有機エレクトロニクス material matters v2n3 japanese

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Printed circuits for a cleaner and brighter future. 薄膜トランジスタ用 有機材料 プラスチック エレクトロニクス用ポリマー フラーレンベース 有機半導体 有機発光素子 発光ポリマー Organic Electronics TM Vol. 2, No. 3 有機エレクトロニクス

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有機エレクトロニクスに関する、世界各国の研究者によるショートレビュー。トピックス:薄膜トランジスタ用有機材料、プラスチックエレクトロニクス用高分子、フラーレンを用いた半導体、有機エレクトロニクスデバイス、発光高分子

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Page 1: 有機エレクトロニクス Material Matters v2n3 Japanese

Printed circuits for a cleaner and brighter future.

薄膜トランジスタ用有機材料

プラスチックエレクトロニクス用ポリマー

フラーレンベース有機半導体

有機発光素子

発光ポリマー

Organic Electronics

TM

Vol. 2, No. 3

有機エレクトロニクス

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Vol. 2 No. 3

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TM

表紙について

有機電子デバイスは、ガラス、軟質プラスチック、建物の屋根など、数多くの基板上に形成できます。表紙に掲載し、3ページの新しい“Your Materials Matter”特集でも述べたTDCV-TPAなどの可溶性有機半導体により、スループットの高い印刷技法を使用して有機電子回路を低コストで作成できるようになります。その結果、現在のLCDより鮮明な画像が得られる超薄型テレビ、安価なRFIDタグのほか、建物、自動車、衣類の生地と一体化された低価格の太陽電池パネルなどの技術が誕生することでしょう。

はじめに有機エレクトロニクスを特集したMaterial Matters™ 2007年第3号へようこそ。30年以上前、有機分子が導体として動作できることが発見されて以来、今まさに初めて商用としての成功が収められようとしています。製造方法が低コストであることと、フレキシブル基板へ適合することが、プラスチックエレクトロニクス(有機エレクトロニクス)の興味深い2つの特徴です。近いうちに、これらの特性によって、有機電界効果トランジスタ(OFET)で作られた使い切りのRFIDタグや、建物の屋根に塗装し、所有者の色の好みに合わせ1年おきに低コストで塗り替えられる大面積の太陽電池(PV)が実現されるかも知れません。有機EL(有機発光ダイオード、OLED)で作られた明るく解像度の高い平面ディスプレイは、商用としての成功にもっとも近づいており、既存の技術と比べるとまだ高価ですが、液晶・プラズマに替わる技術として精力的に開発が進められています。利用できる有機化合物の品質と多様さが着実に向上しただけでなく、材料物理学やデバイス工学の基礎的な理解が進んだことで、初期の高分子導体から今日のOFETやOLEDへ確実に進歩しました。

今号では、スタンフォード大学のZhenan Bao教授がOFETの改善に不可欠な有機材料について解説しています。この論文には、シグマ アルドリッチで販売しているp型とn型の半導体および高分子誘電体が掲載されています。TDAリサーチ社の科学者は、新規導電性ポリマーとn型半導体について解説していますが、これらは現在弊社から販売されており、多くのプラスチック電子デバイスの性能を向上させると考えられます。フローニンゲン大学(オランダ)の研究者は、有機PVの中でn型半導体として広く使用されている化合物群であるメタノフラーレンについて記述しています。デバイス性能の改善に向け、材料および処理パラメーターの探索に役立つ、可溶性n型メタノフラーレン半導体の製品リストを記載しています。Eugene Polikarpov氏とMark Thompson教授(USC)は、低分子OLEDの効率を改善するための方策について論じています。最後に、Qibing Pei教授(UCLA)が、発光ポリマー(LEP)の化学的性質について記述しています。弊社では、LEP化合物の作製に不可欠なモノマーを販売しています。

今号のMaterial Mattersから、“Your Materials Matter”と題した特集記事(3ページ)を設けました。シグマ アルドリッチの目標は、お客様のニーズを満たす革新的な材料を提供することです。「こんな物質を探している」、「こんな製品があればいいのに」といったご意見がございましたら、[email protected]までご連絡ください。また、各製品の詳細な情報についてはsigma-aldrich.co.jp/aldrich/msからご覧いただけます。Material Matters™に関するご意見やご質問、製品のご提案については[email protected]までご連絡ください。

Ilya Koltover, Ph.D.Materials ScienceSigma-Aldrich Corporation

目 次

有機エレクトロニクス

はじめに _____________________________ 2

表紙について _________________________ 2

“Your Material Matter.” _________________ 3

薄膜トランジスタ用有機材料 ___________ 4

プラスチックエレクトロニクス用の新しい導電性および半導体ポリマー __________ 11

有機エレクトロニクスにおけるフラーレンベースのn型半導体 _________ 16

高効率有機発光デバイスの作成 ________ 21

発光ポリマー ________________________ 26

はじめに

本カタログに掲載の製品及び情報は2009年2月1日現在の内容であり、収載の品目、製品情報等は予告なく変更される場合がございます。予めご了承ください。製品のご注文に際し、価格、在庫の確認は裏表紙に記載の弊社カスタマーサービスまでお問合せください。なお、米国Webサイト(sigma-aldrich.com)の製品検索でも日本円と在庫状況をご確認いただけます。

容量と価格はsigma-aldrich.comをご覧下さい

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今号で特集している有機エレクトロニクス用材料材料カテゴリー 内容 ページ 参照ページp型半導体 p型低分子化合物、オリゴマーおよびポリマー 7 10、20、24

n型半導体 n型低分子化合物およびポリマー 8 14、20

誘電体材料 誘電体層用ポリマーおよび架橋剤 9

導電性薄膜材料 薄膜および正孔注入層蒸着用の導電性材料 15

有機光起電装置用材料 OPV用n型(PCBM)およびp型(PPV、P3HT)材料 20 2、7~8、29

有機EL(OLED)材料 正孔移動、電子移動、ホスト、および発光体/ドーパント材料

24~25 15、31

発光ポリマー PPV、CN-PPV、PFO、および水溶性LEP 29~30 7、20

基板および電極 ITO基板、高純度金属 31 9

“Your Materials Matter.”

TDCV-TPA: 8 Isotropic Organic Semiconductor for OPVs and OLEDs.

材料科学研究に有用な化合物の情報を募集しております。「こんな物質を探している」、「こんな製品があればいいのに」といったご意見がございましたら、[email protected]までご連絡ください。

Joe Porwoll, President Aldrich Chemical Co., Inc.

N

S

S

S

NC

CN

NC

NC

CN

NC

Tris[4-(5-dicyanomethylidenemethyl-2- 8thienyl)phenyl]amine, (TDCV-TPA) 687251-100MG 100 mg

アンジェール大学の Jean Roncali教授により、OPVおよびOLED用の新しい等方性有機半導体であるトリス[4-(5-ジシアノメチリデンメチル -2-チエニル)フェニル]アミン (TDCV-TPA)を作製することをご提案いただきました。TDCV-TPA1,2は種々の有機溶媒に可溶であり、開路電圧が高く(1.15V)、効率が2 %に近く、さらにポリ(アルキルチオフェン)をベースにした電池に比べて寿命が長いヘテロ接合太陽電池を作製するのに使用できます。この化合物の光吸収の波長は、CH2Cl2溶液中で509 nm、および薄膜状態で538 nmです。この化合物は、LEDでのスペクトル純度の高い発光団として使用でき、658 nmの赤色光を発光します。

参考文献:

(1) Roquet, S.; Cravino, A.; Leriche, P.; Alévêque, O.; Frère, P.; Roncali., J., J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 3459. (2) Cravino, A.; Leriche, P.; Alévêque, O.; Roncali. J., Adv. Mater. 2006, 18, 3033.

はじめに

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薄膜トランジスタ用有機材料

Prof. Zhenan Bao

Department of Chemical Engineering, Stanford University

はじめに有機活性材料をベースとしたフレキシブルな電子回路、ディスプレイ、およびセンサーは未来世代の製品であり、最終的にはエレクトロニクス市場の主流に加わると考えられます。有機活性材料を使う動機としては、化学的な設計および合成によって電気的性質および加工上の特性を容易に調整できること、低温での加工およびオープンリール方式の印刷法のため加工コストが低いこと、機械的な柔軟性、フレキシブル基板への適合性が挙げられます 1,2。

有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、フレキシブル集積回路およびフレキシブルディスプレイの基本的な構成単位です。構造の模式図を図1に示します。トランジスタの動作中、ドレイン電極とソース電極の間の電流制御にはゲート電極が使用されます。通常はゲート電圧を高くするとドレイン電極とソース電極の間の電流量が多くなります。高速スイッチングトランジスタのためには、半導体材料の電荷キャリア移動度とオン/オフ電流比が高くなければなりません。液晶ディスプレイのピクセルスイッチングトランジスタの場合、移動度は0.1 cm2/ Vs以上、オン/オフ電流比は106以上が必要です。

D Ssemiconductor

dielectric

Gate

図1. 有機薄膜トランジスタ(OTFT)構造の模式図S:ソース、D:ドレイン

OTFTを作製するには、導体(電極用)、半導体(アクティブチャネル用材料)から絶縁物(ゲート誘電体層用)に至る材料が必要です。この論文では、これらの材料に対する基本的な要求事項を論じ、いくつかの代表的な材料の例を示します。

有機半導体有機半導体には、多数電荷キャリアの種類に基づいて、p型(正孔が多数電荷キャリア)とn型(電子が多数電荷キャリア)の2種類があります。電荷の輸送を促進するため、有機半導体層は通常、p共役系のオリゴマーまたはポリマー(p-pスタッキングの方向が電流の方向と一致することが理想)で構成されます。そのためには、蒸気または溶液からの堆積に伴い半導体分子が自己組織化して、ある配向をとる必要があります。半導体薄膜が、密に充填され十分に相互接続された大きなグレインを含んでいることも重要です。小分子の高性能有機半導体のほとんどは、分子の長軸が誘電面に対して直角に近い方向を向き(図2a)、代表的なグレインサイズは少なくとも数µm程度になる傾向があります。溶液処理した半導体ポリマーの場合、p共役面が表面上で真横を向いていることが望まれます(図2b)。

2a (Pentacene) 2b (P3HT)

S

S S

S

S

S S

S

S

S S

S

S

S S

S

図2. 高性能有機半導体の分子配向(a) ペンタセン分子が、長軸を誘電面と垂直にして組織化しています。レジオレギュラーなポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)が真横を向いて自発的に組織化し、配向構造を形成しています。ポリマー鎖間のp-pスタッキングにより、電荷輸送が促進されます。

半導体膜の形態は、誘電面の化学的および物理的性質に大きく左右されます。誘電面のパターニングによって、望ましい位置に有機半導体のパターンを選択的に形成できますが、これは、デバイス間のクロストークを低減するのに重要です。誘電面を適切に制御すると、高性能トランジスタ用の有機半導体単結晶アレイのパターンを広い面積にわたって形成できます 3。

薄膜トランジスタ用有機材料

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有機半導体材料の開発において、大きな進展がありました。これらの膜中でのトランジスタ動作は、pチャネルのチオフェンオリゴマーとポリマーという限られたグループで実証されたのが最初でした。報告された移動度は、0.01~0.1 cm2/ Vs程度でした 4,5。最近数年間に、さらに広い範囲の分子固体やポリマーが開発されましたが、それらの移動度はすべて0.1 cm2/ Vsを超えており、105を超えるオン/オフ比が得られます 1。いくつかの代表的な材料の化学構造を図3に示します。このカテゴリーのpチャネル化合物には、置換チオフェンオリゴマー、ペンタセン、アセン、それらの誘導体、フタロシアニンおよびチオフェンベースの縮合環化合物、フルオレンオリゴマー誘導体などがあります。レジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)は、ドロップキャスティング法またはスピンコーティング法による溶液堆積時に自発的に組織化して高配向性構造を形成し 6 (図3)、0.1 cm2/ Vsを超える移動度を持つ数少ないポリマー半導体のひとつです7,8。最近になって、移動度と空気中での安定性が向上した、いくつかの新しいポリチオフェン誘導体が報告されました(図3、g、h)9,10。

SiR3

SiR3

SSS

SS

S

SR RnS

S n

S

S

S

S

C10H21

C10H21

n

C6H13

SS

SS

C12H25

C12H25

n

R =

(a)

(b)(c)

(d)

(e)

(f) (g) (h)

図3. 代表的ないくつかのpチャネル有機半導体の化学構造(a) ペンタセン 11,12、 (b) テトラセノ [2,3-b]チオフェン 13、(c) TIPS-ペンタセン 14、(d) a-セキシチオフェン 4,5、(e) オリゴチオフェン -フルオレン誘導体 15、(f) レジオレギュラー (ポリ3-ヘキシルチオフェン)7、(g) ポリ(3,3’’’-ジドデシル -クアテルチオフェン)16、(h) ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン -2-イル)チエノ [3,2-b]チオフェン)10

CMOS(相補型金属酸化膜半導体)回路は、回路設計が容易で消費電力が小さいために好まれます。通常、CMOSインバーターはpチャネルトランジスタとnチャネルトランジスタで構成されます。C60、ペルフルオロ-銅フタロシアニン、ナフタレンおよびペリリンベースの化合物を含むいくつかの有機物質群が優れたnチャネル動作を示します17,18,19,20。図4に、空気中で安定な高性能nチャネル半導体の代表的ないくつかの化学構造を示します。最近になって、ある種の有機半導体が示す同時二極性の挙動が報告されました 21。このタイプの物質は、pチャネルとnチャネルの半導体を別々にパターニングせずに相補型回路を作製するのに使用できます。

N

NN

N

N

N

N

NCu

FF

F

F

F F

F

F

F

F

FF

F

F

F F(a) NN

O

O

O

O

R R

CN

NC

N N

O

O

O

O

C3F7

C3F7

(b)

(c)

(d)

図4. 代表的ないくつかのnチャネル有機半導体の化学構造(a) C60

22、(b) ヘキサデカフルオロ銅フタロシアニン(F16CuPc)20、(c) ナフタレンジイミド誘導体 19、(d) ペリリンジイミド誘導体 18

誘電体材料有機トランジスタの誘電体層はできるだけ薄くてピンホールの無いものであることが必要で、また、低電圧で動作するよう誘電率の大きいものが理想的です。ゲート誘電体材料として、無機、有機、および無機/有機ハイブリッド材料が研究されてきました。有望な材料には、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルフェノール)、シルセスキオキサン(ガラス樹脂)、ベンゾシクロブテン(BCB)などがあります(図5a)23,24,25。架橋ポリマーは、一般的に極薄誘電体材料としての強度が高くなっています 26。誘電体材料の作製に使用される架橋剤の例を図5bに示します。配向性が高く密な構造を持つ自己組織化単分子層(SAM)は、もっとも薄くかつ高品質な誘電体層となる可能性があります 27。高誘電率の無機ナノ粒子をポリマーマトリックス中に組み込むと、薄膜の比誘電率が全体的に押し上げられます 28。

*

OH

**

*

SiO

Si

Cl

Cl

Cl

Cl

ClCl

SiSiCl

ClCl

Cl

ClCl

SiSi

Cl

Cl

Cl

Cl

Cl

Cl

Polymers

CrosslinkingReagents

PVP PS

図5. 誘電体材料および架橋剤の例PVP(ポリビニルフェノール)およびPS(ポリスチレン)ゲート絶縁層の安定性を高めるのに、シロキサン架橋剤を使用できます 21。

誘電体層の表面処理は有機トランジスタの性能を改善する重要な方法のひとつです。半導体層中で誘導される電荷キャリアのほとんどは半導体/誘電体界面から5 nm以内の有機半導体層に限局されています。そのため、誘電体表面の化学的・物理的特性は電荷キャリア輸送に大きな影響を及ぼします。例えば、SiO2(典型的な誘電材料)表面上のSi-OH基は電子を捕捉することが知られています。SiO2の表面をオクタデシルトリクロロシラン(OTS、アルドリッチ製品番号104817)分子でキャッピングすることで、電子の捕捉を大幅に減らし、nチャネル半導体(電子が主要な電荷キャリアである半導体)の移動度を改善することができます 23。

さらに、誘電体表面のSAM処理は、有機半導体の結晶核生成と成長にも影響します 29。例えば、ペンタセン薄膜はこれまででもっとも高い電荷キャリア移動度が報告されている有機半導体です。その電荷キャリア移動度は、疎水性SAMによる誘電体表面処理の種類に強く依存します。この差異は、それぞれの表面上に形成される最初のペンタセン単分子膜の形態の違いに関連しています 29。

