平成& & 年度 日本医師会医療情報システム協議会 ·...

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広島県医師会速報(第⚒⚔⚐⚗号) (⚑)⚒⚐⚑⚙年(令和元年)⚕月⚑⚕日 昭和⚒⚖年⚘月⚒⚗日 第⚓種郵便物承認 平成⚓⚐年度 日本医師会医療情報システム協議会 と き 平成⚓⚑年⚓月⚒日㈯ 午後⚒時~午後⚗時⚑⚐分    ⚓月⚓日㈰ 午前⚑⚐時~午後⚓時⚓⚐分   ところ 文京シビックセンター大ホール・スカイホール 広島県医師会 副 会 長 桑原 正雄 広島県医師会 常任理事 藤井 康史 広島県医師会 常任理事 水野 正晴 広島県医師会 常任理事 大谷 博正 広島県医師会 常任理事 西野 繁樹 メインテーマ:明日の医療を彩るICT 平成⚓⚐年度日本医師会医療情報システム協議会が「明日の医療を彩るICT ※⚑ 」をメインテー マとし、平成⚓⚑年⚓月⚒日㈯、⚓日㈰の⚒日間にわたり文京シビックセンター大ホール・スカイ ホールで開催された。今年度は茨城県医師会が開催担当県で、本会からは桑原副会長、藤井、 水野、大谷、西野各常任理事が出席した。 ⚑日目は、大ホール会場では「オンライン診療の現状と将来展望」に関する講演⚔題ならびに 質疑応答、「医療分野のAI ※⚒ とIoT ※⚓ 」に関する講演⚔題とパネルディスカッションが行われた。 スカイホール会場では事務局セッションとして、各医師会で行っているICT化に関する講演⚔ 題(各医師会など)、地域医療連携ネットワークに関する講演⚖題および質疑応答が行われた。 ⚒日目は、大ホール会場では「日医ICT戦略セッション」として講演⚓題(石川・長島両常任 理事他)と質疑応答、「全国保健医療情報ネットワーク」についての講演⚔題と⚔件の実証フィー ルドの中間報告、パネルディスカッションが行われた。スカイホール会場ではサイボーグ型ロ ボット「HAL」および医師資格証の利用に関するセッションが行われた。 最後に、来年度は香川県医師会が当番県で、令和⚒年⚒月⚑日㈯、⚒日㈰に開催されることが発 表され閉幕した。 ⚒日間の参加者は総数⚘⚖⚔名(講師ら関係者含む)であった。 ※⚑ICT(InformationandCommunicationTechnology:情報通信技術)※⚒AI(artificial intelligence:人工知能) ※⚓IoT(Internet of Things:モノのインターネット) 【文京シビックセンター大ホール会場】 開会挨拶(要旨) 日本医師会では、平成⚒⚘年⚖月、医療分野の IT化における今後の取り組みの指針である「日 医IT化宣言⚒⚐⚑⚖」を策定した。この宣言に基づ き、地域医療連携、多職種連携をはじめとする 医療等分野の情報化やICT化につ いて、日本医師会はこれまで以上 に主導的かつ適切に推進するため に、国のデータヘルス改革などの 動きに積極的に関与しているとこ ろである。IT ※⚔ 化宣言で大きな目 標として掲げた医療等分野専用 横倉 義武 日本医師会長

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Page 1: 平成& & 年度 日本医師会医療情報システム協議会 · 活用を望む第三者に提供する認定匿名加工医療 情報作成事業者の認定制度が規定され、日本医

広島県医師会速報(第 号)( ) 年(令和元年) 月 日 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認

平成 年度 日本医師会医療情報システム協議会

と き 平成 年 月 日㈯ 午後 時~午後 時 分            月 日㈰ 午前 時~午後 時 分  ところ 文京シビックセンター大ホール・スカイホール

広島県医師会 副 会 長 桑原 正雄広島県医師会 常任理事 藤井 康史広島県医師会 常任理事 水野 正晴広島県医師会 常任理事 大谷 博正広島県医師会 常任理事 西野 繁樹

メインテーマ:明日の医療を彩るICT

 平成 年度日本医師会医療情報システム協議会が「明日の医療を彩るICT※ 」をメインテーマとし、平成 年 月 日㈯、 日㈰の 日間にわたり文京シビックセンター大ホール・スカイホールで開催された。今年度は茨城県医師会が開催担当県で、本会からは桑原副会長、藤井、水野、大谷、西野各常任理事が出席した。  日目は、大ホール会場では「オンライン診療の現状と将来展望」に関する講演 題ならびに質疑応答、「医療分野のAI※ とIoT※ 」に関する講演 題とパネルディスカッションが行われた。スカイホール会場では事務局セッションとして、各医師会で行っているICT化に関する講演題(各医師会など)、地域医療連携ネットワークに関する講演 題および質疑応答が行われた。  日目は、大ホール会場では「日医ICT戦略セッション」として講演 題(石川・長島両常任理事他)と質疑応答、「全国保健医療情報ネットワーク」についての講演 題と 件の実証フィールドの中間報告、パネルディスカッションが行われた。スカイホール会場ではサイボーグ型ロボット「HAL」および医師資格証の利用に関するセッションが行われた。 最後に、来年度は香川県医師会が当番県で、令和 年 月 日㈯、 日㈰に開催されることが発表され閉幕した。  日間の参加者は総数 名(講師ら関係者含む)であった。

※ ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)※ AI(artificial intelligence:人工知能)※ IoT(Internet of Things:モノのインターネット)

【文京シビックセンター大ホール会場】

開会挨拶(要旨) 日本医師会では、平成 年 月、医療分野のIT化における今後の取り組みの指針である「日医IT化宣言 」を策定した。この宣言に基づき、地域医療連携、多職種連携をはじめとする

医療等分野の情報化やICT化について、日本医師会はこれまで以上に主導的かつ適切に推進するために、国のデータヘルス改革などの動きに積極的に関与しているところである。IT※ 化宣言で大きな目標として掲げた医療等分野専用

横倉 義武日本医師会長

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昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 年(令和元年) 月 日( )広島県医師会速報(第 号)

ネットワークについては、総務省の実証事業に協力するとともに「全国保健医療情報ネットワーク」についても検討を進める。一方で、改正個人情報保護法により、医療分野は「要配慮個人情報」となった。また、次世代医療基盤法では、丁寧なオプトアウトで医療機関などから医療情報を収集し、匿名加工を行った上で、利活用を望む第三者に提供する認定匿名加工医療情報作成事業者の認定制度が規定され、日本医師会は新たな財団法人を設立して、認定事業者となる方向で準備している。 医療とICTを取り巻く環境は、診療報酬改定におけるオンライン診療、AIによる画像診断、外骨格型の動作支援ロボットなど大きな変革期を迎えている。医師や医療関係者の役割、将来の医療提供体制や医療保健制度のあり方にまで影響が及び得る、非常に重要なテーマであると考える。※ IT(Information Technology:情報技術)

 煙   煙   煙 

 本協議会は、今回で 回目の開催となる。今回は初めて、日本医師会館を出て文京シビックセンターにおいて、 つの会場での開催となった。深刻な少子高齢化と人口減少の課題をかかえる日本では、一方で医学の急速な進歩と相成り、日常診療、地域医療連携、

多職種連携、データヘルス関連、医師の偏在、働き方改革などの諸問題を解決するために、今やICTは必須のアイテムであり、医師が利用する時代になったと考えている。

Ⅰ.オンライン診療の現状と将来展望座長/石川常任理事、   運営委員(川出委員、藤原委員)

① オンライン診療の現状と将来展望京都府医師会長 松井 道宣

 オンライン診療に関する懸念は、患者情報の保護の問題とともに、時間と場所を選ぶ必要のない手段であることから、十分な診療が行われることなく、投薬などの医療行為が進められていくのではないかということである。医師は、オンライン診療を行う際には、自らの利便性に左右されることなく、患者の安全と治療の有効性を第一に、患者の個人情報のセキュリティについて特にその重要性を認識しなければならな

い。技術が進歩するたびに立ち戻らなければならないのは医の倫理であり、安全である。

② オンライン診療について厚生労働省医政局医事課長 佐々木 健

 厚生労働省は、情報通信技術の進展に伴い、情報通信技術を用いた診療の普及が進んでいるため、平成 年 月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を作成し、医師法第 条の無診察診療に該当しない範囲を明確化した。情報通信技術を用いた診療は、医師が不足する地域などにおけるオンライン診療や遠隔モニタリングの有用性や生活習慣病におけるアドヒアランス向上が望める一方で、通信環境のセキュリティリスクやオンラインによる診療の限界など留意すべき課題も多い。規制官庁として、情報通信技術の発展に伴う革新を後押しする一方で、適切な医療提供体制の発展を支持していく。

③ 総務省実証事業報告 福岡フィールドたろうクリニック院長 内田 直樹

 オンライン診療料の新設に関連した事業として、ICTを活用した「かかりつけ医」機能強化事業がある。この事業は、福岡市が推進する超高齢社会への対応「福岡 」プロジェクトの一つで、平成 年 月より約 の医療機関の協力のもと、段階的なオンライン診療の導入と有用性の検証を実施した。この事業の開始時より参加し実際に訪問診療と外来診療において数例のケースにオンライン診療の実証を行った。

④ 遠隔在宅医療を支えるインターネット技術 “Hospital in the home”の実証

慶応義塾大学大学院政策・      メディア研究科特任准教授 佐藤 雅明

 遠隔医療では、患者の状態を把握するためのカメラやセンサといった機器の品質や、ネットワーク環境の信頼性によって実現できる医療サービスが異なる。高精細映像を遠隔医療の現場で用いることで、患者の表情はもちろん、皮膚や眼球、口腔内の様子や質感などを捉えて再現し得る。また、高精度映像は、ズームをしても高い画質を維持できるため、ケースによっては対面での診察よりも細部の状態を把握できる可能性がある。そこで、必要な情報技術や将来的な適用領域を見定めるため、“Hospital in the home”というコンセプトの元に高精度映像技術とテレビを活用した遠隔在宅医療システムの実証実験を行った。遠隔医療は、医師・患者双方

諸岡 信裕運営委員会委員長・茨城県医師会長

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の負担を低減するだけでなく、従来では不可能であった医療サービスを実現する可能性がある。

