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土の強さ 土が外力を受けると土の中にせん断応力([kN/m 2 ]) が生じて,その中でせん断抵抗を越える箇所があると, 図に示したようなせん断破壊が起こる。破壊する面をべり面といい,せん断応力に抵抗する最大のせん断抵抗 せん断強さ(s[kN/m 2 ])という。 すべ り 面 せん 断 応 力 せん 断 強 さ

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土の強さ

土が外力を受けると土の中にせん断応力([kN/m2])

が生じて,その中でせん断抵抗を越える箇所があると,図に示したようなせん断破壊が起こる。破壊する面をすべり面といい,せん断応力に抵抗する最大のせん断抵抗をせん断強さ(s[kN/m2])という。

すべ り 面

せん 断 応 力

せん 断 強 さ

土のせん断強さとは,現地から採取した土を,図(a)に示したような円柱に成

形し,一定の応力で上から抑えたまま水平方向へ押してやると,垂直応力 と,円柱の試料が破壊したときの水平方向のせん断力をSf とすると,次のような関係を得る。

PA

, f Sf

A

(a) (b)

P

P

SS

A

せん断面

垂直応力 (kN /m 2)

せん

断強

さ s(kN/m

2)

c

tan

s=c+tan

垂直応力に関係しない

せん断抵抗,粘着力という

垂直応力に比例する

せん断抵抗は

内部摩擦角乾いた砂 c=0

PA

, f Sf

A

ここに,A は試料の断面積,f はせん断応力である。f

は垂直応力が働いているときの最大せん断抵抗と等しいので,せん断強さs となる。

(a) (b)

P

P

SS

A

せん断面

垂直応力 (kN /m 2)

せん

断強

さ s(kN/m

2)

c

tan

s=c+tan

垂直応力に関係しない

せん断抵抗,粘着力という

垂直応力に比例する

せん断抵抗は

内部摩擦角乾いた砂 c=0

図(b)には,垂直応力の違う三つの試料に対して,水平方向のせん断力を加えて破壊したときのせん断強さと垂直応力の関係を示した(太い実線)。一つの直線で示されることが分かる。図中に示したように切片をc,勾配の角度をとすると,この関係は,

s c tan (kN/m2 )

(a) (b)

P

P

SS

A

せん断面

垂直応力 (kN /m 2)

せん

断強

さ s(kN/m

2)

c

tan

s=c+tan

垂直応力に関係しない

せん断抵抗,粘着力という

垂直応力に比例する

せん断抵抗は

内部摩擦角乾いた砂 c=0

この式がクーロン(Coulomb)の式と呼ばれるもので,ここに示す実線をクーロンの破壊線という。その意味するところは図(b)中に示してある。また,c, を土の強度定数と呼ぶ。土の種類によるこの関係は,図(b)の実線が一般的な土で,破線で示したのが乾いた砂の場合,切片から横軸に平行に引いた線と同じように=0となる直線が飽和した粘土を急速に破壊したときに表われる結果である。この急速の意味は後述する。このように,土は種類によってもせん断強さは異なり,同じ土であっても,含水比,密度,外力の作用している状態や圧密の進行状態により挙動は異なる。

s c tan (kN/m2 )

普通土 乾燥砂 粘土

P

P

SS

A

せん断面

垂直応力 (kN /m 2)

せん

断強

さ s(kN/m

2)

c

tan

s=c+tan

垂直応力に関係しない

せん断抵抗,粘着力という

垂直応力に比例する

せん断抵抗は

内部摩擦角乾いた砂 c=0

固体の摩擦とCoulombの破壊基準

図に傾斜した斜面上の物体の滑動について考えてみる。図中に示した記号で分かるように、物体の重量が Wで、その成分を斜面に垂直な方向と水平な方向に分力したのが、TとNである。また、斜面と物体間に生じる摩擦角を する。

T

W

N

F

Pn

Pta b

これらの関係から、それぞれの成分を置き換えると、

T W sin, N W cosTN

W sinW cos

tan

T

W

N

F

Pn

Pta b

なら安定。なら物体は滑りだすであろう。この角度が臨界傾斜角(Critical slope)になる。しかし、実際には斜面と物体間には摩擦角が存在するので、物体間の摩擦力Fは、

