#東洋大学産業組織論 i 技術と研究開発競争 (13/15)

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東東東東 東東東東東 : 東東東東東東東東東 I (13/15) 東東東

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#東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15) の講義資料です。

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Page 1: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

東洋大学 産業組織論 : 技術と研究開発競争 I

(13/15)

原泰史

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今日のポイント• 練習問題のこたえあわせ• 研究開発とは?

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講義スケジュール ( 前期 , 前半 )

• 1 . 4 / 8 : オリエンテーション ( 産業組織論ってなんだろう? )2 . 4 / 15 : 経済学で使う数学を振り返る & 産業組織分析の基礎 I

• ( 泉田・柳川 pp. 22 - 28、長岡・平尾 pp. 1-16 )

• 3. 4 / 22 : 経済学で使う数学を振り返る & 産業組織分析の基礎 II • ( 泉田・柳川 pp. 28 - 44、長岡・平尾 pp. 1-16 )

• 4 . 4 / 29 : 独占企業の価格設定 I • ( 泉田・柳川 pp. 45 - 54、長岡・平尾 pp. 43-68 )

• 5 . 5 / 13 : 独占企業の価格決定 II• ( 泉田・柳川 pp. 54 - 68、長岡・平尾 pp. 43-68 )

• 6 . 5 / 20 : 自然独占と規制 I • ( 泉田・柳川 pp. 69 - 76、長岡・平尾 pp. 247-272 )

• 7 . 5 / 27 : 自然独占と規制 II • ( 泉田・柳川 pp. 77 - 87、長岡・平尾 pp. 247-272 )

• 8 . 6 / 3 : 中間テスト

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講義スケジュール ( 前期 , 後半 )

• 9. 6 / 10 : 参入の経済効果 I ( 泉田・柳川 pp. 87 - 96 )10 . 6 / 17 : 参入の経済効果 II ( 泉田・柳川 pp. 96 - 106 )11 . 6 / 24 : 休講 ( 学会での研究発表のため )12 . 7 / 1 : ゲーム理論 ( 泉田・柳川 pp.107-121)

• 21:20 の便でアブダビにいくので , 19:50-21:20 のクラスのみ補講実施 (8/5)

• 13 . 7 / 8 : 技術進歩と研究開発競争 I ( 長岡・平尾 pp. 187 - 198 )14 . 7 / 15 : 技術進歩と研究開発競争 II ( 長岡・平尾 pp. 199 - 206 )15 . 7 / 22 : 期末試験

• 公式な試験日は 7/29 ですが、国際学会 @ ドイツ に出席する必要があるため講義内に期末試験を行います .

• 16. 8/5 : 補講 (2 部のみ ; 19:50-21:20)• 期末試験の解説を行う予定なので , 1 部のひとで興味のある方は参加してください

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教科書• 泉田・柳川 ( 2010 )

『プラクティカル産業組織論』有斐閣アルマ

• 長岡・平尾 ( 2013 )『産業組織の経済学 第二版』日本評論社

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今日の内容• 前半 :

• 練習問題の答え合わせ• レポートについて• 研究開発とは

• 後半 : • 研究と技術開発

• 長岡・平尾 pp. 199 - 206

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レポートについて

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レポートの内容• 1.テーマ : 独占 / 寡占企業の市場調査レポート

• 自分の身近にある独占 / 寡占企業について調査し、• (1) 何故独占や寡占状態にあるのか • (2) 企業が属する市場の経済的な規模 , 成長率• (3) どのような財 / サービスが提供されているのか• (4) どのようにして価格が設定されているのか• (5) 独占によってどのようなメリット / デメリットが供給者 / 需要者それぞれに発生

しているのかまとめなさい .

