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37 STREET ORTRAIT ストリート・ポートレート Alao Yokogi HARUKI Keita Yasukawa その地での偶然の出会いや、行動をともにし共有する時 間。ストリート・ポートレートには、その場所、その瞬間に しか存在しない人との記憶が写っているのです。本特集 では、ストリートを背景に、被写体の魅力を引き出す撮 影方法やコミュニケーションのポイントを紹介します。

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STREET ORTRAITストリート・ポートレート

Alao Yokogi

HARUKI

Keita Yasukawa

その地での偶然の出会いや、行動をともにし共有する時間。ストリート・ポートレートには、その場所、その瞬間にしか存在しない人との記憶が写っているのです。本特集では、ストリートを背景に、被写体の魅力を引き出す撮影方法やコミュニケーションのポイントを紹介します。

Page 2: STREET H ARUKI ORTRAITEOS 5 D Mark II ~ EF 50 mm F 1.4 USM ~ F 4~ 1 /60 µ~ ISO 100 ÄåÏ w Næ¨pz íT Sù`h«Ué t èU y `h{ 0t\\pÙ Äè Ä q hMqßQz 10 ü r s`slo qÚ¿½b >w

3839

イタリアの街角にて。独特なヘアスタイルが印象的で、見掛けた瞬間に撮影したいと思いました。背景が重くならないようにわずかにぼかしながら、女性の存在感を浮き立たせています。

このときは、少年と会話しながら撮影しました。ファインダーはのぞかず、カメラを少年の目線の高さに構えているので、私の方を見ている少年のまなざしをとらえることができました。

南アフリカで出会った少女たち。光が美しい光景を、周囲を広く取り入れ空気感ごと写し込んでいます。いきなり離れての撮影は警戒されるので、まず声を掛けた位置でも撮影しています。

EOS 5D Mark III・EF50mm F1.2L USMF2・1/2000秒・ISO100

EOS 5D Mark III・EF50mm F1.2L USMF3.2・1/5000秒・ISO200

EOS 5D Mark III・EF50mm F1.2L USM・F2.8・1/1250秒・ISO100

ストリート・ポートレートには

二つの楽しみ方があります。一つ

は、人に声を掛けてすぐ、あまり

コミュニケーションを介さずに撮

影するもの。もう一つは、コミュ

ニケーションを十分に取り、気を

許した姿を撮影するもの。今回掲

載した作品はすべて前者、言うな

れば出会い頭のポートレートです。

出会い頭のポートレートでは、

どんな一瞬も逃さないよう、偶然

の出会いがもたらしたわずかな時

間を共有し、そこで見せるさまざ

まな表情を常に狙っています。素

早く撮影する上で、ピントと光に

は気を配りますが、構図をしっか

り考える時間はありません。その

ため、横位置で日の丸構図が多く

なりますが、横位置にすることで

周囲の状況を取り込み、その場の

空気感をも写し出せるのです。

その地での出会いを、場所ごと

切り撮る。そして、写真を見た人

に、その人と出会ったような印象

を抱かせたい。それが、私の考え

るストリート・ポートレートです。

じっくり構図を決めるより

出会った感動を大事に

私は基本的に50mmの単焦点レンズで撮影しています。必然的に被写体の写る範囲に合せて自分が動くことになりますが、人と向き合う上でその行為が大事だと考えています。さらに距離を縮めるには、ファインダーをのぞかないことも一つの手です。ライブビュー撮影などで、自分と相手の間にカメラを構え、会話しながらシャッターを切る。そうすることで、より近くでより自然な表情をとらえることができます。

逆光や半逆光で撮影し自然な表情を切り撮る

単焦点レンズで被写体との距離感を大事にする

ストリート・ポートレートを撮るとき、主に逆光や半逆光で撮影しています。それは、後ろからの光で髪の毛のシズル感を表現でき、また、逆光の方が顔を照らす光が優しくなるからです。順光で撮影した場合、顔や首に影が落ちてしまい、撮影しながら影が出ないようなポーズを指示しなければなりません。そうすると変にカメラを意識してしまい、自然体の姿を撮れなくなってしまうのです。

横木安良夫出会い頭のポートレート

その場所の空気感ごと切り撮る

1949年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。1975年、フリーの写真家に。2009年からテレビ朝日『世界の街道をゆく』のスチールとムービーを担当。現在、電子書籍で写真を発表する、『CRP』(CROSS ROAD PROJECT)を進めている。

Alao Yokogi

2016年1月号

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ストリート・ポートレートの魅

力は、撮られ慣れていない人を相

手に撮影できるところです。プロ

のモデルの撮影とは違い、街で出

会う人たちにはどこかぎこちなさ

がありますが、それがよい味を醸

し出してくれます。

しかし、慣れていない分どうし

ても緊張で顔がこわばってしまう

ので、ほぐす必要がありました。

そこで、顔のストレッチとして始

めたのが〝ウィンク〞です。たまた

ま写したウィンクの写真はとても

魅力的で、普通の表情と対比させ

ることでユニークな作品になると

感じました。

今では、必ずウィンクをお願い

するようにしています。ウィンク

は、緊張をほぐす効果に加え、「写

真を撮られている」という意識を

「ウィンクする」という意識へシフ

トすることができます。カメラを

意識せず、飾らない表情を引き出

すことができるウィンクにより、

その人の魅力がより一層伝わるポ

ートレートになるのです。

撮られていることから

ウィンクに意識をシフト

友人と街を歩いているときに撮影したウィンク写真です。右の写真は目の座った表情ですが、ウィンク写真と組み合わせることによって、彼のユニークな性格までが写し出されています。

