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1 平成 27 年度経済産業省委託 平成 27 年度化学物質安全対策 肝 S9 を用いた in vitro による生物蓄積性評価法に関する調査 調査報告書 平成 28 年 3 月 九州大学

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平成 27 年度経済産業省委託

平成 27 年度化学物質安全対策

肝 S9 を用いた in vitro による生物蓄積性評価法に関する調査

調査報告書

平成 28 年 3 月

九州大学

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目 次

1. 緒言

2.調査目的

3. 調査概要

4.調査結果

5. 業務実施体制

6. 調査結果の公表

7. 参考文献

8.補足資料(試薬調製)

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1. 緒言

化学物質は、現代社会に必要不可欠であり人間生活を支えているといっても過言ではない。

実際に化学物質を市場に出すには、化学物質審査規制法に基づきその安全性が審査されてか

ら使用されている。しかしその審査には時間と費用を要し、国際競争力を高めるためにも安

全性を確保しつつも、迅速かつ安価な審査が求められている。また、動物愛護の立場からも

物質の蓄積性試験に用いる試験生物の削減と迅速な評価が必要とされている。

その一端として目下 OECDにおいて in vitro試験による生物蓄積性評価法(in vitro 代謝試

験)が検討され、中でもニジマス肝臓ホモジネート遠心後上澄 (以下 S9)を用いた試験法

(Fay et al, 2014; Lee et al, 2014)が検討されている。2014年度からテストガイドライン化が

進められ、欧米等の専門機関においてリングテストが実施中である。In vitro 代謝試験の

OECDテストガイドラインが完成すれば、我が国においても化学物質審査規制法に基づく濃

縮度試験等に活用出来ることが期待される。また、将来当該試験データが化審法審査資料と

して提出される可能性があり、その対応が急務である。しかしながら、日本の試験機関で in

vitro 代謝試験は行われておらず、加えて標準化されたニジマス肝 S9も入手出来ない状態で

ある。

2.調査目的

緒言で述べたように、日本において in vitro代謝速度試験の実施可能性を探ることが急務

である。本試験法標準化に対応するため、試験法の試行、標準化 S9の調製と配布、日本版

のプロトコル作成が必要不可欠である。本研究の目的は、欧米等の専門機関においてリング

テストが実施中である OECDテストガイドラインプロトコル(Johanning et al, 2012)にできる

だけ準拠しながら、実際にニジマス肝 S9を調製して in vitro 代謝試験を試行・評価し、OECD

ガイドラインへの適用と、本試験実施のためのニジマス肝 S9の配布を目指すものである。

3. 調査概要

本研究ではニジマスを 2か所から入手して S9を調製し、その薬物代謝能を測定して評価

した。さらに、このニジマス S9を用いて in vitro代謝試験を試行し評価を行った。その結果、

ニジマスより S9が調製でき、薬物代謝酵素活性およびの 4-ノニルフェノールおよびピレン

に対する in vitro 活性を測定できた。加えて、日本語で in vitro代謝試験プロトコルの作成

を行った。

4.調査結果

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4.1 ニジマス肝 S9調製法の検討(事業内容①) 大分県竹田および熊本県阿蘇の 2 養魚場よりニジマスを入手し OECD ガイドラインに可

能な限り沿った方法で調製法を検討し、以下のように S9を調整した。

1) 大分県竹田市命水苑(竹田)および熊本県阿蘇郡高森町木郷滝自然つりセンター(阿

蘇)の 2箇所より入手したニジマス(Oncorhynchus mykiss)を用いた。S9調製は午前

と午後 (AM,PM) 合計 4 回を行い、それぞれ竹田 AM、竹田 PM、阿蘇 AM, 阿蘇 PM

とした。これらの供試魚の状況を Table 1に示した。

2) 供試ニジマスは、順化したものを用いた。水質条件(pH, 硬度, DO, および全アンモニ

ア)を記録し、順化期間中無給餌とした。

3) 6Lの飼育水に調製したMS-222ストック(0.1 g/mL)を 18 mL添加し、これを麻酔薬

とした。麻酔時間はおよそ 3 分間とした。また、供試ニジマスの体重と全長を測定し

た。測定の時に暴れる場合は、頭部を強打し、脳震盪させ動きを静止させた。

4) その後、ペーパータオルで覆われた解剖台に魚を置き、排泄腔から左右の鰓膜が接近

する付近の頭部下面までハサミで縦切開を行った。さらに内臓露出のため胸鰭の後ろ

まで横方向の切開を行った。

5) 性別の判断は、精巣と卵巣を外部形態で判断し雌雄を記録した。今回は雄と判定でき

たもののみを用いた。消化系附属器(肝臓と胆嚢)を摘出し、肝臓を胆嚢から外した。

その後、洗浄瓶に入れた予冷した Solution A(別添資料)で肝臓血管に洗浄瓶(0.1mL

イエローチップを装着)を用いて直接灌流し、脱血した。

6) ペーパータオルで灌流した肝臓表面の水分を除去し、0.01g単位で肝臓重量を測定した。

魚の hepatosomatic index(HSI)を計算した(Table 1)。肝重量測定後、シャーレの中

で Solution Aで洗浄し、別途シャーレに移し、予冷した Solution B(別添資料、肝臓の

半分が浸る液量)中で肝臓以外組織(血管や筋等)を取り除いた。その後、Solution B

(肝臓全てが浸る液量)でストックした(すべての作業は氷上で行う)。

7) 生殖腺(卵巣や精巣)を摘出し、0.01g単位で重量を測定し gonad somatic index(GSI)

