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学内研究センター 環境 083 音波を用いた河川・気象の流れ計測 流域圏科学研究センター 准教授 玉川 一郎 e-mail: [email protected] 超音波風速温度計を用いた森林-大気間エネルギー物質交換量観測 超音波素子を向き合って並べ、その間で 音波を往復させると、往復の音速差から、 媒質である空気の運動がわかる。これを3 組組み合わせると、風速の3成分を高速 に計測できる測定器ができる。また、音速 を利用した温度計測も可能になる。赤外 線の吸収を利用したガス(H 2 O, CO 2 )分析 計と組み合わせると、その場所を乱流で 運ばれていくガスや熱の量が計測でき、 森林での炭素吸収などの計測に使われて いる。 手作りSODARを用いた上空の風観測 ADCPを用いた河川流速の観測 Acoustic Doppler Current Profilers (Teledyne社製)は、4方向に音波パル スを発射し、水中で散乱されて返って くる音波のドップラー効果を使って流 速を計測する装置である。返ってくる までの時間から距離もわかるので、流 速の分布が計測できる。また、河床位 置も計測することができる。ここでは ボートに取り付け、光波測距儀と組み 合わせて、長良川の流速分布と河床 形状を計測している。その結果から、 遊泳危険箇所の水理特性などを研究 している。 上記ADCPと同様に、大気中へ音波パル スを発射することにより、上空の風速分布 を計測することができる。この装置は、 SOnic Detection And Ranging SODAR)と 呼ばれる。研究室では、一般に手に入る 材料で安価な装置の開発も行っている。 自作のパラボラ型音響反射機を送受信に 利用した装置で、数十mの距離の観測が できるまでになった。 気象・河川などの分野では、音波を用いた計測がよく使われる。ここでは水系動態研究分野(教授:藤田裕一郎、 准教授:玉川一郎、技術専門員 : 水上精榮(工学部) )での使用例を紹介する。 ADCPの概要 流速・流向・水深の計測機器 ドップラー効果を利用 ボトムトラッキング機能 4つのビームで計測 3次元の流速成分(u , v , w) + 誤差流速 データの欠落防止 ADCP機器センチネル ADCP機器リオグランデ 河床から反射するエコーのドップラー効果 を用いて自機の対地速度(船速)を計測 自機に対する相対流速 - 船速 = 実流速 (Acoustic Doppler Current Profiler) 移動観測 複雑な流れが発生している場所とその周辺を繰り返し移動観測 することで,全体の流れ場および河床の変化を詳細に把握する. 観測補助用モーターボート 光波測距儀によりプリズムを 自動追尾し測定位置を記録 Riverboat ADCP レジャー用魚群探知機 プリズム 自動追尾 レジャー用魚群探知機も併用し, ADCP直下の部分の水深を計測 20101224日の移動観測によ る計測から得られた水深1.05m点の全流速ベクトル分布 SODARの向きを変えて計測した結果より 水平方向の風速を計算する。 51.4m先(上空約13.3m)では北北西の風 0.7m/s -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 0 90 180 270 360 風速(m/s) 北からの方角(時計回り) 観測値 北北西の風0.7m/s 0.00E+00 5.00E-08 1.00E-07 1.50E-07 2.00E-07 2.50E-07 3.00E-07 3.50E-07 4.00E-07 4.50E-07 -10-9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 パワースペクトルの平均値 風速(m/s35.2m(上空約9.1m)の観測の風速とパワースペクトルの平均値(日時2011 1271428岐阜大学農場付近) Saitoh, T. M., Tamagawa, I., Muraoka, H., Lee, N. -Y. M., Yashiro, Y., and Koizumi, H., 2010: Carbon dioxide exchange in a cool-temperate evergreen coniferous forest over complex topography in Japan during two years with contrasting climates. J. Plant Res., 123, 473-483. による。 高山常緑針葉樹林サ イトにある観測タワー (上)と計測器小屋(下) 水平風速1 (m/s) 鉛直風速 (m/s) 水平風速2 (m/s) CO 2 μmol/m 3 気温 () 水蒸気量 kg/m 3 タワー頂部で観測された201192613時(JST)からの30分間の乱流データ 気温と水蒸気量が高く、CO 2 濃度の低い森林の空気が上昇していること などが見える。 タワー頂部の超音波風速温度計 と赤外線ガス分析計 観測を基に推定 された、この森 林での 呼吸量(a)、 光合成量(b)、 炭素放出量(c同地での水深の分布 上空でのドップラーシフトの観測例 計測準備の様子。観測時はパラボラを上空に向ける。 移動観測 定点観測 長良川千鳥橋上流部 左回りの渦 湧き出し位置 逆流 FLOW 河川表面流れの様子 定点観測 流れが複雑な場所において,流速・流向の時間変動 を計測し,渦の形成過程や消長状況を把握する. プローブ計測によってADCPでは捉えられない 高周波数領域の乱れ特性についても調べる 河川横断方向にロープを張り ボートを固定し,一定時間計測する 定点観測用ボート ADCP 3次元電磁流速計 プリズム 測定位置の記録は移動観測と同様 観測方法 PC アンプ ミキサー スピーカ マイク パラボラ パラボラ 音声出力 音声入力

