卒業論文 2012年度 ゲーミフィケーション
DESCRIPTION
GamificationTRANSCRIPT
ゲーミフィケーションの構成要素である報酬の設定の
違いが生み出す利用者への影響
−Keywords−ゲーミフィケーション 動機づけ 内発的動機づけ 熟達志向
性
外的報酬 言語的報酬 物質的報酬 自己評価的動機づけモデル
企業のマーケティング活動などにおいて注目度の高いキーワード
ゲーミフィケーション
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Game + fication(ゲーム) (〜化する)
つまり
ゲーム化するということ
Gamification より2010年以降に浸透
ゲーム要素をゲーム以外の分野に取り入れて、利用者に行動を促す概念 (2012年1月17日日経産業新聞記事参照)
定義
ゲーム化戦略の構成要素
課題 報酬 交流
ゲーミフィケーションの事例・効果・問題意識
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ゲーミフィケーション事例 (課題・交流・報酬)
NIKE+(ナイキプラス)・・・運動支援スマートフォンアプリケーション
ランニング時に個人の目標などを設定し、スマートフォンと連動して自分の記録を保存・確認できる!
ゲーミフィケーションに期待される効果
モチベーション向上 愛着心を高める 忠誠心を高める
問題意識
ゲーミフィケーションを構成する要素は、利用者の継続利用意向をどのように促進するのだろうか
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ゲーミフィケーションと動機づけの関係性
動機付けのプロセス
ゲーミフィケーション × マーケティング
櫻井(2009)より作成
欲求 動機 行動目標の達成
報酬(→満足)
マーケティングはゲームの特徴を活かしやすい分野。ゲームの手法を応用
するゲーミフィケーションの最大の利点は利用者の
(2012年11月28日日経産業新聞記事参照)
内発的動機付け 外発的動機付け
自律的な取り組み 他律的な取り組み
動機
2種類の動機づけ
動機づけは「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」に大別することができる。
動機づけ。
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料理レシピサイトに見る報酬の違い・研究目的
インセンティブの違いから「動機づけ」を問う
「**れぽ」のみが報酬である!
「**スーパーポイント」
が報酬である!金銭的な報酬
報酬の設定の違いによって利用者の満足度の差があるのでは?
非金銭的な報酬
研究目的
ゲーミフィケーションの構成要素である報酬の設定の違いによって利用動機にどのような影響が生じるか
到達目標達成時に与えられる報酬は内発的動機づけの性質である熟達志向性に作用し、利用者のサービス満足度を高める影響がある
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内発的動機づけにおける熟達志向性という性質(仮説1導出)
内発的動機づけの概念の中核となる性質。
熟達志向性
人は自ら認識を深め、能力を高めるように動機づけられるという生得的なメカニズムを備えている。
熟達志向性の尺度
挑戦思考 知的好奇心 独立達成Harter(1981)
これらの尺度に正の影響を与えることで、更に人は行動を駆り立てる!
仮説1
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内発的動機づけにおける外的報酬の役割(仮説2導出)−1
外的報酬を獲得した行為者がどのような心的メカニズムで内発的動機づけを変化させるか明らかにされていない…
自己評価動機づけモデル
桜井(1984)が認知的評価理論の問題点を考慮し提唱した学習面における動機づけモデル
交流
しかし、ゲーミフィケーションの仕組みにおいては、
報酬のみならず【交流】も重要な要素としてある!
自己評価的動機づけモデルとは
異なる外的報酬の影響が見られるのではないか?
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内発的動機づけにおける外的報酬の役割(仮説2導出)−2
アンダーマイニング効果
報酬を与えることで、もともと持っていた課題に対する内発的な意欲が低下する現象
アンダーマイニング効果が生起しないケース
報酬を与えている人と与えられている人の間に良好な関係がある場合。
エンハンシング効果
報酬を与えることで、もともと持っていた課題に対する内発的な意欲が高まる現象
桜井(2009)
報酬のうちでも賞賛のような言語的報酬は、エンハンシング効果をもたらす 桜井(2009)
ゲーミフィケーションにおける報酬は言語的報酬を設定する方が物質的報酬よりも内発的動機づけを高める
仮説2
・【交流】の仕組みによって…①言語的報酬を与えられる仕組みがある。②SNSにおける繋がりは一定の信頼関係がある。
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仮説の検証
実験概要
【目的】 ゲーミフィケーションの構成要素である報酬が内発的動機づけの性質で
ある熟達志向性に正の影響を与えることを明らかにする。また、報酬の違いによる内発的動機づけへの影響度合いの差を
比較する。【サンプル】 145(有効回答数 103)【分析方法】重回帰分析、t検定(対応あり)
Nike+アプリを利用して運動に取り組むことを被験者に想定させ、運動後に与えられる報酬の影響を質問紙・WEBアンケートを用いて調査した。
実験手順
【§1・§2】
運動することへの
興味・関心、目的意識の調査
【§3】
報酬に対する《満足・挑戦志向・好奇心・独立達成》の測定→仮説1の検証へ
【§4】
言語的報酬⇔物質的報酬の比較。SEMモデル*の諸要因を測定
→仮説2の検証へ
*自己評価的動機づけモデル
