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「匂い」 シ リー ズ

VII.香 料 の 基 礎 知 識

高砂香料工業

服 部 錬 三

調 合 香 料

調 合 香 料 は数 拾 種 か ら百数 拾 種 の 原料 を巧 み に

組 み合 わ せ て創 られ て い ま す.色 と り ど り の 香料

原 料 か ら必 要 な 香 り を選 び 組 み 合 わ せ,モ チ ー フ

に合 っ た香 りを創 り あ げ て ゆ く過 程 は,絵 画 に例

え る事 が 出来 ま す.

現 在,市 場 で鮮 や か な 色 ど り を そ ろ え て い ま す

香 水 類 は今 世 紀 の 初 め に 原 形 が 完 成 さ れ た も の で

す が,化 学 進 歩 と共 に生 み 出 され る新 し い香 料 原

料,絵 の 具 の 多様 化 は,さ ま ざ ま な 香 調,色 彩 を

持 っ た 香 りの 出 現 を可 能 に し ま し た.こ れ ら の 香

りは お よ そ次 の よ う に分 類 さ れ ま す.

1)香 水 の分 類

1)シ トラ ス タ イ プ

レモ ン,ベ ル ガ モ ッ ト,ペ チ グ レ ン等 の 柑 橘 類

を主 成 分 と し た 香 りで あ り,ラ ベ ン ダ ー,ロ ー ズ

マ リー,べ ー ジ ル 等 の ハ ー ブ 類 が モ デ ィ フ ァ イ ヤ

ー と して 併 用 さ れ ます.香 水 類 の 中 で は最 も古 く

か ら愛 用 され て い た ジ ャ ンル の1つ で,男 性 用 コ

ロ ン に 多 く見 ら れ ます.

4711 (Muelhens, 1792), Jean Marie

Farina (R. Gallet, 1806), Eau Sauvage (C. Dior,

1966), Bravas(資 生 堂),等 が 代 表 的 な もの で

す.

2)フ ー ゼ ア タ イ プ

ベ ル ガ モ ッ ト,レ モ ン等 の 柑 橘 類 に ラベ ン ダ ー,

オ ー ク モ ス,ク マ リ ン を調 和 さ せ,ボ リ ュー ム,

拡 散 性,持 続 性 を 強 め た香 で す.男 性 用 コ ロ ン の

主 流 と な って い る 香 りの ジ ャ ンル で す.

Fougere Royale (Houbigant1882) Paco

Rabanne PH (P.Rabanne, 1973) Azzaro PH

(Azzaro1978) Drakkar Noir (G.Laroche,

1982) Cool Water (Davidoff, 1988)等 ベ ス トセ

ラ ー に な っ た 男 性 用 コ ロ ン が 多 く 含 ま れ て い ま

す.

3)フ レ ッ シ ュフ ロ ー ラ ル タ イプ'

花 の も つ美 しさ 瑞 々 しさ を 表 し た 香 りの ジ ャ ン

ル で,ミ ュ ー ゲ,ヒ ヤ シ ンス,ロ ー ズ 等 の 清 楚 な

花 の 香 り が主 な モ チ ー フ と して 使 用 さ れ フ ル ー テ

ィ ノ ー トが 巧 み に 調 和 し た も の も 多 く見 ら れ ま

す.日 常 さ りげ な く使 用 出 来,初 め て 香 水 を使 う

人 に も適 し て い ま す.

Diorissimo (C,Dior, 1951) Anais Anais (Ca-

charel, 1979) Lauren (R,Lauren, 1978), Eau

de Givenchy (Givency, 1982) Rosarium(資 生 堂,

1986),Liz Claiborne (L, Clariborne,1986)等 が

代 表 的 な も の で す.