を計算した(Table 1)。

8) 十分な肝臓を得るまでステップ 3∼7 を繰り返し、精巣の有無に基づきオスのみを用い

予冷した Solution Bに肝臓をストックした。麻酔から Solution Bの中にストックするま

での操作時間は 15分以内であった。

9) Solution Bから肝臓を取り出し、ペーパータオルでブロットし、0.01g単位で計量した。

予冷したビーカーに肝臓を置き、Solution B(肝重量と等量)を添加し、ハサミで小さ

く(<0.5 cm2)切った。

10) 細片化した組織を予冷した 50 mLポッター型ガラスホモジナイザー中に移し、予冷し

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た等量の Solution B (肝臓重量に相当)でビーカーをすすぎ、残りの組織と一緒にテ

フロンホモジナイザーに移した。ベンチトップ型ケミスターラーに取り付けたホモジ

ナイザーを回転させ組織をホモジナイズした。

11) すべての肝臓が処理されるまで、ステップ 9〜10 を繰り返した。得られた肝臓ホモジ

ネートを予冷した丸底遠心管に移し、遠心分離(20 min, 13,000 × g, 4ºC)した。

12) 遠心分離機から遠心管を取り出し、表面にある脂肪の層をピペットで除去後、中間層

(S9)をパスツールピペットで採取し、予冷したビーカーに移した。

13) プールされた S9を混合し、1.8 mLの凍結保存用チューブに 0.5 mLずつ注ぎ、すぐに

液体窒素で凍結した。

14) 凍結したサンプルを収集し、液体窒素や-80ºC冷凍庫に保存した。

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Table 1 ニジマス肝臓 S9作製に用いたニジマスの情報

No. 性 全長 (cm) 体重 (g) 精巣 (g) 肝臓 (g) H S I G S I

竹田 AM 1 ♂ 43.0 1117 60.58

9.70 0.054 0.009

2 ♂ 40.0 1054 55.55 7.98 0.053 0.008

3 ♂ 46.0 1123 45.62 12.56 0.041 0.011

4 ♂ 39.0 760 34.54 6.27 0.045 0.008

竹田 PM 1 ♂ 41.0 909 25.68 6.86 0.028 0.008

2 ♂ 44.0 982 13.41 8.12 0.014 0.008

3 ♂ 39.0 704 41.30 5.42 0.059 0.008

4 ♂ 40.0 792 15.89 6.67 0.020 0.008

5 ♂ 42.0 759 23.50 7.40 0.031 0.010

阿蘇 AM 1 ♂ 49 1129 47.97 11.27 0.043 0.010

3 ♂ 42 999 41.32 13.35 0.041 0.013

♂ ♂ 44 997 42.95 9.10 0.043 0.009

阿蘇 PM

1 ♂ 44.0 1113 41.54 11.53 0.037 0.010

2 ♂ 46.0 1133 57.80 10.01 0.051 0.009

3 ♂ 44.0 1075 47.90 12.30 0.045 0.011

4 ♂ 43.0 960 52.46 10.30 0.055 0.011

5 ♂ 48.0 1343 41.57 14.70 0.031 0.011

6 ♂ 44.0 953 43.45 9.24 0.046 0.010

7 ♂ 44.0 847 23.86 11.61 0.028 0.014

8 ♂ 46.0 1134 50.77 11.75 0.045 0.010

9 ♂ 42.0 930 38.18 11.85 0.041 0.013

10 ♂ 42.0 782 31.26 6.29 0.040 0.008

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4.2 ニジマス肝 S9の薬物代謝能の評価 (事業内容②) 前節で得られたニジマス肝 S9について水酸化酵素(EROD)、グルクロン酸抱合(UGT)、グ

ルタチオン抱合活性(GST)を測定し S9 の薬物代謝能を評価した。さらに調製から約 6 ヶ月

後にも同じ項目を測定し、失活していないか検討を行った。

7-Ethoxyresorufin O-Deethylase(EROD)活性は Vehniäinenら(2012)の方法に従い、以下の

手順で測定した。

1) 96マイクロタイタープレートに S9(10倍希釈、測定用とブランク用、4 wells ずつ)

を 20 µL ずつ加える。

2) 2.5 µM 7-ethoxyresorufin を20 µL 加える。

3) 100 mM HEPES (pH 7.8) を140 µL 加える。

4) 5 mM NADPH in 100 mM HEPES を20 µL 加え、素早くMultilabel Counterを用いて

Resorufinの蛍光強度(Ex. 540 nm / De. 584 nm; every 60 s for 5 min)を測定する。

5) Resorufin標準試料の調製: Resorufinストック液(1 mM, DMSO溶液)を100 mM HEPES溶

液で希釈し、Resorufin標準液を調製する。Wells中に肝S9(10倍希釈)20 µL、Resorufin

標準液180 µLの順に加え(Wells中のResorufin終量:0, 2, 5, 10 pmol)標準試料とする。

その結果をFig. 1に示す。調製直後竹田と阿蘇サンプルを測定したが両者に有意な差はな

かった。また午前(AM)と午後(PM)で比較したが有意な差はなかった。調製6ヶ月後に竹田と

阿蘇のサンプルを再測定したが、活性は調製直後より高く、保存中失活は起きていないと考

えられた。

Fig. 1 調製したニジマス S9における EROD活性

0

1

2

3

4

5

竹田AM 竹田PM 阿蘇AM 阿蘇PM

pmol

reso

rufin

/min

/mg

prot

ein

ERODS9 調製直後S9 調製6ヶ月後

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UDPグルクロン酸転移酵素(UGT)の活性はCollierら(2000)の方法に従い以下の手順で測

