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起業、ファイナンスのために起業家 が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~ 弁護士 2012111© 2011 Masa Masujima All rights reserved 第3回 ファイナンス その1

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Page 1: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識

~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

弁護士 増 島 雅 和

2012年1月11日

© 2011 Masa Masujima All rights reserved

第3回

ファイナンス その1

Page 2: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

おさらい

Page 3: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

!   Attorney @ Mori Hamada & Matsumoto

!   Worked for Wilson Sonsini Goodrich & Rosati @Silicon Valley

!   Specialty: M&A Finance

!   Life Work: Startup

http://startupinnovators.jp/

Twitter @ hakusansai

MASA MASUJIMA

Email: [email protected]

Page 4: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

!   ガバナンス=ファイナンス

!   資本拠出には統制が伴う

!   投資家・起業家・ベンチャー企業の関係

!   投資家:物的資本の拠出

!   起業家:人的・知的資本の拠出

!   ベンチャー企業:資本の受け皿(箱)

ü  起業家への統制・モニタリング(株主間契約) ü  優先株によるダウンサイド保護+アップサイド確保

ü  スウェットエクイティ

!   段階的投資モデル

!   異時点間投資のガバナンス調整

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ベンチャー企業のガバナンスモデル

投資家

起業家

ベンチャー企業

事業アイディア(認知資産)

労務(人的資本)

資金(物的資本)

モニタリング

優先株

引受契約

株主間 契約

スウェット

エクイティ

Page 6: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

スウェット・エクイティ

Page 7: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

スウェット・エクイティのコンセプト

資金のない会社の立ち上げ期に十分な報酬を得ずに会社の立ち上げに尽力した創業者等に報いるため、これらの創業者等に投資家よりも低い価額で株式を取得することを許容する実務

(例)

創業者:普通株1株1,000円×1000株

投資家:A種優先株1株30,000円×200株

・事業アイディア

・開発等 プレマネー3000万円

開発済ソフト・ビジネスモデル・労務費を評価

投資直後の創業者の株式価値は?

・潜在的には3000万円(x30) ・エグジット価値は1500万円 ⇐ 優先株のliquidation preferenceが3倍・参加型   

の場合(但し、制限条項)

Page 8: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

スウェット・エクイティの留意点

!   制限条項の存在

!   4年間の買戻条項(取得価額による) !   1年継続で1/4買戻権消滅、その後1ヶ月ごとに1/48づつ消滅

4年で制限が外れ、完全な所有権

!   CoCは買戻権消滅加速事由(全部~12ヶ月分)

但し、責めによらずに会社を去らなければならなくなった場合に限るとする制限を課す場合も多い(ダブルトリガー)

!   自己株式取得規制との関係

!   分配可能額の有無 !   分配可能額がない場合のアレンジメント

!   税務の問題 !   2011年10月4日国税庁確認:SO事案であるが、普通株と優先株の価格差自身は肯定?

Page 9: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

段階的投資モデルのファイナンス

Page 10: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

段階的投資モデルのコンセプト

!  シリーズを刻むことで過剰投資抑制・稀釈化防止・起業家モチベーション維持

!  優先株の利用(ダウンサイド保護・アップサイド確保・株式インセンティブ活用)

(例)

創業者:普通株1株1,000円×1000株 A種投資家:A種優先株1株30,000円×200株(プレ3000万・調達600万) B種投資家:B種優先株1株60,000円×300株(プレ7200万・調達1800万) C種投資家:C種優先株1株100,000円×1000株(プレ1.5億・調達1億) D種投資家:D種優先株1株150,000円×500株(プレ3.75億・調達7500万) IPO:1株200,000円(時価総額6億)

Page 11: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

段階的投資モデルのポイント

!   優先順位:D>C>B>A>普通 !   残余財産の優先分配条項がカギ

!   3x 参加型 累積未払配当の有無 !   CoCでみなし清算 = 優先分配権に従って企業価値を分け合う

(例)

時価総額6億でIPOの場合:

時価総額6億でバイアウトの場合:

創業者:2億(x200) A種:4000万(x6.7) B種:6000万(x3.3) C種:2億(x2.0) D種:1億(x1.3)

D種:2.25億+50万(3x) C種:3億+100万(3x) B種:5,400万+30万(3x) A種:1800万+20万(3x) 創業者:100万(1x)

Page 12: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

リーンファイナンスモデルによるゲームチェンジ

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リーンスタートアップのコンセプト

!  トヨタ生産方式(lean  product  system)を理論的基礎として、これをアントレプレナーの事業戦略として定式化

!   アントレプレナーをCEOなどと同様の専門スキルを持った職能ととらえ、スタートアップのみでなく社内の新事業開発にも応用できる、とされている。

!  戦略の核は「ムダ取り」=効率性(生産性)向上 !   現代は「生産能力」が「何を作るべきかを知る能力」を追い抜いた時代、重要なのは「作れるかどうか」ではなく「作るべきかどうか」