薄膜トランジスタ用有機材料

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電極材料有機トランジスタがうまく機能するには電極からの電荷注入が効率的である必要があります。そのためには、電極の仕事関数を有機半導体のエネルギーレベルと釣り合わせることで、電荷注入のエネルギー障壁を低下させなければなりません。通常は、高仕事関数電極(Au、Pd、または酸化インジウムスズ)がpチャネル有機トランジスタに利用されます。電極表面を自己組織化膜で修飾することで、有機半導体への電荷注入を改善できます 30。有機半導体をソース電極およびドレイン電極上に蒸着させる場合、SAM修飾Auを未処理のAuと比較すると、そこに蒸着される有機半導体の形態は大きく異なります。この知見を用いて、Au/有機物の界面における有機半導体の形態を調整することで電荷注入の改善がなされています 31。

低コストで製造するには、溶液処理が可能な電極材料が望まれます。そのため、いくつかの研究グループが、低コストのプラスチック基板に適合するように200℃未満で硬化できるAuまたはAgのナノ粒子インクを開発しました 32。その他の有望な電極の候補には、カーボンナノチューブ分散および導電性ポリマー溶液があります。

要約すると、有機材料はフレキシブルな電子デバイスの有望な候補です。この分野はすでに大きく進歩してきました。それでも、合理的に材料を設計して望ましいデバイス性能パラメーターを得ることができるように、構造と特性の関係についてさらに理解を深める必要があります。

参考文献:

(1) Organic Field Effect Transistors; Bao, Z.; Locklin, J., Eds.; Taylor and Francis Group, LLC, 2007. (2) Ling, M. M.; Bao, Z. N. Chemistry of Materials 2004, 16, 4824–4840. (3) Briseno, A. L.; Mannsfeld, S. C. B.; Ling, M. M.; Liu, S. H.; Tseng, R. J.; Reese, C.; Roberts, M. E.; Yang, Y.; Wudl, F.; Bao, Z. N. Nature 2006, 444, 913–917. (4) Garnier, F.; Hajlaoui, R.; Yassar, A.; Srivastava, P. Science 1994, 265, 1684–1686. (5) Dodabalapur, A.; Torsi, L.; Katz, H. E. Science 1995, 268, 270–271. (6) McCullough, R. D. Advanced Materials 1998, 10, 93–116. (7) Bao, Z.; Dodabalapur, A.; Lovinger, A. J. Appl. Phys. Lett. 1996, 69, 4108–4110. (8) Sirringhaus, H.; Tessler, N.; Friend, R. H. Science 1998, 280, 1741–1744. (9) Pan, H.; Li, Y.; Wu, Y.; Liu, P.; Ong, B. S.; Zhu, S.; Xu, G. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 4112–4113. (10) McCulloch, I.; Heeney, M.; Bailey, C.; Genevicius, K.; Macdonald, I.; Shkunov, M.; Sparrowe, D.; Tierney, S.; Wagner, R.; Zhang, W. M.; Chabinyc, M. L.; Kline, R. J.; McGehee, M. D.; Toney, M. F. Nature Materials 2006, 5, 328–333. (11) Klauk, H.; Jackson, T. N. Solid State Technology 2000, 43, 63. (12) Kelley, T. W.; Baude, P. F.; Gerlach, C.; Ender, D. E.; Muyres, D.; Haase, M. A.; Vogel, D. E.; Theiss, S. D. Chemistry of Materials 2004, 16, 4413–4422. (13) Tang, M. L.; Okamoto, T.; Bao, Z. N. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 16002–16003. (14) Anthony, J. E.; Brooks, J. S.; Eaton, D. L.; Parkin, S. R. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 9482–9483. (15) Meng, H.; Zheng, J.; Lovinger, A. J.; Wang, B. C.; Van Patten, P. G.; Bao, Z. N. Chemistry of Materials 2003, 15, 1778–1787. (16) Ong, B. S.; Wu, Y. L.; Liu, P.; Gardner, S. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 3378–3379. (17) Chikamatsu, M.; Nagamatsu, S.; Yoshida, Y.; Saito, K.; Yase, K.; Kikuchi, K. Applied Physics Letters 2005, 87. (18) Jones, B. A.; Ahrens, M. J.; Yoon, M. H.; Facchetti, A.; Marks, T. J.; Wasielewski, M. R. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 6363–6366. (19) Katz, H. E.; Lovinger, A. J.; Johnson, J.; Kloc, C.; Siegrist, T.; Li, W.; Lin, Y. Y.; Dodabalapur, A. Nature 2000, 404, 478–481. (20) Bao, Z. A.; Lovinger, A. J.; Brown, J. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 207–208. (21) Yoon, M. H.; Kim, C.; Facchetti, A.; Marks, T. J. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 12851–12869. (22) Haddon, R. C.; Perel, A. S.; Morris, R. C.; Palstra, T. T. M.; Hebard, A. F.; Fleming, R. M. Appl. Phys. Lett. 1995, 67, 121–123. (23) Chua, L. L.; Zaumseil, J.; Chang, J. F.; Ou, E. C. W.; Ho, P. K. H.; Sirringhaus, H.; Friend, R. H. Nature 2005, 434, 194–199. (24) Bao, Z. N.; Kuck, V.; Rogers, J. A.; Paczkowski, M. A. Adv. Funct. Mater. 2002, 12, 526–531. (25) Liu, P.; Wu, Y. L.; Li, Y. N.; Ong, B. S.; Zhu, S. P. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 4554–4555. (26) Yoon, M. H.; Yan, H.; Facchetti, A.; Marks, T. J. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 10388–10395. (27) Halik, M.; Klauk, H.; Zschieschang, U.; Schmid, G.; Dehm, C.; Schutz, M.; Maisch, S.; Effenberger, F.; Brunnbauer, M.; Stellacci, F. Nature 2004, 431, 963–966. (28) Maliakal, A.; Katz, H.; Cotts, P. M.; Subramoney, S.; Mirau, P. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 14655–14662. (29) Yang, H. C.; Shin, T. J.; Ling, M. M.; Cho, K.; Ryu, C. Y.; Bao, Z. N. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 11542–11543. (30) Gundlach, D. J.; Jia, L. L.; Jackson, T. N. IEEE Electr. Dev. 2001, 22, 571–573. (31) Kymissis, I.; Dimitrakopoulos, C. D.; Purushothanman, S. IEEE Trans. Elec. Dev. 2001, 48, 1060–1064. (32) Wu, Y. L.; Li, Y. N.; Ong, B. S. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 1862–1863.

Aldrich Adjustable Sublimation Apparatus

最上部に独特なねじ式コネクターが付いており、プロセスを停止せずに、底部に入れる物質の量と昇華速度に応じてコールドトラップと装置底部の距離を調整できます。

仕様:銀メッキおよび真空排気処理した伸縮ふいご付きコールドトラップねじ切りされたナイロン製圧縮ブッシングおよびOリングシール付き厚肉ガラスOリングシールおよびSS/複合チェーンクランプ付き上下移動チャンバーフランジ8 mmホース継手付き10 mm高真空 J. Youngバルブコールドフィンガー下部から容器底部まての最大距離:45 mm

••

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Z564176-1EA

薄膜トランジスタ用有機材料

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有機半導体シグマ アルドリッチは、有機エレクトロニクス用途向けに多くの有機半導体を販売しています。関連の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

p型有機半導体

製品概要 構造*移動度 (cm2/ Vs)オン/オフ比 製品番号

Benz[b]anthracene, (tetracene) 98% 0.4 cm2/ Vs B2403-100MGB2403-500MGB2403-1G

Pentacene

Pentacene, sublimed, > 99.9%

0.4–3 cm2/ Vs

105–108

P1802-100MGP1802-1GP1802-5G

684848-1G

Pentacene, triple-sublimed, > 99.995%(10ページの可溶性ペンタセン前駆体もご覧下さい。)

698423-500MG

5,5’-Dihexyl-2,2’-bithiophene, (DH-2T), 96%S SCH3(CH2)4CH2 CH2(CH2)4CH3

632953-1G

a-Quaterthiophene, (4T), 96%S

S S

S

0.006 cm2/ Vs

104

547905-1G

a-Sexithiophene, (6T)S S

S S S

S

0.075 cm2/ Vs

104

594687-1G

a,w-Dihexylsexithiophene, (DH-6T)S S

S S S

SCH2(CH2)4CH3

CH3(CH2)4CH2

0.13 cm2/ Vs

104

633216-500MG

Bis(ethylenedithio)tetrathiafulvalene, (BEDT-TTF), 98%S

S

S

S

S

S

S

S 362026-100MG362026-500MG

Bis(4,5-dihydronaphtho[1,2-d])tetrathiafulvalene, 98%S

S

S

S 366269-250MG366269-1G

Copper (II) phthalocyanine, sublimed, 99%

N

N

N

N

N

N

N

N

Cu

0.01~0.02 cm2/ Vs

4x105

546674-1G

Platinum octaethylporphyrin, 98%

N

N

N

N

CH2CH3CH3CH2

CH2CH3

CH2CH3

CH2CH3CH3CH2

CH3CH2

CH3CH2

Pt

2.2x10–4 cm2/ Vs

104~105

673625-100MG

Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl), (P3HT), regioregular, electronic grade, 99.995%*

S

S

S

S

C6H13 C6H13

nC6H13 C6H13

10–4–10–1 cm2/ Vs

104

698989-250MG698989-1G

Poly(3-octylthiophene-2,5-diyl), (P3OT), regioregular, electronic grade, 99.995%*

S

S

S

S

C8H17 C8H17

n

C8H17 C8H17

10–4–10–1 cm2/ Vs

104

682799-250MG

Poly(3-dodecylthiophene-2,5-diyl), (P3DDT), regioregular, electronic grade, 99.995%*

S

S

S

S

C12H25 C12H25

n

C12H25 C12H25

10–4–10–1 cm2/ Vs

104

682780-250MG

*これ以外に、別の純度グレード、レジオランダム、およびアルキル置換基を追加したポリチオフェンが入手可能です。*キャリア移動度およびオン/オフ比の文献値は、Shirota, Y; Kageyama, H. Chem. Rev. 2007, 107, 953; Murphy, A.; Frechet, J. 同書 1066によります。

薄膜トランジスタ用有機材料

日本国内での価格と在庫状況をご覧になるには ....1) まずsigma-aldrich.comにアクセスして下さい。2) 左上の「My Profile」をクリックして ①Web language = Japanese、②MSDS language = English、③Country = Japanの3つを選択し、Submitして下さい。

3) Topページ等の右上にあるProduct Name or No.で検索して下さい。

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gm

a-

al

dr

ic

h.

co

m/

ja

pa

n

8

n型有機半導体

製品概要 構造*移動度 (cm2/ Vs)オン/オフ比 製品番号

Fullerene-C60, sublimed, 99.9% 0.3 cm2/ Vs

106

572500-250MG572500-1G

Fullerene-C70, 99% 482994-10MG

Fullerene-C84, 98% 1.1 X 10–3 cm2/ Vs 482986-5MG

Hexadecafluoro copper phthalocyanine, (F16CuPc), 80% dye content

N

N

N

N

N

N

N

N

Cu

F

F F

F

F

FF

F

F F

FF

F

F F

F

0.03 cm2/ Vs

104

446653-1G

Pd(II) meso-Tetra(pentafluorophenyl)porphine, 95% dye content

NN

N N

Pd

F

FF

F

F

FF

F

F F

F

F

F

F

F

FF

F F

F

673587-100MG

1,4,5,8-Naphthalenetetracarboxylic dianhydride, (NTCDA) O

O

O

O

O

O

0.003 cm2/ Vs N818-5GN818-25GN818-100G

Perylene-3,4,9,10-tetracarboxylic dianhydride, (PTCDA), 97% OO

O

O O

O 10–4 cm2/ Vs P11255-25GP11255-100G

N,N’-Dipentyl-3,4,9,10-perylenedicarboximide, (PTCDI-C5), 98% NN

O

O O

O

C5H11C5H11

663921-500MG

N,N’-Dioctyl-3,4,9,10-perylenedicarboximide, (PTCDI-C8), 98% NN

O

O O

O

C8H17C8H17

1.7 cm2/ Vs

106

663913-1G

N,N’-Diphenyl-3,4,9,10-perylenedicarboximide, (PDCDI-Ph), 98% NN

O

O O

O 10–5 cm2/ Vs 663905-500MG

7,7,8,8-Tetracyanoquinodimethane, (TCNQ), 98%

CN

CNNC

NC

10–5 cm2/ Vs

103

157635-1G157635-5G157635-10G

2,3,5,6-Tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane, (F4TCNQ), 97%

CN

CNNC

NCF F

FF 376779-5MG376779-25MG

Poly(benzimidazobenzophenanthroline), (BBL)NN

N

OO

Nn

0.1 cm2/ Vs

103–105

667846-1G

*キャリア移動度およびオン/オフ比の文献値は、Shirota, Y; Kageyama, H. Chem. Rev. 2007, 107, 953; Murphy, A.; Frechet, J. 同書 1066によります。

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9

誘電体材料シグマ アルドリッチは、OTFTのゲート絶縁膜(誘電体)として使用可能なポリマーを多数取り揃えております。代表的な材料を抜粋して以下の表に示します。高品質ポリマー製品の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/polymerをご参照ください。有機エレクトロニクスにおいて有用な多数のシルセスキオキサン材料については、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/nanoをご覧ください。

製品概要 構造 性質/純度 製品番号

Poly(methyl methacrylate) (PMMA) CH3

O OCH3

n

Avg. Mw~93,000 370037-25G

Avg. Mw~996,000182265-25G182265-500G182265-1KG

Polystyrene (PS)

n

Avg. Mw~280,000 182427-25G182427-500G182427-1KG

Poly(4-vinylphenol) (PVP)

n

OH

Avg. Mw~20,000 436224-5G436224-25G

Poly(4-vinylphenol-co-methyl methacrylate) (PVP-co-PMMA)

OH

CH3

OO

CH3

x y

x:y = 1.8:1Avg. Mw~10,000

474576-50G

Polyisobutylene CH3

CH3 n

Avg. Mw~500,000 181455-100G181455-250G

Poly[4,5-difluoro-2,2-bis(trifluoromethyl)-1,3-dioxole-co-tetrafluoroethylene]

O O

FF

CF3F3CF

FF

Fx y

65 mol % dioxole 469610-1G

87 mol % dioxole 469629-1G

Hexachlorodisiloxane SiO

SiCl

ClCl

Cl

ClCl

96% 368334-25ML

1,2-Bis(trichlorosilyl)ethaneSi

SiCl

ClCl

ClCl

Cl

97% 447048-5ML

1,6-Bis(trichlorosilyl)hexaneSi

SiCl

ClCl

Cl

ClCl 97% 452246-10G

薄膜トランジスタ用有機材料

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参考文献:

(1) Menard, E.; Meitl, M.; Sun, Y.; Park, J.; Shir, D.; Nam, Y.; Jeon, S.; Rogers, J. Chem. Rev. 2007, 107, 1117. (2) Afzali, A.; Dimitrakopoulos, C.; Breen, T. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 8812. (3) Chen, K.; Hsieh, H.; Wu, C., Hwang, J.; Chow, T. Chem. Comm. 2007, 1065. (4) Afzali, A.; Kagan, C.R.; Traub, G.P. Synthetic Metals 2005, 155, 490. (5) Weidkamp, K.P.; Afzali, A.; Tromp, R.M.; Hamers, R.J. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 12740.