EOS 5D Mark II・EF85mm F1.2L USM・F1.4(F1.4)・1/200秒(1/250秒)・ISO2000(ISO2000)※()内は右写真の撮影データ

右の写真では、距離感や表情から家族の関係性を想像することができます。左の写真では、顔を近づけ合う家族の幸せな雰囲気を写すことができました。表情の偶然性もウィンク写真の面白さです。

EOS 5D Mark III・EF24-70mm F2.8L II USMF3.5(F5.6)・1/1600秒(1/250秒)ISO200(ISO2000)※()内は右写真の撮影データ

ニューヨークで撮影。P.37左下の写真の対になる一枚ですが、この場の雰囲気を出すためにニューヨークの街並みを入れました。少しカメラを斜めにし、動きも出しています。

EOS 5D Mark II・EF85mm F1.2L USMF2.2・1/8000秒・ISO400

安川啓太

ウィンク写真を撮るとき、必ず自然な表情も撮影し、2枚で組み合わせています。ウィンクをお願いするのは、決してユニークな表情を撮りたいからではなく、その人のよさを引き出したいからです。そして、2枚の写真を対比させることで、相乗的に互いの写真を引き立て合い、自然な表情だけでは引き出しきれない、その人らしさを表現することができるのです。

自然な表情とウィンクで相乗的に魅力を引き出す

ストリート・ポートレート撮影において、時間に余裕がある場合は、顔のアップの写真だけでなく、引きの写真も撮らせてもらうようにしています。その際、周囲の環境を写し込むことで、被写体の日常まで表現することができます。アップと引きの2枚を対比させることで、視覚的にも大きな変化が生まれ、より見る人を楽しませる作品になるでしょう。

周囲の環境も写し込みその人の日常を感じさせる

魅力を引き出すウィンク写真緊張した表情をほぐし

1977年、東京都生まれ。1999年から2年間のユーラシア大陸横断の中で、写真に魅せられる。現在、国内外のメディアや雑誌、広告の撮影、作家活動を行う。2014年、キヤノンギャラリーで初となる個展、『Cranespotting』を開催。

Keita Yasukawa

2016年1月号

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4243

僕はまだ見ぬ人との出会いを求

めて旅に出ます。これまで50カ国

以上を巡り、さまざまな人々を写

してきました。今回の作品は、その

旅先で撮影したポートレートです。

旅先でポートレートを撮るとき

第一に考えていること、それはそ

の人らしさを一枚で表現すること。

出会った人と正面から向き合い、

その人がこれまで歩んできた人生

を想像しながらシャッターを切る

のです。もちろん横顔を撮る場合

もありますが、やはり正面を向い

たときの方が、その人らしさがよ

り表現できると考えています。

また、無理に笑ってもらうなど、

撮る際にあれこれ指示はしないよ

うにしています。撮影のためだけ

の表情ではなく、本来の素の表情

を見せた瞬間こそが、その人らし

さを表すのに最も適したシャッタ

ーチャンスなのです。

もう二度と出会えない人々の姿

を写真に収め、同時に自分の記憶

に刻んでいくこと。それが、僕の

旅の楽しみです。

撮影のための表情ではなく

その人本来の姿を引き出す

ハバナへ旅に出たとき、ホテルのエレベーターのペンキを塗り直していた職人の方を撮らせてもらいました。手に持った仕事道具と服に飛び散ったペンキが、彼の仕事ぶりを伝えてくれます。

EOS 5Ds R・EF24-70mm F4L IS USMF4・1/40秒・ISO800

ストリート・ポートレートは、背景選びがとても重要です。今回の作品のようにシンプルなものを選べばその人らしさを際立たせることができ、街並みを写せばその人が暮らす場所の様子も伝えることができます。さらに、僕の場合、背景を先に決めることもあります。背景に引き付けられ、人が来るのをひたすら待つのです。旅先でポートレートを撮るときは、人物はもちろんですが、画になる背景も注意深く探してみましょう。

背景を変えることで伝えられるものも変わる

その人らしさ、人となりを表現する上で大きな手助けになるのが、被写体の服装です。僕は、よく職人の方に声を掛けて撮らせてもらいますが、仕事着を着ているだけで、どのような職業に就いているのか想像することができます。仮に職業が分からなくても、写真を見る人が、服装からさまざまな想像を膨らませ、その人の生活に思いを巡らすことができるのではないかと考えています。

