レセプト傷病分析の原理と手法--pdm法について · 1...

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1 厚生労働科学研究費補助金(政策科学推進研究事業) 分担研究報告書 レセプト傷病分析の原理と手法--PDM法について 分担研究者 岡本悦司(国立保健医療科学院技術評価部) 研究協力者 畑 栄一 (同研修企画部) 研究要旨 レセプト電算化によりレセプト情報の利活用は飛躍的に進展すると期待できるが,最大の障害 は傷病分析である。従来の人の作業に依存した主傷病分類法では,客観的な分類が不可能で あるだけでなく,個人情報保護の面でも好ましくない。そこでレセプトに記載された複数傷病名を 客観的かつ自動的に分析する原理(PDM法)を考案し,パソコン上で使用できるプログラムを開 発した。本稿では,PDM法の原理と概念,ならびにその精度を向上させるための補正法やシミュ レーションデータを使った検証法を解説し,その実際の応用例として宮城県名取市におけるイン フルエンザワクチン効果評価事業について紹介する。 個人情報を保護しつつ,レセプト情報の有効な利活用をはかるためには,含まれる情報が人 手を介することなく,全て機械的に処理されることが望ましい。紙レセプト主体の現在では,レセ プトのパンチ入力は外部委託され,とりわけ傷病分類は人が手と目で判断することがふつうであ る。レセプトの電子化がすすめば,パンチ入力の委託は必要なくなるが,傷病分類が人手に依 存するものであることに変わりはない。 また従来の人の判断で複数傷病の中から任意に主傷病を選択するいわゆる主傷病法では, レセプト情報を定量的かつ客観的に処理することは困難である。 こうした問題を解決し,個人情報保護をはかりつつ電子化レセプトを有効活用する目的で,複 数傷病の記載されたレセプトの日数,点数といった情報を客観的かつ自動的に分析する原理を 考案し,それをWindowsパソコン上で使用できるプログラムを開発した。 【推計法の必要性】 複数傷病の記載されたレセプトにおいて,傷病ごとの日数,点数が求められるとすれば理想で ある。しかしそれは不可能であり,唯一可能なのは真に近い値を「推計値」するしかない。 したがって真の値はわからないが限りなく近い「推計法」を開発することしか方法はない。 その根拠は 方程式の解が求まるのは変数<=方程式でなければならず,変数>方程式では求まらない。 という数学の公理にある。レセプトには常に1以上の傷病名が記載されている。つまり傷病名数 >=レセプト件数となる。傷病名数=レセプト件数(つまり全レセプトに傷病名が一つしかない)なら そもそもPDM法など不必要だから,複数傷病名レセプトを分析するには何らかの方法で推計す るしかない。 [説明] 3 件のレセプトを 1,2,3 で, 傷病名 A,B,C の一日当点数を a,b,c で,日数を N,点数を P であらわ し,レセプト 1 には A,B, レセプト 2 には A,B,C,レセプト 3 には A,C の傷病名が記載されている。す

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厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 (政 策 科 学 推 進 研 究 事 業 )

分 担 研 究 報 告 書

レセプト傷病分析の原理と手法--PDM法について

分 担 研 究 者 岡 本 悦 司 (国 立 保 健 医 療 科 学 院 技 術 評 価 部 )

研 究 協 力 者 畑 栄 一 (同 研 修 企 画 部 )

研 究 要 旨

レセプト電 算 化 によりレセプト情 報 の利 活 用 は飛 躍 的 に進 展 すると期 待 できるが,最 大 の障 害

は傷 病 分 析 である。従 来 の人 の作 業 に依 存 した主 傷 病 分 類 法 では,客 観 的 な分 類 が不 可 能 で

あるだけでなく,個 人 情 報 保 護 の面 でも好 ましくない。そこでレセプトに記 載 された複 数 傷 病 名 を

客 観 的 かつ自 動 的 に分 析 する原 理 (PDM法 )を考 案 し,パソコン上 で使 用 できるプログラムを開

発 した。本 稿 では,PDM法 の原 理 と概 念 ,ならびにその精 度 を向 上 させるための補 正 法 やシミュ

レーションデータを使 った検 証 法 を解 説 し,その実 際 の応 用 例 として宮 城 県 名 取 市 におけるイン

フルエンザワクチン効 果 評 価 事 業 について紹 介 する。

個 人 情 報 を保 護 しつつ,レセプト情 報 の有 効 な利 活 用 をはかるためには,含 まれる情 報 が人

手 を介 することなく,全 て機 械 的 に処 理 されることが望 ましい。紙 レセプト主 体 の現 在 では,レセ

プトのパンチ入 力 は外 部 委 託 され,とりわけ傷 病 分 類 は人 が手 と目 で判 断 することがふつうであ

る。レセプトの電 子 化 がすすめば,パンチ入 力 の委 託 は必 要 なくなるが,傷 病 分 類 が人 手 に依

存 するものであることに変 わりはない。

また従 来 の人 の判 断 で複 数 傷 病 の中 から任 意 に主 傷 病 を選 択 するいわゆる主 傷 病 法 では,

レセプト情 報 を定 量 的 かつ客 観 的 に処 理 することは困 難 である。

こうした問 題 を解 決 し,個 人 情 報 保 護 をはかりつつ電 子 化 レセプトを有 効 活 用 する目 的 で,複

数 傷 病 の記 載 されたレセプトの日 数 ,点 数 といった情 報 を客 観 的 かつ自 動 的 に分 析 する原 理 を

考 案 し,それをWindowsパソコン上 で使 用 できるプログラムを開 発 した。

【推 計 法 の必 要 性 】

複 数 傷 病 の記 載 されたレセプトにおいて,傷 病 ごとの日 数 ,点 数 が求 められるとすれば理 想 で

ある。しかしそれは不 可 能 であり,唯 一 可 能 なのは真 に近 い値 を「推 計 値 」するしかない。

したがって真 の値 はわからないが限 りなく近 い「推 計 法 」を開 発 することしか方 法 はない。

その根 拠 は

方 程 式 の解 が求 まるのは変 数 <=方 程 式 でなければならず,変 数 >方 程 式 では求 まらない。

という数 学 の公 理 にある。レセプトには常 に1以 上 の傷 病 名 が記 載 されている。つまり傷 病 名 数

>=レセプト件 数 となる。傷 病 名 数 =レセプト件 数 (つまり全 レセプトに傷 病 名 が一 つしかない)なら

そもそもPDM法 など不 必 要 だから,複 数 傷 病 名 レセプトを分 析 するには何 らかの方 法 で推 計 す

るしかない。

[説 明 ]

3 件 のレセプトを 1,2,3 で, 傷 病 名 A,B,C の一 日 当 点 数 を a,b,c で,日 数 を N,点 数 を P であらわ

し,レセプト 1 には A,B, レセプト 2 には A,B,C,レセプト 3 には A,C の傷 病 名 が記 載 されている。す

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ると 3 つの等 式 ができる。

P1=N1*(a1+b1)

P2=N2*(a2+b2+c2)

P3=N3*(a3 +c3)

これら 3 つの式 で a1,a2,a3,b1,b2,c2,c3 の 7 つの数 値 が求 められるか?

7 つの変 数 を求 めるには式 は 7 つ以 上 いる。しかるにレセプト件 数 (式 の数 )は常 に変 数 の数 よ

り少 ない。このため 7 つの数 値 を求 めることは不 可 である。

もっとも各 レセプトの各 傷 病 ごとの点 数 や日 数 が同 一 である場 合 は事 情 が異 なる。たとえば 3

つの傷 病 が同 じ点 数 ,日 数 で a,b,c と3つの変 数 なら

P1=N1*(a+b)

P2=N2*(a+b+c)

P3=N3*(a +c)

となり,必 ず解 が求 まる(傷 病 名 数 が 119 もあっても一 般 化 逆 行 列 を用 いれば瞬 時 に求 まっ

た)。

【重 回 帰 分 析 】

多 変 量 解 析 の観 点 からレセプトをみると,点 数 ,日 数 は目 的 変 数 ,多 数 の傷 病 名 は説 明 変

数 となる。重 回 帰 分 析 を用 いない理 由 について説 明 する。

日 数 や点 数 を目 的 変 数 に,119 の傷 病 分 類 ごとの傷 病 名 の出 現 数 (無 ければゼロ,1,2,3---)

を説 明 変 数 に重 回 帰 分 析 を行 うことは可 能 である。そして各 傷 病 分 類 の重 回 帰 係 数 は日 数 や

点 数 に対 する各 傷 病 の寄 与 度 を意 味 しており「重 み」として使 うことは考 えられる。しかしこの試

みは頓 挫 し断 念 した。その理 由 は以 下 のとおり。

●重 回 帰 係 数 は必 ず負 値 がでる

重 回 帰 分 析 は可 能 だが,119 傷 病 の各 係 数 の相 当 数 が負 値 になる。点 数 を比 例 配 分 する

PDM 法 では負 値 はつかえず,このことを数 学 上 では「モデルが破 綻 している」と呼 ぶという。おび

ただしい負 値 の理 由 としては多 重 共 線 性 の問 題 や線 型 性 への疑 問 が考 えられる。ただ,医 療 機

関 の種 類 や患 者 属 性 等 を厳 格 に補 正 すれば全 て正 の係 数 になる可 能 性 は残 されている。今 後

厳 格 な条 件 をつけて重 回 帰 分 析 を試 みる余 地 は残 されているかもしれない。

●重 回 帰 係 数 は件 数 が多 くなければ信 頼 できない

重 回 帰 分 析 は,説 明 変 数 よりもケース数 が相 当 大 きくなければならない。100 件 のレセプトを

119 の説 明 変 数 で分 析 することは困 難 である。むろん統 計 ソフトにデータをつっこむと答 えはでる

が p 値 が 0.8 にもなったりして「こんな数 値 が出 ましたが当 たるも当 たらぬも八 卦 」となる。事 実 ,

あるデータセットでは極 端 に大 きな係 数 がでた傷 病 が別 のデータセットではマイナスになったりと,

とても安 定 した分 析 に耐 えなかった。

●原 点 を通 る回 帰 では正 しい推 計 ができない

通 常 重 回 帰 分 析 では

Y=B0+B1X1+B2X2+---+BnXn (B0 は定 数 項 )

