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TRANSCRIPT
移動平均線 その 1、『 移動平均線の役割 』
□トレンド系のクニカル分析の代表選手「移動
平均線」を解説していきたい。もちろん知って
いるよな?
■「助手のムサシです。よろしくお願いします。
「常識です。簡単に言うと、移動して平均する線ですよね。
でしょ?」
□ま、そんなとこだ。(汗;)
□移動平均線は 1920年頃に米国で開発されたテクニカル指標。同
時期日本でもからみ足という名で移動平均線があったそうで、同時
期に開発されたという説とアメリカから伝わったという説とがある。
一般に知れわたったのは 1960 年にやはり米国のアナリスト、ジョ
セフ・E・グランビルが移動平均線を極めた解説書「グランビルの法
則」を出版してからだ。ということで本格的には 50年の歴史を持つ
指標と言っていい
■「いよっ、博学!」
□茶化すんじゃない。
こういう歴史を勉強すると実はこのテクニカル指標とこの
テクニカル指標は意外な関係を持つとか、このテクニカル
指標は前の時代のテクニカル指標の欠点を補うために作られたなど
という相互の関係がわかり、理解が深まるのじゃよ。歴史の研究も
重要なのだ。
□さて、テクニカル分析の代表選手と言ったが、株価や商品のチャ
ートを見ると、ろうそく足の上に必ずといっていいほど移動平均線
が付加されているのに気がつくだろう。移動平均線がないと寂しい
くらいだ。
■「ですね。」
□この移動平均線には種類がたくさんあるが、まずは3つ覚えてお
いてほしい。
単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線じゃ。SMA
WMA EMA などとアルファベットで呼ばれることもある。一番有名
なのはもちろん SMA、単純移動平均線じゃ。
【主な移動平均】
☆単純移動平均・・・SMA
☆加重移動平均・・・WMA
☆指数平滑移動平均・・・EMA
■「日本では特に SMAが凄い人気ですね。」
□そうか?
■「テレビ番組でも『SMA×SMA』とか、『SMAステーション』と
か、
その他『ぷっ SMA』『金 SMA』『裏 SMA』なんてのもあったりし
て。
□それはスマップ。SMAはシンプル・ムービング・アベレージ。ム
サシ君流に言うとシンプルにアベレージ(平均値)をムービング(移
動)させたものだ。
■「実にわかりやすい説明ですね。すると SMAPはシンプル・ムー
ビング・アベレージ・パーソンの略だったりするわけですね。日本
流に言うと、単純移動平均線男。」
□全然関係ないから。スマップは忘れろ。
□とりあえずは単純移動平均線から話を進める。日本ではこ
れが一番有名だが、海外では指数平滑移動平均線(EMA)方もよく使
われる。WMA・EMAに関しては別の回に詳しく説明する。
さて、単純移動平均線の計算式は
(直近の終値+1本前の終値+2 本前の終値・・・+(N-1)本目の終
値)÷N
だ。
例えば 5日移動平均線だったら、
(本日の終値+昨日の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の
終値)÷5
となる。
上記で 1本とか 2本とか言ったのは例えば 5分足や 1時間足で分析
することもあるので、そのろうそく足 1本分のこと。
【N本移動平均線計算式】
(直近の終値+1本前の終値+2本前の終値・・・+(N-1)本目の終
値)÷N
□これからこの講座でいろいろなテクニカル指標を勉強していくが、
まず心構えを話しておく。テクニカル指標をマスターするためには、
必ずそのテクニカルの計算式を理解しておかなくてはいけない!
鉄則、テクニカル指標の計算式は必ず理解すべし。
よく、テクニカル分析を解説した本やホームページで、申し訳程度
に計算式を載せて、「この計算式は難しいので覚える必要はありま
せん。使い方だけ覚えればいいです。」などと書いているがそれは
間違い。大間違い!
ずばり言えば、・・・・計算式が理解出来ないテクニカル分析は使
いこなせないと思え。実はテクニカル分析の計算式で一般人が理解
出来ないほど難しいのはごく一部。むしろ理解できないものは使わ
ないという気持ちが大切。
■「わかりました。」
□では、ずばり聞くが、移動平均線はなんの目的で開発されたと思
う?
■「目的?うーん、わかりません。」
□じゃあ 移動平均線で何がわかる?
■「なんだろ?そんなこと急に言われても。」
□ろうそく足の動きと、移動平均線の動きとを見比べてごらん。な
にかこの線に特徴はないか?
■「そういえば・・・・移動平均線の方が・・・なめらかな動きを
していますね。ろうそく足に比べると・・・。」
□そゆこと。移動平均線のまず第一の役割は価格の動きをなめら
かにすることだ。
□通常のろうそく足では上がったり下がったり、トレンドがつかみ
にくい。ところが移動平均線にするとそれらが平均化されてなめら
かな動きになるの で、トレンドがわかりやすいのだよ。上記のチャ
ートを見ると、上昇トレンドが終わった後に上げ下げはあるものの、
もみあい期に入っていることがよくわかる。
■「なるほど、なるほど。」
□まずこれが一番。そして次にさらに大事なことがあるのだけど、
それを説明する前に・・・・。
移動平均線をテクニカル分析で使うときに、有名な買いシグナル売
りシグナルがあるよな?
■「待ってました。僕だって知ってます。ゴールデンクロスでしょ?」
□お、さすが、よく知っている。
■「日本語に訳すと曲がり金玉。」
□全然違う。この講座の品位を落とすな。
□移動平均線と価格(ろうそく足)が交差するところをゴ
ールデンクロス・デッドクロスと呼び、典型的な買い場・売り場と
言われている。
■「あれ、移動平均線と価格の交差なんですか?
二本の移動平均線の交差のことだと思ってましたが。」
□おお、いいところに気がついたね。そこら辺を意外と見落として
る人が多い。グランビルの法則が出来た時には価格と移動平均線の
交差が中心だった が、現在は短期線と長期線の二本の移動平均線の交差を
ゴールデンクロス・デッドクロスと呼ぶことが多い。何故、そうな
ったか?そこら辺重要なことなのに意 外と語られていない。それに
関しては次回以降で解説する。
■「今回やたらもったいつけますね。」
□そうじゃない。移動平均線なんて簡単なテクニカル指標
だと思っていたら大間違い。「使える」ところまでじっく
り勉強しようというわけだ。
□ではまず、価格と移動平均線のクロスで考えてみよう。
ゴールデンクロスとは移動平均線を価格が上向きにクロスすること、
これが買いサインと言われる。
その逆にデッドクロスとは移動平均線を価格が下向きにクロスする
こと、これは売りサインと言われている。
この二つがテクニカル分析で一番有名なシグナルだ。
■「ですね。僕も活用しています。えっへん。」
【ゴールデンクロス・デッドクロス】
・ゴールデンクロスとは移動平均線を価格が上向きにクロスするこ
と(買いサイン)
・デッドクロスとは移動平均線を価格が下向きにクロスすること(売
りサイン)
※この他に長期と短期の移動平均のクロスもゴールデンクロス・デ
ッドクロスと呼ぶ。
□ここら辺、まだ威張るところじゃない。ところで何故ゴールデン
クロスが買いサインで、デッドクロスが売りサインなんじゃ?テク
ニカル分析のシグナ ルはそれが買いサインか売りサインかを知る
だけでなく、何故それが買いサインになるのか、何故それが売りサ
インになるのかということまで理解しなければ使 えない!
鉄則、各テクニカル分析のシグナルは、何故それが買いサインにな
るのか、売りサインになるのかということまで理解する!
■「はっはっは。実は先日、某有名アナリストのセミナーに参加し
まして、そこで習ってきたとこだったんです。小次郎講師と違い、
紳士で優しくて優秀な方でした。」
□そんな情報はいらん。じゃあ、ま、解説してごらん。
■「移動平均線はトレンド系の指標ですよね。要するにトレンドの
発生を探るわけです。で、上昇トレンドが上昇トレンドだと確認で
きるのは、底を打っ た瞬間ではまだわかりませんよね。で、価格が
上昇して移動平均とクロス(ゴールデンクロス)したとき、始めて、
あ、これは上昇トレンドだぞと確認出来るわ けです。下降トレンド
も同様です。下降トレンドと確認できるのがデッドクロスしたときです。だからゴ
ールデンクロスで買ってデッドクロスで売るんです。 えっへん。」
□45点。
■「ありゃ、中途半端な点数。だって、講師、僕は先日、セミナー
受けてきたばっかりだって言ったじゃないですか。某有名人気アナ
リストで・・・しかもイケメン・・・」
□有名か、イケメンか知らんが、45点。0点でないだけましだろ。
□では、本質的な話をするぞ。単純移動平均線とは、過去何日間の
平均値をつないだ線。しかし、ちょっと数学の知識のある人なら疑
問に思うはず。例えば 5日平均線を例にとろう。当日を含む過去 5
日間の平均値を計算するわけだ。で、その値(あたい)をチャート
上に描写するとしたらその位置は中間のとこ ろ、つまり 2日前のと
ころに描くはず。
■「え?考えたこともなかった。テクニカル分析の移動平均線では 5
日の平均値を本日のところに描きますね?何故ですか?」
□それを考えてみろと言っている。
■「無理です。考えたこともない。」
□そこら辺が「使えない」テクニカル分析ばかり勉強している証拠
なのだよ。表面的に「ゴールデンクロスは買い、デッドクロスは売
り」なんて覚えて、それだけで勝てるほどトレードは甘くないぞ。
■「参りました。講師、教えてください。ひょっとしたら某有名人
気アナリストよりも講師の方が、優れているところがないことはな
いことはないことは・・・ないかもしれないので。」
□もういい。他人と比較されてもうれしくない。
□では解説してしんぜよう。例えば 20日移動平均線を例
にとる。
20日移動平均線とは、過去 20日間の平均値を現在の日付の位置に
描いてつなげていくもの。つまり過去 20日間の平均値と当日の価格
を比較するところに意味がある。
ムサシ君、もうわかるだろう。過去 20日間の平均値と本日の価格を
比較して何がわかる?
