ultrason injection molding - brochure
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ウルトラゾーン®射出成形
ウルトラゾーン® のウェブサイト: www.plasticsportalasia.basf.com/ultrason
ウルトラゾーン®E, S, P
ウルトラゾーン®樹脂は、ポリエーテルスルホン (PESU)、 ポリスル
ホン(PSU) およびポリフェニルスルホン (PPSU)か ら成る非晶質
熱可塑性プラスチックで、非常に高い耐熱性を発揮します。 そ
の幅広い特性を利用し、高品質のエンジニアリング部品および
大量生産品の成形が可能です。ウルトラゾーン®は、熱可塑性
樹脂に使われる一般的な方法で成形することができます。ウル
トラゾーン®は、その他の樹脂、例えば、 ポリアミ ド、ポリカーボ
ネート、ポリオキシメチレン、ポリアルキレンテレフタレートでは要
件を満たすことができない用途にも使用することができます。そ
の極めて多様な特性によって、ウルトラゾーン®樹脂は、熱硬化
性樹脂、金属およびセラミックの代替として利用することができ
ます。
ウルトラゾーン®の射出成形
概要
予備処理
機械装置
04
04
04
射出金型 05
射出成形のパラメータ 07
射出成形の際によくある問題 09
11
11
12
12
グレード表記法 13
パージングおよびクリーニング
機械のスタートアップ、中断およびシャットダウン
リサイクル
加工中の安全措置
4
ウルトラゾーン®の射出成形
ウルトラゾーン®の射出成形概要
概要
ウルトラゾーン® S (ポリスルホン: PSU) 、ウルトラゾーン® P(ポリフェニルスルホン: PPSU)および ウルトラゾーン® E
(ポリエーテルスルホン: PESU) の射出成形はその他の熱
可塑性エンジニアリング・プラスチックに適用される基本原
則が同様に適用されます。最も大きな違いは、加工温度
が大幅に高いことです。ウルトラゾーン®の場合、溶融樹脂
温度は330 ‒ 390°C、金型の表面温度は最高で190°
Cまでの加工温度が必要となります。機械および金型は適
合するものを選択する必要があり、これらも高温になります
ので、取扱いには十分注意が必要となります。ウルトラゾー
ン®の成形に伴う基本的なメリットと注意点を以下に記載し
ます。
メリット:成形収縮・後収縮が小さい
バリがでにくい
異常な腐食や耐摩耗性の問題が少ない
優れた熱安定性 滞留時間によって機械特性が大きく影響される こ
とがない
課題:溶融樹脂温度が高い
金型温度が高い
溶融粘度が高いため、射出圧力が高い
金属との接着性に優れているため、離型力が高い
考えられる不良現象:
非晶性の性質に由来するストレスクラック( 保圧、金型温度に影響を受けます)
湿気、ゲートシステム、エアの巻込み、せん断発熱による銀痕
予備処理
加工前のペレットに水分が含まれると、ウルトラゾーン®成形品
の品質に不具合を及ぼすことがあります。例えば、成形品の表
面に銀痕がついたり、溶融物が発泡するなどの不良現象が発
生します。そのような現象を防ぐため、ウルトラゾーン®の予備
乾燥は、130℃から150℃で3時間から4時間かけて除湿乾燥
機あるいは真空乾燥機を使って予備乾燥することで、吸湿率
を0.02%―0.05%にする必要があります。推奨の水分率は
0.02%以下となります。ウルトラゾーン®のペレットは急速に水分
を吸収しますので、乾燥後は直ちに、または直接射出成形機
に供給する必要があります。
成形後は、材料自身の吸湿量によって衝撃挙動などの機械
特性に影響を与えることはありません。
機械装置可塑化装置
ウルトラゾーン®は、他の熱可塑性エンジニアリングプラスチッ
クに一般的に使われる3ゾーンスクリューを用いて加工するこ
とができます。有効なスクリュー長さ18-22 D、ピッチ0.8-1.0
Dのもので、特に優れた効果を発揮します。また、材料への熱
