イケヤシロウ アートの持つプリミティブな力を吹き込む

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utte interview vol.7 アアアアアア アアアアアア アアアアアア SHIRO IKEYA, Artist, utte interview Inspiring the Primitive Power in Art July 2009 アアアアアアアアアアアアアアアアアアア

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クリエイター作品の販売ウエブサイト「utte」に掲載するクリエイター×ウッテリエ・インタビュー。気鋭のクリエイターの創作世界観を、ウッテリエ(utte+sommelier=クリエイティブ界のソムリエの造語)が2000字から2500字でぎゅっと伝えます。2009年7月にお伺いしたアーティスト イケヤシロウさんとのクリエイティブなインタビューです。そのプリミティブでファンタスティックなペインティングの魅力をお楽しみください。

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Page 1: イケヤシロウ アートの持つプリミティブな力を吹き込む

utte interview vol.7

アーティスト イケヤシロウインタビュー

SHIRO IKEYA, Artist, utte interview

Inspiring the Primitive Power in ArtJuly 2009

アートの持つプリミティブな力を吹き込む

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

Inspiring the Primitive Power in Art

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

この冊子は、クリエイター作品の販売ウエブサイト

「utte」に掲載するクリエイター×ウッテリエ・イン

タビューです。気鋭のクリエイターの創作世界観を、

ウッテリエ(utte+sommelier=クリエイティブ界の

ソムリエの造語)が 2000 字から 2500 字でぎゅっと

伝えます。

2009 年 7 月にお伺いしたアーティスト イケヤシロウ

さんとのクリエイティブなインタビューです。そのプ

リミティブでファンタスティックなペインティングの

魅力をお楽しみください。

皆さまからのコメントが励みになります。お手紙は

utte の電子メールアドレスまでお願いいたします。

[email protected]

utte ブックレット制作責任者 郷好文

同 村山桜子

Inspiring the Primitive Power in Art

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

イケヤシロウ utte ウエブサイト

http://www.utte.co.jp/joomla/content/view/960/54/

utte ウエブサイト

www.utte.co.jp

イケヤシロウ HP

http://www.whambamworld.com/

ブログ http://www.whambamworld.com/blog/

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

イケヤシロウ /アーティスト

自己紹介

イラストやファッション関係の活動や仕事を主にしてい

る自分ですが、最近新しい試みとして自分の制作活動の中

にアート雑貨としてハンドメイドの絵皿や陶器など、自

分のアート作品として実際に生活の中で楽しんで使って

もらえる作品などにも精力的に取り組んでいます。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

経歴

1975 年生まれ 米国マサチューセッツ州セーラム大学

アート学科グラフィックデザイン科卒

多くのアパレルブランドとのオリジナルグッズの制作、

アートワーク、プリントグラフィックの制作やコラボレ

ーションを数多く行う。

また東京やドイツ、ベルリンにてエキシビションやライ

ブペインティングを行う。

ニューヨークの Uraban Arts Research and Marketing

への参加。

リトルモア出版より絵本「ロンとふしぎなスニーカー」

を発売。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

アートの持つプリミティブな力を吹き込む

「毎日が冴えない日々でしたね」

デザイナーと呼ばれるのにちょっと抵抗があるそうで

(そのワケは後で語ってくれた)、その作品イメージか

ら“くらしをブライトアップするアーティスト”と表現して

おきたい。そのイケヤシロウさん、のっけから、高校時

代は冴えなかったと語り出した。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

「志が高くないティーンエイジャーというか、毎日冴え

なかったなあ。自分がどんなヤツなのかとか、生きるっ

てなんなのか、どう生きようかとか、さっぱり考えない

で。何かやりたいとか、なかったんですよ」

へえ!そうなんですか?でも 100%真に受けられない。

なぜって、イケヤさんのアートデザインに思い入れが深

いファンは多いし、かくいうわたしたちも、彼が段ボー

ルから出した絵付けデザインの器や皿に惹かれました。

シンプル&プリミティブな絵柄、すごく冴えています。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

モチーフはアフリカンアートやメキシコ遺跡の手描きの

絵に通じるところがある。コウモリ、ネコ、オオカミ、

ドクロ、骨・・・。プリミティブなモチーフたちからは

感情をあらわな表情は見えてこない。その代わり“生きて

いるさ、オレたちは”という、じわっと生命力を内側から

にじみだす。

【なぜグラフィックデザインを?】

今は伊豆の国市となった風光明媚な静岡県大仁町で、これ

といって欲望もなく冴えない日々を送っていたイケヤさ

ん、唯一力をイレこんだものがあった。それはバンド演

奏。ベースギターを受け持ち、ビートルズやローリング

ストーンズなど 60 年代の洋楽サウンドにハマった。75

年生まれにしては、珍しいテイストでしょう。

レコードのピックアップを上げたのか、はたまた下ろし

たのか、冴えない高校の日々から、米国ボストンのセー

ラム大学に入学。「日本にいても仕方ないなというぼん

やりとした思いでした」 わかるようなわからないよう

な。1 年目の教養コース後、メジャー(専攻)に選んだの

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が“グラフィックデザイン”。なぜグラフィックデザイン

を?