■「あ、そうか。過去 20日間に買った人、売った人が、平均してど
れくらい儲けているか損しているかがわかるんですね。」
□そゆこと!
例えば 20日移動平均線で本日の値が 1000円だったとする。そして
本日の終値が 1200円だったとする。すると過去 20日間で買ってい
た人は平均的に 200円儲けている、売っていた人は 200円損してい
るということがわかる。それが移動平均線の本質じゃよ。
■「なるほど。」
□そしてゴールデンクロスとは、それまで平均的にマイナスだった
「買い方」がプラスに転じる分岐点のこと。逆にデッドクロスとは、
それまで平均的にプラスだった「買い方」がマイナスに転じる分岐
点のことだ。
逆に言うと、ゴールデンクロスは、それまで平均的にプラスだった
「売り方」がマイナスに転じる分岐点、デッドクロスとは、それま
で平均的にマイナスだった「売り方」がプラスに転じる分岐点とも
言える。
■「なるほど、なるほど。」
【買い方にとってのゴールデンクロス・デッドクロス】
・ゴールデンクロスとは、それまで平均的にマイナスだった買い方
がプラスに転じる分岐点のこと。
・デッドクロスとは、それまで平均的にプラスだった買い方がマイ
ナスに転じる分岐点のこと。
【売り方にとってのゴールデンクロス・デッドクロス】
・ゴールデンクロスは、それまで平均的にプラスだった売り方がマ
イナスに転じる分岐点のこと。
・デッドクロスとは、それまで平均的にマイナスだった売り方がプ
ラスに転じる分岐点のこと。
□例えばムサシ君、きみが買った後、価格が下がっていたとする。
どんな気持ちだ?
■「そりゃ不安ですよ。思惑が外れているわけですから。早く損切
りした方がいいんじゃないかと心配になりますね。」
□だろ。じゃあ、そこから価格が回復して、きみが買った価格を上
回ったらどんな気持ちだ?
■「そりゃ。うれしいに決まっているじゃないですか。やっぱり自
分の読みは正しかったんだと。どこまで上昇するか楽しみになりま
すよ。」
□だろ、だろ?つまり、価格がマイナスなゾーンにいるかプラスの
ゾーンにいるかで投資家の気持ちは全然違ってくる。投資家が心理
的に強気になる分岐点がゴールデンクロスで、投資家が弱気になる
分岐点がデッドクロスなのじゃよ。だからゴールデンクロスが買い
サイン、デッドクロスが売りサインになるわけじゃ。
■「深い!講師、そんな解説しているところほとんどないですよ。」
□ま、ないことはないと思うが、少ないのは事実。そこら辺を押さ
えないことにはゴールデンクロス・デッドクロスは正しく理解出来
ない。ただし、ゴー ルデンクロス・デッドクロスに関してもこれだ
けではまだまだ不十分、まだまだ話したいことがたっぷりあるが、
今日はこれくらいにする。移動平均線の話はまだまだ続く。長いぞ。
【今日のまとめ】
・移動平均線の第一の役割は価格の動きをなめらかにして、トレン
ドをわかりやすくすること。
・ゴールデンクロスとは移動平均線を価格が上向きにクロスするこ
と、これが買いサインと言われる。その逆にデッドクロスとは移動
平均線を価格が下向きにクロスすること、これは売りサインと言わ
れている。
・移動平均線の第二の役割は過去の平均値段と現在の値段を比較し
て、買い方の平均、売り方の平均が現在、儲かってるか損している
か、どれくらい儲かっているか損しているか、その損や儲けが現在
どのように変化しているかを見極めることである。
・投資家が強気になる分岐点がゴールデンクロスで、弱気になる分
岐点がデッドクロスなのだ。
□これにて移動平均線第 1回は終了じゃ。次回は有名なグランビル
の法則を中心に移動平均線の核心部分に迫る。お楽しみに!
■起立、礼!
移動平均線 その2、
『テクニカル分析講座、実践編』
□さて、本日は移動平均線の 2 回目。今回はさら
に詳しく移動平均線の使い方を紹介する。
前回ゴールデンクロス、デッドクロスについて紹介したが、移動平
均線は単にクロスしたところを見てそこで売ったり買ったりすれば
いいというものじゃない。
本日はそこら辺をグランビルの法則を元に解説してみたい。
■「助手のムサシです。体重は長期安定上昇中で、こちらは移動平
均線を使ってもクロスしません。心と懐はデッドクロスの
連続ですが・・・。」
□余計なことは言わなくていいから。
前回も話したが、移動平均を極めたのがアメリカはウォー
ル街の有名株式アナリスト、ジョセフ・グランビル(Joseph E.
Granville)。ウォール街の新聞社である、ハットン・デイリー・マー
ケット・ワイヤー通信社の人気記者だったらしい。
そのグランビルが 1960年にまとめたのがグランビルの法則。知っ
ているよな?有名だから。
■「もちろん。そして大阪には有名な阪急グランドビルがあります。」
□知らん。(無視して)グランビルは主に 200日移動平均線と価格
の関係で分析していたらしいが、考え方は何日移動でも同じ。では
紹介しよう。
グランビルの 8 法則
【買いシグナル】
1、移動平均線がある程度の期間下降した後で横ばい状態になるか、或いは少
し上昇基調に転じた時に、価格がその移動平均線を下から上にはっきりとクロ
スしたとき。
2、移動平均線が引き続き上昇している時期に、価格が移動平均線を左から右
にクロスしたとき。(つまり価格が移動平均線を一時的に下回ったとき)
3、価格が上昇基調の移動平均線の上にあり、その後移動平均線に向かって接
近(下落)していくが、移動平均線とクロスせずに再度上昇を始めたとき。
4、価格が下降基調の移動平均線に下にあって、移動平均線より大きく乖離し
たとき。
【売りシグナル】
5、移動平均線がある程度の期間上昇した後で横ばい状態になるか、或いは少
し下降基調に転じた時に、価格がその移動平均線を上から下にはっきりとクロ
スしたとき。
6、移動平均線が引き続き下降している時期に、価格が移動平均線を左から右
にクロスしたとき。(つまり価格が一時的に移動平均線を上回ったとき)
7、価格が下降基調の移動平均線の下にあり、その後移動平均線に向かって接
近(上昇)していくが、移動平均線とクロスせずに再度下降を始めたとき。
8、価格が上昇基調の移動平均線に上にあって、移動平均線より大きく乖離し
たとき。
□以上。グランビルの法則。おしまい。わかったかな?