• 2 .提出期間• 《必須》 2014 年  7 月 8 日(火) ~  7 月 15 日(火) 14 : 40 〆切• ToyoNet Ace 経由で提出

• 3 .対象者と配点• 対象 : 産業組織論 履修者• 配点 : max 25 点

Page 9: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

レポートの内容• ( 2 ) 形式と提出

• Word または LaTeX 形式で作成し , Toyonet ACE にアップロードすること。

メールや LINE では提出を受け付けない

• ただし , 以下の様式を守ること• A4 長辺縦型,横書き,MSP 明朝 10.5pt,行間 1

行,余白 上下左右 25mm,頁番号 中央下部• 書籍を引用した場合、それを明記すること

• (3) 文字数の目安と枚数最低 5,000 字以上 (英字 2,500 word 以上 , なお 5,000/2,500word 以下は採点しない )

• レポートの記述様式 [おすすめ ]• (1) はじめに• (2) [取り上げる企業名 ]• (3) [ 企業 ] が属する産業の詳細• (4) なぜ [ 企業 ] は独占 , 寡占を維持できているのか

• (5) [ 企業 ] の価格設定方法• (6) [ 企業 ] の独占による消費者へ

の影響• (7) おわりに

(8) 参考文献

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練習問題• 男性 ( プレイヤー 1) と女性 ( プレイヤー

2) がデートの行き先として、ビアガーデンか映画を選ぶかの選択肢をもっている。女性は映画を好み、男性はビアガーデンを好む。

• しかし、デートのため二人にとって別々にそれぞれが好きなものを観るより、一緒に出かけることのほうが大切である。

• このとき、利得行列は右のように与えられる。

• 男性と女性が相談することなしに相手と独立してゲームの行き先を選択しなければならないときのナッシュ均衡を求めなさい。

ビアガーデン

映画

ビアガーデン

2,1 -1,-1

映画 -1,-1 1,2

プレイヤー 2

プレ

イヤ

ー1

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練習問題の答え• ナッシュ均衡 1: ( ビヤガーデン , ビヤガーデン )

• プレイヤー 2 がビヤガーデンを選ぶとする

• このとき、プレイヤー 1 の利得は• 映画を選ぶと -1• ビヤガーデンを選ぶと 2よってプレイヤー 1 はビヤガーデンを選択する

• プレイヤー 1 がビヤガーデンを選ぶとする

• このとき、プレイヤー 2 の利得は• 映画を選ぶと -1• ビヤガーデンを選ぶと 2よってプレイヤー 2 はビヤガーデンを選択する

これより、 ( ビヤガーデン , ビヤガーデン ) はナッシュ均衡となる

ビアガーデン

映画

ビアガーデン

2,1 -1,-1

映画 -1,-1 1,2

プレイヤー 2

プレ

イヤ

ー1

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練習問題の答え•ナッシュ均衡 2: (映画 , 映画 )

• プレイヤー 2 が映画を選ぶとする• このとき、プレイヤー 1 の利得は

• 映画を選ぶと -1• ビヤガーデンを選ぶと 1よってプレイヤー 1 は映画を選択する

• プレイヤー 1 が映画を選ぶとする• このとき、プレイヤー 2 の利得は

• 映画を選ぶと 2• ビヤガーデンを選ぶと -1よってプレイヤー 2 は映画を選択する

これより、 (映画 , 映画 ) はナッシュ均衡となる

ビアガーデン

映画

ビアガーデン

2,1 -1,-1

映画 -1,-1 1,2

プレイヤー 2

プレ

イヤ

ー1

Page 13: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

練習問題の答え• ナッシュ均衡ではないパターン 1: ( ビ

アガーデン , 映画 )• プレイヤー 2 が映画を選ぶとする

• このとき、プレイヤー 1 の利得は• ビアガーデンを選択した場合 -1• 映画を選択した場合 1となり、ビアガーデンは選択されない .

• プレイヤー 1 がビアガーデンを選ぶとする

• このとき , プレイヤー 2 の利得は• ビアガーデンを選択した場合 1• 映画を選択した場合 -1となり、プレイヤー 2 はビアガーデンを選択し映画は選択されない .

よって , ( ビアガーデン , 映画 ) はナッシュ均衡ではない .

ビアガーデン

映画

ビアガーデン

2,1 -1,-1

映画 -1,-1 1,2

プレイヤー 2

プレ

イヤ

ー1

Page 14: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

練習問題の答え• ナッシュ均衡ではないパターン 2: (映画 ,

ビアガーデン )• プレイヤー 2 がビアガーデンを選ぶとする

• このとき、プレイヤー 1 の利得は• ビアガーデンを選択した場合 2• 映画を選択した場合 -1 となり、プレイヤー 1 は ビアガーデンを選択したほうが利得が高くなるので映画は選択されない .