負荷の少ない浅溝のスクリューの使用を推奨しています。
材料が流動しやすいことから、シャットオフノズルよりもオープン
ノズルが好ましい形態となります。シャットオフノズルを使用す
る場合は、流動特性にあわせ設計したノズルを使用する必要
があります。その他の熱可塑性プラスチックよりも高温で成形
されるため、金属の熱膨張による干渉を防ぐためシャットオフ
ニードルとガイドホールの間に0.05から0.06 mmの間隔を持た
せることを推奨します。
5ウルトラゾーン®の射出成形射出金型
ウルトラゾーン®は特に成形機の部品と金型の公差を少
なくする必要がありませんが、加工温度が高いため、スク
リュー、スクリュー先端、バレル、ノズルに使う材料には特
に注意が必要です。一般的に現在市販の機械は、通常
約400℃までの温度で加工できるように設計されていま
すが、機械部品の熱安定性に関して不明な点がある場
合は成形機製造元にお問い合わせください。加工温度
を信頼できるものにするために、十分な出力を持った
ヒーターによって加熱する必要があります。通常のバンド
ヒーターを利用しても、必ずしも最高400℃までのバレル
の温度に上げることができるわけではないため、約
5-8W/cm2の比出力を持つバンドヒーターを推奨してい
ます。不十分な出力のヒーターでは加熱に時間がかか
り、機械の始動時に材料が劣化する危険性が高くなりま
す。
射出金型
可塑化装置と同様、射出金型も比較的高い温度(約
200℃)に対応できるものである必要があります。また、冷却
回路の設計と、十分な耐熱および耐圧性を有するホース・
シール・ジョイントの使用を考慮しなければなりません。
設計および材料の選択一般的な熱可塑性エンジニアリングプラスチックの金型に
用いられる素材を使用可能ですが、金型の設計には、高い
成形温度を考慮する必要があります。熱間加工した高合金
鋼(表1)は、約200℃付近の温度域に加え、400℃以上の
溶融樹脂温度でも使用可能です。かみ合わせ部分は、運
転温度が上昇した場合の膨張率を考慮する必要がありま
す。特に異なる熱膨張係数の材料を組み合わせる場合に
注意が必要です。 金属の処理温度は、最高使用温度に
対し、 50℃以上高温で行われているものを選択してくださ
い。
表1 金 型および/または可塑化装置の熱間加工した高合金鋼
未強化グレード用の鋼鉄
1.2343 1.2344
X38CrMoV51 X40CrMoV5
強化グレード用の鋼鉄(摩耗防止効果)
1.2378 1.2379 1.3344
X220CrVMo122 X150CrVMo121
S6-5-2
耐腐食性を向上させた鋼鉄
1.2083 X42Cr13 1 3 % Cr
温度制御 他の熱可塑性エンジニアリングプラスチックと同じように、再生可能
な高品質の成形品を製造するには、射出金型の温度制御を最適
化する必要があります。140℃からおよそ190℃の金型温度を維
持するために最適な温度制御媒体はオイルです。温度制御媒体
に水を使用する場合は高圧システムが必要になります。電気温度
制御装置も使用することができます。
ヘッドランプベゼル
成形品の形状およびゲートの設計成形品の設計基準は、基本的には他の熱可塑性プラスチックに
該当する基準と同様です。ウルトラゾーン®の場合、抜き勾配、遷
移半径R(0̃ .4 mm)、突き出しシステムに特に注意を払う必要が
あります。抜き勾配は、平滑な表面の場合1-2°とします。
シボ加工のある場合、シボ深さ0.02mmにつき約1.5°を加えた値
が必要となります。離型用に最適化されたグレードは、より小さい
抜き勾配とすることも可能です。
ゲートシステムの設計および寸法ついても、他の熱可塑性プラス
チックでの設計指針を参考にすることができます。スプルーの抜き
勾配(半円錐角)は、少なくとも1.0-1.5°が必要となります。スプ
ルーを容易に型から外すには、スプルーブッシュをよく磨いておく
必要があります。スプルーと成形品の間の遷移半径が十分とられ
