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経営者交代と利益調整行動 Top Executive Turnover and Earnings Management 石田 惣平 埼玉大学大学院人文社会科学研究科 講師 Souhei Ishida Lecturer, Saitama University 蜂谷 豊彦 一橋大学大学院経営管理研究科 教授 Toyohiko Hachiya Professor, Hitotsubashi University June 2017, Revised in December 2019 No.216

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経営者交代と利益調整行動 Top Executive Turnover and Earnings Management

石田 惣平

埼玉大学大学院人文社会科学研究科 講師 Souhei Ishida

Lecturer, Saitama University

蜂谷 豊彦 一橋大学大学院経営管理研究科 教授

Toyohiko Hachiya Professor, Hitotsubashi University

June 2017, Revised in December 2019

No.216

Page 2: Souhei Ishida Lecturer, Saitama University Toyohiko Hachiya ......Hazarika et al (2012) は米国企業を対象として,裁量的会計発生高の絶対値が大きい企業ほど,経営者が交代させられる可能性が高まるこ

経営者交代と利益調整行動

石田 惣平 † 蜂谷 豊彦 ‡

要旨

本研究は経営者交代と利益調整行動との関係を分析している。分析の結果,(1)利

益調整を行っている経営者ほど交代させられる確率が高いこと,(2)経営者交代と

利益調整行動の関係は社外取締役比率の高低に応じては変化しないこと,(3)株式

持合比率が低い企業ほど経営者交代と利益調整行動の関係は強くなること,(4)利

益調整を行わない者に経営者が交代した場合,将来の企業業績は改善することが

確認されている。

キーワード:経営者交代,利益調整,社外取締役,株式持合,将来業績

Top Executive Turnover and Earnings Management

Souhei Ishida Toyohiko Hachiya

Abstract

This study examines whether the likelihood of a top executive’s turnover is positively related

to a firm’s earnings management. We provide evidence that the probability of a top

executive’s turnover is positively related with the magnitude of earnings management. In

addition, we find that the positive relation between top executive turnover and earnings

management is stronger when cross-shareholding ratio is low. Finally, we find evidence of

improved performance in the subsequent years following the appointment of a top executive

who does not manage earnings aggressively.

Keyword: Top Executive Turnover, Earnings Management, Outside Director, Cross-

shareholding, Future Performance

† 所 属 埼玉大学大学院人文社会科学研究科 講師 * 住 所 〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保 255 埼玉大学 * 連絡先 [email protected] ‡ 所 属 一橋大学大学院経営管理研究科 教授

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1

1 はじめに

経営者は私的な便益を得るために,会計利益を意図的に調整する動機を有している。先行

研究からは,経営者はより多くの報酬を得るために利益増加型の利益調整を行うこと

(Balsam, 1998; Bergstresser and Philippon, 2006; Cornett et al., 2008; Healy, 1985; Holthausen et

al., 1995; Shuto, 2007),あるいは財務的な健全性が芳しくない場合に自社の財政状態をよく

見せようと会計利益を意図的に増加させることが確認されている(DeFond and Jiambalvo,

1994; Dichev and Skinner, 2002; Sweeney, 1994)。また,経営者はのちの成長を演出する目的で

利益減少型の利益調整を行うことも報告されている(Murphy and Zimmerman, 1993; Pourciau,

1993; 山口, 2013)。

他方,経営者による利益調整は株主に大きなコストをもたらす。経営者が会計利益を調整

することで自身の報酬額を裁量的に変更することができるのであれば,努力水準に関係な

く報酬額を受けとることができるようになる。その結果,経営努力を怠るかもしれない(Paul,

1992; 小西・齋木, 2004)。また,調整された会計利益にもとづいて企業の財務的な健全性や

成長性が評価されれば,株主は企業の経済実態を見誤ることになり,投資資金を回収するタ

イミングが遅れる(Kubota et al., 2010; Xie, 2001)。結果として,株主は他の有望な投資機会

を逃すとことになり,大きなコストを負うこととなる。それゆえ,利益調整を行う経営者に

対してはなにかしらの罰則が科される可能性がある。Hazarika et al (2012)は米国企業を対象

として,利益調整を行う経営者ほど交代させられる可能性が高まることを理論的かつ実証

的に示している。

本研究の目的は日本企業を対象とした場合にも,利益調整を行う経営者ほど交代させら

れる確率が高まるのかを検証することにある。株主は経営者に経営を一任したのち,取締役

会に経営者の監視を依頼する。このため,取締役会には経営者を選定および解職する権限が

与えられており,経営者が株主の富を毀損する行動をとる場合にはその者を交代させる役

割を担う(Hermalin and Weisbach, 2003; 齋藤, 2011)。Hazarika et al (2012)が分析の対象とす

る米国では,経営者を監視する役割を担う取締役の指名において,多くの企業が独立の委員

会を設置するなどしてその選任プロセスから経営者の影響力の排除が図られている

(Gordon, 2007)。このように,米国企業には取締役会が経営者を適切に監視する環境が整っ

ているために,経営者が会計利益を意図的に調整した場合,取締役会は当該経営者を交代さ

せる可能性がある。

これに対して,日本ではほとんどの企業において取締役の指名を行う独立の委員会が存

在しておらず,経営者が取締役の選任に大きな影響を及ぼしていることが指摘されている

(内田, 2012; 宮島・小川, 2012)。その結果,たとえ利益調整が行われていたとしても,経

営者を交代するといった意思決定が下されることは稀かもしれない。一方,2000 年以降,

株式相互持ち合いの解消と海外機関投資家の買い増しが進み,株主による直接的な圧力が

増したことで,株主の富を毀損するような経営者は交代させられるようになっているとの

報告もある(Miyajima et al., 2018)。そのため,経営者が利益調整を行っていることが判明し

た場合には,株主からの退任圧力が強まる可能性もある。このように,日本企業を対象とし

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た場合には,経営者交代と利益調整行動との関係は実証課題であるといえる。