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学内研究センター 環境

083 音波を用いた河川・気象の流れ計測

流域圏科学研究センター 准教授 玉川 一郎

e-mail: [email protected]

超音波風速温度計を用いた森林-大気間エネルギー物質交換量観測

超音波素子を向き合って並べ、その間で音波を往復させると、往復の音速差から、媒質である空気の運動がわかる。これを3組組み合わせると、風速の3成分を高速に計測できる測定器ができる。また、音速を利用した温度計測も可能になる。赤外線の吸収を利用したガス(H2O, CO2)分析計と組み合わせると、その場所を乱流で運ばれていくガスや熱の量が計測でき、森林での炭素吸収などの計測に使われている。

手作りSODARを用いた上空の風観測

ADCPを用いた河川流速の観測

Acoustic Doppler Current Profilers (Teledyne社製)は、4方向に音波パルスを発射し、水中で散乱されて返ってくる音波のドップラー効果を使って流速を計測する装置である。返ってくるまでの時間から距離もわかるので、流速の分布が計測できる。また、河床位置も計測することができる。ここではボートに取り付け、光波測距儀と組み合わせて、長良川の流速分布と河床形状を計測している。その結果から、遊泳危険箇所の水理特性などを研究している。

上記ADCPと同様に、大気中へ音波パルスを発射することにより、上空の風速分布を計測することができる。この装置は、 SOnic Detection And Ranging (SODAR)と

呼ばれる。研究室では、一般に手に入る材料で安価な装置の開発も行っている。自作のパラボラ型音響反射機を送受信に利用した装置で、数十mの距離の観測ができるまでになった。

気象・河川などの分野では、音波を用いた計測がよく使われる。ここでは水系動態研究分野(教授:藤田裕一郎、准教授:玉川一郎、技術専門員 : 水上精榮(工学部) )での使用例を紹介する。

ADCPの概要

流速・流向・水深の計測機器

ドップラー効果を利用

ボトムトラッキング機能

4つのビームで計測

3次元の流速成分(u , v , w) + 誤差流速

データの欠落防止ADCP機器センチネル

ADCP機器リオグランデ

河床から反射するエコーのドップラー効果を用いて自機の対地速度(船速)を計測

自機に対する相対流速-船速=実流速

(Acoustic Doppler Current Profiler)

移動観測

複雑な流れが発生している場所とその周辺を繰り返し移動観測することで,全体の流れ場および河床の変化を詳細に把握する.

観測補助用モーターボート

光波測距儀によりプリズムを自動追尾し測定位置を記録

Riverboat ADCP

レジャー用魚群探知機

プリズム

自動追尾

レジャー用魚群探知機も併用し,ADCP直下の部分の水深を計測

2010年12月24日の移動観測による計測から得られた水深1.05m地点の全流速ベクトル分布

SODARの向きを変えて計測した結果より

水平方向の風速を計算する。

51.4m先(上空約13.3m)では北北西の風0.7m/s

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

0 90 180 270 360

風速

(m/s)

北からの方角(時計回り)

観測値

北北西の風0.7m/s

0.00E+00

5.00E-08

1.00E-07

1.50E-07

2.00E-07

2.50E-07

3.00E-07

3.50E-07

4.00E-07

4.50E-07

-10-9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

パワースペクトルの平均値

風速(m/s)

約35.2m(上空約9.1m)の観測の風速とパワースペクトルの平均値(日時2011年1月27日14時28分 岐阜大学農場付近)

Saitoh, T. M., Tamagawa, I., Muraoka, H., Lee, N. -Y. M., Yashiro, Y., and Koizumi, H., 2010: Carbon dioxide exchange in a cool-temperate evergreen coniferous forest over complex topography in Japan during two years with contrasting climates. J. Plant Res., 123, 473-483. による。

高山常緑針葉樹林サイトにある観測タワー(上)と計測器小屋(下)

水平風速1 (m/s)

鉛直風速 (m/s)

水平風速2 (m/s)

CO2量 μmol/m3

気温 (℃)

水蒸気量 kg/m3

タワー頂部で観測された2011年9月26日 13時(JST)からの30分間の乱流データ 気温と水蒸気量が高く、CO2濃度の低い森林の空気が上昇していることなどが見える。

タワー頂部の超音波風速温度計と赤外線ガス分析計

観測を基に推定された、この森林での 呼吸量(a)、 光合成量(b)、炭素放出量(c)

同地での水深の分布

上空でのドップラーシフトの観測例

計測準備の様子。観測時はパラボラを上空に向ける。

移動観測

定点観測

長良川千鳥橋上流部

左回りの渦

湧き出し位置

逆流

FLOW

河川表面流れの様子

定点観測

流れが複雑な場所において,流速・流向の時間変動を計測し,渦の形成過程や消長状況を把握する.

プローブ計測によってADCPでは捉えられない高周波数領域の乱れ特性についても調べる

河川横断方向にロープを張りボートを固定し,一定時間計測する

定点観測用ボート ADCP

3次元電磁流速計

プリズム

測定位置の記録は移動観測と同様

観測方法

PC

アンプ

ミキサー

スピーカ

マイク

パラボラ

パラボラ

音声出力

音声入力

大気散乱