$sp(2,r)$ whittakersp(2,r)$ 上の whittaker 関数と novodvorsky のゼータ積分に ついて...

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$Sp(2,R)$ 上の Whittaker 関数と Novodvorsky のゼータ積分に ついて 東京大学数理科学 森山 知則 (Tomonori Moriyama) 概要まず, \S 1 で簡約リー群上の Whittaker 関数について基本的なことを思い出す。 次に, \S 2 $Sp(2, R)$ 上の一般主系列表現から生ずる Whittaker 関数が Mellin-Barnes 型の簡単 な積分表示をもつことを示す (定理 23)。さらに, この Whittaker 関数の積分表示を使う Novodvorsky による $GSp(2)\cross GL(2)$ のゼータ積分の実素点における成分が計算できる ことを述べる (定理 3.5)\S 1. $GL^{+}(2, R)\downarrow\emptyset$ Whittaker $\ovalbox{\ttREJECT}\Re$ この節では, まず簡約リー群 $G$ 上の Whitakker 関数の定義基本的な結果 (重複度 1 ) を述べる。 その後, 後の節での必要もあるので, $G=GL^{+}(2, R)$ の場合の明示公式に ついて復習する。 (1.1) Whittaker 関数. $G\subset GL(N, R)$ を半分裂 (quasi-split) な連結簡約線型リー群と する $g=(g_{ij})_{1\leq i,j\leq N}\in G\text{}\nearrow)\triangleright\Delta$ $||g||:= \max\{|g_{ij}I(g^{-1})_{ij}||1\leq i, j\leq N\}$ で定義す る。 $G$ の極大コンパクト部分群 $K$ を固定する。 $\theta$ $K=G^{\theta}$ なる Cartan involution する。 $G$ $K$ のリー環をそれぞれ $g$ および $e$ とかく。 $\mathfrak{p}:=\{X\in g|\theta(X)=-X\}$ の極 大アーベル部分空間 $a$ を一つ取って $A:=\exp(a)$ とおく。 制限ルート系 $\Sigma=\Sigma(\text{} \alpha)$ positive system $\Sigma^{+}$ を勝手に取り $\Sigma^{+}$ に属すルートのルート部分空間の直和とする。 そうして $N:=\exp(\mathfrak{n})$ とおけば $G=NAK$ (岩澤分解) が成立する。 $N$ の非退化なユニ タリ指標 $\psi$ : $Narrow C^{(1)}$ からの $C^{\infty}-$ 誘導表現の空間 $C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G):=$ { $w:Garrow C|C^{\infty}$ -class, $w(ng)=\psi(n)w(g),$ $(n,g)\in N\cross G$ } を考える。 ここで, $g\in G$ $C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)$ に右移動 [ $R(g_{1})f|(g)=f(gg_{1})(g_{1}, g\in G)$ で作用 する。 更に, 後で説明する理由から $C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)$ の部分空間 $A_{\psi}(N\backslash G):=$ { $w\in C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)||w(g)|\leq C||g||^{M}$ for some $C>0$ and $M>0$ } も導入しておく。 $\pi$ を既約な Harish-Chandra 加群とするとき, 絡空間 $Hom_{(\mathfrak{g},K)}(\pi, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)_{K})$ $\pi$ Whittaker functional の空間という (=般に, $G$ の表現 $V$ に対してその K-有限ベク トルの全体のなす部分空間を $V_{K}$ で表すことにする)定義 1.1. (i) $v\in\pi$ Whittaker functional $\Phi\in Hom(\mathfrak{g},K)(\pi, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)_{K})$ による像 $\Phi(v)$ $v\in\pi$ に対応する Whittaker 関数と呼ぶ。 (ii) Whittaker functional $\Phi$ $\Phi(\pi)\subset$ (N\G)K をみたすとき緩増大であるという , このとき, 対応する Whittaker 関数を緩増大な Whittaker 関数という。 次の重複度 1 定理は保型形式論において基本的である。 定理 1.2 ([Wa, Theorem 88]). 設定を上の通りとする。任意の既約な Harish-Chandra $\pi$ に対して $\dim_{C}Hom_{(\mathfrak{g},K)}(\pi, A_{\psi}(N\backslash G)_{K})\leq 1$ . $-127-$ 表現論シンポジウム講演集, 2001 pp.127-136

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$Sp(2,R)$ 上のWhittaker 関数と Novodvorsky のゼータ積分について

東京大学数理科学 森山 知則

(Tomonori Moriyama)

概要まず, \S 1で簡約リー群上の Whittaker 関数について基本的なことを思い出す。次に,\S 2で $Sp(2, R)$ 上の一般主系列表現から生ずる Whittaker 関数が Mellin-Barnes 型の簡単な積分表示をもつことを示す (定理 23)。さらに, この Whittaker 関数の積分表示を使うと Novodvorsky による $GSp(2)\cross GL(2)$ のゼータ積分の実素点における成分が計算できることを述べる (定理 3.5)。

\S 1. $GL^{+}(2, R)\downarrow\emptyset$ Whittaker $\ovalbox{\ttREJECT}\Re$

この節では, まず簡約リー群 $G$ 上の Whitakker 関数の定義基本的な結果 (重複度 1定理) を述べる。その後, 後の節での必要もあるので, $G=GL^{+}(2, R)$ の場合の明示公式に

ついて復習する。

(1.1) Whittaker 関数. $G\subset GL(N, R)$ を半分裂 (quasi-split) な連結簡約線型リー群とする $\circ$

$g=(g_{ij})_{1\leq i,j\leq N}\in G\text{の}\nearrow)\triangleright\Delta$を $||g||:= \max\{|g_{ij}I(g^{-1})_{ij}||1\leq i, j\leq N\}$ で定義す

