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2004.10 number 124

寄稿論文

金属サレン錯体の魅力:多様な触媒作用と高不斉誘起能

九州大学大学院 理学研究院

香 月  勗

Scheme 1.

 サレン錯体の構造的な特徴は金属イオンの近傍にエチレン部位が存在することと3,3'位の間に大きな空間が存在することである。すなわち,エチレン部位に置換基を導入することにより,さらには3,3'位に適切な置換基を導入することによって,金属イオンの近傍に目的に応じた反応空間を構築することが可能である。サレン錯体のもう一つの重要な特徴は,

OH

N N

HO

R1R1

*= stereogenic center

OH

O

R2 R2

H2N NH2

HO

O+ +

R1 R1

* *

-2H2O

R2 R2

R1= bulky and/or chiral substituent

O

N N

O

R1R1

M

3 3'

R2 R2

MXn

X5 5'

35

* *

1

* *

はじめに

 近年,光学活性な金属サレン錯体を触媒に用いた不斉合成の報告例が急速に増加している。サレン錯体の各種誘導体の合成が容易なこと,それらの誘導体の多くがそれぞれ特色ある触媒作用を示すことが大きな理由である。それ故,さまざまなサレン錯体が合成され,それらを用いて活発な研究が展開されている。本稿では,金属サレン錯体の構造および触媒作用の基本的な特徴について述べるとともに,筆者らの研究を中心に最近の金属サレン錯体の化学の進展について述べてみたい。

1. 金属サレン錯体の合成と構造的特徴

 サレン配位子[N,N'-bis(salicylidene)ethylenediamine]およびその誘導体は,相当するサリチルアルデヒドとエチレンジアミンの誘導体の脱水縮合反応によって合成される。得られた配位子は,一旦フェノキシドイオン誘導体とした後あるいは塩基性条件下で金属イオンと反応させることにより,金属サレン錯体(1)に導かれる(Scheme 1)。アルカリ,アルカリ土類,一部の希土類金属を除くほぼ全ての金属イオンがサレン錯体を形成する。クロム,コバルト,マンガン錯体などでは,相当する3価の金属イオン錯体が触媒として広く用いられているが,これらの錯体は置換容易な2価の金属イオンを用いてサレン錯体を合成した後,空気酸化などで目的の錯体に変換されている。今日では,3-位あるいは3,5-位に置換基をもつさまざまなサリチルアルデヒドならびに光学活性な各種ジアミンの合成法が確立されている(一部は市販されている)ので,異なる中心金属をもつ多様なサレン錯体の入手が可能である。

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2004.10 number 124

Fig. 1. Some conformers of metallosalens.

 サレン配位子は平面4配位しているが,このことは配位子が平面構造であることを意味するものではない。エチレンジアミンと中心イオンより構成される5員環キレートは半イス型,エンベロープ型あるいはそれらが少し歪んだ配座をとり得る。この結果,サレン錯体は階段型〔stepped〕(AおよびB),傘型〔umbrella〕(C),あるいはこれらが少し歪んだ配座のいずれかをとることになる1。階段型配座はキラルであるが,傘型配座はアキラルである。エチレン部位に置換基を導入すると,両置換基がgaucheの関係をとり,かつ安定な擬エクアトリアル位を占めた階段型配座(A)が,擬アキシアル位を占めた配座(B)や両置換基がeclipsedの関係をとる傘型配座(C)より有利となる。このことは,置換基を導入することによって,エチレン部位に不斉が導入されるばかりでなく,サレン骨格もキラルとなることを意味している2。置換基のないアキラルな錯体(R = H)は,一般に二つの鏡像異性体[AおよびB(=ent-A)]の平衡混合物として存在する。しかし,アキラルな錯体でもアピカル配位子(XもしくはY)がキラルであると,AとBはジアステレオマーの関係になるので,平衡はいずれか一方の異性体側に傾くことになる。このことを利用すると,アキラルな錯体を触媒に用いる不斉合成が可能となる3。実際に,アキラルなサレンマンガン錯体(3)を触媒に用い,光学活性なビピリジン-N,N'-オキシド(4)をアピカル配位子としてエポキシ化を行うと高エナンチオ選択的に進行する(Scheme 2)4。なおこれらの研究は,アキラルな金属錯体の配座制御を行って不斉合成を行った最初の例である。その後同様の試みが広く行われている5。

MN

O

N

O

X

Y

NNM OO

stepped conformation

NNM OO

umbrella conformation

N NMO O

enantiomericX and Y= achiral

X X

diastereomericX or Y= chiral

R

R

R

chiral metallosalen complex(R H)

A B (= ent-A)

A B A B

R

Y Y

2achiral metallosalen complex

(R= H)

C

Scheme 2.

O2N

AcNH

O O2N

AcNH

O

O

N

O

N

O

Mn+

PF6

t-But-Bu

t-Bu t-BuN+N+

-OO-

CH2Cl2, -20 °C

3 (4 mol%)

82% ee, 65%

43

4 (5 mol%)

PhIO

*

エチレン部位の存在によってもたらされる構造的な柔軟さである。サレン錯体は殆どがオクタヘドラル構造を有しており,その多くはサレン配位子が中心イオンに平面4配位している(トランス-異性体,2)。すなわち,配位子の4箇の配位原子(N,N,O,O)はエクアトリアル位を占めており,アピカル位には他の配位子(X, Y)が結合している(Fig. 1)1。

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 サレン錯体のもう一つの大きな特徴は,配位異性体の存在である。上述の如く,サレン配位子の多くは平面4配位をしているが,二座配位性の添加剤(X-Y)を加えるとこれらがシス配位する結果,サレン配位子の1個の酸素原子がアピカル位に移動したシス-β配位をとることが多い(Fig. 2)6。なお,Zr, Ru, Hfなど第2および第3遷移系列のサレン錯体では二座配位子が存在しなくてもシス-β配位をとることがある。これらのシス-β錯体は平面4配位型錯体と異なって,錯体の第1配位圏がキラルであり不斉場構築に関して大きな利点を有している。すなわち,シス -β錯体は鏡像異性の関係にある ∆もしくは Λ異性体として存在し,中心金属はキラルである。この中心金属のキラリティーは,一般にジアミン部の不斉によって決まる。シス-β錯体のこの特徴を活かして配位子の設計を行うことができれば,より高い不斉誘起能をもつ触媒の設計が可能になるものと期待される。特に,二座配位が可能な基質の反応や配位性官能基をもつ基質間の分子間反応に対して,シス-β錯体は効果的な反応場を提供するものと考えられる。なお,サレン錯体は二つの酸素原子がアピカル位に配位した構造(シス -α錯体)をとることも可能であるが,通常は不安定であり不斉触媒反応への応用例も殆ど報告されていないのでここでは取り上げない。

Fig. 2. Structures of cis-isomers.