T N tan F N tanF N tan W cos tan

となり、摩擦力は垂直荷重に比例することがわかる。

T

W

N

F

PnPt

a b

ここで、この斜面と物体間の間に粘着力が存在する場合は、

T F W cos tan cW sin W cos tan c

sin cos tan cW

cossincos

c

W

sin cos cos sin cW

cos

sin cos cos sin cW

cos

sin( ) cW

cos

sin1 cW

cos

T

W

N

F

PnPt

a b

は右辺分だけ

大きくなることが分かる。

Pt Pn tan

Pt Pn tan c となり

Pt , Pn とすれば,

c tan と、Coulombの破壊基準となる。

T

W

N

F

PnPt

a b粘性土のように粘着力がある場合は、

さて、これらの関係を図の下図のようなせん断面に置き換えると、砂のような粘着力のない土では、

せん断強度に影響する因子

砂 砂は粒子間のかみ合いによって生じる。よって、粒子の形状、表面粗度、粒度分布が影響。シルト シルトの性質は砂に近いもので、粘土のような

粘着力は持っていない。しかし、粒径が砂と粘土の中間にあるため、せん断挙動は砂と粘土の中間的な性状となる。粘土 粒径が細かく、比表面積が大きい。粘土鉱物特

有の表面に電気化学的な力もあり、水分子やイオンを吸着して粒子間に粘着力がある。摩擦抵抗も存在すると考えられているが、飽和粘土では透水性が小さいために外力が加わっても水の移動がなく、 となって一定の強度を示す。

( uw )

せん断試験

現在,室内試験でよく用いられているのが,一面せん断試験,三軸圧縮試験と一軸圧縮試験である。一面せん断試験は図(a)で示したような形でせん断強さを求める。その他の試験機と合わせて,図に応力状態とせん断の仕方を示す。

s s

qu

qu

(a) (b) (c)

一面せん断試験垂直応力を測定

せん断箱試料がある

錘を乗せる

水平応力(せん断力)を測定

図(b)は,三軸圧縮試験の応力状態を示している。いろいろな応力状態で試験が可能であるが,一般的な方法は,まず,円柱(直径5cm,高さ10cm)の供試体を薄いゴム(ゴムスリーブと呼ばれる)で包み,三軸室(チャンバー)に置き水没させて,3の応力で試料全体を圧縮する。この応力はある地盤内のある深さを再現していると考える(厳密には異なる)。そして,徐々に垂直応力を増して(3+=1),供試体を破壊する試験である。

s s

qu

qu

(a) (b) (c)

三軸圧縮試験チャンバーには水が入っており,その上に空気圧をかける

s s

qu

qu

3

1= 3 +

3

3

空気圧

三軸圧縮試験

また,図(c)は一軸圧縮試験を示す。この試験は大気中で行うので,試料を拘束する圧力はない(3=0)。

s s

qu

qu

(a)

(b) (c)

一軸圧縮試験

台座が上がり試料を潰していく

さて,せん断試験は現地の排水状態も再現する必要がある。特に,排水状態を制御しやすいのが,三軸圧縮試験機である。この排水条件について示すと,圧密排水試験(Consolidation-Drainage TestからCD試験という)は,

せん断時に過剰間隙水圧を発生させないようにする試験で,せん断する時間をじっくり長く必要とする。言い換えれば,構造物を地盤の上に築造してから長時間が経過し,地盤は圧密を完了し,過剰間隙水圧は消散した状態の安定性を検討するときに用いられる。つまり土粒子間には有効応力だけが作用していると考える。強度定数はcd,dと表わす。

次ぎに,圧密非排水試験(Consolidation-Undrainage TestからCU試験という)がある。この状態は構造物を徐々に構築するときを想像する。まず,第一段階で圧密させて,次の段階へ進むといった具合で,強度定数はccu,cuと表わす。このとき,過剰間隙水圧を計測しながらせん断試験を行うと有効応力(‘=-u)が求められるので,CD試験と同じことになり,せん断に時間がかからない分だけ便利であるからCD試験の代わりに用いられることが多い(CU 試験という)。このときの強度定数はc’,‘と表わす。よってクーロンの式は次のようになる。

s c tan (kN/m2 )

