title レースに関する稀覯書 (上) 図書館だより 54...
TRANSCRIPT
http://dspace.bunka.ac.jp/dspace
Title レースに関する稀覯書 (上)
Author(s) 富樫,慧子
Citation 図書館だより 54 (1978-09) pp.2-3
Issue Date 1978-09-01
URL http://hdl.handle.net/10457/1871
Rights
どのような稀観本(きこうぽん一 の稀観本を紹介することとした。 の中から
西洋服飾稀観書(2L き こ・)しよ レースに関する稀観書(上) 講師(西洋服装史担当)富 樫 慧 子
19世紀中期イギリスに始った美術工芸運動の影響
は大きく,その範囲は欧米にとどまらず,日本の手
工芸にまで及んだ。そうした手工芸全般の動静がレ
ース作りの分野にも起こったらしいことは,当時刊
行されたレースに関する文献のおびただしい数から
も推察できる。代表的なものだけでも,パリサーの
「レースの歴史」1),ヘイルストンの「レ…一ス製作の
ためのデザイン集」(1870),セグインの「レース」2),
ルフェピュールの「刺繍とレース」3),ジャクスンの
「手工レースの歴史」4),エノンの「チュールと機械
レース産業」5)と枚挙にいとまがないが,この一種
の流行ともいえるレースの文献の刊行は20世紀の10
年代まで続いている。これらの内容はおよそ次の3
種類に分けられる。①図案集。伝統的なものとオリ
ジナルな創作デザインを含む。②技術解説。⑧レー
ス史,各種レースの分類,定義などを含む。いずれ
の場合も著者の古い手工レースの存続への願望が強
く感じられるが,この刊行の流行が一段落した1920
ス つ④製た作ボーのア五たン八め・九のク年デペのザ_ヴイ繊イン細ン集なチLカオよ ツ 1
り トロ゜ワ の
1パ クタ ) 1 用ン の ・
図プ 案 ツ ゜ク
ーか レら 1と
年代は,また婦人服から過度な装飾が姿を消し,
“糸の宝石”とも言える手工レースが存続の場をほ
とんど失った時期でもある。本学図書館には,この
時期に刊行されたレース関係の文献が,約30点(初
版,再版,翻訳を含む)収蔵されている。今回はこ
のうち近代レースの揺藍の地であるイタリアのそれ
を扱った重要な幾つかを紹介しようと思う。
〔753.3.H〕 Hailstone, S.H. Lilla;Designs for
Lace Making. E.工Francis, London,1870.ヘイルス
トン著「レース製作のためのデザイン集」。本学図
書館蔵のレース関係の文献中,最も刊行が古い。題
名が示す通りレースの図案であるが,数頁の序文の
中で著者は19世紀後半の手工レースの質の低下の一
因が機械の導入にあるとして嘆きながらも,伝統的
手工レースの優れた技法やデザインを適格に応用す
るならば,真のマシン・レースが生まれるであろう
と示唆している。また手工の場合も,各々の技術と
デザインの調和の重要性を強調している。したがっ
レて②1 ’
ス透一’か六
第し世一模紀巻様フLを イよ作レりるン゜レツ
1 エ
スで の作 一ら 種れ %た 一ラ イシ タ( リ網 ア地 のに 古刺 い繍 手を 工し
一 2 一
て図ll反はわずか40点ではあるが,いずれも16~19世
紀に作られた典型的な謡種のレースのパターンを示
していて,好個の手本集になっている。中でも異色
なのは,実際のレースではなく,16世紀にヨーロッ
パ諸国に流布したイタリアの図案家ヴィンチオロ
Vincioloの図案集から取った一枚であり, ここに
著者の,レース源泉への回帰的姿勢がうかがえる。
.753.2.R1.2〕 Ricci, Elisa,Old Italian lace.
Wiliiam Heinemann,1913.リッチ著「イタリアの
古い手工レース」。ヘイルストンにも見られたよう
なレース界全体のイタリア・ブームの中でのイタリ
ア人の著した2巻からなる大著である。原著の題名
は第一巻が Antiche trme Italiane…Trine ad ago.
19. 08,「イタリアの古いレースー針によるレー
ス」第二巻が~, …Tri]le a fuselli.1911, 「~,
ボビン・レース」である。本図書館のものはこれら
の英訳版ではあるが,以後の多くのレース史研究家
の重要な拠り所となったのは,むしろこの英訳版の
方であるところから,かえってi’i重な史料となって
いる。本文はルネサンス期以後の写実的絵画,手描
き装飾写本,嫁入り支度の目録,財産目録,制多禁
令,手紙,日記など生な史料に基き,また図版も個
人や教会所蔵のものが多く,現地人ならではの豊さ
がうかがえる。内容は原著の副題の通り,一巻はド
ローン・スレッドワークやネット刺繍などの透かし
用⑧い
る一e七
一世イ紀タジリ エ
アノのヴ古アいの手ボエビレン1 ・
ス レ’1
第ス
巻衣L服よのり縁゜飾
り に
3
のある刺繍からニードルポイント・レースの完成ま
でに,第H巻はイタリアの地方ごとのボビン・レー
スにあてられている。なお英語のオールド,伊語の
アンティケにはともに単に古いというだけでなく,
ここでは「手工の」という意味が含まれている。
二753.7.D’ Di]imont, Th. de :La Dentelle
Renal。sance. Mv|ht・use, A]snce,(1900年前後)デ
ィルモン編「ルネサンス風レース1。 題名によると
ルネサンス期のレース文献に見えるが,実は19世紀
に流行しはじめた細い機械製のテープ(ラセbcet)
で線模様を描き,ニードルポイント・レースやドロ
ーン・ワークのr一法で完成させる,北較的簡便なレ
ースの技術書である,初期イタリアのレースを思わ
せるダイナミ・・クな図柄に由来するものだろうc機
械と手工とを融合させた,当時としては新しい手法
である。それすらも失われた現代にとっては貴重な
記録である。壱末に実物大の図案とやりかけの実物
とがついた稀少価癌のある一冊である。76頁の小冊
子で,体裁も質素ではあるが,
註:1) Palliser, Bury;History of Lace,1868,
2)〔753.3.S〕Seguin, Joseph;La Dentelle,1875.
3)Lef6bure, Emest l Broderie et Dentelle,1887.
4)〔753.3.J)Jackson, Nevill;AHistory of Hand-
Made Lace,1900.5)〔753. 3. H〕H6non, H;L,
Industrie des tulles et dentelles m6caniques.1900
るの4細ういち巻線の末で機につ械つな製いい ’て
で市いい販るるのや゜テりr lかルプけネにのサよレンる 1
ス幅ス風広のレの実1線物スを QL針写よと真り糸の゜に模 よ様