第4日曜10:30〜12:30 川崎(同上) 第1・3木曜10:15〜12:15 八王子(田村道子さん) 第2・4火曜18:30〜20:30 町田(同上) 第2・4土曜12:30〜14:30 浦和(高橋栄子さん) 第2・4金曜10:00〜12:00 大宮(志賀信子さん) 第2水曜12:30〜14:30 インタビュー/原田昭子 ※1 ※2 調70 92 原田Akiko-Harada 押し花作家。NPO法人 東京押花文化普及協会 理事長。 庭や野の花を中心に、植物の自然な姿や色彩を生かした洗練された作品を制作。 よみうりカルチャーをはじめとしたカルチャースクールで教えるほか、 押し花作りを通して、子どもの情操教育や、福祉活動、 高齢者の生きがいづくりを支援している。 「庭の押し花」(文化出版局)、「花に恋して」(芸文社)など著作多数。 パンジーは初心者でも手軽に押せる花。花だけでなく葉や つぼみも押して作品に生かす。乾燥シートを使って、早く乾 燥させることが色を鮮やかに残すコツ。ガーベラは肉厚な ので、茎の裏などをナイフで削ると水分が抜けやすくなる。 「原田先生は、まるで研究者のよ うな方で、考案された技術や工夫 を、惜しげもなく教えてくれます。 先生も受講者もみな花が好きで すから、いつまでも話は尽きない ですね」と受講者。 ヤマアジサイ の押し花作品 ※1「オオイヌノフグリ」路傍や畑のあぜ道などに見られる越年草。3ページ、下左から2つ目の花。 ※2「ハルリンドウ」高さ10cmほどの小型の二年草。花期は3〜5月。3ページ、左一番上の花。

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よみカル No.295 4よみカル No.2955

●原田昭子さんの講座恵比寿 第3水曜10:30〜15:00    第4土曜10:30〜12:30町屋  第2・4火曜13:00〜15:00横浜  第1水曜13:00〜15:00●原田昭子さんが主宰する東京押花文化普及協会の講座荻窪(堀菊枝さん) 第2・4金曜10:15〜12:15錦糸町(金子リヨさん) 第2・4火曜10:00〜12:00柏(同上) 第2水曜13:00〜15:00北千住(深津瑞枝さん) 第4日曜10:30〜12:30川崎(同上) 第1・3木曜10:15〜12:15八王子(田村道子さん) 第2・4火曜18:30〜20:30町田(同上) 第2・4土曜12:30〜14:30浦和(高橋栄子さん) 第2・4金曜10:00〜12:00大宮(志賀信子さん) 第2水曜12:30〜14:30

インタビュー/原田昭子

◆押し花を始めたきっかけは何

でしょうか?

 

父がよく植物を買ってきた

ので、庭にはいつも花がありま

した。それを育てる母は、紅葉

で破れた障子を繕っていまし

た。私もレンゲソウで花飾りを

作ったり、野の花の蜜を吸った

り、自然の中で遊ぶ子どもだっ

たんです。それが原点なのかも

しれません。

 

押し花に接したのは結婚後

です。子育てに頑張り過ぎて

疲れていた私を、友人が外に

連れ出してくれました。カル

チャーセンターのたくさんの講

座の中から、押し花の美しさに

ひかれて受講することにしたの

です。それ以来、講座のある日

は私にとって特別な日になりま

した。花を通じてたくさんの友

人ができ、お茶をしながらのお

しゃべりも楽しくて……。

◆その後、指導者の道に?

 

主人の母は織物作家だった

のですが、個展の準備中に体を

悪くし、開催が難しくなりま

した。その穴埋めとして、私が

押し花の展示をすることに。初

めての個展でしたが、思いのほ

か好評をいただき、それがきっ

かけで、よみうりカルチャーの

町田センターを紹介していただ

きました。ですから、押し花を

始めたのも、個展も、そして講

座の開設も、周りの人に背中

を押されて実現したことなの

です。とても感謝しています。

◆野の花の自然な魅力が、原田

さんの押し花の特徴ですね

 

最初の頃は、花色をきれいに

残せることに感激して、押すこ

と自体が楽しみでした。花が

あればあるだけ押していたほ

ど。でも今は、一つひとつの植物

を大切に押そうと考えていま

す。同じ植物でも、それぞれ違

う表情を持っています。その美

しさをそのままに残してあげ

たいのです。

 