4)グ リ ー ン フ ロ ー ラル タ イ プ

フ レ ッ シ ュ フ ロ ー ラル な香 り を基 調 に リー フ ア

ル コ ー ル,ト リプ ラ ー ル(R),ト マ ト リー フ,ガ ル

バ ナ ム オ イル 等 の グ リー ン ノ ー トで ア ク セ ン トを

つ け た 香 り で,若 い 女 性 に好 ま れ て い ま す.

Ven Vert (Balmain, 1945) Chanel#19

(chanel, 1978), Murasaki(資 生 堂,1980),

Cabotine (Gres,1990)等,知 的 で 颯 爽 と した 雰 囲

気 を持 つ 点 が 特 徴 で す.

5)フ ロ ー ラ ル フ ロ ー ラ ル タ イプ

フ ロ ー ラル ブ ー ケ と言 わ れ る 香 りの ジ ャ ンル で

ロ ー ズ,ジ ャ ス ミ ン,イ ラ ン イ ラ ン,チ ュベ ロ ー

ズ,カ ー ネ ー シ ョ ン等,優 雅 で 芳 醇 な花 々 の 香 り

よ り成 り立 っ て い ま す.

花 束 の よ う に華 や か で や さ しい 雰 囲 気 を持 っ た

女 性 ら しい 香 り で す の で 年 齢 に 関 係 な く広 く愛 好

Vol.34No.2(1993) 0037-2072/93/0200-0061$Ol.00/0(R)1993Jpn.Res.Assn.Text.End-Uses. (61)

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さ れ て い ま す.

Joy (Patou, 1935) , L'air de Temp (Ricci,

1948) , Fidji (Laroche, 1956) , Charlie (Rev-

lon, 1973) , First (V, C, Arpels, 1976) , Gior-

gio (b, hills, 1981) , Paris (St.Laurent, 1983)Eternity(C.Klein,1988)等 ロ ン グ セ ラ ー と し て

永 く愛 好 さ れ て い る 香 水 が 多 く この ジ ャ ンル に属

して い ま す.

6)フ ロ ー ラル ア ル デ ハ イ デ ィ ッ ク タ イ プ

フ ロ ー ラ ル な香 り に脂 肪 族 ア ル デ ヒ ドで都 会 的

な 優 雅 さ とエ レガ ン トさ を強 調 し た香 りで す.や

や 大 人 び た 雰 囲 気 を か も し だ す の に大 変 効 果 的 な

香 水 で,パ ー テ ィー 等 に は最 適 な 香 り と言 え ま し

ょ う.

Chanel # 5 (Chanel, 1921) , Arpege

(Lamvin, 1927) , M.Rochas (Rochus, 1960) , Calandre (P, Rabanne, 1969) , White Linen

(Lauder, 1978) , Nocturnes (Caron, 1981) ,

化 粧 品 香 料 と して も良 く利 用 され て い る 香 りの ジ

ャ ンル で す.

7)シ プ レー タ イプ

キ プ ロ ス 島 を モ チ ー フ と し たChypre (Coty,

1917)の 流 れ を く む 香 り の ジ ャ ン ル で 基 本 香 調

は,オ ー ク モ ス,ア ン バ ー グ リス,パ チ ュ リー,

ベ チ バ ー,ム ス ク ケ トンよ り成 り立 って い ま す.

とて も複 雑 な成 分 よ り創 香 され る為,ど の 香 り を

強 調 す る か に よ り色 々 な ニ ュ ア ンス を持 っ た 香 水

を創 り 出 す事 が 出 来 ま す.非 常 に奥 深 さ の あ る 香

りで知 性 と神 秘 性 を兼 ね そ な え て い ます.い わ ゆ

る 香 水 に長 じた 人 々 に 愛 好 され る 香 り で す.

Mitsouko (Guerlain, 1919) , M.Dior (C, Dior,

1947) , Cabochard (Gres, 1959) , Coriandre

(Couturier, 1973)等 傑 作 と言 わ れ る 香 水 が 数 多

く見 ら れ ます.一 方,こ の ジ ャ ンル は 男性 用 に も

応 用 さ れ,知 的 で 男性 的 な エ レガ ン ス さ を か も し

だす 香 りの ジ ャ ン ル と して 欧 米 で は根 強 い 人 気 を

得 て い ま す.

