z 1.苗木の生死 qs pj cchyogo-nourinsuisangc.jp/sinrin/images/toudou2014.pdfqs pj cc '...

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○結果・考察 1.苗木の生死 ●生存率 ・竹田サイト :コナラQs 97.2%137/141ヤマザクラPj 98.3%57/60クリCc 100.0%61/61・大日山サイト:コナラQs 93.0%185/199ヤマザクラPj 93.4%71/76クリCc 93.4%71/76植栽初期の枯死は少ない ●生死に影響を及ぼしている要因 ・傾斜が急なほど苗木は死にやすい 表層土壌が流亡し、活着しにくい? ・植栽時根元径が大きいほど、苗木は生存 ・空隙率が高いほど苗木は死にやすい 日射による乾燥ストレスがある? 植栽後2年目までの枯死は少ないが、植栽地の傾斜と空隙率 が高いところは要注意 2.苗木の成長 ●成長に影響を及ぼしている要因 ・成長に種間差有Tukey-test p<0.01コナラQs<ヤマザクラPj=クリCc ・傾斜が急なほど苗木の成長が鈍化 栄養豊富な表層土壌が流亡 ・植栽時根元径が大きいほど苗木の成長は良好 ・空隙率が大きいほど苗木の成長は良好 成長は光環境に左右される 初期成長には土壌、光環境が大きく関係 3.調査区内における空隙率の分布 ●調査区中心近くが空隙率大 ●作業道(グラフ内の青いライン) に面している付近に明るい 場所が広がる ●今後は・・・ 周辺ヒノキの成長と先駆 性樹種の侵入による空隙 率低下に注意 P2B017 小面積伐採地に植栽した広葉樹3種の活着及び初期成長 藤堂千景 ( e-mail[email protected] ) 伊東康人・山瀬敬太郎(兵庫農技総セ) ○背景・目的 ●針葉樹人工林の更新手法の一環に、広葉樹林化の選択肢 ●その手法の一つとして、人工林に小面積の群状伐採(小面積 伐採)を行い、広葉樹苗木を植栽する方法がある ●小面積伐採地内の光環境や水分環境などの特性はまだ不明 な点が多く、植栽した広葉樹苗木の成長についても、未解 明な点が多い 小面積伐採地での広葉樹植栽において、植栽後2年目 の環境条件と苗木の生死・成長の関係を明らかにする ○結論 ●植栽初期の枯死は少ない ●苗木の初期成長に影響を及ぼすのは、傾斜と光環境 ●光環境が良好すぎると、苗木が枯死する危険性 ⇒侵入樹種や周辺ヒノキの成長に伴う空隙率低下に注意 して、今後の調査を続ける 選択された説明変数 影響 傾斜 - ** 植栽時根元径 + P=0.11 空隙率 - * **p<0.01 *p<0.05 応答変数 説明変数候補 (固定効果) 説明変数 (ランダム効果) 使用した 確率分布 苗木の 生存モデル 苗木の 生死(1,0) 樹種 傾斜 *5 土壌堅密度 空隙率 土壌水分 比高差 *6 植栽時根元直径 調査サイト binomial 苗木の 成長モデル *3 苗木の 成長 *4 樹種 傾斜 *5 土壌堅密度 空隙率 土壌水分 比高差 *6 植栽時根元直径 調査サイト gaussian 選択された説明変数 影響 樹種 (ベースはクリCc) コナラQs - *** ヤマザクラPj - P=0.08 傾斜 - *** 植栽時根元径 + ** 空隙率 + *** ***p<0.001 **p<0.01 調査サイト名 新温泉町竹田 佐用町大日山 標高 347-350m 307-336m 土壌・土壌型 泥質岩・B D 玄武岩・B D 調査時本数 880/ha 1,300/ha 斜面方位 S30E S60W(No1-3) N75W(No4) 平均樹高 13.0m 14.6m(No1-3) 15.9m(No4) 調査区1辺長 19.5m 22m(No1-3) 24m(No4) 伐採時期 2012/11 2012/11 植栽時期 2013/05 2013/05 植栽本数 262 327 10 20 30 40 50 -5 0 5 10 15 20 25 空隙率(%) 根元径成長(mm) 10 20 30 40 -5 0 5 10 15 20 25 傾斜(°根元径成長(mm) No.1 No.2 No.3 No.4 No.3 No.2 No.1 No.4 各調査区における空隙率の分布(赤色が空隙率大) Takeda No.1 19.5m 斜面下部 19.5m 斜面上部20 22 24 26 28 30 32 34 36 Takeda No.2 19.5m 19.5m 5 10 15 20 25 30 30 35 35 40 Takeda No.3 19.5m 19.5m 15 20 25 25 30 35 40 Takeda No.4 19.5m 19.5m 5 10 15 15 20 20 25 25 30 35 40 45 50 Obiyama No.1 22.0m 斜面下部 22.0m 斜面上部15 15 20 25 30 35 40 Obiyama No.2 22.0m 22.0m 10 15 20 25 30 35 40 Obiyama No.3 22.0m 22.0m 10 15 20 20 25 25 30 35 40 45 Obiyama No.4 24.0m 24.0m 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 10 20 30 40 50 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 空隙率(%) 苗木の生死(1,0) Qs Pj Cc 竹田 0 20 40 60 80 100 Qs Pj Cc 大日山 0 20 40 60 80 100 調査区 No No 1 No 2 No 3 No 4 植栽樹種 QsPjCc Qs 植栽密度 ( /ha) 1,000 1,500 2,000 測定項目 測定方法 苗木の位置 DGPS+レーザーコンパ 根元径 デジタルノギス 空隙率 全周魚眼レンズ+デジ タルカメラ 土壌水分 ADR式土壌水分計 土壌堅密度 長谷川式土壌硬度計 ○材料と方法 1.調査地 ●調査サイト:兵庫県新温泉町竹田と同県佐用町大日山の ヒノキ林 ●調査区の設置:各サイト内に小面積伐採調査区を4区設置 (伐採時期2012/11) ●調査区の形・サイズ:1辺がヒノキ樹高の1.5倍の正方形 ●植栽樹種:コナラQs・ヤマザクラPj・クリCc (ポット苗使用) (植栽時期2012/122013/03) ●現時点での下刈りは無し 2.調査方法 2013/062014/10に調査を行った ●調査項目:苗木の位置、苗木の苗高 根元径、空隙率、土壌水分 土壌堅密度 *1 (地表-60cmまで) 3.解析方法 ●一般化線形混合モデル(GLMM)を構築 *2 (R ver.3.1.3) AICを基準に、説明変数候補から、苗木の生死や成長に影響 を及ぼしている要因を検討 *1 土壌堅密度の調査は、2013/06のみ行った *2 苗木が小さいため隣接苗木の影響はないと判断し、苗木植栽密度は考慮していない *3 生存している苗木のデータのみを使用した *4 ウサギに梢端を食害された個体が見られたため、成長の指標は根元径のみとした *5 傾斜はレーザーコンパス測量データを用いて算出した *6 各サイトの調査区内の最も標高の低い場所との標高差