ていること(R = 1.0 - 2.0mm)を確認することも重要です。
6
フォグランプレフレクター
ヘッドライトベゼル
ピンゲートのゲート直径は、一般的には1.5から3.0mmとなります。ト
ンネルゲートのゲート直径は、できるだけ小さいものが必要ですが、
最低でも0.8mmより大きいものとします。およそ0.4から0.8mmのこ
れより小さなゲートは、小さな部品や微小部品を成形する際に使
用することができます。最小許容のゲート直径は、それぞれの状況
に合わせて確認する必要があります。
ウルトラゾーン®は、ホットランナーシステムを使って加工することも
できますが、使用時にはホットランナーと残りの金型部分の間の十
分な断熱に特に注意する必要があります。 特にゲート径が小さい
と、ノズルで樹脂が固化することがあります。さらに、ランナーの断
面積が過度に狭いことに起因する、デッドスポットおよび圧力の損
失は、樹脂の滞留、炭化などの不具合に繋がりやすいため、極力
避けてください。
ウルトラゾーン®の射出成形射出金型
射出成形のパラメータ
バレル温度表2にウルトラゾーン®の標準的な加工温度を示します。
特に樹脂温度が高い場合、および滞留時間が長くなる
場合には、供給部からノズルにかけて温度を上昇させる
設定を推奨しています。
最初のバレル加熱部(供給部)のバレル温度は、 320~
360℃の範囲のできるだけ低い温度を推奨します。バレ
ル内に溶融樹脂が滞留する時間が短い場合は、水平温
度プロファイルも適用することができます。ホッパー下部
は、およそ60-90℃に維持する必要があります。図1は、
ウルトラゾーン®の成形における典型的な温度プロファイ
ルを図で表示したものです。オープンノズルから溶融物
が流れ出るのを避けるために、ノズル温度は、最後のバ
レル加熱部よりおよそ5-10℃低くするか、サックバックを
使用した運転が効果的な場合があります。しかしサック
バックが大きすぎるとエアーの巻き込みやシルバーの原
因になることに注意が必要です。
背圧
背圧をかけることにより、可塑化しやすくなり正確な計
量が可能になります。一般的に50バールまでの背圧
が適しています(機械によって異なります)。
スクリュー速度スクリュー回転数は、スクリューの直径に応じて外周速度が約
0.1-0.3m/秒(6-18m/ 分 ) となるように設定することを推奨しま
す。(図2)。
金型の表面温度
成形部品の特性を最適化するには、表4に表示した金型表面
温度に従って成形する必要があります。金型温度が適当でない
と内部応力が増加するため表面品質が低下し、ストレスクラック
が生じやすくなります。金型温度が極端に高いと、離型の際に問
題が生じることがよくあります。スライド機構等の可動部品がつい
た金型の場合、温度制御はさらに重要となります。製造を開始
する前には、金型全体が均一な温度になっているか、可動部品
のクリアランスが適正に保たれているかを確認しなければなりま
せん。
表2: ウルトラゾーン®射出成形時の推奨温度
製品溶融樹脂温度
[ °C ]
金型表面温度
[ °C ]
ウルトラゾーン ® S 未強化品® 繊維強化品
330 - 390 350 -390
120 - 160 130 - 180
ウルトラゾーン ® E 未強化品 繊維強化品
340 - 390 350 - 390
140 - 180 150 - 190
ウルトラゾーン ®P 未強化品 350 - 390 140 - 180
[ rpm ]
1.2
0.6
0.4
0.2
0
1.0
0.8
図2: ウルトラゾーン®の標準的なスクリュー速度
外周速度
[m/s
]
50 100 150 200 250 350300
120 mm90 mm 60 mm
45 mm
30 mm
15 mm
図1:バレル温度プロファイルの例
6 5 4 3 2 1 ホッパー
ヒーター
温度プロファイル[°C]
360 360 360 360 360 360 80
水平設定