⑤ディスカッション 患者がオンライン診療をどのように感じるかということが非常に重要であるが、アンケートでは、システムの不具合や医師とのコミュニケーションなどの不安を感じている患者が多かった。実際にシステムを体験した結果、 割くらいは不安が解消されたと聞いている。 オンライン診療は診療技術という訳ではなくあくまでも情報を得る一つの手段として利用し、将来的にはAIなどの導入により多くの情報が得られるようになると考える。 対面診療の優れているところは、医師が年を追うごとに医療技術が重ねられるところにある。また、患者と医療従事者の間には知識の格差が存在するため、教育的な点で診断や治療を分かりやすく行う必要がある。一方でオンライン診療は、例えば Kを使えば画像が鮮明に参照できる、もしかすると目で確認するよりもよく分かるようになるかもしれない。IoTやさまざまな器機の進化が対面診療の優れているところに近づいていく可能があると考える。オンライン診療を推進している先生方はよい事例を積み重ねていただきたい。

Ⅱ.シンポジウム「医療分野のAIとIoT」座長/羽鳥常任理事、   運営委員(服部委員、堤委員)

① AI+IoTで変わる社会と医療INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長

坂村 健 AI+IoTが社会を大きく変えるための鍵はオープン性にあるが、日本は出遅れていると言わざるを得ない。オープン性では「モノをインターネットにつなぐ」というより、「インターネットのようにモノをつなぐ」ことが重要である。医療機器は孤立しており、それらをつなぐ標準APIの確立では、ネットの中でAPIが公開され「オープンアクセス」できることが重要である。また、機器同士の連携では、共通的なIDの構築が必要である。

② ゲノム医療分野のAIとIoT東京大学医科学研究所         国際先端医療社会連携研究部門特任准教授

湯地晃一郎 膨大な人智を超えたデータの解析・解釈と翻訳には、AI(人工知能)やスーパーコンピュータの利用が必須である。東京大学医科学研究所は、AIやスーパーコンピュータの活用により、ゲノムから環境・生体時空間的に全身を捉えることで、統合計算生命科学の研究成果を個別化・予防医療へ返す支援基盤構築を目指している。

③ 画像診断分野のAIとIoT東京大学医学部附属病院       世紀医療センターコンピュータ画像診断学予防医学講座特任准教授   吉川 健啓 CAD※ は一言で言うと画像診断のための弱いAIであり、単純写真、CT、MRIなどの医用画像をコンピュータで解析し、病変候補の検出や病変の質的診断を行うものである。CADの研究と利用が広まらない理由として、利用データが少ないことやCADソフトができても、放射線科医が日常的にCADソフトを使うまでのハードルが非常に高いことが挙げられる。CIRCUS(Clinical Infrastructure for Radiologic Compu-tation of United Solutions:統合されたソリューション群による放射線医学のための臨床情報処理基盤)は、CADの開発、臨床応用の促進を目指すプラットフォームである。※ CAD(computer aided/assisted detection/diagnosis:コンピュータ支援検出/診断)

④ AIの消化器内視鏡現場への応用についてただともひろ胃腸科肛門科院長 多田 智裕 医療におけるAIは医師が利用する道具である。例えば、内視鏡AIにできることとして、内視鏡検査時のがんの見逃し率減少や医師の画像読影負担減少、書類作成負荷軽減が期待できる。一方、AIは医師の仕事を奪うものではない。確定診断を行うのは医師であり、AIはあくまで診断の補助として確率を出力するだけである。また、AIは患者の気持ちに寄り添い説得することはできない。AIの診断結果を参考にがんの見逃しリスクを軽減できる。

⑤ パネルディスカッション AIの将来像について、診断や治療方針など選択を行う部分ではAIが支援を行うこととなり、

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医師の仕事の一部を担っていくと考える。一方で 年、 年後を見据えても、診断に対する責任という部分は最後まで残ると考える。また、患者とのコミュニケーションについてもAIが普及しても同様に医師が担う部分になると思う。 ゲノム医療分野では研究者や臨床医はAIなしのゲノム医療は受けたくないとの意見が多数である。他の領域とは違って、人間が見える範囲を超越しているという理由もあるが、どの診療科でも多くのデータが集まってくることによって人間が判断できるデータの量を超えてくる時代が間違いなくやってくるため、AIが支援する医療というのは今後ますます広がると考える。

Ⅲ.日医ICT戦略セッション座長/運営委員(牟田委員)

① 日本医師会における医療・介護分野のICT化の取り組み

日本医師会常任理事 石川 広己 「日医IT化宣言 」で大きな目標として掲げた医療等分野専用ネットワークについては、その構築に向けて、総務省の実証事業にも協力している。一方、平成 年 月に全面施行された改正個人情報保護法により、医療情報は「要配慮個人情報」となった。さらに昨年 月に施行された次世代医療基盤法では、丁寧なオプトアウトで医療機関などから医療情報を収集し、匿名加工を行った上で、利活用を望む第三者に提供する認定匿名加工医療情報作成事業者の制度が規定された。日本医師会は、新たな財団法人を設立して、認定事業者となる方向で準備しているところである。

②医師資格証について日本医師会常任理事 長島 公之

 医師資格証について、現在の利用シーンと今後の展望を紹介する。日本医師会は、電子署名・認証の機能を持つHPKI※ カードである医師資格証の発行を平成 年 月に始め、現在までに約 , 人が所有するに至った。今後は、医師資格証の利用価値と活用の場面をさらに増やしていくことで、普及を促進する方針である。 医師資格証は「ICTの電子世界」および「現実世界」の両方で、身分証としての利用が可能である。例えば、電子世界では、出欠管理システムの利用シーンの拡大、その他のシステムとの連携強化を進め、現実世界では、行政・自治