可溶性ペンタセン前駆体 ~溶液プロセスで利用可能です~ペンタセンは、電界効果移動度が1 cm2 V-1 s-1を超える優れたp型半導体チャネルを形成する、もっとも性能の高い分子導体のひとつです。しかし、その主な欠点のひとつとして有機エレクトロニクスの商用化に成功するために不可欠な、大面積を低コストで処理する方法(印刷、スタンピング、カーテンコーティング)に適した溶媒がないことです。この問題を克服するためのアプローチとして、溶液処理を行ってから高品質のペンタセン膜に熱的に変換できる、可溶性ペンタセン前駆体分子を使用することが挙げられます 1。シグマ アルドリッチでは、4種類の可溶性ペンタセン前駆体を販売しています。

666025 13,6-N-スルフィニルアセトアミドペンタセン(NSFAAP)は、無極性溶媒(ハロゲン化溶媒、THF)に> 50 mg/mLの溶解度で溶解します。薄膜の状態で、666025をN2雰囲気中120~200℃で5~15分間加熱するとペンタセンに変換します。この前駆体を溶液処理して作製した有機薄膜トランジスタでは、最大0.8 cm2 V-1 s-1

という、溶液処理有機半導体について報告されている最高の移動度が得られました 2。

688045 6,13-ジヒドロ -6,13-メタノペンタセン -15-オン (DMP)は、150℃で加熱すると定量的にペンタセンに変換されます。これは、無極性溶媒(クロロホルム、トルエン、THF)には難溶性(~0.7 mg/mL)ですが、熱的変換の副生物としてCOガスしか生成しないという利点があります 3。

Pentacene-N-sulfinyl-n-butylcarbamate adduct, >99%699128-100MG 100 mg699128-500MG 500 mg

Pentacene-N-sulfinyl-tert-butylcarbamate, 99%699306-100MG 100 mg699306-500MG 500 mg

13,6-N-Sulfinylacetamidopentacene, (NSFAAP), 97%666025-100MG 100 mg666025-500MG 500 mg

6,13-Dihydro-6,13-methanopentacene-15-one, (DMP), 97%688045-100MG 100 mg688045-500MG 500 mg

O

SN

O

OCH3

120-200 °C

150 °C688045 (DMP)

666025 (NSFAAP)

120-150 °C

150 °CPentacene

699306

699128

最新の製品情報は、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧ください。

699128 ペンタセン -N-スルフィニル -n-ブチルカルバミン酸は、エタノールなどの極性有機溶媒に溶解します。スピンキャスト等で作成した薄膜を窒素雰囲気中120~150℃で加熱すると、ペンタセンに変換します。この前駆体を用いて溶液プロセスで作成した有機薄膜トランジスタは0.068 cm2 V-1 s-1の移動度、2×105以上のオン /オフ比を示しました 4。

699306 ペンタセン -N-スルフィニル -tert-ブチルカルバミン酸は、クロロホルム、メタノール、THFなどの有機溶媒に溶解します。スピンキャスト等で作成した薄膜を窒素雰囲気中、1時間150℃で加熱すると、ペンタセンに変換します。 スピンコートしたペンタセン前駆体の薄膜をパターニングするには、光酸発生剤の存在下でUV照射したあと、5分130℃加熱し、溶媒で未変換の前駆体を洗い流します。この化合物を用いて溶液プロセスで作成した有機薄膜トランジスタは0.13 cm2 V-1 s-1の移動度、2×105以上のオン /オフ比を示しました 5。

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Dr. Silvia Luebben and Dr. Shawn Sapp

TDA Research, Inc.

はじめにOLEDや有機光起電装置(OPV)技術など、新たに成長しつつある有機プリンタブルエレクトロニクスの分野では、有機導体材料と半導体材料の改善が強く求められています。本論文では、次の2つの分野、(1) ICP(本質的導電性ポリマー)であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の溶媒ベース分散の成果、および (2) 新しい電子不足 (n型 )半導体ポリマーの合成、に見られる当グループの最近の進展について報告します。

有機溶媒分散中のPEDOT共重合体ICPは、分子の主鎖に沿った拡張p共役を持つポリマーで、ドーピングによってその導電性を半導体状態から金属状態まで大きく変化させることができます。p型ドーピングは、化学的酸化剤や電気化学的方法によりポリマーを部分酸化して実現できますが、「正孔」が形成されて結合性p軌道(HOMO)の電子不足が生じます 1。

ICPは1970年代に発見されて以来有望視されましたが、性能に限界があり溶解度が低いために処理が難しく、商用化に成功した製品は比較的わずかしかありません。PEDOTは、導電性が良好なこと、ドーピングされた(導体)形態での環境安定性が優れていること、および薄膜として使用した場合の光透過性が妥当であることから、もっとも一般的に使用されている ICPのひとつです 2。PEDOTコーティングを施す一般的な方法では、PEDOTとポリアニオンポリ(スチレンスルホン酸塩)すなわちPEDOT-PSSの混合物からなる水分散液を使用します。導電性PEDOT-PSSのいくつかのグレードがシグマ アルドリッチから販売されています(アルドリッチ製品番号655201、483095、560596)。低導電グレードはOLEDおよびOPVの正孔注入層として使用されて成功を収めており、高導電グレードは仕事関数が約5.1eVの透明導体として評価中です 3,4。

PEDOT-PSS混合物は成功しましたが、吸湿性を持つ強酸性PSSがデバイスの寿命と性能を損う場合があることが示されました 5-7。フレキシブルな印刷電子デバイスの最近の進歩に伴い、非吸湿性溶媒から処理でき、疎水性プラスチック基板を湿潤させる光透過性導電性ポリマー材料に対する関心が高まりつつあります。

TDAリサーチ社(TDA)は、溶媒に分散できる形態を持つPEDOTを開発し、Aedotron™ ポリマーという商標名で製造しています。シグマ アルドリッチは、これらの材料のいくつかのグレードを販売しています。当グループは、ドープされたPEDOTのブロックコポリマーとポリ(エチレングリコール)

プラスチックエレクトロニクス用の新しい導電性および半導体ポリマー

(PEG)などのフレキシブルな可溶性ポリマーを合成するというアプローチを取りました 8。当グループは、いくつかのブロックコポリマーの配置(図1)と、それらを精製・処理して有機溶媒中で安定なコロイド分散を形成する方法を開発しました。図2に、マルチブロックAedotron™ P-NMおよびトリブロックAedotron™ C3-NMコポリマーの化学構造を示します。また、2種類の代表的な材料のいくつかの重要な特性を表1にまとめました。ブロックの組成、分子量、ブロック比、およびドーパントの種類を注意深く制御して、コポリマーのバルク導電性を10-4 S/cmから60S/cmまで変化させることができます。Aedotron™ 材料は酸性でも腐食性でもなく、さまざまな無機および有機基板上にコポリマーの非吸湿性薄膜をスピンキャスト法またはその他の方法で塗布するのに使用できます。これらのコロイド分散は、PEDOTブロックの凝集を分子中の原子の立体配列によって制限する、高度に溶媒和されたPEG鎖によって安定化されます。当グループが用いたコポリマーは、極性非プロトン溶媒中で容易に分散します。当グループは、高沸点溶媒を必要とする用途には炭酸プロピレンを、揮発性溶媒を必要とする用途にはニトロメタンを選択しました。他の溶媒を、特に低導電性材料に対して探索中です。

Rigid ICPFlexiblePolymer

TerminalGroup

a)

b)

c)

( )n

図1. TDAブロックコポリマーの構造模式図(a) リニアマルチブロック、(b) リニアトリブロック、(c) ハイパーブランチ。濃い青色の長方形はドープされたPEDOTの剛ブロックを表し、曲線はPEGのブロックを表します。

S

O O

S

OO

++

x

S

OO

S

OO

S

O O

S

OO

nH3C SO3-

H3C SO3-

S

OO

S

OO

S

OO

S

OO

S

OO

S

OOClO4

-

ClO4-

+

+

x

OO

OO

yOH

OH

yOO

OO

C12H25

OH OO

OO

C12H25

y

HO

a)

b)

Aedotron™ P-NM: Aldrich Prod. No. 649791

Aedotron™ C3-NM: Aldrich Prod. No. 687316

図2. TDA PEDOT-PEGブロックコポリマーの化学構造(a) マルチブロック、(b) トリブロック

プラスチックエレクトロニクス用

ポリマー

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gm

a-

al

dr

ic

h.

co

m/

ja

pa

n

12

当グループの生成物でのコロイド安定化メカニズムはポリマーのドーピングに依存しないため、ドーパントを制御しながら変化させてコポリマーのバルク導電性と仕事関数を調整できます。一般に、パラ -トルエンスルホン酸(PTS)をドープしたコポリマー(Aedotron™ P 649791)は導電性が低いため、帯電防止/電荷散逸用途やOLEDの電極界面層として役立ちます。通常、Aedotron™ Pポリマーは懸濁液中の粒径が大きいため、極性が弱い溶媒中ではいくぶん分散されやすくなります。一般に、過塩素酸塩をドープしたコポリマー(Aedotron™ C 649805、649783)は、透明度がさらに高い薄膜での導電性が向上します。改善されたトリブロックコポリマー(Aedotron™ C-3 687316、図2b)を使用すると、透過率が80 %(400~800 nmでの平均値)でシート抵抗が1000Ω/□の、ポリカーボネートやその他のプラスチックフィルム上で良好なぬれ性を持つ薄膜をスピンキャストできます。図3に、ガラス上に1000 RPMでスピンコートした1層、2層、および3層膜の紫外線・可視光透過率スペクトルを示します。それぞれのデータ波形に、その膜のシート抵抗測定値が示されています。これらの特性は、タッチセンス式ディスプレイやエレクトロルミネセントランプおよびディスプレイに使用できる透明導体の要件を満たしています。トリブロックコポリマーは、当グループのマルチブロックコポリマーより懸濁液中での粒径が小さく(290 nm)、接触モード原子間力顕微鏡で測定した表面粗さが小さい(<10 nm)薄膜を形成します。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

400 450 500 550 600 650 700 750 800

Wavelength (nm)

% T

ran

smit

tan

ce

1x1000 RPM, 4,800 W/�

2x1000 RPM, 1,200 W/�

3x1000 RPM, 590 W/�

図3. 1000 rpmでスピンキャストしたTDAの新しい高導電性トリブロックコポリマーの紫外線・可視光スペクトル。1層、2層、および3層の膜が、対応するシート抵抗値のラベルを付けて示されています。

多層デバイスの設計では、さまざまな層の中での材料の相対的な電子帯エネルギーを考慮することが重要です。X線光電子分光法を用いて測定した当グループのマルチブロックコポリマーの仕事関数は、PEDOT-PSS混合物の仕事関数よりも低いことが判明しました(Aedotron™ Pポリマーでは約4.2eV、Aedotron™ Cポリマーでは4.3 eV)9。電子帯の位置合わせや重なりが非常に重要な薄膜電子デバイスを作製する場合、この低い仕事関数を考慮しなければなりません。

新しいn型ポリマー半導体OLEDやOPVのようなほとんどの薄膜有機電子デバイスに共通の基本要件は、分子軌道(HUMO-LUMO)のエネルギー準位を補正した少なくとも2種類の半導体材料を含んでいることです。有機半導体の世界では、電子が豊富な(p型 )半導体と電子が不足した(n型)材料の間に界面を形成して、そのようなエネルギー補正を作り出すことができます。一般に、電荷の分離や再結合が発生するのはこの界面です。さらに、補正の大きさとp型およびn型半導体のHOMO-LUMO帯を適切に配置することが、デバイスを効率的に動作させるのに不可欠です。したがって、p型およびn型材料の選択肢を広げることが重要です。比較的電子が豊富なp型半導体分子およびポリマーには、入手可能な種類が数多くあります。一方、メタロポルフィリンやメタノフラーレンのような電子が不足しているn型半導体分子はほとんどありません。ポリ(p-フェニレンビニレン)のシアノ誘導体のようなn型半導体のp共役ポリマーはさらにまれです。

当グループは、新しいn型半導体p共役ポリマーおよびオリゴマーの開発と生成に携わってきました。当グループのアプローチは、長年にわたって電子の豊富なp型ドープされた導電性ポリマーを製造してきたアプローチとよく似ており、ポリマー全体の電子密度を変えられるヘテロ原子をp共役主鎖に導入するものです。導入するヘテロ原子はホウ素で、その空のp軌道はポリマーの不飽和繰り返し単位であるp電子系と共役しています。ホウ素のp軌道には電子が存在しないため、ポリマーのp電子系全体が本質的に電子不足になり、したがってポリマーはn型の電子特性を持ちます。

表 1. 2種類の Aedotron ™ 導電性ポリマーの比較

材料懸濁液中の粒径

(nm)バルク導電性

(S/cm)*シート抵抗(W/square)

**平均透過率(%T)

スピンキャスト薄膜のRMS 粗さ (nm)

Aedotron™ C-NM649805

600–1000 0.1–2 104–105 70–85% 40

Aedotron™ C3-NM687316

200–600 10–60 600–3000 70–85% 10

*一般に、1~3層を1000rpm以上でスピンコーティング** % Tは400~800 nmの平均値、バックグラウンドからコーニングガラス

プラスチックエレクトロニクス用

ポリマー

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空気中で安定なp共役有機ホウ素ポリマーを調製するには、さまざまな合成方法があります 10-15。当グループは、新しいものや以前報告されたものを含めて、多くのp共役有機ホウ素ポリマーおよびオリゴマーを調製してきました。図4に、当グループが研究してきたポリマーの代表的な化学構造を示します。当グループは、過去数年にわたってそれらの合成法や精製法を改善したり、有機半導体としての特性を明らかにしたり、薄膜デバイス中での性能を評価したりしてきました。TDAは、p共役有機ホウ素ポリマーおよびオリゴマーのうちのいくつかをBoramer™ 材料という商標名で製造を開始したばかりですが、これらは現在シグマ アルドリッチから販売されています(688010および688002)。その他のp共役有機ホウ素の構造体は研究開発中です。

B

n

B

n

O

OC10H21

C10H21

Boramer T01: アルドリッチ製品番号 688010

Boramer TC03: アルドリッチ製品番号 688002

図4. TDAのホウ素含有n型ポリマーの化学構造

当グループはポリマーを注意深く精製することが、これらの材料の溶解性を保持する上で不可欠であることを見出しました。クロロホルムとクロロベンゼンは、これらのポリマーのほとんどに適した溶媒です。調製したどの有機ホウ素ポリマーにも色が付いており、大部分は可視スペクトルの青から緑までの範囲で強いフォトルミネセンス性を示します(図5)。空気中での安定性はまだ完全には評価されていませんが、予備実験の結果ではポリマーの構造によって変化することが分かっており、Boramer™ T01ポリマーはBoramer™ TC03ポリマーより空気に敏感に反応します。どちらの材料も、不活性雰囲気中で取り扱うことを推奨します。

a)

b)

図5. TDAのBoramer™ ポリマーの (a)周辺光および (b)紫外線照明でのクロロホルム溶液

Boramer™ 材料のいくつかの電子帯構造特性を、コロラド州立大学(コロラド州フォートコリンズ)で紫外光電子分光法(UPS)を使用して明らかにしました。UPSは、スペクトルの低結合エネルギー端で、HOMO準位からフェルミ準位のギャップの電子エネルギーを直接測定します。UPSの測定結果から、当グループのポリマーは実際にn型半導体であること、さらにその価電子帯(VB)はメタノフラーレン(PCBM)やシアノPPVなどの一般的なn型有機半導体のVBと類似したエネルギーに存在することが最終的に証明されました。紫外線・可視光スペクトルからポリマーのバンドギャップを推定し、2.6~2.9eVの範囲にあることが判明しました。図6に、ホウ素を含有する当グループの2種類のp共役ポリマーのHOMO-LUMO準位(オレンジ色)を、よく知られたp型(青色)およびその他のn型有機材料(緑色)とともに示します。エネルギー準位のデータは、Boromer™ T01の基底仕事関数とHOMO-LUMO準位がもっとも低いという、それらのn型の特性を明確に示しています。

VB

VB

VB VB

CB

CB

CB

CB

CB CB

VB

VB

Ef

Ef

-Known n-Types-Known p-Types -TDA-developed n-Types

P3HT MDMO-PPV CN-PPV PCBM TC03 T01

Ener

gy (

eV v

s. v

acuu

m e

– )–2.5

–3.0

–3.5

–4.0

–4.5

–5.0

–5.5

–6.0

–6.5

–7.0

図6. TDAの新しいn型Boramer™ 材料を含む、既知のp型およびn型半導体材料についてのHOMO-LUMO準位のエネルギー準位図

当グループはこれらのn型材料に関する研究の中で、国立再生可能エネルギー研究所(NREL、コロラド州ゴールデン)と協力して、当グループのポリマーをOPVプロトタイプに使用する場合の特性を評価しました。NRELは、フォトルミネセンスクエンチング(PLQ)実験を行い、TDAが供給した材料のうち2種類を用いてOPVデバイスを作製しました。PLQの結果から、当グループのポリマーは最大83 %の効率で代表的なp型半導体(MDMO-PPV)の励起状態を失活させることが判明しました。これは、このp型半導体から当グループの材料に効率的な電子移動が実際に生じていることを示しています。調製したポリマーのひとつは、OLEDプロトタイプを製造するための電子移動および発光層としても使用されました。約6Vのターンオン電圧で、明るい緑色の発光(当グループのポリマーの固体ルミネセンスと似た色)が観察されました。

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h.