■「わかったかなって・・・。講師、それじゃ僕には全然わかりま
せんって。」
□だよな。でも一般のサイトではこれに簡単な図表を加えて説明を
終わっているものがほとんど。が、しかし、「使える」テクニカル
講座としては、ま、それでは物足りないわな。ということで、時間
を割いて、ひとつひとつ詳しく解説したい。
■「ごっつぁんです。」
□相撲取りかい!健康のためにも少し痩せるように。
【買いシグナルの 4 パターン】
その1、移動平均線がある程度の期間下降した後で横ばい状態にな
るか、或いは少し上昇基調に転じた時に、価格がその移動平均線を
下から上にはっきりとクロスしたとき。
(典型的ゴールデンクロス)強い買いサイン
□これが、正しいゴールデンクロス。ジスイズゴールデンクロスだ。
よく覚えておくように。
まず、最初に移動平均線がしばらく下降していなければならない。
次にその移動平均線が下げ止まりを予兆させるものでなければなら
ない。
そのとき、 移動平均線の下にあった価格が移動平均線を上向きには
っきりとクロスする。これが本当のゴールデンクロスであり、最大
の買いチャンスだ。
【重要】正しいゴールデンクロスの三条件
1、 まず移動平均線が下降しているところからスタートする。
2、 その移動平均線が下げ止まり、横ばい或いは上昇に転ずる。
3、 その後価格が移動平均を下から上へはっきりとクロスする。
□正しいゴールデンクロスかどうかこの3つを確認することが大事。
■「なるほど、ゴールデンクロスにも本物と偽物があると。メモメ
モ。」
□熱心でよろしい。では次。
【買いシグナルの 4 パターン】
その2、移動平均線が引き続き上昇している時期に、価格が移動平
均線を左から右にクロスしたとき。つまり価格が一時的に移動平均
線を下回ったとき。
(騙しのデッドクロス)弱い買いサイン
□一見、デッドクロスに見えるがデッドクロスではない。見分けが
付くかな?正しいデッドクロスになるためには後の回で述べるが、
移動平均線が横ばい状態に なるか、少し下降基調に転じるという前
提が必要。
続いて価格は上から下へとはっきりとクロスしなければならない。
今回の騙しのケースでは移動平均線がまだ 上昇しているし、価格が
移動平均とクロスすると言ってもどちらかと言うと左から右へクロ
スと言うケースが多い。
これはデッドクロスの騙し。ということはま だまだ上昇トレンドが
継続するということだから、売り場ではなくむしろ買い場になる。
□但し、このようなとき、その後、移動平均と価格は絡みあって何
度も交差を繰り返すということがよくある。すると、やがて勢いを
無くして下落に転じてしまうことも多い。つまり、大きく取れる強
い買い場ではないということを理解しておく。
■「なるほどなるほど。単純にグランビルの法則だけを勉強すると、
どのシグナルも同じに見えますが、強いサインと弱いサインがある
んですね。こういうことが聞きたかったんです。さすがです、講師、
偉い。」
□ごほん。ま、そういうことだ。わかってきたじゃないか。
それでは次のケース。
【買いシグナルの 4 パターン】
その3、価格が上昇基調の移動平均線の上にあり、その後一時的に
移動平均線に向かって下落していくが、移動平均線とクロスせずに
再度上昇を始めたとき。
(押し目の終了)普通の買いサイン
□これは説明が必要。価格が安定して上昇しているとき、価格と移
動平均の関係は下図のようになる。
□見てわかるように、価格と移動平均線が平行して上昇していく。
このとき、価格が移動平均線の上にあることを良く覚えておこう。
何故、上昇時には価格は移動平均線の上に位置するんだ?わかるか
な?
■「えーと、移動平均線は過去何日かの平均値だから、・・・上昇時
には当然、現在の価格より低い値になりますよね。」
□そのとおり。ここら辺当たり前の話だが、「当たり前じゃん」と
済ませてはいかん。移動平均線マスターになるためにはここら辺を
しっかり理解してお かなければいけない。これを移動平均線の遅効
性と呼ぶ。価格はその都度上がったり下がったりする。しかし、移
動平均線はそれより遅れて上昇し、遅れて下落 する。下降時には移
動平均線は価格より上になる。
■「逆ですから、当然そうなりますね。」
□とすると、移動平均線と価格の位置関係を見ただけで上昇トレン
ドか下降トレンドかがわかる。
■「あ、そうか。」
□話を戻す。価格が上昇力を失うと、価格と移動平均の関係は下図
Aのようになる。逆に価格が上昇力を強めている時には下図Bのよ
うになる。移動平均線と価格の間隔に注目して見てごらん。
□そゆこと。つまりこの3のケースは、押し目等で、一度、上昇力
を弱めた相場が再度上昇を開始したことを意味する。だから・・・
押し目終了の買いサインだ
■「なるほどぉ。今まで笑ってた赤ちゃんが急に大きな声で泣き出
す、みたいなことですね。」
□また、わけのわからないことを。赤ちゃんとこのサインとどう関
係がある?
■「いや、だから、その、・・・それが、おしめの替えサイン。・・・・
お後の準備がよろしいようで。」
□く、苦しい。・・・・早く帰って子守りをするように!
【今日のまとめ】
【重要】正しいゴールデンクロスの三条件
1.まず移動平均線が下降しているところからスタートする。
2.その移、動平均線が下げ止まり、横ばい或いは上昇に転ずる。
3.その後、価格が移動平均を下から上へはっきりとクロスする。
・
グランビルの8法則には強いシグナルと弱いシグナルがある。
・移動平均線は価格に対して遅効性がある。
・移動平均線と価格の関係でトレンドがわかる。
・移動平均線と価格の間隔の変化で上昇力の勢いがわかる。
□第 6回講義終了。これにて移動平均線第 2回は終了じゃ。次回は
グランビルの法則の続きを解説し、いよいよ、移動平均線を複数使
うときの意味合いをお教えする。これも他ではなかなか聞けない話
なのでお楽しみに。
■起立、礼!
移動平均線 その3
『テクニカル分析講座、実践編』
□さて、本日は移動平均線の 3回目。移動平均線マスター
になるための大事な回だ。しっかりとついてきてくだされ。
グランビルの法則から移動平均乖離率までお話したい。
■「助手のムサシです。よろしくお願いします。忘れて
いる人もいるかもしれないのであらためて、姓は民那野、
名は無茶四、みんなのむさしと言います。『みんむさ』
と呼んでください。」
□永久に・・・そう呼ぶことはないから。
■「つ、冷たい」
□さて、気を取り直して前回の続き、グランビルの法則買いシグナ
ルの 4パターン、その 4からだ。
【買いシグナルの 4 パターン】
その 4、価格が下降基調の移動平均線に下にあって、移動平均線より
大きく乖離したとき。
(下降トレンドの戻し)短期の買いサイン。トレンド転換時
には大きく取れることもある。
□この 4番目は「移動平均乖離率」という独立したテクニカル指標
として扱われることが多い。移動平均乖離率、聞いたことあるかな?
■「えーと、移動して平均したものがぁ・・・・乖離する率のこと
ですよね。」
□聞くんじゃなかった。
□移動平均乖離率とは価格と移動平均線がどれくらい離れているか
を調べてトレードの指標にするテクニカル分析。乖離(かいり)と
は離れるということ。一定以上離れると、その後価格は移動平均線
に向けて戻ってくる。その性質を利用して売買のシグナルとする。
■「戻ってくるんですか?うちの女房は僕との心が乖離した結果、
一週間前から家を出て、戻ってきません。・・・ううう。(涙;)」
□おいおい、いつの間にそんな深刻なことに!・・・って、ゴホン、
今は講義中だから・・・家庭のごたごたは後でね。
□前回の講義でも話したが、もし、価格が一定の角度で下降してい
くなら、移動平均線もそれに平行して同じ角度で下降していく。と
いうことはそのケースでは 価格と移動平均線の乖離(離れ)は一定。
これが基本。で、価格が移動平均線と乖離するというのは、下降し
ていた価格が急落したとき。(あるいは上昇してい た価格が急騰し
たとき。)しかし、その状態はいつまでも続かない。急落した相場は
やがて戻しが入り、急騰した相場は押しが入る。それにより
価格は移動平均 線に近づくのじゃよ。
■「元のさやに収まるんですね。うらやましい。う、う、う、(号
泣)」
□(無視して)ただ、このケース、あくまで急な下げに対する一時
的な戻しという位置づけだから、大きく取れるわけではない。そこ
んところ注意が必 要。だが、トレンドの最終局面で大きな乖離が出
た時は投げが出ての急落というケースが多いので、そこが底打ちに
なり、その後、一気に上昇するというパター ンもある。
※図は価格と移動平均が大きく乖離した後、そのまま底打ちして大
きな上昇につながったケース
■「なるほど。トレンドの最終局面での大きな乖離は大きな儲けの
チャンスと。メモメモ。」
□現金なやつだ。ま、その現金さがあれば心配ないな。
ただ、この移動平均乖離率はなかなか使いづらい指標でもある。
■「なんでですか?」
□どれくらい離れたら離れすぎかということが明確になっていない。
5%くらい離れたあたりか ら離れすぎと言われるが、売買シグナル
としては 10%以上とすることも多い。つまり移動平均線から下へ
10%以上離れたら行きすぎ=買いサイン、上へ 10%以上離れたら
行きすぎ=売りサインということになる。が、結論から言うと、銘
