気温の予想を用いた栽培管理指導に向けた水稲の生育量予

測

岩手県農業研究センター高橋智宏

前回の発表で6月下旬に 7月中旬までの気温が予想できれば

生育量が予想できることを説明

　 6/25の積算気温・推定 平年比7/15までの予

測 平年比

移植からの気温 720℃ 96% 1198℃ 101%草丈 37.5cm 100% 59.7cm 101%葉齢 7.9葉 93% 10.8葉 102%

地上部乾物重 82.8kg/10a 83% 387kg/10a 108%稲体窒素吸収

量 2.62kg/10a 91% 5.72kg/10a 111%

気温と草丈 気温と葉齢

ひとめぼれH13-H24y = -2E-07x3 + 0.001x2 - 0.6716x + 130.47

R² = 0.9619

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

0 500 1000 1500 2000 2500 3000

地上部乾物重（kg/10

a)

移植後の積算日平均気温（℃）＜～成熟期＞

気温と地上部重

y = -4E-10x3 + 3E-07x2 + 0.0071x - 2.5015R² = 0.8817

-2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 500 1000 1500 2000 2500 3000

稲体窒素吸収量（

kg/10a)

移植後の積算日平均気温（℃）＜～成熟期＞

気温と窒素吸収量

施肥等で制御可能で、ある程度しか予測できないが条件が同じであれば予測可能

7月中旬の生育量・窒素吸収量の予測ができれば

追肥を判定する基準に当てはめ可能（幼穂形成期・ 7/15過ぎ）　 基準 乾物重 窒素吸収量

ひとめぼれ

下限 　 5kg/10a好適範囲 370～

460kg/10a5.8-7.2kg/

10a上限 　 8kg/10a下限未満：たくさん追肥

好適範囲：７月中旬に標準量 ( 窒素成分 1 ～２ kg）程度追肥上限以上：無追肥現場で測った6 月下旬に草丈から生育量の推定ができる（岩手県農業研究センターより生育量が多いか少ないか）→　７月中旬頃の生育量が推定できる　→　追肥量を判断できるかも

今年試したこと　①

-3.00

-2.00

-1.00

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

平年との気温差（

℃）

北上H25北上H22北上H17 類似年を検討して、

生育パターンを推定（従来の栽培指導の延長、２年前から実施）

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0 1200.0 1400.0 1600.0

地上部乾物重(g/㎡）

移植後の積算日平均気温（℃）

農研センター（北上）における類似年の生育経過（地上部乾物重）

H25推定 H22 H17

7/ 5

7/ 15

7/ 25

020406080100120140160

0 500 1000

地上部乾物重(g/㎡）

移植後の積算日平均気温（℃）

H25 H22 H17

6/56/15

6/ 25

H22年よりは生育は劣るが、 17年よりは旺盛ではないか

今年の稲作技術対策会議は７月 10日だったため、 7月上旬からの 28日気温予測及び２週間目の気温予測により追肥時期の生育量を推定

今年試したこと　②

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

稲体窒素吸収量

(kg/10a)

移植後の積算日平均気温（℃）

平成25年の幼穂形成期の農研センター「ひとめぼれ」窒素吸収量は約5.8kg/10aと推定！

H13～H24H25多項式 (H13～H24)

気温からの生育量予測からは標準量（窒素成分２ｋｇ～１ｋｇ／１０ａ）の追肥＜窒素吸収量から判断＞

土壌肥料側面からの判断（作物体の窒素量と土壌窒素量から7月中旬の生育量を推定＋と生育中期に発現すると予想される窒素量を推定）＜昨年から実施＞

今年試したこと　③

ひとめぼれ

0

2

4

6

8

10

12

3 4 5 6 7 87新しい追肥判定の目安＜ 月５日の窒素吸収

(kg/ 10a)量＋土壌アンモニア態窒素量 ＞

従来の栄養診断基準＜幼穂形成期頃

7/15

(kg/10a)

（）の窒素吸収量

＞

　 葉色や地力により追肥（減肥）を判断

　 　 　 　 　 　 要追肥

　 　 　 追肥不要y = 0.0439x - 5.59R² = 0.9572（H18-23)

いわてっこy = 0.0379x - 6.6769R² = 0.877（H18-22）

0

2

4

6

140 180 220 260

７月上旬～穂揃い期に増加する窒素量(kg/10a)

＜穂揃期の窒素吸収量－（6/5～

7/5の窒素吸収量

＋土壌アンモニア態窒素量平均）－追肥量＞

３月21日～４月30日の日照時間（hr)H18以降

ひとめぼれ

7月上旬の作物体と土壌からは葉色を見て減肥の判断　・・・地力窒素も平年並には出そう

　 H17 H22

追肥対策（施用量は kg/10a）

早生

１～ 1.5１

中生・晩生 1.5～2.0

追肥を判定する基準に当てはめると　 基準 乾物重 窒素吸収量

ひとめぼれ

下限 　 5kg/10a好適範囲 370～

460kg/10a5.8-7.2kg/

10a上限 　 8kg/10a

窒素吸収量 5.8kg/10a　→　好適範囲：７月中旬に標準量 ( 窒素成分 1 ～２ kg）程度追肥

葉色を見ながらの判断だが、標準追肥量（窒素成分２ｋｇ～１ｋｇ／１０ａ）を提示

過去の追肥判断事例を加味して最終的に施肥量を判断

ただし、７月中旬は低温、多雨となり、葉色も期待したより低下しなかったため、実際に追肥できた人は多くないと思われる

7

30/21

8

29/22

9

28/22

10

27/22

11

23/20

12

22/19

13

23/1914

26/20

15

29/19

16

30/19

17

22/17

18

22/17

19

26/18

20

26/17

７月２０日過ぎにはオホーツク海高気圧によるヤマセの発生？

７月中旬の低温により岩手県北・沿岸部は障害不稔の恐れ

350

550

750

950

1150

1350

1550

6/ 5 6/ 15 6/ 25 7/ 5 7/ 15 7/ 25

積算日平均気温（

℃)