Aramis (Aramis, 1965), Halston Z-14 (Hal-

ston,1976)Polo(R,Lauren,1978)等 が こ の ジ

ャ ン ル に 属 し ま す.

8)オ リエ ン タ ル ダ イプ

フ ロ ー ラル な 基 調 に ム ス ク,ア ン バ ー,シ ベ ッ

ト等 の動 物 性 香料 とバ ニ ラ,バ ル サ ム 等 の 甘 さ を

多量に使用 した香 りのジャンルで,甘 く妖艶な雰

囲気を持 った香 りです.

エキゾチックなイメージが特徴的な為,夜 パー

ティーの際に利用されます.

Shalimar (Guerlain, 1925) , Youth Dew

(Lauder, 1952) , Opium (St, Laurent, 1977) ,

Bal A Versailles (Desprez, 1962) , Obsession

(C,Klein,1985)等 が 代 表 的 な もの で す.

9)フ ロ リエ ン タ ル タ イプ

90年 代 に な り注 目 され だ した 香 りの ジ ャ ンル で

フ ロ ー ラ ル ブ ー ケ の 芳 醇 さ とオ リエ ン タ ル の 妖 艶

さ を兼 ね備 え た 香 りで す.特 に フ ロ ー ラ ル に は な

い濃 密 な 甘 い香 りは,現 代 の パ ー テ ィー 用 香 水 と

し て 人 気 を あ つ め て い ま す.

Poison (C, Dior, 1985) , Lou Lou (Cacharel,

1987) , Samsara (Guerlain, 1989) , Tresor

(Lancome, 1990)等,80年 後 半 か ら90年 に か け て

続 々 と こ の ジ ャ ンル の 香 りが 上 市 さ れ 始 め て い ま

す.

10)マ リン タ イ プ

この 香 りの ジ ャ ン ル は,90年 代 に 入 り急 に興 味

を も たれ 出 した も の で,世 界 的 な傾 向 で あ る 自然

回 帰,エ コ ロ ジ ー感 覚 が 欧 米 を 中心 にマ リ ン ノー

トの 出 現 を可 能 に し ま し た.

カ ロ ン(R),ヘ リオ ブ ー ケ(R)を 中心 と し た ニ ュ ー

ケ ミカ ル が この ジ ャ ンル の キ ー物 質 と し て使 用 さ

れ て い ま す.

Clayborn for Men (R, Clayborn, 1989) , Par-

f am d'Elle (Montana, 1990) , New West for

Her (Aramis, 1990) , Escape (C, Klein, 1991) ,

L'Eaud'lssey(資 生 堂,1992)等 グ リー ン ノ ー ト

を伴 っ た オ ゾ ン的 な マ リン ノ ー トが 共 通 した 特 徴

と な っ て い ま す.

以 上 の分 類 の他 に 特 徴 づ け られ て い る ア ク セ ン

トの種 類 に よ りフ ル ー テ ィ,ス ウ ィー ト,ア ン バ

ー,ス パ イ シ ー,ウ ッ デ ィー,レ ザ リー 等 の 言 葉

が 付 け加 え ら れ,さ ら に細 か く表 現 す る事 も あ り

ま す.

一 方,香 料 濃 度 に よ り,Perfume, Eaude

cologne等 と異 な っ た 呼 び方 を さ れ る 事 が あ り,

香 料 濃 度 と一 般 的 な呼 び方 の 関 係 は表-1の よ う

に な って い ま す.

(62) 繊消誌

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表-1香 料濃度とその名称

II)調 合の しくみ

創香の手法により千変万化 に変化 し,多 種多様

な香 りの世界をかもしだす調合香料はどのように

なりたっているのでしょう.