本研究の構成は次の通りである。第 2 節では,先行研究を整理し,本研究の仮説を提示す

る。第 3 節では,リサーチ・デザインとサンプルについて説明する。第 4 節では,分析結果

を報告する。第 5 節では頑健性分析,第 6 節では追加分析を行う。第 7 節は本研究のまとめ

である。

2 先行研究と仮説構築

これまで研究からは,経営者は私的な便益を得るために,会計利益を意図的に調整するこ

とが指摘されている。たとえば,より多くの報酬を得るために利益増加型の利益調整を行う

こと(Balsam, 1998; Bergstresser and Philippon, 2006; Cornett et al., 2008; Healy, 1985; Holthausen

et al., 1995; Shuto, 2007),あるいは財務的な健全性が芳しくない場合に自社の財政状態をよ

く見せようと会計利益を意図的に増加させることが報告されている(DeFond and Jiambalvo,

1994; Dichev and Skinner, 2002; Sweeney, 1994)。また,のちの成長を演出する目的で利益減少

型の利益調整を行うことも確認されている(Murphy and Zimmerman, 1993; Pourciau, 1993; 山

口, 2013)。

一方で,経営者による利益調整は株主にコストをもたらす。経営者が会計利益を調整する

ことによって受け取れる報酬額を裁量的に変更することができるのであれば,努力水準に

関係なく報酬額を受け取ることができるようになる。経営者の努力水準が高くなるほど企

業業績が高くなる一方で,経営者にはそれ相応のコストの負担が強いられることを加味す

ると,経営者の努力水準と報酬額が連動しなくなれば,株主の富を創造するような行動は選

択され難くなるかもしれない(Paul, 1992; 小西・齋木, 2004)。また,調整された会計利益に

もとづいて企業の財務的な健全性や成長性が評価されれば,株主は企業の経済実態を見誤

ることになり,投資資金を回収するタイミングが遅れるようになる(Kubota et al., 2010; Xie,

2001)。そのため,株主は他の有望な投資機会を逃すとことになり,結果として大きなコス

トを負うこととなる。

このように利益調整は株主にとってコストになるため,利益調整を行う経営者に対して

はなにかしらの罰則が科される可能性がある。Hazarika et al (2012)は米国企業を対象として,

裁量的会計発生高の絶対値が大きい企業ほど,経営者が交代させられる可能性が高まるこ

とを理論的かつ実証的に示しており,先の見解と整合した結果を報告している。しかしなが

ら,日本と米国では制度的な違いが存在するため,Hazarika et al (2012)の検証結果を日本企

業にも一般化可能であるかには議論の余地がある。株主は経営者に経営を一任したのち,取

締役会に経営者の監視を依頼する。このため,取締役会には株主の富を毀損するような行動

をとる経営者を交代させる権限が与えられている(Hermalin and Weisbach, 2003; 齋藤, 2011)。

ただし,取締役会が実際にその権限を行使できるかについては日本と米国では状況が異な

る。

米国では,経営者を監視する役割を担う取締役の指名において,独立の委員会を設置する

などしてその選任プロセスから経営者の影響力の排除が図られている(Gordon, 2007)。たと

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えば,Shivdasani and Yermack (1999)は,1994 年時点で Fortune500 に含まれている企業を調

査したところ,その 77.5%において指名委員会が設けられていることを確認している。さら

に,ニューヨーク証券取引所が 2003 年に公表した「上場規則」(NYSE Listed Company Manual)