見る人の想像力を膨らませる特徴的な服装に着目

旅先でのポートレート一期一会を写真に収める HARUKI

フィンランドにて、緑がかった瞳と赤髪に目を奪われて声を掛けました。片言の英語で話し掛けましたが、勉強していたらしく丁寧な日本語で返事が。こうした予期せぬ出会いも旅の醍醐味です。

EOS 5D Mark II・EF50mm F1.4 USM・F4・1/60秒・ISO100

ラトビアの首都リガで、窓から反射した光が映る壁に目が留まりました。絶対にここでポートレートを撮りたいと考え、10分ほど探し回って背景とマッチする雰囲気の男性と出会うことができました。

EOS 5D Mark II・EF50mm F1.4 USM・F8・1/125秒・ISO100

1959年、広島県生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。第35回朝日広告賞・表現技術賞など受賞多数。2014年、写真集『The Human Portraits』を発売。個展『遠い記憶。-memories-』、『Automóvil A m e r i c a n o s ~ C u b a CubaCuba』など多数開催。ニューヨーク近代美術館、神戸ファッション美術館に作品収蔵。

HARUKI

2016年1月号

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写真:ハービー・山口

原宿に行ってみたいという姪の女の子を連れて、原宿観光を楽しんでいた叔母夫婦。“初原宿”の少女を一歩前に出させ主人公にすることで彼女の存在感を強め、画面を少し斜めにして動きを演出しました。

街中で声を掛けて撮らせてもらう「

スナップ・ポートレート」。

道行く人それぞれに個々の思いや

物語があり、それが写真からにじみ

出る一枚――

3人の写真家が街に出て、ポート

レートを撮り下ろした。

ポートレート被 写 体 の 内 面 に 迫る !特

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2829

ハービー・山口/1950年、東京都生まれ。大学卒業後ロンドンに渡り10年を過ごし写真家の礎を築く。テーマは一貫して「生きる希望」とし、アーティストから市井の人々までスナップ・ポートレートという手法で撮影。エッセイ執筆、ラジオのパーソナリティなどもこなす。主な写真集に『代官山17番地』、『HOPE』、『1970年、二十歳の憧憬』、著書に『雲の上はいつも青空』ほか多数。最新著書に『良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば』。 ハービー・山口

Snap Portrait, Feature 1

被写体と対峙する数分間に凝縮した時間と関係性

ただ、撮り手としては、そこで

満足してはいけません。笑顔を見

せてくれたということは、心を開

いてくれた証拠。ならば、そこか

らもう一歩踏み込むことで、その

人のいろいろな表情を引き出すこ

とができるのです。将来の夢に向

かって進む真剣なまなざし。恋す

る女性の魅力的な表情。そして、

カメラを意識しない自然な姿。

街で出会ってから、写真を撮っ

ている時間はわずか数分間だけの

出来事です。けれど、会話を重ね

ることで心の壁を壊し、密な関係

性を築ければ、撮る側も撮られる

側も幸せな気分になれるポートレ

ートを撮ることができるのです。

今回掲載した作品は、原宿の裏

通りを歩きそこで出会った人たち

を撮影したものです。たまたま見

かけた魅力的な人に声を掛けてカ

メラを向ける。こうしたスナップ・

ポートレートで大事なのは、いか

にコミュニケーションを取り、相

手の懐に入っていけるかです。

どんな人でも最初は警戒心を抱

きます。シャッターを切りながら

会話を重ね、徐々にその心をほぐ

していく。すると相手も撮られる

ことが楽しくなり、自然な笑顔を

見せてくれるようになるのです。

会話を重ねながら

一歩踏み込んだ一枚を

オランダから観光に来ていた若者たち。ファインアートを学ぶ左の男性とファッションデザインを学ぶ中央の女性は兄妹とのこと。右の彼はゲームクリエイターで、みんなそれぞれアーティストの雰囲気を纏っていました。EOS M5・EF-M22mm F2 STM・F4・1/80秒・ISO100

宮崎から遠距離恋愛中の彼氏に会うために原宿に来ていた女の子。最初は緊張していた様子でしたが、徐々に自然な表情を見せてくれました。背景に街を歩く人をあえて入れ、原宿の裏通りの雰囲気を演出しています。EOS M5・EF-M22mm F2 STM・F4・1/125秒・ISO100

Herbie Yamaguchi

ファッションの専門学校に通う青年。撮りながら彼の夢を聞き、将来に思いを馳せる表情を切り撮りました。背景に抜けをつくることで奥行きのある画面構成にしています。

EOS M5・EF-M22mm F2 STMF4・1/320秒・ISO100

自然な姿をとらえるために重要なのは会話をすること。特に、相手の興味のある話題を振ると、より豊かな表情を見せてくれます。自分が好きなことを話すとき、人は生き生きとした表情を見せてくれます。何に興味を持っているのか、どんなことが好きなのかを聞き出す工夫をしましょう。

相手の興味に合わせて会話をリードする

EyesPhotographer'S1

構図を決めるとき、モデルの正面に立たず、左右のどちらかに少しずれて画面に「抜け」をつくることがよくあります。そうすると画面に奥行きが出るだけでなく、写真の風通しがよくなると思っています。さらに、奥行きが生まれることで、その街の雰囲気や空気感も表現できるようになります。