体などに働きかけ、医療行為に係るさまざまな申請・登録などの手続きの代替を可能とする証明書を目指したいと考えている。※ HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure)

③医療セプター※ について

日本医師会情報システム課長 増田 威 日本医師会は、今年度サイバーセキュリティ重要インフラの一つである「医療セプター」の事務局を担うこととなった。今後は、医療セプター構成団体との連絡を密にするとともに、各医療機関向けに情報発信を行っていく。 一方、医療の現場においては、他分野のインフラの影響に係わる点が多くある。例えば、電力、ガス、水道、物流などこれらの業態がダウンすることによって通常診療に支障が出るケースもあり得るため、医療セプターの事務局を担うことによって、他の重要インフラとの連携の可能性も模索していくこととしたい。 広島県医師会より医師会内でのウィルス感染やサイバー攻撃が疑われた事例について質問したが、こうした事案では個別にベンダーに相談することが想定されており、日本医師会が直接対応することにはなっていないと回答された。これに対して、保健医療情報ネットワークの構築、運営に伴い、医療機関ではないが、都道府県医師会、市郡地区医師会内にも患者情報を持ったサーバが構築され、こうした部分も十分なセキュリティ対策がなされるよう、構築時のみならず、運用面でも、医療セプターとして日本医師会に対応いただきたいと希望した。※ セプター(CEPTOAR Capability for Engineering of Protection, Technical Operation, Analysis and Response:重要インフラ事業者等の情報共有・分析機能及び当該機能を担う組織)

Ⅳ.全国保健医療情報ネットワークについて座長/石川常任理事、   運営委員(目々澤委員、若林委員、小室委員)

①全国保健医療ネットワークの構築に向けた取り組み状況について

    厚生労働省医政局研究開発振興課    医療技術情報推進室長 南川 一夫 厚生労働省ではデータヘルス改革において提供されるサービスの一つとして、全国的な保健医療情報ネットワークを構築し、保健医療記録共有サービスなどの保健医療従事者向けサービスの令和 年度からの本格稼働を目指す。地域医

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療情報連携ネットワークの運営状況やこれまでの関連の実証事業の成果などを踏まえ、全国保健医療ネットワークの構築に関し、費用負担に見合った便益を得られるサービスやネットワークをどのように構築していくかが課題である。

②保健医療記録共有サービスの基盤整備に関わる調査事業について日本医師会ORCA管理機構事業推進部部長

伊藤 伸昭 未来投資戦略やデータヘルス改革推進本部での検討を踏まえ、令和 年度からの稼働を目指す全国的な保健医療ネットワークが整備されることを前提に、初診時などに本人の同意の下で、患者基本情報や過去の診療情報・処方情報などを共有できる「保健医療記録共有サービス」の提供が予定されており、日本医師会ORCA管理機構は、本年度、本事業を厚生労働省より受託した。本サービスにおける情報連携に必要なデータ項目について、ミニマム項目セットとして、データ項目を仮説として設定の上、実証地域などへのヒアリングにより精査する。また、保健医療記録共有試作システムでは、収集システム、保管管理システム、閲覧管理システム(ビューア)を整備する。

③医療・介護連携モデル鶴岡地区医師会理事 三原 一郎

 NetUは、運用歴 年という日本で最も長い歴史を誇る地域電子カルテである。今回の調査研究事業においては、介護と医療(病院)との間で共有すべき書式を標準化した上で、介護施設に導入されている居宅介護支援システムへの入力がNetUへ反映される仕組みを開発した。本研究事業で得られた結果として、在宅主治医、訪問看護師の参画と積極的な利用が必要、基幹病院内における利用環境を含めた改善が必要、同意の取得に伴う手間の軽減などが挙げられる。

④レセプトデータを活用した保険者・医療機関連携モデル

高松市医師会理事 松本 義人 平成 年度総務省「医療等分野におけるネットワーク基盤利活用モデルに関する調査研究」において、患者情報を収集・共有する一つのアプローチとして、現行の健康保険制度で運用されているレセプト情報を活用する実証を行った。レセプト情報の使い方としては、主に投薬、検査など医療内容と傷病名を確認した。また、他

院でかかっている治療内容の変化を客観的に確認できる。情報が少ない患者や情報があいまいな患者の場合に有用である。マイナンバーカード、HPKIカードを活用する認証システムの機能性や有用性については、普及率とPINコードの入力が課題である。

⑤調剤情報を活用した薬局連携モデル酒田地区医師会理事・日本海総合病院院長

島貫 隆夫 酒田地域では平成 年度総務省事業「医療等分野におけるネットワーク基盤利活用モデルに関する調査研究」の地域実証にて、全国保健医療情報ネットワークを活用した場合の有効性に関する検証、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI※ )を利用した紐付け・同意の手段の検証、調剤情報を電子的に共有し、重複調剤などの課題に対処する仕組みの検証などを行った。地域医療情報ネットワークでは情報の双方向性が重要であり、その一環として調剤情報共有システムを導入した。患者の同意・名寄せにおいて、マイナンバーカードの公的個人認証利用(JPKI)は有用であり、リアルタイムかつ正確な利活用が可能となった。※ JPKI(Japanese Public Key Infrastructure)