• プレイヤー 1 が映画を選ぶとする• このとき , プレイヤー 2 の利得は

• ビアガーデンを選択した場合 -1• 映画を選択した場合 2となり、プレイヤー 2 は映画を選択したほうが利得が高くなるのでビアガーデンは選択されない .

よって , (映画 , ビアガーデン ) はナッシュ均衡ではない .

ビアガーデン

映画

ビアガーデン

2,1 -1,-1

映画 -1,-1 1,2

プレイヤー 2

プレ

イヤ

ー1

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研究開発 (1)

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二種類のイノベーション• プロダクト・イノベーション

• 生産物に係わるイノベーション

• プロセス・イノベーション• 生産技術に係わるイノベーション

•多くの場合、プロダクト・イノベーションの後、プロセス・イノベーションによる精錬化が行われる

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プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションの関係• 産業発展の初期

• 製品概念は不安定で、熟練に依存して様々な商品が提案される

• プロダクト・イノベーションが多く発生する

• 生産工程は各人の技能に依存したバッチ生産

• 産業の中期• 特定の製品概念が市場で有力となる : 「ドミナントデザイン」

• ドミナントデザインをベースに、それを効率よく生産するためのプロセスイノベーションが実施される

• プロダクト・イノベーションからプロセス・イノベーションへ主眼が移行し、大量生産システムが確立される 時間

イノベーションの頻度

プロダクト・イノベーション

プロセス・イノベーション

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(Abernathey, 1979) – Productivity Dilemma• プロダクトイノベーションとプロセス・イノベーションの進展に

よって、大規模かつ効率的な生産が実現され、生産性は向上する

•一方、技術選択の幅は狭まり、工程についても製品についても大きな革新は起こりにくく成る

• 生産性の向上とイノベーションとの間にはトレードオフの関係がある

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技術戦略• 独自の技術力 ( 経営資源 ) を基板とした競争優位の構築を目指

す際の研究開発活動の指針• プロダクト・イノベーションを優先するべきか、プロセス・イノベーショ

ンを優先するべきか。• 研究人材をどのように育成するか。• 研究テーマの優先順位をどのように設定するか。• 技術分野の違いによる技術の重要度の違いを見極める方法。• 知的財産権をどのように管理すべきか。

Page 20: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

技術戦略の重要性•事例 1: NEC

• 通信機事業専門の企業から、コンピュータや半導体・ IC の技術開発を行い大企業に成長した

•事例 2: キヤノン• カメラの開発・製造が主だったが、技術開発の結果複写機、プリンター、

半導体製造など多角化に成功•事例 3: シャープ

• シロモノ家電から、電卓、半導体や液晶ディスプレイに多角化• 「世界の亀山ブランド」

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技術と競争優位• 独自の技術を「経営資源」の

ひとつとして確保する• 技術の優位性と競争優位性は

イコールではない• 技術的に優れていても、社会的

に受け入れられなければイノベーションとはならない

• 技術力を基盤とした競争優位の確立こそ重要

Xerox Alto

Apple I

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Intermission

• レポート• 企業と市場の調査

• 期末試験 : 7/22• 定期試験時にヨーロッパ出張がはいるので、 15回目で実施します。

• 講義資料のアップロード先• Facebook Page

• https://www.facebook.com/toyo.io.2014• SlideShare

• http://www.slideshare.net/yasushihara/presentations• Toyonet-Ace

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成績について• 中間試験 : 25 点 (換算 )• レポート : 25 点• 期末試験 : 50 点

•宿題 : +α 点

の合算点で評価する予定

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テスト対策• 期末試験

• 火 1: 9:20-10:20 [60 分 ] • 火 7: 20:10-21:10 [60 分 ]• 試験範囲

• 教科書• スライド ( いままでに配ったも

の )• 問題の形式

• 持ち込み可

• 数学の問題• 論述式の問題

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研究開発 (2)