特に野の花は、ほんのわず

かな時期にしか出会う

ことができません。で

も、アスファルトの切

れ目や空き地を注

意深く見れば、都心

にもまだまだ自然はあ

ります。春には、※1オオイヌノ

フグリが花を咲かせているのを

見つけられます。その小さな瑠る

璃り

色の花に、日だまりの温かさ

を感じますね。そんな季節の

巡りを楽しみに待ち、一瞬の花

の輝きを残してあげるのも、押

し花の魅力だと思います。

◆植物の生態や構造も知らなけ

ばならないですね

 

ある時、野草を採っていたら、

根ごと引き抜いてしまったこと

があります。小さな草なのに

しっかりと根を伸ばしている。

何だか申し訳なくて、根も一緒

に押してみたんです。すると、

意外と面白い。根にも表情が

あるのですね。この根があるか

ら花が咲くのだと分かる。押

し花を作ることは、その植物を

よく知ることにつながります。

花の構造、葉の付き方、いつ咲い

て枯れるのか……よく観察す

るようになります。ガーデニン

グとはまた違った視点で植物

に接するようになります。

◆難しい植物や失敗したことは

ありますか?

 

まだ押し花を始めたばかり

の頃、山荘に自生していた※2ハル

リンドウを押そうと思いまし

た。小指の先ほどの、星形に咲

くかわいらしい花です。下草を

かき分けながら、宝物を集める

ように一生懸命に採りました。

夜になって、さあ押そう!と思っ

たら、みんな萎し

ぼんでいる。びっく

りして調べてみたら、ハルリンド

ウは太陽の光を受けて開き、夕

方には閉じる花だったのです。

慌ててライトを当ててみたけれ

ど開くはずありません。今では

笑い話です。

 

また、受講者とカラスウリの

花を押そうということになり、

青梅市のやぶまでみんなで出

かけました。カラスウリは夜に

花を咲かせます。懐中電灯で

照らしながら花を採り、その場

でうずくまって押しました。さ

ぞかし怪しい集団だったでしょ

うね(笑)。

◆花を押した後は作品づくり。

二つの楽しみがありますね

 

花を一つひとつ押していく作

業も、どんな作品にすれば花が

生きるだろうかと思案する過

程も、楽しいものです。また、押

し花をカードにして、遠く離れ

た友人や家族に送ることもで

きます。自分で育てた花や、旅

行先で拾った紅葉を押してハガ

キにします。きっ

と、写真や言葉以

上に雄弁に語って

くれます。「こんなに

きれいなんだ」と感動を共有す

ることができると思います。

◆講座ではどのようなことを心

掛けていますか?

 

受講される方々は、花が好き

な方ばかりですから、すぐに仲

良くなりますね。だから、私は

皆さんの新しい出会いをお手伝

いをする脇役です(笑)。

 

ある受講者さんは、70歳で

参加し始めて92歳で亡くなる

直前まで受講されていました。

後日お嬢さんが、「講座は、母

の人生最後の友人づくりの場

でした。たくさんの友達と花

があったから、長く楽しめたの

でしょう。いい人生だったと思

います」と言ってくださいまし

た。花を共通語に、今まで出会

えなかった人々と時間を共有

できることは、とても素晴らし

いことです。そこには、年齢差

も仕事も経験も関係ありませ

ん。ただ、花が好きということ

だけ。花からいただくご褒美だ

と、私は思っています。

自然の輝きをそのまま残したい

野の花の魅力

植物を観察する

花からのご褒美

原田昭子Akiko-Harada押し花作家。NPO法人 東京押花文化普及協会 理事長。庭や野の花を中心に、植物の自然な姿や色彩を生かした洗練された作品を制作。よみうりカルチャーをはじめとしたカルチャースクールで教えるほか、押し花作りを通して、子どもの情操教育や、福祉活動、高齢者の生きがいづくりを支援している。

「庭の押し花」(文化出版局)、「花に恋して」(芸文社)など著作多数。

パンジーは初心者でも手軽に押せる花。花だけでなく葉やつぼみも押して作品に生かす。乾燥シートを使って、早く乾燥させることが色を鮮やかに残すコツ。ガーベラは肉厚なので、茎の裏などをナイフで削ると水分が抜けやすくなる。

「原田先生は、まるで研究者のような方で、考案された技術や工夫を、惜しげもなく教えてくれます。先生も受講者もみな花が好きですから、いつまでも話は尽きないですね」と受講者。

ヤマアジサイの押し花作品

※1「オオイヌノフグリ」 路傍や畑のあぜ道などに見られる越年草。3ページ、下左から2つ目の花。※2「ハルリンドウ」 高さ10cmほどの小型の二年草。花期は3〜5月。3ページ、左一番上の花。