る。 $G$ の極大コンパクト部分群 $K$ を固定する。 $\theta$ を $K=G^{\theta}$ なる Cartan involution と

する。 $G$ と $K$ のリー環をそれぞれ $g$ および $e$ とかく。 $\mathfrak{p}:=\{X\in g|\theta(X)=-X\}$ の極

大アーベル部分空間 $a$ を一つ取って $A:=\exp(a)$ とおく。 制限ルート系 $\Sigma=\Sigma(\text{店} \alpha)$ の

positive system $\Sigma^{+}$ を勝手に取り $\mathfrak{n}$ を $\Sigma^{+}$ に属すルートのルート部分空間の直和とする。そうして $N:=\exp(\mathfrak{n})$ とおけば $G=NAK$ (岩澤分解) が成立する。 $N$ の非退化なユニ

タリ指標 $\psi$ : $Narrow C^{(1)}$ からの $C^{\infty}-$ 誘導表現の空間

$C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G):=$ {$w:Garrow C|C^{\infty}$ -class, $w(ng)=\psi(n)w(g),$ $(n,g)\in N\cross G$}を考える。 ここで, $g\in G$ は $C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)$ に右移動 [$R(g_{1})f|(g)=f(gg_{1})(g_{1}, g\in G)$ で作用

する。 更に, 後で説明する理由から $C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)$ の部分空間

$A_{\psi}(N\backslash G):=$ {$w\in C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)||w(g)|\leq C||g||^{M}$ for some $C>0$ and $M>0$}も導入しておく。$\pi$ を既約なHarish-Chandra加群とするとき, 絡空間 $Hom_{(\mathfrak{g},K)}(\pi, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)_{K})$

を $\pi$ の Whittaker functional の空間という (=般に, $G$ の表現 $V$ に対してその K-有限ベクトルの全体のなす部分空間を $V_{K}$ で表すことにする)。

定義 1.1. (i) 各 $v\in\pi$ の Whittaker functional $\Phi\in Hom(\mathfrak{g},K)(\pi, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)_{K})$ による像

$\Phi(v)$ を $v\in\pi$ に対応する Whittaker 関数と呼ぶ。(ii) Whittaker functional $\Phi$ が $\Phi(\pi)\subset$ ル (N\G)K をみたすとき緩増大であるという $\circ$ ま

た, このとき, 対応する Whittaker 関数を緩増大なWhittaker 関数という。

次の重複度 1定理は保型形式論において基本的である。

定理 1.2 ([Wa, Theorem 88]). 設定を上の通りとする。任意の既約な Harish-Chandra加群 $\pi$ に対して

$\dim_{C}Hom_{(\mathfrak{g},K)}(\pi, A_{\psi}(N\backslash G)_{K})\leq 1$.

$-127-$

表現論シンポジウム講演集, 2001pp.127-136

注意 1.3. (i) $\psi$ が非退化であるという条件をはずすと定理は成立しない。(ii) $\pi$ を $G$の既約ユニタリ表現とする。 $\pi^{\infty}$ で $\pi$ の $C^{\infty}$-ベクトルの全体に Frechet topologyをいれたものを表す。上の定理より早く, Shalika $[S, \S 2,3]$ が $Hom_{G},$ $\text{連続}(\pi^{\infty}, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G))$

が高々 1次元であることを示した。Wallach は上の定理を証明した論文の中で包含関係$Hom_{G}$ , 連 $(\pi^{\infty}, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G))\subset Hom(0,K)(\pi_{K}, A_{\psi}(N\backslash G)_{K})$

が成り立つことを注意している。 つまり Shalka の定理は, 上の定理に含まれる。

(1.2) $G=GL^{+}(2, R)$ の場合. 以下この節では $G=GL^{+}(2, R)$ として岩澤分解 $G=$$NAK\text{を}$

$N=\{|x\in R\},$ $A=\{|y_{1},$ $y_{2}>0\},$ $K=\{r_{\theta}$ $:=|\theta\in R\}$ ,

と固定する。 また, ユニタリ指標 $\psi$ : $Narrow C^{(1)}$ を $\psi()=\exp(2\pi\sqrt{-1}x)$で定める。

$g_{C}=g\otimes_{R}C=\mathfrak{g}\mathfrak{l}(2, C)\text{の}C$-basis $\{Z, H,X_{+}, X_{-}\}\text{を}$

$Z=$ , $H=(_{-\sqrt{-1}}^{0}$ $X_{\pm}= \frac{1}{2}$

ととる。 $\{H, X_{+}, X_{-}\}$ は $sl_{2}$-triplet になっている。典型例として $\pi$ が最低ワエイト加西の場合を考えよう :最低ウェイト加群 $\pi=D_{k}(\mu)(k\in Z\geq 1, \mu\in C)$ を $C$-basis{$v\iota|l\equiv k$ (mod 2), $l\in Z\geq 2$} で

$\pi(Z)v_{l}=\mu v_{l}$ , $\pi(H)v_{l}=lv_{l}$ , $\pi(X_{+})v_{l}=\frac{1}{2}(k+l)v_{l+2}$ , $\pi(X_{-})v_{l}=\frac{1}{2}(k-l)v_{1-2}$

をみたすものを持つ Harish-Chandra 加群として定義する $\circ$ Whittaker functional $\Phi\in$

$Hom_{(\mathfrak{g},K)}(D_{k}(\mu), C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)_{K})$ をとり, $w_{k}:=\Phi(v_{k})\in C_{\psi-}^{\infty}(N\backslash G)$ を lowest weight vector$v_{k}$ に対応したWhittaker 関数とする。すると