柄や市場の動向によって、どれくらいの離れをサインとするかとい
うこと が変わってくる。
こういった不明確な指標はなかなか一般投資家には使いづらい。あ
くまで参考程度にとどめておくのがいいだろう。アドバイスとして
は、出来高・取組高と一緒に見ておくといいぞ。
【移動平均乖離率】
価格と移動平均線の乖離を見る指標。
通常、価格が移動平均線より 10%以上上に離れたら行きすぎという
ことで売りサイン
価格が移動平均線より 10%以上下に離れたら行きすぎということ
で買いサインとする。
※しかし、この何%の乖離で行きすぎとするかは不明確であること
に注意。
□長くかかったがこれで買いシグナルの 4パターンは終了。今度は
売りシグナルの 4パターンだが、こちらは買いシグナルの丁度逆な
ので、そんなに難しくない。要点だけ押さえてさくさくと進行して
いこう。
■売りと買いを変えて、以下同文てなもんで。
□そうはいかん。ひとつひとつしっかりと確認していこう。
【売りシグナルの 4 パターン】
その 1、移動平均線がある程度の期間上昇した後で横ばい状態になる
か、或いは少し下降基調に転じた時に、価格がその移動平均線を上
から下にはっきりとクロスしたとき。
(典型的デッドクロス)強い売りサイン
□これが、正しいデッドクロス。ジスイズデッドクロスだ。よく覚
えておくように。
まず最初に移動平均線がしばらく上昇していなければならな い。次
にその移動平均線が上げ止まりを予兆させるものでなければならな
い。そのとき、移動平均線の上にあった価格が移動平均線を下向き
にはっきりとクロス する。これが本当のデッドクロスであり、最大
の売りチャンスだ。
□ま、はっきり言うと、グランビルの法則の中では、一番最初の正
しいゴールデンクロスとこの正しいデッドクロスだけはしっかりと
覚えておかなければならないぞ。
【重要】正しいデッドクロスの三条件
1、 まず移動平均線が上昇しているところからスタートする。
2、 その移動平均線が上げ止まり、横ばい或いは下降に転ずる。
3、 その後価格が移動平均線を上から下へはっきりとクロスする。
■「これが一番勉強になりましたね。移動平均と価格のクロスと言
っても、本物のゴールデンクロス、本物のデッドクロスと、偽物が
あるんですね。夫婦にも本物の夫婦と仮面夫婦があるように・・・」
□またそっちに話が。
□(気を取り直して)話を戻すぞ。では次。
【売りシグナルの 4 パターン】
その 2、移動平均線が引き続き下降している時期に、価格が移動平均
線を左から右にクロスしたとき。つまり価格が一時的に移動平均を
上回ったとき。
(騙しのゴールデンクロス)弱い売りサイン
□一見、ゴールデンクロスに見えるがゴールデンクロスではない。
今回の騙しのケースでは移動平均線がまだ下降しているし、価格が
移動平均線とクロス すると言ってもどちらかと言うと左から右へ
クロスと言うケースが多い。これはゴールデンクロスの騙し。とい
うことはまだまだ下降トレンドが継続するという ことだから、買い
場ではなくむしろ売り場となる。
□但し、このようなとき、その後、移動平均線と価格は絡みあって
何度も交差を繰り返すということがよくある。すると、やがて勢い
を無くして下降トレンドが終了する。つまり、大きく取れる売り場
ではないということも理解しておく必要がある。
■「なるほどなるほど。大きく取れんドラインですね。」
□そんなくだらない駄じゃれを言う元気があれば心配ないな!それ
では次のケース。
【売りシグナルの 4 パターン】
その 3、価格が下降基調の移動平均線の下にあり、その後一時的に移
動平均線に向かって上昇していくが、移動平均線とクロスせずに再
度下降を始めたとき。
(近接の終了)普通の売りサイン
□これも前回説明したとおり。つまりこの 3のケースは、戻し等で、
一度下降力を弱めた相場が再度下降を開始したことを意味する。だ
から売りサインだ
□さて、最後。
【売りシグナルの 4 パターン】
その 4、価格が上昇基調の移動平均線に上にあって、移動平均線より
大きく乖離したとき。
(上昇トレンドの押し目)短期の売りサイン。トレンド転換
時には大きく取れることもある。
□これは本日解説した「移動平均乖離率」のこと
一定以上離れると、その後価格は移動平均線に向けて戻ってくる。
その性質を利用して売買のシグナルとする。急な上げに対する一時
的な押し目という位 置づけだから、下げで大きく取れるわけではな
い。だが、トレンドの最終局面で大きな乖離が出た時は踏みが出て
の急騰というケースが多いので、そこが天井に なり、その後一気に
下降するというパターンもある。
以上でグランビルの法則終わりだ。移動平均線の話はまだまだ続く。
■「いやあ長そうですね。移動平均線だけで 50回くらい行きそうで
すね。」
□「使える」テクニカル講座だからね。簡単にお茶を濁すわけには
いかない。
■「僕は移動平均乖離率が好きだな。」
□そうか。
■「離れても必ず戻ってくるところが。いいっすねえ。
どんなに遠く離れても・・必ず戻って来ると・・・(涙;)」
□泣くな!早く帰って、・・・奥さんを捜せ!
【今日のまとめ】
移動平均乖離率は価格と移動平均線線の乖離(離れ方)
を見る。
一般的に価格が移動平均線より 10%離れたら行きすぎで戻すと言
われているが、何%かは銘柄・市場の動向によって異なる。
【重要】正しいデッドクロスの三条件
まず移動平均線が上昇しているところからスタートする。
その移動平均線が上げ止まり、横ばい或いは下降に転ずる。
その後、価格が移動平均線を上から下へはっきりとクロスする。
□第7回講義終了。これにてグランビルの法則は終了じゃ。次回は、
いよいよ、移動平均線を複数使うときの意味合いをお教えする。今
回解説する予定だったのだが、紙面の都合で次回送りとなった。申
し訳ない。
■起立、礼!
移動平均線 その4
『テクニカル分析講座、実践編』
□さて、本日は移動平均線の 4回目。それではいよいよお
待ちかね移動平均線の二本使いを説明する。
■「待ってました!日本一!大統領!いよ、宮本武蔵ィ!」
□ムサシ君、うるさい。しかも宮本武蔵関係ないから。
■「移動平均線二刀流ということで・・・。」
□ゴホン。・・・先を進める。
□最近チャートを見るとろうそく足に大体二本くらい移動平均線が
ついているものが多い。二本線というと代表は 5日移動平均線(以
下 5日線と呼ぶ)と 25日移動平均線(以下 25日線と呼ぶ)かな。
■「いろんな期間があって迷うんですよ。こういう数値(パラメー
ター)を自由に変更して使う指標って使いづらいですね。どの数値
を入れればいいのかわからないですもん。」
□まあ、そう言うな。自分がトレードする期間で当然その数値は変
えていかなくてはいけない。短期投資をする人が期間の長い移動平
均線を見ていてもしょうがないし、長期投資をする人が短いものを
見ていてもしょうがない。
■「ま、そうでしょうが。初心者にはそれって難しいです。」
□よく使われるのは、日足で 5日・25日・75日・200日、週足で
は 13週・26週・52週、月足では 12ヶ月・24ヶ月・60ヶ月など
だ。
つまり月足は 1年(=12ヶ月)、2年(=24ヶ月)、5年(=60
ヶ月)、週足は 52週が 1年だから、26週が半年、13週は 3ヶ月
と言ったところ。日足は 1週間、1ヶ月、3ヶ月、そして 200日は
グランビルが一番推奨している期間なので特別枠というところかな。
■「最近は日足よりもっと短い足が使われますよね。5分足とか時間
足とか、そういった足ではどれくらいの期間で設定すればいいんで
すか?」
□何度も言うとおり自分の売買にあわせた期間で見る必要がある。
しかし、多いのは 12本、24本、48本などだ。時間足では 24本で
1日、5分足では 12本で 1時間となる。
【移動平均線のよく使われる日数】
日足、5 日・25 日・75 日・200 日
週足、13 週・26 週・52 週、
月足、12 ヶ月・24 ヶ月・60 ヶ月
日足より期間が短い足、12 本・24 本・48 本等
■「なるほど。」
□さて、二本線の使い方だが、短期(例、5 日線)と中期(例、25
日線)を組み合わせて使う場合と中期(例、25 日線)と長期(例、
75 日線)を組み合わせて使う場合では意味合いが全然違う。これを
区別しなければいけない。
※短期と中期 ※中期と長期
■「ちょっと待ったぁ!」
□何かな、唐突に。
■「最近は 25日線ではなくて 20日線を使うと聞きました。昔は 1
か月の営業日が 25日前後あったので、25日線を使っていたけど、
最近は 20営業日前後なので、20日で見るのだ、というような話を
先日受けたセミナーで某人気イケメン講師から聞きましたが。」
□そのイケメン講師の話はよせ。ま、1ヶ月という期間にこだわる必
要は特別ないので、25日をわざわざ 20日に変更する必要はないの
だが、実はゴールデンクロスなどを計測するときに 25日では少し遅
い気がして、私も 20日線をよく使う。では 20日線で話をしよう。
■「えっへん。」
□勝ち誇るな、全然偉くないから。
□短期戦(例 5日線)と中期線(例 20日線)を使うケースでお話す
る。この移動平均の話を始めたときに、ムサシ君から、「ゴールデ
ンクロスって二本の移動平均線のクロスのことじゃないんですか?」
と質問があった。覚えてるか?
