し ん ぞ う けんさ 心臓カテーテル検査(心カテ)...(1) 心臓 し ん ぞ う...

20
(1) 心臓 カテーテル検査 (心カテ) あるいは 選択的 冠状 動脈 造影 について りんくう総 そう ごう りょう センター じゅん かん ない 連絡先:072-469-3111 きゅう きゅう には心 しん ぞう センター 救 きゅう きゅう たん とう または当 とう ちょく に連 れん らく してください。

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  • (1)

    心臓し ん ぞ う

    カテーテル検査け ん さ

    (心カテ)

    あるいは

    選択的せ ん た く て き

    冠状か ん じ ょ う

    動脈ど う み ゃ く

    造影ぞ う え い

    について

    りんくう総そう

    合ごう

    医い

    療りょう

    センター

    循じゅん

    環かん

    器き

    内ない

    科か

    連絡先:072-469-3111

    救きゅう

    急きゅう

    時じ

    には心しん

    臓ぞう

    センター救きゅう

    急きゅう

    担たん

    当とう

    医い

    または当とう

    直ちょく

    医い

    に連れん

    絡らく

    してください。

  • (2)

    心しん

    臓ぞう

    と冠かん

    動どう

    脈みゃく

    のお話はなし

    心しん

    臓ぞう

    は血けつ

    液えき

    を全ぜん

    身しん

    に送おく

    り出だ

    すポンプの働はたら

    きをする大たい

    切せつ

    な臓ぞう

    器き

    です。1分間にほぼ4か

    ら5リットルの血液を送り出しています。その大きさは皆さんの握にぎ

    りこぶしより少し大きいぐ

    らいで、全体が筋肉でできています。心臓の表面を冠かんむり

    のように覆おお

    って心しん

    臓ぞう

    自じ

    体たい

    に酸さん

    素そ

    と栄えい

    養よう

    を与あた

    えているとても大切な血管が冠かん

    (状じょう

    )動どう

    脈みゃく

    です。

    冠かん

    動脈どうみゃく

    は心臓の表面をかんむりのような形で覆っており、左右2本あります。左冠ひだりかん

    動脈どうみゃく

    は更に、心臓の前側まえがわ

    を栄えい

    養よう

    する前ぜん

    下か

    行こう

    枝し

    、後ろ側を栄養する回かい

    旋せん

    枝し

    に分かれま

    す。右みぎ

    冠かん

    動どう

    脈みゃく

    は心臓の下側を栄養しています。結けっ

    局きょく

    、冠かん

    動どう

    脈みゃく

    は大きく左ひだり

    前ぜん

    下か

    行こう

    枝し

    左ひだり

    回かい

    旋せん

    枝し

    そして右みぎ

    冠かん

    動どう

    脈みゃく

    の3本あることになります。

    もしこれらの冠動脈が、動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    のために狭くなったり、万が一完全につまったりする

    と、心臓の筋肉がポンプとして働くために必要な燃ねん

    料りょう

    (主に酸さん

    素そ

    と栄えい

    養よう

    )が足りなくなり

    ます。この状態は心臓に流れる血けつ

    液えき

    が乏とぼ

    しい状じょう

    態たい

    なので心臓の虚きょ

    血けつ

    状じょう

    態たい

    と考えられま

    す。このため、虚きょ

    血けつ

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    と呼ばれます。

    冠動脈狭窄を拡大した図

  • (3)

    虚きょ

    血けつ

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    (心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    や狭きょう

    心しん

    症しょう

    など)の話はなし

    虚きょ

    血けつ

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    の中で代表的な病びょう

    名めい

    としては、狭きょう

    心しん

    症しょう

    と心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    があります。これらは

    心臓に酸素と栄養を与える冠状動脈の動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    による病気です。狭心症は、冠かん

    状じょう

    動どう

    脈みゃく

    が動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    のために狭せま

    くなり、その結果として十分な量の酸素と栄養が心臓に運ば

    れないために起こります。狭心症の症しょう

    状じょう

    としては、

    ① 胸の痛み(胸の真まん

    中なか

    あたりの締め付けるような痛み、多くは朝あさ

    方がた

    駅えき

    に急いで歩いたり

    坂さか

    道みち

    や階かい

    段だん

    を上のぼ

    ったりすると起こり、立ち止まるとすぐに楽になります。また会かい

    議ぎ

    興こう

    奮ふん

    したり、急に冷たい空気に触ふ

    れたりしても起こります。時には、顎あご

    や奥おく

    歯ば

    が浮く

    ような症状や、肩から腕うで

    の痛みを伴ともな

    うこともあります)

    ② 息いき

    苦ぐる

    しさ

    ③ 心しん

    悸き

    亢こう

    進しん

    (動どう

    悸き

    とも呼ばれます。心臓がドキドキすることです)

    ④ 今までよりも運うん

    動どう

    能のう

    力りょく

    が落ちる(今まで何ともなかった駅の階段が辛つら

    くなった、など)、

    などがあります。

    冠動脈の詰まりがひどくなり、狭心症も重症じゅうしょう

    になってくると心臓のポンプとしての能のう

    力りょく

    も低てい

    下か

    し、心しん

    不ふ

    全ぜん

    となることがあります。

    さらに進行すると、横になって休んでいても胸きょう

    痛つう

    が起こるような不ふ

    安あん

    定てい

    狭きょう

    心しん

    症しょう

    や急性

    心筋梗塞という危険な状態にも陥おちい

    ります。

    急性心筋梗塞とは、冠動脈が突然詰まり(=閉へい

    塞そく

    )、この結果心臓への酸素と栄養の

    供給が突然無くなってしまったために心臓の筋肉が腐くさ

    ってしまった(=壊え

    死し

    )状態です。

    急性心筋梗塞にかかると、多くの場合、激はげ

    しい胸むね

    の痛いた

    みを感じます。この時の痛いた

    みは人

    間が味わう痛いた

    みの中でも一いち

    番ばん

    強つよ

    い痛いた

    みだとも言われています。さらに、痛みだけでなく、

    心臓が止まってしまうような不ふ

    整せい

    脈みゃく

    が起こったり、またポンプとしての働きも低下してしま

    ったりしますので生せい

    命めい

    の危き

    険けん

    があります。時には心臓が破は

    裂れつ

    (=心しん

    破は

    裂れつ

    )してしまうことも

    あります。

    これらの結果、急きゅう

    性せい

    心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    にかかった場合速すみ

    やかに適てき

    切せつ

    な治ち

    療りょう

    をすぐに受けな

    いと、その死し

    亡ぼう

    率りつ

    は 30%以上ありますが、速すみ

    やかに適てき

    切せつ

    な治ち

    療りょう

    を受けることにより、死亡

    率を 10%以い

    下か

    に低てい

    下か

    させることが出来ます。しかし、急きゅう

    性せい

    心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    を再さい

    発はつ

    した場合には、

    死亡率は約 50%といわれています。

  • (4)