背景に「抜け」をつくり見る人の目線を逃がす

EyesPhotographer'S2

2017年10月号

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キッチンミノル/1979年、アメリカ・テキサス州生まれ。18歳のときに噺家を目指すも挫折。大学ではカメラ部に入部。2005年、写真家の杵島隆氏に写真を褒められ、脱サラして写真家になる。雑誌や広告で人物や料理を中心に活動中。2016年、雑誌『AERA』の人気連載「はたらく夫婦カンケイ」で撮影した100組の夫婦をまとめた写真集『メオトパンドラ』を発表。キヤノンギャラリーで同名の写真展を行う。 キッチンミノル

Snap Portrait, Feature 2

未来への記録となる貴重なポートレート

Kitchen Minoru

古くから銀座に店を構える中村活字店の店主。後ろには活版印刷で使われる活字がしまわれた棚が並び、ヨーロッパで活版印刷術を発明したヨハネス・グーテンベルクの肖像画や店の看板など、歴史を感じさせる店内の雰囲気に惹かれました。

EOS 5D Mark IVEF50mm F1.2L USM

F2.8・1/125秒・ISO800

ポートレートを撮る上で常に心掛けているのは、堂々と撮ること。つい「撮らせてもらう」という感情を抱きがちですが、必要以上にへりくだることはありません。また、撮り手が不安がると、撮られる側もよい表情は見せてくれないでしょう。余裕を持って相手と接し、自信を持ってシャッターを切ることが大切です。

余裕を持って相手と接し堂々とシャッターを切る

EyesPhotographer'S1

人物の表情も大事ですが、それ以上に背景に気を配ることがあります。会話を交わし、被写体の人柄がにじみ出る背景を探すのです。四隅を意識しながらフレーミングを決め、背景を完成させてから、その場に立ってもらう。背景にその人を表す物語を写し込むことで、時に背景が表情以上にその人を語ってくれるのです。

物語のある背景が被写体の人柄を表す

EyesPhotographer'S2

名刺を頼んでいる活字店と前か

ら気になっていた釣り堀。そこで

出会った人たちを写したポートレ

ートは、どれも日常の中でタイミ

ングが合い、撮影できたものです。

特に釣り堀はたまたま店を閉める

日に訪れ、それならば写真に残し

ておきたいと思って撮影しました。

写真のよいところは、カメラを

持ってさえすれば、そのときの記

憶を永遠に記録しておけること。

釣り堀の最後の日に訪れた偶然

も、カメラがあったからこそ残す

ことができたのです。そして私は、

ポートレートにおいても、その記

録性が重要だと考えています。今

は何気ない記念写真でも、50年後

には貴重な記録となる。そうして

未来に繋がることを意識するだけ

で写真の質も変わってきます。

例えば、私は人物の背景にでき

るだけ情報を入れたいと考えてい

るのですが、それも写真の記録性

を意識しているからです。撮影す

る前に話を聞き、その人柄を補完

する背景を選ぶ。活字店のこだわ

りある仕事道具や釣り堀の看板や

張り紙など。そうした背景に宿る

物語が人柄を表し、さらに数十年

という時を経て、今という時代を

伝える大切な要素にもなるので

す。

背景に見える物語が

被写体を立体的に描く

常連の男の子の寂しそうな様子を見て、彼の姿も写し止めておきたいと思いました。赤いのぼりをポイントに、少し引いた距離感であえて硬い表情を撮影。初めて出会った「他人」の雰囲気を残すことで、彼の人柄が想像できる余地をつくっています。

EOS 5D Mark IV・EF24-70mm F2.8L II USMF2.8・1/400秒・ISO200

50年以上続いた釣り堀の最終日でも明るい表情を見せてくれた店主。手作りの竿入れや手書きの張り紙などを入れ、コミカルな雰囲気を表現しました。今はもう撮ることができない釣り堀の日常が、この一枚に凝縮されています。

EOS 5D Mark IV・EF24-70mm F2.8L II USMF2.8・1/125秒・ISO800

2017年10月号

Page 8: STREET H ARUKI ORTRAITEOS 5 D Mark II ~ EF 50 mm F 1.4 USM ~ F 4~ 1 /60 µ~ ISO 100 ÄåÏ w Næ¨pz íT Sù`h«Ué t èU y `h{ 0t\\pÙ Äè Ä q hMqßQz 10 ü r s`slo qÚ¿½b >w

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小野 啓/1977年、京都府生まれ。立命館大学、ビジュアルアーツ専門学校・大阪写真学科卒業。2002年より日本全国の高校生のポートレートを撮り続け、2013年に10年の集大成となる『NEW TEXT』を発表。第26回「写真の会」賞を受賞する。『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)、『アンダスタンド・メイビー』(島本理生)など装丁写真も手掛けている。2017年10月、地下アイドルを追ったドキュメント写真集を発表予定。 小野 啓