非圧密非排水試験(Unconsolidation-Undrainage TestからUU試験という)は,

圧密も排水もさせずにせん断するもので,構造物の急速な載荷直後の安定性の検討に用いられる。図(c)の一軸圧縮試験もこの条件と一致する。強度定数はcu,uで示され,先にも述べたが飽和粘土はu=0となる。

さて,三軸圧縮試験は同じ土で同じ状態(含水比や密度)の供試体を3つ以上用意して,3の異なる状態で破壊試験を実施する。得られたそれぞれの3,1から(1-3)/2を半径とする円を書く,これがモール(Mohr)の応力円と呼ばれるものである(図(b))。

1

f2f

s or

3

c

(f,f)

破壊時のモールの応力

円の共通接線,つまり

クーロンの破壊線

すべり面の方向

破壊面の応力

(,)

3 1

(a) (b)

この数個の応力円に共通の接線を引くことによって強度定数が得られる。三軸圧縮試験では図(a)に示した状態となる。しかし,破壊面が明らかに観測できないので,数個の供試体によって応力円を描いて強度定数を求めるのである。この応力円は便利なもので,供試体内の任意の角に対するとの軌跡を表わしている。したがって,1と3が分かれば供試体内部のあらゆる面におけるとを知ることができる。

1

f2f

s or

3

c

(f,f)

破壊時のモールの応力

円の共通接線,つまり

クーロンの破壊線

すべり面の方向

破壊面の応力

(,)

3 1(a) (b)

なお,図(b)の破壊線に接するまでは,試料は破壊されないということで,この結果と同一試料なら,ある3から1を増すに連れて円は大きくなるが描かれる円が破壊線に接するまでは供試体が壊れないことを意味する。

1

f2f

s or

3

c

(f,f)

破壊時のモールの応力

円の共通接線,つまり

クーロンの破壊線

すべり面の方向

破壊面の応力

(,)

3 1

(a) (b)

1

(,)

2s or

3

(1+3)/2 (1-3)cos2/2

(1-3)s in2/2

1

f

( f,f)

2f

s or

3

=c+t a n

c

上図から,それぞれの記号を数式で示すと,角fは破壊線と接したときのもので,それ以外の任意の角をで表わすと,

1 3

21 3

2cos 2,

1 3

2sin2

1

(,)

2s or

3

(1+3)/2 (1-3)cos2/2

(1-3)s in2/2

1

f

( f,f)

2f

s or

3

=c+t a n

c

となり,破壊線に接した点は,にfを代入すればよい。よって,c,は次のように求められる。

1 3

21 3

2cos 2,

1 3

2sin2

2 f 90, c f 3

2sec

f 3

2tan

1=qu

s or

3=0

c

c=qu/2

一軸圧縮試験では,大気中でUU試験を行うことと同じであるから,上図のような応力円を描くことができる。よって,せん断強さs は,

s cu qu

2これを三軸圧縮試験で実施すると,下図の結果を得る。

s or

'1f 1fc

u

c+u=3 1f+u=1

cu

有効応力全応力

uf

'c

側圧に関係なく,cuの値は一定である。非圧密非排水状態では,はuとなるので,有効応力は変化しない。間隙水圧を計測して有効応力に基づいた応力円を描くと,いつも同じ応力円を描くことになる。つまり,破壊時の軸差応力(1-3,主応力差ともいう)が側圧3に関係なく一定となるので,せん断強さsは,一軸圧縮試験の結果と同じ結果を得る。

s or

'1f 1fcu

c+u=3 1f+u=1

cu

有効応力全応力

uf

'c

s cu 1 f c

21 3

2

1 f c2

砂質土と粘性土の性質の違い

砂をせん断するときに密な砂では,せん断面に沿って砂粒子が移動するときに,他の砂粒子を乗り越えることになり,体積が膨張する。ゆるい砂の場合には逆に体積が減少する。このような体積変化の現象をダイレイタンシーと言う。