定した。

1) 96マイクロタイタープレートに魚肝S9(10倍希釈、測定用とブランク用、4 wells ずつ)

30 µL ずつ加える。

2) 15 µM 4-MU in 0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2 and 0.05% BSA, pH 7.4) を100 µL

加える(4-MUの終濃度:10 µM)。

3) 15 mM UDPGA in 0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2 and 0.05% BSA, pH 7.4) を20 µL

加える(UDPGAの終濃度:2 µM)。ブランク用には0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2

and 0.05% BSA, pH 7.4) 20 µL 加える。

4) 素早くMultilabel Counterを用いて4-MUの蛍光強度(Ex. 355nm/ De. 460 nm; every 60 s for

5 min)を測定する。

5) 標準試料の調製: 4-MUの標準試料の調製: 4-MUストック液(10 mM, エタノール溶液)を

0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2 and 0.05% BSA, pH 7.4)で希釈し4-MU標準液を調

製する。Wells中に魚肝S9(10倍希釈)30 µL、4-MU標準液100 µL、Tris-HCl 20 µLを加

える(Wells中の4-MU終量:1000, 500, 250, 0 pmol)。

その結果をFig. 2に示す。竹田サンプルと阿蘇サンプルを測定したが両者に有意な差はな

かった。また午前(AM)と午後(PM)で比較したが有意な差はなかった。調製6ヶ月後に竹田と

阿蘇のサンプルを再測定した結果、竹田サンプルで活性値は変化なかったが、阿蘇のサンプ

ルでは調製直後より低くなった。

Fig. 2 調整したニジマス S9における UGT活性

0

50

100

150

200

250

300

竹田AM 竹田PM 阿蘇AM 阿蘇PM

pmol

/min

/mg

prot

ein

UGT S9 調製直後

S9 調製6ヶ月後

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Glutathione-S-transferase活性は Habigら(1974)の方法に従い以下の様な手順で測定した。 1) 1 cmガラスセル2個(測定用とブランク用)に魚S9(10倍希釈)を100 µLずつ加える。

2) 0.2 M phosphate buffer (pH 6.5)を1 mL,20 mM CDNBを100 µL,脱イオン水を700 µl 加

える。

3) 25ºCで5分間保温する。

4) 0.1 M glutathioneを100 µL(ブランク用には脱イオン水100 µL)加え,素早くピペットで

混合した後,340 nmでタイムスキャン測定をする(3分間)。

5) 3回繰り返し、その平均値より酵素活性を求める。

その結果をFig. 3に示す。竹田サンプルと阿蘇サンプルを測定したが両者に有意な差はな

かった。また午前(AM)と午後(PM)で比較したが有意な差はなかった。調製6ヶ月後に竹田と

阿蘇のサンプルを再測定したが、活性値は調製直後より高いが、保存中の失活は起きていな

いと考えられた。

Fig. 3 調製したニジマス S9における GST活性

0

100

200

300

400

500

600

700

800

竹田AM 竹田PM 阿蘇AM 阿蘇PM

nmol

/min

/mg-

prot

ein

GST S9 調製直後

S9 調製6ヶ月後

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4.3 肝 S9試験に適したニジマス入手先の選定(事業内容③) 以上の結果を Table 2にまとめ比較した。竹田および阿蘇両者に有意な差はなく、また同

日午前と午後に行われた実験でも差がなく、本課題で作成した両 S9は in vitro 試験に用い

るに問題はないと結論された。加えて調製 6ヶ月後での薬物代謝活性を再測定した結果、活

性値に変動はあったが、失活は起こっていないと考えられた。また他の文献値とも比較した

が、その活性の差は基質や反応温度が異なるためと考えられ許容の範囲内であった。

Table 2. ニジマスにおける薬物代謝酵素活性比較

Sample Lot.

EROD

(pmol /min/mg protein)

UGT

(pmol/min/mg protein)

GST

(nmol/min/mg protein)

S9 調製直後

竹田 AM 0.93 ± 0.27 225 ± 14.9 313 ± 7.8

竹田 PM 1.21 ± 0.14 184 ± 5.0 324 ± 17.7

阿蘇 AM 0.50 ±0.14 189 ± 20.4 142 ± 9.3

阿蘇 PM 0.61 ± 0.08 171 ± 12.2 217 ± 5.9

S9 調製 6ヶ月後

竹田 PM 2.54 ± 1.13 167.4 ± 13.6 579.6 ± 61.2

阿蘇 PM 2.64 ± 0.73 66.6 ± 17.6 422.8 ± 18.6

References

OECD 3.5-6.4 957-1271 495-1126

Han X. et al. 0.65 ± 0.41 9150 ± 910 83.1 ± 4.2

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4.4ニジマス肝 S9を用いた in vitro 代謝試験の実施 (事業内容④)