一般に調合香料は調合原料の揮発性,保 留性を

巧みに組み合わせて創 られており次のような区分

より構成 されています.

(a)ト ップノー ト;1時 間以内に揮散する成分

で,ベ ルガモッ ト,レ モン,オ レンジの柑橘の香

りや,フ ルーツ,グ リーンな香りが主な構成分 で

あり,香 水香料では通常20%以 下 におさえられて

います.

(b)ミ ドル ノー ト;2~3時 間以 内に揮散 する

成分で,ロ ーズ,ジ ャス ミン,リ ラ,ミ ューゲ等

のフローラルノー トが主な構成分であ り香水香料

では30~50%と 量的には主要な構成分 となってい

ます.

(c)ラ ス トノー ト;4時 間以上香 りが持続する成

分で,ム スク,オ ークモス,ウ ッディ,バ ニリン

等,香 水の基調を形成する構成分で香水香料では

30~40%を 占め,香 気上重要 な役割をになってい

ます.

このように創香に際 しては,目 的 とする香 りの

性質を考 え,原 料の香質だけでなく,揮 散性にも

配慮 し,最 も適 した組み合わせを試行錯誤しなが

ら完成 させてゆくわけです.

一般的には,ア コー ドと言われる基本香調の骨

格 を10成分程度の数少ない原料 を用いて最 もイメ

ージに近い組み合わせを設計 します.得 られたア

コー ドは,目 的とするモチーフにさらに近づくよ

うに肉付けされ,最 後に少量で効果のある脂肪族

アルデヒド類,グ リーンノー ト,ス パイスノー ト,

ラク トン類 を加えながら香 りの トータルハーモナ

イズを行い創香が完成 します.こ の作業の間は,

最適なバランスを得 る為 に原料 の種類 を変 えた

り,使 用料の変更を行 ったり,実 際に肌につけた

香 りの 質,揮 散 に伴 う 香 りの 変 化 等 も細 か くチ ェ

ック され る事 は 言 う ま で も あ りま せ ん.

通 常1つ の 香 水 が 完 成 す る の に6ヶ 月 ~1年 間

が 必 要 で す.

創 香 の 過 程 は文 章 に す る の が 困 難 な 程,非 常 に

複 雑 な 作 業 で す か ら,使 用 す る原 料 も全 て が単 品

香 料 で は な くべ ー ス と 言 わ れ る色 々 な種 類 の調 合

香 料 と単 品 香料 を 組 み合 わ せ て 使 用 す るの が 一 般

的 で す.

表-II~ 表-vに 代 表 的 な フ ロ ー ラ ル ベ ー ス で

あ る,Jasumin, Rose, Lila, Muguetの 処 方 を示 し

ま し た.

調 合 用 べ ー ス と して は,こ の他 に,ウ ッデ ィー,

ア ン バ ー,ア ニ マ ル,ス パ イ シー,バ ル サ ム,グ

リー ン,フ ル ー テ ィー 等 と 多種 多様 な もの が 存 在

し,創 香 時 に必 要 に 応 じ て使 用 され ま す.

III)パ ヒュ ー マ ー の 育 成

表-亘JasminBase

Benzy Acetate 3 0 0

Phenylethyl Alcohol 1 0 0

Orris Concrete 5

Methyl Ionone 5 0

Indole 5

Ylang Ylang Oil 5 0

Jasmin Absolute 3 0

Benzyl Phenylaacetate 1 0 0

Hydroxycitronellal 2 0 0

Amylcinnamic Aldehyde 1 6 0

1000

表-iRoseBase

Citronellol 2 0 0

Phenylethyl Alchol 1 0 0

Geraniol 2 0 0

Rhodinol 2 0 0

Guaiacwood Oil 5 0

Eugenol 5

a-Ionone 7 0

Phenylacetic Acid 4 0

Phenylacetic Aldehyde 3

Rosephenone 8 0

Cinnamin Alcohol 5 0

Undecylenic Aldehyde 2

1000

Vol. 34 No. 2 (1993) (63)