という回 帰 式 を考 え,119 傷 病 について得 られた係 数 B1~B119 に各 傷 病 の出 現 数 をかけ,

定 数 B0 を足 すと合 計 点 数 に一 致 する。つまり傷 病 名 が全 く無 いレセプトでも B0 点 はあると考 え

る。

しかしレセプトでは傷 病 名 ゼロなら点 数 もゼロと考 えるので(実 際 には傷 病 名 の無 いレセプトは

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たまにあり,そんなレセプトでも点 数 はちゃんとある・・・もっともこれらは記 入 もれとおもわれる)

Y=B1X1+B2X2+---+BnXn

と定 数 項 (intercept)の無 い回 帰 を使 わなければならない(SPSS でも Excel でもデフォルトは上

記 のような「定 数 項 有 りの回 帰 」だが「原 点 を通 る回 帰 」をクリックすれば原 点 を通 る回 帰 を行 え

る)。

定 数 項 の無 い「原 点 を通 る回 帰 」では,負 値 の係 数 は少 なくなる(しかし決 してなくならない)。と

ころが定 数 項 有 りの通 常 の回 帰 式 のように,各 傷 病 の係 数 に出 現 数 をかけて合 計 しても合 計

点 数 Y に一 致 せず,通 常 20~30%小 さい数 字 にしかならない。

この理 由 がわからず SPSS に問 合 わしたところ,SPSS 国 際 サポート本 部 に照 会 してくださり,

以 下 のような回 答 をいただいたので参 考 まで転 載 する。

SPSS 国 際 サポート本 部 からの回 答

n 個 の点 {(xi , yi ) } , i=1 to n, に直 線 をあてはめた場 合 、その直 線 と点 との残 差 の合 計 は 0 に

なります。 これは Draper と Smith の「Appl ied Regression Analysis 第 3 版 」の 26 ページで

証 明 されています。予 測 値 と残 差 を保 存 した場 合 、従 属 変 数 、予 測 値 、残 差 は定 義 上 次 の式

に従 います。

従 属 変 数 =予 測 値 +残 差

これら 3 つの変 数 をそれぞれ合 計 した場 合 、残 差 の合 計 が 0 になるという事 実 から、従 属 変

数 の値 の合 計 が予 測 値 の合 計 と一 致 するという結 論 に至 ります。

しかしながら、定 数 項 を回 帰 から除 外 した場 合 、これはあてはまりません。定 数 項 を除 外 する

ことは、あてはめの線 が原 点 を通 るようにすることです。 仮 に次 の 3 つのデータポイントがあると

します。

x y

80 100

90 110

340 130

これに最 小 二 乗 法 による線 をあてはめますと、傾 きは 0.1 切 片 が 96 あたりになります。この線

を原 点 を通 るようにするには、x の平 均 あたりで回 転 させ傾 斜 を急 にするので、最 初 の 2 点 では

予 測 値 を下 げ、3 番 目 では予 測 値 を上 げるという事 になります。モデルは最 初 の二 つの x に対 す

る y を過 小 評 価 し、最 後 の x に対 する y を過 大 評 価 しています。これにより、残 差 の合 計 は正 の

値 となり、予 測 値 の合 計 は 観 測 された従 属 変 数 の値 の合 計 よりも少 なくなります。 It is true that i f you f it a straight l ine to n points {(xi , y i ) } , i = 1 to n, then the sum of

the residuals about the f itted l ine is 0. This is proven in Draper and Smith, Appl ied Regression Analysis, 3rd edit ion, page 26. If we save the predicted and residual values, the dependent, predicted, and residual variables by definit ion obey the formula

dependent = predicted + residual I f we sum the three var iables, the fact that the residuals sum to 0 leads to the

conclusion that the sum of the dependent values equals the sum of the predicted values. THIS IS NOT TRUE, HOWEVER, IF ONE LEAVES OUT THE CONSTANT TERM FROM

THE REGRESSION. Leaving out the constant term forces the f itted l ine to pass through the orig in .

Consider three data points x y 80 100 90 110 340 130

If you f it the least squares l ine to these points, the slope is about 0.1and the intercept

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around 96. Forcing the l ine to pass through the or ig in steepens it by rotat ing it about the mean of the x 's , having the effect of decreasing the predicted values at the f irst two points and increasing it at the third. The model underest imates y for the f irst two x's and overestimates it for the last , with the net effect that the sum of the residuals is posit ive and the sum of the predicted values is less than the sum of the observed values.

というわけで、目 的 変 数 (従 属 変 数 )の値 の合 計 は定 数 項 ありの場 合 予 測 値 の合 計 と一 致 し

ますが、なしの場 合 は原 点 を通 るように強 制 するのでずれが生 じ、残 差 の合 計 が 0 にならないた

めに一 致 はしない、ということになります。

●線 型 計 画 法

変 数 にたとえば 5 以 上 という条 件 をつけて行 う線 型 計 画 法 という手 法 も検 討 したので付 言 する。

専 門 家 の意 見 では,偏 回 帰 係 数 の解 釈 まで要 求 されるような回 帰 方 程 式 で、100 変 数 で実 行 し

て、解 釈 可 能 な結 果 は出 ない,ほぼ必 ず多 重 共 線 性 や抑 制 効 果 が生 じる,一 説 によると説 明

変 数 の数 は2つか3つまでしか無 理 だという。単 に予 測 値 と実 績 値 が近 ければよいのであれば、

説 明 変 数 は 100 でも 200 でも構 わない。でも線 型 計 画 なら符 号 条 件 が付 けられるから納 得 でき

る結 果 が得 られるのではないか?と期 待 しても結 局 のところ、分 析 者 が課 した範 囲 条 件 の境 界

に解 が定 まる。つまり、非 負 と制 約 すれば 0 となり、10 以 上 という制 約 をおけば 10 になる・・・結

局 のところ分 析 者 の指 定 をそのまま出 力 しているのと同 じ結 果 になる。ということでレセプト傷 病

分 析 への線 型 計 画 法 の適 用 は見 送 った。

●重 回 帰 分 析 とは目 的 が異 なる

重 回 帰 分 析 も林 の数 量 化 I 類 も全 て個 々のケースの目 的 変 数 を推 定 するための手 法 です。た

とえば傷 病 A,B,C がある 15 日 の入 院 レセプトの予 想 点 数 は?といった個 々のレセプトの点 数 の

予 測 のための手 段 が重 回 帰 分 析 であり数 量 化 理 論 といえる。しかしここでの目 的 は,個 々のレ

セプトの点 数 を予 測 するための手 段 ではなく,レセプトの集 合 (データセット)における傷 病 別 割 合

を推 計 することにあり,傷 病 名 A,B,C のレセプトの点 数 は何 点 かを予 測 するための手 法 ではない。

したがって重 回 帰 分 析 とは目 的 が異 なる。

【PDM 法 の原 理 】

PDM(Proportional Disease Magnitude)法 はレセプトの点 数 や日 数 を,それに記 載 された全 て

の傷 病 名 に一 定 の「重 み(magnitude)」を与 えて比 例 配 分 してゆく分 析 法 である。PDM 法 によれ

ば,客 観 的 かつ自 動 的 な傷 病 分 析 が可 能 となり,もし共 通 の「重 み」を用 いれば,たとえばA市 と

B町 国 保 ではどちらが糖 尿 病 の医 療 費 がかかっているか,またC村 で糖 尿 病 対 策 をする前 と後

とで糖 尿 病 の医 療 費 が増 えたか減 ったか,等 を客 観 的 に比 較 することも可 能 となる。裏 返 せば,

では傷 病 ごとの「重 み」をどう決 めるか?が課 題 となる。

重 みは基 本 的 にどのように決 めてもよく,全 ての重 みを 1(つまり全 ての傷 病 を等 しいとする)とし

てもかまわない。そうなると単 純 に傷 病 名 の出 現 数 に比 例 した配 分 となる。重 みの決 め方 として

は,たとえば DRG も一 種 の重 みといえるし,外 国 では専 門 医 にアンケートして重 みを測 定 しようと

いう試 みもある。PDM 法 では,これまで患 者 調 査 で得 られた「主 傷 病 となる確 率 」や社 会 医 療 診

療 行 為 別 調 査 で得 られた傷 病 ごとの「一 件 当 たり点 数 ・日 数 」を用 いたこともある。

【PDM 法 開 発 の経 緯 】

「全 ての傷 病 名 を分 析 し,点 数 や日 数 といった医 療 の資 源 消 費 を定 量 的 かつ自 動 的 に傷 病

分 類 できないか」そう考 えた筆 者 は 94 年 頃 「診 療 報 酬 明 細 書 による傷 病 構 造 の解 析 」研 究 に

着 手 (94 年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 奨 励 研 究 )。95 年 6 月 米 国 ,シカゴで開 催 された第 12 回

Association of Health Service Research においてその基 本 概 念 を発 表 し,同 年 10 月 山 形 で

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開 催 された日 本 公 衆 衛 生 学 会 で開 催 された「第 1 回 レセプト情 報 の活 用 を考 える自 由 集 会 」に

おいて BASIC で組 んだ初 歩 的 なプログラムを公 表 した。PDM(Proportional Disease Magnitude)