380 380 370 360 350 350 80
勾配設定
スクリュー直径
7射出成形ウルトラゾーン®射出成形のパラメータ
射出速度成形品の形状とゲートのシステムで最適な射出速度
が決まります。射出速度を高めることで表面品質が改
善しますが、過剰なせん断発熱に注意が必要です。
保圧保圧は、主に成形品の形状およびゲートのシステム、ならび
に必要な表面品質によって決まります。
保圧は、通常およそ500-1000バールですが、この範囲に
入らない場合もあります。保圧が適当な値でないと、ひけや
ボイドが発生し、表面品質が著しく低下することがあります。
保圧が極端に高いと、通常、離型の際に問題が生じ、結果
的にゲート近くに内部応力が大きくかかることになります。こ
のような場合には、保圧を段階的に変更することを推奨し
ています。
保圧時間必要な保圧時間もまた、成形品の形状とゲートのシステム
で決まります。 常にスプルーが完全に固化するまで、保圧
を維持する必要があります。特に小型ピン、トンネルまたは
フィルムゲートスプルーは、比較的迅速に固化します。この
場合は、保圧時間は、比較的短くなります。
冷却時間冷却時間は、主に成形品またはゲートシステムの最大肉厚に
よって決まります。離型は、他の熱可塑性プラスチックよりも
かなり高温の状態で行う必要があります。冷却時間は、他の
熱可塑性プラスチックと大きく異なることはありません。
流動挙動
流動挙動は、スパイラルフローの長さで特徴づけることができ
ます。射出成形機の射出圧力は、1000バールなどの値に均
一に設定されます。熱可塑性プラスチックの達成可能な流動
長は、樹脂の流動性以外にも、加工条件、成形品およびゲー
トシステムの形状にも依存します。スパイラル金型で決まる流
動長は、実際の成形品では限られた範囲内で適応することが
できます。表3は、厚み1.0-2.5mmにおけるスパイラルフロー
試験の結果を示したものです。
表3:ス パ イラルフローにおけるウルトラゾーン®の流動挙動
8
T溶解樹脂 [°C ]
T金型 [°C ]
スパイラルの長さ [mm]ウルトラゾーン®の種類 厚み 1mm 厚み 1.5 mm 厚み 2 mm 厚み 2.5 mm
S 2010 370 160 90 195 280 380
S 3010370 390
160 160
73 95
165 180
230 250
315 370
S 6010370 390
160 160
69 77
120 150
155 180
230 270
S 2010 G6 370 160 75 105 150 300
E 1010370 390
160 160
125 131
200 260
290 375
420 520
E 2010370 390
160 160
77 97
160 195
230 290
320 410
E 3010370 390
160 160
70 73
110 130
165 200
210 270
E 2010 G6370 390
180 180
58 72
135 145
160 210
230 300
P 3010370 390
160 160
55 67
95 120
125 160
165 270
射出成形ウルトラゾーン®射出成形のパラメータ
9
表4: ISO 294に従った異なるウルトラゾーン®グレードの収縮率
ウルトラゾーン®の種類® 長さ [%]
未強化 E 1010 0.79 0.82
E 2010 0.82 0.86
E 3010 0.85 0.90
S 2010 0.69 0.72
S 3010 0.70 0.74
P 3010 0.90 1.00
強化 E 2010 G4 0.36 0.61
E 2010 G6 0.28 0.58
KR 4113 0.31 0.46
E 2010 C6 0.15 0.35
S 2010 G4 0.31 0.52
S 2010 G6 0.29 0.46
収縮各ウルトラゾーン®グレードの標準的な収縮率を表4に表示しま