$w_{k}(nr_{\theta})=\psi(n)\exp(2\pi\sqrt{-1}k\theta)y_{1}^{\mu}w_{k}(a)$ $n\in N,$ $y_{1},$ $y_{2}>0,$ $\theta\in R$

なので, $w_{k}$ は $(y_{1}>0)$ 上の値で完全に決まる。そこで $\tilde{w}_{k}(y_{1}):=w_{k}()$

とおいて $\tilde{w}_{k}(y_{1})$ を求めよう。 $\pi(X_{-})v_{k}=0$ なので, [$R_{X_{-}}w_{k}|(g)=0$ である。 ここから$\tilde{w}_{k}(y_{1})$ が

$[y_{1} \frac{d}{dy_{1}}+2\pi y_{1}-\frac{k}{2}]\tilde{w}_{k}(y_{1})=0$

なる微分方程式をみたすとこがわかる。 これを解いて

$\tilde{w}_{k}(y_{1})=f_{k}()=y_{1}^{k/2}\exp(-2\pi y_{1})$

を得る。 こうして今の場合

$\dim_{C}Hom_{(\mathfrak{g},K)}(\pi, A_{\psi}(N\backslash G)_{K})\leq\dim_{C}Hom_{(\mathfrak{g},K)}(\pi, C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)_{K})\leq 1$

が計算によっても確かめられたが ここで実際に dimc $Hom_{(g,K)}(\pi, A_{\psi}(N\backslash G)_{K})=1$ もいえる。

(1.3) 緩増大条件についての注意 (保型形式の Fourier展開). まず $G$ 上の保型形式の定

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義を思い出す。 ユニタリ指標 $\omega=\omega_{\mu}$ : $R_{+}^{\cross}\ni yarrow y^{\mu}\in C^{(1)}$ を固定し, $\Gamma$ を $SL(2, R)$ 離散部分群で $\Gamma\backslash SL(2, R)$ が測度有限なものとする。 $C^{\infty}-$ 関数 $\varphi$ : $Garrow C$ が,

(i) $\varphi(\gamma g)=\omega(y_{2})\varphi(g)$ $\forall\gamma\in\Gamma,\forall y_{2}\in R_{+}^{x},\forall g\in G$ .(ii) $\varphi$ は右 $K$-有限かつ $Z(\mathfrak{g})$-有限。 ここで, $Z(g)lhg$ の普遍展開環 $U(g)$ の中心.(iii) $\varphi$ は緩増大, すなわちある $C>0,$ $M>0$ が存在して $|\varphi(g)|\leq C||g||^{M}$ となる.

をみたすとき, $\varphi$ を $G$ 上の $\Gamma$ に関する中心指標 $\omega$ の保型形式であるといい, その全体を$A(\Gamma\backslash G;\omega)$ で表す。

以下簡単のため $\Gamma$ は $\Gamma\cap N=\{|x\in Z\}\text{を}$みたすとして, 保型形式 $\varphi\in \mathcal{A}(\Gamma\backslash G;\omega)$

の Fourier 展開を考える (実際には $\Gamma\backslash SL(2, R)$ が非コンパクト $\gamma_{S}$ らば $\Gamma$ は尖点を持ち

Fourier $\Phi$ Pffi $\text{を考}\check{x}\text{る_{}}^{}\text{と}Ba\text{て^{}\backslash }\backslash \text{きる})_{0}\ovalbox{\ttREJECT} \mathfrak{W}1\text{の}$ 周期関数 $R\ni x-t\varphi()\in C\}^{\wedge}$.Fourier $\Phi\ovalbox{\ttREJECT}^{\backslash }\ovalbox{\ttREJECT}_{A^{/\backslash }\iota\lambda \text{を}\Phi fflL^{-},C,\backslash \text{次のよ}\check{\mathcal{D}}fS\varphi$の $N$ にそっての Fourier展開 $\text{を}/_{B}\uparrow\Rightarrow \text{る}$ :

$\varphi(g)=\int_{(N\cap\Gamma)\backslash N}\varphi(ng)dn+\sum_{m\in Z\backslash \{0\}}W_{\varphi,m}(g)$ ,

ただし $W_{\varphi,m}(g):= \int^{1}\varphi(g)\exp(-2\pi\sqrt{-1}mx)dx$ .

ここで, $\varphi$ は緩増大ゆえ, $W_{\varphi,m}$ も緩増大である。 したがって関数

$G\ni grightarrow W_{\varphi,m}()g)\in C$

はん $(N\backslash G)$ に属す。 これが $C_{\psi}^{\infty}(N\backslash G)$ の部分空間編 (N\G) を考える理由である。 さ

らに, 次の点にも注意しておこう。 $\varphi$ が既約 Harish-Chandra加群 $\pi$ を生成するとしよう。 すなわち ( $\text{店}$ K)準同型 $T$ : $\pi\mapsto A(\Gamma\backslash G;\omega)$ および $v\in\pi$ が存在して $\varphi=T(v)$ と

なっているとすると, $G\ni gtarrow W_{\varphi,m}(g)\in C$ たちは $v\in\pi$ に対応する緩

増大な Whittaker 関数である。 Theorem 12によりそれは $v\in\pi$ だけで定数倍を除いてー意に定まる。つまりある $w\in$ ル (N\G) と $a(m)\in C(m\in Z\backslash \{0\})$ が存在して

$W_{\varphi,m}(g)=a(m)w(g)$ となることがわかる o

\S 2. $Sp(2, R)$ 上のWhittaker 関数この節では, $Sp(2, R)$ の $P_{1}$-主系列表現の定義を述べた後, そのあるベクトル $v_{1}$ に対応した $Sp(2, R)$ 上の Whittaker 関数の Mellin-Barnes 型積分表示を与える。

(2.1) $Sp(2, R)$ . \S 2では, $G$ を階数 2の実 simplectic群とする :

$G=Sp(2, R):=\{g\in GL(4, R)|{}^{t}gJ_{4}g=J_{4}=\}$ .