法 と名 付 けられた本 手 法 の概 念 は,厚 生 統 計 分 野 の代 表 的 な学 術 誌 である「厚 生 の指 標 」96

年 6月 号 に掲 載 された。

PDM 法 の最 大 のネックは,記 載 された多 数 の傷 病 名 をコード化 し入 力 しなければならない「手

作 業 」にあった。レセプト電 算 化 も期 待 されたほどには進 展 せず,実 用 化 へは遠 い道 のりの状 態

が続 いた。1999 年 には健 康 保 険 組 合 連 合 会 による「レセプト分 析 による医 療 機 関 評 価 」研 究 が

行 なわれ,そこで PDM 法 により傷 病 構 造 を補 正 して医 療 費 の額 や在 院 日 数 の長 短 を異 なった

医 療 機 関 間 で比 較 することが試 みられた。この時 作 成 された ExcelVBA プログラムはインターネ

ット(resept.com)上 で公 表 され,関 係 者 の関 心 を集 めた。しかし,このプログラムも誰 でも気 軽 に

使 用 できるほどユーザーフレンドリーではなかった。

2001 年 ,岡 本 は旧 国 立 公 衆 衛 生 院 に移 り,愛 媛 県 ,宮 城 県 の国 民 健 康 保 険 団 体 連 合 会 が

実 施 している全 疾 病 入 力 レセプトの解 析 に着 手 。また本 研 究 に分 担 研 究 者 として参 画 ,その助

成 によりそれまでコンピューターに強 い人 でなければ使 用 できなかったプログラムが Windows 上 で

誰 でも簡 単 に使 用 できるプログラムとして完 成 をみた。

2002 年 10 月 24 日 埼 玉 県 で開 催 された「第 5 回 レセプト情 報 の活 用 を考 える自 由 集 会 」で本

プログラム(Ver.1)は公 表 され,その後 の研 究 の進 展 をふまえて,本 年 度 中 には Ver.2 が完 成 す

る見 通 しである。

【PDM 法 の個 人 情 報 保 護 上 のメリット】

PDM 法 は傷 病 分 類 を自 動 化 することにより,手 作 業 の労 力 と時 間 を節 約 するのみならず,個

人 情 報 保 護 の面 でも効 果 がある。データ入 力 作 業 はレセプトが完 全 電 算 化 されれば不 必 要 にな

るが,傷 病 分 類 だけは自 動 化 は不 可 能 で,これまで人 間 がレセプトを見 て判 断 するしかなかった。

熟 練 したレセプト点 検 職 員 は1日 に 1000 件 近 いレセプトを分 類 できるが,それでももし年 間 12 億

件 のレセプト全 件 を分 類 するとなると,のべ 120 万 日 ・人 もの人 にレセプトを「見 せる」必 要 があ

る。

どんなに契 約 書 で守 秘 義 務 を課 してもプライバシー漏 洩 の危 険 は,関 わる人 が多 くなると必 然

的 に大 きくなる。プライバシー保 護 を 100%確 保 するには,医 療 機 関 から提 出 された電 子 化 レセ

プトが,誰 からも中 身 をみられることなく,コンピューター内 部 で全 て処 理 される,のが理 想 である。

PDM 法 により,単 純 集 計 はもちろん,傷 病 分 類 まで,人 手 を介 することなくブラックボックスの中

で処 理 され,結 果 の表 だけが出 力 されるようになり,プライバシー保 護 は万 全 になる。

【日 数 と点 数 の扱 い】

PDM 法 ではレセプト総 点 数 を日 数 と一 日 当 点 数 に分 離 して分 析 している。その理 由 は日 数 は

1~30(大 の月 は 31)のどの数 値 でもとりうる自 然 現 象 (確 率 事 象 )であるが,点 数 は自 然 現 象

ではなく,人 為 的 に決 められた数 値 であることにある。

診 察 料 を例 にとると病 院 の初 診 料 は 250 点 ,診 療 所 は 270 点 と決 められており,病 院 のレセプ

トであれば初 診 料 は必 ず 250 点 であって 270 点 である可 能 性 はない。また初 診 料 は一 回 しか請

求 できず同 一 レセプトに2回 の請 求 はない。他 の診 療 行 為 はもっと複 雑 だが,とことん細 分 化 し

てゆくと必 ず点 数 表 で決 められた点 数 の和 になる。このように日 数 と点 数 とは異 なった性 質 の情

報 であることから分 離 して分 析 することがベターといえる。

研 究 の形 態 としても,日 数 は受 療 状 況 であって疫 学 研 究 に該 当 し,点 数 は金 額 であって経 済

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研 究 に当 たる。たとえばインフルエンザワクチンの有 効 性 評 価 は疫 学 研 究 であって経 済 研 究 で

はない。したがってインフルエンザワクチンの有 効 性 評 価 は日 数 で行 うべきであって点 数 で行 うべ

きではない。この区 分 は 2002 年 7 月 より疫 学 研 究 倫 理 指 針 が施 行 され,疫 学 研 究 については

経 済 研 究 とは異 なった扱 いが求 められるようになっただけに重 要 である。

レセプトが日 数 という疫 学 情 報 と点 数 という経 済 情 報 を合 わせもっている点 はきわめて豊 富 な

情 報 源 であるといえる。

【平 均 値 を重 みに使 うことについて】

PDM法 プログラムでは「重 み」として日 数 も点 数 も傷 病 ごとの単 純 平 均 値 が用 いられている。

すなわちある傷 病 Aの「重 み」はその傷 病 を含 む全 てのレセプトの日 数 及 び点 数 の単 純 平 均 を算

出 し,それを重 みとして各 レセプトごとに比 例 配 分 するわけである。いささか乱 暴 な感 じもするが,

レセプト全 体 における特 定 の傷 病 の日 数 点 数 の合 計 値 だけを知 りたいのであれば単 純 平 均 でよ

い。

その理 由 は,単 純 平 均 に個 数 をかければ,分 布 がどのようになっていようと同 じ合 計 値 になる

からである。たとえば人 口 1万 人 のA市 とB市 が一 人 当 たり所 得 がいずれも100万 円 であったとし

ても,所 得 分 布 もA市 B市 同 じとは限 らない。平 均 は同 じでもA市 の方 がバラツキ(分 布 )が大 きい,

すなわち貧 富 格 差 は大 きいかもしれない。「所 得 を比 較 する時 に単 純 平 均 で比 較 するな」は経 済

学 の大 原 則 であり,これが単 純 平 均 に対 する不 信 となっているようだ。しかし,A市 とB市 の所 得

分 布 がどうであれ,A市 B市 の所 得 総 額 が100億 円 であることは間 違 いない。したがって両 市 の

所 得 総 額 を知 りたいのであれば単 純 平 均 でよく,むしろ中 央 値 や最 頻 値 は不 適 当 なのである。

傷 病 名 のような名 義 変 数 を数 値 化 (数 量 化 )する分 析 法 に林 の数 量 化 I類 がある。これは,た

とえば数 学 が好 き・嫌 い,といった生 徒 の属 性 で数 学 の得 点 を予 想 する多 変 量 解 析 法 である。

予 想 される数 学 の得 点 は外 的 基 準 ,好 き・嫌 いという属 性 はアイテムと呼 ばれる。PDM法 の重

みも,たとえば糖 尿 病 の重 みは,あるレセプトで糖 尿 病 という傷 病 名 が有 る・無 い,で点 数 がどう

なのか予 想 するものである。119分 類 の傷 病 名 について重 みを算 定 することは,ある傷 病 名 が有

る・無 い,をアイテムとして林 の数 量 化 Ⅰ類 を119回 くりかえすこととに相 当 する。

林 の数 量 化 Ⅰ類 は多 変 量 解 析 の手 法 であって,たとえば数 学 が好 き・嫌 い,国 語 が好 き・嫌

いというふうに複 数 のアイテムで予 測 を試 みるが,アイテムが一 つの場 合 ,たとえば糖 尿 病 が有

る・無 い,でレセプトの点 数 を予 測 する場 合 は,単 純 に糖 尿 病 の有 るレセプト,無 いレセプトの平

均 値 をそのまま使 うことになる。「常 識 で考 えてもこれは妥 当 であろう」とされる(藤 沢 偉 作 「楽 しく

学 べる多 変 量 解 析 法 」現 代 数 学 社 63頁 )。

ちなみにある市 の外 来 レセプトについて,119の傷 病 分 類 ごとに,その傷 病 の有 るレセプト,無

いレセプトの点 数 をプロットしたのが【図 1】である。明 らかに,ある傷 病 の有 るレセプトの点 数 はそ

れぞれ大 きく異 なっているが,ある傷 病 の無 いレセプトはおしなべて全 体 平 均 に一 致 している。す

なわち,ある傷 病 を持 つレセプトが全 体 に比 べて少 数 である場 合 は,その平 均 値 は全 体 平 均 か

らの相 対 的 な乖 離 を示 していると考 えることができる。

もし全 傷 病 が同 じと仮 定 するとその重 みは当 然 ながら全 体 平 均 となるが,その逆 ,つまり「全

傷 病 は同 じではない」とすればこれら傷 病 別 平 均 値 を重 みとすることは妥 当 であろう。

PDM法 はあくまでレセプトの集 合 の中 のある疾 病 の総 額 を求 めるものであって,個 々のレセプ

トにおける特 定 の疾 病 の額 を推 計 することは,計 算 の過 程 でむろん可 能 だが,その値 はあまり信

用 できないだろう。それは平 均 所 得 100万 円 のA市 内 で誰 か市 民 をつかまえて所 得 を調 べても

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100万 円 でない可 能 性 の方 が大 きい。所 得 は決 して正 規 分 布 しないからである。