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謝辞合成作業についてTDAリサーチ社のEmily Chang、Raechelle D’Sa、Cory Kruetzer、およびCarolina Wilsonの各氏に、仕事関数測定についてノースダコタ州立大学のAnthony Caruso教授とDoug Schulz教授に、UPS測定についてコロラド州立大学のBruce Parkinson教授とBengt Jaekel博士に、有機光起電装置でのn型材料の特性評価についてNRELのSean Shaheen博士、Muhammet Kose博士、Don Selmarten博士、およびCary Allen氏にそれぞれ厚くお礼申し上げます。本研究の一部は、米国国立科学財団(契約DMI-0319320、OII-0539625、DMI-0110105)および国防長官官房(契約N00164-06-C-6042)からの助成金により実施されました。

参考文献:

(1) MacDiarmid, A. G. Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2581–2590. (2) Groenendaal, L; Dhaen, J.; Manca, J.; Van Luppen, J.; Verdonck, E.; Louwet, F.; Leenders, L. Synth. Met. 2003, 135–136, p.115–117. (3) Granström, M.; Petritsch, K.; Arias, A. C.; Lux, A.; Andersson, M. R.; Friend, R. H. Nature 1998, 395, 257–260. (4) Cao, Y.; Yu, G.; Zhang, C.; Menon, R.; Heeger, A. J. Synth. Met. 2003, 87, 171–174. (5) Kawano, K.; Pacios, R.; Poplavskyy, D.; Nelson, J.; Bradley, D.; Durrant, J. R. Solar Energy Materials & Solar Cells 2006, 90, 3520–3530. (6) Danier Van Der Gon, A. W.; Birgerson, J.; Fahlman, M.; Salaneck, W. R. Org. Electr. 2002, 3, 111–118. (7) Greczynski, G.; Kugler, T.; Keil, M.; Osikowicz, W.; Fahlman, M.; Salaneck, W. R. J. Elec. Spectr. & Rel. Phenom. 2001, 121, 1–17. (8) Luebben, S.; Elliott, B.; Wilson, C. “Poly(heteroaromatic) Block Copolymers with Electrical Conductivity,” U.S. Patent Application US 2003/0088032 A1. (9) Sapp, S.; Luebben, S.; Jeppson, P.; Shulz, D. L.; Caruso, A. N. Appl. Phys. Lett. 2006, 88, 152107(1–3). (10) Chujo, Y.; Miyata, M.; Matsumi, N. Polymer Bulletin 1999, 42, 505–510. (11) Chujo, Y.; Miyata, M.; Matsumi, N. Macromolecules 1999, 32, 4467–4469. (12) Chujo, Y.; Naka, K.; Matsumi, N. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 10776–10777. (13) Chujo, Y.; Umeyama, T.; Matsumi, N. Polymer Bulletin 2002, 44, 431–436. (14) Jäkle, F.; Sundararaman, A.; Victor, M.; Varughese, R. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 13748–13749. (15) Parab, K.; Venkatasubbaiah, K.; Jäkle, F. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 12879–12885.

Boramer™ n型導電性ポリマー製品名 構造 HOMO/LUMO 製品番号

Poly[(1,4-divinylenephenylene)(2,4,6-triisopropylphenylborane)], Boramer-T01

*

B *

n

–6.65 eV/–3.85 eV 688010-250MG

Poly[(2,5-didecyloxy-1,4-phenylene)(2,4,6-triisopropylphenylborane)], diphenyl terminated, Boramer-TC03

O

OC10H21

C10H21

B

n

–6.2 eV/–3.0 eV 688002-250MG

n型導電性ポリマー弊社では、n型の挙動を示すことが知られている、次の 3つのカテゴリーの半導体ポリマーを販売しています。

BBLはしご型ポリマー(アルドリッチ製品番号 667846、8ページ )

Boramer ™ ポリマー(当ページで紹介)有機 PPV(CN-PPV)ポリマー(29ページ)

新製品情報は、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/msをご覧下さい。

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導電性薄膜および正孔注入層用材料以下の表では、一般的に使用されている材料や新製品などをご紹介しております。関連の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

製品名* 製品概要導電性S/cm 製品番号

Polyethylenedioxythiophene (PEDOT)

PEDOT-block-PEG solution, 1 wt. % dispersion in nitromethane, contains p-toluenesulfonate as dopant (Aedotron™ P-NM)

Material for hole injection layers and low conductivity applications

10–3–10–4 (bulk) 649791-25G

PEDOT-block-PEG solution, 1 wt. % dispersion in nitromethane, contains perchlorate as dopant (Aedotron™ C-NM)

General purpose, moderate conductivity ICP dispersion in volatile solvent

0.1–2 (bulk) 649805-25G

PEDOT-block-PEG solution, 1 wt. % dispersion in propylene carbonate, contains perchlorate as dopant (Aedotron™ C-PC)

General purpose, moderate conductivity ICP dispersion in volatile solvent

0.1–2 (bulk) 649783-25G

C12-PEG-b-PEDOT-b-PEG-C12 solution, 0.7% dispersion in nitromethane, contains perchlorate as dopant (Aedotron™ C3-NM)

High transparency and good conductivity dispersion in volatile solvent

10–60 (bulk) 687316-25G

PEDOT, tetramethacrylate end-capped, 0.5% dispersion in propylene carbonate with p-toluenesulfonate dopant (Oligotron™-PC)

Reactive oligomer in non-volatile solvent. Can be crosslinked or blended with reactive acrylate and methacrylate compounds to make polymer blends.

0.1–0.5 (bulk) 649813-25G

PEDOT, tetramethacrylate end-capped, 0.5% dispersion in nitromethane with p-toluenesulfonate dopant (Oligotron™-NM)

Reactive oligomer in volatile solvent. Can be crosslinked or blended with reactive acrylate and methacrylate compounds to make polymer blends.

0.1–0.5 (bulk) 649821-25G

PEDOT-PSS formulation, 2.8 wt. % dispersion in H2O, low-conductivity grade

Low-conductivity polymer blend, contains 0.14 wt.% PEDOT and 2.6 wt.% PSS. Reduced particle size allows to create smooth spin-coated films on ITO useful as charge injection layers for OLEDs and OPVs.

~10–5 (bulk) 560596-25G560596-100G

PEDOT-PSS formulation, 1.3–1.7 wt. % dispersion in H2O

Conductive polymer blend. Suitable for OTFT applications.

655201-5G655201-25G

PEDOT-PSS formulation, 1.3 wt. % dispersion in H2O, conductive grade

Conductive polymer blend, contains 0.5 wt.% PEDOT and 0.8 wt.% PSS. Useful for antistatic coating applications

~1 (bulk) 483095-250G

PEDOT nanoparticles, 1% (w/ V) in H2O Aqueous dispersion of < 300 nm PEDOT nanoparticles. Contains dodecylbenzene sulfonic acid (DBSA) as dopant

675288-25ML

PEDOT nanotubes, > 97% PEDOT nanotube powder 678392-500MG

Polyaniline (PANI)

Polyaniline (emeraldine salt), 0.5 wt.% dispersion in mixed solvents

Conductive polymer suitable for dip-coating applications. Doped with organic sulfonic acid.

~1 (film) 649996-10ML

Polyaniline (emeraldine salt), 2–3 wt.% dispersion in xylene

Conductive polymer suitable for spin-coating applications. Doped with organic sulfonic acid.

10–20 (film) 650013-10ML

Polyaniline (emeraldine salt), average Mw > 15,000, powder, 3–100 µm particle size

Additive in polymer blends and liquid dispersions for electromagnetic shielding, charge dissipation, electrodes, batteries and sensors. Doped with organic sulfonic acid.

2–4 (pellet) 428329-5G428329-25G

表に挙げた3種類のPANI材料は、当社の代表的な製品です。基本形(非ドープ)材料を含むPANI製品の全製品リストについては、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

*PEDOT=ポリ (3,4-エチレンジオキシチオフェン)、PEG=ポリ(エチレングリコール)、PSS=ポリ(スチレンスルホン酸)、PANI=ポリアニリン

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有機エレクトロニクスにおけるフラーレンベースのn型半導体

Dr. David Kronholm† and Prof. Dr. Jan C. Hummelen†,‡

†Solenne BV, The Netherlands‡Molecular Electronics, Zernike Institute for Advanced Materials, and Stratingh Institute of Chemistry, University of Groningen, The Netherlands

はじめにメタノフラーレンを組み込んだバルクヘテロ接合フォトダイオードに関する初めての発表 1が1995年に行われて以来、デバイスの性能は大幅に向上し、デバイス研究の範囲が大きく広がってきました。有機エレクトロニクスにおいてもっとも一般的に使用されるフラーレン誘導体は、メタノフラーレンフェニル -C61-酪酸 -メチルエステル([60]PCBM)です 2。さまざまな類似体(ここではPCBMと呼びます)が作成され、n型半導体として試験されてきました。とりわけ有機光起電装置、光検出器 3および有機電界効果トランジスタ(OFET)4に使用することが研究され、活発に開発されています。10年以上の研究が行われた結果、PCBMが、さまざまな薄膜有機エレクトロニクス用途において効果的な溶解処理が可能な有機n型半導体であると考えられています。

図1は、代表的なバルクヘテロ接合有機光起電デバイス(OPV)のアーキテクチャーと性能特性を示した略図です。バルクヘテロ接合OPVを作製するには、p型ポリマー半導体との混合物を形成するために可溶性フラーレン誘導体が必要です。PCBMは、溶解度と加工性を大幅に向上させつつ、元のフラーレンの重要な電子的および光学的特性を維持します。このような特性の中には、高速の電子移動、適度な比誘電率、フラーレンアクセプターの対称性による等方的(C60誘導体の場合)または比較的等方的(C70およびC84誘導体の場合)な電子受容、および良好な電子移動度があります。元のフラーレンのこのような特性が、一般的な有機溶媒中での改善された溶解度およびPCBMについて観察された望ましい析出速度と結びついて、最終膜に均一なナノ粒子の堅固なn型ドメインが形成されます。

glass

PEDOT:PSS anode

Donor:acceptor

metal cathode

Lig

ht

a)

J L [A

/m2 ]

V [V]

60

40

20

0

–20

–40

–60

–80

–100

–120

–0,4 –0,2 0,0 0,2 0,4 0,6 0,8 1,0

PCBM

ThCBM

L = 300 nm

b)

図1. a) 現在のバルクヘテロ接合OPVデバイスの標準的な構造上部の無名層(ライトグレー):透明導電性酸化膜(TCO、例えば ITO)下部の無名層(赤紫):極薄保護層(例えばLiF)、b) AM1.5照度、1太陽光度での最適化されたレジオレギュラー P3HT:メタノフラーレン(1:1)PVセルの I/ V曲線。電流密度値は、スペクトルのミスマッチおよび真の活動領域を補正しています。(2007年のMRS春季会合にて発表、デバイスはフローニンゲン大学のLacramioara Popescuによる)n型半導体の分子構造の比較的小さな変化でも、最終デバイスの性能に影響を与えることが分かります。

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高次のフラーレン(C70およびC84)に基づく [60]PCBM類似体がデバイスで合成されて試験され、混和性/溶解度および電子特性を変化させるために加数部分を変更させた [60]PCBM類似体も開発され試験されてきました。図2に、より一般的に使用され、最高の性能を示すPCBMを示します。薄膜有機エレクトロニクスデバイスの形成は、特に形態を考慮すると非常に複雑であるため、傾向を一般化または外挿して、どのPCBMが所定のデバイスまたはアーキテクチャーで最高の性能を発揮するか予測することは困難です。これらの分子は、しかし、実験研究者が最適化を調査するために利用できるライブラリーをまさに代表しており、それぞれの分子がさまざまなデバイスやアーキテクチャーに利点をもたらすことが示されています。さまざまな純度グレードも開発されたため、価格が大幅に低下して商業規模の量が入手可能になりました。

有機エレクトロニクス用途におけるn型半導体としてのPCBMの概要有機光起電装置(OPV)

[60]PCBMは、有機光起電装置に今でも圧倒的に多く使用されているn型コンポーネントです。少なくとも最近6年間にわたる、有機光起電デバイスでの電力変換効率(h)の公表されている世界記録は、我々の知る限りでは、[70]PCBMを含むデバイスが記録を保持していた期間を別として、[60]PCBMを組み込んだデバイスが継続的に保持してきました。MDMO-PPV:PCBMデバイスが徹底的に研究されて特性が明らかになり、初期にh=2.5 %であった [60]PCBMの代わりに[70]PCBMが使用されて、最終的にh=3.0 %5に達しました 6。この効率向上は、可視光波長での [70]PCBMの光吸収が[60]PCBMに比べて高いためでした。[84]PCBMは可視光波長をさらに強く吸収するものの、電子供与性が比較的強いドナーポリマーと組み合わせて使用したため、優れた電子受容

性によってOPVでの性能は低下しました 7。最近になって研究者や開発者は、ポリチオフェン/ PCBM系に移行し、いくつかのグループは4.4 %~6 %というhを発表しました 8,9。アニーリングまたは蒸発を遅くして注意深く形態を制御すると、性能が大幅に改善します。

10 %というhを実現しようとする研究開発の最新ロードマップでは、形態およびポリマー特性の改善に重点を置いており 10、デバイスを改善するのに使用するn型半導体として[60]PCBMが概ね適切であると推測されています。しかし、ポリチオフェンを用いた形態制御では、PCBMとポリマー相がさらに広い範囲で分離するのが観察されているため、その改善も求められています。そのため、新しい分子である[60]ThCBMが設計・試験されるようになりましたが、初期段階での結果では、P3HTによる形態制御よりやや優れていると考えられています 11。[60]ThCBMは、[60]PCBMの電子特性(LUMOおよび移動度)も保持しています。OPVの開発者は、長期間にわたってn型のLUMO準位の向上に取り組んできており、最近合成された分子である2,3,4-OMe-PCBMでは、わずかながら有意性を持つLUMOの向上が見られます。この分子は、MDMO-PPVと組み合わると開路電圧(VOC)が高くなることが示されましたが 12、OPVデバイスでの特性はまだ完全には明らかになっていません。

有機電界効果トランジスタ(OFET)

[60]PCBMデバイスで、有機半導体としては比較的高い移動度(1×10-2~2×10-1 cm2/ Vs)4が実証されたほか、インバーターを作製を可能にする両極性輸送も明らかにされました 13。有効なパッシべーションが報告されたとはいえ、安定性が問題でした。[70]PCBMがこれまでに示していた電子移動度は約1桁低いものでしたが、アニーリング時間は短縮され、安定度が向上します。[84]PCBMは、最大3×10-3という電子移動度、10-5~10-4 cm2/ Vsという正孔移動度と相まって、

図2. [60]PCBM類似体(PCBM)のライブラリー

OMe

O

[60]PCBM

O

O

CnH2n+1

[60]PCB-Cn

OMe

O

S

[60]ThCBM

MeO

OMe

OMe

OMe

O

[60] 2,3,4-OMe-PCBM

O

OMe

[70]PCBM

OMe

OOMe

O

D

D

D

D

D

[84]PCBM d5-[60]PCBM

フラーレンベース有機半導体

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非常に優れた安定性を示しています 14。共役ポリマーとPCBMの混合物も両極性OFETに使用できます 15。PCBMを使用したOFETデバイスの研究はOPVに比べると多くはありませんが、OPVで実証されたのと同様の膜の形態制御(溶媒および蒸発/アニーリングの最適化)を適用すれば、移動度が改善されるものと予想できます。

有機光検出器

OPVデバイスの初期開発と平行して、同様のフォトダイオードを用いたバルクヘテロ接合有機光検出器も開発されました 16。低い暗電流、高い外部量子効率(80 %)、および高速の遷移挙動という、商用用途に適した性能を実現しました 3。さらには、有機薄膜はシリコンベースのデバイスよりコスト面で有利なため、広い面積への用途が想定されています。

PCBMライブラリーの個別材料の特性[60]PCBM(アルドリッチ製品番号684430、684449、684457)

[60]PCBMは単一の異性体として存在します。[60]PCBMの性能に関連すると考えられる興味深い特徴は、C60の電子特性と物理特性を高いレベルで保持していることです。単結晶の構造解析によって、分子間間隔は基本的にC60と同じであり、奇妙なことにボール間最短間隔はPCBMの方がC60よりわずかに短いことが分かっています 17。[60]PCBMのコンパクトな構造(したがって元のフラーレン)から逸脱し過ぎると、性能が低下することが一貫して示されています。

99.5 %超のグレードを持つ [60]PCBM(アルドリッチ製品番号684449)は、研究者にもっとも広く使用されてきており現在も使用されていますが、試験の結果からいくつかのデバイスとアーキテクチャーには、99 %超のグレード(アルドリッチ製品番号684430)も使用可能であることが分かっています。しかし、PCBMが析出/結晶化する挙動が形態に強い影響を与え、少量の不純物が析出/結晶化速度に強い影響を与える可能性があるため、さまざまなグレードを調べて最適性能を決めなければならないことに注意してください。

[70]PCBM(アルドリッチ製品番号684465)

[70]PCBMを初めて合成しようとした動機は、[60]PCBMと比べて可視領域での光吸収が大きいことを生かしたいと考えたことでした。これは、MDMO-PPVのように比較的バンドギャップの広いドナーと組み合わせたときに、特に利点となる可能性があります。これを1つのメジャーな異性体と2つのマイナーな異性体の混合物として調製し、そのまま使用しました。[70]PCBMと [60]PCBMのLUMOエネルギーは非常に近いため 5、こうすると [60]PCBMの電子的性能を保持しながら、膜吸収がn型とp型の関数である集光を改善する機会が与えられます。