欧米等の専門機関において実施されているリングテストの物質のうち 4-n-ノニルフェノ

ール(4nP)およびピレンを基質として用いて S9 in vitro代謝試験を実施した。その方法を

以下に示す。(試薬は調製法参照)また得られた結果および詳細な反応条件を Fig4.1-10および

Fig 5.1-5に示す。さらに得られた消失速度の結果をとりまとめたものを Table 4.1, 4.2示す。

1) Solution D1 or D2[S9(活性あり orコントロールとして熱失活させたもの)]に Solution

E 400 µL(20 µL/vial)を添加する。

2) 氷中で 15分プレインキュベートする。

3) Solution F~I[補酵素] 各 400 µL を加えMaster mixを作成する。

4) 静かにボルテックスする。

5) 1.5 mLの GCバイアルに各 190 µL分注する。

6) 12℃で 10分間置く。

7) 被験物質溶液 10 µL(4nP)or 20 µL(ピレン)を添加する。 (氷上)

8) 0分のサンプルでは被験物質の前に stopping solutionを添加する。

9) 一定の時間反応(12.0±1.0℃)させる。

10) 前処理して反応を停止させ、GC-MSを用いて定量を行う。

11) 得られた濃度を時間に対してプロットして消失速度を求める。

機 器 ガスクロマトグラフ-質量分析計 GC-MS QP2010(島津製作所) カラム DB-1ms(30 m × 0.25 mm I.D.,膜厚 0.25 µm,Agilent Technologies) カラム温度 50℃(2 min)→300℃(5min) (昇温速度 30 min) キャリアガス ヘリウム 制御モード 線速度 34.4 cm/s 試料導入部温度 250℃ 注入量 2 µL 注入モード スプリットレス サンプリング時間 3 min

質量分析計条件 イオン化法 電子イオン化法(EI) 検出イオン 正イオン 検出法 選択イオンモニタリング(SIM) 測定イオン m/z 107.1(4-n-ノニルフェノール) m/z 202.1(ピレン) m/z 284.0(ヘキサクロロベンゼン) イオン源温度 250℃ インタフェース温度 250℃ イオン化電圧 70 V

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Fig. 4-1 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(4nP、1ヵ月後-1)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 10, 20, 30, 40, 60 min、失活区:0, 30, 60 min;

前処理 テトラヒドロフラン 300 µL添加→ボルテックス→テトラヒドロフランで希

釈→測定

y = -0.0057x - 0.3096R² = 0.75506

y = -0.0144x - 0.2223R² = 0.93877

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 10 20 30 40 50 60

log

µM

Time (min)S9区失活区

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Fig. 4-2 消失速度定数の算出 竹田 PM(4nP、4ヵ月後-1)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 10, 20, 30, 40, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 ヘキサン 1 mL添加→ボルテックス→上層をヘキサンで希釈→測定

y = -0.0068x - 0.328R² = 0.89687

y = -0.0115x - 0.2896R² = 0.80361

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 10 20 30 40 50 60

log

µM

Time (min)

S9区失活区系列3

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Fig. 4-3 消失速度定数の算出 竹田 PM(4nP、4ヵ月後-2)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 10, 20, 30, 40, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 ヘキサン 1 mL添加→ボルテックス→上層をヘキサンで希釈→測定

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 10 20 30 40 50 60

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 4-4 消失速度定数の算出 竹田 PM(4nP、4ヵ月後-3)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 10, 20, 30, 40, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 ヘキサン 1 mL添加→ボルテックス→上層をヘキサンで希釈→測定

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 10 20 30 40 50 60

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 4-5 消失速度定数の算出 竹田 PM(4nP、4ヵ月後-4)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 3, 6, 9, 12, 15 min、失活区:0, 9, 15 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→ヘキサン 1 mL添加→ボルテック

ス→上層をヘキサンで希釈→測定

y = -0.0168x - 0.3241R² = 0.85765

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 5 10 15 20

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 4-6 消失速度定数の算出 竹田 PM(4nP、4ヵ月後-5)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 3, 6, 9, 12, 15 min、失活区:0, 9, 15 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→ヘキサン 1 mL添加→ボルテ

ックス→上層をヘキサンで希釈→測定

y = -0.0139x - 0.4354R² = 0.78328

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 5 10 15 20

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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18

Fig. 4-7 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(4nP、4ヵ月後-1)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 3, 6, 9, 12, 15 min、失活区:0, 9, 15 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→ヘキサン 1 mL添加→ボルテ

ックス→上層をヘキサンで希釈→測定

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 5 10 15 20

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 4-8 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(4nP、4ヵ月後-2)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 3, 6, 9, 12, 15 min、失活区:0, 9, 15 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→→ヘキサン 1 mL添加→ボルテッ

クス→上層をヘキサンで希釈→測定

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 5 10 15 20

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 4-9 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(4nP、4ヵ月後-3)

初期反応濃度 0.57 µM

反応時間 S9区:0, 3, 6, 9, 12, 15 min、失活区:0, 9, 15 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→→ヘキサン 1 mL添加→ボル

テックス→上層をヘキサンで希釈→測定

-1.00

-0.80

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0 5 10 15 20

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 5-1 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(ピレン、1ヵ月後-1)