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

「絵を描くのが特別好きではなかったんです。そもそも

グラフィックデザインとは、グラフ用紙のことかと思っ

てました」(爆笑)。

何となく選んだグラフィックデザインだったが、1995 年

前後、パーソナル・コンピューティングがブームになり

そしてインターネットの爆発前夜だった。他の授業は冴

えなかったが、グラフィックデザインの授業だけはイレ

こんだ。その自由さが気に入った。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

Illustrator、Photoshop、 Quark など画像制作・処理の

ソフトウエア、そして広告コピー、センテンス、レイア

ウト、レタリングなど一連の技術を学んだ。イレこんだ 2

つ目のものはグラフィックデザインだった。

【仕事とエゴ】

当時、目指したい“アート・プロダクション”があった。そ

れは Jazz レーベルの『Blue Note』。数多くのアルバム、

とりわけブルースの大御所 Jimmy Reed のジャケットの

写真、レイアウト、タイポグラフィに惚れた。いやアル

バム自体だけでなく、Blue Note という制作スタイルが

凄いと思った。

「アートとしても仕事としても、エゴが高いレベルで一

致しているのが凄い。アイデアも制作も、エゴイスティ

ックにやりつつ、商品として求められていることも実現

している」

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

志は上がり、卒業後は NY ブルックリンを目指した。プラ

クティカルトレーニング(就職活動できるビザ)期間に

広告会社などで働いた。日本の仕事で『地球の歩きかた』

のフロリダ・ディズニーランドの地図を描いた。もちろ

ん行ったこともなかった(笑)。NY と東京のカルチャー

をバイリンガルで紹介するフリーペーパー『Educated

Community』にも参加した。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

海外と日本を往復し、ファッションやデザインの仕事を

するうちに、“単なる仕事以上”の自分の表現やアート的な

欲求を求めていくようになった。

依頼された仕事の中だけではなかなか本当の意味で

100%自分の表現はむずかしいなと感じて、自身のブラン

ド Wham Bam をはじめ、数多くの著名ブランドとコラ

ボ、個展や作品制作活動を精力的に行う。その中での活動

の一つとして 2007 年には絵本『ロンとふしぎなスニー

カー』(リトルモア)も出版。

【2つの突破口】

 「モノに、消耗品以上の思いいれを持つ人には、つら

い時代になりましたね」

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

08 年のリーマンショックのあと、ユニクロ、フォーエバ

ー 21、H&M といった低コスト・ノン個性のカジュアル

が幅をきかせるようになった。少品種少量生産のアパレ

ルはどこかに消えた。時代はイケヤシロウさんにだけで

なく、あらゆるアーティストに厳しいものになった。だ

が突破口は割と身近にある。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

「今後、自分がもっと本当に自由でより高い自分自身の

テイストとオリジナリティーを作品や商品に持たせてい

ければと思っています。なおかつそれが世間のニーズや

評価とクロスできれば最高です。

世の中のファッションやトレンドカルチャー、新しいも

のを飲み込んでは動いてゆく。トレンドを意識すること

もあるけれど、あえてそれは横目で見るくらいにして、

夢はもっと根本的なところで、表現するスタイルのもの

を作っていけたらと感じる。

ひとつは自分が“デザイナーかどうか”考えること。

「いいデザイナーになるって自分には向いてないなって

おもったんです」

家を建てる大工のように、施主の要望を聞き予算をにら

んで上手に素材を組み合わせ、住まい手のために作るの

が苦手だと語る。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

「自分がああしたい、こうしたいが先行してしまうんで

す。自分の中ではいいものが作りたいっていう気持ちな

んですけどね。たぶん我がままなんでしょう(笑)」

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

ココチ良い住まいとは、住まい手のために作るもの。大

工がオモテに出ずに、誰かの役に立ちたいと思ってこそ、

良い家が建つ。そこまで思いきるのはあんがいむつかし

い。だがイケヤさんは、もっと原点を見据えている。

「ラスコーの壁画なんかをみるとすごいなって思うんで

すけど、大昔の人も、生活や文化の全然違う現代の自分達

も、人間の根源みたいな部分で何かを感じるような気が

します」

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

そう考えなおして、シンプル&プリミティブなモチーフ

を、いろいろなモノに展開し始めた。お皿の絵付けや可

愛いテープカッターに。ショッピングモールのオブジェ

はみんなのために。

もうひとつの突破口は、ビートルズを聴き返すこと。

「ビートルズは今聴いても新しい発見がありますね」イ

ケヤさんは言う。

“ ホワイトアルバム” “赤と青のアルバム” “リボルバー”

など、つい今どきオッつぁんしか知らないビートルズ話

に脱線したが、おっと待てよ、彼は思い出を語っている

わけじゃない。新しい発見とは、いったい何だろう?初

期のビートルズは R&B のカヴァーバンドに過ぎなかった

が、オリジナルの曲づくりに移り、やがて独自の音楽世

界を創った。

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アートの持つプリミティブな力を吹き込む

好きなことといえば音楽、と語る。子供のころに初めて

ビートルズを聴いて以来、現在もバンド活動や作曲をす

る。それは彼の作品の中のプリミティブなリズムに出て

いる。ポップスとアートの境目に立って、日常ヘンテツ

もないモノ(シャツ、器、カップ)に、ヒトの持つプリ

ミティブな力を吹き込む。アートの持つ根源の力となる。

2009 年 7 月 1 日

文・郷 好文

写真・村山桜子

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