    代だい

    表ひょう

    的てき

    な虚きょ

    血けつ

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    ■労ろう

    作さ

    性せい

    狭きょう

    心しん

    症しょう

    労ろう

    作さ

    (運うん

    動どう

    )に伴って狭心症発作が起こるタイプです。

    ■安あん

    静せい

    時じ

    狭きょう

    心しん

    症しょう

    運動をしていないのに発作が起こるタイプです。冠動脈の痙けい

    攣れん

    による狭心症や不安

    定狭心症がこれに当てはまります。

    ■冠かん

    攣れん

    縮しゅく

    性せい

    狭きょう

    心しん

    症しょう

    冠動脈の痙けい

    攣れん

    発ほっ

    作さ

    により狭心症発作が起こるものです。日本人には比較的多いとさ

    れています。明あ

    け方がた

    安あん

    静せい

    時に発作が起こることが多いとされています。

    ■不ふ

    安あん

    定てい

    狭きょう

    心しん

    症しょう

    狭心症発作の程度が強くなったり、発作を誘発する運動量が少なくなったりした場合、

    これを不安定狭心症と呼びます。例えば、今までは胸が苦しい状態が1分で改善して

    いたのに、10分しないと治まらなくなった。これまではニトログリセリンを1錠じょう

    舌ぜっ

    下か

    すれば

    楽になっていたのに、2錠じょう

    舌ぜっ

    下か

    しないと良くならなくなった。 あるいは、これまでは駅えき

    階かい

    段だん

    を上のぼ

    れば発ほっ

    作さ

    が起お

    こっていたのに、最近は平たい

    らな場ば

    所しょ

    を歩くだけで発作が起こる、

    といったものです。

    不安定狭心症となれば、狭心症から急性心筋梗塞に移行する危き

    険けん

    性せい

    が大きいとされ

    ています。従いしたが

    まして、私たちはこのような場合、準じゅん

    緊きん

    急きゅう

    入にゅう

    院いん

    されることをお勧すす

    めします。

    そして、速すみ

    やかに選択的冠動脈造影を受けられ、適てき

    切せつ

    な治ち

    療りょう

    を受けられることをお勧すす

    します。

  • (5)

    ■急きゅう

    性せい

    心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    一般的に強い胸痛発作が起こってから24時間以内の心筋梗塞を「急きゅう

    性せい

    」と呼びます。

    この時期は、死亡率が高く、しかもこの時期に、冠かん

    動どう

    脈みゃく

    再さい

    灌かん

    流りゅう

    療りょう

    法ほう

    (詰まった冠動脈を

    通とお

    す治ち

    療りょう

    )を行うことにより、その後の経過が改かい

    善ぜん

    すると言われています。

    ■陳ちん

    旧きゅう

    性せい

    心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    発作後 1ヶ月以上経過した心筋梗塞を陳旧性と呼びます。不整脈による突とつ

    然ぜん

    死し

    の予よ

    防ぼう

    や、心しん

    不ふ

    全ぜん

    の予よ

    防ぼう

    、冠かん

    動どう

    脈みゃく

    病びょう

    変へん

    進しん

    行こう

    の予防などの長ちょう

    期き

    的てき

    管かん

    理り

    が必要です。

    ■無む

    症しょう

    候こう

    性せい

    心しん

    筋きん

    虚きょ

    血けつ

    本当は狭心症発作が起こっているのに、胸痛発作として自覚しない場合もあります。

    ホルター心電図などで、心電図変化を検出することにより診断することができます。この

    ようなタイプの発作は、胸痛を伴う発作よりも生せい

    命めい

    予よ

    後ご

    が悪い、とも言われています。そ

    れは発作を自覚しないので無理をするから、不ふ

    整せい

    脈みゃく

    が発生して突とつ

    然ぜん

    死し

    することがある

    ためです。

  • (6)

    心しん

    臓ぞう

    カテーテル検けん

    査さ

    とは

    ■心臓カテーテル検査の定てい

    義ぎ

    カテーテルとはラテン語で「管くだ

    」を意味する言葉です。直接、心臓の中に各種の管

    (実際には内ない

    腔くう

    が機き

    能のう

    性せい

    材ざい

    質しつ

    で詰まっていて管にはなっていないものも多い)を挿入し

    て心臓の働きを調べる検査を心臓カテーテル検査 (Cardiac Catheterization)と呼びます。

    この管の太さは、行う検査や治療によって異なりますが、おおむね1から3mm程度です。

    これらの検査はほとんどの場合、レントゲン透とう

    視し

    下か

    で(=レントゲンで見ながら)カテーテ

    ル走そう

    行こう

    を確認しつつ行われます。

    ■心臓カテーテル検査の意い

    義ぎ

    他の非ひ

    侵しん

    襲しゅう

    的てき

    画が

    像ぞう

    診しん

    断だん

    法ほう

    が発達した現在でも、心臓カテーテル検査および心しん

    血けっ

    管かん

    造ぞう

    影えい

    は心臓の解かい

    剖ぼう

    学がく

    的てき

    および生せい

    理り

    学がく

    的てき

    状じょう

    態たい

    を把は

    握あく

    するための Golden Standard(他の

    検査の基き

    準じゅん

    となる標ひょう

    準じゅん

    的てき

    な検査法)です。

  • (7)

    心臓カテーテル検査が対たい

    象しょう

    とする疾しっ

    患かん

    先せん

    天てん

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    生まれつき、心臓におこる病気です。たくさんの疾患がありますが、代表的なも

    のとしては次のようなものがありますが、乳にゅう

    児じ

    検けん

    診しん

    制せい

    度ど

    が確立されている現代日本

    においては、赤ちゃんの段階で診断され、早くから適てき

    切せつ

    な治ち

    療りょう

    を受けることが可

    能です。

    心しん

    房ぼう

    中ちゅう

    隔かく

    欠けっ

    損そん

    症しょう

    (ASD) 心しん

    室しつ

    中ちゅう

    隔かく

    欠けっ

    損そん

    症しょう

    (VSD)