一般の溶媒に容易に溶解する [70]PCBMの測定量は [60]PCBMよりやや大きいのですが、溶液処理された薄膜デバイス中での析出の挙動は異なっていること(および、溶解度が低い分子について予想される挙動と一致していること)に注意する必要があります。このため、クロロベンゼンを使用すると分離の規模が広がって大きな [70]PCBMドメインが生じるため、最適性能を得るには、少なくともMDMO-PPVと組み合わせてさらに強力なフラーレン溶媒であるオルト -ジクロロベンゼン(ODCB)を使用する必要が生じました 5。C70分子の対称性が低下して異性体の形態が混在していることから、[60]PCBMと異なる析出速度になるものと推定されます。

[84]PCBM(アルドリッチ製品番号684473)

[84]PCBMは、主として3種類の異性体の混合物として供給され、その状態で使用されます 7。[84]PCBMは、[60]PCBMより350mV低いLUMO準位と組み合わせると、可視光の全波長(近赤外線まで広がる)を吸収します。このようにLUMO準位が低いことは、MDMO-PPVと組み合わせたOPVシステムの性能を低下させますが、単一コンポーネントOFETの空気中での安定性を改善する重要な要素になっていると考えられます 18。

[60]PCB-Cnエステル(アルドリッチ製品番号685321 (C4)および684481 (C8))

形態制御のひとつの方法は、より強力なフラーレン溶媒を使用することでしたが、そのためにPCBMを析出するための推進力が低下し、PCBMドメインが小さくなって膜が平滑化します。同様に、メチル基をより大きなアルキル部分で置き換えて [60]PCBMの溶解度を改善していました。ある種の溶媒系(低品質溶媒)では、溶解度を高めると性能上の利点が得られますが、さらに溶解度が高くなると利点がなくなることが実証されました 19。どの溶媒を選択するか、およびデバイスのアーキテクチャーにもよりますが、溶解度を高めることで望ましい形態を形成する上での利点を得られる可能性があります。n=4, 8, 12, 16,および18の長さのアルキル鎖が合成されました。[60]PCB-C4では溶解度はやや高くなるだけですが、n=8以上では大幅に向上します。より長い鎖を持った誘導体の結晶構造がPCBMのコンパクトな構造のものとは異なるため、移動度が低下するものと考えられます。これは比誘電率を低下させて、再結合にも影響する可能性があります。

[60]ThCBM(アルドリッチ製品番号688215)

ポリチオフェン:PCBM系では相分離がより広範囲で生じることが示されたため、混和性を高めるために、[60]PCBMのフェニルをチエニル基で置き換えられました。デバイスでの特性はまだ完全には明らかになっていませんが、[60]ThCBMは、混和性の改善によりポリチオフェンの形態制御が改善される可能性があります。LUMOと純粋な薄膜の移動度は、[60]PCBMのものと非常によく似ています 11。

2,3,4-OMe-PCBM

OPVのVOCは、ドナーのHOMOおよびアクセプターのLUMOの関数であることが示されたことが、[60]PCBMに関するLUMOを高める取り組みに結びつきました。このために2,3,4-OMe-PCBMが合成され、[60]PCBMの加工性を適度に保ちながらLUMOが高くなることが実証されています。デバイスの全体的な特性はまだ最適化されていませんが、初期の研究ではMDMO-PPVと組み合わせてVOCが向上することが示されています 12。

d5-PCBM(アルドリッチ製品番号684503)

薄膜有機エレクトロニクスデバイスの性能は膜の形態と非常に強い関数関係を持つため、ドナー-アクセプター混合体の構造に関する情報がきわめて重要である可能性があります。重水素化したd5-PCBMでPCBMを置き換えた混合物に動的SIMS(二次イオン質量分析)を使用して、膜の形態の詳細な三次元元素分析を行うことができます。この技法によって、MDMO-PPV:PCBM OPVデバイスの三次元形態を解明することに成功しました 20。

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実際の使用PCBMを含む有機電子デバイス層の溶液処理では、PCBMが完全に溶解していることを注意して確認する必要があります。溶解が不十分であれば、析出物のシーディングが生じてPCBMのドメインサイズが大きくなり、場合によって、ミクロン規模の結晶が形成されることもあります。一般に、溶解限度より十分低い濃度で8時間以上撹拌すれば十分です。ろ過が必要な場合もあります。超音波処理だけでは十分に混合されないことがあり、肉眼では見えないサブミクロンまたはナノスケールの浮遊粒子が残る場合があるからです。

PCBMは比較的安定しています。一般に、フラーレンが光や空気に曝露されるとエポキシ化合物を形成しますが、このプロセスは緩慢です。不透明な密閉容器に保存すれば十分ですが、長期保存(6ヶ月超)の場合は不活性ガス(N2またはAr)によるパージが望まれます。実際には、不透明容器に密閉して(不活性ガスによるパージもせず、グローブボックスに貯蔵もしないで)最大1年間保存したPCBMを使用しても、OPV用途でのデバイス性能は劣化していないことが判明しています。

結論および今後の展望PCBMは、溶液処理が可能な有機n型半導体として広く適用できることが示されました。この各種バリエーションが入手可能ということは、さまざまなデバイスやアーキテクチャーにおいて最適化できる機会があることを意味します。量およびコストに関する考慮点にも適切に対処されつつあり、これら材料の商業的利用が可能になってきています。PCBMのコンパクトな構造は、十分な溶液処理性を提供しながら、元のフラーレンの本質的に好ましい特性を保持する上で望ましい性質であると考えられますが、分子がさらに最適化される可能性もあります。現在入手可能なPCBMのライブラリーによって、研究者はさまざまな分子電子デバイスの動作を制御する多くの重要なパラメーターを変更できます。現在は、混和性、溶解度、光吸収、空気中での安定性、およびLUMOエネルギーの観点から選択されています。研究開発の時間と費用を最小限に抑えるのに有望な実験方針は、基本の理解と初期の最適化に [60]PCBMを使用し、システムの微調整にはPCBMのさまざまなバリエーションを試験することです。

参考文献:

(1) Hummelen, J. C.; Yu, G; Gao, J.; Wudl, F.; Heeger, A. J. Science 1995, 270, 1789–1791. (2) Hummelen, J. C.; Knight, B. W.; LePeq, F.; Wudl, F. J. Org. Chem. 1995, 60, 532–538. (3) Rauch, T.; Henseler, D.; Schilinsky, P.; Waldauf, C.; Hauch, J.; Brabec, C. J. 4th IEEE Conf. on Nanotechnology 2004, 632–634. (4) Anthopoulous, T. D.; de Leeuw, D.M., Cantatore, E.; van’t Hof, P.; Alma, J.; Hummelen, J. C. J. Appl. Phys. 2005, 98, 503. (5) Wienk, M. M.; Kroon, J. M.; Verhees, W. J. H.; Knol, J.; Hummelen, J. C.; van Hal, P. A.; Janssen, A. J. Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 3371. (6) Shaheen, S.E.; Brabec, C. J.; Padinger, F.; Fromherz, T.; Hummelen, J. C.; Sarciftci, N. S. Appl. Phys. Lett. 2001, 78, 841. (7) Kooistra, F. B.; Mihailetchi, V. D.; Popescu, L. M.; Kronholm, D.; Blom, P. W. M.; Hummelen, J. C. Chem. Mat. 2006, 18, 3068–3073. (8) Li, G.; Shrotriya, V.; Huang, J.; Yao, Y.; Moriarty, T.; Emery, K.; Yang, Y. Nat. Mat. 2005, 4, 864–868. (9) Kim, K.; Liu, J.; Namboothiry, M. A. G.; Carroll, D. L. App. Phys. Lett. 2007, 90, 163511. (10) Scharber, M. C.; Muehlbacher, D.; Koppe, M.; Denk, P.; Waldauf, C.; Heeger, A. J.; Brabec, C. J. Adv. Mater. 2006, 18, 789–794. (11) Popescu, M.; van’t Hof, P.; Sieval, A. B.; Jonkman, H.T.; Hummelen, J. C. App. Phys. Lett. 2006, 89, 213507. (12) Kooistra, F. B.; Knol, J.; Kastenberg, F.; Popescu, L. M.; Verhees, W. J. H.; Kroon, J. M.; Hummelen, J. C. Org. Lett. 2007, 9, 551–554. (13) Anthopoulos, T. D.; de Leeuw, D. M.; Cantatore, E.; Setayesh, S.; Meijer, E. J.; Tanase, C.; Hummelen, J. C.; Blom, P. W. M. App. Phys. Lett. 2004, 85, 4205–4207. (14) Anthopoulos, T. D.; de Leeuw, D. M.; Cantatore, E.; van’t Hof, P.; Alma, J.; Hummelen, J. C. J. Appl. Phys. 2005, 98, 054503. (15) Meijer, E. J.; de Leeuw, D. M.; Setayesh, S.; van Veenendaal, E.; Huisman, B.-H.; Blom, P. W. M.; Hummelen, J. C.; Scherf, U.; Klapwijk, T. M. Nat. Mat. 2003, 2, 678–682. (16) Yu, G.; Yong. C. U.S. Patent App.

PCBMの特性

電子特性表1は、さまざまなメタノフラーレンの第1還元電位をまとめたものです。[60]PCBM、[70]PCBM、および [60]ThCBMは、非常に近い値を示しています。[84]PCBMのLUMOエネルギーはかなり低い値ですが、2,3,4-OMe-PCBMの値はわずかに高くなっています。

表1. *いくつかのPCBMの第1還元電位

E½ 、第1還元電位 (V)

[60]PCBM –1.0787

[70]PCBM –1.0897

[84]PCBM –0.7307

[60]ThCBM –1.0811

2,4,6-OMe-PCBM –1.1312

*値は、本論文で引用した参考文献(右肩の添え字)による

物理的特性表2は、さまざまなメタノフラーレンの実用的な溶解度ガイドラインをまとめたものです。溶媒の選択は析出に影響するため、膜の形態に強い影響を与えます。

表2. *いくつかのPCBMの実用的な溶解度ガイドライン(mg/ml)

溶媒 [60]PCBM [70]PCBM [60]ThCBM

toluene 10 20 5

p-xylene 5 10 5

o-xylene 15 30 10

chlorobenzene 25 40 10

chloroform 25 30 20

o-dichlorobenzene 30 70 20

*溶媒に過剰量のPCBMを加えて25℃で3日間撹拌後、液相のHPLC分析により測定しました。これらの値は、熱力学的平衡を検証しておらず、室温で撹拌して容易に溶解する濃度値を表したものに過ぎないため、必ずしも熱力学的な溶解度を反映していないことに注意してください。

表3に、[60]PCBM、[70]PCBM、および [84]PCBMのモル吸光係数を示します。元のフラーレンの分子量が大きくなるにつれて、可視光線の吸収が大幅に増大します。

表3. [60]PCBMおよび高次フラーレンPCBMのモル吸光係数(mol-1cm-1)

400 nm 650 nm

[60]PCBM 4,900 <1,000

[70]PCBM 19,000 2,000

[84]PCBM 28,000 4,000

*値はすべて、本論文の参考文献7によります。

20020017612, 2002. (17) Rispens, M. T.; Meetsma, A.; Rittberger, R.; Brabec, C. J.; Sariciftci, N. S.; Hummelen, J. C. Chem. Commun. 2003, 2116–2118. (18) Anthopoulos, T. D.; Kooistra, F. B.; Wondergem, H. J.; Kronholm, D.; Hummelen, J. C.; de Leeuw, D. M. Adv. Mat. 2006, 18, 1679–1684. (19) Zheng, L.; Zhou, Q.; Deng, X.; Yuan, M.; Yu, G.; Cao, Y. J. Phys. Chem. B 2004, 108 (32), 11921–11926. (20) Bulle-Lieuwma, C. W. T.; van Duren, J. K. J., Yang, X.; Loos, J.; Sieval, A. B.; Hummelen, J. C.; Janssen, R. A. J. App. Surf. Sci. 2004, 213–232, 274–277.

フラーレンベース有機半導体

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gm

a-

al

dr

ic

h.

co

m/

ja

pa

n

20

有機光起電装置用材料製品名 別名 構造 アッセイ 製品番号

[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester [60]PCBMO

OCH3

>99% 684430-1G

>99.5% 684449-100MG684449-500MG

>99.9% 684457-100MG

[6,6]-Pentadeuterophenyl C61 butyric acid methyl ester

d5-PCBM

O

O

D

D

D

D

D

CH3

99.5% 684503-100MG

[6,6]-Phenyl-C61 butyric acid butyl ester PCBBO

OC4H9

>97% 685321-100MG

[6,6]-Phenyl-C61 butyric acid octyl ester PCB-C8O

OC8H17

99% 684481-100MG

[60]ThPCBM [60]ThCBMO

O

S CH3

99% 688215-100MG

(6,6)-Phenyl C71 butyric acid methyl ester [70]PCBM

O

OCH3

99% 684465-100MG

(6,6)-Phenyl C85 butyric acid methyl ester [84]PCBMO

CH3

O

99% 684473-100MG

Poly[2-methoxy-5-(3’,7’-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]

MDMO-PPV O

O

CH3

n

CH3

CH3

CH3

546461-1G

Poly[2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene]

MEH-PPV O

O

CH3

CH3

CH3

n

Mn~40,000–70,000 541443-1G

Mn~70,000–100,000 541435-1G

Mn~150,000–250,000 536512-1G

Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl) P3HT

S

C6H13

n

regioregular 445703-1G

regiorandom 510823-1G

regioregular, electronic grade, >99.995%

698989-250MG698989-1G

ポリ (3-アルキルチオフェン )には、その他多くの直鎖、分鎖、および環状アルキル側鎖付きのものがあります。ポリチオフェン製品の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

フラーレンベース有機半導体

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21

Eugene Polikarpov and Prof. Mark E. Thompson

Department of Chemistry, University of Southern California

はじめに:ヘテロ構造OLED

有機分子のエレクトロルミネセンスは、50年以上前からよく知られている現象です 1,2。しかし、これが実用に供せるものとして有望視されたのは1980年代後半になってからでした。有機ルミネセンスを発光素子にうまく応用するには、有機材料が持つ高い抵抗率に関連する問題を克服し、電極から有機物へのバランスのとれた電荷注入を実現するデバイス構造が必要でした。これら2つの問題は、Tangおよびvan Slyke3が、有機EL(OLED)に薄膜ヘテロ構造の概念を用いて解決しました。図1に、電極に挟まれた3層の有機物層からなる二重ヘテロ構造を持つOLEDの模式図を示します。陰極および陽極に隣接した有機物層は、それぞれ電子移動層(ETL)と正孔移動層(HTL)です。

cathode

ETL

EML

HTL

anode on substrate

図1. 正孔移動層(HTL)、電子移動層(ETL)、発光層(EML)、および電極からなる二重ヘテロ構造を持つOLEDの模式図

高効率有機発光デバイスの作成

OLEDの動作中、対向する電極から注入された正孔と電子は発光層(EML)に移送され、そこで再結合して励起子を形成します。500 Å以下の膜厚によって駆動電圧は5~10 Vレベルまで低下し、分離した正孔と電子の導電層が効率的に電荷を注入し、キャリアを再結合します。これにより励起子が生成され、最終的に励起子が消滅して基底状態になると光が放出されます。OLEDに基づいた薄膜ヘテロ構造が発表された後まもなく、適切なホストマトリックス中に発光体分子をドープした2成分の発光層が、電荷再結合と発光層への励起子閉じこめのレベルを改善することによってデバイス効率を向上させることが実証されました。これによって、発光ドーパントの自己クエンチングもなくなります 4。

リン光を用いたOLEDの効率向上OLED中の正孔と電子は、ms = ± ½の均等分布を持つ奇数電子種です。したがって、正孔と電子が再結合して励起子を形成すると、一重項と三重項の励起子の統計的な混合物が生成されます 5,6。この結果、25 %が一重項、75 %が三重項という励起子数になり、OLEDの効率に大きな影響を与えます。1990年代後半までにOLED用に開発された発光ドーパントのほとんどは蛍光状態から発光しており、これは形成された励起子の一重項の部分のみ利用します 7。このため、蛍光に基づくデバイスの内部量子効率は25 %に制限され、これに対応する外部効率(前面)はわずか約5 %です。1990年代後半に、OLEDの効率を大幅に向上させる新しい発光ドーパントのファミリーが発表されました。この効率向上の鍵は、三重項励起子の部分が一重項より重要であることが分かったことでした。三重項励起子を効率的に取り込むには、一重項と三重項の励起子をいずれも捕捉するリン光ドーパントが必要です。リン光ドーパントに対する追加要件は、OLEDのRC時定数と同程度の放射寿命を持つことです。これは一般的に、マイクロ秒の尺度で計測されます。高いリン光効率とマイクロ秒単位の放射寿命の両方を実現する最良の方法は、ドーパントに重金属の原子を組み込むことです。すると、そのスピン軌道結合によって、一重項状態と三重項状態をまたがる項間交差が効果的に促進されます。このためにもっともよく使用される金属は Irですが、Pt、Ru、Re、Au、Osなどの他の重金属を使用した効率のよいリン光ドーパントも調製されています。