⑥EHR PHR連携モデル沖縄県医師会理事 比嘉 靖

 患者本人が生涯にわたる自分自身の医療・健康情報を時系列で管理し、本人の判断のもとで多目的に活用するPHR(Personal Health Re-cord:個人健康記録)の仕組みを整備することで、健康寿命の延伸や臨床、救急、災害時にいかに役立てるか検討が求められている。本事業では国内外の事例を踏まえ、医療機関や地域医療連携ネットワークが蓄積している医療情報などを患者本人へ連携するための技術的仕組みや、同意取得方法などの運用面に関する検討、マイナポータルを活用した情報連携について検討するとともに、EHR(Electronic Health Record:医療・健康情報を電子的に管理活用することを可能とする仕組みである医療情報連携基盤)とPHR間のセキュアで効率的な接続について技術検討を行ってきた。今後は、確実な本人同意のもと、医療情報だけではなく、母子健康手帳やお薬手帳などの他PHRサービスとの連携により、幅広く県民が参加できるPHRサービスを目指す。

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⑦全国保健医療情報ネットワークと Master Patient Index(MPI)

MEDIS-DC 理事長/       自治医科大学客員教授 山本 隆一

 多くの地域医療連携ネットワークや介護連携システムでは比較的狭いドメインの中で運用されており、問題としては目立たない。しかし連携が広域に及ぶ場合や、ドメインが複雑に入り組んでいる都市型の地域医療連携ネットワークの場合は、確実な識別は困難な課題となる。これを実現するためには全患者・全国民を一意に識別可能なMPIが必要で、医療等IDの重要なアプリケーションといえる。医療や介護がプライバシーに機微な情報を日常的に扱うことは共通の理解であり、また医療や介護の特質からある程度は緊急性への対応も確保する必要がある。

⑧全国保健医療情報ネットワークの実運用に向けて ~情報の管理責任とセキュリティ技術~

東京工業大学科学技術創成研究院 社会情報流通基盤研究センター教授

大山 永昭 全国版の保健医療ネットワークでは、金融機関の専用ネットワークと同じような安全性を確保するとともに、責任分界面を明らかすることが必要になる。医療情報はどこにあっても、然るべき責任者の管理下にあるという基本理念がある。通信回線上にある医療情報の安全管理責任は、医療情報の伝送を要求する者にある。また、モバイルなどのデバイスについて、デバイス上にある医療情報の安全管理責任は、デバイスの管理者にあるため、BYOD※ の場合は、デバイスの所有者に、専用端末は端末管理者と利用者の両方に管理責任がある。※ BYOD(Bring your own device:従業員が個人保有の携帯用機器を職場に持ち込み、それを業務に使用すること)

⑨パネルディスカッション 全国保健医療情報ネットワークにおけるミニマムデータセットというのは、全国の医療機関にあるレセプト情報を想定しており、どのようなサービスを実装すれば有用かというところも検討が必要であると考える。また、患者の同意取得について黙示の同意で問題ないか、あるいは包括同意でどこまで運用可能かなども検討が必要である。法的な意味も含め、黙示の同意における運用、また運用上の安全性の 点について継続的に検討を行う。

 政府のタイムスケジュールでは、令和 年の後半くらいからいくつか稼働する事業があるが、まだまだ多くの課題があるということが浮き彫りになった。

【文京シビックセンタースカイホール会場】

Ⅰ.事務局セッション座長/増田情報システム課長

①香川県医師会 ~これまでのIT化とこれからのICT化について~

香川県医師会 長尾 耕治 香川県医師会では、平成 年度より、事務作業の効率化、ペーパーレスなどによるコスト削減や情報共有を目的として、ICT化に取り組んできた。しかし、これまでに取り組んできたICT化は、事務作業の増加、不完全なペーパーレス化やランニングコストの発生によるコスト増加、情報流出のリスクなど、当初の目的が果たされず、多くの問題を残す結果となる。また、今年度は、地域医療連携ネットワークK-MIXの普及促進を兼ねて、テレビ会議システムの運用を開始した。医師会のICT化は医師会のためではなく、会員のためICT化を進めるべきである。

②栃木県医師会における電子決裁システムについて

栃木県医師会 柴 あつみ 栃木県医師会では、平成 年度より文書管理システムを導入している。また、情報漏えい対策や不正アクセス防止などのセキュリティ強化を同時に進め、職員間の文書回覧や役員の決裁も電子化している。「VPN」を利用した文書電子決裁システムにより、インターネットに接続できるパソコンやタブレット端末さえあれば、役員はいつでも、どこにいても決裁を行うことができる。その結果、役員の決裁待ちの時間が大幅に削減され、事務局業務が格段に効率化された。さらに郡市・大学医師会宛ての通知にも応用している。継続運用を行うことにより、データ量の膨大が課題となっているが、クラウドの普及が進んできているので、利便性と費用対効果が確保されれば、次回ハードウェア更新時には自設サーバからクラウドへ移行する可能性が高いと考える。

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広島県医師会速報(第 号)( ) 年(令和元年) 月 日 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認