の中では,独立社外取締役のみで構成された指名委員会を設立することが上場企業に義務

付けられている。このように,米国では取締役の指名において経営者の影響力の排除が図ら

れているため,取締役会は高い独立性を保ちながら,経営者を監視することができる。その

ため,経営者が私的な利益を得るために利益調整を行った場合には,取締役会が当該経営者

を交代する可能性がある。

これに対して,日本ではほとんどの企業において取締役の指名を行う独立の委員会が設

けられていない。会社法上,公開会社は監査役会設置会社あるいは委員会設置会社のいずれ

かの形態をとることになるが 1),上場企業の大部分を占める監査役会設置会社では独立の指

名委員会を設けることが義務付けられていない。また,指名委員会の設置が義務となってい

る委員会設置会社においても,大半の企業で指名委員会の委員として経営者が名を連ねて

いるのが現状である(齋藤, 2011)。このため,経営者が取締役の選任に大きな影響を及ぼし

ていることが指摘されている(内田, 2012; 宮島・小川, 2012)。このような状況においては,

取締役会の構成員は実質的に経営者に選ばれた者になるため,取締役会の独立性は低下し,

経営者が株主の富を毀損するような行動をとる場合でも,当該経営者が交代させられるこ

とは稀かもしれない 2)。

他方,近年の研究からは,日本でも株主の富を毀損するような行動をとる経営者は交代さ

せられる可能性が高まることが報告されている。Miyajima et al. (2018)は東証第 1 部上場企

業を対象に,自己資本利益率が低い企業の経営者ほどが交代させられる確率がまること,ま

たその関係は年々強くなっていることを確認している。こうした結果が得られた背景につ

いて,Miyajima et al. (2018)は株式所有構造の変化を挙げている。すなわち,2000 年以降,

株式相互持ち合いの解消が進み,物言わぬ株主が減少する中で,日本株の買い増しを進めて

きた海外機関投資家が議決権行使やエンゲージメントを通じて,株主の富を毀損するよう

な行動をとる経営者に対し直接的に退任圧力をかける構造が生まれたと考えられる 3)。実際

に,Miyajima et al. (2018)は経営者交代と自己資本利益率との関係が海外機関投資家持株比

率の高低に応じて変化することを示している。

ここまでの議論をまとめると次の通りである。経営者は私的な便益を得るために利益調

整を行う動機を有しているが,そうした行動は株主にとって大きなコストをもたらすこと

になる。そのため,会計利益を意図的に調整する経営者は交代させられる可能性がある。た

だし,日本では経営者を監視する役割を担う取締役の指名において経営者が大きな影響力

を有しているため,取締役会の独立性は低下し,利益調整を行ったとしても経営者が交代さ

せられる可能性は低いかもしれない。他方,株式相互持ち合いの解消が進む一方で,海外機

関投資家の日本株買いが増加している近年の状況を踏まえると,利益調整を行う経営者に

対しては株主から直接的に退任圧力がかけられる可能性がある。このように日本において

は,経営者交代と利益調整行動との関係は実証課題であるため,本研究は帰無仮説の形で仮

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説の構築を行う。

仮説:利益調整の大きさと経営者交代の確率との間には関係がない。

3 リサーチ・デザイン

3.1 経営者交代

日本では社長の役職に就く者が取締役会において最も強い権限を有しており,それゆえ

社長の肩書を持つ者が会社の最高責任者として広く認知されている(Kaplan, 1994)。そこで,

社長を経営者と定義した上で,経営者交代の変数(TURNi,t+1)を作成する。TURNi,t+1 は t+1

期に経営者が新たな者に代わっていれば 1,続投していれば 0 をとるダミーである。なお,

経営者交代に関する研究には,経営者交代を通常の交代と強制的な交代とに区分したうえ

で検証を行っているものも存在するが(Kaplan, 1994),本研究ではこうした区分を行ってい

ない。これは,通常の交代と強制的な交代とを区分すること自体が非常に困難であり,これ

らを区分することによる測定誤差の問題は深刻なためである(Kaplan and Minton, 2012)。た

だし,頑健性分析において通常の交代と強制的な交代とを区分する検証も行っており,主分

析と整合的な結果が得られている。

3.2 裁量的会計発生高

本研究は Hazarika et al (2012)と同様に,利益調整行動の代理変数として裁量的会計発生高

の絶対値を用いる。ただし,これまでの研究からは,企業業績が悪化している企業ほど裁量

的会計発生高は負の方向に大きな値をとることが指摘されているため(Kothari et al., 2005),

企業業績と裁量的会計発生高の絶対値には負の関係が生じる可能性がある。他方,経営者が

交代させられる確率は企業業績が悪化するほど高くなる(Hazarika et al, 2012; Kaplan and

Minton, 2012; Miyajima et al., 2018)。そのため,企業業績が裁量的会計発生高に及ぼすバイア

スをコントロールしない限り,裁量的会計発生高の絶対値と経営者交代との間には見かけ

上の正の相関が生じる可能性がある。そこで,本研究は Kothari et al. (2005)に倣い,企業業

績の影響をコントロールした上で,裁量的会計発生高の推計を行う。具体的な推計方法は以

下の通りである

まず,Dechow et al. (1995)が考案したモデルを推定し,残差を得る。具体的には,サンプ

ル・サイズが 15 企業・年以上ある産業・年を対象として,産業・年ごとに(1)式の線形モデ

ルを最小二乗法により推定し,残差(εi,t)を求める。なお,産業区分には東証業種 33 分類

を採用する。ここで,TACi,tは t 期会計発生高(= t 期当期純利益 − t 期営業キャッシュフロ

ー),ΔADJREVi,t は t 期修正済売上高変化額(= t 期売上高変化額 − t 期売上債権変化額),

PPEi,tは t 期末総有形固定資産(= t 期末有形固定資産 + t 期末減価償却累計額),Ai,t−1 は t−1

期末総資産である。次に,(1)式の推定から得られた εi,tから同一産業・年において総資産利

益率が最も近い企業の εi,tを引き,裁量的会計発生高(DACi,t)を算出する。そして,その値

の絶対値を利益調整の代理変数(|DACi,t|)とする。|DACi,t|が正に大きな値をとるほど,t 期

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に大きな利益調整が行われていることを意味する。

(TACi,t/Ai,t−1) = β0 + β1(1/Ai,t−1) + β2(ΔADJREVi,t/Ai,t−1) + β3(PPEi,t/Ai,t−1) + εi,t, (1)

3.3 分析モデル

先述した仮説を検証するために,本研究は(2)式の二項プロビット・モデルを最尤法によ

り推定する。被説明変数は TURNi,t+1 である。説明変数のうち本研究が関心を寄せるのは

|DACi,t|である。|DACi,t|の係数が有意な正の値をとる場合,日本企業においても会計利益を意

図的に調整する経営者ほど交代させられる確率が高いことを意味する。なお,(2)式からわ

かる通り,被説明変数と説明変数との間には 1 期間のラグを置いている。このようなモデル

を構築している理由としては,t 期の裁量的会計発生高の絶対値の大きさにもとづいて経営

者が利益調整を行っているかどうかの判断が行われ,利益調整が行われている場合には t+1

期に経営者を交代させるか否かの意思決定が下されることを想定しているためである。

TURNi,t+1 = β0 + β1|DACi,t| + β2OCFi,t + β3ADJRETi,t + β4INDRETi,t + β5GROWTHi,t

+ β6STDRETi,t + β7SIZEi,t + β8MTBi,t + β9LEVi,t + β10TENUREi,t + β11AGEi,t

+ β12OWNi,t + β13OUTi,t + β14CORSSi,t + YEAR + INDUSTRY + εi,t+1, (2)