有機発光素子

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図2に、Irをベースとしたいくつかの有機金属ドーパントの構造とCIE色度座標を示します。円で囲んだ4種類のドーパントでOLEDが作製されています。それらのCIE座標は、色の付いた矢印で示されています。Irベースのリン光体が1999年にOLEDに導入されて以来 8、200種類に近いさまざまな Ir錯体がOLEDに組み込まれ、そのほとんどが8 %以上の外部効率を持っています 9。いくつかのグループから、Irベースの材料を最適化したデバイスに使用すると20 %を超える外部効率が得られることが報告されています。これは、100 %に近い内部効率に相当します 10-12。

有機金属リン光体の発光エネルギーは有機配位子の構造と密接に関係しているため、可視スペクトルのほとんどに及ぶ一連の高効率リン発光体を設計できます 13,14。錯体の金属中心を使用して、発光エネルギーを微調整することもできます。遷移金属錯体からの発光は、エネルギー三重項の最低励起状態から生じます。分光分析によれば、この状態は大部分が一重項の金属から配位子への電荷移動(1MLCT)特性と結びついた、シクロメタレーション配位子に局在することが示されます。補助(「非発光」)配位子を変更すると金属軌道のエネルギーに影響があり、したがって励起状態の 1MLCT特性に影響を与えます。1MLCT特性に中心を置く配位子の比率を変えると、混在した励起状態のエネルギーに直接影響します 13。したがって、(F2ppy)2Ir(L^X)錯体中の補助配位子を変更することで(L^X=補助配位子)、錯体の発光エネルギーを458 nmから512 nmにシフト可能です。この系列 [(F2ppy)2Ir(pz2Bpz2)]の濃青色の錯体のひとつを使用して、外部効率が11 %を超えるOLEDが作製されました 15。

WOLED:照明へのOLEDの応用可能性のある重要なLEDの用途は照明です。照明の光源として利用できるデバイスの要件は、上述した単色OLEDとは少し異なります。RGBディスプレイに使用することを目的とするOLEDは、ピーク波長を中心に比較的幅の狭い直線状のエレクトロルミネセンススペクトルが得られるものでなければなりません。一方、照明用光源は太陽の黒体スペクトルを近

似することを意図しており、可視スペクトル全体にわたってほぼ等しい光度を持った広い直線状になる必要があります。したがって、可視スペクトル全体に完全に対応させるために、照明用のOLEDでは一般に複数の発光体を単一の発光層中に同時に堆積させるか、またはデバイスの異なる層か領域に分散させます。効率の高い白色エレクトロルミネセンスを実現するために、多種多様なデバイスのアーキテクチャーが報告されています。

ほとんどの白色有機EL(WOLED)は、出力を組み合わせて可視スペクトルを一様に包含するように、色の異なる数種類の発光体からのルミネセンスを利用します。3種類未満の別々の発光体を備えたWOLEDが報告されていますが、WOLEDへのもっとも一般的なアプローチは、3原色すなわち青、緑、赤を使用することです。もっとも単純なデバイスアーキテクチャーのひとつは、青、緑、赤のドーパントを単一発光層中に混在させて、3つの発光スペクトルの合計で可視スペクトルに対応することです 16-18。3重にドープされた発光層でリン発光体を使用すると、効率の高いデバイスが得られます。しかし、単一層で3種類のドーパントを使用するのは、高エネルギーの青色ドーパントから緑色のドーパントに、さらに緑色ドーパントから赤色ドーパントにエネルギーが容易に移動するため、問題があります。したがって、ドーピングレベルが青>緑>>赤という比率になるように各ドーパントの濃度を注意深く調整して、うまくバランスのとれた発光色を得る必要があります。バランスのよい白色発光を得るには、一般に赤色ドーパントのドーピングレベルを1 %よりはるかに低くする必要があります。

ドーパント間のエネルギー移動問題に対するひとつの解決策は、色素を別々の層に分離することです。蛍光 18-20またはリン光発光体を積み重ねるという概念を用いて、効率の高いWOLEDが作製されました 21。別々の層にドープした青色およびオレンジ色の2成分蛍光発光体を使用する、さらに単純な構造も記述されています 19,22。異なる層に発光体を積み重ねるとエネルギーの移動問題はなくなりますが、各発光層の中でバランスのとれたキャリアの再結合と励起子の局在化を

# C-N1 ppy2 op3 bo4 bzq5 bt6 thp7 bbsn8 pq9 bst10 absn11 btp

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

0.00.0 0.2 0.4 0.6 0.8

y

x

1234

57

1011

6

89

NIr

NIr

NIr

S NIr

O NIr

N NIr

S NIr

NIr

S

O NIr

O NIr

S N

O

IrO

NMe2

2 2 2

22

ppy tpy bzq

bo αbsn

2

bin

2

bt

2

thp

2

op

2

ppo

2

C6

NIr

2

S

NIr

2

btp

pq

S NIr

2

βbsn

R

Ir

2

pbz

N

NIrO

OR

R

図2. イリジウムシクロメタレート型錯体の化学構造、OLEDのCIE(国際照明委員会、Commission Internationale de L’ Eclairage)色度座標、およびリン光スペクトル。ppy2Ir(acac)、bt2Ir(acac)、pq2Ir(acac)、およびbtp2Ir(acac)リン光ドーパント(左側の円で囲んだ構造)を持つOLEDのCIE座標は、色付きの矢印でマークしています。残りのC^N2Ir(acac)錯体のリン光スペクトルのCIE座標も、CIE図上に t四角い箱で示しています。CRTの赤色、緑色、および青色サブピクセルのNTSC標準座標は、黒い三角形の頂点に当たります。

有機発光素子

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実現することが困難なため、デバイスのアーキテクチャーは非常に複雑になることがあります。

平面型プラチナベースのドーパントを使用すれば、上述した2~3種類の発光体を使用するアプローチとは異なり、単一ドーパントのみで広帯域発光 (白色)OLEDを作製できます。図3に、単量体(青色)と、同じ有機金属プラチナ錯体の集合体(黄色~赤色)を組み合わせて白色を実現し、可視光波長全域を包含する発光スペクトルを得る方法を示します。単量体-集合体発光比率は、ドーピング濃度およびドーパントの立体的かさ高さの両方で制御します 23。ドーパントの立体的かさ高さを増やすと集合体の形成が妨げられますが、ドーパント濃度を上げると集合体の形成は促進されます。ドーパントの数を最小化すると、デバイスの複雑さは大幅に低減します。広帯域発光に対する単量体-集合体アプローチに基づいたデバイスを使用して、15~20 %の外部効率を達成できることが最近示されました 24,25。

1.6%3.2%5.6%8.0%

Excimer/dimermonomer

Wavelength (nm)

PL e

mis

sio

n (

arb

. un

its)

0

2

500 600 700

N

F

Pt OO

F

*N

F

Pt OO

FN

F

Pt OO

F +

図3. スペクトルの線形がドーピングレベルに依存することを示す、F2-ppyPt(acac)をドープした膜のフォトルミネセンススペクトル。スペクトルは、集合体発光および単量体発光という成分から成ります。ドーピング濃度が5.6 %のときに、膜内のF2-ppyPt(acac)単量体-集合体比率がバランスして白色光が発生します。F2-ppyPt(acac)とその二量体の化学構造を右側に示しています。

白色光は青色成分がおよそ25 %で、残りが緑色と赤色の間のエネルギーに対応しています。OLED中の正孔と電子の再結合で形成される励起子も、たまたま一重項が25 %、三重項が75 %という比率になっています。白色光の青色成分の割合と一重項の割合が似ていることから、効率よく白色発光を実現するための別のアプローチ、すなわち一重項励起子を青色蛍光ドーパントと結合させ、三重項をスペクトルの緑色と赤色に対応するリン光体と結合させる方法が示唆されます。このような蛍光とリン発光の組み合わせを実現すると、多くの利点があることが分かりました。安定した青色蛍光を導入すると、WOLEDの青色成分の動作寿命が短いというよく知られた問題が軽減すると予想されます。リン光3成分のWOLEDの量子効率と電流密度をプロットすると、一般に効率が最大値に達した後、すぐに高電流密度で効率が急にロールオフする形状になります 26。高電流で望ましくない効率低下が発生する原因である三重項-三重項消滅は、蛍光/リン光を組み合わせたデバイスでは低減します。というのは、三重項が形成されるETLまたはHTLと発光層との界面付近より、発光層の中央部での三重項の濃度の方が低いからです。

リン光に基づくWOLEDでの大きな進歩が最近報告されました。中山らは、青色、緑色および赤色のリン光体を使用して広いスペクトルを持つ白色光を生成するWOLEDを作製しました 27。このデバイスは、輝度1000 cd/m2で64 lm/ Wの効率を発揮しました。この効率は電球型蛍光光源を超え、蛍光灯光源の効率(約75~90 lm/ W)に近い値です。さらにこのデバイスは、この輝度で1万時間を超えるデバイス寿命を持ち

ます。これらの値は従来のOLEDの記録の2倍を超え、OLEDが照明用として明るい未来を持っていることを明確に示しています。

結論OLEDには、フルカラーディスプレイや照明用途に大きな影響を与える期待がかけられています。これらのデバイスファミリーのいずれにも、効率の高さと寿命の長さだけでなく、製造コストが低いこと、広範囲に及ぶ一連のデバイス、および高い彩度が要求されます。OLEDはこれらすべての特性を実証しましたが、大きな面積を製造することが重要な課題として残っているため、製造コストが極めて高くなります。テクノロジー上のもうひとつの課題は、濃青色デバイスの寿命です。赤色および緑色には安定したリン発光体が多数あり、106時間に近いデバイス寿命が得られています。一方、青色リン光体に基づく代表的なOLEDの動作寿命は非常に短く、もっとも長いもので1万5千~2万時間の範囲です。青色デバイスが非常に不安定である原因はまだ分かっていません。多くの蛍光およびリン光OLEDが、小面積の携帯型ディスプレイに商品化されていますが、有機エレクトロルミネセンスを支配し制限する要因の理解を深めるための科学的研究を行う余地はまだ十分残されています。

参考文献:

(1) Pope, M.; Kallmann, H. P.; Magnante, P. J. J. Chem. Phys. 1963, 38, 2042. (2) Bernanose, A.; Comte, M.; Vouaux, P. J. Chim. Phys. 1953, 50, 64. (3) Tang, C. W.; VanSlyke, S. A. Appl. Phys. Lett. 1987, 51, 913. (4) Tang, C. W.; VanSlyke, S. A.; Chen, C. H. J. Appl. Phys. 1989, 65, 3610. (5) Segal, M.; Baldo, M. A.; Holmes, R. J.; Forrest, S. R.; Soos, Z. G. Physical Review B: Condensed Matter and Materials Physics 2003, 68, 075211/1. (6) Baldo, M. A.; O’Brien, D. F.; Thompson, M. E.; Forrest, S. R. Physical Review B: Condensed Matter and Materials Physics 1999, 60, 14422. (7) Shoustikov, A. A.; You, Y.; Thompson, M. E. IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics 1998, 4, 3. (8) Baldo, M. A.; Lamansky, S.; Burrows, P. E.; Thompson, M. E.; Forrest, S. R. Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4. (9) Comprehensive Organometallic Chemistry III; Crabtree, R. H.; Mingos, D. M., Eds.; Elsevier: Oxford, UK, 2007; Vol. 12, pp 101–194. (10) Tsuboyama, A.; Iwawaki, H.; Furugori, M.; Mukaide, T.; Kamatani, J.; Igawa, S.; Moriyama, T.; Miura, S.; Takiguchi, T.; Okada, S.; Hoshino, M.; Ueno, K. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 12971. (11) Watanabe, S.; Agata, Y.; Tanaka, D.; Kido, J. Journal of Photopolymer Science and Technology 2005, 18, 83. (12) Meerheim, R.; Walzer, K.; Pfeiffer, M.; Leo, K. Appl. Phys. Lett. 2006, 89, 061111/1. (13) Li, J.; Djurovich, P. I.; Alleyne, B. D.; Yousufuddin, M.; Ho, N. N.; Thomas, J. C.; Peters, J. C.; Bau, R.; Thompson, M. E. Inorg. Chem. 2005, 44, 1713. (14) Brooks, J.; Babayan, Y.; Lamansky, S.; Djurovich, P. I.; Tsyba, I.; Bau, R.; Thompson, M. E. Inorg. Chem. 2002, 41, 3055. (15) Holmes, R. J.; D’Andrade, B. W.; Forrest, S. R.; Ren, X.; Li, J.; Thompson, M. E. Appl. Phys. Lett. 2003, 83, 3818. (16) Kawamura, Y.; Yanagida, S.; Forrest, S. R. J. Appl. Phys. 2002, 92, 87. (17) Tasch, S.; List, E. J. W.; Ekstrom, O.; Graupner, W.; Leising, G.; Schlichting, P.; Rohr, U.; Geerts, Y.; Scherf, U.; Mullen, K. Appl. Phys. Lett. 1997, 71, 2883. (18) Kido, J.; Shionoya, H.; Nagai, K. Appl. Phys. Lett. 1995, 67, 2281. (19) Jiang, X. Y.; Zhang, Z. L.; Zhao, W. M.; Zhu, W. Q.; Zhang, B. X.; Xu, S. H. Journal Of Physics D-Applied Physics 2000, 33, 473. (20) Ko, C. W.; Tao, Y. T. Appl. Phys. Lett. 2001, 79, 4234. (21) D’Andrade, B. W.; Thompson, M. E.; Forrest, S. R. Advanced Materials 2002, 14, 147. (22) Yang, J. P.; Jin, Y. D.; Heremans, P. L.; Hoefnagels, R.; Dieltiens, P.; Blockhuys, F.; Geise, H. J.; Van der Auweraer, M.; Borghs, G. Chem. Phys. Lett. 2000, 325, 251. (23) Adamovich, V.; Brooks, J.; Tamayo, A.; Alexander, A. M.; Djurovich, P. I.; D’Andrade, B. W.; Adachi, C.; Forrest, S. R. New J. Chem. 2002, 26, 1171. (24) Cocchi, M.; Kalinowski, J.; Virgili, D.; Fattori, V.; Develay, S.; Williams, J. A. G. Appl. Phys. Lett. 2007, 90, 163508/1. (25) Williams, E. L.; Haavisto, K.; Li, J.; Jabbour, G. E. Advanced Materials (Weinheim, Germany) 2007, 19, 197. (26) Sun, Y.; Giebnic, N. C.; Kanno, H.; Ma, B.; Thompson, M. E.; Forrest, S. R. Nature 2006, 440, 908. (27) Nakayama, T.; Hiyama, K.; Furukawa, K.; Ohtani, H. Society for Information Display (SID) Symposium Digest 2007, 38, 1018.

