(xii) (xii) 保育所と幼稚園の保育の違い(3 歳以上児の保育について)(表no.62,...
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(xii) 保育所と幼稚園の保育の違い(3歳以上児の保育について)(表 No.62, 63)
3歳以上の子どもへの保育は、事実上保育所と幼稚園で行われているが、管轄の行政機関が
異なるだけでなく、保育内容の面での違いも指摘されるケースが少なくない。こうした点について
各保育所ではどう見ているのか、回答(複数回答)を求めた結果が次の通りである。
まず、全体では「保育時間の違いからくる保育内容の相違」をあげている保育所が 61.7%と高く、
基本的に 8時間と 4時間という保育時間の違いによる内容の相違を第一に考えられていることが
改めて明らかになった。特にこうした考えは、私立保育所で顕著に表れている。次に幼稚園との
比較で「幼稚園は教育を重視している」ととらえている保育所も少なくなく、50.5%という結果であっ
た。これは公立保育所にそうした見方が多くなっている。さらに、3番目に指摘された項目では保
育所も幼稚園も「基本的には同じ」と見ている保育所が 49.6%見られた。なかでも、この項目に関し
ては公・私立の間の格差が大きく、公立保育所が 58.4%であるのに対し私立保育所はそれより 20%
近く下回っている。それとは反対に、比較的私立保育所の方が公立保育所を上回っている項目に
「保育所の方が子どもの個性を重視」がある。これは公・私立全体で 39.4%になるが、私立保育所
の 45.2%に比べ公立保育所は 34.8%にとどまっている。
さらに、こうした結果を地域別に見ると、例えば指摘された項目のなかで一番多かった「保育時
間の違いからくる保育内容の相違」が全体の平均より多い地区としては、九州の 64.1%をはじめ、
北海道・東北、中国・四国、近畿の各地区で、それより低い地区は東海の 56.8%の他、北信越地区
となっている。とりわけ私立保育所でそうした見方をしている保育所が多い地区としては、北海道・
東北、北信越、九州の各地区でともに 70%を越えている。
この他、常に保育ニーズに保育所も幼稚園も対応していかなければならない点は共通している
が、この点についてどういった考えであるのかについて全体的には幼稚園の方が 2ポイント程度
多く「敏感に反応する」との回答であった。しかしながら、公・私立別で見ると、公立保育所は幼稚
園を、一方私立保育所は保育所の方をそれぞれ支持する割合が高くなっている。地域別には、幼
稚園は北海道・東北、関東、東海および九州で、保育所は北信越はじめ、近畿、中国・四国の各
地区で多くなっている。
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また、この結果を都市の規模の大小で見ると、「保育時間の違いからくる保育内容の違い」は都
区部・指定都市をはじめ各都市で 60%を越える割合を示しているが、町村では 50%台に落ちている。
これと関連する、幼稚園も保育所も「基本的には同じ」と見る項目では、これとは逆の結果が表れ
ている。すなわち町村にある保育所では、保育内容を含めて幼稚園も保育所も「基本的には同じ」
と見る見方が都市部に比べ多い。特に公立保育所にそうした傾向が表れている。この他、「保育
所の方が子どもの個性を重視」しているといった見方は、比較的大きな都市に多く見られる反面、
小都市地区や町村では少なくなっている。
(須永)
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(xiii) 保育に対する考え方・環境の変化(表 No.64, 65)
この設問は、回答者(原則的には所長)が 10年前と現在を比較して、保育に対する考え方や環
境が経験的にどのように変わったと思うかを問うものである。
上位の回答を全国平均でみると以下のような結果となった。(複数回答)
(計) (公立) (私立)
1、個性を大切にするようになった
2、保育時間が長くなった
3、保護者の要望が多くなった
4、主体性を大切にするようになった
5、開所時間が長くなった
6、異年齢混合保育を重視
7、保育方針が計画的になった
61.5%
54.6%
53.7%
51.5%
44.0%
30.1%
9.2%
67.6%
52.1%
54.8%
57.7%
36.0%
28.7%
6.9%
53.8%
57.8%
52.3%
43.7%
54.0%
31.9%
12.0%
最も多かったのは「個性を大切にするようになった 61.5%」の回答である。これは平成 2年に保育
所保育指針が改定され、指導型保育から子どもの個性を尊重した子どもの自発的・主体的活動
が重視される保育に変わったことの現れであろう。同様に「主体性を大切にするようになった」も
51.5%と高い比率を占めている。
2番目に多かったのは「保育時間が長くなった 54.6%」の回答である。「開所時間が長くなった」も
44%の回答となっており、10年前に比べて長時間保育や延長型保育が増加したことをはっきりと裏