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Page 1: Z 1.苗木の生死 Qs Pj Cchyogo-nourinsuisangc.jp/sinrin/images/toudou2014.pdfQs Pj Cc ' #ã QØ 0 20 40 60 80 100 Qs Pj Cc ± ¥ £ QØ 0 40 60 80 100 調査区 No No 1 No 2 No

○結果・考察 1.苗木の生死 ●生存率

・竹田サイト :コナラQs 97.2%(137/141)

ヤマザクラPj 98.3%(57/60)

クリCc 100.0%(61/61)

・大日山サイト:コナラQs 93.0%(185/199)

ヤマザクラPj 93.4%(71/76)

クリCc 93.4%(71/76)

⇒植栽初期の枯死は少ない

●生死に影響を及ぼしている要因

・傾斜が急なほど苗木は死にやすい

→表層土壌が流亡し、活着しにくい?

・植栽時根元径が大きいほど、苗木は生存

・空隙率が高いほど苗木は死にやすい

→日射による乾燥ストレスがある?

⇒植栽後2年目までの枯死は少ないが、植栽地の傾斜と空隙率 が高いところは要注意

2.苗木の成長 ●成長に影響を及ぼしている要因

・成長に種間差有(Tukey-test p<0.01)

コナラQs<ヤマザクラPj=クリCc

・傾斜が急なほど苗木の成長が鈍化

→栄養豊富な表層土壌が流亡

・植栽時根元径が大きいほど苗木の成長は良好

・空隙率が大きいほど苗木の成長は良好

→成長は光環境に左右される

⇒初期成長には土壌、光環境が大きく関係

3.調査区内における空隙率の分布

●調査区中心近くが空隙率大 ●作業道(グラフ内の青いライン)

に面している付近に明るい

場所が広がる

●今後は・・・

周辺ヒノキの成長と先駆

性樹種の侵入による空隙

率低下に注意

P2B017

小面積伐採地に植栽した広葉樹3種の活着及び初期成長 ○藤堂千景 ( e-mail:[email protected] ) ・ 伊東康人・山瀬敬太郎(兵庫農技総セ)

○背景・目的

●針葉樹人工林の更新手法の一環に、広葉樹林化の選択肢 ●その手法の一つとして、人工林に小面積の群状伐採(小面積 伐採)を行い、広葉樹苗木を植栽する方法がある ●小面積伐採地内の光環境や水分環境などの特性はまだ不明 な点が多く、植栽した広葉樹苗木の成長についても、未解 明な点が多い