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技術進歩と産業の技術革新• 日米の研究開発費比較

• 規模の大きな企業が集中的に研究開発を行う

• 電気・電子・通信機械産業、自動車産業、業務用機械産業、医薬品産業、化学産業などで集中的に投資が行われている

• 医薬品の研究開発投資額は低い

• インターネット・ソフトウェア企業の R&D 投資額は極めて低い

日本企業 研究開発費

対売上比率

武田薬品 4545 29.5

第一三共 1851 21.9

アステラス

1596 16.5

エーザイ 1266 20.0

塩野義 530 23.2

大日本住友

530 20.0

協和発酵キリン

468 11.3

米国企業 研究開発費

対売上比率

ファイザー 8887 15.5

ジョンソンアンドジョンソン

8007 11.3

メルク 6699 21.3

イーライリリー

4959 19.8

ブリストル・マイヤーズスクイブ

4180 16.9

アムジェン 3283 19.6

アボット 3145 8.9

Page 27: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

財としての知識•消費の非競合性

• ある知識を特定の目的に利用することは企業内の他の用途への利用を阻害しない

• 知識の開発と利用には企業レベルで規模の経済が働く• 知識の生産を阻害しないのであれば、知識の利用の価格をゼロにして知識の利用をできるだけ広く行うことが社会効率的

•排除可能性が弱いこと• リバースエンジニアリング• サプライヤーとの技術共有• 得られた知識を公知にすることへのインセンティブ• 技術のスピルオーバー

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技術利用と研究開発へのインセンティブ• 技術の利用へのインセンティブ : 市

場の大きさと競争• 新技術の投入とそれによる市場開拓は企

業に多大な利益をもたらす• プロセス・イノベーションによる生産コ

ストの低下も、プロダクト・イノベーションによる新製品の導入も企業に利潤増加の効果を与える

• 新技術導入から得られる利潤     = v (各消費者の支払い意欲 ) * q ( 企業の当該製品の売上数量 )

• 技術革新からの利益は技術を活用できる市場の規模が大きいほど高くなる

• 企業間競争は技術導入を促す• 先駆的に優れた技術を先んじて導

入することにより、収益性を他社に比べて向上させることができる

• 独占的な企業も、優れた技術を有する後発企業によって独占を失う可能性がある

• Levin (1987)• 市場シェアが高いマーケットほど、積極的にバーコードスキャナーを導入した

• 生産費用を削減する新技術導入の収益性には市場規模も重要な役割を果たす

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技術利用と研究開発へのインセンティブ• 技術の利用へのインセンティブ :

サンクコスト• 企業は新技術と旧技術をどのよう

に使い分けるか• 企業の既存の生産技術 : O• より優れた生産技術 : N• 旧生産技術の導入費用 : IO• 新生産技術の導入費用 : IN• 旧生産技術による粗利益 : • 新生産技術による粗利益 : ΠN• 企業はすでに旧技術を導入しており , 新技術の採用によって旧技術を導入するために利用した費用がサンクコストになるとする

• このとき、新技術を導入するかは旧技術に対する追加効果が導入費用を上回るかで決まる

• 新たに新技術の導入を検討している企業の場合、新技術が旧技術と比較して多くの利潤をもたらす場合のみ新技術を選択する

• これから新技術を導入する企業のほうが、新技術を導入する条件がより満たされやすい

• 大手企業ほど新たな技術へのキャッチアップに遅れてしまう

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技術利用と研究開発へのインセンティブ• 技術の利用へのインセンティブ : 置き換え効果

• 既存技術から企業が得ている利潤が小さいほど、競合関係にある新技術の導入やそのための研究開発への誘因は高い (置き換え効果 )

研究開発からの利益 = 新技術からの利益 – 新技術の利用による旧技術の収益低下• 既存事業からの収益が低い企業ほど、既存製品を凌ぐ新製品を導入す

る誘因、あるいはそのための研究開発をする誘因が高くなる• これにより、シェアの逆転が発生する (etc…: アサヒとキリン )

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技術利用と研究開発へのインセンティブ• 技術の利用へのインセン