Page 4: VII.香 料 の 基 礎 知 識 - JST

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表-NLilacBase

Benzaldehyde 1

Benzyl Acetate 5 0

Linalool 2 5

Terpineol 1 0 0

Phenylethyl Alcohol 3 0 0

Petitgrain Oil 8 0

Anis Aldehyde 4 0

Indole 5

Ylang Ylang Oil 3 0

Jasmin Absolute 3 0

Neroli Oil 2 0

Cinnamic Alcohol 8 0

Hydroxycitronellol 5 0

Kovanol(R) 5 0

Lilial® 1 0 0

Phenylacetaldehyde Dimethyl Acetal 1 0

iso-Eugenol 9

Phenylacetic Acid 2 0

1000

表-vMuguetBase

HydroxyCitronellal 3 5 0

Jasmin Base 1 0 0 Phodinol 1 0 0

Terpineol 3 0

Geraniol 2 0

Linalool 2 0

Cyclamen Aldehyde 7

Phenylethyl Alcohol 5

Guaiacyl Acetate 5

a-Ionone 5

Rose Absolute 3

Geranyl Acetate 2

Cumin Aldehyde 0.5

DPG 352.5

1000.0

過去,香 水処方は家伝の秘 とされパヒューマー

を志す人は,名 のあるパヒューマーの下で従弟的

に働 きながらその手法を会得するのが一般的でし

た.

当時は分析機器もなく香りの解析 も鼻にたよら

ざるをえませんでしたので,経 験豊かなパ ヒュー

マーの下で色々な知識を吸収する事がパ ヒューマ

ーになる唯一の方法でした.

分析機器の発達 した現在,香 料組成は昔 と比べ

ものにならない程容易 に解析出来るようになりま

した.し かし,パ ヒューマーにとって科学知識よ

りも,感 性 と経験がより重要 である事は以前と同

様であり,経 験豊かなパヒューマーの下での教育

はパ ヒューマー育成の必須条件である事 も以前と

同様と言えます.

現在は昔のような従弟的な教育 システムはなく

なり合理的になりましたが,価 値のある処方を作

成出来るようになるのに最低3年 間は必要 であ

り,色 々な香 りの創香に対応出来るようになるの

には10年 間近 くの経験が必要です.そ れは以下の

ような過程 を経て行われます.

1)パ ヒューマーとしての適正試験

パ ヒューマーとしての潜在能力を調べる為,日

常生活の中の香 り(花,フ ルーツ,ス パイス)を

知 っているか同 じ種類の香 りを当てる事が出来る

か,香 気強度の順を当てられるか等,感 性 と臭覚

が標準以上であるかの試験を行います.

2)香 りの記憶

パ ヒューマーにとって調合原料の香 りの性質を

熟知する事 は必須条件であり通常は3,000~4,000

種類の原料の香 りを記憶していると言われます.

1年 目はこの内,重要な400~500種 の天然香料,

合成香料 を記憶 します.こ の時,そ れぞれの香 り

の経時的な変化,持 続性をしっか り記憶 します.

3)基 本香料の調合

記憶 した原料を使用し,花 の香 りの創作を行い

ます.限 られた原料 を用い,生 花の持つイメージ

を表現 します.こ の場合,花 の香 りの分析 データ

ーは一切示されず,あ くまで感覚的に香りを表現

する事が肝要です.

4)有 名香水の模倣

花の香 りと同様,官 能的な解析だけをたよりに,

記憶した香料原料 を用いて有名香水の模倣を行い

ます,こ の場合 も,分 析データー,処 方の類は一

切提示されませんので,大 変な試行錯誤を繰 り返

す事 により,香 料原料の使 い方を会得 してゆきま

す.