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付けている。また「保護者の保育に関する要望が多くなった」は 53.7%と 3番目に高い割合を示して
おり、保護者からの保育所への要求や期待が増してきたことが分かる。
次に公私立別で見ると上位の回答に違いがある。公立では「個性を大切にする 67.6%」「主体性
を大切にする 57.7%」と保育の方法に関する回答が上位を占め、私立では「保育時間が長くなった
57.8%」「開所時間が長くなった 54%」と時間延長に関する回答が上位にきている。
また地域区分別では、「個性を大切にする」が北信越地区の公立で 75%、中国・四国地区の公立
で 77.9%と公立の回答が非常に高いのが特徴。「開所時間が長くなった」についても地区により公
私の違いが顕著であり、東海地区で私立57.9%、公立24.1%、公私差が33.8ポイントも開きがある。
その他近畿地区でも私立 55.2%、公立 25.6%、公私差が 29.6ポイント、北信越地区で私立 63.3%、
公立 35.9%、公私差 27.4ポイントとなっている。
所在地区分別では、「開所時間が長くなった」が県庁所在市で最も高く 56.3%、都区部・指定都市
で反対に最も低く 34.7%で回答に大きな開きがみられる。
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(xiv) 今後の保育内容についての考え(表 No.66, 67)
これからの保育内容についてどう変わっていくと思うかという問 14の設問だが、「基本的に変わ
らない」と回答した人が最も多かった。結果は次の通りである。(複数回答)
(計) (公立) (私立)
1、保育内容は基本的には変わらない
2、家族への対応を含む保育内容
3、保育時間の長時間化に対応する内容
4、視点が集団から個へと変わる
5、食事、睡眠、社会性等の生活全般を重視
6、すべての面で変えなければならない
7、知識教育を重視
8、わからない
50.8%
49.2%
37.2%
34.6%
28.4%
15.1%
1.9%
1.5%
52.0%
45.2%
37.8%
36.0%
25.8%
13.4%
1.1%
1.2%
49.3%
40.0%
36.2%
32.8%
31.7%
17.3%
3.0%
1.9%
「基本的に変わらない 50.8%」に続いて多かったのは「家庭状況に応じた、家族への対応を含む
保育内容に変わる 42.9%」「保育時間の長時間化に対応する保育内容に変わる 37.2%」「視点の置
き方が集団から個へと変わる 34.6%」の順となっており、今後、保育内容が家庭支援や個別対応に
重点を置くものになっていくと考えていることが分かる。これらの回答については公立が私立を上
回っているが、その他の「食事、睡眠、社会性等の生活全般を重視した保育内容」「すべての面で
変えなければならない」「知識教育の重視」についてみると私立の方が公立を上回る。
地域区分別では近畿地方に特色がある。「保育時間の長時間化に対応する保育内容に変わ
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る」が公立 44.9%、私立 46.3%で公私立ともに全国で最も高く、方「食事、睡眠、社会性等の生活全
般を重視した保育内容」は私立が 16.4%と全国で最も低く、公立も 17.9%と関東地区に次いで低い
回答率となっている。
所在地区分別では都区部・指定都市で「家族への対応を含む保育内容に変わる」と回答した割
合が公立で 64.4%と全国平均を大きく上回り、私立も 48.1%と全国私立の中で最も高くなっており、
都会ほど保育所が家庭を支援していく必要があると認識している表れであろう。そして、同じ回答
について町・村を除いた都市部では公立の回答の方が私立より高いのは、すでに私立の方が家
庭支援に取り組んでいる結果とみられる。
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(xv) 保育内容についての所長の指導・助言(表 No.68, 69)
保育所長が保育内容についてどのような指導・助言をしているかについて、回答数 1つを選択
する設問だが、82.6%の所長が何らかの指導・助言をしていると回答している。しかし、14.6%の所
長が「保母にまかせている 10.3%」「指導助言はしていない 4.3%」と答えており、保育内容への関わ
りをもたない保育所長が予想外に多い結果となった。とくに町村や地方都市で保育内容のことは
保母にまかせていたり、指導・助言をしないという割合が高くなっている。これは地方都市の方が
兼任所長が多いか、専任でも保育現場への関与が少ない所長が多いことの現れと考えられる。
一方、何らかの指導・助言をしている保育所長については「必要と思われる保母に指導・助言す
る」が 43.8%で最も多く、次いで「全クラスの保育内容について指導・助言する 38.8%」の順となって