Hazarika et al (2012)を参考に,(2)式にはいくつかのコントロール変数を組み込んでいる。

第 1 に,企業業績に関する変数である。先行研究では,経営者交代は営業キャッシュフロー

や株式リターンと負の関係があることが報告されているため(Hazarika et al, 2012; Kaplan and

Minton, 2012; Miyajima et al., 2018),営業キャッシュフロー(OCFi,t),産業調整済株式リター

ン(ADJRETi,t),産業平均株式リターン(INDRETi,t)を組み込む。また,日本では売上高成

長率が経営指標として重視されており,売上高成長率が低い企業の経営者ほど交代させら

れる確率が高いことが報告されているゆえ(Abe, 1997; Kaplan, 1994),売上高成長率

(GROWTHi,t)も含める。その他,極端な株式リターンの変動は経営者交代の確率を高める

ことが示されているため(DeFond and Park, 1999),株式リターンの標準偏差(STDRETi,t)を

コントロールする。

第 2 に,企業特性に関する変数である。1 つ目は企業規模である。先行研究では,企業規

模と経営者交代との間には正の関係が存在することが確認されている(Huson et al., 2001)。

これは,規模の大きい企業ほど内部昇進プロセスが確立されているゆえ,経営者交代が起き

やすいためである。2 つ目は成長機会である。成長機会に乏しい企業ほど,将来成長する見

込みがないため,経営者が交代させられる確率は高まる可能性が高いと予想される

(Hazarika et al, 2012)。3 つ目は負債比率である。負債比率が高いほど,倒産する可能性が

高く,企業業績の極端な悪化を招きかねないため,経営者が交代させられる可能性が高まる

と考えられる(Gilson, 1989)。これらの点を踏まえて,コントロール変数として,企業規模

(SIZEi,t),成長機会(MTBi,t),負債比率(LEVi,t)の 3 つの企業特性を(2)式に組み込んでい

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る。

第 3 に,経営者特性の変数である。Hazarika et al (2012)では経営者特性はコントロールさ

れていないが,これまでの研究からは経営者の特性がその者の交代に影響を与えることが

確認されている。たとえば,日本企業には 4 年あるいは 6 年の任期を終えると,経営者は任

期満了となり退任するといった慣習が存在する(田中・守島, 2004)。そこで,経営者の在任

年数が 4 年あるいは 6 年であることを示すダミー(TENUREi,t)を含める。また,先行研究

からは経営者の年齢と交代の確率との間には正の関係があることが報告されているため

(Goyal and Park, 2002),経営者の年齢(AGEi,t)を組み込む。最後に,経営者持株比率であ

る。経営者が多くの株式を保有していると,株主からの圧力を受けにくくなるため,経営者

が交代させられる可能性は低下すると考えられる(Denis et al., 1997)。そこで,本研究は経

営者持株比率(OWNi,t)をコントロールする。

第 4 に,コーポレートガバナンスに関する変数である。1 つ目は,社外取締役比率(OUTi,t)