傷 病 ごとの点 数 も正 規 分 布 するかどうかはまだ十 分 には解 明 していない。治 療 内 容 が定 型 的

な傷 病 なら正 規 分 布 しPDM法 による個 々のレセプトにおける推 計 値 もある程 度 信 頼 できるであろ

うが,バラツキの大 きい傷 病 では重 みによって比 例 配 分 された点 数 がどれだけ信 頼 できるかは疑

問 である。さらに複 雑 なことはバラツキの小 さい傷 病 も大 きな傷 病 も同 じレセプトに「同 居 」してい

るということである。極 端 な場 合 ,レセプトに10の傷 病 が記 載 されていても医 療 費 の大 半 はうち一

つの傷 病 に費 やされている,といったことも多 々あるだろう。

したがって現 時 点 ではPDM法 はレセプト全 体 における傷 病 の合 計 値 の推 計 法 であって,個 々

のレセプトの傷 病 の点 数 や日 数 を推 計 する上 では慎 重 であるべきと考 えられる。

【平 均 値 の算 出 法 】

ある傷 病 名 の記 載 されたレセプトを全 て集 めて平 均 値 を出 すが,傷 病 名 とはよく似 た傷 病 名 は

同 じ傷 病 分 類 に一 括 する。たとえば糖 尿 病 ,糖 尿 病 性 腎 症 ,糖 尿 病 性 網 膜 症 はそれぞれ異 な

った傷 病 名 だが,119分 類 ではいずれも糖 尿 病 [402]として一 括 される。したがって,これら3つの

傷 病 が記 載 されたレセプトは,402,402,402と同 じ分 類 番 号 が3つ並 ぶ。この場 合 ,PDM法 では

402というひとつの傷 病 名 にまとめることはせず,402が3回 出 現 するものとして重 複 カウントする。

その根 拠 を【例 題 】を用 いて説 明 する。

【例 題 】診 療 科 別 の医 師 所 得 を推 計 したい。一 人 の医 師 が単 一 の診 療 科 を標 榜 している場 合

はその医 師 の所 得 をそのままその診 療 科 の所 得 として問 題 がない。しかしわが国 では自 由 標 榜

制 をとっているので一 人 の医 師 が複 数 の診 療 科 を標 榜 しているのがふつうである。

そこで,診 療 科 ごとの医 師 の平 均 所 得 を求 め,複 数 標 榜 の医 師 の所 得 はそれに比 例 して按

分 する手 法 をとる。

そのためにはまず診 療 科 ごとの平 均 所 得 を算 出 しなければならない。

以 下 の例 を考 える。

表 A 標 榜 科 所 得

Dr.田 中 循 環 器 内 科 1000 万 円

Dr.山 本 消 化 器 内 科 2000 万 円

循 環 器 内 科 Dr.佐 藤

消 化 器 内 科 3000 万 円

循 環 器 内 科 と消 化 器 内 科 の平 均 所 得 はそれぞれ(1000+3000)/2=2000 万 円 ,

(2000+3000)/2=2500 万 円 である。

Dr.佐 藤 の所 得 3000 万 円 は両 科 の平 均 値 で比 例 配 分 され,以 下 のようになる。

表 B 標 榜 科 所 得

Dr.田 中 循 環 器 内 科 1000 万 円

Dr.山 本 消 化 器 内 科 2000 万 円

循 環 器 内 科 1333 万 円 Dr.佐 藤

消 化 器 内 科 1667 万 円

よって3人 の医 師 の合 計 所 得 6000 万 円 の診 療 科 別 内 訳 は, 循 環 器 内 科 2333 万 円 ,消 化 器

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内 科 3667 万 円 と推 計 される。

以 上 が PDM 法 プログラムで用 いている平 均 値 計 算 法 である。

しかし以 下 のような計 算 法 も考 えられる。

表 C 標 榜 科 所 得

Dr.田 中 循 環 器 内 科 1000 万 円

Dr.山 本 消 化 器 内 科 2000 万 円

循 環 器 内 科 1000 万 円 Dr.佐 藤

消 化 器 内 科 2000 万 円

よって3人 の医 師 の合 計 所 得 6000 万 円 の診 療 科 別 内 訳 は循 環 器 内 科 2000 万 円 ,消 化 器

内 科 4000 万 円 と推 計 される。

つまりそれぞれの診 療 科 の平 均 値 は,それぞれの診 療 科 単 独 標 榜 の医 師 だけでだし,複 数 標

榜 科 医 師 の所 得 は単 独 の平 均 値 で配 分 するというものである。この計 算 法 は理 想 的 だが,PDM

法 では採 用 していない。その理 由 を説 明 する。

単 独 のみの診 療 科 (あるいは傷 病 名 )の「純 粋 」な平 均 値 を計 算 するのは,医 師 (あるいはレセ

プト)の大 半 は単 独 標 榜 で一 部 のみ複 数 科 標 榜 という状 況 では有 効 であり用 いるべきであろう。

しかしレセプトでは複 数 傷 病 名 が多 く(だからこそ PDM 法 が必 要 になる)むしろ傷 病 名 一 つのレセ

プトの方 が例 外 的 である。

この計 算 法 をとるためには 119 傷 病 分 類 の全 てについて単 独 傷 病 名 が相 当 数 (少 なくとも 10

件 以 上 )ある必 要 になる。高 血 圧 や糖 尿 病 のような頻 度 の高 い傷 病 ならいざしらず,119 全 てに

ついて 10 件 以 上 の単 独 傷 病 レセプトを確 保 するには相 当 規 模 のレセプト件 数 が必 要 になる。小

規 模 な市 町 村 や組 合 ,また単 月 レセプトやもっと狭 い地 区 のレセプト分 析 は不 可 能 になる。100

件 程 度 の件 数 でも比 較 的 安 定 した分 析 をしなければならない PDM 法 の要 請 を満 たせない。

医 師 が 10 人 おり,循 環 器 内 科 ,消 化 器 内 科 単 独 標 榜 の医 師 は各 一 人 で残 り8人 は複 数 標

榜 ,という状 況 を考 えれば,たった2人 の所 得 の割 合 で残 り8人 の所 得 を配 分 することの無 謀 さ

が理 解 できる。レセプトの状 況 はまさにこれに近 い。むろん表 3の計 算 法 を否 定 しているのではな

く,レセプト電 算 化 がすすみ都 道 府 県 単 位 の多 数 のレセプトを分 析 できるようになればこの計 算

法 の可 能 性 もある。

次 に重 複 カウントの問 題 に移 る。

分 類 上 ,循 環 器 内 科 も消 化 器 内 科 もともに「内 科 」というカテゴリーにくくられる。すなわち以 下

のようになる。

表 D 標 榜 科 所 得

Dr.田 中 内 科 1000 万 円

Dr.山 本 内 科 2000 万 円

内 科 Dr.佐 藤

内 科 3000 万 円

PDM法 プログラムでは傷 病 名 を重 複 カウントしており,これより内 科 の平 均 所 得 は

(1000+2000+3000+3000)/4=2250万 円 となる。これは先 に出 した循 環 器 内 科 ,消 化 器 内 科 別 の

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平 均 2000万 円 と2500万 円 のさらに平 均 となる。

一 見 するとDr.佐 藤 について内 科 3000万 円 を2回 カウントするのはおかしいように見 える。「分 類

がくくられて同 一 分 類 になったのだから重 複 カウントはおかしい」とDr.佐 藤 の内 科 は1500万 円 と

して計 算 すべきのようにも思 われる。

これに対 する説 明 は,分 類 上 3人 の医 師 は同 一 診 療 科 になったが,実 際 には3人 の医 師 は

異 なった診 療 科 であり,Dr.田 中 とDr.山 本 は違 う診 療 科 だし,Dr.佐 藤 は他 の2人 の診 療 科 両 方

の患 者 をみていることである。もしDr.佐 藤 は2つの診 療 科 を標 榜 しているから,といって診 療 科

当 たりの所 得 1500万 円 として計 算 すると内 科 の平 均 所 得 は(1000+2000+1500+1500)/4=1500

万 円 とおかしなことになる。

【平 均 値 の補 正 】

上 の説 明 は単 純 平 均 を重 みとしてPDM法 を適 用 した時 のバイアスについても示 唆 を与 えてい

る。3人 の医 師 の所 得 6000万 円 の内 訳 は循 環 器 内 科 2000万 円 ,消 化 器 内 科 4000万 円 がもし

真 の値 とすると,PDM法 による推 計 結 果 はそれぞれ2333万 円 ,3667万 円 となった。つまり少 ない

方 の循 環 器 内 科 は過 大 評 価 し,大 きい方 の消 化 器 内 科 は過 小 評 価 された,すなわち上 下 の格

差 が縮 小 し,均 等 に近 づいた。

これは平 均 値 を用 いてPDM法 を適 用 する場 合 の系 統 的 なバイアスといえ,事 実 ,平 均 値 を重

みとしてPDM法 で傷 病 別 点 数 を推 計 した場 合 ,腎 不 全 のような高 額 傷 病 の医 療 費 は過 少 に,

逆 に皮 膚 炎 のような低 額 傷 病 は過 大 に評 価 される傾 向 にあることが当 初 から気 付 かれていた。

そこで平 均 値 を重 みとして用 いる場 合 ,一 定 の補 正 が必 要 になる。

ここでレセプトの傷 病 数 をNとし,点 数 をPとすると傷 病 当 たり平 均 点 数 はP/N。そのうちの一 つ

の傷 病 の点 数 がΔPだけ大 きく(小 さく)なってもレセプトの点 数 PはΔP/Nしか増 加 (減 少 )しない。

したがって全 体 平 均 と同 じ傷 病 については,その傷 病 の記 載 されたレセプトの点 数 の平 均 をそ

のまま使 っても変 化 しないが, 平 均 値 より大 きい傷 病 は過 少 に, 逆 に小 さい傷 病 は過 大 に評 価

され,その影 響 はレセプトの平 均 傷 病 数 Nによって決 まる。

一 般 にレセプト平 均 傷 病 数 Nの場 合 , ある傷 病 の「真 」の平 均 点 数 をX, ある傷 病 の記 載 され

た全 レセプトの平 均 点 数 をYとすると両 者 は次 のような関 係 になると考 えられる。

Y=X/N + b (b は定 数 )

定 数 bは, 全 体 平 均 値 μでY=Xと交 わるように定 まる。 かりに傷 病 別 点 数 の全 体 平 均 μを

500とすると,上 式 は以 下 のようになる。

N=2 なら Y = 0.5*X + 250

N=4 なら Y = 0.25*X + 375

N=8 なら Y = 0.125*X + 437.5

このようにレセプトの傷 病 名 数 が多 くなるほど直 線 は平 べったくなってゆく。ちなみに外 来 レセプ

トの平 均 傷 病 名 数 は約 4, 入 院 レセプトは約 8である。

知 りたいのは各 傷 病 の「真 」の平 均 点 数 Xであるが, 実 際 のレセプト分 析 ではXは不 明 で,わか

るのはYとμだけである。そこでYとμだけからXをできるだけ正 確 に予 測 するため, 補 正 してできる

だけXに近 いY’を求 める以 下 の補 正 式 を考 案 した。

Y’ = Y * (Y/μ)^k (k>=0)