③ICTを活用した医師会業務の抜本改革東京都医師会 黒木 美和

 東京都医師会では、文書管理や会員管理といったシステムごとにサーバを会館内に構築していたが、サーバのクラウド化を実施した。クラウド化によるメリットして、サーバの共通化やデータ容量の柔軟な拡張によるコスト削減、システムの二重化により、障害に対して強固になるとともに早期復旧などがあげられる。そして、クラウド化で削減されたコストで新たなシステムを構築し、業務の効率化に取り組んでいる。その一つである研修申込システムの導入では、本会主催研修会のインターネット申込による事務業務の簡略化・効率化、事前に発行したQRコードを利用したスピーディーな当日受付などのメリットがある。地区医師会の反響も大きく、地区医師会主催の研修会でもシステムを共同利用するという案も出ており検討中である。

④茨城県医師会ICT化の取り組み茨城県医師会 荻野 剛正

 茨城県医師会は、日医会員数に占める医師資格証の取得者の割合は全国 位である(平成 年月 日現在)。平成 年 月 日より県医師会が主催する産業医研修会については、原則医師資格証を用いて受付を行い、会員情報システムにてCSV※ ファイルを取り込み取得単位の管理を行っている他、理事会の出席登録にも使用している。新規入会の際には、医師資格証の発行を必須要件としている。ICT化として主に取り組んだ機能として、ペーパーレス化、テレビ会議やメーリングリストの導入、会員専用ページが挙げられる。※ CSV(Comma Separated Value:エクセルなどで使うカンマ区切りのテキスト形式のファイル)

 

Ⅱ.事例報告セッション座長/運営委員(小室委員、牟田委員)

①静岡県医師会が主導する在宅医療・介護連携情報システム「シズケア*かけはし」の紹介

静岡県医師会理事 小林 利彦 静岡県では、平成 年 月より「静岡県在宅医療推進センター」を開所するとともに、在宅医療の推進に向けて、在宅医療を担う関係者が患者情報を共有できるネットワークシステム(静岡県版在宅医療連携ネットワークシステム)を構築した。平成 年には、同システムのリニューアルを

行い、在宅医療だけでなく介護サービスも対象とした情報共有ツールへと変更し、併せて、従前の患者情報共有ツールだけでなく、関係者間の情報交流(掲示板機能、セキュアメールなど)や施設情報等の登録・閲覧を可能にする機能を追加した。また、従来のインターネット下でのセキュア環境は担保したまま、クラウドサーバでのデータ保管へと変更した。平成 年度からユーザー費用として一施設あたり , 円/月を徴収せざるを得なくなっており、登録施設・登録ユーザーのさらなる増加が大きな課題となっている。

②奈良市医師会と大和郡山市医師会で立ち上げた医療・介護連携に活用するSNS『奈良あんしんネット』の現況と今後

奈良市医師会副会長 森田 隆一 ICTの活用が各地でなされているが、奈良市医師会と大和郡山市医師会は医療・介護従事者専用に開発されたMedical Care STATIONを共同採用した。事務局を奈良市在宅医療・介護連携支援センター内に置き、先例の情報を参考に本システムの利用に関する運用ポリシーを定め、地域で使用する名称として『奈良あんしんネット』の愛称を採用した。在宅患者の医療や生活支援に関わる情報共有はもちろんのこと、大規模災害に備えた医師会内での情報や訓練情報、糖尿病腎症重症化予防事業での多職種の情報共有などいろいろな場面で情報共有手段として本システムの利用拡大の試みを始めている。

③PHRを基軸とした地域医療健康社会づくり~QOLMSコンセプトとは?~習志野台整形外科内科理事長 宮川 一郎

 患者自らが自立的に健康管理を実践するインフラの構築の実現こそが最も重要であると考える。QOLMS(Quality Of LifeManagement System)とは、患者自らが医療・健康情報を管理し、必要な時・必要な場所に持ち運ぶ仕組みであるPHRのポータルサイトである。薬手帳や血圧手帳、検査結果手帳・食事手帳など複数の手帳の中から必要な部分だけを選んで使用可能なポータルサイトで自身や家族の情報が入力でき連携する医療・介護機関と共有することが可能。PHRは多様な医療・介護情報の中で情報を連携する有用な方法であり自立的に健康管理を実践するインフラの基幹になり得ると考える。

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昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 年(令和元年) 月 日( )広島県医師会速報(第 号)

④地域医療・介護情報連携システム “うすき石仏ねっと”の進化

臼杵市医師会医療福祉統合センター長舛友 一洋

 うすき石仏ねっとでは、救急医療へのデータ利活用、災害対策、疾患連携パス、健診データの取り込みなどデータの利活用に取り組んできた。救急車要請事例のほぼ半分でうすき石仏ねっとから何らかの情報を得ることが可能となり、救急隊現場活動時間短縮につながっている。子育て支援アプリの活用も始まり、多くの世代が活用する仕組みに取り組んでいる。今後は、学童検診データの取り込み、歯科レセプトからの標準歯科情報の自動取り込み、大分市をはじめとする臼杵市外の医療・介護機関とも情報共有すべくネットワークを広げていきたい。

⑤あじさいネットを用いたTV会議システムの有用性阿保外科医院副院長 阿保 貴章

 あじさいネットでは、そのセキュリティレベルの高さを生かし、病診・病病の連携におけるTV会議システム、専門カンファランス中継、病理診断などの高品質遠隔画像診断システム、離島・へき地医療支援システムや、周産期医療支援システムなどさまざまなサービスが追加されている。あじさいネットに加入している施設間ではTV会議を簡単に利用することが可能であり、在宅医療における退院前カンファランスや専門カンファ、救急搬送時のカンファなどを実際に運用し、その有用性を確認した。また、画面上に電子カルテ、検査画像の画面を提示することが可能であることから、疾患の詳細を共有することが可能であり、質の高いカンファランスを行うことが可能であった。