である。取締役会の独立性が高い企業ほど取締役会の監視機能が強くなるため,機会主義的

な行動を行う経営者が交代させられる確率は高まると考えられる(Weisbach, 1988)。2 つ目

は,株式持合比率(CROSSi,t)である。米国企業を分析の対象とする Hazarika et al (2012)で

は,株式持合比率はコントロールされていない。しかし,日本では株式相互持ち合いの解消

が進む中で,海外機関投資家の日本株買いが増加したことによって,株主が経営者に対して

直接的に退任圧力をかける構造が生まれたことが指摘されている(Miyajima et al., 2018)。

なお,Hazarika et al (2012)は経営者が取締役会の議長を務めているかを示すダミーやガバナ

ンス・インデックスをコントロールしているが,本研究ではこれらのデータを入手できない

ため,分析モデルに含めていない。

この他に,年固定効果(YEAR)と産業固定効果(INDUSTRY)をコントロールする。

INDUSTRY の作成にあたっては東証業種 33 分類にもとづいて産業を分類する。各変数の詳

細な定義については付録を参照してほしい。なお,仮説の検証にあたっては,ダミーを除く

すべての変数について,各年で上下 1%のウィンソライズを施している。ただし,|DACi,t|に

ついては絶対値をとる前の値である DACi,t にもとづいてウィンソライズを行い,そのあと

に絶対値をとっている。また,p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な標準誤差に

もとづいて算出している(Petersen, 2009)。

3.4 サンプル

本研究のサンプルは 2005 年から 2013 年までの次の条件を満たす企業である。(1)日本の

株式市場に上場している企業,(2)決算月数が 12 カ月である企業,(3)日本基準にもとづいて

財務諸表を作成している企業,(4)金融業に該当しない企業,(5)分析に用いる変数がすべて

入手可能な企業である。なお,財務情報のデータについては連結財務諸表のデータが取得で

きる場合にはそちらを優先的に使用している。これらの条件を通して,18,069 企業・年をサ

ンプルとして抽出している。サンプルの抽出期間を 2005 年から 2013 年までとしているの

は,TURNi,t+1 や TENUREi,tを作成するのに必要なデータが当該期間しか入手できないためで

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ある。

本研究で使用する財務情報と株価のデータは NEEDS-FinancialQUEST,コーポレートガバ

ナンスに関するデータは NEEDS-Cges から入手している。また,経営者についてのデータ

は NEEDS-Cges および役員情報データベースから収集している。TURNi,t+1 および TENUREi,t

については,NEEDS-Cges に収録されている代表者の役職から社長の肩書を有するものを抽

出し,代表者就任日にもとづいてその者の在任年数を計算し,各変数を作成している。AGEi,t

とOWNi,tは,役員情報データベースに収録されている取締役の生年月日と持株数を用いて,

それぞれの変数を作成する。なお,各データベースは日本経済新聞社が提供しているもので

ある。

表 1 は記述統計量である。被説明変数である TURNi,tの平均値をみると,サンプルのうち

経営者が交代している企業の割合は 14.2%であることがわかる。東証第 1 部上場企業を分析

の対象としている Miyajima et al. (2018)からも,サンプルのうち経営者が交代している企業

の割合は 14.9%であることが示されており,本研究と整合的な結果が報告されている。次に,

説明変数のうち本研究が関心を寄せる|DACi,t|の平均値に目を向けると,本研究のサンプルは

平均的に期首総資産に対して 6.1%の利益調整を行っていることがわかる。

[表 1 を挿入]

表 2 は経営者が交代していない企業群(TURNi,t = 0)と交代している企業群(TURNi,t = 1)

とで,各説明変数の平均値と中央値を比較したものである。|DACi,t|の平均値と中央値のどち

らも経営者が交代している企業群の方が高く,またその差も 1%水準で有意であることが確

認できる。このことは,利益調整を行う経営者ほど交代させられる可能性が高いことを示し

ている。また,STDRETi,t,SIZEi,t,LEVi,t,TENUREi,t,AGEi,t,OUTi,t それぞれの平均値と中

央値は経営者が交代している企業群の方が有意に高いのに対して,OCFi,t,GROWTHi,t,

OWNi,t,CROSSi,t は経営者が交代している企業群の方が有意に低い。これらの検証結果は予

想と整合的である。

[表 2 を挿入]

4 検証結果

表 3 は(2)式を推定した結果である。なお,(2)式の推定を行うにあたり,説明変数に|DACi,t|

のみを含めたモデル,企業業績と企業特性に関するコントロール変数を含めたモデル,全て

のコントロール変数を含めたモデルのそれぞれを推計することにより,コントロール変数

を組み込むことで|DACi,t|の係数が変化しないかを確認する。|DACi,t|のみを含めた推定結果か

らは,|DACi,t|の係数は 1%水準で有意な正の値を示していることがわかる(列 A)。続いて,

企業業績と企業特性に関するコントロール変数を含めたところ,|DACi,t|の係数は依然として

1%水準で有意な正の値であることが確認できる(列 B)。最後に,全てのコントロール変数

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を含めて推計を行ったところ,|DACi,t|の係数は 1%水準で有意な正の値をとっていることが

明らかとなっている(列 C)。これらの分析結果は,経営者交代と利益調整の大きさとの間

には正の関係があることを示している。

次に,コントロール変数に関する結果に目を向ける。ここでは,全てのコントロール変数

を含めたうえで(2)式の推計を行った場合の分析結果に注目する(列 C)。係数が有意な正の

値をとっているのは,STDRETi,t,MTBi,t,TENUREi,t,AGEi,t,OUTi,tである。MTBi,tに関する

分析結果を除いては,すべて予想と整合的である。成長機会が豊富な企業では,成長機会を

選別し実行できるような高い能力を有する経営者に対する需要が高まる(Smith and Watts,

1992)。そのため,MTBi,t の係数は有意な正の値をとったのかもしれない。これに対して,

OCFi,t,ADJRETi,t,SIZEi,t,OWNi,t,CROSSi,tの係数は,有意な負の値を示している。SIZEi,tの

係数は予想と異なる結果となっている。SIZEi,t は AGEi,t,OWNi,t,CROSSi,t それぞれと強い相

関を有しているため,これらの変数を含めたことにより,多重共線性の問題が生じ,係数の

符号が反転したのかもしれない 4)。

[表 3 を挿入]

本研究はまた,利益調整の大きさに応じて経営者交代の確率がどの程度変化するのかを

調査するために,|DACi,t|の百分位数ごとの TURNi,t+1 の予測値を計算している。図 1 は計算

結果を図示したものである。なお,TURNi,t+1 の予測値の算出にあたっては,表 3 の列 C の

分析結果を用いており,コントロール変数に関しては各変数の平均値で固定している。

|DACi,t|の値が第 1 十分位数から第 9 十分位数まで変化した場合,TURNi,t+1 の予測値は 1.9%

ポイント変化している。これらの経済的な大きさを検討するために,OCFi,t と ADJRETi,t に

ついても同様の計算を行ったところ,第 1 十分位数から第 9 十分位数までの TURNi,t+1 の予

測値の変化はそれぞれ−2.2%ポイントと−2.8%ポイントであった。以上の分析結果から,利

益調整が経営者交代に与える影響は企業業績よりも小さいものの,相当程度の影響を及ぼ

しており,経済的にも大きいといえる。

[図 1 を挿入]

ここまでの分析結果をまとめると次の通りである。主分析の結果から,利益調整を行う経

営者ほど交代させられる確率は高まることが明らかとなっている。また,この分析結果は,

企業業績,企業特性,経営者特性,コーポレートガバナンスなど,経営者交代に影響を及ぼ

す様々な要因をコントロールした場合にも頑健である。さらに,利益調整が経営者交代に及

ぼす影響の大きさを調査したところ,企業業績が経営者交代に与える影響よりも小さいも

のの,相当程度の影響を及ぼしており,経済的にも大きいものであることを確認している。

これらの発見事項は,米国企業を対象に利益調整と経営者交代との関係を検証した Hazarika

et al (2012)と整合的であり,日本企業についても利益調整を行う経営者の交代確率は高くな

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ることを示している。

5 頑健性分析

5.1 経営者交代の区分方法

ここでは,分析結果の頑健性を確保するため,いくつかの分析を行う。まず,経営者交代

を通常の交代と強制的な交代に区分した分析を行う。先行研究の中には,一定期間経営者の

任を果たしたあとで任期満了のため経営者が退任する通常の交代と,株主の富を毀損する

ような行動が問題となって交代を余儀なくされる強制的な交代を区分した上で検証を行っ

ている研究も存在する(Hazarika et al, 2012; Huson et al., 2001; Kaplan, 1994; Miyajima et al.,