これはYが全 体 平 均 μと同 じであればそのまま, もしYが全 体 平 均 μの2倍 であれば4倍 に, 逆

に2分 の1であれば4分 の1にする補 正 をk回 くりかえす式 である。 k=0ならY’はYそのまま,つまり無

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補 正 ということになり,k=1を1次 補 正 ,2なら2次 補 正 と呼 ぶことにする。その概 念 をグラフで示 した

【図 2】。そして,この補 正 を何 次 (k回 )まで行 えばよいかを, レセプト傷 病 数 Nの数 に応 じてシミュ

レートした【図 2‐1~3】。

その結 果 , N=2すなわち平 均 傷 病 数 が2つの時 は1次 補 正 (k=1)で十 分 であるが,N=4では2次

補 正 まで必 要 であり,N=8では5次 補 正 まで必 要 であることがわかった。

以 上 をふまえ, PDM法 Ver.2には補 正 式 のオプションを加 え, 外 来 レセプトでは2次 , 入 院 レセプト

では5次 補 正 が望 ましいとした。

この補 正 は, 点 数 についてのみ行 い, 日 数 については行 なわない(理 由 は後 述 )。

【繰 り返 し法 】

PDM法 は,まず傷 病 ごとに平 均 値 を算 出 し, それを重 みとして各 レセプトの点 数 を記 載 された

傷 病 ごとに配 分 し,さらにレセプトごとに傷 病 ごとに配 分 された点 数 を傷 病 ごとに合 計 する,という

演 算 処 理 である。 したがって演 算 処 理 の過 程 で, レセプトごとに傷 病 別 の平 均 値 で比 例 配 分 さ

れた新 しいレセプトデータがまるまる生 成 される。

このように処 理 過 程 で生 成 された新 しいレセプトデータを再 度 PDM法 にかけ,その過 程 で生 成

されたレセプトデータをもういちどPDM法 にかける・・・という処 理 を繰 り返 すと一 定 条 件 の下 では

最 適 な値 に収 斂 することが明 らかになった。最 尤 推 定 法 (Maximum Likel ihood Estimator)という,

推 定 式 を繰 り返 せば最 も尤 もらしい値 に収 斂 する,という手 法 の考 えに近 いものである。PDM法 は,

各 傷 病 の点 数 の平 均 値 を計 算 し,それを補 正 式 で補 正 したが,繰 り返 し法 では補 正 式 を使 うので

はなく,傷 病 別 の平 均 値 を出 しては同 じ処 理 を繰 り返 し行 う。

傷 病 別 の平 均 値 は繰 り返 すごとに微 妙 に変 化 してゆく。しかし繰 り返 しを重 ねるごとに変 化 は

小 さくなってゆき,やがてはほとんど変 化 しなくなる。コンピュータープログラムにおいては,たとえば

回 を重 ねるごとの変 化 がたとえば0.01より小 さくなったら「繰 り返 し打 ち切 り」とプログラミングして

おく。

この方 法 は,とくにレセプト件 数 や傷 病 分 類 数 が多 いとコンピューターに大 きな負 担 を強 いるの

でPDM法 にはまだ組 み込 まれていないが,将 来 コンピューターの性 能 が向 上 すれば可 能 性 の高

い手 法 である。ただし,この手 法 ではどのような条 件 でも収 斂 するとはかぎらず,あくまで加 法 原 理

(後 述 )が成 立 していることが条 件 となる。

【シミュレーションデータによる検 証 】

PDM法 開 発 の上 でこれまで最 大 の障 害 は,その妥 当 性 の検 証 ができない,ということであった。

すなわち実 際 のレセプトデータの傷 病 別 の「真 」の日 数 や点 数 は不 明 であり, 適 用 して分 析 結 果

を出 しても,それがどれだけ真 実 に近 いのか検 証 できなかった。

それが,シミュレーションデータを用 いることによって部 分 的 には解 決 した。 シミュレーションデー

タとはすなわちあらかじめ傷 病 別 の点 数 等 の「正 解 」を設 定 し,それに合 わせて生 成 したデータの

ことである。この「正 解 」のわかっているデータをPDM法 にかけて, 推 計 結 果 と「正 解 」とがどれだけ

一 致 しているかで妥 当 性 を検 証 できる。

社 会 医 療 調 査 や国 民 健 康 保 険 医 療 給 付 実 態 調 査 等 を元 にわが国 の外 来 レセプトにできる

限 り近 づけて作 製 したレセプト1000件 分 のシミュレーションデータで検 証 した結 果 が【図 3‐1,2】で

ある。 ヨコ軸 にはシミュレーションデータの傷 病 別 点 数 (正 解 , x) ,タテ軸 にそれぞれの方 法 による

傷 病 別 点 数 の推 計 値 (y)を示 す。 もし完 全 に一 致 するy=xになり決 定 係 数 (R2)は1となる。

図 からも明 らかなように平 均 値 を補 正 する方 法 でも繰 り返 し方 法 でもきわめて良 好 な近 似 が

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得 られた。しかしながら,日 数 については平 均 値 をそのまま使 う方 法 では良 好 な近 似 であったが,

繰 り返 し法 では収 斂 はしたものの,その近 似 はきわめて不 良 であった【図 4-1~3】。 繰 り返 し法 で

なぜ日 数 でいい結 果 がえられなかったか,その理 由 は現 時 点 では断 定 できないが,ひとつの仮 説

としては以 下 に述 べる「加 法 原 理 が日 数 ではあてはまらない」ことが考 えられる。

これにより日 数 で評 価 するインフルエンザワクチンの効 果 測 定 は繰 り返 し法 ではなく平 均 値 そ

のまま重 みとして用 いる方 法 で実 施 した。

(繰 り返 し法 のコンピュータープログラミングでは横 山 徹 爾 主 任 研 究 官 の協 力 に感 謝 する)

【加 法 原 理 と最 大 原 理 】

点 数 の推 計 では傷 病 数 で割 り,平 均 値 を補 正 式 で補 正 したが,日 数 の推 計 ではそのような処

置 は行 っていない。また繰 り返 し法 では日 数 については適 切 な値 に収 斂 しなかった。その理 由 を

考 察 する。

点 数 については,たとえば費 用 1万 円 を要 する傷 病 Aと2万 円 の傷 病 Bが合 併 するレセプトの医

療 費 は3万 円 とみなしている(加 法 原 理 )。それに対 して,月 4回 通 院 を要 する傷 病 Aと2回 ですむ

傷 病 Bを合 併 するレセプトの日 数 は6日 ではなく4日 とみなしている。明 らかに,異 なる傷 病 を合 併

しても同 時 に治 療 が可 能 であり,たしあわされるのではなくその最 大 日 数 が受 療 日 数 になる,と

考 えられる(最 大 原 理 )。

したがって傷 病 別 の点 数 を推 計 するためには合 計 点 数 を傷 病 数 でわる必 要 があるが,日 数

についてはそのような処 理 は行 わない。そして傷 病 数 でわる場 合 は,それによって得 られる平 均

値 は傷 病 数 による補 正 が必 要 となるが,日 数 についてはそのような補 正 は必 要 とされない。

もっともこのような最 大 原 理 と加 法 原 理 が厳 密 になりたつわけではなく,月 4回 の通 院 を要 す

る傷 病 Aに別 の傷 病 が合 併 すると通 院 日 数 は平 均 して4回 よりも多 くなる可 能 性 はあるし,また1

万 円 の傷 病 Aと2万 円 傷 病 Bとが合 併 しても3万 円 になるとはかぎらず,たとえば診 察 料 のように

傷 病 数 とは無 関 係 に一 定 額 しか請 求 できない診 療 報 酬 もある。投 薬 や検 査 の中 には複 数 の傷

病 を適 応 症 にしているものもある。これまで漠 然 と点 数 とは総 点 数 を指 してきたが,点 数 をさらに

診 察 料 ,投 薬 料 ,検 査 料 と細 分 化 してPDM法 で分 析 する場 合 ,最 大 原 理 と加 法 原 理 とは適 宜

使 いわける必 要 があろう。

ちなみにPDM法 Ver.2では,傷 病 数 でわらず,一 件 当 点 数 をそのまま使 うオプションも加 えた。こ

れは手 術 料 等 単 一 の傷 病 に月 一 回 しか行 なわれない診 療 行 為 の報 酬 分 析 を意 図 している。

現 時 点 では,上 に述 べたような「わりきり」を行 ったが,日 数 と点 数 が傷 病 との関 連 で最 大 原 理 ,

加 法 原 理 がどれだけ通 用 するかは,今 後 の研 究 課 題 である。

【PDM法 プログラムの概 要 】

本 研 究 の最 大 の成 果 物 は, 以 上 のPDM法 の原 理 をウィンドウズパソコン上 で行 えるコンピュ

ータープログラムである。 そのVer.1が2002年 10月 埼 玉 で開 催 された日 本 公 衆 衛 生 学 会 総 会 に

おける第 5回 レセプト情 報 の活 用 を考 える自 由 集 会 で発 表 された【マニュアルを参 考 資 料 に添

付 】。その後 ,シミュレーションによる補 正 式 の開 発 等 ととりくみ,近 くVer.2が完 成 する見 通 しであ

る。

Ver.2の概 要 を【表 1】に示 すとともに,それを実 際 にある市 の外 来 レセプト15771件 に適 用 し,

点 数 および日 数 の傷 病 別 割 合 を出 した結 果 を示 す【図 5】。

【PDM法 の応 用 例 】

PDM法 を具 体 的 に応 用 した例 として,インフルエンザワクチン接 種 の有 効 性 評 価 をあげる。

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本 研 究 は宮 城 県 名 取 市 の委 託 によるもので報 告 書 が2003年 2月 名 取 市 に提 出 された【資 料