    動どう

    脈みゃく

    管かん

    開かい

    存ぞん

    症しょう

    (PDA) ファロー四し

    徴ちょう

    症しょう

    (TOF)

    後こう

    天てん

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    虚きょ

    血けつ

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    心疾患の大部分を占める病気。心臓自身に栄養を与える冠状動脈(冠動脈:

    Coronary artery)に障害が起こった結果、心筋への動脈血供給が不十分となって

    引き起こされる疾患の総称です。原因としては動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    がもっとも多いのですが、

    川かわ

    崎さき

    病びょう

    や高たか

    安やす

    病びょう

    などの血けっ

    管かん

    炎えん

    が原因でも引き起こされます。結果として起こる病

    気の代表は狭きょう

    心しん

    症しょう

    と心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    です。現在では心臓カテーテル検査のほとんどは、

    虚血性心疾患の診断のために行われる選せん

    択たく

    的てき

    冠かん

    状じょう

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    です。

    心しん

    臓ぞう

    弁べん

    膜まく

    症しょう

    心臓にある四つの弁(僧そう

    帽ぼう

    弁べん

    、大だい

    動どう

    脈みゃく

    弁べん

    、肺はい

    動どう

    脈みゃく

    弁べん

    、三尖弁)、その弁の働き

    が障害された状態。障害のされかたにより、閉へい

    鎖さ

    不ふ

    全ぜん

    症しょう

    と狭きょう

    窄さく

    症しょう

    、あるいはその

    合がっ

    併ぺい

    例れい

    に大別されます。

    原因としては、幼よう

    少しょう

    児じ

    の溶よう

    連れん

    菌きん

    感かん

    染せん

    による免めん

    疫えき

    反はん

    応のう

    の結けっ

    果か

    ひきおこされるリュ

    ウマチ熱(Rheumatic fever)が多くを占めます。また、動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    性せい

    のものも最近増

    加してきています。

  • (8)

    大だい

    動どう

    脈みゃく

    解かい

    離り

    大動脈の壁を形作る内ない

    膜まく

    と中ちゅう

    膜まく

    が裂けて、解離する病気。解かい

    離り

    性せい

    大だい

    動どう

    脈みゃく

    瘤りゅう

    も呼ばれていましたが、現在では急きゅう

    性せい

    大だい

    動どう

    脈みゃく

    解かい

    離り

    という呼び名の方が正しいとさ

    れています。解離する場所が上じょう

    行こう

    大だい

    動どう

    脈みゃく

    であれば、致ち

    死し

    的てき

    な合併症を併発する

    可能性が高いため、緊急手術が必要な場合もあります。

    肺はい

    塞そく

    栓せん

    症しょう

    最近、エコノミー・クラス症しょう

    候こう

    群ぐん

    としても有名な病気。主として下か

    肢し

    深しん

    部ぶ

    静じょう

    脈みゃく

    、あ

    るいは骨こつ

    盤ばん

    腔くう

    内ない

    腫しゅ

    瘤りゅう

    などに伴って骨盤腔内の静脈に血栓が形成され、それが流

    れ、肺はい

    動どう

    脈みゃく

    の詰まる病態。塞そく

    栓せん

    が大きい場合、一瞬で致命的になりえるが、慢まん

    性せい

    的てき

    にゆっくり起こってくる場合もあり、時に診しん

    断だん

    が困こん

    難なん

    です。

    心しん

    筋きん

    症しょう

    進行すると心しん

    臓ぞう

    移い

    植しょく

    の対たい

    象しょう

    ともなり得う

    る、拡かく

    張ちょう

    型がた

    心しん

    筋きん

    症しょう

    、胸きょう

    痛つう

    や失しっ

    神しん

    発ほっ

    作さ

    を引ひ

    き起お

    こす肥ひ

    大だい

    型がた

    心しん

    筋きん

    症しょう

    などの原げん

    因いん

    不ふ

    明めい

    の疾患があります。

    心しん

    膜まく

    炎えん

    (心しん

    嚢のう

    炎えん

    )

    ウィルス感染、膠こう

    原げん

    病びょう

    、結けっ

    核かく

    あるいは癌がん

    などにより心しん

    臓ぞう

    を包つつ

    んでいる心しん

    膜まく

    (心しん

    臓ぞう

    の外そと

    側がわ

    を包つつ

    んでいる膜まく

    )に炎えん

    症しょう

    を起お

    こし、この結けっ

    果か

    心しん

    嚢のう

    腔くう

    (心臓と心膜の間)に血

    液や炎えん

    症しょう

    液えき

    が貯ちょ

    留りゅう

    することがあります。

    心しん

    臓ぞう

    腫しゅ

    瘍よう

    左心房内に発はっ

    生せい

    する左さ

    房ぼう

    粘ねん

    液えき

    腫しゅ

    という腫瘍が知られています。

  • (9)

    選せん

    択たく

    的てき

    冠かん

    状じょう

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    (冠かん

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    :CAG=CoronaryAngiography)

    先にも述べましたように、現在行われている心臓カテーテル検査の多くは、この冠かん

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    です。その理由は勿論、心疾患の最大の原因が虚きょ

    血けつ

    性せい

    心しん

    疾しっ

    患かん

    だからです。

    正常の右冠動脈造影(左)と左冠動脈造影(右)

  • (10)

    心臓カテーテル検査は実じっ

    際さい

    にどのように行おこな

    われるのです

    か?(良くあるご質しつ

    問もん

    )1

    心臓カテーテル検査前日と当日の準備は?

    普通、検査前日には特とく

    別べつ

    な準じゅん

    備び

    は必要ありません。検査の当日は、直前の食しょく

    事じ

    を控ひか

    えて頂くことが多いですが、間違って食事を摂と

    られたとしても検査を行うことは

    可能です。検査で用いられる造ぞう

    影えい

    剤ざい

    は腎じん

    臓ぞう

    から尿にょう

    に混ま

    じって体からだ

    の外そと

    に排はい

    出しゅつ

    され

    ます。このため、造ぞう

    影えい

    剤ざい

    排はい

    出しゅつ

    を促うなが

    すために、お茶や水などは積せっ

    極きょく

    的てき

    に摂と

    るように

    しましょう。いつも服用されている内ない

    服ふく

    薬やく

    に関かん

    しては、看かん

    護ご

    師し

    や医い

    師し

    の指し

    示じ

    に従っ

    て下さい。検査前にこれまでと異なる体の異常を感じられた場合には、看護師や

    医師にお申し出下さい。

    糖とう

    尿にょう

    病びょう

    治ち

    療りょう

    のためにインスリン治療されている方は検査直前の絶食に伴って、

    インスリンの投与量を減げん

    量りょう

    する必要があります。これに関しても、看かん

    護ご

    師し

    や医い

    師し

    指し

    示じ

    に従って下さい。

    カテーテル検査は苦しいですか?