2. 平面4配位型サレン錯体を用いる不斉原子移動反応

 平面4配位型サレン錯体は適切な前駆体と反応してオキセノイド,ナイトレノイド,カルベノイド中間体を与えることにより,オレフィンあるいはヘテロ原子への付加反応あるいはC-H結合への挿入反応を触媒する(Scheme 3)。

MN

XO

N

Y

O

MN

X O

N

Y

O

(∆) (Λ)

enantiomeric

cis-β isomer

MN

X Y

N

O

O

cis-α isomer

Scheme 3. Reaction via oxenoid, nitrenoid, or carbenoid intermediate.

 これらの各原子移動反応を効率よくかつ高立体選択的に行うためには,オキセノイド,ナイトレノイド,カルベノイドの各前駆体に応じた中心金属の選択と得られる中間体の構造を考慮に入れたサレン配位子の設計が必要である。1986年,藤田らによって光学活性なサレンバナジウム錯体(5)を用いたスルフィドの不斉酸化が報告された7。その後,1990年 Jacobsenら8と筆者ら9によってマンガン錯体(6,8 79)を用いた不斉エポキシ化の研究が報告され,3位に嵩高い置換基をもつサレン配位子の有用性が明らかにされた(Scheme 4)。

O MNON

X

P-G=YO MN

ON

X

GP

H

S

PGH

PG

S

G-P

G=O: P= non, Y= IPhG=N: P= R, Y= IPh or N2

G=C: P= R and H, Y= N2

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これらの報告を契機として,サレン錯体を用いた不斉酸化の研究が活発に行われることとなった。反応の立体選択性は,エポキシ化を例にとると,オキセノイド種(オキソ体,Scheme3, G= O, P= non)への基質の接近方向と接近の際の基質の配向に依存している。すなわち,接近方向と配向を制御することができれば高選択性が達成されることになる。この接近方向と配向の制御機構については未だ議論があるが,ここでは実験結果に基づいて筆者らが提唱している仮説を述べる。前述のようにアキラルなサレン錯体を用いた不斉エポキシ化の実験から,オキソ体は階段型配座をとっていることが推測される。このことは計算結果からも支持されている10。3,3' 位に嵩高い置換基(R1)が存在する場合,オレフィンはより大きな置換基(RL)を3,3'位置換基(R1)から遠い側に向け,下向きのベンゼン環に近いN-M結合軸に沿ってオキソ体に接近する(Fig. 3)2。もう一つのN-M結合軸に沿った接近は上向きのベ

N NO

MnO

R1R1

R2

R2

L

R3R3

O Rs

RL

3'3

5

5'

Rs

RL

Scheme 4.

N

O

N

O

M

X

R1 R1

R3R3

5: M= V=O, R1= t-Bu, R2= H, R3,R3= -(CH2)4-, X= non

6: M= Mn+, R1= t-Bu, R2= H, R3= Ph, X= PF6-

7: M= Mn+, R1= CH(Et)Ph, R2= H, R3= Ph, X= PF6-

R2 R2

8: M= Mn, R1,R2= t-Bu, R3,R3= -(CH2)4-, X= Cl

O

NMn

N

OPhPh

(R)

(S)ArAr

OAc

9: Ar= 3,5-(CH3)2C6H4

PhI=O or NaClOO

Mn(salen)

6: 78% ee, 72%8: 86% ee, 67%9: 96% ee, 61%

4-PPNO

4-PPNO= 4-phenylpyridine N-oxide

 筆者らは,3,3'位の置換基をオキソ結合のより近傍に配置することができれば,オレフィンの配向がより厳密に制御されエナンチオ選択性が向上するものと期待した。そこでt-ブチル基に代わる3,3'-置換基として2-フェニルナフチル基をもつサレン錯体(9)を設計した12a。この錯体では,ナフチル環上の2-フェニル基がオキソ結合側を向き,望ましい空間に配置するものと考えた。後に,X線構造解析によってこのことは確認された13。錯体(9)を用いてエポキシ化を行うと,期待通りにエナンチオ選択性は飛躍的に向上した。シス-二置換および三置換オレフィンのエポキシ化では一般的に90% ee以上の高エナンチオ選択性が得られる12。なお,エポキシ化のエナンチオ選択性はアピカル配位子の性質によって影響され,通常は4-フェニルピリジンN-オキシド(4-PPNO)を添加して反応を行う(Scheme 4)。しかしながら,マンガン錯体は階段型配座をとるものの比較的平面に近いことと反応がラジカル中間体を経ることからトランス-二置換オレフィンや末端オレフィンのエポキシ化では良好な選択性が得られない12b。

ンゼン環との反撥によって不利になるものと考えられる。5位に嵩高い置換基(R2)があると(錯体8 11) ,上向きのベンゼン環側からの基質の接近はさらに不利になり,反応のエナンチオ選択性は向上する(Scheme 4)11。(なお,錯体(8)を導入したJacobsenら自身は,オレフィンは3,5位の置換基を避けてジアミン側から接近すると主張しているが11,この提案はその後に報告された結果と相容れない2b。) 3,3'位の嵩高い置換基としてt-ブチル基が主として用いられ,不斉エポキシ化などでは良好な結果を収めているが,他の原子移動反応では必ずしも期待した結果が得られないことがある。

Fig. 3.

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 最近,サレンルテニウム錯体(10)を触媒に用いると,オレフィンの置換様式に関係なく高選択性が得られることを見出すことができた(Scheme 5)14。錯体(10)は歪んだ階段型構造をとっており,トランス-二置換や四置換オレフィンでもオキソ種に接近できるものと考えられる15。反応は立体特異的であり,シス -オレフィンからはシス -エポキシドが,トランス-オレフィンからはトランス-エポキシドが得られる。なお,錯体(10)は光照射下で活性化され,触媒作用を示す。すなわち,錯体(10)は配位飽和であり触媒不活性であるが,光照射によるニトロシル基の解離によって配位不飽和となり触媒活性となる。

Scheme 5.