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OLED材料シグマ アルドリッチでは、広く選りすぐったOLED材料を販売しています。関連の全製品リストおよび当社最新製品については、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

電子移動2-(4-Biphenylyl)-5-phenyl-1,3,4-oxadiazole, 99%PBD[852-38-0]

NN

O

257850-5G 5 g257850-25G 25 g

2-(4-tert-Butylphenyl)-5-(4-biphenylyl)-1,3,4-oxadiazole, 99%Butyl-PBD[15082-28-7]

NN

OH3C

H3C CH3

B8378-5G 5 gB8378-100G 100 g

Bathophenanthroline, 97%Bphen[1662-01-7]

N N

133159-500MG 500 mg133159-1G 1 g

Bathocuproine, 96%BCP[4733-39-5]

N NH3C CH3

140910-500MG 500 mg140910-1G 1 g

3,5-Bis(4-tert-butylphenyl)-4-phenyl-4H-1,2,4-triazole

NN

N

685682-1G 1 g

3-(Biphenyl-4-yl)-5-(4-tert-butylphenyl)-4-phenyl-4H-1,2,4-triazoleTAZ NN

N

685720-1G 1 g

8-Hydroxyquinoline aluminum salt, 99.995%Alq3labs: 259 nm lem: 512 nm (lit.)[2085-33-8]

N

O

AlNN

O

O

444561-1G 1 g444561-5G 5 g

正孔移動1,4-Bis(diphenylamino)benzene, 97%[14118-16-2]

N N

663271-1G 1 g663271-10G 10 g

Tetra-N-phenylbenzidine, 97%TPB[15546-43-7]

N N

658812-5G 5 g

N,N’-Bis(3-methylphenyl)-N,N’-diphenylbenzidineTPD[65181-78-4]

N N

CH3 H3C

443263-1G 1 g443263-5G 5 g

N,N’-Diphenyl-N,N’-di-p-tolylbenzene-1,4-diamine[138171-14-9]

N N

H3C

CH3

663263-1G 1 g663263-5G 5 g

N,N’-Di-[(1-naphthyl)-N,N’-diphenyl]-1,1’-biphenyl)-4,4’-diamine, sublimed, 99%NPD[123847-85-8]

N N

556696-500MG 500 mg

4,4’-Bis(N-carbazolyl)-1,1’-biphenyl, 97%CBP, DCBP[58328-31-7]

NN

660124-1G 1 g660124-5G 5 g

Tris-(4-carbazoyl-9-yl-phenyl)-amine, 97%TCTA[13909-27-87]

N

N

N

N

688053-1G 1 g688053-5G 5 g

1,3,5-Tris(diphenylamino)-benzene, 97%TDAB[126717-23-5] N

NN

663247-5G 5 g663247-10G 10 g

1,3,5-Tris[(3-methylphenyl)-phenylamino]benzene, 97%[138143-23-4]

N

NNCH3

CH3

H3C

663239-1G 1 g663239-10G 10 g

1,3,5-Tris(2-(9-ethylcabazyl-3)ethylene)benzeneTECEB[848311-04-6]

N

N

N

CH3

CH3H3C

661732-500MG 500 mg

Copper(II) phthalocyanine, sublimed, 99%CuPc[147-14-8]labs: 678 nm (CHCl3)lem: 404 nm (film, lit.) N

N

N

N

N

N

N

N

Cu

546674-1G 1 g

Titanyl phthalocyanine, dye content 95%[26201-32-1]labs: 692 nm (cholorobenzene)lem: 392 nm (film, lit.) N

N

N

N

N

N

N

N

Ti O

404551-1G 1 g

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25

ポリマー正孔移動体/ホストPoly(N-ethyl-2-vinylcarbazole)labs: 239 nm (CHCl3)[41008-78-0]

N

n

CH3

649325-500MG 500 mg

Poly(2-vinylcarbazole), Mw~6,400[55447-28-4]

NH

n

649287-500MG 500 mg

Poly(9-vinylcarbazole), Mn=25,000–50,000PVK[25067-59-8]

CH2 CH

N

n

368350-5G 5 gMw~1,100,000182605-25G 25 g

Poly(1-vinylnaphthalene), Mw~30,000[29793-40-6] CH2 CH

n

541451-1G 1 gMn~100,000191965-1G 1 g

発光体/ドーパントTris[2-(4,6-difluorophenyl)lpyridinato-C2,N]iridium (III)Ir(Fppy)3, bluelabs: 347 nmlem: 471 nm (lit.)

N

Ir

3

F

F

682594-250MG 250 mg

Perylene, sublimed, 99.5%bluelabs: 436 nm lem: 447 nm, 471 nm (lit.)[198-55-0]

394475-1G 1 g394475-5G 5 g

その他のペリリン誘導体については、8ページの「n型半導体」をご覧下さい。

Tris[2-phenylpyridinato-C2,N]-iridium (III)Ir(ppy)3, greenlabs: 282 nm lem: 510 nm (lit.)[94928-86-6]

N

Ir

3

688096-250MG 250 mg

Coumarin 6, 99%greenlabs: 457 nmlem: 505 nm (EtOH)[38215-36-0]

O ONH3C

H3C

S

N

546283-100MG 100 mg

5,12-Dihydro-5,12-dimethylquino[2,3-b]acridine-7,14-dioneDMQA, greenlabs: 295 nmlem: 523 nm[19205-19-7]

N

NO

OCH3

CH3

557587-500MG 500 mg

8-Hydroxyquinoline zinc salt, 99%Znq, yellowlabs: 251 nm lem: 478 nm (CHCl3)

N

O N

OZn

471755-5G 5 g

Tris[1-phenylisoquinolinato-C2,N]iridium(III)Ir(piq)3, redlabs: 324 nmlem: 615 nm (lit.)[435293-93-9]

N

Ir

3

688118-250MG 250 mg

Tris[2-(benzo[b]thiophen-2-yl)pyridinato-C3,N]iridium(III)Ir(btpy)3, redlabs: 324 nm lem: 590 nm (lit.)[405289-74-9] N

Ir

3

S

680877-250MG 250 mg

Tris(dibenzoylmethane) mono(1,10-phenanthroline)europium (lll) Eu(dbm)3(phen), redlabs: 355 nmlem: 615 nm (lit.)[17904-83-5] N

NEu

O

O

3

538965-250MG 250 mg

Platinum octaethylporphyrin, dye content 98%PtOEP, redlabs: 381 nm lem: 650 nm (lit.)[31248-39-2]

N

N

N

N

CH2CH3CH3CH2

CH2CH3

CH2CH3

CH2CH3CH3CH2

CH3CH2

CH3CH2

Pt

673625-100MG 100 mg

5,6,11,12-Tetraphenylnaphthacene, sublimedRubrene, redlabs: 299 nmlem: 553 nm[517-51-1]

551112-100MG 100 mg551112-500MG 500 mg

合成中間体Tris(4-formylphenyl)amine, 97%

N

O H

H

O

H

O

679658-5G 5 g

4’-(4-Chlorophenyl)-2,2’:6’,2”-terpyridine, 97%

NN N

Cl

687073-1G 1 g687073-5G 5 g

有機発光素子

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Prof. Qibing Pei

Department of Materials Science and Engineering, California NanoSystems Institute, and Henry Samuli School of Engineering and Applied Science, UCLA

はじめに長期のp電子非局在化を備えた共役ポリマーは、ドープ状態では処理可能な有機「金属」として、および中立の非ドープ状態では半導体材料として振る舞います 1-3。多くの非ドープポリマーは、可視および近赤外範囲で強いフォトルミネセンス(PL)を呈します。ドープ状態と非ドープ状態を切り替えると、ポリマー体積、吸収色、可逆的PLクエンチングなど、発光ポリマー(LEP)の多くの特性が変化します。このように変化を制御できるため、LEPを応用することは有望です。例えば、吸収色に起こした変化はエレクトロクロミックディスプレイに利用できる一方、体積の変化は電気的に活性な人工ポリマー筋肉に利用できる可能性があります 4-5。半導体性と強いPLを組み合わせると、LEPエレクトロルミネセンスが生じてポリマー発光ダイオード(PLED)に利用できます。PLクエンチングがドーピングや電荷移動に対して非常に敏感であることを利用して、生物学的種や爆発性を持つ物を検出できます。したがってLEPは、多くの科学的および技術的調査に役立つ、低温処理可能な材料の重要なカテゴリーを表します。

PLEDは、フラットパネルディスプレイや照明への用途を現在開発中で、LEPの特性の理解と改善に依存する高い商品化の可能性を備えています。例えば、PLEDは図1に示す比較的単純な薄膜デバイス構造を持っていますが、高性能なPLEDには次のようないくつかの厳しい要件を満たすLEP層が要求されます。(1)ポリマーのバンドギャップと膜の形態によって決まる色純度、(2)LEPとさまざまな電極材料の間のイオン化電位と電子親和力のマッチング、(3)高いPL量子効率、(4)化学および熱安定性、(5)溶解度、溶液粘度、溶媒-基板の親和性などの加工性。これらの特性は、共役ポリマー鎖の化学構造、側基、ヘテロ原子の組み込み、分子量、構造の規則性および/または共重合を変化させて調整できます。この論文では、さまざまな用途に合わせたLEPの主要カテゴリーを概観します。LEPには、完全な共役主鎖を含むポリマーと、主鎖または側基の中に共役部分を持つポリマーの両方が含まれることに注意してください。ほとんどの共役オリゴマーは、そのポリマー対応物と類似した加工性およびルミネセンス特性を示します。

発光ポリマー

Ca

LEP

HIL

ITO

Glass

図1. ポリマー発光ダイオード(PLED)の模式図HIL =正孔注入層、一般には本質的に導電性を持つポリマー(PEDOTまたはポリアニリン)のスピンキャスト膜。15ページ参照。

O

CH3On

O

n n

n

nO(CH2)8O

CH3O

CH3O

OCH3

OCH3

Ar

Ar

n

2 (orange red)

8 (blue) 7 (deep blue)

9 (R=H: yellow; R=Me: blue)

1 (yellow green)

5 (blue)

Alkyl

Alkyl

R

R

n

4 (green)

O

O n

H

HH

H

H H

3 (orange yellow)

S n

O

O

n

S n

11 (green)

6 (yellow)

10 (red)

N

N

O

F3C CF3

O

n

12 (blue)

図2. 以下の段落で参照している発光ポリマーの代表的な種類

発光ポリマー

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ポリ(1,4-フェニレンビニレン)(PPV)図2に示したポリマー構造への参照は太字で示しています。PPV(1)およびその可溶性誘導体は、もっとも広く研究されているLEPです。PPVは一般に、水およびメタノールに可溶な前駆体であるポリ(キシリリデンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)(540765)を経由して調製されます。PPVは、もっとも初期の共役ポリマー発光ダイオード(LED)の作成に使用されましたが、PLの量子効率が比較的低く、前駆体からPPVへの変換に高温が必要であることから、一般的な有機溶媒に可溶な多くの新しいPPV誘導体の合成が促進されました。MEH-PPV(2、541443)は、対応する単量体である1,4-ビスクロロメチル -2-メトキシ -5-(2’ -エチルヘキシルオキシ )ベンゼン (536250)(スキーム1a)から簡便に合成できます 6。ジアルコキシ側基でもポリマーのバンドギャップが変化し、発光色が非置換PPVの黄緑色からオレンジ色に向かって色が深くなる方向にシフトします。MEH-PPVが、最初の高効率ポリマー LEDの作製に使用されました。2’ -エチルヘキシルオキシ側基を3’ ,7’ -ジメチルオクチルオキシ基(MDMO-PPV 546461)で置き換えると、発光色はわずかに赤みを帯びる方向にシフトしました。かさ高い側基(2,5-ビス(コレスタンオキシ))を持つBCHA-PPV(3)では、色は反対に橙黄色方向にシフトします。発光色を変えるために、その他にも多くの側基が使用されてきました 7,8,9。側基は、PPVのビニル構成部分に導入することもできます。例えば、ポリ [(1,4-フェニレン -1,2-ジフェニルビニレン ](4)は、PLの効率と安定性が高い緑色の発光体です。

2ClCH2 CH2Cl

O

CH3O

t-BuOK (excess)

7Cl Cl

OZn, NiCl2,

PPh3,dpy

+Pd(PPh3)4, Na2CO3

Aliquat® 3368Br Br B B

O

OO

O

(a)

(b)

(c)

スキーム1:ポリマー (2)、(7)、および (8)への合成経路

Gilch 重合法を用いて、分子量の大きなMEH-PPVを高い収率で調製しました。1,4-ビスクロロメチル -2,5-ビス (3’ ,7’ -ジメチルオクチルオキシ )ベンゼン (546488)のGilch反応で、PPV主鎖上での欠陥は1.5~2.0 %のトラン -ビスベンジル部分のみであることが判明しました 10。1,4-ビスクロロメチル-2-メトキシ -5-(3-デシルオキシフェニル )ベンゼンの重合で、p-キノジメタン中間体はかなり強い極性を備えています。その後のラジカル重合はほぼ完全に頭 -尾結合で、0.5 %のトラン -ビスベンジル欠陥を含む置換PPVが生成されます。欠陥がこのように少ないことは、高性能のポリマー LEDを得るために重要です。比較的分子量の小さな置換PPVは、縮合重合経路によって合成することもできます(Wittig、Heck、Knoevenagel)11。Knoevenagelポリマーでは、ジアルコキシ-PPVの各ビニレン部分にシアノ基が導入されます。その結果得られるポリマーは、分子内でp電子雲の「プッシュ・プル」効果を示すため、バンドギャップが効果的に狭まって発光色が深紅色領域にシフトします。

置換PPCの発光色とPLの量子効率は、異なる側基を含むPPVのコポリマーによって巧妙に変えることができます。例えば、ポリ [(2-ジメチルオクチルシリル -1,4-フェニレンビニレン)-コ -(MEH-PPV)]中のコモノマーの比率を変えると、発光色をシリル -PPVの緑色からMEH-PPVのオレンジ色まで系統的に調整できます。緑色から青色の範囲の発光色を得るには、アルキレンジオキシ、オリゴ(エチレンオキシド)、ジメチルシランなどの非共役部分とつなぎ合ったPPVの短いセグメントからなるコポリマーを採用できます 12。コポリマー(5)は、効率の高い青色発光体です。ただし、これらのコポリマーの電荷キャリア導電率は一般に低い値を示します。ポリ (2,5-ジアルコキシ -1,4-フェニレンエチニレン )(PPE)は、ジアルコキシ -PPVのデヒドロ類似体です。PPE(6)(636991)の発光ピークは、対応するPPVと比べて狭く、青色にシフトしています 13。

ポリ (1,4-フェニレン )(PPP)

ポリ (1,4-フェニレン )(PPP)とそのさまざまな誘導体から青色LEPを作製できます。可溶性PPPは、対応するジクロロ、ジブロモ、またはジボラートのモノマーからGrignard、Ni0触媒による山本、または鈴木反応によって合成できます 14,15。ただし、得られたポリマーの分子量はかなり小さく、たいていの場合10,000未満です。ベンゾイルなどの電子吸引基を含む分子量の大きな可溶性PPPは、対応するジクロロ -モノマーのNi0触媒による山本カップリングによって得ることができます(スキーム1b)。どの置換PPPの発光も濃青色で、かなりの部分が紫外領域にあります。ポリ(2-デシルオキシ1,4-フェニレン)(7)は、PLとELのいずれについても高い量子収率を示します。発光ピークは、410 nm付近にあります。

ポリフルオレン(PFO)ポリフルオレンは、すべてのフェニル環ペアがC-9によって平面内に固定されており、バンドギャップはPPPよりやや狭くなっています。PLのほとんどは、可視スペクトルの青色領域内にあります 16,17。ポリ (9,9-ジオクチルフルオレン )(8) (571652)の可溶化アルキル基は、C-2およびC-7から遠く離れたC-9の位置にあるため、C-2およびC-7を通してフルオレン単位をリンクする対応モノマーの重合をほとんど妨害しません。Mw>100,000でPL量子収率が70 %を超えるポリマーが、Ni0触媒による山本カップリングおよびPd0触媒による鈴木カップリング重合のいずれからでも得られます 17。界面活性剤(例えば、Aliquat® 336、205613)を使用し鈴木重合における溶媒の混合を促進すると(スキーム1c)、分子量を最大100万までさらに増加することが可能です 18。鈴木の経路により、PF交互コポリマーを合成できます。トリフェニルアミンコモノマーを導入すると、ポリフルオレンの正孔移動能力が向上します。一方、チオフェンおよび1,3,4-ベンゾチアジアゾールコモノマーは、ポリフルオレンのバンドギャップを狭めて、発光色を緑色または赤色にさえもシフトさせます 19。現在、ポリフルオレンおよびPPVの可溶性誘導体は、LEDディスプレイおよび照明製品に商品化されています。

フェニル環をその共平面構造の中にさらに固定することが、ラダー形PPPで実現されています。鎖間相互作用によってポリマー主鎖に沿った共役とエキシマーの生成が推進されるに伴い、可溶化のための大きな側基が生成します 20。ラダーポリマー (9、R=H)は、希薄溶液中で強い青色ルミネセンスを呈します。固体薄膜のPLは、エキシマーが生成されるためにわずか10 %の量子収率で黄色にシフトします。Rをメチル基で置き換えるとエキシマーの生成が抑えられるため、得られた固体薄膜は、希薄溶液中のポリマーと同様に青色の強いルミネセンスを呈します。