いる。これを所在地区分別にみると、県庁所在市、中都市、小都市 A、町村等の地方都市で同様
な傾向を示しているが、都区部・指定都市においては地方都市と異なり「全クラスに指導・助言」
が 63.3%と高く、「必要と思われる保母に指導・助言」が 30.0%と低い結果となっている。
また地域区分別に見た場合、東海地区で「全クラスに指導・助言」と「必要と思われる保母に指
導・助言」を合わせ何らかの指導・助言をしていると回答した割合が全地区の中で最も高くなって
いる。一方、北海道・東北地区で「保母にまかせている」と回答した割合が公立私立ともにそれぞ
れが他の地区と比較して最も高い結果となった。
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(xvi) 保育所で取り組んでいる研修(表 No.70, 71)
保育内容を高めるために保育所で取り組んでいる研修について複数回答を可とする設問である。
全国平均は以下の通りである。
(計) (公立) (私立)
1、音楽やあそびなどの実技研修
2、乳児保育研修
3、障害児保育研修
4、保育制度に関する研修
5、育児相談研修
6、公開保育の実施
7、特にない
54.5%
46.8%
43.2%
31.7%
20.6%
20.5%
10.3%
43.4%
36.0%
45.2%
30.9%
15.0%
21.3%
14.3%
68.3%
60.2%
40.7%
32.6%
27.6%
19.5%
5.3%
実技研修が最も多いことは予想できることではあるが、その次に乳児保育研修の取り組みが高
い割合を占めていることは評価できる結果と言えよう。乳児保育への取り組みが進展しており、積
極的に研修に参加させていることの表れとみて良いだろう。しかし育児相談研修についてみると、
回答が低率であることに注目したい。児童福祉法の改正に伴い育児相談機能の強化を図ってい
かなければならない状況の中で、予想外に低い回答結果である。育児相談研修については日保
協をはじめ全国の保育組織が取り組んでいるが、地域によっては研修の開催回数が少なかった
り、研修内容にも格差があり、取り組みや対応が決して十分とはいえない。
次に公私立の比較をみると、私立の方が研修に積極的に取り組んでいる結果となっている。公
立が力を入れているのは障害児研修と公開保育の実施であり、実技研修、乳児保育研修、保育
制度研修、育児相談研修等については私立の取り組みの方がかなり高い割合を示している。こ
れは地域区分別及び所在地区分別にみても同じことがいえる。また、「取り組んでいる研修は特
にない」という回答に留意したい。保育者の高い専門性が期待される中で私立と比較して公立で
回答が多いことは憂慮すべきである。
(太田嶋)
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(xvii) 保育所の情報提供について
1.提供しようと考えている情報(表 No.72, 73)
保育所は保護者に対して、どのような情報を提供しようと考えているか、について 24項目の選
択肢を設け、複数回答可で設問したものである。
回答総数 9,514、1保育所が平均 7項目を選択したことになる。
その結果最も多い情報提供の内容は、70~80%の「保育の方針」「開所時間」「1日の保育の流
れ」「年間の行事」の 4項目であった。
次が 50%前後の「受け入れの対象年令」「特色」「実施している特別保育」である。上記 7項目の
うち、公私立の差が見られたのは、「特色」と「実施している特別保育」のみである。しかし、その差
は 10%程度にすぎない。その他はすべてに於いて同率を示していた。こうした数値は、改正児童福
祉法が平成 10年 4月 1日より施行され、新しい保育所制度の下で、情報提供が市町村や保育所
に義務づけられることを、多くの保育所が承知しており、この時期から心準備をしていることを示し
ている。上位 7項目の情報が、新保育所制度の中で例示されているものと同様であることからも
わかる。
次に 30%台の数値を示した情報は「入所申込みの手続」「食事やおやつ」「環境」「あそびの内
容」「職員の配置」である。
20%台では、「育児相談」「年令別の空き状況」「保育料」と続く。
上記 8項目の情報のうち、幾分公立優位の傾向が見られたのは「保育料」であった。その特徴
は、小都市 B(公 23>私 4.1)に於て顕著であった。小都市の狭い地域で、私立保育所が幼稚園や
他の保育資源に刺激を与えぬよう配慮した結果といえようか。全国的にも「保育料」の情報提供に
は私立は消極的である。また、「入所申込みの手続き」に於ても小都市 Bで公私立の差が大きく
(公 42.6>私 16.3)と私立が低い。「入所申込みの手続き」や「保育料」は行政の役割で、私立保育
所が情報提供することではないと考えているためであろうか。小都市 Bのみに見られた現象であ
る。
10%台の情報は「子どもの成長や発達」「保険・衛生」「安全対策」「保育に欠ける要件」で、健康や
安全の危機管理に関する情報ともいえる。これらは保育に対するより積極的な情報といえる。そ