■「そうです。講師が価格と移動平均線のクロスが本当のゴールデ
ンクロス・デッドクロスっておっしゃったのでびっくりしました。
それまでずっと、短期線と中期線(または長期線)のクロスのこと
をそう呼ぶとばかり思ってたんで。」
□この質問は実に核心をついた質問だ。ムサシ君の言うとおり最近
はゴールデンクロスと言うと、短期線と中期線(または長期線)の
クロスのことを言うようになった。
■「でしょ?グランビルさん、古いんですよ。」
□古くないから。その場合のゴールデンクロスその他の考え方もグ
ランビルの 8法則がそのままあてはまる。前回、前々回の講義を「価
格」と「移動平均線」ではなく、「短期移動平均線」と「中期(長
期)移動平均線」というふうに置き換えて読み直してほしい。
■「それなら最初からそう説明してくださいよ。前回、前々回の講
義が無駄になったじゃないですか。金返せ!」
□無駄じゃないから。・・・お金取ってないし。
□ムサシ君、大事なところだから落ち着いて聞いてくれ。本質に関
わる話をするからね。移動平均線の極意につながるところだ。
■「極意?そう聞くと・・・気になりますね。(←単純。)」
□5日と 20日の線をみるとき、基準となるのは 20日の線。つまり
直近 20日の間に買った人(売った人)が現在どうなったかを調べて
いると思って欲しい。
■「思いました。」
□その人達が平均的にマイナスなのか、プラスなのか、そしてマイ
ナスだとして、今そのマイナスはどんどん増えているのか、減って
きているのか、同じくプラスだとして、そのプラスはどんどん増え
ていっているのか、減ってきているのか、これは、そこに注目して
いる指標なのだ。
■「なるほど、単純にクロスだけを見るのではなく、その過程もし
っかりと見なくてはいけないと・・・。メモメモ。」
□そして、ゴールデンクロスとは、平均的買い方が今までマイナス
だったのがプラスに転じるポ イント、売り方で言えばそれまでプラ
スだったのがマイナスに転じるポイントのこと。前回話したように、
そのポイントで売り勢力と買い勢力は大きく力関係が 変化する。ち
ょっと復習の意味を込めてそのことを説明してごらん。
■「じゃあ・・・・『復讐』の意味を込めて説明します。」
□怖い。
■「ゴールデンクロスではそれまでいつ損切り(の売り決済)をし
ようかと迷っていた買い方がプラスに転じて自信を持って買い方針
を貫くようになりま すね。またそれまで利益を上げていた売り方は、
逆にマイナスに転じてしまい、不安感からそろそろ損切りを検討す
るようになります。その損切りが買い注文と して出てくるので、ど
ちらにしてもやはりゴールデンクロス以降は買い方が優勢になるわ
けです。こんな説明でどうですか?」
□まずまずじゃ。
■「でもそれは移動平均線と現在の価格の関係で出てくる話ですよ
ね。今回のような二本の線(短期の移動平均線と中・長期の移動平
均線)のクロスは一体なにを見極めるためにあるんですか?」
□ナイス質問!
□では、ムサシ君にあらためて聞くぞ。移動平均線の役割はもうひ
とつあったな。「その期間の投資家の平均的買値(または平均的売
値)と現在の価格を比較する」という役割以外にもうひとつ。
■「あ、ありました。えーと・・・そうそう、『価格の動きをなめ
らかにする』という役割が。」
□そゆこと。つまり短期線(例、5日線)は、別に、その線と価格の
クロスを見てどうこうしようという線ではない。下の図を見てごら
ん、5日線と価格はクロスしまくっている。こんなの見ても参考には
ならん。
この短期線は価格のでこぼこした動きをなめらかにするという役割
を果たしているのだよ。
※図参照、5日(移動平均)線はその線と価格のクロスを見る線では
なく、価格の動きを平滑化する線である。
■「あ、・・・・なるほど。」
□20日移動と価格のクロスでゴールデンクロス・デッドクロスを判
定しようとしても、その価格がでこぼこしていては、クロスしたと
思えば戻し、またクロスしたかと思ったらまた戻して、なんてこと
になり正しい分析なんぞ出来やしない。
■「確かに上の図ではクロスした場所がわかりづらいですね。」
□だからでこぼこを修正したなめらかな線と 20日線とのクロスを
探すのじゃよ。「騙し」を減らすためにね。
■「なるほどなるほど。つまり短期線(例、5日線)は価格の動きの
代用品なのですね。」
□そのとおり、しかもただの代用品ではない。分析を正しくするた
めに用意されたスペシャル助っ人なのだ。
■「昔阪神タイガースにいたランディ・バースみたいな存在と・・・。」
□古すぎて誰もわからないぞ。(汗;)
■「なるほど、深いですね。確かにろうそく足と 20日線のクロスを
見つけるのは難しいですね。どこでクロスしているのかわかりにく
い。それが 5日線を使うと 1点でびしっとわかります。」
□そゆこと。5日とか 20日とかいうのはあくまで例だからね。短期
線は価格から乖離しすぎなくて、その線をなめらかにするのに有効
な日数を選べばいい。3日でもいいかもしれないし、7日あたりがい
いかもしれない。
ここら辺、「そんな小難しいこと知らなくても、分析のやり方だけ
わかればいいじゃないですか」などと思ってはいけない。本質がわ
かるからこそ正しい分析が出来、応用も出来るのだ。テクニシャン
を目指し、移動平均線マスターを目指すためにはそれが必須だ。
■「移動平均線ソムリエってのはどうですか?」
□いいねえ。ナイスネーミングだ。そういう新鮮な言葉が、新たな
ムーブメントを生む。たくさんの人にもっともっと移動平均線を勉
強してもらいたい。 移動平均線は基本中の基本のテクニカル分析だ
が奥が深いのでね。マスターした人には移動平均線ソムリエと名乗
ってもらえばいいね。
■「よおし、そうと決まれば・・・さっそく移動平均線ソムリエ協
会を作って、免許を有料にして、資格商法で儲けるぞ!」
□褒めたらこれだ。
■「そっちの方が僕・・・早く儲けられそうなんで・・・。」
□なんてやっちゃ(><);
【今日のまとめ】
よく使われる移動平均線の日数
日足、5 日・25 日・75 日・200 日
週足、13 週・26 週・52 週、
月足、12 ヶ月・24 ヶ月・60 ヶ月
日足より期間が短い足、12 本・24 本・48 本等
短期線と中期線(長期線)の二本使いの意味
中期線の期間で買い方・売り方の平均的損益が現在どうなっている
かを見る。
ゴールデンクロス(デッドクロス)はその損益がマイナスからプラ
スへ(或いはプラスからマイナスへ)変化する分岐点。
短期線は価格の動きをなめらかにする役割。なめらかにすることに
より中期線と価格のクロス点をわかりやすくする。
□第 8回講義終了。移動平均線の話はまだまだ続く。乞うご期待!
■起立、礼!
移動平均線 その5
『テクニカル分析講座、実践編』
□さて、『小次郎講師の使えるテクニカル講座』
略して『コジテク』、おかげ様で人気がいいよう
で、方々で楽しみにしていますと声をかけてもら
うようになった。感謝。
■「移動平均線ソムリエのムサシです。『面白くてために
なる』と評判のようです。僕も頑張らなきゃ。」
□君は頑張らなくていい。
■「そんな!『面白くて』は僕の担当ですよ。」
□そういう担当じゃないから。それにそういう担当いらないし。
■「つ、冷たい。ひとでなし!」
□ゴホン。話を進める。本日は移動平均線の 5回目。移動平均線の
複数使いの中編だ。
前編では短期移動平均線(以下短期線)と中期移動平均線(以下中
期線)の二本使いを解説したが、これからは中期移動平均線と長期
移動平均線(以下長 期線)を使うケースをお話する。こちらが実は
とても大事。移動平均線というとゴールデンクロス・デッドクロス
にばかり目を奪われるが、実際にはこちらの方 が役に立ったりする。
□ということでムサシ君、今回は理解度をテストしながら進めたい。
■「げげ、て、てすとですと?」
□しゃれじゃないだろうな?まあいい。
これは 20日移動平均線(以下 20日線)のある日をピックアップし
た図だ。この二つ図を見てそれぞれの過去 20日間のトレンドを教え
てくれ。
■「そんな、この二点だけで過去 20日の動きがわかるんなら神様じ
ゃないですか。」
□言っとくけど、これは復習だよ。時間がもったいないので答える
が、図Aは上昇トレンド、図Bは下降トレンドだということがわか
る。(下図参照)
20 日移動平均は過去 20 日の平均値。価格はもちろん現在の価格。
図Aのようにその移動平均が下にあり価格が上にあるということは、
下から現在の価格のところへ上昇してきたということがわかる。
逆に図Bのように移動平均が上にあり、価格が下にあると、上から
現在の価格のところに下落してきたというのがわかる。
■「なあるほど」
□ここまでは復習。理解はいいかな?