$-129-$

$G$ の岩澤分解を $G=NAK$ 次のように固定する。

$N=\{n(n_{0}, n_{1}, n_{2}, n_{3})=\cdot|n_{i}\in R\}$ ;

$A=\{diag(a_{1}, a_{2}, a_{1}^{-1}, a_{2}^{-1})|a_{i}>0(i=1,2)\}$

$K=\{\in Sp(2, R)|A,$ $B\in M(2, R)\}$ .

すると, $N$ のユニタリ指標 $\psi$ は, ある $c_{0},$ $c_{3}\in R$ を使って

$\psi:N\ni n(n_{0},n_{1},n_{2},n_{3})\vdasharrow\exp(2\pi\sqrt{-1}(c_{0}n_{0}+c_{3}n_{3}))\in C^{(1)}$

と書ける。 $\eta$ が非退化であるとは今の場合 $c_{0}c_{3}\neq 0$ のことである。

(2.2) $K$ の既約表現のパラメータ付け. $K$ とユニタリ群 $U(2):=\{g\in GL(2, C)|{}^{t}\overline{g}g=I_{2}\}$

との同型 $u$ : $U(2)\cong K$

$u$ : $U(2)\ni A+\sqrt{-1}Brightarrow\in K$ , $(A, B\in M(2,R))$ .

と固定する。 $K$ の極大トーラスとして $T:=\{u()|\alpha_{i}\in C^{(1)}\}$ をとる。 各 $\lambda=$

$(\lambda_{1}, \lambda_{2})\in Z^{\oplus 2}$ に対して $T$ の指標 $\chi_{\lambda}$ を $\chi_{\lambda}(u())=\alpha_{1}^{\lambda_{1}}\alpha_{2}^{\lambda_{2}}\in C^{(1)}$ で定める。 $K$

の既約有限次元表現 $\tau$ に対して $\lambda_{1}\geq\lambda_{2}$ をみたす $\lambda=(\lambda_{1}, \lambda_{2})\in Z^{\oplus 2}$ が (ただ一つ) 存

在して $\tau|_{T}=\oplus_{i=0}^{\lambda_{1}-\lambda_{2}}\chi_{(\underline{\lambda}_{1}}$ -i,\mbox{\boldmath $\lambda$}2+のとなる。 この $\lambda$ を $\tau$ の (positive $system\{(1, -1)\}$ に関する) 最高ウェイトという。逆に, $\lambda_{1}\geq\lambda_{2}$ をみたす $\lambda\in Z^{\oplus 2}$ はある $K$ の既約有限次元表現

$\tau$ の最高ウェイトである。最高ウェイト $\lambda$ を持つ $K$ の既約有限次元表現を $\tau=\tau_{\lambda}$ と書く

ことにする。

(2.3) $G$ の $P_{1}$-主系列表現. 単純リー群 $G=Sp(2, R)$ は, 共役を除いて, 2つの極大放物型部分群を持つ。 このうち, 非アーベルな unipotent part を持つものを Jacobi放物型部分群と呼び君で表そう。 $P_{1}$ とその Langalands分解 $P_{1}=M_{1}A_{1}N_{1}$ を次のようにとる :

$M_{1}:=\{|\epsilon\in\{\pm 1\},$ $\in SL(2, R)\}$ ;

$A_{1}:=\{diag(a_{1},1, a_{1}^{-1},1)|a_{1}>0\}$ ; $N_{1}:=\{n(n_{0}, n_{1}, n_{2},0)\in N|n_{i}\in R\}$ .

$M_{1}$ の離散系列表現 $(\sigma, V_{\sigma})$ は指標 $\epsilon$ : $\{\pm 1\}arrow C^{\cross}$ と $SL(2, R)$ の Blattner parameter $k$

$(|k|\geq 2)$ の離散系列表現 $D_{k}$ の外部テンソル表現 $\epsilon\otimes D_{k}$ である ( $k\geq 2$ に対して, $D_{k}$ は

$D_{k}(\mu)$ ( $cf$. 小節 (1.2)) の $SL(2, R)$ への制限であり, $D_{-k}$ は $D_{k}$ の反傾表現である) $\circ\nu_{1}\in$ Cに対して, $A_{1}$ の指標 $\exp(\nu_{1})$ を

$\exp(\nu_{1})(a_{1})=t_{1}^{\nu_{1}}$ , $a_{1}=diag(t_{1},1,t_{1}^{-1},1)\in A_{1}$ .$C^{\infty}-$ 誘導表現

$I(P_{1}; \sigma, \nu_{1}):=C^{\infty}- Ind_{P_{1}}^{G}(\sigma\otimes\exp(\nu_{1}+1))\otimes 1_{N_{1}})$

$-130-$

を $G$ の瓦-主系列表現と呼ぶ。 $I(P_{1}; \sigma, \nu_{1})$ の表現空間は

{ $F:Garrow V_{\sigma}|C^{\infty}$-class, $F(m_{1}a_{1}n_{1}g)=\sigma(m_{1})\exp(\nu_{1}+1)(a_{1})F(g)$ ,$\forall(m_{1}, a_{1}, n_{1}, g)\in M_{1}\cross A_{1}\cross N_{1}\cross G\}$ ,