2018)。そこで,本研究も経営者交代を通常の交代と強制的な交代に区分し,利益調整行動

が通常の交代と強制的な交代それぞれとどのような関係を有するのかを検証する。経営者

による利益調整は株主に大きなコストをもたらすため,利益調整を行う経営者ほど強制的

に交代させられる可能性は高まるだろう。一方で,利益調整は通常の交代には影響を及ぼさ

ないと考えられる。

上述の分析を行うにあたって,本研究は TURNi,t+1 を強制交代ダミー(FORCEDi,t+1)と通

常交代ダミー(STANDARDi,t+1)それぞれに代えて,(2)式の推定を行う。本研究は Kaplan (1994)

に倣い,通常の交代と強制的な交代を区分している。日本企業では,社長の肩書を有してい

る者は一定の任期を終えると,通常,会長に就任し取締役会に残るといった慣行がある。そ

れゆえ,退任した経営者が会長に就任しないような交代は,経営者の意に沿わない強制的な

ものだと捉えられる。そこで,FORCEDi,t+1 を,t+1 期に経営者が新たな者に代わっており交

代した経営者が会長職に就いていない場合は 1,続投していれば 0 をとるダミーと定義す

る。また,STANDARDi,t+1 を,t+1 期に経営者が新たな者に代わっており交代した経営者が会

長職に就いている場合は 1,続投していれば 0 をとるダミーとする。

表 4 は上記の分析結果をまとめたものである。(2)式の TURNi,t+1 を FORCEDi,t+1 に代えた

場合の推定結果に目を向けると,|DACi,t|の係数は 1%水準で有意な正の値をとっていること

がわかる(列 A)。続いて,STANDARDi,t+1 を用いた場合の推定結果を見てみると,|DACi,t|の

係数は有意な値を示していないことが確認できる(列 B)。さらに,FORCEDi,t+1 と

STANDARDi,t+1 それぞれを用いて推定を行った場合の|DACi,t|の係数の大きさに統計的な差が

あるかを確認するために,カイ二乗検定を行ったところ,FORCEDi,t+1 を用いた場合の|DACi,t|

の係数は STANDARDi,t+1 を用いた場合よりも大きく,またその差は 5%水準で有意であるこ

とが明らかとなっている。以上の発見事項は,利益調整を行う経営者は強制的に交代させら

れる可能性が高まること示しており,強制的な交代と通常の交代に区分した場合にも分析

結果は頑健であるといえる。

[表 4 を挿入]

5.2 利益調整の推定方法

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続いて,異なる推定方法にもとづいて算出した裁量的会計発生高を用いた場合にも,分析

結果が頑健であるかどうかを確認する。1 つ目の代替的な推定方法は,Kasznik (1999)が考案

したモデルである。(3)式は,Kasznik (1999)が考案したモデルを示している。ここで,TACi,t,

ΔADJREVi,t,PPEi,t,Ai,t−1 の定義は(1)式と同様であり,ΔCFi,tは t 期営業キャッシュフロー変

化額である。本研究はサンプル・サイズが 15 企業・年以上ある産業・年を対象として,産

業・年ごとに(3)式の線形モデルを最小二乗法により推定している。なお,産業区分には東証

業種 33 分類を採用する。そして,(3)式の推定から得られた残差(εi,t)を裁量的会計発生高

(DAC_Ki,t)とし,その絶対値を利益調整行動の代理変数(|DAC_Ki,t|)とする。

(TACi,t/Ai,t−1) = β0 + β1(1/Ai,t−1) + β2(ΔADJREVi,t/Ai,t−1) + β3(PPEi,t/Ai,t−1) + β4(ΔCFi,t/Ai,t−1) + εi,t, (3)

2 つ目の推定方法は,McNichols (2002)のモデルである。具体的な推定方法は次の通りで

ある。まず,サンプル・サイズが 15 企業・年以上ある産業・年を対象として,産業・年ご

とに(4)式の線形モデルを最小二乗法により推定する。ここで,ΔWCi,t は t 期運転資本変化額

(= t 期流動資産変化額 − t 期流動負債変化額),CFi,t は t 期営業キャッシュフロー,ΔREVi,t

は t 期売上高変化額,Ai,t(Ai,t−2)は t 期末総資産(t−2 期末総資産)である。また,PPEi,tお

よび Ai,t−1 については(1)式の定義と同様である。続いて,(4)式を推定することによって得ら

れた残差(εi,t)を裁量的会計発生高(DAC_Mi,t)とする。そして,その絶対値を利益調整行

動の代理変数(|DAC_Mi,t|)として用いる。

(ΔWCi,t/Ai,t−1) = β0 + β1(CFi,t−1/Ai,t−2) + β2(CFi,t/Ai,t−1)

+ β3(CFi,t+1/Ai,t) + β4(ΔREVi,t/Ai,t−1) + β5(PPEi,t/Ai,t−1) + εi,t, (4)