    カテーテル検査は局きょく

    所しょ

    麻ま

    酔すい

    (=痛いた

    み止ど

    め)のみによって行われます。従いまして、

    検査の一いち

    部ぶ

    始し

    終じゅう

    は患かん

    者じゃ

    さんに分かる状態で実じっ

    施し

    されます。

    ほとんどの場合、患者さんは痛いた

    み止ど

    めの注射をする時だけに、チクリとした軽い

    痛みを感じるのみです。普通は血管の中や心臓の中では痛みは感じません。検

    査中に痛みを感じられた場合には、ご遠えん

    慮りょ

    せずにすぐに術者や看かん

    護ご

    師し

    にお申し

    でて下さい。

    心臓カテーテル検査は実じっ

    際さい

    にどのように

    行おこな

    われるのですか?(よくあるご質しつ

    問もん

    【重要です、お目通しください】

  • (11)

    カテーテルはどこから入れるのですか?

    カテーテルを心臓周しゅう

    辺へん

    まで持ち込むためには、まず動脈や静脈にカテーテル

    を入れる必ひつ

    要よう

    があります。カテーテルを動脈に入れる場所は主に3ヵ所あります。

    それは足の付け根の動脈(=大だい

    腿たい

    動どう

    脈みゃく

    )、肘の部分の動脈(=肘ちゅう

    動どう

    脈みゃく

    、上じょう

    腕わん

    動脈)そ

    して手て

    首くび

    の動脈(=橈とう

    骨こつ

    動どう

    脈みゃく

    あるいは尺しゃっ

    骨こつ

    動脈)です。また、カテーテルを静脈に

    入れる場所としては、腕の静脈(=上じょう

    腕わん

    静脈)、首の静脈(=内ない

    頚けい

    静じょう

    脈みゃく

    )、鎖さ

    骨こつ

    周しゅう

    辺へん

    静じょう

    脈みゃく

    (=鎖さ

    骨こつ

    下か

    静じょう

    脈みゃく

    )そして足の付け根の静脈(=大だい

    腿たい

    静じょう

    脈みゃく

    )が用いられます。

    どうして足からカテーテル検査をする時があるのですか?

    足からカテーテル検査を行った場合、検査後の出血を防ふせ

    ぐために数時間ベッド

    の上に寝ね

    ている必ひつ

    要よう

    があります。このため、患者さんへのご負ふ

    担たん

    を低てい

    減げん

    させるため

    に 私たちはなるべく上肢から検査を行うようにしています。しかし、冠動脈以外の

    動脈も検査する場合には解かい

    剖ぼう

    学がく

    的てき

    な理り

    由ゆう

    により足から検査を行わせて頂く場合

    がありますのでご了りょう

    承しょう

    下くだ

    さい。

    カテーテルが心臓の中にある時は、何か感じますか?

    カテーテルの刺激によって期き

    外がい

    収しゅう

    縮しゅく

    (不ふ

    整せい

    脈みゃく

    の一種)がおこることがあります。こ

    の時、軽い動どう

    悸き

    を感じますが痛みは感じません。また、造影剤を注入した時には、

    体が熱あつ

    く感じることがありますが、数秒間のことです。冠動脈を拡張するために硝しょう

    酸さん

    薬やく

    を注入すると、口の中がスーッとすることがあります。

    狭心症の一種で冠動脈の痙けい

    攣れん

    発ほっ

    作さ

    (=攣れん

    縮しゅく

    、英えい

    語ご

    の spasm、スパスムとも呼よ

    びま

    す)によっておこる冠かん

    攣れん

    縮しゅく

    性せい

    狭きょう

    心しん

    症しょう

    を診断するためには、冠動脈造影の最中に薬

    物を用いて発ほっ

    作さ

    を誘ゆう

    発はつ

    する必要があります。この時には、発ほっ

    作さ

    がおこるため、狭きょう

    心しん

    痛つう

    を感かん

    ずる場ば

    合あい

    があります。下した

    の右みぎ

    の写しゃ

    真しん

    は冠かん

    攣れん

    縮しゅく

    発ほっ

    作さ

    の最さい

    中ちゅう

    です。このように

    ひどい冠攣縮が続くと、1分以内に心臓は停てい

    止し

    してしまいます。実際に、自し

    然ぜん

    発ほっ

    作さ

    の最さい

    中ちゅう

    にも同様の強い発作が起こることがあり、突とつ

    然ぜん

    死し

    の原げん

    因いん

    ともなります。

  • (12)

    この写真は、冠動脈造影で確認しながら行われていますので、冠かん

    動どう

    脈みゃく

    内ない

    にす

    ぐに硝しょう

    酸さん

    薬やく

    (ニトロと呼ばれる薬)を注ちゅう

    入にゅう

    することによって、速すみ

    やかに発ほっ

    作さ

    は解かい

    除じょ

    れました。

    カテーテルは体の中に残るのですか?

    そんなことはありません。検けん

    査さ

    が終お

    わればカテーテルは全てからだから抜いてし

    まいます。カテーテルを血管に挿そう

    入にゅう

    するために、以前はメスを用いて皮膚を 1~2

    cm切せっ

    開かい

    して、血管を露ろ

    出しゅつ

    させて挿入していました。しかし、最近はほとんどの場合、

    皮膚を 1 mm程度しか切せっ

    開かい

    しないで、針で穿せん

    刺し

    することにより血管内に挿入します。

    カテーテルを抜いた後は、その部位を数時間圧あっ

    迫ぱく

    して出しゅっ

    血けつ

    を止めます。

    カテーテル検査にかかる時間はどれくらいですか?

    カテーテルに要する時間は、検査の種類や患者さんの状態により異なります。

    一般的な冠かん

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    の場合には 30分以内で終了することがほとんどです。

    カテーテル検査が終わった後はどのようにすれば良いですか?