で与えられ, $G$ はこの上に右移動で作用している。 $I(P_{1}; \sigma, \nu_{1})$ の $K$-type は次のようになる。

命題 2.1 (cf. [M-O1, Proposition $2.1],[M- 02]$ ). $\pi=I(P_{1)}\sigma, \nu_{1})$ を Pl-主系列表現とする。ただし $\sigma=\epsilon,$ $\otimes D_{kf}\nu_{1}\in C$ とする。すると $K$ の既約有限次元表現 $\tau_{(\lambda_{1},\lambda_{2})}(\lambda_{1}\geq\lambda_{2})$ の $\pi$

における重複度は

$\#$ { $m\in Z|m\equiv k$ (mod 2), $sgn(k)m\geq|k|,$ $(-1)^{\lambda_{1}+\lambda_{2}-m}=\epsilon(\gamma_{1}),$ $\lambda_{2}\leq m\leq\lambda_{1}$ },

で与えられる $\text{。}$ ただし, ここで $\gamma_{1}:=diag(-1,1, -1,1)\in G,$ $sgn(k):=k/|k|\in\{\pm 1\}$ とお

いた。

(2.4) Whittaker 関数のMellin-Barnes型積分表示. 以下では, $\pi=I(P_{1}; \epsilon\otimes D_{-k}, \nu_{1})$

$(k\geq 2)$ で $\epsilon(\gamma_{1})=(-1)^{k}$ の場合を考える (ほかの Pl主系列表現についてもこれから述べることと同様のことがいえる)

。 すると $\pi$ は $K$-type $\tau_{(-k,-k)}$ を重複度 1で含む。 1次元$K$-type $\tau(-k,-k)$ の $0$ でないベクトル $v_{1}\in\pi$ を一つ取って固定する。一言でいえば

$\pi()v_{1}=\det(A+\sqrt{-1}B)^{-k}v_{1}$ , $\in K$をみたす (定数倍を除いて) 唯=の元 $v_{1}\in\pi$ をとる。 $W_{v_{1}}(g)$ で $v_{1}\in\pi$ に対応する緩増大な

Whittaker関数を表す。 $GL^{+}(2, R)$ のときと同じ理由で $W_{v_{1}}(g)$ はトーラス $A$ 上の値で一意に定まる。Miyazaki と Oda は $W_{v_{1}}|A$ のみたす偏微分方程式系を構成し, それを解くことで$W_{v_{1}}|A$ の Euler型の積分表示を得た。それを記述するため $A=\{diag(a_{1}, a_{2}, a_{1}^{-1}, a_{2}^{-1})|a_{i}>$

$0(i=1,2)\}$ 上の新しい座標 $x=(x_{1}, x_{2})$ を導入しておくと便利である :

$x_{1}:=\sqrt{4\pi^{3}c_{0}^{2}|c_{3}|}a_{1}$ , $x_{2}:=\sqrt{4\pi|c_{3}|}a_{2}$ .

この座標についての Euler作用素を $\partial_{i}:=x_{i^{\frac{\partial}{\partial x_{i}}}}(i=1,2)$ とする。

命題 2.2 ([M-O1, Proposition 7.1, Theorem 8.1]). (i) $\phi(x)\in C^{\infty}(A)$ を

$W_{v_{1}}(diag(a_{1},a_{2},a_{1}^{-1},a_{2}^{-1}))=x_{1}^{k+1}x_{2}^{k}\exp(sgn(c_{3})x_{2}^{2}/2)\phi(x_{1},x_{2})$

で定義する。すると $\phi(x)$ はつぎをみたす。

(2.1) $[\partial_{1}\partial_{2}+4(x_{1}/x_{2})^{2}]\phi(x)=0$ ;

(2.2) $[(\partial_{1}+\partial_{2}+k-1+\nu_{1})(\partial_{1}+\partial_{2}+k-1-\nu_{1})+2sgn(c_{3})x_{2}^{2}\partial_{2}]\phi(x)=0$.

(ii) $c_{3}<0,$ $c_{1}\neq 0$ のとき (2.1), (2.2) からなる微分方程式系は, 対応する $W_{v_{1}}(g)$ が緩増大であるような解 $\phi(x)\in C^{\infty}(A)$ を定数倍を除いてただ一つ持つ。それは

(2.3) $\phi(x)=-\int_{0}^{\infty}t^{-k+1/2}W_{0,\nu_{1}}(t)\exp(-\frac{t^{2}}{16x_{2}^{2}}-\frac{16x_{1}^{2}}{t^{2}})\frac{dt}{t}$ .

で与えられる。

(iii) $c_{3}>0,$ $c_{1}\neq 0$ のときには (2.1), (2.2) からなる微分方程式系は, 対応する $W_{v_{1}}(g)$ が緩増大であるような解を持たない。

$-131-$

(i) の微分方程式系は, (1.2) で述べた $GL^{+}(2, R)$ の場合と同様に, $v_{1}$ へのリー環の作用

を見ることで導出されている (ただし, 同じ $K$-type に属すWhittaker 関数をひとまとめにして扱うことで見通しのよい計算がなされている) 。 さて, 筆者はWhittaker 関数の類似品である新谷関数の研究中に $\phi(x)$ がMelln-Barnes 型の積分表示を持つことに気がついた :定理 2.3. $c_{3}<0,$ $c_{1}\neq 0$ を仮定する。 $\phi(x)$ を (2.1) と (2.2) からなる微分方程式系の解で対応する $W_{v_{1}}(g)$ が緩増大であるものとする。二つの実数 $(\sigma_{1}, \sigma_{2})$ を