 オキセノイド種(オキソ種)はエポキシ化のみならず,C-H結合のヒドロキシ化も行うことができる。二つの反応に用いられる至適マンガン錯体の構造,反応条件が異なっていることから,両者の不斉誘起機構には違いがあるものと推測される。C-H酸化によるメソ-テトラヒドロフランの非対称化には,R,S-型ではなくR,R-型の錯体(11)が適しており,90% eeと高選択性が得られる16。エポキシ化の時に必要とされた4-PPNOを添加すると選択性が低下する(Scheme 6)。

PhPh

TMPO= tetramethylpyrazine N,N'-dioxide

O

**

82% ee

10, hν, TMPO

r.t.

DCPO= 2,6-dichloropyridine N-oxide

PhPh

O87% ee

O

NRu

N

OPhPh

(R)

(S)

Cl

NO

10

10, hν, DCPO

r.t.

O

N

Ru

N

OCl O

N

Ru

N

OCl O

N

Ru

N

OCl

-NO

NO DCPO Oepoxidation

10

TMPOor

Scheme 6.

 ナイトレノイドはオキセノイドと等電子構造をもつ活性種であるが,前者は窒素原子上に置換基があり,その空間的配置が反応場の不斉環境に大きく影響する。接近する基質の配向にも大きな影響を与える。それ故,ヒドロキシル化で高選択性を示した錯体(11)をただ単に用いたのでは十分な選択性は得られない。しかし,p-トルエンスルホニル基の配向を考慮して設計された錯体(12)を用いるとスチレン類のアジリジン化で高エナンチオ選択性を得ることができる(Scheme 7)17。

O

NMn+

N

OPhPh

(R)

(R)O O

OH

11 (2 mol%), PhIO

-30 °C, C6H5Cl

89% ee

O O

OH

11 (2 mol%), PhIO

-30 °C, C6H5Cl

90% ee

H

H

H

H

PF6

11

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Scheme 7.

 最近,Cheらはサレンルテニウム錯体(13)がナイトレン移動反応の優れた触媒であることを報告している。収率に改善の余地があるものの,エノールのアミノ化で優れた選択性が得られている(Scheme 8)18。ただこれまでの反応ではナイトレン前駆体にN-トルエンスルホニルヨージナンが用いられており,反応の進行とともにヨードベンゼンが副生する。このため反応の原子効率が低く,前駆体の改善が必要である。

Ph Ph

N N

Me Me

O OMn+

12

Ar 12, CH3C6H4SO2N=IPh

rt, 4-PPNO

Ar

NTs

Ar= Ph: 94% ee, 76%Ar= p-ClC6H4: 86% ee, 70%

AcO

Scheme 8.

 前駆体にトルエンスルホニルアジド(TsN3)を用いることができれば,原子効率がかなり改善される。Jacobsenらによって銅-ジイミン錯体を触媒としTsN3を前駆体に用いたアジリジン化が既に報告されているが,アジドの分解のために紫外線の照射が必要であるうえにエナンチオ選択性も不十分である19。筆者らはアピカル位にCO配位子をもつサレンルテニウム錯体(14)がスルフィドの存在下室温でアジドの分解を促進し,相当するスルフィミドを高エナンチオ選択的に与えることを見出した(Scheme 9)。アジドとしては,N- アリールスルホニルアジド20以外に適度な嵩高さと電子吸引性を有するアルキル基をもつカルバモイルアジドを前駆体として利用することも可能である21。スチレン誘導体のアジリジン化もTsN3を用いて高エナンチオ選択的に行うことができる(Scheme 10)22。

13a (11 mol%)

PhI=NTs, CH2Cl2, r.t.

RuN N

O O

Bu-t t-Bu

83% ee, 68%

NTs*

* L

LR R

13a: R= NO2, 13b: R= Br

13b (11 mol%)

OSiMe3 O

NHTs

97% ee, 17%

*PhI=NTs, CH2Cl2, r.t.

L= PPh3

Scheme 9.

O

N N

O

Ru

Ph Ph

PhS

CH3

PhS

CH3

NTs

COTsN3

14

14 (2 mol %)

MS 4A, CH2Cl2, r.t.

+

98% ee, 99%

+

PhS

CH3

PhS

CH3

NR

Cl3CC(CH3)OCON3

14 (2 mol %)

MS 4A, CH2Cl2, r.t.

+

95% ee, 93%

+

R= COOC(CH3)2CCl3

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Scheme 10.

 オキセノイド種と同様に,ナイトレノイド種もベンジル位やアリル位の活性C-H結合に挿入する。基質がオレフィンの場合,C-Hアミノ化はアジリジン化との競争反応となるが,サレン配位子に電子吸引基を導入するとアミノ化が優先して進行するようになる。臭素を導入したサレンマンガン錯体(15)を用いたときにC-Hアミノ化としては最高の89% eeが観測された(Scheme 11)23。ただ,前駆体がN-スルホニルイミノヨージナンであり,原子効率に関して改善の余地がある。

Ph 14, TsN3

MS 4A, CH2Cl2, r.t.

Ph

NTs

87% ee, 71%

14, TsN3

MS 4A, CH2Cl2, r.t. NTs

95% ee, 85%

Ph Ph

14, TsN3

MS 4A, CH2Cl2, r.t.

NTs

*

*

92% ee, 25%

Scheme 11.

 ジアゾ化合物はカルベノイド中間体を経る不斉シクロプロパン化の前駆体として広く用いられている。顕谷らの報告を契機として,銅,ロジウム,ルテニウムなどの触媒を用いた優れた不斉シクロプロパン化が報告されているが,それらの殆どがトランス選択的反応である24,25。 筆者らも,サレンコバルト(III)錯体(16)がジアゾエステルを用いたシクロプロパン化を高トランス,高エナンチオ選択的に触媒することを見出した(Scheme 12)。興味あることに,5位の置換基の電子効果およびアピカル配位子のトランス効果が反応のエナンチオ選択性に大きな影響を及ぼす。一方,錯体の3,3'位に置換基があると触媒活性がなくなることから,オレフィンはO-Co結合軸に添ってカルベノイド中間体に接近するものと推測された26。

Mn+N N

O O

NHTs

Br

BrBr

BrPF6

15, PhI=NTs

MS 4Å, -40 °C, CH2Cl2

15

*

NHTs

77% ee, 67%

89% ee, 71%

15, PhI=NTs

MS 4Å, -40 °C, CH2Cl2

Scheme 12.