5)科 学知識の習得

香 りの記憶,調 合方法の学習を行 いながら使用

する原料の背景を学びます.各 原料の価格,製 造

方法.天 然香料の産地,採 油方法,収 穫時期.調

(64) 繊消誌

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合香料の物性 とその測定方法等.パ ヒューマーと

して知 っておく必要 のある科学知識 を習得 しま

す.

6)応 用研究

パヒューマーにとって最 も基本的な能力である

香水類の創作を学習すると共に,そ の他色々な商

品への応用の学習も行います.石 鹸,シ ャンプー,

洗剤,浴 剤,芳 香剤,科 学洗剤等,基 材に賦香す

る事によ り香 りが変化するものへの対応を学びま

す.

以上のような教育過程を3年 間行うと,ジ ュニ

ア パ ヒ ュ ー マ ー と言 わ れ る パ ヒ ュー マ ー の 卵 が 誕

生 し ます.

そ の 後 は,個 人 々 が 色 々 な 経 験 を積 む事 に よ り

一 人 前 の パ ヒ ュ ー マ ー と し て 完 成 さ れ て ゆ き ま

す.感 性 と学 習 と経 験 が パ ヒ ュ ー マ ー の 良 否 を決

定 す る 大 き な要 因 と言 え る で し ょ う.

以 上,2回 に渡 り,香 料 の 歴 史,香 料 原 料,調

合 香 料 香 水 の知 識 につ い て 述 べ ま した.ス ペ ー ス

に制 限 が あ り要 約 しす ぎ た感 が あ りま す が,香 り

に興 味 を 持 たれ て 居 る 人 々 の 参 考 に な れ ば 幸 い で

す.

図 書 紹 介

内外 の全繊 維 ・全加工 段 階 のデ ータ ・資料 を収録

1993年 版 『繊 維 ハ ンドブック」

(「化繊 ハ ン ドブ ック」 改 題)

B6判400頁

定 価5,000円

(消 費税 別,送 料 込 み)

日本 と世 界 の最 新 の 繊 維 デ ー タ バ ン ク と し て定 評 の あ る 『繊 維 ハ ン ドブ ック』 の

「1993年 版 」 が,こ の ほ ど発 刊 され た.

1959年 の初 版 か ら数 える と,29回 目の 刊行 に 当 り,毎 回,細 部 に わ た る見 直 し と増

補 が行 われ て き た(こ の 間,「1987年 版 」 よ り,そ れ まで の 「化繊 ハ ン ドブ ック」 を

「繊 維 ハ ン ドブ ック」ど改題).繊 維 原料 か ら素 材,テ キス タ イル,ア パ レル,流 通,

消 費 に至 るま で の全繊 維,全 加 工 段 階 の 最新 の デー タ ・資料 が 系統 立 て て収録 され て

お り,文 字 どお り内 外 主要 国の “繊 維 の こ とな ら何 で も分 る”ハ ン ドブ ッ クと な って

い る.

構 成 は 「国 内統 計 編」 「国 際 統計 編 」 「資 料編 」の3部 か ら成 り,全 体 を通 じて既 刊

内容 との 継続 性 に細 か い 配慮 が 払 わ れ て いる.

『繊 維 ハ ン ドブ ック』に衣 替 え し て6回 目の本 書 は,繊 維 業 界 に携 って い る 人 には

もち ろん,繊 維 を研 究,あ るい は繊 維 に関心 を持 って い る 人に とっ て も活 用範 囲 は誠

に広 い.

お 問合 せ ・お 申込 み は,日 本 化 学繊 維 協 会 ま で

東 京/〒103東 京 都 中 央 区 日本 橋 本 町3-1-11(繊 維 会 館6階)TEL03-3241-2313

大 阪/〒541大 阪市 中央 区 瓦町4-6-8(大 阪 化 学繊 維 会館7階)TELO6-231-2871

Vol.34 No.2 (1993) (65)