(2.4) ${\rm Re}(\sigma_{1}+\sigma_{2}\pm\nu_{1}-k+1)>0$ , および ${\rm Re}(\sigma_{1})>0>{\rm Re}(\sigma_{2})$ .をみたすようにとる。すると $C\in C^{x}$ を定数として

(2.5) $\phi(x)=C\cross\frac{1}{(2\pi\sqrt{-1})^{2}}\int_{L(\sigma_{1})}\int_{L(\sigma_{2})}M(\phi;s_{1}, s_{2})x_{1}^{-\epsilon_{1}}x_{2}^{-s_{2}}.ds_{1}ds_{2}$ ,

となる。 ただしここで

(2.6) $M( \phi;s_{1}, s_{2}):=\Gamma(\frac{s_{1}+s_{2}+\nu_{1}-k+1}{2})\Gamma(\frac{s_{1}+s_{2}-\nu_{1}-k+1}{2})\Gamma(\frac{s_{1}}{2})\Gamma(\frac{-S_{2}}{2})$

である。 ここで積分路 $L(\sigma_{j})(j=1,2)$ は $\sigma_{j}-\sqrt{-1}\infty$ から $\sigma_{j}+\sqrt{-1}\infty$ へ向かう垂直

な路である。

Proof. (23) から

$\int_{0}^{\infty}\int_{0}^{\infty}\{\int_{0}^{\infty}t^{-k+1/2}W_{0,\nu_{1}}(t)\exp(-\frac{t^{2}}{16x_{2}^{2}}-\frac{16x_{1}^{2}}{t^{2}})\frac{dt}{t}\}x_{1}^{s_{1}}x_{2}^{s_{2}}\frac{dx_{1}}{x_{1}}\frac{dx_{2}}{x_{2}}$ ,

を計算しても示せるが, ここでは次のように差分方程式系に帰着する証明を与えよう。 ま

ず, Stirling formula ( $[A$ , Ch 5\S 2.5]) から簡単に次がいえる。

Claim. $\alpha<\beta$ なる二つの実数 $\alpha,$$\beta$ に対して

$|\Gamma(\sigma+\sqrt{-1}\tau)|\leq C_{\alpha,\beta}\exp(-(\pi-\epsilon)|\tau|/2)$ , $\forall(\sigma,\tau)\in[\alpha,\beta]xR$ , $\forall\epsilon>0$ ,

をみたすような定数 $C_{\alpha,\beta}>0$ が存在する。

この Claim により, (2.5) が絶対収束し $(\sigma_{1}, \sigma_{2})$ の取り方に依存しないことがわかる。

また積分記号下で微分してよく (これも Claim からわかる) , $\phi(x)$ が (2.1) と (2.2) をみたすことをいうためには, $M(\phi;s_{1}, s_{2})$ に対して

$\bullet$ $s_{1}s_{2}M(\phi;s_{1},s_{2})+4M(\phi;s_{1}.+2, s_{2}-2)=0$,$\bullet$ $(s_{1}+s_{2}-k+1-\nu_{1})(s_{1}+s_{2}-k+1+\nu_{1})M(\phi;s_{1}, s_{2})$

$+2(s_{2}+2)M(\emptyset;s_{1}, s_{2}+2)=0$ ,

を確かめればよい。定理の $M(\phi;s_{1}, s_{2})$ がこれらをみたすことはすぐわかる。さらに, (2.4)をみたす $(\sigma_{1}, \sigma_{2})$ に対して定数 $C_{\sigma_{1},\sigma_{2}}>0$ が存在して $|\phi(x_{1},x_{2})|\leq C_{\sigma_{1},\sigma_{2}}x_{1}^{-\sigma_{1}}x_{2}^{-\sigma_{2}}$ となる。

したがって, $\phi(x)$ に対応する $W_{v_{1}}$ が緩増大であることもいえた。 $\square$

注意 2.4. Whittaker 関数をはじめとする, 簡約リー群上の=般化された球関数のうちMeffin-Barnes型の積分表示を持つものがいろいろ知られてきている。 2階の超幾何微分方程式をみたすものは, もちろんこの中に入るが, ほかにも $[B1](GL(3, R)$ 上のWhittaker関数), [H] $(Sp(2, R)$ 上の Fourier-Jacobi型球関数), $[Mo- 1](Sp(2, R)$ 上の新谷関数) などがある。

$-132-$

\S 3. $L$-functions for $GSp(2)\cross GL(2)$

A を有理数体 $Q$ のアデール環とする。 $F$ を $GSp(2)_{A}$ 上の尖点保型形式, $\varphi$ を $GL(2)_{A}$ 上の置型形式とする。 1970年代中ごろに Novodvorsky$([Nl]_{)}[N2, \S 3])$ は $F\otimes\varphi$ に対する 8次の Euler 積を持つ保型的 $L$-関数の積分表示 (ゼータ積分という) を考案した。 この節では, 前節で与えた $Sp(2, R)$ 上のWhittaker 関数の積分表示の応用として, このゼータ積分の実素点における局所因子が特別な場合に計算できることを述べる。

(3.1) $GSp(2)$ . まず $G$ を $Q$上定義された similitude付きの 2次 simplectic 群とする:

$G=GSp(2):=$ {$g\in GL(4)|{}^{t}gJ_{4}g=\nu(g)J_{4}$ for some $\nu(g)\in G_{m}$ }.