初期反応濃度 0.62 µM

反応時間 S9区:0, 10, 20, 30, 40, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 テトラヒドロフラン 300 µL添加→ボルテックス→テトラヒドロフランで希

釈→測定

y = -0.0019x - 0.1393R² = 0.7409

-0.40

-0.30

-0.20

-0.10

0.00

0 10 20 30 40 50 60

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 5-2 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(ピレン、4ヵ月後-1)

初期反応濃度 0.29 µM

反応時間 S9区:0, 7, 15, 30, 45, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→ヘキサン 1 mL添加→ボルテ

ックス→上層をヘキサンで希釈→測定

y = -0.0007x - 0.5949R² = 0.11226

-0.80

-0.70

-0.60

-0.50

-0.40

0 10 20 30 40 50 60 70

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 5-3 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(ピレン、4ヵ月後-2)

初期反応濃度 0.29 µM

反応時間 S9区:0, 7, 15, 30, 45, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→ヘキサン 1 mL添加→ボルテック

ス→上層をヘキサンで希釈→測定

y = -0.0011x - 0.6028R² = 0.31515

-0.80

-0.70

-0.60

-0.50

-0.40

0 10 20 30 40 50 60 70

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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Fig. 5-4 消失速度定数の算出 阿蘇 PM(ピレン、4ヵ月後-3)

初期反応濃度 0.29 µM

反応時間 S9区:0, 7, 15, 30, 45, 60 min、失活区:0, 30, 60 min

前処理 メタノール 100 µL添加→ボルテックス→ヘキサン 1 mL添加→ボルテ

ックス→上層をヘキサンで希釈→測定

y = -0.0006 x - 0.5967 R² = 0.1466

-0.80

-0.70

-0.60

-0.50

-0.40

0 10 20 30 40 50 60 70

log

µM

Time (min)S9区 失活区

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以上の結果から求めた消失速度を Table 4-1および 4-2に示す。明瞭な減少が見られなかっ

たデータを除外した消失速度の平均値は 4nPで 0.0142, ピレンでは 0.0011となった。またそ

れらより計算したクリアランスはそれぞれ 0.963および 0.075mL/h/mgと求められた。

Table 4-1 In vitro代謝実験による 4nPの消失速度定数

サンプル名(基質、S9調整後分析時期) 消失速度

(/min)

標準誤差 内部標準 Fig

阿蘇 PM(4nP、1ヵ月後-1) 0.0144 0.00367 × 4-1

阿蘇 PM(4nP、4ヵ月後-1) * * ○ 4-7

阿蘇 PM(4nP、4ヵ月後-2) * * ○ 4-8

阿蘇 PM(4nP、4ヵ月後-3) * * ○ 4-9

竹田 PM(4nP、4ヵ月後-1) 0.0115 0.00568 × 4-2

竹田 PM(4nP、4ヵ月後-2) * * × 4-3

竹田 PM(4nP、4ヵ月後-3) * * × 4-4

竹田 PM(4nP、4ヵ月後-4) 0.0168 0.00363 ○ 4-5

竹田 PM(4nP、4ヵ月後-5) 0.0139 0.00365 ○ 4-6

*明確な減少が認められなかったため算出できなかった。

Table 4-2 In vitro代謝実験によるピレンの消失速度定数

サンプル名(基質、S9調整後分析時期) 消失速度

(/min)

標準誤差 内部標準 Fig

阿蘇 PM(ピレン、1ヵ月後-1) 0.00191 0.00056 × 5-1

阿蘇 PM(ピレン、4ヵ月後-1) 0.00069 0.00097 ○ 5-2

阿蘇 PM(ピレン、4ヵ月後-2) 0.00114 0.00084 ○ 5-3

阿蘇 PM(ピレン、4ヵ月後-3) 0.00059 0.00070 ○ 5-4

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4.5 ニジマス肝 S9を用いた代謝試験の再現・保存性の調査(実施項目⑤)

本研究の結果、ニジマスで S9の調製手法が確立できた。また薬物代謝酵素活性方法を

検討し S9について測定した結果、ニジマス 2養魚場における差は有意でなく、また午前

と午後に分けた調製サンプル間にも差が認められなかった。加えてその酵素活性は調整 6

ヶ月を過ぎても保存されていることが確認できた。

In vitro代謝実験の結果(Table 4-1および 4-2)より、4nPのクリアランスは平均値で

0.976 mL/h/mgとなった。文献値 0.180-0.221 mL/h/mg (Hans et al, 2009); 0.371, 0.904 (Fay et