⑥シンプルな構成で持続性がある 「東京総合医療ネットワーク」

東京都医師会理事 目々澤 肇 東京都医師会では、平成 年 月に東京総合医療ネットワーク運営協議会を発足させた。運営協議会は、平成 年 月に富士通の「HumanBridge」、NEC・SECの「ID-Link」のいずれかの地域医療連携システムを有するモデル病院間で試験的な連携を実施し、実際の運用開始に向けた課題を確認した。これを受けて、平成 年 月からモデル連携に参加した 病院の間で相互のシステムを超えた連携の本格運用を開始した。 本ネットワークの特徴は、新しいサーバを設けることなく既存の連携システムを有効活用し、シンプルな構成で持続性がある広域医療連携シ

ステムを構築するという点にある。具体的には各医療機関にOID※ に基づく一意のIDを割り振り、それぞれの連携システムが持つSS-MIX形式の診療情報をIHE規格が定めるPIX/PDQ連携を用いて参照するという構造である。今後は、前述の ベンダーに続くベンダーの参加、診療所からの情報開示にも対応できるクラウド型電子カルテシステムベンダーの参加を募る予定である。※ OID(Obejct Identifier:オブジェクト識別)

Ⅲ.サイボーグ型ロボット「HAL」について座長/運営委員(塚田委員)

①ロボットスーツ「HAL」による臨床応用の現状と課題筑波大学医学医療系整形外科教授 山崎 正志 ロボットスーツHAL®(Hybrid assistive limb®)は、筑波大学システム情報系で開発された外骨格型の動作支援ロボットである。HALの効果は単なるパワーアシストによるものではなく、interactive Bio-Feedback(iBF)理論に基づいた運動学習の反復、すなわちErrorlessmotor learningによってもたらされると考えられている。そして、HALは本邦で医療機器として認可されている唯一のロボットである。筑波大学附属病院では、HALを用いた機能再生治療の安全性・有効性を検証するため、さまざまな医師主導型自主臨床試験および臨床研究を施行している。整形外科領域で進めているHAL治療は、 .脊椎・神経疾患:①脊髄症術後の急性期②脊髄症術後の慢性増悪(脊髄萎縮) ③脊髄損傷・障害(急性期・慢性期) ④Heterotopic Trig-gered HAL(T-HAL) ⑤頚椎術後の上肢(C)麻痺 ⑥腕神経叢損傷(神経移行術後) ⑦脳性麻痺 ⑧姿勢異常(首下がり)  .関節疾患:①人工膝関節・高位脛骨骨切り術(術後). .腰部装着型HAL. .肩HAL. .足関節HALである。

Ⅳ.医師資格証の利用について座長/長島常任理事

①医師資格証の利用とHPKI の未来日本医師会電子認証センターシステム開発研究部門長

矢野 一博 医師資格証は、現在、 , 人以上の医師が保有するカードとなった。平成 年頃、IT革命という言葉が登場し、政府もe-Japan戦略などを打ち出しながら国を挙げて情報化を推進する中、

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広島県医師会速報(第 号)( ) 年(令和元年) 月 日 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認

医療分野も例外なくさまざまな取り組みがなされてきた。事実、現在、ICTを用いた地域医療連携が数多く誕生している。また、NDB※ などのデータベースが整備され、次世代医療基盤法も施行されている。医師資格証は誕生から約 年となるが、電子紹介状にみられるように、診療報酬上でもHPKIが必要とされている。また、地域医療連携の中でも医師資格証の利用が徐々に広まってきている。今後は、HPKI、医師資格証は、情報化の安全基盤であることを柱にしつつ、電子・現実世界問わず、引き続き、さまざまなシーンでの普及に努めて行く。※ NDB(National Database:医療機関から保険者に対して発行されるレセプトと特定健診・保健指導の結果からなるデータベース)

②茨城県医師会の取り組み茨城県医師会理事 伊藤 金一

 茨城県医師会の平成 年 月での医師資格証発行枚数は 枚である。県医師会が積極的に使用を促すためにも、理事会出席登録に利用した。新規入会の際には医師資格証の発行を必須要件としている。医療情報、交換・共有システムの“いばらき安心ネット(iSN)”のログインにも医師資格証を用いている。平成 年 月 日より県医師会が主催する産業医研修会については、不正予防、本人確認を含め、原則医師資格証を用いて受付を行い、会員情報システムにて取得単位の管理を行っている。日医生涯教育講座についても導入を検討中である。

③徳島県医師会の取り組み徳島県医師会副会長 木下 成三

 徳島県医師会では、医師資格証の取得によりICT化へのきっかけを促す事を目的として、「医療情報システム説明会」「ITフェア」を開催し、両日とも「医師資格証申請特設ブース」を設置し、広く周知を図った。本会役員会・各種委員会開催時の出欠管理を「医師資格証出席管理システム」で行い、本会主催の講演会などでは、「医師資格証出席管理システム」での出欠管理に併せ「医師資格証申請特設ブース」を設置し普及促進に努めている。会員医療機関への導入についての個別説明と平行し、会員への需要の場を広げるため、各市町村へ主治医意見書などの送受のツールとしての「MEDPost※ 」活用についての個別説明を行うなど、医師資格証と併せ「MEDPost」の普及を取り組んでいる。※ MEDPost:日本医師会ORCA管理機構が開発したセキュアネットワークにおける文書交換システム