■「なんとか」
□たよりないがしようがない。では今度はちょっと難しいぞ。移動
平均線の 2本使い。価格と中期線(例、20日線)と長期線(例、40
日線)のある日の関係だ。この図を見て、この 40日間の価格の動き
を見抜いてごらん。
■「え?そんなこと出来るんですか?この 3点だけで?シャイロッ
ク・ホームズじゃあるまいし。」
□シャイロック・ホームズはともかくとして移動平均ソムリエなら
出来るはず。
■「ソんなのムリエ。」
□ガックシ。何をだじゃれでごまかしてる。ではムサシ君は降参と
いうことで、・・・解答をお見せしよう。これが上図からわかる過
去 40日間の値動きだ。
■「いやいや講師、こんなことがその 3点の並びだけでわかるわけ
ないじゃないですか。明智小五郎じゃあるまいし・・・。」
□ま、探偵にはわからないだろうが、・・・超一流のテクニシャン
ならわかる!
■「テクニシャン!?・・・なんて素敵な響き。早くそう呼ばれた
い。」
□ゴホン。言っとくけど、テクニカル分析の使い手のことだからね、
テクニシャンって。
話を進める。この 3点も先ほどと理屈は同じ。
まず図A1の長期線と価格の位置関係を見てごらん。長期線(過去
40 日の平均)が下にあり、価格 が上にある。ということは 40 日
間の大きな流れとしては上昇トレンドだ。ところが中期線(過去 20
日の平均)は価格の上にある。ということは最近 20 日を 考えると、
下降トレンドということがわかる。
つまり、大きな流れで上昇トレンドだったものが、最近下降に転じ
て、現在に至るということだ。つまり下の図A2だ。
■「なるほど。名推理です。これから明智小次郎講師と呼ばせてく
ださい。」
□呼ばなくていいから。これはね、誰でもわかるのだよ。次はムサ
シ君も考えてごらん。図B1で、まず長期線と価格の関係を見てご
らん。何がわかる?
■「えーと、40 日平均が上にあり、価格が下にありますね。という
ことは過去 40 日の大きな流れとしては・・・下降トレンドというこ
とがわかりますね。」
□そゆこと。今度は中期線と価格の関係を見てごらん。何がわかる?
■「えーと、・・・20日平均が下にあり、価格が上にありますね。
ということは直近 20日の流れとしては・・・上昇トレントというこ
とがわかります!」
□いいぞ。・・・ということは、総合的に見ると?
■「長期的に下降トレンドだったものが、・・・直近上昇トレンド
に変わりつつあり、現在に至ると。」
□正解!つまり図B2だ。
■「なあああああああるほど。すごおおおい。移動平均線のある日
の位置関係を見ただけで、過去 40日間の流れがわかっちゃったわけ
ですね。ひょっとしたら僕、金田一耕助より、名探偵コナンよりす
ごいかも。」
□名探偵の名前を次から次へあげるな。それが本当の移動平均線の
使い手だ。
■「講師、ひょっとしたら、講師があの伝説の移動平均線使いでは?」
□知らん知らん。
■「満月の日になると、口笛を吹きながらどこからともなくやって
くるという男、右手には移動平均線チャート、左手には短波ラジオ、
ひとたびその男が移動平均線を見れば、読めない相場などないとい
う伝説の男ってひょっとして・・・。」
□俺じゃないから。そんな伝説聞いたこともないし。
が、ムサシ君、伝説はないが、・・・極意ならあるぞ。『移動平均
線大循環分析』、聞いたことないか?
■「ありません。」
□いよいよ、移動平均線分析も佳境、極意中の極意『移動平均線の
大循環分析』について解説する。
■「極意ですか・・・ごくり(つばを飲み込む)」
□名前は聞いたことがなくても、これからの図を見たら、移動平均
線の使い手ならわかると思う。
□価格と中期線と長期線の関係は上記の 6種類しかない。しかも、
その順番は上記の図の順番で決まっているのだ。これを見ると先ほ
どの『移動平均線 2本と価格の位置関係で過去の値動きがわかる』
というのがより鮮明になり、しかもこれからの動きまで想定出来
る!
■「げげげ。・・・こ、これが伝説の奥義ですか?」
□伝説が好きだな。
■「かつて戦国時代にこの秘伝を巡って、真田幸村と徳川家康が死
闘を繰り広げたと聞きました。」
□作るな!戦国時代に移動平均線なかったし。
いよいよ、次回はこの移動平均線大循環分析の解説だ!
■「なんだ、次回ですか!?」
□しようがない。今回はもう時間がない。
■「残念。では・・・次回はいよいよ伝説の講義、乞うご期待!」
□ハードルを上げるな!
【今日のまとめ】
移動平均線と価格の関係
価格の下に移動平均線 上昇トレンド
価格の上に移動平均線 下降トレンド
移動平均線を二本使ったときの移動平均線と価格の関係
☆上から長期移動平均線・価格・中期移動平均線
長期的には下降トレンドだったが目先上昇トレンドに変化して、価
格と中期移動平均線がゴールデンクロスした状態
☆上から中期移動平均線・価格・長期移動平均線
長期的には上昇トレンドだったが目先下降トレンドに変化して、価
格と中期移動平均線がデッドクロスした状態
■「起立、礼!」
移動平均線 その6
『テクニカル分析講座、実践編』
□さて、本日は移動平均線の最終回。加重移動平均線、
指数平滑移動平均線の説明に移る。
一般のサイトには移動平均線の種類として簡単に説明しているだけ
だが、実は加重移動平均線、指数平滑移動平均線はテクニシャン達
の夢への一里塚なのだ。
□テクニシャンを目指すなら、ここは極めなければならない。とい
うことで、移動平均線の最終回記念ということもあり、本日もまた
また特別拡大バージョンでお送りする。
■助手のムサシです。よろしくお願いします。本当は書
いているうちにあれも書きたいこれも入れたいとどん
どんページ数が増えて、・・・気がついたらこんなペー
ジ数になったというのが事実だったりします(笑)。
□余計なことは言わなくていい。
【移動平均線の略称】
単純移動平均線=Simple Moving Average=SMA
加重移動平均線=Weighted Moving Average=WMA
指数平滑移動平均線=Exponential Moving Average=EMA
□日本では単純移動平均線を使う人がほとんどだが、海外では指数
平滑移動平均(以下 EMAと呼ぶ)を使う人が多い。
よく注目される 200 日移動平均線なども単純移動平均線より EMA
を使う人の方が多いくらいなのだ。
それゆえ、他のテクニカル指標の中には EMAを使うことを前提に作
られているものもある。
■「そういえば 200日 EMAを抜けたとか、割り込んだとかいう解
説を時々見かけますが、あれは指数平滑移動平均線のことだったん
ですね。」
□そゆこと。
■「名前の付け方が下手ですよね。指数平滑移動平均線て、名前聞
いただけで拒否反応が出てきますよ。指数を平滑して移動して平均
してなんて。なんのことかさっぱりわかりません。」
□私もそう思う。が、その話はおいといて、説明を続けるぞ。まず
計算式を確認しよう。
n日間の移動平均線を計算する式だ。
1.まずは計算式を理解する。
※P1=1日目の価格、P2=2日目の価格、P3=3日目の価格、Pn=n日目の価格
※P1=1日目の価格、P2=2日目の価格、P3=3日目の価格、Pn=n日目の価格
※EMAy=前日の EMA、P=本日の価格
注、日足での計算法を示したが、その他の足(例えば週足、時間足、5分足等)
でも同じ。
■「うわっ、もうこうれ見ただけで鳥肌が立ちます。テクニカル分
析って理科系じゃないと理解出来ないんですか?僕はこう見えて、
ちゃきちゃきの文科系なんです。」
□そこで『ちゃきちゃき』なんて使うか?
■「じゃあ、こてこての文系。」
□それも違うがまあいい。よく聞け。テクニカル分析の計算式は文
科系の人にも十分理解出来る。というかほとんどのテクニカル指標
がきちんと教えれば 文系の人にも余裕でわかるレベルなのだよ。た
まに理系の人しか理解出来ないような複雑なテクニカル指標がない
ではないが、そういうのに限ってあまり使えな かったりする。そん
なもんだ。
テクニカル分析のサイトや本を読むと、計算式を申し訳程度に載せ
て、でも難しいから覚えなくてもいいですよ、なんて書いてある。
とんでもないことだ。この連載では何度も言うことになるだろうが、
計算式を理解しないでテクニカル分析は使いこなせない!これが私
のモットー。まずは頑張って、この計算式を自分のものにしなけれ
ばいけない。
■「辛くても苦しくても、この壁を乗り越えなくては!スポーツ根
性テクニカル分析『EMAへの道』、きみはあの計算式を制覇出来る
か!?好評連載中!」
□大げさな。
公式で書けば前記のようになるが実はそんなに難しくはない。世の
中には難しくないことを複雑に複雑に見せたがる人がいる。たとえ
ばワイルダーなどは、単純移動平均線より EMAの方が簡単だからっ
て理由で EMAを利用していたくらいだ。
■「本当ですか?」
□もちろん。その説明に移る前に、EMAをマスターしなければいけ
ない理由を説明する。
2.単純移動平均線には欠陥あり!?