の他「保育者の資格や特色」の情報は数%にすぎず、所在地区分別の公立では無回答の地区が
多かった。
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2.情報提供の方法(表 No.74, 75)
次に上記の情報を、どのような方法で提供しようと考えているか、について尋ねた。最も多い方
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法は「問い合せや見学の申込みに丁寧に対応する」78.6%である。次が「印刷物の作成、配布」
48.9%、「より丁寧に保育内容等を説明する」36.9%である。いづれもすべてに於て数値差は少なく、
全国的な傾向である。「問い合せや見学者に丁寧に対応する」「保育内容等を丁寧に説明する」
方法は、すでに多くの保育所で実践している方法である。そうした方法を、より丁寧に吟味して行
おうとしているのであろう。「印刷物の作成・配布」も今迄も実施してきてはいるが、今後は更に積
極的に取りくもうとしている保育所が多いことを示している。これらは明日からでも行うことのでき
る実行性の高い方法である。
次に「地域住民との交流をはかる行事を開催」「見学、説明会を開催」が 24.5%「育児サークル活
動等の支援」14.8%と、特別保育事業として、すでに実践している保育所も多い方法である。確か
に、育児相談、交流保育、開放保育、コミュニティグループ支援の保育等は、情報提供の場として
有効であろう。次にこの設問の中で、情報提供の方法について「特に考えていない」が 7%であるこ
とに注目したい。「特に考えていない」や「その他」の項の自由記述で、「いずれ考えねばならない
と思うが、今はまだ考えていない」や「情報提供は市町村が一括して行うので」といった記述が 18
件あった。小都市 Bや町村に幾分数値が高くなっていることからも、自由記述をしていない保育所
の中にも、こうした傾向があるのではないかと推測される。情報提供に関しては、都市部と小都市
の保育所の意識の差はまだ大きいようである。
次に、数値は少ないが、4.1%の保育所が「インターネットを活用する」と考えている。この方法は
一般化するにはまだ時間を要するであろうが、いずれ情報提供の方法として主流を占めることに
なるだろう。
最後に「妊婦を対象とした催しものを実施」0.9%は、全国各地に 2、3の保育所が散在する程度で
あった。
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3.他機関・施設との連携(表 No.76, 77)
保育情報の提供について、共同で行うなど、他の施設や機関などとの連携を考えているかを尋
ねたものである。
9項目の設問であるが
「他の保育所」と連携が 48.2%(公 58.7>私 35.1)と公立優位で最も多い方法である。公立にとって
の「他の保育所」は、同市町村の公立保育所のことで身内である。「連携せず単独で実施」
16.3%(公 10.3<私 24)とそれ程意識の差はないのではないか。
保育所が単独か、仲間内で連携し合うと考えている保育所が「他の保育所」と「単独」を合わせ
ると64.5%あることになる。情報提供について、他の施設や機関と連携するという考え方は、まだ馴
染みにくいものなのであろう。とりあえず、他の保育所と連携するだけで精一杯といった感じが伝
わってくる。
それは「特に考えていない」22.5%(公 19.4<私 26.5)の数値からも読み取れる。自由記述の中か
らも、いずれ考えねばならないが、今はまだ考えていない。と心準備や予測ができていない様子
が見えてくる。
「児童館などの保育所以外の児童福祉施設」12%、「図書館・公民館などの社会教育施設」11.1%、
「保健所・病院などの医療機関」8.8%、「老人ホームなどの社会福祉施設」7.2%、「児童相談所など
の相談機関」6.1%と、どれも地域の親しみやすい施設や機関である。子育て支援事業などでは、
窓口にパンフレットを置かせてもらったことのある場でもある。しかし保育所入所のための情報提
供となると、ちゅうちょしてしまうのであろう。果たして、相手の機関が受けてくれるだろうか、という
不安もあるであろう。
児童福祉法が改正され、市場原理が導入される。自由競争の時代ですといわれても、長い間、
規制、規制の中で行政の方ばかり見ながら保育所運営をしてきた保育所にとって、保育所以外の
施設や機関と親しく関係を持つということ自体、まだ距離があるのであろう。
共同、連携とは双方の利益のために対等な立場で、助けたり助けられたりという関係のことを意
味するものと思うが、保育所は今迄これらの機関に、一方的にお願いに行くことばかりで、相手方
の役に立とうと考えたことは少ないように思う。平成 10年度からの変化が実感として伝わってこな
いこの時期には、他の施設や機関との連携の数値が低いのは仕方のないことと思う。
(猪股)
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