2】。

ワクチンの有 効 性 評 価 で最 も適 切 なものは無 作 為 割 付 比 較 試 験 であるが,高 齢 者 へのイン

フルエンザワクチンの有 効 性 は無 作 為 割 付 比 較 試 験 で既 に確 立 されているため,評 価 目 的 に

一 般 人 口 に行 うことは倫 理 的 に許 容 されない。そこでインフルエンザワクチン接 種 の有 効 性 評 価

をレセプト情 報 を用 いて行 ったところ,無 作 為 割 付 比 較 試 験 と同 様 の結 果 が得 られた。

名 取 市 の65歳 以 上 高 齢 者 のレセプトをワクチン接 種 者 台 帳 と個 人 情 報 でリンケージし接 種 ,

非 接 種 者 にわけた。しかしそれだけでは,分 母 がわからないため発 生 率 を比 較 することはできな

い。そこで接 種 ,非 接 種 者 両 群 の総 受 療 日 数 に占 めるインフルエンザ及 び関 連 呼 吸 器 疾 患 の

「割 合 」を測 定 することによって比 較 する。【日 数 と点 数 の扱 い】でも述 べたようにワクチンの有 効

性 は疫 学 情 報 である日 数 で評 価 すべきであって,経 済 情 報 である点 数 で評 価 すべきではない。

そして日 数 については補 正 式 を用 いることなくPDM法 で傷 病 別 日 数 を推 計 すべきである。

接 種 ,非 接 種 者 の疾 病 リスクは受 療 日 数 に反 映 されるとみなし,もしワクチンの効 果 がなけ

れば,総 受 療 日 数 に占 めるインフルエンザの割 合 は両 群 で同 じあると仮 定 する。もしワクチンの

効 果 があれば,それはインフルエンザによる受 療 日 数 の減 少 として現 れ,結 果 として総 受 療 日 数

に占 めるインフルエンザの割 合 は減 少 する。こうすることによって,発 生 率 が不 明 でも,接 種 ,非

接 種 者 両 群 のリスクを補 正 しつつ,ワクチンによるインフルエンザ受 療 日 数 の減 少 を客 観 的 に測

定 できる。そして得 られた結 果 は既 に確 立 された無 作 為 割 付 比 較 試 験 の結 果 ときわめて近 似 し

ていた。

インフルエンザによる受 療 日 数 を客 観 的 にきりわけるPDM法 により,たとえ発 生 率 がわからなく

てもレセプトだけで簡 便 にワクチン効 果 を測 定 できる手 法 が確 立 された。これにより,今 後 全 国 の

自 治 体 はインフルエンザワクチン接 種 事 業 の有 効 性 をレセプトだけから行 えることになり,行 政

評 価 の観 点 からも,疫 学 研 究 の観 点 からもきわめて有 意 義 な成 果 であった。

【添 付 資 料 】

【資 料 1】PDM法 使 用 マニュアル2002年 10月 24日 公 表

【資 料 2】名 取 市 「高 齢 者 インフルエンザ予 防 接 種 の効 果 分 析 」報 告 書 2003年 2月

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【図1】傷病名の有無による日・傷病当点数の平均某市外来レセプト 腎不全

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

1 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61 66 71 76 81 86 91 96 101 106 111 116119傷病分類(通番)

日・傷

病当

点数

の単

純平

当該傷病名のあるレセプト

当該傷病名の無いレセプト

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【図2】補正式の原理n次補正---推計値に(推計値/平均値)^nをかける

10

100

1000

10000

100000

算出値 1次補正 2次補正 3次補正 4次補正 5次補正

対数

目盛

平均値より高い推計値

平均値と等しい推計値

平均値より低い推計値

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【図2-1】補正式(平均値500,傷病数2の時)すなわちy=1/2x+250のとき1次補正がベスト

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000正解

補正

無(0次)補正

1次補正

2次補正

正解

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【図2-2】補正式(平均値500,傷病数4の時)すなわちy=1/4x+375のとき2次補正がベスト

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000正解

補正

無(0次)補正

1次補正

2次補正

3次補正

正解

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【図2-3】補正式(平均値500,傷病数8の時)すなわちy=1/8x+437.5のとき5次補正がベスト

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000正解

補正

無(0次)補正

1次補正

3次補正

正解

5次補正

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【図3-1】シミュレーションデータによるPDM法検証結果シミュレーションデータ(1000件,8334411点)における傷病(119分類)別推計点数

y = 0.9837x + 1246

R2 = 0.9926

1000

10000

100000

1000000

1000 10000 100000 1000000正解(シミュレーションデータの傷病別点数)

PD

M法

によ

る推

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【図3-2】シミュレーションデータによる繰り返しPDM法検証結果シミュレーションデータ(1000件,8334411点)における傷病(119分類)別推計点数

y = 0.9862x + 1057.3

R2 = 0.9956

1000

10000

100000

1000000

1000 10000 100000 1000000正解(シミュレーションデータの傷病別点数)

繰り

返し

PD

M法

によ

る推

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【図4-1】シミュレーションデータによるPDM法による傷病(119分類)別日数推定結果[無補正]

y = 0.9791x + 1.6307

R2 = 0.9742

0

200

400

600

800

1000

1200

0 200 400 600 800 1000 1200正解(シミュレーションデータの傷病別日数)

PD

M法

によ

る推

計値

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【図4-2】シミュレーションデータによるPDM法による傷病(119分類)別日数推定結果[無補正]

【図4 -1】を対数表示したもの

y = 0.9791x + 1.6307

R2 = 0.9742

1

10

100

1000

1 10 100 1000正解(シミュレーションデータの傷病別日数)

PD

M法

によ

る推

計値

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【図4-3】シミュレーションデータによる繰り返しPDM法による傷病(119分類)別日数推計結果

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

0 200 400 600 800 1000 1200正解(シミュレーションデータの傷病別日数)

繰り

返し

PD

M法

によ

る推

計値

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外側点数割合【図5】NT市外来レセプト

傷病分析結果内側日数割合

15771件209754920点

32695日61586傷病

脊椎障害(脊椎症を含む)

胃炎及び十二指腸炎

脳梗塞

症状,徴候・異常臨床所見

他の悪性新生物

糖尿病

他の内分泌・栄養・代謝疾患

高血圧性疾患

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Ver.1

csvファイル。傷病数は常に15であり,15未満のレセプトについては,,,,を必要数つけないとエラー出

る。

日数

重みの計算法は一つのみ

重みに件当点数を用いる[手術料等一件に一つしかない点数分析に適

用]

重みに日当点数を用いる

[Ver.1]

重みに日・傷病当点数を用いる[デフォルト]

各レセプトの傷病数Nを計算

各レセプトについてP/D/NとD*Nを算出

【参考】Ver1の詳細表の出現数,Σ日数,点数(AVG)の合計はそれぞれΣ(N),Σ(D*N),

Σ(P)に相当する。

件当点数平均Σ(P)/件数

を算出

日当点数平均M=Σ(P)/Σ(D)

を算出

日・傷病当点数M=Σ(P)/Σ(D*N)を算出

各傷病の出現するレセプトについてP/Dの

平均値[P/D]を求める

各傷病の出現するレセプトについてPの平均値[P]を求める

各傷病の出現するレセプトについてP/Dの

平均値[P/D]を求める

各傷病の出現するレセプトについてP/D/N

の平均値[P/D/N]を求め

[P]を補正する。

[P]^(n+1)/M^n

[P/D]を補正する。

[P/D]^(n+1)/M^n

[P/D/N]を補正する。

[P/D/N]^(n+1)/M^n

【表1】PDM法プログラムの概要【プログラムの内容】csv形式(またはExcelファイル)化されたレセプトデータ(通番,日数,点数,傷病名コード)を機械的に「重み」によって配分集計し,結果をレポートおよびcsvファイルとして出力したり,グラフ化して表示するプログラム

【動作環境】Windowsパソコン。OSはWin2000またはXp。CPU,Pentium4(1GHz), メモリ1GBに対応。

Ver.2

プログラム仕様(Ver.1,2を対比させつつ)

各レセプトから日数D,点数P,傷病コードを読み取る

各レセプトについてP/Dを算出

点数配分

傷病数を最大30まで任意に設定

全レセプトの傷病別日数,点数の集計

補正次数の設定n=0,1,2,3,4,5[デフォルト=2]

各レセプト内の日数(D),点数(P)の配分

各レセプトについてP/Dを算出

Dをそのまま用いる(Ver1と変更無し)

各傷病の出現するレセプトについてDの平均値[D]を求

める

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レセプト自動傷病分類ソフト

PP DD MM (Proportional Disease Magnitude)

操作説明書

関連サイト http://resept.com

2002年10月24日

発案・設計 岡 本 悦 司 (国立保健医療科学院) 製 作 バイオコミュニケーションズ株式会社

本プログラムは下記の助成により制作された

厚生労働科学研究費補助金政策科学推進研究事業 「レセプト情報の利活用と個人情報保護のあり方に関する研究」

(主任研究者小林廉毅)