④医師資格証を用いたミニマム地域医療連携萩市医師会長 綿貫 篤志

 萩市医師会では、行政と協議し、日本医師会が公開した「かかりつけ連携手帳」をシステム化し、メドポストをインフラとして使用することにした。行政を含めた主治医意見書の電子化と診療報酬改定で加算が新設された、紹介状の電子化から始めることとした。行政と医療機関をネットワークで結ぶためには、データ送受信用のセキュリティを確保する必要があるが、通信インフラをメドポストにしたことで、行政への導入も簡単に行うことができた。導入機材は、「医師資格証」「ICカード・リーダー・ライター」「電子署名ソフト」が必要だが、ネットワークにインターネットを使用するため、新たな設備の導入にかかるコストを最低限に押さえることができた。当地域では手書き文書を電子化するところから始めたが、現在、安定稼働のめどはつき、電子化も進みつつある。行政の評価も高く、十分に効果は出ている。

⑤「医師資格証」を活用したかかりつけ連携手帳(PHR)のデータ読み取り

山梨県医師会理事 佐藤 弥 かかりつけ連携手帳システム(PHR)は、無料で安全性が高いシステムであり、医師側が患者のスマートフォンの提示を受けて参照するものだが、タブレットなどに拡大されて参照できれば、より利便性が高まると考えられる。われわれの提案したPHRシステムは、パスワードで保護されており、通用は個人がパスワード解除により参照できる。スマートフォンは、An-droid、iOS両者に対応している。かかりつけ連携手帳の拡大がはかれれば、医師資格証も活用範囲が日常的に必要なものと考えられる。

⑥ディスカッション 日本医師会としては、医師資格証を今後、 年間で全力をもって普及させたい。 年間ということの意味は電子証明書が 年間ごとの更新であることと、医療のICT化は 年後には現在と全く違ったものとなり、そのときには必ず医師資格証は必須となると考えるからである。

閉会式次期担当県挨拶  日間にわたり非常に盛大で非常に素晴らしい協議会であった。今回、担当いただいた茨城県医師会の諸岡会長とその関係者に敬意を表する

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昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 年(令和元年) 月 日( )広島県医師会速報(第 号)

とともにお礼を申し上げる。 香川県では平成 年より遠隔画像診断ネットワークK-MIXを運営しており、平成 年から中核病院の患者の情報、検査結果などを診療所から閲覧できるK-MIX+の運用を開始した。しかしながら、診療所同士の情報公開や医療介護連

携についてはこれからである。 来年は 月 日㈯、 日㈰に日本医師会で開催する。ぜひとも来年もこのような活発な協議会にしたい。

閉会挨拶 皆さまの協力のおかげをもって、日間にわたる本協議会を無事、閉会の運びとなった。初日の諸岡運営委員長のご挨拶にもあったように初めての試みとして、このような素晴らしいホールで開催していただき、また 会場での開催となった。メインテーマである「明日の医療を彩る

ICT」にふさわしい非常に多彩な素晴らしい講演をいただいた。また、有意義なディスカッションもなされ、成功に終わったと思う。 今後もICTはいろいろな分野でますます発展すると思われるが、われわれ医師がICTに使われるのではなく、医師がICTを利用することが重要であると考える。また、国民の一人一人にICTの有用性を理解していただくことで今後のICTの発展と国民全体のデータヘルスにも寄与

すると考え、そのようなことを広報していくこともこの協議会の役割ではないかと思う。 最後に来年、久米川先生の委員長のもとにまた、皆さまとお会いできることを期待し、閉会の挨拶とする。

担当理事コメント 今回の医療情報システム協議会の講演の中では、オンライン診療と医療分野のAIについて興味深い話があった。オンライン診療は遠隔医療等で有用な手段であるが、今だ試行錯誤の中で運用されている。モニタリングや画像機器の進歩やネットワークの環境改善等ICTの活用が充実すれば有用な医療手段になると思われる。 医療分野でもAIによる画像解析は進化しており、多くの情報を提供してくれる有用な診断補助手段である事を実感した。医療情報が集積されれば更なる進化が期待される。ただ、日本では情報の開示が十分にできない社会環境であり、データの集積に制限があることが問題である。医療器械についても規格に共通のフォーマットがないため、機器同士の連携ができずオープンアクセスが出来ない現状も指摘された。世界の一般社会では情報の公開・共有で多くの情報が集積され、AIやIoTが進化し社会に貢献しており、世界からみると日本は大きく遅れている現実がある。次世代医療基盤法が制定され医療データの集積が期待されており、全国保健医療情報ネットワークが検討されICT活用が計画されているので、今後の動向に注目したい。

塚田 篤郎運営委員会委員茨城県医師会常任理事

ひろしまナイチンゲール賞(知事表彰)

おめでとうございます。今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

青 木 博 美 氏・医療法人社団仁風会 青木病院(安芸地区)

( 月 日㈯ 広島県民文化センターホールにて表彰)

※日本医師会メンバーズルーム Webプレゼンテーションに本協議会の映像が公開されておりますので、ぜひ、ご覧ください。 http://www.med.or.jp/japanese/members/info/sys/2018/web.html

久米川 啓香川県医師会長