    穿せん

    刺し

    部ぶ

    からの出血や強い痛みがあれば、すぐに看かん

    護ご

    師し

    にお申し出下さい。検

  • (13)

    査が腕うで

    から行われたのであれば、すぐにベッドの上に座すわ

    って頂いただ

    いて結構です。ま

    た、看護師や医師の許可があれば、トイレに歩かれても結構です。

    検査が下か

    肢し

    (足)から行われたのであれば、数時間はベッドの上に寝て頂く必要

    があります。これは大だい

    腿たい

    穿せん

    刺し

    部ぶ

    からの出血を予防するためです。検査の後は、造

    影剤の腎じん

    臓ぞう

    からの排はい

    出しゅつ

    を促うなが

    すために点てん

    滴てき

    を行います。スタッフの許きょ

    可か

    があり、吐は

    き気け

    が無な

    いようでしたらば、飲み物を飲んで頂いたり、食事を摂と

    って頂いたりしても

    結けっ

    構こう

    です。

    検査の後は何い

    時つ

    、自宅に帰れますか?

    病院と御ご

    自じ

    宅たく

    との距離、病気の状態、検査結果、何なん

    時じ

    頃ごろ

    に検査が終了したか、

    あるいは全身の合がっ

    併ぺい

    症しょう

    の有無などに依い

    存ぞん

    しますが、検査翌日には自宅にお帰り

    頂くことも可能です。

    自宅に帰った後に気をつけることはありますか?

    腕から検査が行われた場合には、その腕に二ふつ

    日か

    間かん

    ぐらいは強つよ

    い力ちから

    を入れない

    で下さい。これは、穿刺部からの後こう

    出しゅっ

    血けつ

    を予防するためです。お食事は普通の通

    りで結構ですし、検査が行われた側の腕に過度の力が加わらない程度の日動動

    作も可能です。穿刺部の痛みや膨ふく

    らみを感じた時にもご相談下さい。

    仕事には何い

    時つ

    から戻れますか?

    腕うで

    に強つよ

    い力ちから

    を入い

    れる仕事でなければ、ご自宅に帰られた当日からお仕事を始はじ

    めて頂いて結構です。強い力を入れる必ひつ

    要よう

    がある仕事の場合には、申し訳ありま

    せんが二日間ぐらいは軽かる

    い仕事にのみついて頂いて下さい。

    検査が終わってから数日して穿刺部の皮膚が青くなってきました、

    大丈夫でしょうか?

  • (14)

    カテーテルを血管から抜ぬ

    いた後、圧あっ

    迫ぱく

    によって止血します。この時に、多少の

    血液が皮ひ

    下か

    組そ

    織しき

    に漏も

    れることがあります。普ふ

    通つう

    この少しょう

    量りょう

    出しゅっ

    血けつ

    は、何ら問題ありま

    せん。しかし、打う

    ち身み

    と同じで、時間と共にあ・

    ざ・

    のように皮ひ

    膚ふ

    が青ずんでくることが

    あります(これを内出血といいます)。この皮膚の青・

    ず・

    み・

    は時間と共に吸収され、消

    失します。痛みが続つづ

    いていなければご心しん

    配ぱい

    ありません。痛いた

    みが続いている場合や、

    そうでなくともご心配の時には、ご遠慮なくご相談下さい。

    カテーテル検査に健けん

    康こう

    保ほ

    険けん

    はききますか?

    もちろん、健康保険が有ゆう

    効こう

    な検査です。

    心臓カテーテル検査や選せん

    択たく

    的てき

    冠かん

    状じょう

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    はそれぞれ、先にも書きましたよ

    うに、1929年にフォルスマン博はか

    士せ

    、1955年にソーンズ博士により初めて行われまし

    た。そして、それ以来、検けん

    査さ

    成せい

    績せき

    に対たい

    する科か

    学がく

    的てき

    な検けん

    討とう

    、検けん

    査さ

    法ほう

    の改かい

    良りょう

    と合がっ

    併ぺい

    症しょう

    の科か

    学がく

    的てき

    解かい

    明めい

    、それに基もと

    づいた医師および検査に携たずさ

    わるスタッフに対する教きょう

    育いく

    そして技ぎ

    術じゅつ

    革かく

    新しん

    によるさまざまな改かい

    良りょう

    が行われてきました。この結果、検査が患者

    さんに及ぼす苦く

    痛つう

    は 著いちじる

    しく減げん

    少しょう

    しました。それと共に検査に伴ともな

    う危き

    険けん

    性せい

    は飛ひ

    躍やく

    的てき

    に低てい

    下か

    してきました。さらに、検査から得え

    られる情じょう

    報ほう

    量りょう

    も格かく

    段だん

    に増ぞう

    加か

    してきまし

    た。しかしこのような時代になっても心臓カテーテル検査や選択的冠状動脈造影

    に伴ともな

    う危き

    険けん

    性せい

    をゼロにすることは残ざん

    念ねん

    ながら出来ません。患者さんおよびご家族

    の方々もこの危険性を良くご理解の上で検査に臨のぞ

    んで下さい。私たち医療サイド

    は常つね

    に危き

    険けん

    性せい

    を最さい

    小しょう

    にするべく努つと

    めています。患者さん方から、より一いっ

    層そう

    のご理

    解を頂くことにより、これらの危険性をより少なくすることが可か

    能のう

    であると私たちは信

    じています。

    心臓カテーテル検査には、危き

    険けん

    性せい

    は無いのですか?

    【重要です、必ずお目通しください】

  • (15)

    非ひ

    常じょう

    に重じゅう

    大だい

    な合がっ

    併ぺい

    症しょう

    ①死亡: 既に病気のために障害しょうがい

    を受けている心臓に対して検査を行うために、どうして

    もその発はつ

    生せい

    頻ひん

    度ど

    をゼロにすることはまだ出来ません。一いっ

    般ぱん

    的てき

    に心臓カテーテルや選せん

    択たく

    的てき

    冠かん

    状じょう

    動どう

    脈みゃく

    造ぞう

    影えい

    を受けられる患かん

    者じゃ

    さんの0.02%未み

    満まん

    の頻ひん

    度ど

    (5000人に1人の割合未満)