al, 2014) と近い値であった。ピレンについては 0.075 mL/h/mgとなり文献値(Conner et al,

2013; タンパク質あたりに再計算) 18 mL/h/mg の約 1/254となった。この原因として本試

験で用いた阿蘇 PMの S9における EROD活性は Connerらの S9中 EROD活性値の 1/73

であり、第一相 CYP1A 系酵素が低かったことに起因していると考察される。魚で 4nP

に関しては、文献値に近いクリアランス値を得る事ができ、in vitro代謝試験は実施可能

と結論された。一方、4nPで反応がうまく起こらないことがあった(Fig 4-3,4,7,8,9)。原因

として操作技術、反応温度の低さ、反応時間、基質濃度、酵素液の失活が考えられる。

その原因を究明するため S9 における薬物代謝酵素活性を調製半年後に再度測定したが、

酵素活性は低下していなかった(Table 2)。また、反応の繰り返しや反応停止方法の検討、

内部標準(HCH)を加えることによる溶媒抽出回収率の改善行った(Fig 4-5〜9)。現時点で

は反応が不安定であり、今後さらに反応条件等の検討が必要である。

日本では、蓄積性試験はコイが主流でありニジマスでの in vitro代謝試験は実施されて

いない。今後 in vitro試験法の安定性の向上を図るとともに、コイ肝 S9の作成と検討が

必要である。しかしながら、コイは肝膵臓であり、また血管系のもニジマスとは異なる

ため脱血法の確立が必要であり、加えて膵臓由来のトリプシン様酵素による阻害が予想

されるため、コイを用いた S9酵素系確立には詳細な検討が必要だと考えられた。

また、日本語でのプロトコル(ニジマス版)を補足資料として巻末に添付した。(実施

項目⑥)

5. 業務実施体制

大嶋雄治 九州大学農学研究院 教 授 研究統轄、解析および薬物代謝酵素活性測定

島崎洋平 九州大学農学研究院 準教授 S9の反応

邱 旭春 九州大学農学研究院 支援研究員 薬物代謝酵素活性の測定および S9の反応

6. 調査結果の公表

平成 28 年度日本環境毒性学会において発表予定

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7. 参考文献

Collier, A. C., Tingle, M. D., Keelan, J. A., Paxton, J. W., and Mitchell, M. D. (2000) A highly sensitive fluorescent

microplate method for the determination of UDP-glucuronosyl transferase activity in tissues and placental cell

lines. Drug Metab. Dispos. 28, 1184-1186.

Connors, K.A., Du, B., Fitzsimmons, P.N., 2013. Comparative pharmaceutical metabolism by rainbow trout

(Oncorhynchus mykiss) liver S9 fractions. Environmental Toxicol. Chem, 32: 1810-8.

Fay, K.A., Mingoia, R.T., Goeritz, I., Nabb, D.L., Hoffman, A.D., Ferrell, B.D., Peterson, H.M., Nichols, J.W., Segner,

H., Han, X., 2014. Intra- and Interlaboratory Reliability of a Cryopreserved Trout Hepatocyte Assay for the

Prediction of Chemical Bioaccumulation Potential. Environ. Sci. Technol. 48, 8170–8178.

Habig, W. H., Pabst, M. J., and Jacoby, W. B.1974. Glutathione S-transferase, the first enzymatic step in mercapturic

acid formation. J. Biol. Chem., 249: 7130-7139

Han, X., Nabb, D.L., Yang, C.H., Snajdr, S.I., Mingoia, R.T., 2009. Liver microsomes and S9 from rainbow trout

(Oncorhynchus mykiss): Comparison of basal-level enzyme activities with rat and determination of xenobiotic

intrinsic clearance in support of bioaccumulation assessment. Environ Toxicol Chem 28, 481–488.

Johanning, K., Hancock, G., Escher, B., 2012. Assessment of metabolic stability using the rainbow trout

(Oncorhynchus mykiss) liver S9 fraction. Current Protocols in. doi:10.1002/0471140856.tx1410s53

Lee, Y.-S., Lee, D.H.Y., Delafoulhouze, M., Otton, S.V., Moore, M.M., Kennedy, C.J., Gobas, F.A.P.C., 2014. In vitro

biotransformation rates in fish liver S9: Effect of dosing techniques. Environ Toxicol Chem 33, 1885–1893.

Vehniäinen ER, Schultz E, Lehtivuori H, Ihalainen JA, Oikari AO, 2012. More accuracy to the EROD

measurements--the resorufin fluorescence differs between species and individuals. Aquat Toxicol.

116-117:102-108.

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8.補足資料(試薬調製法)

MS-222ストック(0.1 g/mL)

50 gのトリカイン(MS 222)及び 150gの NaHCO3を 500 mLのメスフラスコにはかりとり超純水で定容し、

4℃で保存する。

Solution A(Clearing buffer, pH 7.8)

985.4 mL のハンクス平衡塩液(HBSS、カルシウム,マグネシウム不含、GIBCO/Life Technologies)に 0.35 g の

NaHCO3(目標濃度:0.35 g/L)、4.6 mL の 0.5 M EDTA溶液(目標濃度:2.3 mM)、10 mL の 1 M HEPES溶

液 (目標濃度:10 mM)を加えて、10 mM NaOH を用いて pHを 7.8に調整する(4 ºC保存)。

Solution B(Homogenization buffer)