⇒小面積伐採地での広葉樹植栽において、植栽後2年目 の環境条件と苗木の生死・成長の関係を明らかにする

○結論 ●植栽初期の枯死は少ない

●苗木の初期成長に影響を及ぼすのは、傾斜と光環境

●光環境が良好すぎると、苗木が枯死する危険性

⇒侵入樹種や周辺ヒノキの成長に伴う空隙率低下に注意 して、今後の調査を続ける

選択された説明変数 影響

傾斜 - **

植栽時根元径 + P=0.11

空隙率 - *

**p<0.01 *p<0.05

応答変数 説明変数候補 (固定効果)

説明変数 (ランダム効果)

使用した

確率分布

苗木の

生存モデル

苗木の

生死(1,0)

樹種 傾斜*5

土壌堅密度

空隙率

土壌水分 比高差*6

植栽時根元直径

調査サイト binomial

苗木の 成長モデル*3

苗木の 成長*4

樹種 傾斜*5

土壌堅密度

空隙率

土壌水分 比高差*6

植栽時根元直径

調査サイト gaussian

選択された説明変数 影響

樹種 (ベースはクリCc)

コナラQs - ***

ヤマザクラPj - P=0.08

傾斜 - ***

植栽時根元径 + **

空隙率 + ***

***p<0.001 **p<0.01

調査サイト名 新温泉町竹田 佐用町大日山

標高 347-350m 307-336m

土壌・土壌型 泥質岩・BD 玄武岩・BD

調査時本数 880本/ha 1,300本/ha

斜面方位 S30E S60W(No1-3)

N75W(No4)

平均樹高 13.0m 14.6m(No1-3)

15.9m(No4)

調査区1辺長 19.5m 22m(No1-3)

24m(No4)

伐採時期 2012/11 2012/11

植栽時期 2013/05 2013/05

植栽本数 262 327

10 20 30 40 50

-50

510

15

20

25

空隙率(%)

根元径成長

(mm

)

10 20 30 40

-50

510

15

20

25

傾斜(°)

根元径成長

(mm

)

No.1 No.2

No.3

No.4

No.3

No.2

No.1

No.4

各調査区における空隙率の分布(赤色が空隙率大)

Takeda No.1

19.5m

←斜面下部 

19.5

m 斜面上部

20

22

24 26

28

30

32

34

36

Takeda No.2

19.5m

19.5

m

5

10

15

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25 30

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35

35

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Takeda No.3

19.5m

19.5

m

15

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25

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Takeda No.4

19.5m

19.5

m

5

10

15

15 20 20 25

25

30 35

40

45

50

Obiyama No.1

22.0m

←斜面下部 

22.0

m 斜面上部

15 15

20

25

30

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Obiyama No.2

22.0m

22.0

m

10 15 20

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30

35

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Obiyama No.3

22.0m

22.0

m

10 15 20

20

25

25 30

35

40

45

Obiyama No.4

24.0m

24.0

m

14

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18 20

22

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28 30

32 34

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38

10 20 30 40 50

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

空隙率(%)

苗木の生死

(1,0

)

Qs Pj Cc

竹田

020

40

60

80

100

Qs Pj Cc

大日山

020

40

60

80

100

調査区

No

No

1

No

2

No

3

No

4

植栽樹種 Qs・Pj・Cc Qs

植栽密度

(本/ha) 1,000 1,500 2,000

測定項目 測定方法

苗木の位置 DGPS+レーザーコンパス

根元径 デジタルノギス

空隙率 全周魚眼レンズ+デジタルカメラ

土壌水分 ADR式土壌水分計

土壌堅密度 長谷川式土壌硬度計

○材料と方法 1.調査地

●調査サイト:兵庫県新温泉町竹田と同県佐用町大日山の

ヒノキ林

●調査区の設置:各サイト内に小面積伐採調査区を4区設置

(伐採時期2012/11)

●調査区の形・サイズ:1辺がヒノキ樹高の1.5倍の正方形

●植栽樹種:コナラQs・ヤマザクラPj・クリCc (ポット苗使用)

(植栽時期2012/12、2013/03)

●現時点での下刈りは無し

2.調査方法

●2013/06と2014/10に調査を行った

●調査項目:苗木の位置、苗木の苗高

根元径、空隙率、土壌水分 土壌堅密度*1(地表-60cmまで)

3.解析方法

●一般化線形混合モデル(GLMM)を構築*2(R ver.3.1.3)

●AICを基準に、説明変数候補から、苗木の生死や成長に影響

を及ぼしている要因を検討

*1 土壌堅密度の調査は、2013/06のみ行った

*2 苗木が小さいため隣接苗木の影響はないと判断し、苗木植栽密度は考慮していない

*3 生存している苗木のデータのみを使用した

*4 ウサギに梢端を食害された個体が見られたため、成長の指標は根元径のみとした

*5 傾斜はレーザーコンパス測量データを用いて算出した

*6 各サイトの調査区内の最も標高の低い場所との標高差