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1

第1章 PDMについて

PDM 法とは

皆保険制をとるわが国では,レセプトは地域や集団の傷病構造を把握する有力な医療情報です。レセプト統

計において傷病分類は,複数の傷病が記載されたレセプトについては分類する人の主観的判断で主傷病を一

つ選択する,いわゆる「主傷病選択法」がとられています。しかしながら,この方法は分類する人によって判断が

異なったりして客観性や再現性に乏しく,また,たとえば糖尿病と高血圧が記載されたレセプトがもし高血圧に

分類されるとインスリンも高血圧の治療費に分類される,といった矛盾があります。何より主傷病分類法は人間に

よる作業であるため,時間と手間がかかり,何億もの膨大なレセプトを短期間に分類することは不可能です。

PDM 法はレセプトの点数や日数を,それに記載された全ての傷病名に一定の「重み」を与えて比例配分して

ゆく分類法です。PDM 法によれば,客観的かつ自動的な傷病分類が可能となり,もし共通の「重み」を用いれば,

たとえばA市とB町国保ではどちらが糖尿病の医療費がかかっているか,またC村で糖尿病対策をする前と後と

で糖尿病の医療費が増えたか減ったか,等を客観的に比較することも可能となります。裏返せば,では傷病ごと

の「重み」をどう決めるか?が最大の課題となります。

重みの決め方としては,たとえば DRG も一種の重みといえますし,外国では専門医にアンケートして重みを測

定しようという試みもあります。PDM 法では,これまで患者調査で得られた「主傷病となる確率」や社会医療診療

行為別調査で得られた傷病ごとの「一件当たり点数・日数」を用いたこともあります。本プログラムではデフォルト

では,各傷病名を含むレセプトの一日当たり点数,一件当たり日数を単純平均する方法がとられます(むろんそ

れ以外の独自の重みファイルを使うことも可能です)。単純平均とは一見単純すぎるようにもみえますが,その重

みによる分類結果は,社会医療診療行為別調査のような全国規模のデータを重みに使った場合ときわめてよく

一致することが確認されています。PDM 法は,対象となるレセプトデータがある程度異なっても結果が大きくは

左右されない「頑健(robust)」な手法といえるでしょう。

PDM 法のあゆみ

「全ての傷病名を分析し,点数や日数といった医療の資源消費を定量的かつ自動的に傷病分類できないか」

そう考えた岡本(当時近畿大学講師)は 94 年頃「診療報酬明細書による傷病構造の解析」研究に着手(94 年度

文部省科学研究費奨励研究)。95 年 6 月米国,シカゴで開催された第 12 回 Association of Health Service

Research においてその基本概念を発表し,同年 10 月山形で開催された日本公衆衛生学会で開催された「第 1

回レセプト情報の活用を考える自由集会」において BASIC で組んだ初歩的なプログラムを公表しました。

PDM(Proportional Disease Magnitude)法と名付けられた本手法の概念は,厚生統計分野の代表的な学術誌で

ある「厚生の指標」96 年6月号に掲載されました。

PDM 法の最大のネックは,記載された多数の傷病名をコード化し入力しなければならない「手作業」にありま

す。レセプト電算化も期待されたほどには進展せず,実用化へは遠い道のりの状態が続きました。1999 年には

健康保険組合連合会による「レセプト分析による医療機関評価」研究が行なわれ,そこで PDM 法により傷病構

造を補正して医療費の額や在院日数の長短を異なった医療機関間で比較することが試みられました。この時作

成された Excel の VBA プログラムはインターネット(resept.com)上で公表され,関係者の関心を集めました。しか

し,このプログラムも誰でも気軽に使用できるほどユーザーフレンドリーではありませんでした。

2001 年,岡本は旧国立公衆衛生院に移り,愛媛県,宮城県の国民健康保険団体連合会が実施している全疾

病入力レセプトの解析に着手。また「レセプト情報の利活用と個人情報保護のあり方に関する研究(主任研究

者:小林廉毅)」に分担研究者として参画,その助成によりそれまでコンピューターに強い人でなければ使用でき

なかったプログラムが Windows 上で誰でも簡単に使用できるプログラムとして完成しました。

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2

PDM 法の個人情報保護上のメリット

PDM 法は傷病分類を自動化することにより,手作業の労力と時間を節約しますが,個人情報保護の面でも効

果があります。データ入力作業はレセプトが完全電算化されれば不必要になりますが,傷病分類だけは自動化

は不可能で,人間がレセプトを見て判断するしかない,というのが「定説」でした。熟練したレセプト点検職員は1

日に 1000 件近いレセプトを分類できるといいますが,それでももし年間 12 億件のレセプト全件を分類するとなる

と,のべ 120 万日・人もの人にレセプトを「見せる」必要があります。

どんなに契約書で守秘義務を課してもプライバシー漏洩の危険は,関わる人が多くなると必然的に大きくなり

ます。プライバシー保護を 100%確保するには,医療機関から提出された電子化レセプトが,誰からも中身をみ

られることなく,コンピューター内部で全て処理される,のが理想です。PDM 法により,単純集計はもちろん,傷

病分類まで,人手を介することなくブラックボックスの中で処理され,結果の表だけが出力されるようになり,プラ

イバシー保護は万全になります。

PDM 法の今後

PDM法の実用化とレセプト電算化が進展すれば,全国民の受療状況や疾病の流行状況を月単位で把握する

ことが可能になり,はれて医療「費」情報を医療情報として活用する可能性が開けます。レセプト情報については

以前より MEDIAS という月報情報システムがインターネット上で提供されており医療機関種類別医療費も近年で

は提供されていますが,傷病別医療費はまだ提供されていません。将来は MEDIAS にも PDM 法による傷病別

医療費情報が提供され,たとえばインフルエンザの流行状況をレセプトの件数や医療費で把握することや,個

人情報保護法下で運用が困難になりつつあるがん登録に代わるレセプトがん登録も可能となるでしょう。

PDM 法は医学疫学研究のためだけでなく行政上も役立つと考えられます。たとえば毎年公表される医療費マ

ップと高医療費市町村の指定も,現在では一人当たり医療費のみで評価され傷病別には評価されません。

PDM 法を年齢階級別に適用すれば,たとえばC型肝炎の多い地域ではC型肝炎の医療費を除外して地域差

指数を算出することも可能になります。あるいは健康日本 21 の事業として生活習慣病の医療費マップを作ること

も検討に値しましょう。レセプト情報から得られる傷病分類は,地域保健医療計画の策定から保健事業の経済評

価にいたるまで幅広い応用可能性を秘めています。

本プログラムが国保,社保をとわず,医療保険や保健事業関係者によって積極的に活用されることを祈りま

す。

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3

第2章 操作説明 Ⅰ.レセプトデータの準備

【重要】何より重要なのはレセプトデータの整理です。傷病名無記載,点数ゼロ点のものは除いて下さい。

傷病名無記載は「分類不能」に別に計上して下さい。点数ゼロのものは処理に無関係であるのみならず,

分母をゼロにしてエラーの原因になります。日数ゼロ(電話再診のみ等)は日数を1以上にして下さい。これ

を怠ると後々エラーで悩まされます。

レセプトデータは整理№,日数,点数,傷病コード①~傷病コード⑮の18項目のデータをカンマ区切りのCS

V形式でご用意ください。Excel形式のレセプトデータが在る場合には、上記の18項目について、カンマ区切り

の CSV 形式で保存したものをご用意ください。傷病名が無い場合も必ずカンマだけはいれて下さい【後述のよく

あるエラー参照】。CSV で保存する前に全セルを右クリックし「セルの書式設定」を「数値」「小数点以下桁数ゼ

ロ」にして下さい。さもないと 101 が 0101 と保存され PDM を走らせると「傷病名無し」エラーでます。

●レセプトデータフォーマット

№ 項目 摘要

1 整理№ 修正のため便宜的に(処理とは無関係)

2 日数 レセプトの日数(ゼロ,空白はエラー出ます)

3 点数 レセプトの点数

4 傷病コード①

5 傷病コード②

・・・<略>・・・・

17 傷病コード⑭

18 傷病コード⑮

通常は社会保険表章用の 119 分類コード

を使用しますが,独自の分類コード使用も

可。その場合必ず傷病マスターファイルと

揃えてください。異なった番号があるとエラ

ーになります。

●傷病マスターファイル(通常は 119 分類ですが,独自の傷病分類も可能です)

№ 項目 摘要

1 傷病コード

レセプトデータと合致すればどんな番号で

もよい(119 分類の他,18 大分類でも 160

の分類で何でもよい)

2 傷病名称 出力レポートにはこの名称が出力される

●重みづけファイル(自動算出される平均値とは違う重みで分類し比較したい時に使用)

№ 項目 摘要

1 傷病コード 必ず傷病マスターファイルと一致させる

2 一件当たり日数 レセプトの日数(ゼロ,空白はエラー出ます)

3 一日当たり点数 他のレセプト統計を用いる時は必ず一日当

点数に直して下さい

*傷病マスターファイルは、社会保険表章用の119分類のものがデフォルトで用意されています。

*重み付けファイルのフォーマットは上記参照。

*参考までに、下記の重み付けファイルが用意されています。

・1999SICS-ip.csv :1999 年社会医療調査による傷病別1件当り日数,1日当り点数[入院]

・1999SICS-op.csv :1999 年社会医療調査による傷病別1件当り日数,1日当り点数[外来]

・1999PtSurvey-ip.csv :1999 年患者調査による傷病別の主傷病となる割合(日数、点数共通)[入院]

・1999PtSurvey-op.csv :1999 年患者調査による傷病別の主傷病となる割合(日数、点数共通)[外来]

・all-one.csv :全ての傷病の重みを等しいとしたもの

*上記の重みづけファイルは 119 分類以外では使えません。

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4

Ⅱ.システムの機能構成

データ読込み 原始データの読込み及びチェック処理 チェック項目: 日数なし(0も含む) 点数なし(0も含む) 疾病コードなし 疾病コード該当なし

※ エラー分はログに出力される

データ修正 原始データ及びマスター類の参照及び修正ができる

集 計 下記のようなレセプト計算及び集計処理を行う レセプトデータの一日当たり点数の計算 傷病分類別の平均値計算 レセプトの日数、点数の配分計算 傷病分類別日数、点数の割合計算 オプションの重みファイル仕様による計算処理

※集計処理の中で、各種帳票作成の準備及び テキストファイルの出力処理も行う

レポート出力 傷病分類別レセプト集計結果表等作成

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5

Ⅲ.操作方法

1. 起動方法 1-1.起 動 方 法 Windowsを立ち上げた状態で操作を始めて下さい。 Windowsのスタートメニューから,プログラム-レセプト自動傷病分類ソフトを ダブルクリックして下さい。 ●下図の画面が立ち上がります。 “開始”をクリックすると PDM システム画面が表示されます。