密な砂

中位の砂

ゆるい砂 1

-3

(+)

(-)

体積

変化

限界間隙比

正のダイレイタンシー

負のダイレイタンシー

密→緩く

緩く→密

(+)

(-)

軸ひずみ

砂質土と粘性土の性質の違い

中間の密度の砂がせん断破壊を起こす時に,初期の間隙比にほぼ等しい状態で生じるときがある。この間隙比のことを限界間隙比と呼んでいる。

密な砂

中位の砂

ゆるい砂

1-3

(+)

(-)

体積変化

限界間隙比

正のダイレイタンシー

負のダイレイタンシー

密→緩く

緩く→密

(+)

(-)

軸ひずみ

砂の液状化 (砂の流動化)とは,

水で飽和してゆるく堆積した砂が間隙水を排水するよりもはやくせん断されたとき(この状態が地震である),加わった力は土粒子に伝達されることなく,間隙水が負担することになり,せん断抵抗がなくなった状態になる砂の挙動をいう。

自然状態にある粘土が乱されると,せん断強さが低下する。この乱れの程度を鋭敏比と呼んで次式で表わされる(下図)。杭を地盤に打ち込んだときの杭周辺の土や軟弱な地盤上での工事で重機が往来して乱されたときに考慮する必要がある。St=4〜8を鋭敏な土,8以上を超鋭敏な土と呼ぶ。一方,練返した粘土が時間の経過とともに回復してい

くことがある。この性質をシキソトロピーという。

St qu

qur

15%

kgf/cm 2

qu

qur

圧縮応力

圧縮ひずみ

乱さない土

練返した土

簡単な問題

せん断試験を行って,=30度,c= 78.5 kN/m2

という結果を得た。問題とする地盤のある面に= 784.8 kN/m2と= 490.5 kN/m2が作用していると考えると,この面のせん断強さsはいくらか。また,破壊の有無はどうか検討せよ。

簡単な問題

せん断試験を行って,=30度,c= 78.5 kN/m2

という結果を得た。問題とする地盤のある面に= 784.8 kN/m2と= 490.5 kN/m2が作用していると考えると,この面のせん断強さsはいくらか。また,破壊の有無はどうか検討せよ。

s c tan 78.5 784.8tan30 531.6 kN/m2 490.5 kN/m2

Okay 破壊しない

図に示したように掘削(土を掘ること)したい。すべり面は=60度のところへ仮定した。間隙水圧u=5.89 kN/m2

が存在するときと,u=0のときの破壊の有無を調べよ。

4m

x

60 °

P

W

T

S

a

b

c

t=15.7kN /m3

'=30度

c'=11.8kN /m 2

4m

x

60 °

P

W

T

S

a

b

c

t=15.7kN /m 3

'=30度

c'=11.8kN /m 2

1) u=5.89 kN/m2が存在するときは,

x 4 tan30 2.31 m

であるから,奥行き1 m当たりの重量Wは,

W 0.5 4 m 4 m tan30 1 m 15.7 kN/m3 72.5 kN

図に示したように掘削(土を掘ること)したい。すべり面は=60度のところへ仮定した。間隙水圧u=5.89 kN/m2

が存在するときと,u=0のときの破壊の有無を調べよ。

すべり面に垂直な荷重Pは,

P W cos 72.5 kN cos60 36.3 kN

すべり面に沿った力Tは,

T W sin 72.5 kN sin60 62.8 kN

破壊面bcの長さは,

bc 4

sin60 4.62 m, A 4.62 m 1 m 4.62 m2

PA

36.34.62

7.85 kN/m2 , TA

62.84.62

13.6 kN/m2

よって

u 7.85 5.89 1.96 kN/m2

s c tan 11.8 1.96tan30 12.9 kN/m2 13.6 kN/m2

2) u=0のときは,

s 11 .8 7.85 tan 30 16.3 kN/m 2 13.6 kN/m 2

有効応力は,

せん断強さは