ガロアの20年 #math_cafe
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ガロアの20年 日曜数学者 辻 順平 @tsujimotter
2016年1月31日(日)第十回数学カフェ「数学史」
エヴァリスト・ガロア 1811年10月25日 – 1832年5月31日
1832.5.31 ガロアは20歳の若さでこの世を去る
何があったのか?
ざっくりと年表 1811年、パリ郊外の町(ブール=ラ=レーヌ)に生まれる
出会い:高校時代(リセ)に数学と出会う ルジャンドル「幾何学原論」 ラグランジュ「任意次数の数値方程式の解法」 リシャールに師事。連分数についての論文を執筆(デビュー作)
挫折:論文を書いてアカデミーに提出するも2度も紛失される 論文が認められない苦難の時代 大学(エコール・ポリテクニーク)の受験にも失敗 父ニコラの自殺
反発:政治活動にのめり込んで、政治犯として収監される 「ルイ・フィリップに乾杯」
1832年、無鉄砲にも決闘により死去 決闘前夜に論文を執筆(友人宛に遺言として残す) 代数方程式の可解性についての論文
「時間がない」 (je n'ai pas le temps)
Ne pleure pas, j'ai besoin de tout mon courage pour
mourir à vingt ans!
泣かないでくれ。二十歳で死ぬのには、ありったけの勇気が要るのだから!
ざっくりと年表 1811年、パリ郊外の町(ブール=ラ=レーヌ)に生まれる
出会い:高校時代(リセ)に数学と出会う ルジャンドル「幾何学原論」 ラグランジュ「任意次数の数値方程式の解法」 リシャールに師事。連分数についての論文を執筆(デビュー作)
挫折:論文を書いてアカデミーに提出するも2度も紛失される 論文が認められない苦難の時代 大学(エコール・ポリテクニーク)の受験にも失敗 父ニコラの自殺
反発:政治活動にのめり込んで、政治犯として収監される 「ルイ・フィリップに乾杯」
1832年、無鉄砲にも決闘により死去 決闘前夜に論文を執筆(友人宛に遺言として残す) 代数方程式の可解性についての論文
ポイント1.論文はまったく認められなかった?
実は認められていた!
コーシーは多産な数学者自分の研究にしか興味がない(と言われる)そのコーシーが「ガロアの論文」をわざわざアカデミーの議題に出した
ガロアの仕事を認めた上で、アカデミー主催の数学論文大賞に同じ内容で応募するようにガロアに勧めたらしい。
その際、アーベルの論文との差別化をはかるように、内容の修正をガロアに求めたらしい。
アカデミー総裁殿 本日のアカデミーにおいて次の報告をする旨お知らせしておりました。一、ガロア少年の仕事についての報告、(中略) しかしながら、体調が優れないため今日の会議への出席は不可能かと思われます。
(1月18日)
7月革命 => 国外へ亡命
=> ガロアとの関係は途絶える
ポアソン (論文の重要性を理解できず)
フーリエ (アカデミー大賞審査中に急死)
ポイント2.無鉄砲だから死んだのか?
時代背景や境遇による必然性はあった
フランス7月革命(1830年)のイメージ ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
1789 – 1799 フランス革命
1811年 ガロア誕生
1815年 王政復古(ガロア4歳)
1830年 7月革命(ガロア18歳)
1832年 ガロア死去(ガロア20歳)
時代背景
父ニコラの自殺(1829年) 2度エコール・ポリテクニーク受験失敗論文のリジェクト
「学問への集中」と「社会に対する怒り」その間で揺れ動く心の葛藤
時代背景や境遇を考えると必然性があった
ポイント3.ガロアの業績は代数方程式の可解性について?
「代数方程式のべき根による可解性条件について」
「代数函数の積分で表される超越函数について」
ガロアの論文
ガロアの理論は、
単に代数方程式の研究にとどまらない
現代数学のはじまり
ジローラモ・カルダノ
三次方程式の解法(1545年)
ルドヴィコ・フェラーリ 4次方程式の解法(1545年)
ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ 『任意次数の数値方程式の解法』 (1770年) 根の置換を用いた可解性の研究
パルオ・ルフィニ(1799年)
ニールス・アーベル(1824年)
五次方程式の代数的な解法は存在しない
x
2 - 2 = 0
(x-p2)(x+
p2) = 0
(通常の)数の世界では分解できない・・・
を含んだ世界では,方程式が完全分解する ±p2
) x = ±p2
方程式が解けた!
(代数方程式の)ガロア理論
方程式が解ける必要十分条件を,対応する「群」の情報から復元する方法
数体(数の世界)の拡大 ガロア対応
「群」の分解
±p2
1 0±2
1 0±2
(1) (1, 2)
(1)
方程式が分解する世界
数論 数体の拡大,素イデアルの分解 ガロア群
幾何学 基本群
フックス群
位相空間の形状(トポロジー)
調和解析 関数の保型性(保型形式)
ポアンカレ
ポアンカレ
ヒルベルト
対称性 理解したい数学的対象
ガロア理論は、現代数学のはじまり
ガロアの予言 「数多の計算を結合する足場まで跳躍すること、操作をグループ化すること、そして形によってではなく難しさによって分類すること。これらこそ、私の意見では、未来の幾何学者たちの仕事なのだ。そしてこれこそ、この著者の中で私がとる道なのだ。
代数による非常に短い表現をとても長い文章に翻訳するとか、そうして計算操作の羅列の中に無用な言葉の羅列を挿入するとか・・・(中略)・・・、これらを私がここで述べていることと混同してはならない。そういう人々は百年も遅れているのだ。」
ガロアの予言 「似たようなものは何もない。ここでは解析学の解析学を構築する。
ここでは(楕円函数の)最も高度な計算が、
従来のものが特殊例になってしまうまで論じられる。
従来の理論は有用であったし、それを論じることは不可欠でもあった。
しかし、それにしがみつくことは、より広大な研究のためには有害である。
このような高い立場の解析によって予言される計算、
求める問題の特殊性に応じて形ではなく難しさによって分類された計算が
実現される日もやがて来るであろう。」
ジョゼフ・リウヴィル 自身が編集する『純粋・応用数学雑誌』にガロアの論文を掲載(1846年) リヒャルト・デデキント ゲッティンゲン大学でガロア理論に関する最初の講義(1855年 - 1857年) 現在、数学科の大学二年生が「ガロア理論」についての講義を受講する
ガロア理論についての詳しい解説 「五次方程式が代数的に解けないわけ」第3回プログラマのための数学勉強会 #maths4pg - SlideShare
http://www.slideshare.net/junpeitsuji/maths4pg-48479177