    で死に至ることがあるとされています。

    ②心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    の発はっ

    生せい

    : 冠かん

    動どう

    脈みゃく

    の閉へい

    塞そく

    を起お

    こして心筋梗塞になってしまうこともあります。

    心筋梗塞を起こせば、強い痛みが起こるだけでなく、最悪の場合には死に至ることもあ

    ります。また、最悪の事態を避けるために緊きん

    急きゅう

    冠かん

    動どう

    脈みゃく

    バイパス手しゅ

    術じゅつ

    を行わねばならな

    い事態になることもあります。

    ③緊急冠動脈バイパス手術: やむを得ずに緊急で冠動脈バイパス手術が必要となるこ

    とがあります。この手術は輸ゆ

    血けつ

    も必要ですし、手術は全ぜん

    身しん

    麻ま

    酔すい

    の下で行われ、胸を開い

    て心臓を一いち

    時じ

    的てき

    に停てい

    止し

    させ、人じん

    工こう

    心しん

    肺ぱい

    を用いる必要があります。

    重じゅう

    大だい

    な合がっ

    併ぺい

    症しょう

    上で述べましたような非常に重大な合併症以外にも重大な合併症が起こりえます。

    ①心タンポナーデ: 心臓は心しん

    膜まく

    (心しん

    嚢のう

    )という袋ふくろ

    で取り囲まれています。カテーテルが

    心臓の壁かべ

    を突つ

    き抜ぬ

    けることによってこの袋の中に血けつ

    液えき

    が充じゅう

    満まん

    し、その結果心臓が外から

    圧迫されて十分に血液を送り出せなくなる事じ

    態たい

    を心タンポナーデと呼びます。心タンポ

    ナーデが発生すれば、すぐに心しん

    嚢のう

    穿せん

    刺し

    を行い、貯た

    まった血けつ

    液えき

    を排はい

    除じょ

    せねばなりません。

    また、場合によっては出血を止めるために開かい

    胸きょう

    手しゅ

    術じゅつ

    が必要となる場合もあります。稀に

    は弁の障害を来すこともあります。

    ②造ぞう

    影えい

    剤ざい

    の使し

    用よう

    に伴ともな

    う合がっ

    併ぺい

    症しょう

    : 心しん

    血けっ

    管かん

    造ぞう

    影えい

    では、造影剤という薬物を用いてレントゲ

    ンで冠かん

    動どう

    脈みゃく

    や心しん

    臓ぞう

    ・大だい

    血けっ

    管かん

    の状態が見えるようします。残念ながらこの造影剤は多くの

    改良がなされた現在でも、ごく稀にアレルギー反応や腎じん

    障しょう

    害がい

    を引き起こすことがありま

    す。このため、私たちは造影剤の使用量が可能な限り少なくなるように努力しています。

  • (16)

    ひどいアレルギー反応の場合には、皮ひ

    疹しん

    の出しゅつ

    現げん

    だけでなく、血けつ

    圧あつ

    が低てい

    下か

    したり、

    声せい

    門もん

    浮ふ

    腫しゅ

    を起こしたりして、ごく稀ですが、最さい

    悪あく

    の場ば

    合あい

    死し

    亡ぼう

    につながることもあ

    ります。

    ③放ほう

    射しゃ

    線せん

    による障しょう

    害がい

    : レントゲンを用いることが検査を行うために必要です。しかしな

    がらレントゲンは放ほう

    射しゃ

    線せん

    の一いっ

    種しゅ

    ですので多量のレントゲン線を浴びてしまうと

    放ほう

    射しゃ

    線せん

    障しょう

    害がい

    が起こることがあります。皮膚に対する放ほう

    射しゃ

    線せん

    障しょう

    害がい

    は蓄ちく

    積せき

    していきま

    す。この蓄ちく

    積せき

    線せん

    量りょう

    が多おお

    くなると、放ほう

    射しゃ

    線せん

    皮ひ

    膚ふ

    障しょう

    害がい

    の結けっ

    果か

    、皮ひ

    膚ふ

    移い

    植しょく

    が必ひつ

    要よう

    な事じ

    態たい

    に陥ることもあります。他の施設で時として報告されているこのような皮ひ

    膚ふ

    合がっ

    併ぺい

    症しょう

    を私たちは未いま

    だ引き起こしたことはありません。私たちは、患者さんのレント

    ゲン被ひ

    曝ばく

    を少すく

    なくするように何い

    時つ

    も努ど

    力りょく

    しています。

    ④出しゅっ

    血けつ

    性せい

    合がっ

    併ぺい

    症しょう

    : 検査に際しては血管からカテーテルを入れる必要があります。特に

    動どう

    脈みゃく

    はその圧あつ

    力りょく

    が強つよ

    いので出血が起こりやすい血管です。更に、検査の最さい

    中ちゅう

    にはヘ

    パリンという薬を用いて血けっ

    栓せん

    が出で

    来き

    にくくなるような状態にしています。これは逆ぎゃく

    に出しゅっ

    血けつ

    を誘ゆう

    発はつ

    することになります。このような背はい

    景けい

    がありますので、極きょく

    度ど

    の高こう

    血けつ

    圧あつ

    症しょう

    があるなど

    の不ふ

    利り

    な条じょう

    件けん

    が揃そろ

    うと脳のう

    出しゅっ

    血けつ

    などがおこることもあります。また、カテーテルを入れた部ぶ

    位い

    から出しゅっ

    血けつ

    し、後に輸ゆ

    血けつ

    や手しゅ

    術じゅつ

    が必ひつ

    要よう

    となることもあります。

    ⑤塞そく

    栓せん

    症しょう

    の発はっ

    生せい

    : 検査に当たってはカテーテルを心臓まで持ち込む必要があります。

    冠動脈だけでなく大だい

    動どう

    脈みゃく

    にも動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    病びょう

    巣そう

    がたくさんあります。カテーテルの通つう

    過か

    伴ともな

    ってこれらの動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    の塊かたまり

    が剥は

    がれて、それが動脈血流に沿って流れ、体からだ

    の一いち

    部ぶ

    につまってしまい、動どう

    脈みゃく

    血けつ

    流りゅう

    が途と

    絶ぜつ

    してしまうことがあります。また、カテーテルの一部

    に形成された血けっ

    栓せん

    がはがれてつまってしまうこともあります。これらの状じょう

    態たい

    を塞そく

    栓せん

    症しょう

    と呼よ

    びます。例えば、脳のう

    の動どう

    脈みゃく

    につまれば脳のう

    塞そく

    栓せん

    症しょう

    が起こり、その結果脳のう

    梗こう

    塞そく

    となることが

    ありますし、腸ちょう

    の動どう

    脈みゃく

    につまれば腸ちょう

    間かん

    動どう

    脈みゃく

    塞そく

    栓せん

    症しょう

    を引き起こします。このような事じ

    態たい

    起お

    こらないように私たちはカテーテルの操そう

    作さ

    は何い

    時つ

    も慎しん

    重ちょう

    にかつ迅じん

    速そく

    に行おこな

    うようにして

    います。しかしながら、それでも完かん

    全ぜん

    にその発はっ

    生せい

    を防ふせ

    ぐことは困こん

    難なん

    です。

    特とく

    殊しゅ

    な動どう

    脈みゃく

    塞そく

    栓せん

    症しょう

    としてコレステロール塞そく

    栓せん

    症しょう

    が希にあります。これは、腹ふく

    部ぶ

    大だい

    動どう

    脈みゃく

    などからコレステロール結けっ

    晶しょう

    を多おお

    く含ふく

    む動どう

    脈みゃく

    硬こう

    化か

    プラークが腸ちょう

    管かん

    動どう

    脈みゃく

    や下か

    肢し

    動どう

    脈みゃく

    末まっ

  • (17)