Ph + N2CHCO2-t-Bu16

CH2Cl2, r.t.

CO2-t-Bu

Ph+

CO2-t-Bu

Ph

trans cis

trans : cis

X= I, Y= t-Bu: 75% ee (95 : 5)

X= Br, Y= t-Bu: 83% ee (94 : 6) 42% ee

X= Br, Y= MeO: 93% ee (96 : 4) 91% eeO

N N

OCo

X

Ph Ph

Y Y

16

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 これとは異なり,サレンルテニウム錯体(17)は3,3'位に置換基が存在しているにも拘わらず光照射下でシクロプロパン化を触媒する。この反応は,高エナンチオ選択性と同時に高シス選択性を示す(Scheme 13)27。単純なオレフィンのシクロプロパン化で高シス選択性が示された初めての例である。エポキシ化の項で述べたようにサレンルテニウム錯体は歪んだ階段状構造をとっているために3,3'位の置換基の間に大きなスペースがあり,その間を通るオレフィンの配向が規制されて高シス選択性が得られるものと考えられた。同じ配位子をもつサレンコバルト(II)錯体(18)も触媒活性を示す。18も 17と同様に高シス,高エナンチオ選択性を示すが,興味あることに18と17とでは不斉誘起のセンスが逆である28。このことは,18と 17とではオレフィンの接近方向が異なることを示唆している。コバルト(III)錯体(16)を用いた反応と同様にコバルト(II)錯体(18)を用いた反応でも3,3'位置換基はO-Co結合軸に沿ったオレフィンの接近を阻害すると考えられる。このことは,オレフィンがN-Co結合軸に沿って接近することを意味する。ただ,16を用いた反応では困難なN-Co結合軸に沿った接近が18を用いた反応では何故可能なのかは未だ不明である。しかし,17および 18を用いた反応で接近経路が異なることは,以下の実験からも支持される。すなわち,ジアミン部の不斉を除いた17および18の誘導体をシクロプロパン化の触媒に用いると,17の誘導体は17と類似の選択性を示すのに反して,18の誘導体は全くエナンチオ選択性を示さない28b。なお,錯体(18)は市販のエチルジアゾアセタートをカルベン前駆体に用いても高シス,高エナンチオ選択性を示す28。

Scheme 13.

+Ph Ph

CO2-R

+ Ph

CO2R

N2CHCO2R

17, R= t-Bu: 2% ee (7 : 93) 98% ee (hν)

N

O

N

O

Ru

PhPh

NO

Cl

17

catalyst

N

O

N

O

Co

PhPh

18

18, R= t-Bu: -% ee (2 : 98) -98% ee (NMI)18, R= Et: -% ee (1 : 99) -99% ee (NMI)

: proposed approach of olefinNMI= N-methylimidazole

O

NCo

N

OMeMe

19

R1= Ph, R2, R3 =H: 97% ee, 67%

O

O

CHN2

R1 R2

OR2

R1

H

R3

O

R1= Ph, R2= Me, R3 =H: 90% ee, 70%

R3

19 (5 mol %)

N-methylimidazoleTHF, r.t.

OH

R3

R217 (5 mol%), hν

THF (5 ml), r.t., 16 h R1

R2R1

R3

CHN2

O R1= Ph, R2, R3 =H: 94% ee, 78%

R1= (CH3)2C=CH(CH2)2, R2= Me, R3 =H: 90% ee, 70%

Scheme 14.

 錯体(18)を改良した 19を触媒に用いると,アルケニルジアゾアセタートの分子内シクロプロパン化が高エナンチオ選択的に進行する(Scheme 14)。一方,アルケニルジアゾケトンの分子内シクロプロパン化の触媒としては 17が適しており,高選択性を示す29。

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 以上述べてきたように,適切に設計された平面4配位型サレン錯体を触媒に用いることによって,オキセノイド,ナイトレノイド,カルベノイド移動反応の立体化学が高度に制御される。

3. シス -βサレン錯体を用いる不斉合成反応

 第1節で述べたように,多くの金属サレン錯体は平面4配位構造をとるがシュウ酸イオンやアセチルアセトンのような二座配位子が配位するとシス -β構造に変化する。このシス-βサレン錯体は,中心金属がキラルであるということの他に,平面4配位構造では得られないいくつかの特徴を示す。チタンサレン錯体などいくつかのサレン錯体は µ- オキソ結合を介して二量体を形成する(Fig. 4)。この µ- オキソ錯体でサレン配位子が平面4配位している場合両金属イオンに配位した配位子(L1, L2)の間での分子内反応は困難であるが,配位子がシス-β配位すると両配位子の間での分子反応が可能となる。さらに,Fig. 2で示したように,シス-βサレン錯体は二配位性の基質あるいは反応剤(X-Y)を用いる反応に対して優れた反応場を提供するものと期待される。 シス-β-µ-オキソ錯体の特徴を活かして,Belokon’らは高エナンチオ選択的トリメチルシアノ化を報告した30。チタンサレン錯体にアミン存在下で水を作用させるとサレン配位子がシス-β構造をもつジ-µ-オキソ錯体(20)を形成する。ジ-µ-オキソ錯体(20)にアルデヒドとトリメチルシリルシアニドを作用させると,µ-オキソ結合の一つが開裂しそれぞれのチタンイオンにアルデヒドとシアニドが配位した µ- オキソ錯体を与える。このときそれぞれのサレン配位子がシス -β構造をとると,アルデヒドとシアニドは分子内で反応が可能となる。それぞれが光学活性なチタンイオンに配位しており,反応は高エナンチオ選択的に進行する(Scheme 15)。

MN

O

N

OM

N

O

N

O

MN

O

N

O

O

MO

N

N

O

O

µ-oxo-trans µ-oxo-cis

L1

L1

L2

L2

Ti

O

O

N OO

N

Ti

O

NO

NTiN NO O

Cl

Cl

H2O N

OH

N

HO

Bu-t

t-Bu

t-Bu

Bu-t

N N

OH HO

NEt3

Me3SiCN PhCHOTiN

ONNC

O

O

TiOO

NO

N H

Ph

+

CNO

TiN NO O

NC

TiN NO O

NC

O

TiN NO O

NC

TiN NO O

OMe3SiCN

PhNC

NC Ph

OSiMe3

RCHO + Me3SiCN CNR

OSiMe3

R= Ph: 86% ee, R=4-MeOC6H4: 84% ee

20

20

20

Scheme 15.