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分析結果-仮説1の検証 【分析手法】重回帰分析(ステップワイズ法)
モデル要約
R2乗値は0.516で、調整済みR2乗の値が0.507であり、このモデルは予測力の高いモデルであると結果から考えることができる。
係数
挑戦志向で1%、好奇心で5%水準で有意差が見られた。
内発的に動機づけられた利用者の報酬への満足に対して「挑戦志向」「好奇心」において正の影響を与えると予測できる。しかし、「独立達成」は有意差が認められず除外された。
仮説1は部分的に支持された。
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分析結果-仮説2の検証 【分析手法】 t検定(対応有り)
分析結果
「動機の評価(ペア1)」「自己決定(ペア4)」がそれぞれ1%水準、「有能感(ペア3)」「有能さへの欲求(ペア5)」がそれぞれ5%水準で有意差が見られた。しかし、「有能さの評価(ペア2)」においては有意差が見られなかった。また、有意差が見られた各尺度の比較をすると、物質的報酬よりも言語的報酬の方が平均値が高いことが分かった。
仮説2は部分的に支持された。
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考察-1
仮説1の考察
全面的に仮説が支持される結果とはならず、挑戦志向と好奇心において満足に正の影響をあたえることとなるため、部分的に仮説1が支持されたと言える。
※「独立達成」が支持されなかった要因独立達成: 1人で問題解決をしようとする行動を指している (桜井
2009)
§2:ランニングする目的意識の結果 健康
体力づくり
独立達成にある潜在的な能力を開発し、さらなる高みを目指
すような動機を刺激すると想定できる目的意識を被験者それ
ぞれが、持つことができなかったため支持されなかったので
はないか。
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考察-2
仮説2の考察
動機の評価・有能感・自己決定・有能さへの欲求については言語的報酬の方が物質的報酬よりも物質的報酬の方が内発的動機づけを高める結果より言うことができるため部分的に仮説2が支持されたと言える。
※「有能さの評価」が支持されなかった要因
有能さの評価:課題遂行の結果に基づく成功・失敗の自己評価とそれら
に基づく原因帰属を含む下位尺度。
§1:普段の運動への意識調査の結果
運動をしない人が多かった。
普段から運動を行なっていない多数の被験者にとって実際に
自らが設定した目的距離・時間の達成結果の優劣を判断する
ことが想定できず、成功・失敗の評価を下すことが困難で
あったためではないか。
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学術的・実務的インプリケーション
学術的インプリケーション
■ 「ゲーミフィケーション」という新たに注目される話題語を学習面にお
いて多く研究を進められている「内発的動機づけ」と結びつけた研究を行ったという新規性。■ ゲーミフィケーションの構成要素により、学習面では見られない内発的動機づけへの影響があるということが実験により判明したこと。
実務的インプリケーション
■ 仮説1の結果より、挑戦したいという気持ちを刺激する課題のレベル感と
量を検証した上で、課題の設定・報酬を与えるタイミングのデザインを行うことで、マーケティング活動の成功に寄与するのではないか。
■仮説2の結果より、言語的報酬の方が物質的報酬より正の影響を生み出し
ているため、言語的報酬がきちんと与えられるようなサービス設計が重要と成るのではないだろうか。
課題
■金銭的報酬を考慮した実験を行う。■オンラインマーケティング以外の分野に関する調査を行う。
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参考文献Deci, E.L. (1975), “Effects of externally mediated rewords on intrinsic motivation. ” Journal of Personality and Social Phycology, 18, pp.105-115. Kelley, H.H(1971), Casual schemata and the attribution process. In E.E Jones et al. (Eds.), Attribution: Perceiving the causes of behavior, General Learning Press.Murray, E. J. (1964), Motivation and emotion. Englewood Cliffs, NJ: PrenticeHall. White, R.W. (1959) “Motivation reconsidered: The concept of competence. “ Psychological review, 66, pp.297-333.
青木幸弘(2010),『消費者行動の知識』,日本経済新聞出版社石田宏実・神馬豪・木下裕司(2012), 『ゲーミフィケーション』, 大和出版小池伸一(2011),「動機付け理論と学生指導への応用―自己決定理論の援用―」, 『保健医療技術学部論集6』, 65-78頁桜井茂男(1984),「内発的動機づけに及ぼす言語的報酬と物質的報酬の影響の比較」,『教育心理学研究32(4)』, 286-295頁桜井茂男(2001), 『動機づけと感情の心理.櫻井茂男・編.心理学ワールド入門』, 福村出版桜井茂男(2009), 『自ら学ぶ意欲の心理学』, 有斐閣鹿毛雅治(1994), 「内発的動機づけ研究の展望」, 『教育心理学研究 42(3)』, 345-359頁奈須正裕・宮本美沙子(1995), 『達成動機の理論と展開続・達成動機の心理学』, 金子書房
2012/1/17 日経産業新聞2012/11/28 日経産業新聞
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