表 5 は,|DACi,t|の代わりに,|DAC_Ki,t|と|DAC_Mi,t|それぞれを(2)式に組み込み推定を行っ

た結果をまとめたものである。説明変数として|DAC_Ki,t|を用いた場合には,|DAC_Ki,t|の係

数は 1%水準で有意な正の値であることが確認できる(列 A)。次に,|DACi,t|の代わりに

|DAC_Mi,t|を用いた場合の推定結果に目を向けると,|DAC_Mi,t|の係数は 1%水準で有意な正

の値であることが確認できる(列 B)。なお,表には掲載していないが,Dechow et al. (1995)

が考案したモデルである(1)式を最小二乗法により推定し,推定の結果から得られた残差の

絶対値を利益調整の代理変数として用いた場合にも,分析結果は頑健であることを確認し

ている。以上の分析結果から,本研究の発見事項は様々な利益調整の推定方法を用いた場合

にも頑健であるといえる。

[表 5 を挿入]

5.3 代替的な解釈

ここまでの分析から,利益調整を行う経営者ほど交代させられる可能性が高まることが

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確認されている。この検証結果は,利益調整は株主の富を毀損する可能性があるため,利益

調整を行う経営者は交代させられるという本研究の仮説と整合的であるが,別の解釈も成

り立つ可能性がある。たとえば,先行研究からは,利益調整は企業業績が悪化している場合

に行われることが報告されている(Murphy and Zimmerman, 1993; Pourciau, 1993; 山口, 2013)。

このことは,利益調整を行っている経営者は,その行動に対する罰則として交代させられた

わけではなく,企業業績の悪化を理由に交代させられた可能性があることを示している。

そこで,本研究は企業業績が良好な企業においても,悪化している企業と同様に,利益調

整を行っている経営者ほど交代させられる確率が高まるかどうかを検証する。具体的には,

|DACi,t|の代わりに,産業調整済株式リターンが 0 以上であれば 1 それ以外は 0 をとるダミ

ー(P_ADJRETi,t)と|DACi,t|の交差項(|DACi,t| × P_ADJRETi,t),および産業調整済株式リター

ンが 0 未満であれば 1 それ以外は 0 をとるダミー(N_ADJRETi,t)と|DACi,t|の交差項(|DACi,t|

× N_ADJRETi,t)を(2)式に組み込み,推定を行う。|DACi,t| × P_ADJRETi,tの係数が有意な正の

値であり,かつ|DACi,t| × N_ADJRETi,t の係数と有意な差がないのであれば,先に示した代替

的な仮説が成り立っている可能性は低いといえる。

表 6 は,上記の分析結果を示している。推定結果を見てみると,|DACi,t| × P_ADJRETi,tの

係数は 1%水準で有意な正の値をとっていることがわかる。さらに,カイ二乗検定を用いて,

|DACi,t| × P_ADJRETi,tと|DACi,t| × N_ADJRETi,tの係数に有意な差があるかを検証したところ,

|DACi,t| × P_ADJRETi,t と|DACi,t| × N_ADJRETi,t の係数に有意な差はないといった帰無仮説は

棄却されない。上の分析結果から,企業業績が良好な企業についても,経営者交代と裁量的

会計発生高の絶対値との間には正の関係があることが示されており,本研究の分析結果に

ついて代替的な解釈が成り立つ可能性は低いといえる。

[表 6 を挿入]

5.4 符号付裁量的会計発生高

次に,裁量的会計発生高の符号を考慮した分析を行う。これまでの研究では,多くの場合,

経営者は私的な便益のために利益増加型の利益調整を行うことが報告されている(Balsam,

1998; Bergstresser and Philippon, 2006; Cornett et al., 2008; Healy, 1985; Holthausen et al., 1995;

Shuto, 2007)。一方で,先行研究の中には,のちの成長を演出する目的で利益減少型の利益

調整が行われる場合もあることが指摘されている(Murphy and Zimmerman, 1993; Pourciau,

1993; 山口, 2013)。そこで,どちらの利益調整を行った場合にも,経営者が交代させられる

確率が高まるのか,また双方の利益調整を用いた場合の交代確率に差はあるのかどうかを

検証する。

具体的には,裁量的会計発生高が正の値をとる企業と負の値をとる企業とで,経営者交代

と裁量的会計発生高の絶対値との関係が変化するかを検証する。ここでは|DACi,t|に代えて,

裁量的会計発生高が 0 以上であれば 1 それ以外は 0 をとるダミー(P_DACi,t)と|DACi,t|の交

差項(|DACi,t| × P_DACi,t),および裁量的会計発生高が 0 未満であれば 1 それ以外は 0 をと

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るダミー(N_DACi,t)と|DACi,t|の交差項(|DACi,t| × N_DACi,t)を(2)式に組み込み,推定を行

う。|DACi,t| × P_DACi,tと|DACi,t| × N_DACi,tの係数がともに有意な正の値であり,かつ双方の

係数に有意な差がないのであれば,利益増加型の利益調整を行った場合だけでなく,利益減

少型の利益調整を行った場合にも経営者は交代させられる可能性が高まるといえる。

表 7 は,上記の分析結果である。表から,|DACi,t| × P_DACi,tの係数が 5%水準で有意な正

の値を示しているだけなく,|DACi,t| × N_DACi,tの係数も 1%水準で有意な正の値であること

が確認できる。さらに,|DACi,t| × P_DACi,tと|DACi,t| × N_DACi,t の係数に有意な差があるかを

分析したところ,|DACi,t| × P_DACi,tと|DACi,t| × N_DACi,tの係数に差はないという帰無仮説は

棄却されないことが明らかとなっている。以上の分析結果から,裁量的会計発生高が正の値

と負の値どちらをとる場合でも,経営者交代と裁量的会計発生高の絶対値との間には正の

関係があり,またその関係は裁量的会計発生高の符号を考慮しても変化しないといえる。経

営者は利益増加型の利益調整だけでなく利益減少型の利益調整を行った場合にも,交代さ

せられる可能性がある。

[表 7 を挿入]