Fig. 4.

Page 11: TCIメール No.124 | 東京化成工業2004.10 number 124 Fig. 1. Some conformers of metallosalens. サレン配位子は平面4配位しているが,このことは配位子が平面構造であることを意味す

11

2004.10 number 124

Ti

O

O

N O

O

N

Ti

O

N

O

N

di-µ-oxo Ti(salen)

21

TiN N

O O

O

O

H2O2

MeOH-d4

MeOH-d4

TiN NO O

OCD3

OCD3

MeOH-d4

H2O2

trans-Ti(salen) complex

SPh Me urea•H2O2

23S

Ph Me

O

98%ee, 78%

n-C8H17S

Men-C8H17

SMe

O

*

92% ee, 70%

O

N

Ti

N

OPhPh

Cl

Cl

22(R,R)-Ti(salen) 22H2O, NEt3

CH2Cl2, r.t.di-µ-oxo Ti(salen) 23

MeOH, 0 °C, 24h

23 (2 mol%) , UHP (1.0 eq)S S

R

S S

R

* O

99% ee, 91%R= Ph

99% ee, 93%R= Bn

trans /cis

>99 : 1

94 : 6

urea•H2O2

23

 筆者らは,チタンイオン上で速やかなアルコキシド交換が進行することおよび過酸化水素が二座配位子であることを考慮して,ジ-µ-オキソ錯体を過酸化水素で処理するとシス-β ペルオキソチタン錯体(21)を与えるものと考えた(Scheme 16)。21ではペルオキソ部位は不斉空間の中に固定されており,それを用いた不斉酸化に興味が持たれた。そこで,チタン錯体(22)を相当するジ-µ-オキソ錯体(23)に変換した後,尿素・過酸化水素付加体を用いてペルオキソ錯体を発生させ,各種スルフィドの酸化を試みたところ,アルキルアリールスルフィドのみならずジアルキルスルフィドやジチアンなどが高エナンチオ選択的に酸化されることが見出された(Scheme 17)31。なお,その後の検討で錯体(21)はジ -µ- オキソ錯体から直接得られるのではなく,トランス型錯体を経て生成することが明らかとなった(Scheme 16)31b。

Scheme 16.

Scheme 17.

O

RL Rs

HOOR

RL Rs

O O

ORH

O RsRL

O

Criegee intermediate

B:

O

RL Rs

OR

O

H :B:

. .

>

O

RL Rs

O

HB:

:

. .

RO

 Baeyer-Villiger反応はカルボニル化合物をエステルあるいはラクトンに変換する最も簡便な方法である(Scheme 18)。この反応は Criegee中間体の転位を経て進行するが,転位に必要な軌道相互作用[σ-σ*相互作用]を行うためには,転位するアルキル基が酸素-酸素結合に対してアンチ-ペリプラナー配置をとることが必要である32。一般的には,

Scheme 18.

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N N

O O

Co

t-Bu Bu-t

t-BuBu-t

SbF6

N N

O O

Co

F F

FF

SbF6

Ph Ocatalyst, H2O2

CH2Cl2, r.t. OPh

O

24 25

24: 20%, 0% ee25: 30%, 57% ee25: 72%, 77% ee (EtOH, -20 °C)

Scheme 19.

 ついで,本来はトランス型錯体であるが,反応系中でCriegee中間体とシス-β型キレート錯体を形成し得る触媒を用いてBaeyer-Villiger反応の立体化学を制御することを試みた。その結果,サレンジルコニウム錯体(26)を用いたときに80% ee以上の良好な選択性が得られた(Scheme 20)37。さらに興味深いことに,ラセミのケトンを出発物質に用いた反応を検討したところ,触媒の位置選択性はBaeyer-Villiger反応の通常の転位傾向を大きく凌駕していることが明らかとなった。すなわち,一方の鏡像異性体からはメチン炭素が転位して生じた normal- ラクトンが得られるが,もう一方の異性体からはメチレン炭素が転位したabnormal- ラクトンが得られる(Scheme 21)38。酵素に匹敵する選択性である。

N N

O O

Ph Ph

Zr

Y

Y

26

UHP= urea•H2O2R= C6H5: 87% ee, 68%

R= p-MeOC6H4: 84% ee, 43%

R= n-C8H17: 81% ee, 63%

OR

26 (5 mol%), UHP

CH2Cl2, r.t.

94% ee, 99%

O

OO

O

O

R

26 (5 mol%), UHP

CH2Cl2, r.t.

H H

Y= PhO

Scheme 20.

枝分かれが多く求核性の高いアルキル基(RL)が枝分かれの少ないアルキル基(RS)に優先して転位するが,中間体の配座を制御することができれば,RSをRLに優先して転位させることが可能と思われた。酵素反応ではそのような例が数多く報告されている。不斉 Baeyer-Villiger反応33の研究でも,反応機構は明らかにされていないものの同様の反応が1例報告されている34。このことから,触媒を用いて中間体の配座を制御することができれば,酵素と同様の選択性を達成できるものと考えた。 酸化剤に過酸化水素を用いて得られるCriegee中間体(R = H)は二座配位子と見做されることから,シス-β型錯体とキレートを形成するものと期待された。このキレートの配座を適切に制御することができれば,Baeyer-Villiger反応の立体化学は制御可能なはずである。この考えに基づいて,平面4配位型サレンコバルト錯体(24)とシス-β構造をもつコバルト錯体(25)の触媒作用を比較したところ,両者ともに触媒活性を示すが,前者はエナンチオ選択性を全く示さず後者のみが中程度の選択性を示すことが明らかとなった(Scheme19)35,36。

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2004.10 number 124

N N

RuIII

OO

OH

RR

Cl

N N

RuIV

OO

OP

RR

Cl

N N

RuIII

OO

OH

RR

Cl

N N

RuIII

OO

OP

RR

Cl

O2

H2O2

27hν, –NO

R2C=O

R2CHOH

•O2Hor

•O2–

R2CHOH

•O2Hor

•O2–

P= H or non

O

O26, UHP, ClC6H5 r.t.(racemic)

fast isomer

slow isomer

O

OO

O

+

normal lactone ent-abnormal lactone40 : 1

(matching pair)

O

OO

O

+

ent-normal lactone abnormal lactone1 : 35(mis-matching pair)

Scheme 21.