□実は単純移動平均線には重大な欠陥がある!
■「げ、そうなんですか?ショックです。」
□単純移動平均線の問題点は大きく二つ。『過去 n日間の価格を同
じ比重で扱っていること。』『過去 n日間より前の価格をすっぱり
切り捨ててしまっていること。』このふたつだ。
単純移動平均線の問題点
1.過去n日間の価格を全て同じ比重で扱っていること。
2.過去n日間より前の価格を切り捨ててしまっていること。
■「それがどうしていけないんですか?」
□例えば100日移動平均線というのは過去100日間の価格を足して、
100で割るということだが、昨日の価格と 100日前の価格と同じウ
ェイトで扱っている。果たしてそれでいいのかという問題だ。
■「そんなこと考えたこともなかった。いけないんですか?」
□テクニカル分析で過去の価格を解析するのは、過去の価格が現在
の価格(及びこれからの価格)に影響を与えるからだ。となると、
昨日の価格と 100日前の価格が現在の価格に与える影響度合いは同
じだろうか?
■「そう言われると・・・。」
□それを解決したのが加重移動平均線。(以下 WMAと呼ぶ。)
例えば 5日間の値動きが A・B・C・D・Eだったとする。単純移動
平均線は
( A+B+C+D+E ) ÷ 5
だよね。
■「はい。」
□それに対し、WMAは
{ A+(B×2)+(C×3)+(D×4)+(E×5) } ÷ 15
となる。最近の価格に比重が高いことがわかるだろう。
■「なるほど。ところで 15で割る意味は?」
□これは 5日間の値なのだが、比重をかけたことにより、A・B・B・
C・C・C・D・D・D・D・E・E・E・E・Eという 15のデータを平
均したというようなことになるわけだ。だから 15で割らなければな
らない。
■「にゃるほど」
□このWMA、問題 1はクリアしたが問題 2をクリア出来ていない。
その両方をクリアしたのが・・・EMAなのだよ。
■「講師、ちょっと待ってください。2の問題点がいまいちよくわか
りません。なんで前の価格を捨てると駄目なんですか?」
□じゃあ、過去の平均的価格と現在の価格を比較するとき、何日移
動を使うのが正解なのかな?
■「そう言われると困りますが・・・・短期のケースは何日、中期
のケースは何日、長期のケースは何日とか、決めてやればいいじゃ
ないですか?」
□もちろん、そのとおり。でもたとえば 10日移動平均線を使ってい
たとする。ある日に(暴騰とか暴落とか)大きな動きがあった。し
ばらくはその動きに影響されるが、10日たつと突然、無視される。
それって正しいことだろうか?
■「難しいですね。」
□では違う観点で質問するぞ。読者の人も考えてくれ。例として 5
日移動平均線を考えよう。『5日移動平均線が昨日 1000円という値
をつけていた。 つまり過去 5日間の平均値が 1000円だったわけだ。
で、本日の価格が 1050円だった。さて、質問、移動平均線は上向
くか下向くか』、どっちだ?
■「そんなの決まっているじゃないですか、昨日の移動平均線が
1000円で本日が 1050円だったら上昇しているんだから、移動平均
線も上向くに決まっているじゃないですか?」
□ブッブー。はずれ。まだまだムサシ君に、移動平均線ソムリエを
名乗る資格はないね。
■げげ。違うんですか?では正解は?
□『それだけではわからない!』というのが正解。
■「ひっかけ問題だ。汚い!」
□汚くないぞ。これは単純移動平均線の本質論につながる。例によ
って 5日移動平均線を例にとる。
1日目の値 A
2日目の値 B
3日目の値 C
4日目の値 D
5日目の値 E
6日目の値 F
とする。5日目の移動平均は
( A+B+C+D+E )÷ 5
そして 6日目の移動平均は
( B+C+D+E+F )÷ 5
だよな?
この二つをよおく見比べてくれ。どこが変わったのだ。
■「そうか。Aが無くなり Fが加わったんですね。」
□そゆこと。これ当たり前じゃんと思っている読者が多いだろうが、
さて、次のことに気がついているだろうか
単純移動平均線が上向くかどうかは、『今日の価格が昨日の移動平
均線の値より大きいかどうか』
ではなく、
『今日の価格が消えていった n日前の価格より(上記ケースでは F
が Aより)大きいかどうか』
なのだ。
□テクニカル分析の世界ではこのことをこう解説されている。
『移動平均線が上昇するかどうは二つの要素がある。
ひとつは、今日の価格が高いか低いか。
もうひとつは、消えていく n日前の価格が高いか低いか。』
ちなみに n日前の価格が高かった場合は、移動平均線を下降させる
要素となり、n日前の価格が低かった場合は移動平均線を上昇させる
要素となる。
【重要】
単純移動平均線の動き(上昇・下落)は、
『今日の価格が消えていった n 日前の価格より大きいかどうか』で
決まる!
■なるほど。
□つまり、本日大きく価格が上昇しても、たまたま消えていく Aの
方がさらに高ければ移動平均線は下がる。ここで単純移動平均線を
使った分析は騙しが入りやすい。
■「うーん、なんか奥が深いですね。テクニカル分析の『奥の細道』
って感じです。」
□たとえがよくわからないが、まあいい。
1と 2の問題をクリアするためにプロのテクニシャンは EMAを使う。
■「せっかく単純移動平均線をあれだけ勉強してきたのに駄目じゃ
ないですか。」
□そんなことはない。実は結果として出てくるシグナルに関しては
単純移動平均線の方が有効という場面もある。単純移動平均線が全
く駄目だというわけではない。要は使い方。
しかし、一般の日本人のように EMAが難しいから単純移動平均線を
使うというのでは駄目だ。
正しく理解した上で使いわける。これがテクニシャンのあるべき姿
だ。
では、これからあらためて指数平滑移動平均線(EMA)を説明するぞ。
3.指数平滑移動平均線を極める!
□まずは小次郎講師流の計算式を紹介する。もちろん、私のオリジ
ナルではなく、こういう計算をしている人はたくさんいらっしゃる
と思うが。
【小次郎講師流 EMA の計算式】
1.過去のそれぞれの価格(1 日前から n-1 日前まで)は昨日の
EMA で代用
2.本日の価格は 2 倍
3.(本日の価格を 2 倍したため)データがひとつ増えるので、n
+1 で割る。
□わかりやすく 5日移動の EMAを例にする。昨日の EMAの値を
EMAyとし本日の価格を Pとする。
( EMAy×4 + P×2 )÷ 6
これが小次郎講師流の EMAの計算法だ。難しくないだろ?
■「すごいためになる話なんですけど、残念なお知らせです。・・・
講師、今、読者の三分の二が寝ています(汗;)」
□起こせ!ていうか、ここ一番大切なところだから読者の皆さん、
しっかり付いてきてほしいぞ。本物のテクニカル分析を身につける
ために。
■「はい、みんな顔洗ってきて。」
□ごほん。いいかな?では集中。下図を参考に単純移動平均と比較
してごらん。
『昨日までの価格は昨日の EMA で代用する。本日の価格は 2 倍す
る。本日の価格を 2 倍したので、平均値を出すとき 5 ではなく 6 で
割る。』これだけだ。
※5日移動の SMAと EMAの比較
□では補足しながら説明していくぞ。くどいが全員に理解してもら
いたいのでね。
単純移動平均線の 5日移動平均だったら、先ほど説明したとおり
( A+B+C+D+E ) ÷ 5
となるよな。そして次の日は
( B+C+D+E+F )÷ 5
となる。ここで指数平滑移動平均線は少し改良を加えた。どう改良
したかと言うと、
B+C+D+E
の代わりに、昨日の EMAを使う。EMAyと書くと複雑なので、昨日
の EMAを Hとする。
つまり
H+H+H+H
で置き換えた。
そして本日の価格を Pとする。この値は直近の値に比重を置くため
に 2倍する。
H+H+H+H+P×2
だ。これを平均するとなると、Pを二倍しているので、6個データが
あると計算して
( H+H+H+H+P+P )÷ 6
となる。
これが前記の図の意味。よおく比較して理解してくだされ。
□これにより、まず、本日の価格を 2倍とウェイトを置いているこ
とがわかる。
■「質問!本日の価格にウェイトを置くだけでいいんですか?加重
移動平均線では昨日の価格も、その前の日の価格もそれなりにウェ
イトを置いていましたが。」
□もちろん、そうあらねばならない。EMAではこの 2倍された本日
の価格が明日には昨日の平均値として組み込まれる。それを繰り返
していくわけだ。 ということは、本日の価格の次に昨日の価格にウ
ェイトがあり、その次に一昨日の価格にウェイトがあるということ
になるのだよ。つまり、最終的には加重平均 線と考え方は同じこと
になる。
■「そうか。なるほど、そうですね。」
□そしてこの EMA、5個のデータを計算しているだけに見えるが、
実はこの昨日の平均値 Hには 5日前の値段も入っている。そしてこ
れを繰り返すことにより、その前の日の価格もその前の日の価格も
入っていることになる。
EMA では単純移動平均線のように過去データをある日から切り捨
てるということがない。だから現在の平均値には全てのデータが反
映されている。
■「なるほど、5日移動の単純移動平均線でいうと、6日目には 1
日目の値を切り捨てて、2日目から 6日目の値で計算することにな
るわけですけど、EMAだったら全部の数値が含まれているわけです
ね。」
□そゆこと。
□では、EMAが単純移動平均より簡単だという話をしたが、そのこ
とを証明しよう。
例えば 100日移動の単純移動平均線の数値が昨日 1020円だったと
する。本日の価格が 1050円だったとする。さて、本日の移動平均
値はいくらか、計算出来るか?