す。収縮率は、ISO 294に従って2mmプレートの流れ方向および流
れ垂直方向で計量したものです。強化グレードは繊維配向によっ
て流れ方向に対する収縮が少ないのに対し、未強化グレードは、
異方性が非常に少ないことを示しています。収縮は、部品の形状
および保圧などの加工パラメータによっても異なります。
図 3: ウルトラゾーン®の離型 挙動、 BASF 試験金型 E9.3 :
離型力
[%]
100
30
20
10
0E 3010 ナチュラル
E 3010 MR
40
S 3010 MR
P 3010 ナチュラル
S 3010 ナチュラル
P 3010
80
70
60
50
90
未強化、未着色
ウルトラゾーン® E 2010 MR U N
中粘度のポリエーテルスルホン
ウルトラゾーン® E 2010 UN Q26
中粘度のポリエーテルスルホン
ウルトラゾーン® E 3010 MR UN
高粘度のポリエーテルスルホン
ウルトラゾーン® S 3010 MR UN
中粘度のポリスルホン
未強化、着色
ウルトラゾーン® E 2010 MR ブラック
中粘度のポリエーテルスルホン
ウルトラゾーン® E 2010 MR ブラック HM
中粘度のIR透過 ポリエーテルスルホン
ウルトラゾーン® E 2010 ブラック Q31
中粘度のポリスルホン
ウルトラゾーン® P 3010 MR ブラック
ポリフェニルスルホン – 標準グレード
ウルトラゾーン® P 3010 MR グレー
ポリフェニルスルホン – 標準グレード
ウルトラゾーン® P 3010 MR ホワイト
ポリフェニルスルホン – 標準グレード
未強化、着色
ウルトラゾーン® E 2010 G4 MR ブラック
ガラス繊維を20%含有した 中粘度のポリエーテルスルホン
表5: 離 型性を改善したウルトラゾーン®製品
ウルトラゾーン®の射出成形射出成形の際によくある問題
射出成形の際によくある問題
離型ウルトラゾーン®は金属との接着性が良好なため、離型の際
に問題が生じることがあります(金型を設計する際に必要な
抜き勾配の項をご覧ください)。製造を開始するときに、離型
剤の使用が必要となる場合があります。離型性を改善した
材料は、表5に記載しています。
幅 [%]
10
シルバーストリークシルバーストリークの主な原因
吸湿乾燥、吸湿レベル <0.02-0.0 5%
コールドスラグスプルーの形状およびホットランナーまたは可塑化装置の先端の温度を確認してください。
エアの巻込みスクリュー設計 (溝深、供給部の長さ、バリアフライト型 ・・・)
可塑化パラメータ(背圧など )
ニードルバルブノズルを使用する
せん断発熱射出速度を落とす
エアトラップ部品の設計、ゲートの配置、金型のエアーベントに配慮し、鋭いエッジまたは肉厚の急激な変化は避けてください。
ブラックスペ ック/滞留時間
ヘイズ
操作中(例えば、乾燥機、フィードパイプの中)または可塑化
ユニットに残った残留物によって、ウルトラゾーン®に不純物
が混ざると、成形品にヘイズが生じることがあります。また、異
なるウルトラゾーン®ポリマーを混合した場合にも、同じことが
生じます。
図4 : ウルトラゾーン®の成形:機械の運転を中断した間および停止中の温度 250℃であれば、材料はシリンダーの中に数時間保滞留可能です。加工温度が高温の場合は、シリンダー内の材料は10分ごとに
パージを行う必要があります。
FFF
時間 [ t ]
400
150
100
50
0
350
250
温度
[ °C
]
200
300中断 < 30 分
中断 > 30 分
P: パージF: 製造
ポリプロピレン/ポリエチレンなどのパージ材
P P P P
P
ウルトラゾーン®の射出成形射出成形の際によくある問題
通常の成形工程では、滞留時間が5~10分の範囲であれ
ば、特に問題は生じません。より低い樹脂温度では、滞留時
間をより長くすることが可能です。長い滞留時間および/また
は高い溶融樹脂温度が原因で生じる問題の中で主なもの