ティブ : 生産技術の革新• 既存技術の利用が競争的で利益を得られない場合、新技術を研究開発するインセンティブが高くなる

• 限界費用が c1 から c2 まで低下するケースを考える c1

c2

D

DMR

F

B D

Page 32: #東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

技術利用と研究開発へのインセンティブ• 技術 c1 が多数の企業によって利用され

ている場合、得られる利益は 0 となる• 技術革新によって限界費用が c1 -> c2 と

なった場合 , 企業は価格を c1 のままにする

• 企業の利潤は B+D

• 企業が c1 を独占していた場合 , 技術革新前の利潤は F

• 技術革新後の利潤は B+F• 技術革新による利潤は B

• 旧技術 c1 を独占していたほうが企業利益の水準そのものは高い (F+B > B+D) が , 技術革新からの利益事態は逆に小さくなる (B<B+D)

c1

c2

D

DMR

F

B D

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技術開発の専有可能性と研究開発競争• イノベーションを実現すれば、企業は大きな利潤を獲得できる•優れたイノベーション {他社が真似できないほど独創的な商品

であり , 競争的な価格や商品を設定できない財 } であれば , 他社は市場に参入できず企業は独占的に利潤を獲得できる .

• 研究開発へのインセンティブは、社会的余剰のうち研究開発を行った企業がどれだけ利益として獲得できるか , 専有可能性の強さに依存する .

• 技術を特許権や企業秘密 , 研究技法などで守ることができれば企業は優位性を確保し続けることができる

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先行優位性と技術開発• 技術開発の結果新たな先行優位性が獲得出来る場合 , すなわち , 研究開発によって技術や市場が「先取り」出来る場合、研究開発へのインセンティブは高まる

• 例 . 特許制度• 最初に研究開発に成功した企業が収益を「総取り」することができる

•例 . スタチン• 「安全に」 LDL コレステロー

ル値を下げることができる薬• 1970 年代から開発が開始

• 日本の三共が最初に開発を手がける

• 最初に市場で販売したのはメルク• 結果 , メルクが先行者利益を獲得• その後 , より優れたスタチンを発売したファイザーやアストラゼネカがより多くの利益を獲得

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独占の持続の可能性• (Gilbert and Newbery 1982)

• 先取りすることが重要な場合 , 既存企業のほうが新規参入企業とくらべて研究開発への誘因が高くなる

• 例• 企業 A : すでに独占的な地位にある企業• 企業 B : 新規参入企業• 企業 A は自社が開発に先行して成功すれば特許に

よる市場の独占を守ることができる• 企業 B に開発を先んじられた場合 , 複占となり競

争する必要が生じる• 利得の設定

• 企業 A : • 先行した場合得られる利潤• 技術開発に遅れて企業 B に参入を許した場

合の利潤• 企業 B :

• 技術開発に成功して参入し複占を実現した時の利潤

• 利得• 企業 A : • 企業 B :

• このとき , 独占利潤は複占利潤の和より大きくなるため

これより , 企業 B の利得と組み合わせて

よって、企業 A のほうが研究開発への誘因は高くなる

• 技術の先取りにより独占が守れる場合 , 研究開発が積極的に行われる

• 例 . 既存の自動車メーカーと新規参入企業• 例 . 製薬会社とジェネリック医薬品

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今日のまとめ• レポートは来週までに提出です

( 今回は必ず Web で提出してください )•来週は試験の予告編です

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連絡方法• 東洋大には 9:00-10:30 と , 19:50-21:20 しかいません

•非常勤のためオフィスアワーを設定できませんので、以下の手段でご連絡ください。

• ツイッター @harayasushi• フェイスブック : https://www.facebook.com/toyo.io.2014• LINE : @harayasushi (LINE は東洋大内では遮断されているようです )

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次回予告14. 7 / 15 : 技術進歩と研究開発競争 II ( 長岡・平尾 pp. 199- 206 )

+ 期末試験の予告編 ( ≒ 前期 後半のまとめ )15. 7 / 22 : 期末試験16. 8/5 : 補講 ( 期末試験の解決編 )

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Thanks.