※当システムの立ち上げを中止する場合は“終了”を押して下さい。

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2. PDMシステム画面 2-1.PDM システム画面 PDMシステム画面が表示されます。

※システムを終了させる場合は,画面切り替えメニューの“終了”ボタンか右上の×をクリックして下さい。

■通常の処理手順は下記のようになります。 ・ レセプトデータ及び傷病マスタデータ,重み付けデータの指定

・ データ読込み

・ データ修正

・ 集計

・ レポート出力

上記の順に沿って、以下説明をします。 ■画面切り替えメニューのうち、処理したいメニュー項目ボタンをクリックして下さい。

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3. データ読込み 3-1.データ読込み画面 ■画面切り替えメニューで“データ読込み”を選択すると,次の画面を表示します。

3-2.ファイルの指定 ■ 読み込むデータファイルを指定します。参照ボタンをクリックしてください。下記の画面を表示します。 ●レセプトデータを指定します。

該当する読み込み用ファイルを選択して下さい。

その後に“開く”ボタンをクリックしてください。

元の画面に戻ります。

※ ファイル指定の処理を取り止める場合は,“キャンセル”ボタンか 右上の×をクリックして下さい。

読み込むレセプトデータが指定されました。

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8

■ 読み込むデータファイルを指定します。参照ボタンをクリックしてください。下記の画面を表示します。 ●傷病マスタデータを指定します。 該当する読み込み用ファイルを選択して下さい。

その後に“開く”ボタンをクリックしてください。

元の画面に戻ります。

※ ファイル指定の処理を取り止める場合は,“キャンセル”ボタンか 右上の×をクリックして下さい。

読み込む傷病マスタデータが指定されました。

■ 読み込むデータファイルを指定します。参照ボタンをクリックしてください。下記の画面を表示します。 ●重み付けデータを指定します。

該当する読み込み用ファイルを選択して下さい。

その後に“開く”ボタンをクリックしてください。

元の画面に戻ります。

※ ファイル指定の処理を取り止める場合は,“キャンセル”ボタンか 右上の×をクリックして下さい。

読み込む重み付けデータが指定されました。

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3-2.データ読込み処理

■ 読み込みデータファイルを指定後、 をクリックすると、下記画面を表示します。

■読み込みファイルが正しいか確認し、

はい(Y)をクリック

してください。

データを読み込み、

エラーチェックを開始します。

■処理終了のメッセージが出力されます。OKをクリックしてください。

■処理中、処理状況が表示されます。エラーデータについて確認し、必要であれば、データを修正してください。

修正方法については後述します。

何件めのデータがエラーなのか示している。

<エラーコード>

RCEP-01:レセプトデータに日数が入っていない

RCEP-11:レセプトデータの日数に不正な値が入っている

RCEP-02:レセプトデータに点数が入っていない

RCEP-21:レセプトデータの点数に不正な値が入っている

RCEP-03:レセプトデータに傷病コードが1つも入っていない

もしくは正しい傷病コードが1つも入っていない

RCEP-04:レセプトデータの傷病コードが傷病マスタに存在しない

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4. データ修正 4-1.データ修正

■画面切り替えメニューで“データ修正”を選択すると,次の画面を表示します。 タグをクリックすると、レセプトデータ、傷病マスタデータ、重みマスタデータ それぞれの画面が表示されます。

■修正したい箇所をクリックし、修正します。 ■ をクリックし、修正したデータを上書き保存します。次のメッセージが

表示されるので、「はい」をクリックしてください。 上書き保存を取り止めるときは、「いいえ」をクリックしてください。

<メモ>

データを読み込む前にデータ修正画面を表示す

ると、左のようなメッセージが表示されます。

はいをクリックすると、読み込みを始

めます。ただし、エラー情報などは表

示されませんので、前述の データ読

込み処理 手順に従うことを推奨いた

します。

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5. 集計 5-1.集計

■画面切り替えメニューで“集計”を選択すると,次の画面を表示します。

■“集計処理時のオプション”を確認します。 デフォルトでは次のような設定になっています。適宜、変更してください。

<デフォルトで設定されている内容> ←重み付けデータを使用しない ←集計結果をテキストファイルに出力する ←出力するファイル名

■ 集計処理を開始します。次のメッセージが表示されます。

もう一度集計処理時のオプションを確認の上、「はい」をクリックしてください。

集計開始の指示を取り止める場合は「いいえ」をクリックしてください。

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■集計処理を行います。 傷病分類別 日数、1日当り点数の集計,各レセプト内の傷病分類別 配分日数、配分点数の集計件

数がカウントアップ表示されます。 ■集計処理が終わると下記のメッセージが表示されます。 すぐにレポートを表示したいときは「はい」を、そうでなければ「いいえ」をクリックしてください。 「いいえ」を選んでも、あとでレポート表示することは可能です。 ※レポート表示には多少時間がかかります。

【しばしば遭遇するエラーメッセージ】 エラーが出た場合はレセプトデータファイルのどの行でストップしたか,整理番号を控えてチェックして下さい。 ■ 実行時エラー’6’ オーバーフローしました。

これはゼロでわろうとしたときに出ます。レセプトデータの日数にゼロや空白はありませんか?重みづけファイル

の一件当たり日数にゼロや空白はありませんか? PDM では一日当たり点数を重みにしますので,点数を自動的

に日数で割ります。もし日数にゼロや空白があるとこのエラーが出ます。 ■ 実行時エラー’9’ インデックスが有効範囲にありません csv ファイルを必ず,ワードパッド又はメモ帳といったテキストエディターで観察して下さい。このエラーはレセプト

データや重みつけファイルに必要なカンマがたりない時にでます。たとえば8番目の4日,2000 点,傷病名が901,

402の2傷病だけのレセプトの場合 8,4,2000,901,402,,,,,,,,,,,, とカンマが 12 続かなければなりません(傷病名は必ず 15 あるとみなされるから)が,もし 8,4,2000,901,402,,, と十分な数のカンマがないとこのエラーになります。15 傷病あるべきものが途中でなくなっているのですから・・・。 レセプトデータファイルは Excel の「ファイル」⇒名前つけて保存⇒カンマつき(csv)で保存,の作業で行なわれることが多い

と思いますが,Excel がレセプトデータの途中の行から 12 つけるべきカンマを8つかつけなかったり,といった異常が

でるようです。これは本プログラムのバグではなく,Excel の欠陥です。原因は今のところ不明で,少なくともこのエラ

ーが出たらテキストエディターで中身をチェックすることを忘れないで下さい。

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13

6. レポート出力 6-1.レポート表示

■画面切り替えメニューで“レポート出力”を選択すると,次の画面を表示します。 ※レポート表示には多少時間がかかります。

※表示したいレポートのタグをクリックしてください。 <レポートの種類> 集計処理結果ログ ・・・・・・・・・集計処理において使用したデータ明細,エラー内訳等の処理結果情報 集計表(標準) ・・・・・・・・・・・レセプトデータの平均日数,1日平均あたり点数等をもとに当システム

で傷病分類毎の重み付けを決定して算出したもの 集計表(重み) ・・・・・・・・・・・集計処理時に重み付けデータを別途指定して算出したもの

重み付けデータを指定して算出したときのみ作成される

集計表-詳細(標準) ・・・・・集計表(標準)の詳細 集計表-詳細(重み) ・・・・・集計表(重み)の詳細

重み付けデータ指定して算出

したときのみ作成される

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■各種ボタンの説明

●縮小/拡大ボタン

レポートを縮小表示したいとき、このボタンをクリックすると縮小されます。

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表示拡大率を指定すると、その拡大率で表示されます。

●表示ページ

レポートが複数ページある場合、現在表示しているページの前ページを表示します。

レポートが複数ページある場合、現在表示しているページの次ページを表示します。

現在表示しているページ数が表示されます。 また、表示したいページ数を入力すると、そのページが表示されます。 表示した履歴に従って、前の状態に戻ります。 表示した履歴に従って、次の状態へ進みます。

6-2.レポート印刷

■印刷したいとき、このボタンをクリックしてください。

プリンタ設定画面が表示されます。

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Ⅳ.出力帳票

<出力帳票 例1>

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<出力帳票 例2>

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<出力帳票 項目説明>

出現数 :該当傷病名のあるレセプト件数

Σ日数 :該当傷病名のあるレセプトの日数を集計したもの

Σ点数 :該当傷病名のあるレセプトの1日当り点数を集計したもの

日数(AVG):Σ日数/出現数 で算出

点数(AVG):Σ点数/出現数 で算出

総配分日数:レセプト単位の日数を傷病毎の平均日数で配分し、傷病コード毎に集計したもの

総配分点数:レセプト単位の点数を傷病毎の1日当り平均点数で配分し、傷病コード毎に集計したもの

日数(%) :総配分日数合計のうち、各傷病分類別の総配分日数が占める割合

点数(%) :総配分点数合計のうち、各傷病分類別の総配分点数が占める割合

注)重みデータ使用の場合には、レセプト単位の日数及び点数配分の際にレセプトより計算した傷病毎の

平均日数,平均1日当り点数を使用せずに、重みデータとして指定したもので計算を行います。

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Ⅴ.出力データの形式

下記のレイアウトで、カンマ区切り CSV 形式のデータ出力を行います。

NO 項 目 備 考

1. 傷病コード xxxx

2. 傷病名称

3. 件数

4. Σ日数

5. Σ1日当り点数

6. AV日数 xx.x日

7. AV1日当り点数

8. Σ配分日数

9. Σ配分点数

10. 日数割合 xx.x(%)

11. 点数割合 xx.x(%)

12. AV日数 オプションテーブルより引用

13. AV1日当り点数 オプションテーブルより引用

14. Σ配分日数

15. Σ配分点数

16. 日数割合 オプション使用の場合

17. 点数割合 オプション使用の場合

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「(資料)高齢者インフルエンザ予防接種の効果研究」は省略