Snap Portrait, Feature 3

若者が集う今の下北沢に見る「現代の街の貌」

Kei Ono

下北沢らしいアートを見つけ、その前に秩父から来たという高校生に立ってもらいました。背景を壁にすることで画面が凝縮され、印象の強い一枚に仕上がります。

EOS-1D X Mark IIEF35mm F1.4L II USMF4・1/800秒・ISO1000

たリアルがあり、この街に住んで

いる人がそういった場所に立つこ

とが、より自然だと思ったのです。

また、私は、ポートレートで笑

顔を撮りたいとは考えていませ

ん。笑顔ではなく、あまり表情の

ない方がモデルを多面的に写し、

見る人も想像力を膨らませること

ができるように思うのです。

街を歩き、見知らぬ人に声を掛

けて写真を撮る。それは、カメラ

があるからできる行為であり、写

真が持つ大きな楽しみの一つです。

普段は交わらないような人と会話

をし、出会ったばかりの人のいろ

いろな表情を見る。それがポート

レートの醍醐味だと思います。

東京・下北沢で撮影した3枚の

ポートレート。今回はあらかじめ

誌面の構成を考え、3枚の組写真

をつくるつもりで撮影しました。

この街らしい背景と、その雰囲気

に合ったモデル探し。それぞれ声

を掛けて撮らせてもらいました

が、撮影自体とても楽しめました。

ポートレートを撮るとき、私が

大事にしているのはリアリティで

す。例えば、P.

33下の写真のよう

に、工事現場を背景に選ぶことは

通常なら避けるかもしれません。

けれど、私はそこに日常に直結し

街と被写体の表情を写し

リアリティのある一枚を

街でポートレートを撮るときは、背景に街の雰囲気を見せるようにしています。そのため、絞りは開放ではなく、少し絞ることを心掛けています。街の様子を写すと、被写体の魅力にもう一つ街の魅力が加わります。さらに、現代の街並みという時代性を写すことにも繋がり、より意味のある写真になるでしょう。

ポートレートを撮るときに気を付けているのは、相手の自然な姿を写すことです。そのために大事なのは、相手と対等の立場を保つこと。撮るときに、いろいろな指示を出すこともありますが、決して上から目線にならず、指示によって変化する表情の中から、その人のより自然な姿を探し出すことが大切です。

背景を見せるために少し絞って撮影する

つくりこまず被写体の自然体を写す

EyesPhotographer'S

EyesPhotographer'S

2

1

これから下北沢で行われるお笑いライブに向かう芸人さんに声を掛けて撮影しました。レンズの奥も見てもらって強い目線を引き出しながら、大きく背景を入れることで街の雰囲気を出しています。

EOS-1D X Mark II・EF35mm F1.4L II USM・F4・1/250秒・ISO400

下北沢に住みながらバンド活動をしている女性。駅近くの工事現場のフェンス前に立ってもらい、この街の日常を狙った一枚。撮影中にどんどん表情が変わり、その中から惹かれた瞬間を選びました。

EOS-1D X Mark II・EF35mm F1.4L II USM・F4・1/2500秒・ISO400

2017年10月号

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人の姿だけではなく、内面まで写し撮るポートレート。本特集では、少女に対するフェティシズムを撮る写真家、青山裕企氏と、男性ポートレートの名手、写真家、荒木勇人氏の作品を通じて、それぞれが被写体をとらえる際の視点を探ります。

写真:荒木勇人

写真:青山裕企人を撮る!ポートレートを撮る視点

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33 32

会話中に見せてくれた屈託のない笑顔。女性のコンプレックスが最も出やすいのが笑顔なので、撮った写真を見せて素敵なことを伝えています。

プールサイドに座り、足を水に浸けて動かしていたときに写した一枚。これまでにたくさん撮ってきた「自分らしさ」を残しつつ、このとき出合った瞬間を切り撮りました。

Model:P.31、P.34、P.35、孟竹君・P.32、P.33、P.35、金森優花

EOS R・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・F2.8・1/2000秒・ISO200

EOS R・RF50mm F1.2 L USMF3.5・1/3200秒・ISO200 モデルが感じている

コンプレックスを魅力に変える

青山裕企

「コンプレックス」

代表作の「スクールガール・コ

ンプレックス」を撮影していたと

き、私は自分のコンプレックスを

モデルに投影していました。思春

期のころ、うまく女性と話せなか

った自分。それが写真を撮るモチ

ベーションになっていたのです。

しかし、写真を撮り続けるうちに、

そのコンプレックスは徐々に薄ら

いでいきました。そして、もっと素

直にモデルと向き合えるようにな

ると、今度は相手のコンプレックス

が見えてくるようになったのです。

これは自分の思い込みなのかも

しれませんが、多くの女性は、写

真を撮られるときに見せたくない

部分を持っているように感じま

す。前髪を下ろしている子なら、

おでこや眉にコンプレックスがあ

ったり、シワが出て、目を細める

笑顔が嫌いだったり……。でも、

それは他人から見ると魅力的な部

分であることも多いのです。

だから私は、モデルが感じてい

るコンプレックスを魅力に変える

ことを常に心掛けています。もち

ろん、嫌なものを暴くような強引

な方法をとるわけではありませ

ん。撮影の中でふと見えるコンプ

レックスを魅力的に写し、モデル

にそれが自分の思い込みにすぎな

かったことを伝えたいのです。

自分の変化で気付いた

新しい視点

自然な表情を狙うためにポーズを先に決めるポートレートは自然な表情を引き出すことが大切です。そこで、まずは表情だけに集中できるように、背景やポーズなどはすべて指示して固めてしまいしょう。そして会話をしながら、自然な表情を狙うのです。