また, $H:=\{h=(h_{1},h_{2})\in GL(2)\cross GL(2)|\det(h_{1})=\det(h_{2})\}$ とおき,

$H\ni h=(h_{1}, h_{2})\vdash+\in G$ , $h_{i}=$ ,

によって $G$ の部分代数群と見る。 $G$ の中心は $Z:=\{z1_{4}\in G|z\in G_{m}\}$ で与えられる。 $G$

の極大幕単部分群 $N$ および $H$ の極大酒淫部分群 $N^{H}$ として

$N:=\{\in G\}$ , $N^{H}:=N\cap H$

をとる。 また $GL(2)$ の Borel 部分群 $B’$ を $B’:=\{\in GL(2)\}$ , と固定する。 $GL(2)_{A}$

の極大コンパクト部分群 $K’$ として $O(2) \cross\prod_{p<\infty}GL(2, Z_{p})$ をとる。

(3.2) ゼータ積分. まず, $GL(2)_{A}$ 上の Eisenstein級数を導入する。誘導表現の空間 $I(s)$

$(s\in C)\text{を}$

$I(s):=\{f$ : $GL(2)_{A}arrow C|$ smooth, right $K’$-finite,

$f(g)=| \frac{b_{1}}{b_{2}}|_{A}^{s}f(g),$ $\cdot\forall\in B_{A}’\forall g\in GL(2)_{A}\}$

で定義する。関数 $f$ : $C\cross GL(2)_{A}arrow C$ が $I(s)$ の flat section であるとは, 各 $s\in C$ につ

いて $f(s, *):Garrow C$ が $I(s)$ に属し, $K’$ への制限が $s\in C$ に依存しないことと定義する。このとき, $f(s,g)=f^{(s)}(g)$ とも書くことにする。 flat section $f$ に対して, Eisenstein級数$E(h_{1}, f^{(s)})$ が

$E(h_{1}, f^{(s)}):= \sum_{\gamma\in B_{Q}’\backslash GL(2)_{Q}}f^{(s)}(\gamma h_{1})$, $h_{1}\in GL(2)_{A}$

で定義される。 これは ${\rm Re}(s)>1$ で絶対収束して, 全 s-平面に有理型に解析接続される。ここから先, 簡単のため,

(3.1) $F(z1_{4}g)=F(g)$ , $\varphi(z1_{2}h)=\varphi(g)$ , $\forall z\in A^{\cross},\forall g\in G_{A},$ $\forall h\in GL(2)_{A}$

を仮定する。 $GSp(2)\cross GL(2)$ に対する Novodvorsky のゼータ積分とは次のようなものである。

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定義 3.1 (cf. [S]). ゼータ積分 $Z(s).:=Z(s, F\otimes\varphi, f)$ を

(3.2) $Z(s):= \int_{Z_{A}H_{Q}\backslash H_{A}}F(h)E(h_{1}, f^{(s)})\varphi(h_{2})dh$ ,

で定義する。 これは, $s\in C$ の有理型関数である。

次の命題を述べるために $F$ および $\varphi$ の大域的Whittaker 関数を導入する。非自明な指標 $e_{A}$ : $A/Qarrow C^{(1)}$ を $e_{A}(x_{\infty})=\exp(2\pi\sqrt{-1}x_{\infty})(x_{\infty}\in R),$ $e_{A}(Z_{p})=\{1\}(\forall p<\infty)$

により定める。そうして $N_{A}$ のユニタリ指標 $\psi_{A}$ : $N_{A}arrow C^{(1)}$ を

$\psi_{A}((1 n_{0}1 1 ). r1 1n_{1}n_{2,1} n_{2}n_{3}1)=e_{A}.(-n_{0}-n_{3})\in C^{(1)}$,

$\backslash$ $-n_{0}$ 1) $\backslash$ 1で定める。 $F$ の大域的Whittaker 関数を

$W_{F}(g):= \int_{N_{Q}\backslash N_{A}}F(ng)\psi_{A}(n^{-1})dn$ , $g\in G_{A}$ ,

で定義する。 同じく $\varphi$ の大域的Whittaker 関数を

$W_{\varphi}(g):= \int_{Q\backslash A}\varphi(h_{2})e_{A}(-x)dx$, $h_{2}\in GL(2)_{A}$ ,

で定義する。 そうすると次が成立する :命題 3.2 (Basic identity, $cf.[B2,$ \S 3], [GPs]).

(3.3) $Z(s, F \otimes\varphi, f)=\int_{Z_{A}N_{A}^{H}\backslash N_{A}}W_{F}(h)W_{\varphi}(h_{2})f^{(s)}(h_{1})dh$.

注意 3.3. (i) $[N1],[N2]$ には, (3.2) 式は (表立っては) 現れず, はじめから (3.3) 式の右辺を考察対象としている。

(ii) $F$ が正則な春型形式 (の $G_{A}$ への持ち上げ) である場合には, 恒等的に $W_{F}=0$ となっ

てしまうので $Z(s)=0$ となりこのみ関数の積分表示法は適用できない。

大域的Whittaker 関数 $W_{F},$ $W_{\varphi}$ および flat section $f=f^{(s)}$ がいずれも局所因子の積に書けていると仮定する:

$W_{F}(g)= \prod_{v}W_{v}(g_{v})$ , $W_{\varphi}(h_{2})= \prod_{v}W_{v}’(h_{2,v})$ , $f^{(s)}(h_{1})= \prod_{v}f_{v}^{(s)}(h_{1,v})$ ,

for $g=(g_{v})\in G_{A}$ , $h_{i}=(h_{i,v})\in GL(2)_{A}(i=1,2)$ .