4. 酸素酸化への応用

 先に述べたようにサレンマンガンおよびルテニウム錯体は優れた不斉酸化触媒であるが,いずれの反応も化学的酸化剤の使用が必要である。原子効率および環境調和性の観点から,常温常圧下での分子状酸素,特に空気の効率的な利用法の開発が求められている。筆者らは,サレンルテニウム錯体が空気酸化の優れた触媒であることを見出した。 可視光を照射しながらルテニウム錯体(27)とラセミの第2級アルコールを空気雰囲気下で撹拌すると,アルコールの速度論分割が起こる(Scheme 22)。相対速度比は11-20であるが酸素を用いた酸化的速度論分割の最初の例である39。反応機構の詳細は不明であるが,2-ナフトールを同じ条件に曝すと光学活性なビナフトールが得られることから40,アルコールが配位したルテニウムイオンが1電子酸化を受けた後にアルコキシラジカルの生成を経て進行しているものと考えられる(Scheme 23)。ただ,1電子移動がプロトン移動を伴うか否かは現時点では不明である。

Scheme 22.

RuN N

O OPhPh

Cl

NO

Ph

OH

27

27, air, hν, r.t.Ph

OH

Ph

O

+kS/kR= 20

65% conversion >99.5% ee

OH

OH

OH

(X 2)

*

65% ee

Scheme 23.

Page 14: TCIメール No.124 | 東京化成工業2004.10 number 124 Fig. 1. Some conformers of metallosalens. サレン配位子は平面4配位しているが,このことは配位子が平面構造であることを意味す

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2004.10 number 124

 アルコールがルテニウムイオンに配位して酸化が進行するものであれば,イオンの近傍のジアミン部を嵩高くすれば第1級アルコールと第2級アルコールが区別して酸化されるものと期待された。実際に1,2-テトラメチルエチレンジアミンより導いた錯体(28)を触媒に用いると第1級アルコールが選択的に酸化された(Scheme 24)41。ジオールの場合には末端アルコールが選択的に酸化されてラクトールが得られる42。いずれの反応でも,カルボン酸やラクトンへの過剰酸化は観測されない。

OHn O

n OH

n= 1: 81%n= 2: 95%

OH

28, air, hν

ether

OH

OH28, hν, air

d6-benzene, r.t., 12 h

O

O Hquantitative

0%

+

N

O

N

O

Ru

28

Bu-tt-Bu Cl

Bu-t t-Bu

NO

RuN N

O OArAr

OH

NO

29

Ar= p-C6H5C6H4

MeMeOH

OH

29, air, hν

CHCl3, r.t.O

OH

80% ee, 80%

Scheme 24.

 以上の結果から,光学活性なルテニウムサレン錯体を触媒に用いてメソ-ジオールの酸化を行えば,光学活性なラクトールが得られるものと期待された。メソ-ジオールの酸化的非対称化は広く試みられているが,酵素法あるいは化学的手法のいずれもが光学活性なラクトンを生成物として与える。種々検討した結果,アピカル位にヒドロキシ基をもつ錯体(29)を用いた時に,メソ-1,2-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの反応で80% eeの選択性が観測された(Scheme 25)43。本反応の適用範囲については現在検討中である。

Scheme 25.

おわりに

 金属サレン錯体はここで述べた触媒作用のほかにもルイス酸触媒などとして数多くの不斉触媒作用を示す。紙数の都合で省かせて戴いたが,それらに関しては適切な総説44を参考いただければ幸いである。 なお,本研究は参考文献中に記した共同研究者の大いなる熱意と注意深い観察によって達成されたものである。ここに深く感謝します。また,文部省科学研究費ならびに科学技術振興機構(CREST)による研究助成に感謝します。

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参考文献

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Tetrahedron, 54, 7919 (1998); c) H. Nishiyama, H. Matsumoto, S.-B. Park, K. Itoh, J. Am.Chem. Soc., 116, 2223 (1994); d) T. Katsuki, in “Comprehensive Coordination Chemistry II,”ed. by J. McCleverty, Elsevier Science Ltd., Oxford (2003), Vol. 9, Chapter 9.4, p 207.

25) 顕谷らは,5,5,5-trichloro-2-methylpent-2-eneのシクロプロパン化で良好なシスおよびエナンチオ選択性が得られることを報告している (Ref. 24a).

26) T. Fukuda, T. Katsuki, Tetrahedron, 53, 7201 (1997).27) a) T. Uchida, R. Irie, T. Katsuki, Synlett, 1999, 1163; b) T. Uchida, R. Irie, T. Katsuki, Tetrahedron,

56, 3501 (2000).28) a) T. Niimi, T. Uchida, R. Irie, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 41, 3647 (2000); b) T. Niimi, T.

Uchida, R. Irie, T. Katsuki, Adv. Synth.Catal., 343, 79 (2001).29) a) T. Uchida, B. Saha, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 42, 2521 (2001); b) B. Saha, T. Uchida, T.

Katsuki, Tetrahedron: Asymmetry, 14, 823 (2003).30) a) Y. Belokon’, S. Caveda-Cepas, B. Green, N. Ikonnikov, V. Khrustalev, V. Larichev, M.

Moskalenko, M. North, C. Orizu, V. Tararov, M. Tasinazzo, G. Timofeeva, L. Yashkina, J. Am.Chem. Soc., 121, 3968 (1999); b) Y. Belokon’, B. Green, N. Ikonnikov, V. Larichev, B. Lokshin,M. Moskalenko, M. North, C. Orizu, A. Peregudov, G. Timofeeva, Eur. J. Org. Chem., 2000,2655.

31) a) B. Saito, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 42, 3873 (2001); b) B. Saito, T. Katsuki, TetrahedronLett., 42, 8333 (2001); c) T. Tanaka, B. Saito, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 43, 3259 (2002).

32) G. R. Krow, Org. React., 43, 251 (1993).33) C. Bolm, O. Beckmann, in “Comprehensive Asymmetric Catalysis,” eds. by E. N. Jacobsen, A.

Pfaltz, H. Yamamoto, Springer, Berlin (1999), Vol. II, 803.34) C. Bolm, G. Schlingloff, Chem. Commun., 1995, 1247.