P O I N T 1

yuki AOYAMA

2019年9月号

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35 34

コンプレックスを魅力に変える

には、多くの人に素敵だと感じさ

せる必要があります。自分が嫌い

な表情でも、写真を見た人に褒め

てもらえば、それが魅力だと気付

くでしょう。ただ、一方で、自分

だけが好きなもの=偏愛ともいえ

るシーンも必ず散りばめるように

しています。今回の撮影でいえば、

ショートヘアや耳が見える写真。

それを入れることで、多くの人に

好かれ、かつ「自分らしさ」が表現

できると思っています。

ポートレートは、モデルの力が

重要な部分を占めています。写真

家はモデルが自由に動けるように

舞台を整えることしかできません。

この舞台を整えるとき、私はタグ

付けを意識するようにしていま

す。「#ショートヘア」や「#田舎

のプール」など、タグになりそう

な舞台を決めてしまえば、世界観

がブレることなく、モデルの動き

に集中できるからです。

舞台を整えたら、あとはモデル

の力に委ねるだけ。そこでどんな

表情を見せるのか。ときに予想を

超える表情と出会えることもある

でしょう。そして自分だけでは想

像できない、モデルと一緒だから

生み出される瞬間をとらえること

が、ポートレートの醍醐味です。

写真にタグ付けをして

ブレない世界観をつくる

撮影前からイメージしていたカット。制服のままプールに入るという、少しドキッとするシチュエーションで、2人の表情も細かく指示しながらつくり込んで描き出した一枚です。

EOS R・RF50mm F1.2 L USMF3.5・1/1600秒・ISO200

自分だけでは想像できない

モデルが生み出す瞬間をとらえる

カメラ目線を指示するとき、見る範囲を狭めて視線を強くするカメラ目線のポートレートを撮るとき、単にカメラを見てもらうのではなく、目線の強さにも気を配っています。「カメラを見て」というより、「レンズの中心を見て」と伝える方が自然と目線が強くなります。

P O I N T 2

彼女の素朴な印象を引き出すために少し耳を出してもらい、寄りで撮影しました。前面に出していませんが、耳は個人的に好きなポイントです。

EOS R・RF50mm F1.2 L USMF2.8・1/640秒・ISO200

台に寝てもらって撮影したシーン。前髪が崩れて嫌がるか不安でしたが、気にしていない様子だったので、このポーズで数カット撮影しました。

EOS R・RF35mm F1.8 MACRO IS STMF2.8・1/1250秒・ISO200

1978年名古屋出身。筑波大学卒業後、2005年より写真家として活動。Mr.Portraitという肩書で、作品「ソラリーマン」、「スクールガール・コンプレックス」、「少女礼讃」などを制作。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。吉高由里子・オリエンタルラジオなどの写真集の撮影を担当。yukiao.jp

yuki AOYAMA

2019年9月号

Page 12: STREET H ARUKI ORTRAITEOS 5 D Mark II ~ EF 50 mm F 1.4 USM ~ F 4~ 1 /60 µ~ ISO 100 ÄåÏ w Næ¨pz íT Sù`h«Ué t èU y `h{ 0t\\pÙ Äè Ä q hMqßQz 10 ü r s`slo qÚ¿½b >w

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荒木勇人

写真家になって10年を迎えるこ

ろ、これまで撮ってきた作品は本

当に自分自身の力で撮ってきたの

か自問自答しました。ポートレー

トは、モデルの力に助けられる部

分が多分にあります。スターがま

とっているオーラ、強烈な存在感、

相手を射抜く鋭い目。これまで、

幸運にも有名な方々を撮らせても

らってきた自分は、その人たちが

持つ力を単に写してきただけなの

かもしれない。ひょっとしたら自

分でなくても撮れたのではない

か。そう考え、浮かんだ言葉が「お

前、ホントに人が撮れるのか?」

だったのです。モデルの力に頼ら

ず、自分の力で勝負する。「SE

SSION」はそんな思いから挑

んだシリーズです。

モデルの力に頼らないため、

「SESSION」では、プロでは

なく、何の肩書きもない男性をモ

デルに起用しました。そして真っ

白の背景、一灯だけのライト、ヘ

アメイクもスタイリストもいない

という条件で撮影したのです。し

かも、モデルとは撮影するときま

で会わないという制限も加えまし

た。自分が本当に人を撮れるのな

ら、たとえどんな人が来ても、自

分の撮りたいものが撮れるはずだ

と、そう考えたのです。

モデルの力に頼らず

自分の力で勝負する

相手の目を見て思いを伝える相手の魅力を引き出すために会話を重ねることも重要ですが、最も大事なのは目を見て話すということ。自分がどういう写真を撮りたいのか、どんな表情を見せて欲しいのか、言葉だけでなく目で伝えるのです。