    梢しょう

    に塞そく

    栓せん

    したためにおこります。塞そく

    栓せん

    発はっ

    生せい

    後ご

    数すう

    週しゅう

    間かん

    の間にアレルギー反応を伴う慢まん

    性せい

    炎えん

    症しょう

    が起お

    こります。

    また、下肢からのカテーテル検査の後では、下か

    肢し

    静じょう

    脈みゃく

    に血けっ

    栓せん

    が形けい

    成せい

    され、その

    血けっ

    栓せん

    が離り

    床しょう

    後ご

    に流なが

    れ、肺はい

    動どう

    脈みゃく

    にひっかかる肺はい

    塞そく

    栓せん

    症しょう

    が起こることがあります。

    あるいは、カテーテル内に少量の空気が混入することによる空くう

    気き

    塞そく

    栓せん

    症しょう

    も起こりえま

    す。

    いずれにしてもこれら塞そく

    栓せん

    症しょう

    発はっ

    生せい

    頻ひん

    度ど

    は検査時間が長くなる程起こりやすいと言わ

    れています。従って、これらの合がっ

    併ぺい

    症しょう

    発はっ

    生せい

    を予防するために、カテーテル操そう

    作さ

    が困こん

    難なん

    検査に時間がかかる場合には、検査途中で検査を中ちゅう

    断だん

    延えん

    期き

    する場合もあります。

    ⑥感かん

    染せん

    症しょう

    の誘ゆう

    発はつ

    : 体の中に一時的にせよ異い

    物ぶつ

    を入れるため、それに伴って感かん

    染せん

    症しょう

    起お

    こることがあります。私たちはこのような事じ

    態たい

    を予よ

    防ぼう

    するために、術じゅつ

    前ぜん

    検けん

    査さ

    には万ばん

    全ぜん

    来き

    たし、手しゅ

    技ぎ

    時じ

    間かん

    を可か

    能のう

    な限かぎ

    り短みじか

    くして異い

    物ぶつ

    との接せっ

    触しょく

    時じ

    間かん

    を短たん

    縮しゅく

    し、常つね

    に清せい

    潔けつ

    を保たも

    ようにしています。しかし、完かん

    全ぜん

    に防ふせ

    ぐことは困こん

    難なん

    です。

    ⑦穿せん

    刺し

    部ぶ

    周しゅう

    辺へん

    の神しん

    経けい

    損そん

    傷しょう

    : 穿刺の際に、血管と併へい

    走そう

    している神経を穿せん

    刺し

    針ばり

    で損傷す

    ることがあります。また、検査終了後の出血によって神経を圧あっ

    迫ぱく

    損そん

    傷しょう

    することもあります。

    この結けっ

    果か

    、強つよ

    い痛いた

    みが残のこ

    ったり、指ゆび

    が動うご

    きにくくなる、あるいは手て

    や足あし

    の筋きん

    肉にく

    萎い

    縮しゅく

    を来

    すことがあります。これら稀な合がっ

    併ぺい

    症しょう

    に対しては早い処しょ

    置ち

    が効こう

    果か

    的てき

    ですので、ご相そう

    談だん

    さい。

    ⑧気き

    胸きょう

    : 鎖さ

    骨こつ

    下か

    静じょう

    脈みゃく

    穿せん

    刺し

    や内ない

    頚けい

    静じょう

    脈みゃく

    穿せん

    刺し

    に伴って、肺の一いち

    部ぶ

    に穴あな

    を開あ

    けてしまって

    肺はい

    の空くう

    気き

    が胸きょう

    腔くう

    にもれてしまい、結果的に肺を圧迫してしまうことがあります。この状態

    は気胸と呼ばれます。適切な処置により改善します。

    ⑨重じゅう

    篤とく

    な不ふ

    整せい

    脈みゃく

    の出現: カテーテルによる心臓に対する機械的刺激、あるいは造影

    剤注入による化学的刺激などにより、心しん

    室しつ

    性せい

    期き

    外がい

    収しゅう

    縮しゅく

    や上じょう

    室しつ

    性せい

    期き

    外がい

    収しゅう

    縮しゅく

    、あるいは心しん

    房ぼう

    細さい

    動どう

    などの不整脈が誘発されることがあります。多くの場合、これらの不整脈は一過

    性で何の後こう

    遺い

    症しょう

    も残しません。しかし、特に非常に心機能が悪い方や、非常に冠動脈

    狭窄が重症の方は、心しん

    室しつ

    性せい

    頻ひん

    拍ぱく

    症しょう

    、心しん

    室しつ

    細さい

    動どう

    、徐じょ

    脈みゃく

    あるいは心しん

    停てい

    止し

    などの重じゅう

    篤とく

    な不ふ

    整せい

    脈みゃく

    が出現し、遷延することがあります。これらの事じ

    態たい

    に対たい

    応おう

    して、当院の心臓カテー

  • (18)

    テル検査室では、緊きん

    急きゅう

    で心臓マッサージ、心臓ペーシング、電でん

    気き

    的てき

    除じょ

    細さい

    動どう

    、大だい

    動どう

    脈みゃく

    内ない

    バルーン・パンピング挿入あるいは経けい

    皮ひ

    的てき

    人じん

    工こう

    心しん

    肺ぱい

    補ほ

    助じょ

    装そう

    置ち

    装そう

    着ちゃく

    を行えるように常時

    準備し、また訓練しております。

    ⑩発熱: アレルギー反応や感かん

    染せん

    に伴って発熱することがあります。

    ⑪その他、不ふ

    測そく

    の合併症が起こることがあり得ます。

    一般的い っ ぱ ん て き

    に言いまして、上に述べ

    ました大小だいしょう

    さまざまな合併症が っ ぺ い し ょ う

    発生は っ せ い

    頻度ひ ん ど

    は合計で 1%程度とさ

    れています。

  • (19)