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2004.10 number 124

執筆者紹介 香月 勗 (かつき つとむ) 九州大学大学院 理学研究院 教授

[ご経歴] 1971年 九州大学大学院理学研究科修士課程修了,1971年 九州大学理学部化学科助手,1979年9月~1981年8月 スタンホード大学およびマサチューセッツ工科大学博士研究員(K.B. Sharpless教授),1989年 九州大学理学部教授,2000年より現職。1996年井上学術賞,1998年有機合成化学協会賞。2001年モレキュラーキラリティー賞,日本化学会賞受賞。[ご専門] 触媒的不斉合成反応の研究,天然有機化合物の合成研究。

35) T. Uchida, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 42, 6911 (2001).36) Seebachらによって,筆者らと同時期に Criegee中間体の配座制御に基づく Baeyer-

Villiger反応の立体制御が試みられている: M. Aoki, D. Seebach, Helv. Chim. Acta, 84, 187(2001).

37) A. Watanabe, T. Uchida, K. Ito, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 43, 4481 (2002).38) A. Watanabe, T. Uchida, R. Irie, T. Katsuki, P. Natl. Acad. Sci. USA, 101, 5737 (2004).39) K. Masutani, T. Uchida, R. Irie, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 41, 5119 (2000).40) R. Irie, K. Masutani, T. Katsuki, Synlett, 2000, 1433.41) A. Miyata, M. Murakami, R. Irie, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 42, 7067 (2001).42) A. Miyata, M. Furukawa, R. Irie, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 43, 3481 (2002).43) a) H. Shimizu, K. Nakata, T. Katsuki, Chem. Lett., 2002, 1080; b) H. Shimizu, T. Katsuki,

Chem. Lett., 32, 480 (2003).44) a) E. N. Jacobsen, Acc. Chem. Res., 33, 421 (2000); b) E. N. Jacobsen, M. H. Wu, in

“Comprehensive Asymmetric Catalysis,” eds. by E. N. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto,Springer, Berlin (1999), Vol. III, 1309.

TCI関連製品

AcOO

N N

OMn

PhPh

Ph PhO

RuN

tBu

tBu

N

O tBu

tBu

Me MeMeMe

Cl

NO

(1S,2S)-N,N'-Bis[(R)-2-hydroxy-2'-phenyl-1,1'-binaphthyl-3-ylmethylene]-1,2-diphenylethylenediaminato Mn(III)Acetate

100mg [B2409]

Chloronitrosyl[N,N'-bis(3,5-di-tert-butylsalicylidene)-1,1,2,2-tetra-methylethylenediaminato] Ru(IV)

100mg [C1944]

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2004.10 number 124

有用なラクトン合成法 /Useful Synthetic Method for Lactones

T1593 4-Trifluoromethylbenzoic Anhydride (1) 10g 10,500円M1439 2-Methyl-6-nitrobenzoic Anhydride (2)

5g 12,400円 1g 4,800円

 近年,椎名らは脱水縮合剤1あるいは2の存在下,ほぼ当量のカルボン酸とアルコール,アミンから,対応するエステル,アミドが収率良く得られることを報告しています 1,2)。 1はルイス酸性条件下で,2は塩基性条件下で効果的に機能します。そのため,1,2を選択することで幅広い基質に対応することができます。

     1および2を用いる手法は分子内環化反応にも応用されています。例えば,1はカビの代謝物セファロスポロリドDのラクトン環構築1b)に,2は海洋バクテリアから単離されたオクタラクチンBのラクトン環構築 2b)に利用されています。 1および2は取り扱いの容易な試薬で,また,これらを用いる脱水縮合反応は簡便かつ高収率で目的物が得られます。エステル化,アミド化,特にラクトン環,ラクタム環構築のための有用な脱水縮合剤として大変期待されています。

文  献 1) Condensation reaction by using 4-trifluoromethylbenzoic anhydridea) I. Shiina, S. Miyoshi, M. Miyashita, T. Mukaiyama, Chem. Lett., 1994, 515.b) I. Shiina, M. Miyashita, M. Nagai, T. Mukaiyama, Heterocycles, 40, 141 (1995).c) I. Shiina, H. Fujisawa, T. Ishii, Y. Fukuda, Heterocycles, 52, 1105 (2000).d) I. Shiina, Tetrahedron, 60, 1587 (2004).

2) Condensation reaction by using 2-methyl-6-nitrobenzoic anhydridea) I. Shiina, R. Ibuka, M. Kubota, Chem. Lett., 2002, 286.b) I. Shiina, H. Oshiumi, M. Hashizume, Y. Yamai, R. Ibuka, Tetrahedron Lett., 45, 543 (2004).c) I. Shiina, Tetrahedron, 60, 4729 (2004).d) I. Shiina, M. Kubota, H. Oshiumi, M. Hashizume, J. Org. Chem., 69, 1822 (2004).e) 東京化成工業株式会社, 特開 2003-335731.f) J. Tian, N. Yamagiwa, S. Matsunaga, M. Shibasaki, Org. Lett., 5, 3021 (2003).

OH OBn

OH

O

Hf(OTf)4 (20 mol%)

O

O O

F3C CF3

O

O

HO

Cephalosporolide D

H2, Pd/C

98%

O

O

BnO1 (1.1 eq.)

for Acidic Condition

MeCN, reflux (Y. 67%)

TBDPSO OH

OH OBn OO

O

BnO

HOTBDPS

2 (1.3 eq.)

DMAP (6.0 eq.), toluene,r.t., 13 h (Y. 84%)

O

O

HO

H

O OH

Octalactin B

O

O O NO2NO2

Me Mefor Basic Condition

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TNBS & クロラニルテストキット / TNBS & Chloranil Test Kit

 固相合成において,反応後の樹脂上の遊離アミノ基を検出する簡便な方法としてTNBS,クロラニルテストが行われます。TNBSテストでは第1級アミノ基の存在を、クロラニルテストでは第1級および第2級アミノ基の存在を確認することができます。本法は毒劇法の毒物に該当する青酸カリが必要なKaiserテストと比べ,安全かつ簡便な遊離アミノ基の検出法です。

T2024 TNBS Test Kit [for Detection of Primary Amines] 1kit 9,100円Picrylsulfonic Acid (ca. 1% in DMF) 10ml × 1N,N-Diisopropylethylamine (ca. 10% in DMF) 10ml × 1

C1771 Chloranil Test Kit [for Detection of Primary and Secondary Amines] 1kit 9,100円Chloranil (ca. 2% in DMF) 10ml × 1Acetaldehyde (ca. 2% in DMF) 10ml × 1