すると, $Z(s)$ も

$Z(s)= \prod_{v}Z_{v}(s)$ , $Z_{v}(s):= \int_{Z_{Q_{v}}N_{Qv}^{H}\backslash N_{Qv}}W_{v}(h_{v})W_{v}’(h_{2,v})f_{v}^{(s)}(h_{1})dh$ ,

と局所因子の積に分解する。

さて, $F$ (resp. $\varphi$) がある有限素点 $p<\infty$ で不分岐であるとする。 すなわち, $F$ (resp. $\varphi$)の $G_{Q_{p}}$ (resp. $GL(2)_{Q_{p}}$ ) による右移動たちが $G_{Q_{p}}$ (resp. $GL(2)_{Q_{p}}$ ) の不分岐主系列表現(その佐武パラメータを diag $(\alpha_{1}, \alpha_{2}, \alpha_{3}, \alpha_{4})\in GSp(2, C)$ (resp. diag $(\beta_{1},$ $\beta_{2})\in GL(2,$ $C)$ )とする) を生成していて, $F$ (resp. $\varphi$) がその不分岐ベクトルであるとする。 また $f_{p}^{(s)}$ も右$GL(2, Z_{p})$-不変としよう。 このとき次が成立する :

$-134-$

命題 3.4 ( $[B2],[GPs$ , Appendix]). 定数倍を除いて,$(1-p^{-2s})^{-1}Z_{p}(s)=[(1-\alpha_{1}\beta_{1}p^{-s})(1-\alpha_{2}\beta_{1}p^{-s})(1-\alpha_{3}\beta_{1}p^{-s})(1-\alpha_{4}\beta_{1}p^{-s})$

$(1-\alpha_{1}\beta_{2}p^{-s})(1-\alpha_{2}\beta_{2}p^{-s})(1-\alpha_{3}\beta_{2}p^{-s})(1-\alpha_{4}\beta_{2}p^{-s})]^{-1}$,

である。

したがって, $Z(s)$ は $F\otimes\varphi$ に付随する保型的 L-関数の積分表示を与えていると考えられる。

(3.3) $Z_{\infty}(s)$ の計算. $F$ の $Sp(2, R)$ による右移動たちが, $P_{1}$-丁系列表現 $\pi=I(P_{1};(-1)^{k}\otimes$

$D_{-k},$ $\nu_{1})(k\geq 2)$ を生成し

$F(g)=\det(A+\sqrt{-1}B)^{-k}F(g)$ , $g\in G_{A},$ $A+\sqrt{-1}B\in U(2)$

をみたすとする。 すると $W_{\infty}|_{Sp(2,R\rangle}$ は小節 (2.4) で明示公式を与えた $W_{v_{1}}$ に他ならない。従って仮定 (3.1) にも注意すると,

(3.4) $W_{\infty}()=y_{1}^{k+1/2}y_{2}^{k+1}\exp(-2\pi\sqrt{-1}y_{1})\phi(\sqrt{4\pi^{3}y_{1}y_{2}^{2}}, \sqrt{4\pi y_{1}})$

である。 同じく $\varphi$ の $SL(2, R)$ による右移動たちが離散系列表現 $D_{k}$ を生成し $\varphi$ がその

lowest weight vector に対応しているとする。 小節 (1.2) の明示公式から

(3.5) $W_{\infty}’()=y_{1}^{k/2}\exp(-2\pi\sqrt{-1}y_{1})$

である。 また, $f_{\infty}^{(s)}(h_{1}r_{\theta})=\exp(-\sqrt{-1}k\theta)f_{\infty}^{(s)}(h_{1})(h_{1}\in GL(2)_{R}, r_{\theta}\in SO(2))$ とすると,$H_{R}$ 上の測度を岩沢分解して

$Z_{\infty}(s)= \int_{0}^{\infty}\frac{dy_{1}}{y_{1}}.\int_{0}^{\infty}\frac{dy_{2}}{y_{2}}W_{\infty}()W_{\infty}’()$

$y_{1}^{s-2}y_{2}^{2s-2}$ ,

となる。 さらに $(3.4),(3.5)$ を代入して計算すれば, 次を得る :定理 3.5. $\Gamma_{R}(2s+k)Z_{\infty}(s)$ は定数倍を除いて

$\Gamma_{C}(s+\frac{\nu_{1}}{2})r_{c}(s-\frac{\nu_{1}}{2})r_{c}(s+\frac{\nu_{1}}{2}+k-1)\Gamma_{C}(s-\frac{\nu_{1}}{2}+k-1)$ .

に等しい $\text{。}$ただし $\Gamma_{R}(s):=\pi^{-s/2}\Gamma(s/2),$ $\Gamma_{C}(s):=2(2\pi)^{-s}\Gamma(s)$ である。

なお、 計算の途中で

補題 3.6 (Barnes’ 1st Lemma [W-W, p.289]).

$\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\int_{L}\Gamma(a+s)\Gamma(b+s)\Gamma(c-s)\Gamma(d-s)ds=\frac{\Gamma(a+c)\Gamma(a+d)\Gamma(b+c)\Gamma(b+d)}{\Gamma(a+b+c+d)}$ .

ここで, 積分路 L は $-\sqrt{-1}\infty$から出発して, $\Gamma(a+s)\Gamma(b+s)$ の極を左に, $\Gamma(c-s)\Gamma(d-s)$

の極を右にみて, $+\sqrt{-1}\infty$ へ向かう路である。

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を用いる。

注意 3.7. $F$ 及び $\varphi$ が実素点で spherical な主系列表現を生成している場合にも, $Z_{\infty}(s)$

が Niwa( $[N$ , 定理 2]) によって計算されている。

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$E$-mail addoess: $moriy-toms.u$-tokyo. $ac$ . jp

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