Aliquatは、Henkel Corporationの登録商標です。

発光ポリマー

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n

28

ポリ(チオフェン)ポリ(3-アルキルチオフェン)は、サーモクロミズム(熱による色変化)やソルバトクロミズム(溶媒による色変化)のほか、電界効果トランジスタへの応用について広く研究されてきました。レジオランダムなポリ(3-オクチルチオフェン)(10)(510831)は、希薄溶液中で比較的弱い赤色PLを呈します。濃厚溶液中および固体薄膜中では、発光の大部分が消失します。シクロヘキシルなどのかさ高い側基 (11)(557625)によりポリチオフェン主鎖の共平面がねじれ、発光色は緑色にシフトします21。ポリ(3-メチル-4-シクロヘキシルチオフェンは、青色を発光します。一方、レジオレギュラーなポリ(3-アルキルチオフェン)(7ページの製品を参照)には、共平面のポリマー主鎖があることが分かっています。このポリマー主鎖は、高い正孔移動度を持つナノメートルサイズの結晶ドメイン内部に規則正しく充填できます。これらは、薄膜トランジスタや太陽電池向けのp型半導体として研究が進められています。チオフェン、3-アルキルチオフェン、および3-アルコキシチオフェンは、PPP、PF、およびPPVのバンドギャップを狭めるためのコモノマーとしてよく使用されます。

窒素含有ポリマーイミノ -Nを含む複素環は、炭化水素ベースのp-システムと共役して電子受容体になります。ポリ(2,5-ピリジンビニレン)は、希薄溶液中で赤色を発光しますが、強い双極子相互作用によって集合体の形成が促進されるため、PL量子収率は比較的低くなっています。N原子のプロトン付加またはアルキル化によって、発光色と効率に複雑な変化が生じます 22。キノリンは、高い電子親和力を持つ、PPP型コポリマーの有用な基礎単位です。ポリキノリン(12)は、効率の高い青色発光体です。1,3,4-オキサジアゾールは、しばしばフェニル環と共重合して電子親和力を高める、もうひとつの芳香族複素環です 23。広いバンドギャップを持つポリマーおよびコポリマーを含む1,3,4-オキサジアゾールはしばしば電子移動材料として使用され、バンドギャップが狭く可視光を発光するものはPLEDに使用されます。一方、第三アミンとその誘導体は、正孔輸送ポリマーとして使用されます。ポリ(9-ビニルカルバゾール)(PVK)(182605)は、優れた光導電性材料です。これは、ペリレンやリン光ドーパントなど、他の発光材料に対するバンドギャップの広いホストとしてよく知られています。

水溶性LEP

第四アンモニウムやスルホン酸塩などのイオン性基を柔軟な結合鎖を介して共役ポリマーに結合させると、水またはメタノールに可溶化できます。スルホナート置換ポリチオフェンは、水中で自己ドーピング可能であり、ドーピングについて感知可能なルミネセンスを呈しません。スルホン化したPPV(659894)、PPP、およびPFは、希薄水溶液中で強いPLを示し 24,25、発光色はスルホナート基を持たない類似ポリマーと似ています。これらの水溶性発光ポリマーは、メチルビオロゲン (856177)のような電子受容体によってPLを高感度でクエンチングするため、バイオセンシング用として研究されてきました。

結論として、LEPは次のような特徴を備えています。(1)105/cmに達する高い吸収係数、(2)高いPL効率(固体薄膜中の青色および緑色発光ポリマーで、50 %を超える量子効率がしばしば得られていることによる)、および (3)大きなストークス・

シフト(そのため、PL発光に対する自己吸収がほとんど見られない)。ポリマー合成は、これらの特性を調整するのに都合のよいツールを提供します。図3に、可視スペクトル全体を包含する一連のLEPを示します。LEPは、センサー、フレキシブルLEDディスプレイおよび照明装置、光励起レーザーなど、広範囲の重要な用途を実現します。ポリマーダイオードレーザーも潜在的な用途です。LEPは、環境中の酸素、湿気、および紫外線の影響を受けやすいために何らかの制限を受け、いくつかの製品は今後とも商品化できない可能性があることに注意することが重要です。

1.2

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

0.0

400 500 600 700 800

Wavelength (nm)

Lig

ht

Inte

nsi

ty (

a.u

.)

図3. 代表的なLEPの膜エレクトロルミネセンススペクトルピーク位置は、左から右へ (7)、(12)、(4)、(3)、(2)です。

参考文献:

(1) Handbook of Conducting Polymers, 2nd ed.; Skotheim, T.A.; Elsenbaumer, R. L.; Reynolds, J. R., Eds. Marcel Dekker: New York, 1998. (2) Akcelrud, L. Prog. Polym. Sci. 2003, 28, 875. (3) McQuade, D.T.; Pullen, A. E.; Swager, T. M. Chem. Rev. 2000, 100, 2537. (4) Argun, A.; Aubert, P. H.; Thompson, B. C.; Schwendeman, I.; Gaupp, C. L.; Hwang, J.; Pinto, N. J.; Tanner, D. B.; MacDiarmid, A. G.; Reynolds. J. R. Chem. Mater. 2004, 16, 4401. (5) Pei, Q.; Inganas, O. Adv. Mater. 1992, 4, 277. (6) Wudl, F.; Srdanov, G. United States Patent 5,189,136, 1993. (7) Kim, S. T.; Hwang, D. H.; Li, X. C.; Grüner, J.; Friend, R. H.; Holmes, A. B., Shim, H. K. Adv Mater 1996, 8, 979. (8) Spreitzer, H.; Becker, H.; Kluge, E.; Kreuder, W.; Schenk, H.; Demandt, R.; Schoo, H. Adv. Mater. 1998, 10, 1340–1343. (9) Johansson, D. M.; Srdanov, G.; Yu, G.; Theander, M.; Inganäs, O.; Andersson, M. Macromolecules 2000, 33, 2525. (10) Becker, H.; Spreitzer, H.; Ibrom, K.; Kreuder, W. Macromolecules 1999, 32, 4925. (11) Kraft, A.; Grimsdale, A. C.; Holmes, A. B. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 402. (12) Hu, B.; Karasz, F. J. Appl. Phys. 2003, 93, 1995. (13) Montali, A.; Smith, P.; Weder, C. Synth. Met. 1998, 97, 123. (14) Rehahn, M.; Schlüter, A.-D.; Wegner, G. Makromol. Chem. 1990, 191, 1991. (15) Yang, Y.; Pei, Q.; Heeger, A. J. J. Appl. Phys. 1996, 79, 934. (16) Fukuda, M.; Sawada, K.; Yoshino, K. J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 1993, 31, 2465. (17) Pei, Q.; Yang, Y. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 7416. (18) Inbasekaran, M.; Woo, E.; Wu, W. S.; Bernius, M.; Wujkowski, L. Synth. Met. 2000, 111, 397. (19) Bernius, M. T.; Inbasekaran, M.; Woo, E.; Wu, W.; Wujkowski, L. J. Mater. Sci.: Mater. Electron. 2000, 11, 111. (20) Scherf, U. J. Mater Chem. 1999, 9, 1853. (21) Andersson, M. R.; Berggren, M.; Inganäs, O.; Gustafsson, G.; Gustafsson-Carlberg, J. C.; Selse, D.; Hjertberg, T.; Wennerström, O. Macromolecules 1995, 28, 7525. (22) Wang, Y. Z.; Epstein, A. J. Acc. Chem. Res. 1999, 32, 217. (23) Pei, Q.; Yang, Y. Chem. Mater. 1995, 7, 1568. (24) Huang, F.; Wu, H. B.; Wang, D.; Yang W, Cao, Y. Chem. Mater. 2004, 16, 708–716 (25) Chen, L.; McBranch, D. W.; Wang, H.; Helgeson, R.; Wudl, F.; Whitten, D. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1999, 96, 12287.

発光ポリマー

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29

Poly[2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene]MEH-PPVlem, nm: 554 (toluene)

H3CO

O

n

Mn~51,000541443-1G 1 gMn~86,000541435-1G 1 gMn~125,000536512-1G 1 g

Poly[2-(2’,5’-bis(2”-ethylhexyloxy)-phenyl)-1,4-phenylenevinylene]BEHP-PPVlem, nm: 489, 524 (fi lm, lit.)476 (toluene)

O O

n

546615-1G 1 g

Poly(2,5-bis(1,4,7,10-tetraoxaundecyl)-1,4-phenylenevinylene)BTEM-PPVlem, nm: 433 (CHCl3) O(CH2CH2O)3CH3

O(CH2CH2O)3CH3

n

644218-1G 1 g

Poly[2,5-bis(3’,7’-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]lem, nm: 548 (toluene)

O

O

n

546518-1G 1 g

Poly[2,5-bisoctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]lem, nm: 548 (CHCl3)

OC8H17

OC8H17

n

555037-1G 1 g

Poly(2,5-dihexyloxy-1,4-phenylenevinylene)lem, nm: 547 (CHCl3)

OC6H13

OC6H13

n

560804-1G 1 g

Poly(2,5-dioctyl-1,4-phenylenevinylene)lem, nm: 490 (CHCl3)

C8H17

C8H17

n

653438-1G 1 g

Poly[2-methoxy-5-(3’,7’-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]MDMO-PPVlem, nm: 550 (toluene)

nH3CO

O

546461-1G 1 g

Poly{[2-[2’,5’-bis(2’’-ethylhexyloxy)phenyl]-1,4-phenylenevinylene]-co-[2-methoxy-5-(2’-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene]}BEHP-co-MEH-PPVlem, nm: 551 (fi lm, lit.)526 (CHCl3)

O O

H3CO

O

mn

570265-1G 1 g

Poly[(m-phenylenevinylene)-alt-(2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-p-phenylenevinylene)]lem, nm: 451 (CHCl3)

H3CO

O

n

594318-1G 1 g

Poly[(p-phenylenevinylene)-alt-(2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-p-phenylenevinylene)]lem, nm: 517 (CHCl3)

H3CO

O

n

594199-1G 1 g

Poly[(o-phenylenevinylene)-alt-(2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-p-phenylenevinylene)]lem, nm:471 (CHCl3)

H3CO

O

n

594083-1G 1 g

Poly[(m-phenylenevinylene)-alt-(2,5-dihexyloxy-p-phenylenevinylene)]lem, nm: 451 (CHCl3)

OC6H13

OC6H13

n

575410-1G 1 g

Poly[tris(2,5-bis(hexyloxy)-1,4-phenylenevinylene)-alt-(1,3-phenylenevinylene)]PTDPVlem, nm: 518 (CHCl3) OC6H13

OC6H13

OC6H13

OC6H13

OC6H13

OC6H13

n

664936-500MG 500 mg

発光ポリマー製品PPV-PFO-共重合体、PFEポリマー、ポリアセチレンなどを含む関連の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicからご覧下さい。

Poly(2,5-di(3,7-dimethyloctyloxy)cyanoterephthalylidene)

NCO

O

O

O

CN

n

646571-250MG 250 mg

Poly(5-(3,7-dimethyloctyloxy)-2-methoxy-cyanoterephthalylidene)

NCOCH3

O

OCH3

O

CN

n

646628-250MG 250 mg

Poly(5-(2-ethylhexyloxy)-2-methoxy-cyanoterephthalylidene)

NCOCH3

OCH3

O

CN

n

O

646644-250MG 250 mg

Poly(2,5-di(hexyloxy)-cyanoterephthalylidene)

NCOC6H13

OC6H13

OC6H13

CN

n

OC6H13

646652-250MG 250 mg

Poly(2,5-di(octyloxy)-cyanoterephthalylidene)

NCOC8H17

OC8H17

OC8H17

CN

n

OC8H17

646660-250MG 250 mg

ポリフェニレンビニレン(PPV)ポリマーおよび共重合体

シアノ -ポリフェニレンビニレン(CN-PPV)ポリマー

発光ポリマー

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gm

a-

al

dr

ic

h.

co

m/

ja

pa

n

30

Poly[9,9-bis-(2-ethylhexyl)-9H-fluorene-2,7-diyl]lem, nm: 409 (CHCl3) n

571032-1G 1 g

Poly(9,9-di-n-hexylfluorenyl-2,7-diyl)lem, nm: 414 (CHCl3) C6H13 C6H13

n

571040-1G 1 g

Poly(9,9-di-n-octylfluorenyl-2,7-diyl)lem, nm: 417 (CHCl3) C8H17 C8H17

n

571652-500MG 500 mg

Poly(9,9-di-n-dodecylfluorenyl-2,7-diyl)

C12H25 C12H25

n

571660-500MG 500 mg

Poly(9,9-N-dihexyl-2,7-fluorene-alt-9-phenyl-3,6-carbazole)lem, nm: 398 (CHCl3)

C6H13 C6H13 N n

678791-250MG 250 mg

Poly(9,9-N-dihexyl-2,7-fluorene-alt-2,5-demethyl-1,4-phenylene)

C6H13 C6H13

n

H3C

CH3

685690-500MG 500 mg

Poly[(9,9-dihexylfluoren-2,7-diyl)-alt-(9-ethylcarbazol-2,7-diyl)]

C6H13 C6H13 NC2H5

n m

685704-500MG 500 mg

Poly[(9,9-Dihexylfluoren-2,7-diyl)-alt-(anthracen-9,10-diyl)]

C6H13 C6H13n m

685712-500MG 500 mg

4,4’-Bis[(4-bromophenyl)phenylamino]biphenyl, 97%

N NBr Br

656674-1G 1 g

4,4’-Dibromotriphenylamine, 96%BrNBr

679917-1G 1 g679917-5G 5 g

5,5’-Dibromo-2,2’-bithiophene, 99%

SS BrBr

515493-1G 1 g515493-5G 5 g

Poly(2,5-bis(3-sulfonatopropoxy)-1,4-phenylene, disodium salt-alt-1,4-phenylene)(-)PPPlem, nm: 424 (H2O)

O

O

SO3

SO3

Na

Na

n

659223-500MG 500 mg

Poly[5-methoxy-2-(3-sulfopropoxy)-1,4-phenylenevinylene] potassium salt solutionMPS-PPVlem, nm: 525 (H2O)

H3CO

O

n

SO3 K

659894-10ML 10 mL

Poly{[2,5-bis(2-(N,N-diethylamino)ethoxy)-1,4-phenylene]-alt-1,4-phenylene}lem, nm: 401 (CHCl3)

n

O

ON

H3C

H3C

NH3C

H3C

678066-300MG 300 mg

Poly[(2,5-bis(2-(N,N-diethylammonium bromide)ethoxy)-1,4-phenylene)-alt-1,4-phenylene]lem, nm: 421 (DMSO)

n

O

ONH

H3C

H3C

NHH3C

H3C Br

Br

678074-300MG 300 mg

LEP用モノマーPPV、CN-PPV、およびPFOポリマーを合成するためのモノマーも取り扱っております。関連の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

ポリフルオレン(PFO)ポリマーおよびモノマー(抜粋)

水溶性LEP

発光ポリマー

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Material Matters™ Vol.2、No.2「水素貯蔵材料」に関するお詫びと訂正アンモニアボランからの水素放出に関する最近の成果A. Karkamkar, C. Aardahl, T. AutreyPacific Northwest National Laboratory

触媒によるジメチルアミンボランからの水素放出についてのMannersらのグループによる論文が、参考文献より記載もれしていました。9ページの参考文献17を、以下の通りに訂正いたします。 (17)(a) Jaska, C. A., Temple, K., Lough, A. J., Manners, I. Chem. Comm. 2001, 962. (b) Jaska, C. A., Temple, K., Lough, A. J., Manners, I. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 9424.

OLED基板および電極用材料インジウムスズ酸化物(ITO)被覆基板

製品番号 *製品概要 表面抵抗率, W/®

700177 ITO coated PET(150×150×0.2 mm) ≦10

702811 ITO coated PET(150×150×0.2 mm) 60–100

639311 ITO coated PET sheet 35

668559 ITO coated PET sheet 45

639303 ITO coated PET sheet 60

639281 ITO coated PET sheet 100

578274 ITO coated glass slide 8–12

636916 ITO coated glass slide 15–25

636908 ITO coated glass slide 30–60

576352 ITO coated glass sheet 70–100

576360 ITO coated aluminosilicate glass slide 5–15

*PET = ポリ(エチレンテレフタレート)、スライド = 25×75×1.1mm、シート = 1ft×1ft×5mil(305mm×305mm×0.13mm)

電極材料

製品番号 製品概要 純度

669431 Lithium fluoride, precipitated 99.995%

255645 Cesium carbonate 99.995%

203815 Molybdenum(VI) oxide 99.990%

441872 Calcium, distilled 99.995%

433705 Aluminum, evaporation slug 99.999%

373249 Silver, evaporation slug 99.99%

シグマ アルドリッチでは、この他にも多くのエレクトロニクスグレード酸化物および金属を販売しています。関連の全製品リストは、sigma-aldrich.co.jp/aldrich/org-electronicをご覧下さい。

発光ポリマー

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既刊特集内容(カッコ内は号数)

●ナノ材料の応用最前線(2-1)●水素貯蔵材料(2-2)●有機エレクトロニクス(2-3)●先端金属および合金(2-4)●3次元ナノおよびマイクロ構造(3-1)●ナノスケール表面改質(3-2)●生体材料(3-3)

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TM

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SAJ1074 2009.2

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