P1447 Picrylsulfonic Acid (ca. 1% in DMF) 10ml 6,150円D2937 N,N-Diisopropylethylamine (ca. 10% in DMF) 10ml 6,150円C1770 Chloranil (ca. 2% in DMF) 10ml 6,150円A1640 Acetaldehyde (ca. 2% in DMF) 10ml 6,150円

光学活性単座ホスフィン配位子 /Monodentate Optically Active Phosphine Ligand

D2774 (R)-(+)-2-Diphenylphosphino-2'-methoxy-1,1'-binaphthyl (1a)                    1g 67,600円 100mg 11,800円D2775 (S)-(–)-2-Diphenylphosphino-2'-methoxy-1,1'-binaphthyl (1b)                    1g 67,600円 100mg 11,800円

 1は林らにより開発された光学活性単座ホスフィン配位子で,遷移金属と光学活性金属錯体触媒を形成します1)。ことにパラジウム錯体はオレフィンの高位置選択的,高エナンチオ選択的ヒドロシリル化に利用されています。得られたヒドロシリル化体2は玉尾酸化により,容易に第2級アルコール3に変換することができます2)。1を用いるこの反応は,プロキラルオレフィンから光学活性第2級アルコールを得るための有用な手法として盛んに利用されています。例えば,ノルボルネンから生理活性化合物の重要な合成原料である光学活性エキソ-ノルボルナノールを高収率で得ることができます 3)。

文  献 1) ReviewT. Hayashi, Acc. Chem. Res., 33, 354 (2000).

2) Asymmetric hydrosilylation of 1-alkenes with Pd-MOP catalystsY. Uozumi, T. Hayashi, J. Am. Chem. Soc., 113, 9887 (1991).

3) Asymmetric functionalization of bicyclic olefins catalyzed by Pd-MOPY. Uozumi, S.-Y. Lee, T. Hayashi, Tetrahedron Lett., 33, 7185 (1992).

R HSiCl3

H2O2

Entry Yield of 2(%)a %ee of 3

aIsolated yield of 2bIsolated yield(overall from 1-alkene) of 3

Yield of 3 (%)b

1a , [PdCl(π-C3H5)]2

2 3

OMePPh2

R

SiCl3

R

OH n-C4H9n-C6H13n-C10H21

R

123

919790

707075

949595

本品は高砂香料工業株式会社から特許実施許諾を受け,製品化しました。

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TLC用呈色試薬溶液 / TLC Stains

 GC,HPLCは分離分析の手法として多用されており,新たな検出手法や高分離能カラムが開発され,高感度,高選択分離分析が実現されています。そして,その分析対象物質も生体微量成分,環境汚染物質と広範にわたっており,今日の微量分析技術発展の一翼をになっています。 一方,TLC(薄層クロマトグラフィー)は反応の進行状況の確認,HPLCの分離条件検討などに用いられており,また,日本薬局方では,オウゴン,オウバク,ダイオウなどの多くの生薬に対してTLCでの確認試験を定めています。このようにTLCは現在でも極めて重要な簡易分離分析の手法として多方面で幅広く利用されています。 TLC分析で得られる情報として,Rf値が挙げられます。この値は,展開条件が同一であれば物質に固有の値で,物質の同定に利用されます。また,呈色試薬を選ぶことにより,選択的な検出が可能です。例えば,展開後,複数のスポットの中からアミノ基を有する化合物を検出したい場合,TLCプレートをニンヒドリン溶液で処理することによりアミノ基を有する化合物のみを呈色させることができます。TLC用の呈色試薬は数多くの種類が報告され,利用されています。TLC

分析でよい結果を得るためには,この呈色試薬を上手に選ぶことが大切です。 以下に代表的なTLCの呈色試薬溶液と対象とする官能基を示します。いずれの呈色試薬溶液も展開後ただちにご使用いただけるよう調製しております。ぜひ,ご利用ください。

調製済みTLC用呈色試薬溶液一覧

一般的な使用法は以下のとおりです。1 . 展開後の TLC板を乾燥させる。2 . 広口瓶に試薬溶液を移し,TLC板を浸してすみやかに取り出す。3 . TLC板についた余分な溶液を拭き取り,平らなところに置く。4 . 必要に応じてホットプレート,ヒートガン,ヘアドライヤー等で数分間加熱することにより化合物のスポットが現れる。

TLCの検出用試薬としてニンヒドリンスプレー溶液をはじめとする各種スプレー溶液も用意しております。総合カタログをご覧ください。

製品コード製品コード製品コード製品コード製品コード

A1674

P1484

P1483

N0719

D2968

B2401

C1794

V0080

製品名製品名製品名製品名製品名

p-Anisaldehyde, Ethanol Solution (contains Acetic Acid, H2SO4)

Phosphomolybdic Acid, Ethanol Solution (PMA)

Potassium Permanganate Solution (contains K2CO3, NaOH)

Ninhydrin, Ethanol Solution (contains Acetic Acid)

2,4-Dinitrophenylhydrazine, Ethanol Solution (contains H2SO4)

Bromocresol Green (BCG), Ethanol Solution (contains NaOH)

Ceric Ammonium Molybdate Solution (CAM) (contains H2SO4)

Vanillin, Ethanol Solution (contains H2SO4)

処理処理処理処理処理

加熱

加熱

加熱

加熱

加熱

加熱

対象化合物対象化合物対象化合物対象化合物対象化合物

万能呈色試薬。ほとんどの官能基に有効。特に求核性のあるもの。フェノール,糖類。

万能呈色試薬。ほとんどの官能基に有効。

万能呈色試薬。酸化される官能基に有効。多重結合,アルコール,アミン,スルフィド,メルカプタン。

アミン類,アミノ酸を呈色。Boc保護されたアミノ基もTLC 上で脱保護され呈色する。

アルデヒド,ケトンのみを呈色。

pH5以下の官能基を含む化合物を黄色に呈色。カルボン酸,スルホン酸など。

ほとんどの官能基に有効。

アルコール,フェノール。

入目 入目 入目 入目 入目  価価価価価格格格格格(((((円円円円円)))))

500ml 9,300.

500ml 10,300.

500ml 9,300.

500ml 9,300.

500ml 9,300.

500ml 9,300.

500ml 15,400.

500ml 9,300.

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