■「今度はひっかかりませんよ。出来ないですね。昨日から 99日間
の価格データが全部揃わないと計算出来ません。」
□なるほど。
ところが指数平滑移動平均線だったら計算出来るのだよ。
( 1020 円×99 + 1050 円×2 )÷ 101
とね。
■「それでいいんですか?」
□昨日までの価格は昨日の EMAで置き換える。本日の価格は 2倍し
てウェイトを置く。これが EMAの考え方。だから、100日 EMAだ
ったら昨日の EMAを 99倍する、50日 EMAだったら昨日の EMA
を 49倍する。そして本日の値を 2倍して合計し、それを前者は 101
で、後者は 51で割ればいいん だ。どうだ難しくないだろ?
■「なんかそんな気がしてきました。不思議なものですね。
でも講師に教えてもらった計算式と、一番最初に計算式として教え
てもらった小難しい計算式と全然、似ても似つかないんですけど。
どちらが正しいですか?」
□これだね?
■「はい。」
□・・・・それが同じなんだよ、どちらも。 こちらを見てごらん。
□数式が並んでいるのでとっつきにくいかもしれないが、計算は中
一レベルだ。しっかりと確認してほしいぞ。
■なるほどなるほど。
□どうだ?最後の 1行は昨日の EMAを N-1個並べ、今日の価格を 2
倍にし、それを N+1で割っている。5日移動を例にすると、昨日の
EMAを 4つ並べ、本日の価格を 2倍し、その合計を 6で割るという
こと。つまり、私が説明した手法だ。
■「すごい。とても同じと思えませんでしたが、同じなんですね。」
□EMAは、単純移動平均より大きく前進したテクニカル指標なのだ。
そして・・・・昨日の EMAより今日の価格が上であれば、EMAは
上昇する。昨日の EMAより今日の価格が下であれば EMAは下落す
る。ここら辺も SMAの欠点を克服している。
■「必ずですか?」
□必ずだ。上記の図の 1行目をじっくりと眺めてごらん。最後の
( P-EMAy )
の部分で本日の価格と昨日の EMAとを比較している。そしてその前
にある
2 ÷( N+1 )
というのがちょっと難しいが『平滑定数』と言って、最近の値段に
どれくらいウェイトを置くかのパラメーター。そこで計算したものを昨日の EMA
にプラスマイナスするというのがこの式。
ということで・・・昨日の EMA より今日の価格が上であれば、今日
の EMA は必ず上昇する。昨日の EMA より今日の価格が下であれば
今日の EMA は必ず下落する。
■「なるへそー。」
■「ところで EMAの分析の仕方は単純移動平均線と同じでいいんで
すか?つまりゴールデンクロスやデッドクロスなど。」
□もちろんだ。過去の講義でゴールデンクロスの意味について解説
した。『過去 n日間の平均価格を算出してそれを現在の価格と比較
する。買い方がマイナスからプラスに移行するのがゴールデンクロ
ス、プラスからマイナスに移行するのがデッドクロス』と。
■「ですね。それで買い方売り方のマインドがそのクロスポイント
で大きく変化すると。」
□しかし、よく考えてみるとそこには大事な見落としがあった。
■「げ。何ですかそれは?」
□影響を及ぼすのは未決済で残っている注文だけだということ。例
えば 50日前に買って既に決済してしまった注文があるとする。その
注文を何円で買っていたとしても、それが現在の値動きに影響を与
えることはない。ここ、すごく重要。
■「なるほどなるほどなるほど。まだその注文が未決済で残ってい
るからこそ、損が少なくなったら手じまいたいとか、利益があると
きはいけいけムードになるとか、現在の値動きに影響を与えるわけ
ですね。」
□そゆこと。
つまり、単純移動平均線のように何日間の平均値ではもの足りない。
未決済で残っているもの全ての平均値を知りたいというのがテクニ
カル分析を探求する人間の見果てぬ夢なのだよ。
このために研究家はさまざまな手法を生み出した。しかし、どれも
正確にこれを表したものはない。
■「でしょうね。誰がいつどこで決済したかなどというのはわから
ない。」
□ということで正確にはわからないのだけど、月日がたつに連れて
少しずつ過去の注文は減っていくというのはわかるよな?
■「次第に決済されていくということですね。当たりまえですね。」
□それを表しているのが、指数平滑移動平均線なのだよ。過去の未
決済注文の平均価格というテクニシャンの追い求める見果てぬ夢に、
指数平滑移動平均線は単純移動平均線よりずっと近い。
■「にゃあるほど。」
□だから指数平滑移動平均線をプロは使うのだ。より真実に近付く
ためにね。
さて、最後にチャートで3つの線を比較してみよう。
5.EMAの特徴をチャートで探れ!
□じっくりと3つの線を見比べてご覧。特にチャートが上昇から下
降、下降から上昇に転じたときに、3つの線がどう動くかをよく比
較してご覧。
■「移動平均線ですから、いずれも遅行性があるわけですが、単純
移動平均線に比べると EMAやWMAは動きが速いですね。」
□だね。EMA、WMAが上昇に転じて、しばらくしてから SMAが上
昇する。EMA、WMAが下降に転じて、しばらくしたから SMAが下
降に転じるというのがよくわかるね。
そして先ほど話した『昨日の EMA より今日の価格が上であれば、今
日の EMA は必ず上昇する。昨日の EMA より今日の価格が下であれ
ば今日の EMA は必ず下落する。』というのも確認してくれ。そうな
ってるだろ?
■「確かに。」
□そして、じっくり見ると、EMAはWMAに比べて動きがなだらか
だということもわかる。『EMAは動きがなめらか』、これもキーワ
ードとして覚えておくといい。
■「指数『平滑』ですからね。なめらかでしょうね。」
【EMA チャートの特徴】
・EMA・WMA は SMA よりも早く変化する。
・EMA は動きがなめらか。
・昨日の EMA より今日の価格が上であれば今日の EMA は上昇する。
・昨日の EMA より今日の価格が下であれば今日の EMA は下落する。
□変化に対して動きが遅ければ仕掛けが遅れる。線がでこぼこして
いれば騙しが多くなる。そういった意味でも EMA、なかなか使いや
すいのだ。
■「なるほど、テクニカル分析の研究家の夢『過去の未決済のもの
全ての平均値』へ向けた一里塚がこの EMAなのですね。」
□そゆこと。
■「まるで邪馬台国を追い求める考古学者のようだ。ロマンを感じ
ますね。」
□そのとおり。テクニカル分析もある意味ロマンの追求だ。見果て
ぬ夢に向けて一歩一歩近付いていく作業だ。これで長らく続いた移
動平均線の解説もひとまず終了。ムサシ君、お疲れさま。
■「お疲れさまでした。お腹がすきました。」
□きみはそればっかりだ。この間マックでご馳走したばかりだぞ。
■「集中すれば減るもんです。実は近くに有名なおいしい店がある
んですよ。すしとヒレカツとうどんが人気だそうです。いかがです?」
□変な店だな。何が食べたいんだ?
■「もちろん、全部です。」
□そんなに食べたら死ぬぞ。
■「心配いりませんよ。『しすう、へいかつ、いどう、へいきん』
だけに、『すしー、ひれかつ、うどん、平気』」
□く、苦しい。た、助けてくれー
【今日のまとめ】
・200日移動平均線も海外では 200日 EMAを使うケース多し。
・単純移動平均線の問題点
①過去 n日間の価格を同じ比重で扱っている。
②過去n日より前の価格を切り捨ててしまっている。
・移動平均線の上昇・下降は、今日の価格が消えていった n日前の価格
より大きいかどうかで決まる。
・小次郎講師流 EMAの計算式
①過去のそれぞれの価格(1日前からn-1日前まで)は昨日の EMAで
代用
②本日の価格は 2倍
③n+1で割る
・EMAは過去のデータを切り捨てるということがない。現在の平均値には
全てのデータが反映されている。
・昨日の EMAより本日の価格が上であれば、EMAは必ず上昇する。昨
日の EMAより本日の価格が下であれば、EMAは必ず下降する。SMAは
こうはいかない。
・EMAのチャートは SMAより変化に早く反応する。それでいてなめらかな
動きをする。
□移動平均線6回講義終了。!
■「起立、礼!」