は、製品の変色です(透明材料の場合は、黄色がかった色
に、ガラス繊維強化材料の場合は茶色がかった色に変色し
ます)。機械特性は滞留時間が過度に長かった場合にのみ
影響を受けます。ブラックスペック(黒点)が残る主な原因は、
シリンダーやホットランナーにおいて流速が遅い、もしくは材料
が流動しない箇所(「デッドスポット」)に材料が滞留することに
よります。このような個所において劣化した材料が滞留し続
け、黒点へと変化します。機械が運転を中断した時間が長い
場合、加熱時間または冷却時間が長すぎる場合にもこの問
題が生じることがあります。(図4)
11
機械のスタートアップ、中断およびシャットダウン
必要な加工温度まで昇温するには、2つのステップで実行す
ることを推奨します。まず、バレルの温度は比較的低い値に
設定します(約330~350℃)。温度が定常状態に達したら、
材料を射出し、バレル内を極力空にします。その後、バレルの
温度を必要な加工温度まで上昇させます。
シャットダウンあるいは温度を下げる前には、昇温時と同様に
まずバレルの温度を低い値に設定し、この温度に達したらバレ
ルの中の材料をパージするようにしてください。成形終了時、
バレルは極力空の状態にし、スクリューは、前部からおよそ
10mm後ろに下げてください。こうすることで次にスタートアップ
する際にスクリュー先端の破損を防ぐことができます。その
後、ヒーターをオフにしてください。
10分から20分程度の比較的短い中断・滞留時間であれば、
通常の加工温度で問題ありません。加工する際の温度の上
限(約380℃)に達している場合は、機械の運転が中断する時
間は5分以内としてください。またバレル内の材料は、定期的
にパージしてください。中断が続く場合は、バレルの温度は、
約250℃まで下げるか、ヒーターのスイッチを完全にオフにす
る必要があります。(図4)中断の後は常に、パージを行うよう
に推奨しています。
パージングおよびクリーニング
ウルトラゾーン®は加工温度が高いため、可塑化装置のパー
ジングまたはクリーニングには注意が必要です。
パージングを行う際は、まずバレルの温度を330~350℃ま
で下げます。この温度に達しててから、パージ材をバレルに
供給してください(図4参照)。引き続きパージングをしながら
バレルの温度を、パージ材の通常の加工温度まで下げてくだ
さい。優れた効果が期待できるパージ材は、高分子量のポリ
エチレンまたはポリプロピレンおよびポリカーボネートです。ブ
リッジングを抑えるため、供給部の温度が高くなりすぎないよ
うにすることが極めて重要です。
またパージングの際には、パージ材の温度が高くなるため、
十分な注意が必要です。パージ材を加熱しすぎると、パージ
ングした材料が自己発火する危険性があります。
パージ材を使用すると、装置の分解とその後のクリーニング
を簡素化することができます。通常はパージングですべての
残留物を取り除くことはできないため、分解清掃が最終的に
必要になります。清掃時には、バーナー等で焼却する方法、
または冷却固化した樹脂を無理やり取り除くことは、窒化処
理された金属表面へのダメージやスクリューの歪みの原因と
なるため、極力避けてください。
ウルトラゾーン®の射出成形機械のスタートアップ、中断およびシャットダウン
電子レンジ対応食器
リサイクル
スプルーや不良品などの粉砕再生材料は、一定量(最大
約20%まで)リサイクルすることができますが、汚れのない、
前加工の段階で熱分解していないものに限られます。 粉
砕品が混ざると、フィード特性、流動性および離型挙動を
損なうことがあります。 機械特性に限って言えば、特に衝
撃強度が低下する可能性があります。繊維強化製品の場
合は、加工を行うごとに、繊維の長さが短くなるので機械特
性に変化が生じる(強度の低下など)場合があります。ウルト
ラゾーン® 粉砕品は、急速に吸湿します。 加工に入る前に
は、乾燥処理を行うことを推奨しています。粉砕再生材料