!   「作るべきかどうか」は、元来イノベーション領域であり、天啓、着想、起業家センスの問題と考えられてきたが、その結果、労力・資金を投じてムダな(=顧客がつかない=カネを生まない)製品・サービスが多く作られてきた、という認識。

!   インスピレーションを基礎としたアドホックな領域を科学的に分析し、イノベーションの過程を形式知化することで、事業開発時のムダを排除。

Page 14: 第3回起業、ファイナンスのために起業家が知っておくべき必修法知識 ~ロジックで理解するベンチャーファイナンス~

リーンスタートアップの方法論

!  開発のムダを可視化=validated  learning  !   根本仮説(leap-of-faith assumption)の明確化 !   特に価値仮説(value hypothesis)と成長仮説(growth hypothesis)

!  開発(Build)-­‐測定(Measure)-­‐学習(Learn)フィードバックを回して製品開発

!   Build:最短期間・最少労力で最低稼働製品(MVP)を開発 !   Measure:開発努力が製品の発展につながっているか測定

ü  innovation accounting(無効測定基準/有効測定基準)(分割テストとコホート分析)(かんばん方式)

ü  learning milestone (MVP⇒チューニング⇒転向/維持)

ü 測定基準のポイント:actionable, accessible, auditable Ø  Actionable:原因結果の明確性 Ø  Accessible:開発者で共有・一目瞭然の分かりやすさ等 Ø  Auditable:データの信用性⇐意思決定の根拠としての説明可能性

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リーンスタートアップの方法論

!  転向(pivot)/維持(preserve)  !   当初仮説の成否を判定できるほど製品開発が進んだ時点で、転向/維持を決断 !   Innova;on  accoun;ngによる有効な測定を前提に、開発のムダを極力抑えるよう適切なタイミングで転向判断を実施

!   Zoom-­‐in  pivot(一部分にフォーカスした事業モデル),  customer  segment  pivot(製品機能を維持して対象顧客層を変化),  customer  need  pivot(より重要な顧客ニーズに応える転換),  pla>orm  pivot(プラットフォーム化、アプリ化),    

!  成長(Growth)/スケール

リーンスタートアップモデルを前提とした段階的投資ストラクチャー =

リーンファイナンスモデル

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リーンファイナンスモデル

Startup Genomeレポート:6ステージを想定 !  発見(Discovery) !   意義のある問題解決か、その解決策に興味を示す者がいるかをリサーチ

!   創業チーム編成、顧客調査、価値提起を発掘、MVP作成

!   5‐7ヶ月

!  検証(valida;on) !   利用者の製品への関心を確認する初期段階

!   コア機能の強化、測定・分析の実行、雇用、シードファイナンス !   3‐5ヶ月

!  効率化(efficiency) !   事業モデルの洗練、顧客獲得の効率性アップ !   価値提起を洗練、UX改訂、成長エンジン点火(チャネル開拓、バイラル) !   5‐6  ヶ月

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!  スケール

リーンファイナンスモデル

!   アクセル踏み、アグレッシブに成長模索

!   VCラウンド、顧客獲得、バックエンドスケーラビリティ改善、執行陣迎える、プロセス設定、部門設立

!   7‐9ヶ月

!  利益極大化 !  リニューアル

ステージごとの最適調達額

!  発見ステージ:100万‐500万 !  検証ステージ:1000万‐1.5億(タイプによる) !  効率化ステージ:0  !  スケールステージ:1.5億‐7億(タイプによる)

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リーンファイナンスモデル

!  オートマイザー !   消費者フォーカス、商品中心、手作業の自動化

スタートアップのタイプ分け

!   Google,  Dropbox,  Groupon,  etc  

!  ソーシャルトランスフォーマー !   勝者総取り市場、ネットワーク効果、複雑なUX  !   Facebook,  twiUer,  Linkedin  

!  インテグレーター !   商品中心、マネタイズが早い

!  チャレンジャー !   事業向け販売、顧客依存度高い、市場の複雑さ、参入の難しさ

!   Oracle,  SalesForce  

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リーンファイナンスモデルによるゲームチェンジ

!   起業コストの劇的低下 !   起業家:入り口が広がる/ 次のラウンドに進めない企業が増える !   投資家:分散が効く /モニタリングコストをかけられない

多産多死モデル

!   雇用逼迫 アクセラレータ活躍の余地

!   テック・ガイ、デザイナー獲得目的のM&A 4年程度は拘束される

!   既存VC・法律事務所の地位低下

マクロに見ると、ゲームチェンジは周辺で顕著?

起業家全体で見ると有利・不利がオフセット?

起業家ミクロで見ると選択肢が広がっているのは事実

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次回予告

ファイナンス獲得の流れ

タームシート解説と交渉ポイント

ブリッジファイナンスの検討