P O I N T 1

相手をリスペクトし、この子が持つ雰囲気をそのまま生かしたカット。柔らかめの光を近くで当て、存在感を引き立てながら、よりかっこよく見えるライティングで撮影しました。

EOS-1D X Mark IIEF70-200mm F2.8L IS II USMF2.8・1/200秒・ISO100

昔から首に惹かれるところがあり、最も男らしさが現れる場所が首だと思っています。この一枚も、後ろから光を当て、首のラインがきれいに見える瞬間を狙いました。

EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USMF2.8・1/320秒・ISO1600

自分の力を試すために挑んだ

無所属の男たちとの撮影バトル

「SESSION」h a y a t o A R A K I

2019年9月号

Page 13: STREET H ARUKI ORTRAITEOS 5 D Mark II ~ EF 50 mm F 1.4 USM ~ F 4~ 1 /60 µ~ ISO 100 ÄåÏ w Næ¨pz íT Sù`h«Ué t èU y `h{ 0t\\pÙ Äè Ä q hMqßQz 10 ü r s`slo qÚ¿½b >w

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何を撮りたいかを明確にしてセッティングにこだわるポートレートを撮るとき、何を表現したいかを最初に考えることが重要です。力強い印象か、おしゃれな雰囲気なのか。そして、その表現を完成させるためにライティングなどの工夫を考えるようにしています。

P O I N T 2

す。不安や照れが消え、スターの

ように表情が輝き出すのです。

「SESSION」で自分が撮り

たかったものは自信です。なぜ自

信を引き出したいのかというと、

それが自分に一番足りないものだ

から。モデルから自信を引き出す

ことで自分に自信が持てる。そん

な思いがどこかにあるのでしょ

う。ポ

ートレートは、相手を撮って

いるようで自分が写るものだと思

っています。だから自分が欲しい

自信のある姿を撮りたいし、自分

の本気がちゃんと伝わって欲し

い。モデルに男性を多く選ぶのも、

同性の方がより自分を投影させや

すいからです。クールな人、内向

的な人、自分に否定的な人、どん

な人とも正面からぶつかり、自分

が見たい姿を引き出せるまで諦め

ずに向き合い続ける。それが、人

を撮り、自分を写すということだ

と思っています。

スタジオで相手と対面し、どん

な〝SESSION〞をしたいのか

を伝える。そのとき、自分のすべ

てをさらけ出さなければ、相手は

本気になってくれません。目を合

わせ、まるで戦うように距離を詰

める。すると、やがて自分の本気

が相手に伝染し、表情が一変しま

自分に足りない自信を

モデルから引き出す

東京都出身。2009年より写真家として活動を開始。約400冊以上の雑誌のカバー写真を撮影。現在までに約1500人以上の人物を撮影している。特に男性ポートレートを得意とし、活動10周年作品として1対1の撮影バトルで無所属の男たちを撮り下ろした『SESSION』を写真集、写真展で発表。

hayato ARAKI

服を脱ぎ捨て、肩書きも何もない状態で生き抜く強さを表現する新作の「野獣ヌード」。このカットは目だけで生きる強さを表現しています。

EOS-1D X Mark II・EF24-105mm F4L IS II USM・F5.6・1/160秒・ISO100

下 新作の「野獣ヌード」からの一枚。モデルに好きな野獣になってもらい、生き抜く姿を表現。このときは、コンドルが獲物を狙うときの動きの中でとらえた一瞬です。

EOS-1D X Mark II・EF24-105mm F4L IS II USMF5.6・1/125秒・ISO100

上 一通り撮影を終え、最後に座らせたときに写した一枚。興奮した状態から座らせると、気持ちは静まるものの目の強さだけが残り、より鋭い視線を見せてくれることもあります。

EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USMF2.8・1/640秒・ISO1600

自分が見たい姿を引き出せるまで諦めずに向き合い続ける

2019年9月号

Page 14: STREET H ARUKI ORTRAITEOS 5 D Mark II ~ EF 50 mm F 1.4 USM ~ F 4~ 1 /60 µ~ ISO 100 ÄåÏ w Næ¨pz íT Sù`h«Ué t èU y `h{ 0t\\pÙ Äè Ä q hMqßQz 10 ü r s`slo qÚ¿½b >w

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望遠と広角、   縦位置と横位置を生かして都市のポートレートを撮りましょう◆ 土屋勝義ポートレートジャンル別

撮り方マスター講座

超広角ではフレーミングに

注意して撮ります

左右対称(シンメトリー)にする

空を取り入れてグラデーションの美しさを生かす

フレーミングスクランブル交差点の対角線方向にレンズを向け、ローポジション・ローアングルでフレーミング。夕暮れ時の空のグラデーションや、覆いかぶさるような左右のビルの形をポイントに構図を決めました。