についた微細なパウダーは必ず取り除くようにしてください。
加工中の安全措置
ウルトラゾーン®を加工する際には高温が伴うため、十分な
注意が必要です。機械、金型、成形品や残留溶融物を取り
扱う際には、その他の熱可塑性プラスチックを扱う以上に注
意が必要となります。ウルトラゾーン®は、通常の予防措置を
講じ、温度の上限(最大390℃)を越えなければ、健康に有
害な排ガスを排出することはありませんが、過剰な熱または
長時間加工温度上限付近の温度にさらされることによって
分解を起こします。また、溶融樹脂温度が高すぎる、可塑化
装置の滞留時間が長すぎる、または可塑化装置の残留物
が焦げるなど、様々な要因が複合してガス状の分解生成物
が生成される原因となることがあります。したがって、作業場
では十分に換気ができる環境であることが重要です。バレル
装置の上に排出システムを設置すると効果的です。また、
決して高温状態のままで可塑化装置を分解しないでくださ
い。
射出成形中に分解を起こした場合は、製品をバレルから除
去し排出し、同時にバレル温度を下げる必要があります。
不快な臭いは、分解した材料を水槽に入れるなどして迅速
に冷却することで低減することができます。分解材料が排
出されないと、ガス圧がバレルの中に蓄積されることがあり
ます。この圧力は、ノズルやホッパー部分で急激に放出さ
れることがあるため、確実に除去されなければなりません。
ノズルシャットオフ装置を使用している場合は特に注意が必
要です。さらに加工を継続する場合は、作業環境中におけ
る安全指針に従う必要があります。
12
サーキットブレーカーのラッチ オイル制御ピストン チップキャリア
ウルトラゾーン®の射出成形リサイクル
* ドイツの場合、MAK-Wert-Richtlinien.
ポンプインペラ
13グレード表記法構成
グレード表記法
例) ウルトラゾーン® E 2010 G6
E 2 0 1 0 G 6
1桁目
E = ポリエーテルスル ホン (PESU)
2 = 中粘度(射出成形用標準グレード)
G6 = ガラス繊維30 % 質量分率
構成
製品に使われるグレード表記には、以下に示す通り、アルファベットと数字が含まれます。「P」は、溶液を作るための特殊グレードを意味します。
1桁目 (アルファベット) :
ポリマーの種類
E = ポリエーテルスルホン(PESU)
S = ポリスルホン (PSU)
P = ポリフェニルスルホン (PPSU)
2桁目(数字) :
粘度のクラス
1 … = 最も粘度が低い
6 … = 最も粘度が高い
6桁目 (文字) :
強化材
G = ガラス繊維
C = 炭素繊維
7桁目 (数字) :
添加剤の含有率
2 = 10%質量分率
4 = 20%質量分率
6 = 30%質量分率
例
2桁目 3桁目 4桁目 5桁目 6桁目 7桁目
14
メモ
ウルトラゾーン®の射出成形メモ
ウルトラゾーン®の製品パンフレット一覧 :
ウルトラゾーン® E, S, P – 製品カタログ ウルトラゾーン® E, S, P – グレード一覧 ウルトラゾーン® – 耐薬品性 ウルトラゾーン®® – 自動車分野向け製品 ウルトラゾーン® – 特殊製品
® =
BASF
SEの登録商標です。
注意 本出版物に記載されるデータは、現在、弊社が所有する知識および経験に基づくものです。弊社製品の成形および用途に関して各種要因の影響が考えられますのでご使用下さるお客様各位がそれぞれ独自に試験を行って下さい。当該データは、ある特性を保証するものでも、特定の目的に対する製品の適合性を保証するものでもありません。ここに記載された記述内容、図、写真、資料、比率、重量等は事前連絡無く変更する場合があります。また、お客様との契約の中で合意された製品の品質を構成するものではありません。2013年6月現在での工業所有権や法令、規則等も御社にて確認下さい。
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