北上 （5/15移植）

H25 移植後の積算気温 平年 移植後の積算気温

250

450

650

850

1050

1250

1450

6/ 5 6/ 15 6/ 25 7/ 5 7/ 15 7/ 25

積算日平均気温（

℃)

軽米 （5/20移植）

H25 移植後の積算気温 平年 移植後の積算気温

ただし、この時点で県南・県北とも平年並の積算気温に戻る　→　進んでいた生育も平年並に　

30

32343638

4042444648

50

0

10

20

30

40

50

60

70

80

6/ 5 6/ 15 6/ 25 7/ 5 7/ 15 7/ 25

葉色（SPAD)

草丈（

cm)

北上 ひとめぼれ（5/15移植）

H25 草丈 平年 草丈 H25 葉色 平年 葉色

30

32343638

4042444648

50

0

10

20

30

40

50

60

70

80

6/ 5 6/ 15 6/ 25 7/ 5 7/ 15 7/ 25

葉色（

SPAD)

草丈（

cm)

軽米 いわてっこ（5/20移植）

H25 草丈 平年 草丈 H25 葉色 平年 葉色

気温の低下による障害不稔の発生が気になるが

最も低温だったのは　　７／２０→　その頃減数分裂期だった場合危険！

ただし、障害不稔発生の目安となる冷却度は 18.8＜ Σ（２０－時間温度） /24＞・・・ 20以上で障害不稔の危険性が高まる　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たぶん大丈夫という予想

減数分裂期の稲の姿・・穂が出る準備をしている

減数分裂期の稲最後の 1枚の葉が出きった日

ちなみに 7月中旬～下旬は稲にとって最も低温に弱い時期　

予定外だったが低温対策に合わせて２回目の生育量推定を実施（ 7/25）

品種名 年次 減数分裂期 出穂期始期 盛期 揃い

ひとめぼれ

H25 （ 7月 29日） 8 月 7 日

平年（過去５年平均） 7 月 29日 8 月 5日 8 月 7 日 8 月 8日

（参考　過去 10年平均） 7 月 30日 8 月 6日 8 月 8 日 8 月 10

日

あきたこまち

H25 7 月 26日 8 月 3 日

平年（過去５年平均） 7 月 26日 8 月 1日 8 月 3 日 8 月 5日

（参考　過去 10年平均） 7 月 27日 8 月 3日 8 月 4 日 8 月 6日

いわてっこ

H25 7 月 20日 8 月 3 日

平年（過去５年平均） 7 月 26日 8 月 4日 8 月 6 日 8 月 8日

（参考　過去 10年平均） 7 月 27日 8 月 6

日 8 月 8 日 8 月 10日

７月２５日から出穂予想日までの予想平均気温を用いて移植～出穂期の積算日平均気温を試算　　　　　　　　　　　　　　→　出穂 ~穂揃い期の窒素吸収量を推定

週間予報と 2週間目の気温予測を用いて、移植から出穂期までの積算日平均気温を推定　

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

稲体窒素吸収量(kg/10a)

移植後の積算日平均気温（℃）

平成25年の穂揃い期の農研センター「ひとめぼれ」窒素吸収量は約8.6kg/10aと推定！

H13～H24H25多項式 (H13～H24)

→　出穂期の窒素吸収量は平年並と予想

y = 396.86ln(x) - 259.08R² = 0.6713

400

450

500

550

600

650

700

750

800

6 7 8 9 10 11

収量(

kg/a)

穂揃い期の稲体窒素吸収量（kg/10a)

精度は低いが窒素吸収量から収量も推定可能・・・岩手県農業研究センターの作況圃場の収量は約 600kg/10aの見込み（過去 10年平均は 608ｋｇ）

気になる県北の生育量と収量も推定→　障害不稔の被害が無ければ平年を上回る収量になるかも（県北は収量が低下する要因が多いので・・・）

y = 122.87ln(x) + 341.97R² = 0.497

500

520

540

560

580

600

620

640

6 7 8 9 10

収量(kg/a)

穂揃い期の稲体窒素吸収量（kg/10a)

平年並以上の収量になるかも→　雨が続いているので、むしろしっかりと病害防除をするよう指導につなげる

0

2

4

6

8

10

12

0 500 1000 1500 2000

稲体窒素吸収量(kg/10a)

移植後の積算日平均気温（℃）

平成25年の穂揃い期の県北農業研究所「いわてっこ」窒素吸収量は約8.2kg/10aと推定！

H14～H24H25多項式 (H14～H24)

今後の水稲生育指導に気象データを生かすために

①　岩手県農業研究センターのデータである程度生育量の推定が可能だが、現場の圃場への当てはめは未検討・・・実際に現場で生かしてもらうためには、今後現場データでの検討を行う必要がある（データが十分に揃っていないことも課題）

②　現場に当てはめる場合は、地力、施肥、用水、気象、管理等複雑な要因が多い・・・予測困難な可能性も高い　今年の予測結果をみて判断

③　気象経過が平年から大きく外れる年は予測困難となる　　・・・　異常年（特に低温年）は過去の結果を参考にするほうが　　　　　指導しやすい

予測の精度も大切だが、気象予測データを活用して積極的に現場指導に生かしたい。

H22

H15

0

2

4

6

8

10

12

14

16

20 22 24 26 28 30

胴割粒率（％）

出穂後５日～15日目の平均気温（℃）

ひとめぼれ・あきたこまち

H23 H24

気象予測データを活用できる場面はまだまだある