シャッター速度超広角で撮るため、右ページの望遠ズームのときよりも遅いシャッター速度を選択。1秒というシャッター速度で歩行者を半透明に写るくらいに流しています。

立ち位置ビルや横断歩道がうまく画面に収まるように構図を整え、モデルにはその構図の中央に立ってもらいます。このような写真の場合、構図優先で考えるのがベストです。

撮影時間日中の太陽が高い時間だと平凡な印象になりやすいので、日没直前から日没後くらいの時間を狙って撮影しました。空のグラデーションやビル壁面の映り込み、看板の照明などがより印象深くしてくれます。

撮影のポイント構図のポイント

モデルにスクランブル交差点の角に立ってもらい、11mmの画角で左右と奥のビルを画面に収めて撮影しました。横断歩道が青のタイミングで、1秒というスローシャッターで撮影し、歩行者を大きく流してその動きを面白くとらえました。

EOS-1D X Mark II・EF11-24mm F4L USM・F11・1秒・ISO100

11㎜の超広角の画角をうまく使いこなし

都市風景に立つモデルを描き出す

 

人々が行き交う街で撮影する

のは難しい点も多いのですが、工

夫して撮ることで主役の人物を

印象的に写すことができます。

 

左の作品は、多くの人で賑わう

繁華街で撮影した一枚です。モデ

ルの女性には「スローシャッター

で撮るのでしっかり止まってい

てほしい」と伝え、1/5秒の低

速シャッターで撮影。周囲の歩

く人々が大きく流れ、モデルだけ

が静止して写ることで、雑踏の中

でもモデルの存在感をグッと引

き立てることができるのです。

 

この作品は、望遠ズームを望遠

寄り(190㎜)にして、縦位置の

構図でアーケード街の遠くの方

まで画面に入れて撮影していま

す。望遠による圧縮効果で、多く

の歩行者が背後にギュッと圧縮

され、「賑わう繁華街」のイメージ

をより効果的に強調できます。

 

またモデルの「立ち位置」です

が、歩行者のじゃまにならないこ

とに加えて、街の明かりがモデル

を最も美しく照らしている場所

を選んで写しています。

望遠レンズの圧縮効果で

歩行者の賑わいを強調

スローシャッターにより歩行者を流し

静止した主人公を引き立てる

賑わう夜のアーケード街。モデルに通りの中央に立ってもらい、スローシャッターで撮る間、動かないようにしてもらって撮影しました。雑踏の中、主役のモデルだけが浮き上がるように写すことができました。

EOS-1D X Mark II・EF70-200mm F2.8L IS II USM・F11・1/5秒・ISO1600

フレーミング通りの奥行き感を演出するため縦位置に構え、モデルをバランスのいいサイズで写します。カメラを高く構えて、通りの奥の方まで画面内に収めることがポイントです。

シャッター速度モデルの周囲の歩行者が大きく流れるように、1/5秒という遅めのシャッター速度を選択しています。撮影の間モデルに止まっていてもらえるように、その「長さ」を感覚的に伝えることが重要です。

撮影モードシャッター速度が重要なので、シャッター優先AEを選択しています。絞り数値はこのシーンでは気にすることなく、ISO感度とシャッター速度から自動で決まった値で撮っています。

焦点距離70~200mmレンズを使い、圧縮効果を生かすために望遠寄りで撮影しています(焦点距離は190mm)。ファインダーを見ながらズームを微調整して構図を整えています。

モデルは中央にすっと立ってもらう

通りを真っすぐにフレーミング

周囲の人物はほどよく流す

撮影のポイント

構図のポイント

モデル:伊美杏梨

つちや・かつよし1963年、東京都生まれ。東京工芸大学短期大学卒業。六本木スタジオ勤務後、1986年より篠山紀信氏に師事。1989年に独立し、土屋勝義写真事務所を設立。以後、ポートレートを中心に、撮影を続ける。EOS学園東京校講師。

 

EF11-

24㎜

F4L

USMを使

い、広角端11㎜という極めて広い

画角で撮影しています。

 

超広角レンズで撮る場合、モデ

ルを画面周辺に収めると強いパー

スによって顔や体が歪みやすいた

め、画面の中央に配置しています。

またローポジションから見上げる

ように撮ることで、脚をスラッと

長く見せる味付けをしました。も

う一つ重要なのが、被写体に対し

て正対すること。左右に角度が付

くとパースによってバランスが崩

れて不安定な構図になります。被

写体に真っすぐレンズを向け、左

右に角度を付けないことが大切で

す。また、非常に広い範囲が画面

に入るため、ファインダーの四隅

をよく見て、構図を整えて撮りま

しょう。

 

この写真もスローシャッターに

より周囲の歩行者は流して撮影し

ています。人々の気配を生かし、

都会らしさを強調したポートレー

トに仕上げてみました。

四隅をよく見て不要なものが入らないように

2018年8月号