1L のメスフラスコに 800 mLの 50 mM Tris·Cl、150 mL の 1 M 塩化カリウム溶液、4 mL の 0.5 M EDTA

溶液、10 mL の 100 mM DTT溶液、及び 85.55 gのスクロースを混和する。1M の KOH を用いて pHを 7.8

に調整し、50 mM Tris·Clで定容し、4℃、1ヶ月保存。

Solution C:100 mMりん酸カリウムバッファー

①リン酸カリウム二塩基(りん酸水素二カリウム)緩衝液,100 mM1.742 gのリン酸カリウム二塩基(モル

重量 174.2 g/mol;純度≥99%,≥90%以上であれば 100%とする)を 100 mLのメスフラスコにはかりとり超

純水で定容し、4℃、1ヶ月保存。

②リン酸カリウム一塩基(りん酸一カリウム)緩衝液,100 mM1.361 gのリン酸カリウム一塩基(モル重量

136.09 g/mol;純度≥99%,≥90%以上であれば 100%とする)を 100 mLのメスフラスコにはかりとり超純水

で定容し、4℃、1ヶ月保存。

③100 mMリン酸二塩基緩衝液及び 100 mMリン酸一塩基緩衝液(88/12 (v/v))を混合し、使用当日、さら

にリン酸カリウム二塩基(塩基)もしくはリン酸カリウム一塩基(酸)を加えて pHを 7.8に調整する。

Solution D1:活性のある S9を Solution Cに添加したもの

<40 mg/mL濃度の S9の場合>

S9(2 mLチューブで-80℃で保管)を 0.4 mL分取し、バッファーを 3.6 mL添加(10 mLチューブで調製)

Solution D2:熱失活した S9を Solution Cに添加したもの

Assay開始の約 24時間前に室温に置き、失活させる(熱失活してもタンパク含有量は変化しないと仮定)。

Solution E:250 mg/Lアラメチシン

①アラメチシン 1 mgにつきメタノール 0.1mLを加える(2 mLチューブ)。ふたを付けて転倒混和後、使用

するまで-80℃で保存。

②この溶液 25uLに氷冷した Solution Cを 0.975mL加える。透明になるまで攪拌(ボルテックス)する(2 mL

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チューブ)。

Solution F:20 mM NADPH(最終濃度 2 mM)

NADPH (モル重量 833.4)17.6 mgを 2 mLのチューブに秤量し、氷冷した Solution Cをピペットで 1 mL

滴下し軽く振り混ぜて溶解。

*秤量したものを-80℃で保管

Solution G:20 mM UDPGA(最終濃度 2 mM)

UDGPA(モル重量 646.23 g/mol;純度 98-100%,≥90%で 100%と仮定)12.95 mgを 2 mLのチューブに

はかりとる。氷冷した Solution Cをピペットで 1 mL滴下し軽く振り混ぜて溶解させる。

*秤量したものを-80℃で保管

Solution H:5 mM GSH(L-グルタチオン還元型)(最終濃度 0.5 mM)

GHS(モル重量 307.2 g/mol;純度≥98%,≥90%で 100%と仮定する)1.536 mgを 2 mLのチューブにはか

りとる。氷冷した Solution Cをピペットで 1 mL滴下し軽く振り混ぜて溶解する。

*秤量したものを-80℃で保管

Solution I:1 mM PAPS(最終濃度 0.1 mM)

PAPS(モル重量 507.26 g/mol純度~80%であるが 75~85%の範囲)0.634 mgを 2 mLのチューブにはか

りとる。氷冷した Solution Cをピペットで 1 mL滴下し軽く振り混ぜて溶解させる。

*秤量したものを-80℃で保管

**Solution F~I:4℃に冷やした Solution Cで調製してよく撹拌し、使用するまで氷冷

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別添資料

ニジマス肝臓 S9を用いた in vitro代謝法プロトコル

1.S9 調製

1) ニジマス(Oncorhynchus mykiss)は 1 週間程度順化したものを用いる。水質条件(pH,

hardness, DO, and全アンモニア)を記録し、順化期間中無給餌とする。

2) 6Lの飼育水に調製したMS-222ストック(0.1 g/mL)を 18 mL添加し、これを麻酔薬と

した。麻酔時間はおよそ 3 分間とする。また、供試ニジマスの全重と全長を測定する。

測定の時に暴れる場合は、頭部を強打し、脳震盪により動きを静止させる。

3) その後、ペーパータオルで覆われた解剖台に魚を置き、排泄腔から左右の鰓膜が接近す

る付近の頭部下面まで、ハサミで縦切開を行う。内臓露出のため、胸鰭の後ろまで横方

向の切開を行う。

4) 性別の判断は、精巣と卵巣を外部形態で判断し、雌雄を記録する。判断できない魚は使

用しない。消化系附属器(肝臓と胆嚢)を摘出し、肝臓を胆嚢から外す。その後、洗浄

瓶に入れた予冷した Solution Aで肝臓血管に洗浄瓶(0.1mL イエローチップを装着)を

用いて直接灌流し、脱血する。

5) ペーパータオルで灌流した肝臓表面の水分を除去し、0.01g単位で肝臓重量を測定した。

魚の hepatosomatic index(HSI)を計算する。肝重量測定後、シャーレの中で Solution A

で洗浄し、別途シャーレに移り、予冷した Solution B(肝臓の半分が浸る液量)中で肝

臓以外の組織(血管や筋等)を取り除く。その後、Solution B(肝臓全てが浸る液量)で

ストックする(すべての作業は氷上中)。

6) 生殖腺(卵巣や精巣)を摘出し、0.01g単位で重量を測定し gonad somatic index(GSI)