    心臓カテーテル検査や選択的冠状動脈造影を

    受う

    けることによる患かん

    者じゃ

    さんの利り

    益えき

    医学の発展によってさまざまな非ひ

    侵しん

    襲しゅう

    的てき

    検けん

    査さ

    法ほう

    が開発されてきました。しかし、

    現在でも心臓カテーテルや選択的冠状動脈造影・心しん

    血けっ

    管かん

    造ぞう

    影えい

    は心しん

    臓ぞう

    病びょう

    診しん

    断だん

    ための基き

    準じゅん

    となる検査法です。

    短たん

    期き

    的てき

    な利り

    益えき

    現在の心臓・大血管・冠状動脈の状態を正せい

    確かく

    に把は

    握あく

    することによってその患者

    さんにとっての最さい

    適てき

    な治ち

    療りょう

    法ほう

    を選択することが可能となります。また、患者さんお

    よびご家族の病気に対するご理解も深まり、日にち

    常じょう

    生せい

    活かつ

    、社しゃ

    会かい

    生せい

    活かつ

    の改かい

    善ぜん

    につなが

    ります。 また、切せっ

    迫ぱく

    した生せい

    命めい

    の危き

    機き

    に対しても適切な対応を採ることが可能となり

    ます。

    長ちょう

    期き

    的てき

    な利り

    益えき

    最さい

    適てき

    な治ち

    療りょう

    法ほう

    が選せん

    択たく

    されることによって、その後ご

    の患かん

    者じゃ

    さんの生せい

    命めい

    予よ

    後ご

    が改かい

    善ぜん

    するのみでなく、症しょう

    状じょう

    や運うん

    動どう

    能のう

    力りょく

    も改善されます。 狭きょう

    心しん

    症しょう

    や心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    を例に取

    れば、選択的冠状動脈造影を行うことによって、経けい

    皮ひ

    的てき

    冠かん

    動どう

    脈みゃく

    形けい

    成せい

    術じゅつ

    (PCI)や冠かん

    動どう

    脈みゃく

    バイパス手しゅ

    術じゅつ

    (CABG)などの侵しん

    襲しゅう

    的てき

    治ち

    療りょう

    法ほう

    を適切に行うことが可能となりま

    す。これらの侵しん

    襲しゅう

    的てき

    治ち

    療りょう

    を行おこな

    うことによって、他た

    枝し

    病びょう

    変へん

    (何なん

    本ほん

    もの冠かん

    動どう

    脈みゃく

    に病びょう

    変へん

    ある状じょう

    態たい

    )の場ば

    合あい

    には、病びょう

    気き

    の自し

    然ぜん

    経けい

    過か

    や薬やく

    物ぶつ

    療りょう

    法ほう

    よりも心しん

    事じ

    故こ

    発はっ

    生せい

    率りつ

    (死し

    亡ぼう

    率りつ

    や、心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    発はっ

    生せい

    あるいは再さい

    治ち

    療りょう

    の必ひつ

    要よう

    率りつ

    など)が低てい

    下か

    することが分わ

    かっていま

    す。そして、この効果は半はん

    年とし

    から数すう

    年ねん

    以い

    上じょう

    にわたり持じ

    続ぞく

    します。一いっ

    枝し

    病びょう

    変へん

    (一本の

    冠動脈にのみ病変がある状態)の場合には、もともと自し

    然ぜん

    経けい

    過か

    の生せい

    命めい

    予よ

    後ご

    が良よ

    ために、死し

    亡ぼう

    率りつ

    では差さ

    がでません。しかし、半はん

    年とし

    から数すう

    年ねん

    といった期き

    間かん

    で見み

    ると薬やく

    物ぶつ

    療りょう

    法ほう

    や自し

    然ぜん

    経けい

    過か

    よりも症しょう

    状じょう

    や運うん

    動どう

    能のう

    力りょく

    が改かい

    善ぜん

    されることが判はん

    明めい

    しています。

    これらの長ちょう

    期き

    的てき

    利り

    益えき

    は数すう

    年ねん

    以い

    上じょう

    にわたり持じ

    続ぞく

    することが分かっていますが、も

    ともと治ち

    療りょう

    法ほう

    が開かい

    発はつ

    されてから 30 年あまりしか経過していませんので、当とう

    然ぜん

    のこと

    ながら何なん

    十じゅう

    年ねん

    にもわたって長ちょう

    期き

    的てき

    利り

    益えき

    があるかどうかはまだ分わ

    かりません。

  • (20)

    心臓カテーテル検査を受う

    けられない場ば

    合あい

    患かん

    者じゃ

    さんの不利り

    益えき

    検査を受けられない場合に患者さんが被こうむ

    る最さい

    大だい

    の不ふ

    利り

    益えき

    は、この検査を受け

    ることによって得られる利り

    益えき

    を享きょう

    受じゅ

    できないことです。

    短たん

    期き

    的てき

    な不ふ

    利り

    益えき

    急きゅう

    性せい

    心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    の場ば

    合あい

    には選択的冠状動脈造影を行わなければ、結果的に経皮

    的冠動脈形成術による再さい

    灌かん

    流りゅう

    療りょう

    法ほう

    を受けることができません。この場合には死し

    亡ぼう

    率りつ

    や再さい

    発ほっ

    作さ

    の確かく

    率りつ

    が明あき

    らかに増ぞう

    加か

    します。狭心症の場合には、発ほっ

    作さ

    を抑よく

    制せい

    する

    ために多た

    量りょう

    のお薬くすり

    が必ひつ

    要よう

    となります。

    長ちょう

    期き

    的てき

    な不ふ

    利り

    益えき

    正確な病びょう

    態たい

    把は

    握あく

    無な

    しに、 徒いたづら

    に薬やく

    物ぶつ

    療りょう

    法ほう

    のみに頼たよ

    っていると心しん

    筋きん

    梗こう

    塞そく

    や重じゅう

    症しょう

    の不ふ

    整せい

    脈みゃく

    などを誘ゆう

    起き

    する可能性があるばかりか、薬やく

    物ぶつ

    による副ふく

    作さ

    用よう

    の発生が増ぞう

    加か

    することも考えられます。

    2011.6.1,500