を計算する。

7) 必要十分な肝臓を得るまでステップ 3∼6を繰り返し、精巣の有無に基づきオスのみを用

い予冷した Solution Bに肝臓をストックする。麻酔から Solution Bの中にストックする

までの操作時間は 15分以内を確保する。

8) Solution Bから肝臓を取り出し、ペーパータオルでブロットし、0.01g単位で計量する。

予冷したビーカーに肝臓を置き、Solution B(肝重量と等量)を添加し、ハサミで小さく

(<0.5 cm2)切る。

9) 細片化した組織を予冷した 50 mLポッター型ガラスホモジナイザー中に移し、予冷した

Solution B (肝臓重量に相当)でビーカーをすすぎ、残りの組織と一緒にテフロンホモ

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ジナイザーに移す。ベンチトップ型ケミスターラーに取り付けたホモジナイザーを回転

させ組織をホモジナイズする。

10) すべての肝臓が処理されるまで、ステップ 8〜9 を繰り返した。得られた肝臓ホモジネ

ートを予冷した丸底遠心管に移し、遠心分離(20 min, 13,000 × g, 4ºC)する。

11) 遠心分離機から遠心管を取り出し、表面にある脂肪の層をピペットで除去後、中間層(S9)

をパスツールピペットで採取し、予冷したビーカーに移す。

12) プールされた S9を混合し、1.8 mLの凍結保存用チューブに 0.5 mLずつ注ぎ、すぐに液

体窒素で凍結する。

13) 凍結したサンプルを収集し、液体窒素や-80ºC冷凍庫に保存する。

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別添資料

7-Ethoxyresorufin O-Deethylase(EROD)活性測定法

1) 96 マイクロタイタープレートに S9(10 倍希釈、測定用とブランク用、4 wells ずつ)

を 20 µL ずつ加える。

2) 2.5 µM 7-ethoxyresorufin を20 µL 加える。

3) 100 mM HEPES (pH 7.8) を140 µL 加える。

4) 5 mM NADPH in 100 mM HEPES を20 µL 加え、素早くMultilabel Counterを用いて

Resorufinの蛍光強度(Ex. 540 nm / De. 584 nm; every 60 s for 5 min)を測定する。

Resorufin標準試料の調製: Resorufinストック液(1 mM, DMSO溶液)を100 mM HEPES溶

液で希釈し、Resorufin標準液を調製する。Wells中に肝S9(10倍希釈)20 µL、Resorufin

標準液180 µLの順に加え(Wells中のResorufin終量:0, 2, 5, 10 pmol)標準試料とする。

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別添資料

UDPグルクロン酸転移酵素(UGT)活性測定法

1) 96マイクロタイタープレートに魚肝S9(10倍希釈、測定用とブランク用、4 wells ずつ)

30 µL ずつ加える。

2) 15 µM 4-MU in 0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2 and 0.05% BSA, pH 7.4) を100 µL

加える(4-MUの終濃度:10 µM)。

3) 15 mM UDPGA in 0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2 and 0.05% BSA, pH 7.4) を20 µL

加える(UDPGAの終濃度:2 µM)。ブランク用には0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2

and 0.05% BSA, pH 7.4) 20 µL 加える。

4) 素早くMultilabel Counterを用いて4-MUの蛍光強度(Ex. 355nm/ De. 460 nm; every 60 s for

5 min)を測定する。

標準試料の調製: 4-MUの標準試料の調製: 4-MUストック液(10 mM, エタノール溶液)を

0.1 M Tris-HCl (containing 5 mM MgCl2 and 0.05% BSA, pH 7.4)で希釈し4-MU標準液を調

製する。Wells中に魚肝S9(10倍希釈)30 µL、4-MU標準液100 µL、Tris-HCl 20 µLの順

に加える(Wells中の4-MU終量:1000, 500, 250, 0 pmol)。

Page 34: 平成 27 年度経済産業省委託 平成 27 年度化学物質 …(S9)をパスツールピペットで採取し、予冷したビーカーに移した。 13) プールされたS9を混合し、1.8

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別添資料

Glutathione-S-transferase活性測定法

1) 1 cmガラスセル2個(測定用とブランク用)に魚S9(10倍希釈)を100 µLずつ加える。

2) 0.2 M phosphate buffer (pH 6.5)を1 mL,20 mM CDNBを100 µL,脱イオン水を700 µl 加

える。

3) 25ºCで5分間保温する。

4) 0.1 M glutathioneを100 µL(ブランク用には脱イオン水100 µL)加え,素早くピペットで

混合した後,340 nmでタイムスキャン測定をする(3分間)。

5) 3回繰り返し、その平均値より酵素活性を求める。

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別添資料

In vitro 代謝反応 1) Solution D1 or D2[S9(活性あり orコントロールとして熱失活させたもの)]に Solution

E 400 µL(20 µL/vial)を添加する。

2) 氷中で 15分プレインキュベート

3) Solution F~I[補酵素] 各 400 µL を加えMaster mixを作成する。

4) 静かにボルテックスする。

5) 1.5 mLの GCバイアルに各 190 µL分注する。

6) 12℃で 10分間置く。

7) 被験物質溶液 10 µLを添加する。 (氷上)

8) 0分のサンプルでは被験物質の前に stopping solutionを添加

9) 一定の時間反応(12.0±1.0℃, 0 – 30分)させる。

10) 反応を溶媒を添加(前処理)して反応を停止させ、GC-MSを用いて定量を行う。

11) 得られた濃度を時間に対してプロットして、消失速度を求める。