5.5 内生性

(2)式の推定を行うにあたって,本研究は企業業績,企業特性,経営者特性,コーポレート

ガバナンスなど経営者交代に影響を及ぼすと考えられる様々な要因をコントロールしてい

る。ただし,これらの変数は観察可能な要因のみから構成されており,組織構造,組織文化,

慣習など観察不可能な要因についてはコントロール変数として(2)式には含まれていない。

仮にこうした要因が経営者交代の発生確率だけでなく,利益調整行動にも影響を及ぼすの

であれば,本研究の検証結果は内生性の問題を孕んでいることになる。そこで,こうした内

生性の問題に対応するために,二段階最小二乗法を用いた分析を行う。

本研究は Hazarika et al (2012)に倣い,操作変数として,経営環境の不確実性を表す変数で

ある総資産利益率の標準偏差(STDROAi,t)と特別損益の合計(SPi,t)を用いる。STDROAi,tは

t 期における過去 5 年間の総資産利益率の標準偏差,SPi,t は t 期の特別利益と t 期の特別損

失の和を t 期末の総資産で除した値である。経営環境が不確実な企業では,将来のキャッシ

ュフローを予測することが困難になるため,会計発生高の推定に大きな誤差が伴う可能性

がある(Dechow and Dichev, 2002)。他方,経営環境の不確実性は経営者のコントロールでき

る要因ではないため,経営者交代には直接的に影響を与えるものではない(Lee et al., 2012)。

そのため,STDROAi,tと SPi,tは操作変数の条件を満たしていると考えられる。

表 8 は,二段階最小二乗法を用いた分析結果である。1 段階目の推定結果を見ると,

STDROAi,t と SPi,t の係数は 1%水準で有意な正の値をとっていることがわかる(列 A)。2 段

階目の分析結果に注目すると,|DACi,t|の係数は 1%水準で有意な正の値であることが確認で

きる(列 B)。なお,Anderson 正準相関尤度比検定と Sargan 検定を用いて STDROAi,t と SPi,t

が操作変数として機能するための条件を満たすかを調査したところ,Anderson 正準相関尤

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度比統計量は有意な値であることから,操作変数と説明変数が無相関であるという帰無仮

説は棄却される。他方,Sargan 統計量は有意な値ではないことから,操作変数と誤差項が無

相関であるという帰無仮説は棄却されない。このことから,STDROAi,tと SPi,tは操作変数と

しての条件を満たしているといえる。

[表 8 を挿入]

6 追加分析

6.1 社外取締役比率と株式持合比率の影響

本研究は追加的に,経営者交代と利益調整行動との関係が社外取締役比率や株式持合比

率に応じて変化するかを検証する。株主は経営者に経営を一任したのち,取締役会に経営者

の監視を依頼する。このため,取締役会には機会主義的な行動をとる経営者を交代させる権

限が与えられている(Hermalin and Weisbach, 2003; 齋藤, 2011)。ただし,日本ではほとんど

の企業において取締役の指名を行う独立の委員会が存在しておらず,経営者が取締役の選

任に大きな影響を及ぼしていることが指摘されている(内田, 2012; 宮島・小川, 2012)。こ

れは,取締役会の独立性を高めるとされる社外取締役の指名についても同様であり,その結

果,日本では経営者交代の意思決定において社外取締役が適切に機能していない可能性が

ある(宮島・小川, 2012)。そこで,社外取締役比率の高低に応じて,経営者交代と利益調整

行動との関係が変化するかを確認する。

他方で,2000 年以降,株式相互持ち合いの解消と海外機関投資家の買い増しが進み,株

主による直接的な圧力が増したことで,株主の富を毀損するような経営者は交代させられ

るようになっているとの報告もある。たとえば,Miyajima et al. (2018)は海外機関投資家持株

比率が高い企業の経営者ほど自己資本利益率が低くなると交代させられる確率が高くなる

ことを報告している。仮にこの見解が正しいのであれば,株式相互持ち合いの解消が進み,

物言わぬ株主が増加している企業の経営者ほど,利益調整を行った場合に交代させられる

可能性が高くなると予想される。そこで,株主による直接的な退任圧力が強くなる企業ほど

経営者交代と利益調整行動との関係性が強くなるかを検証する。なお,海外機関投資家持株

比率のデータが入手できないため,本研究では株式持合比率に焦点を当てた分析を行う。

社外取締役比率の高低に応じて利益調整行動と経営者交代との関係が変化するかを検証

するために,|DACi,t|に代えて,社外取締役比率がサンプルの中央値以上であれば 1 それ以外

は 0 をとるダミー(H_OUTi,t)と|DACi,t|の交差項(|DACi,t| × H_OUTi,t),および社外取締役比

率がサンプルの中央値未満であれば 1 それ以外は 0 をとるダミー(L_OUTi,t)と|DACi,t|の交

差項(|DACi,t| × L_OUTi,t)を(2)式に組み込み,推定を行う。本研究が関心を寄せるのは|DACi,t|

× H_OUTi,tと|DACi,t| × L_OUTi,tの係数である。|DACi,t| × H_OUTi,tと|DACi,t| × L_OUTi,tの係数

に有意な差がないのであれば,社外取締役比率の高低に応じて経営者交代と利益調整行動

との関係が変化するとはいえないことを意味しており,日本では社外取締役が利益調整を

行う経営者に対して適切に機能していない可能性があることを示している。

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次に,(2)式の|DACi,t|に代えて,株式持合比率がサンプルの中央値以上であれば 1 それ以

外は 0 をとるダミー(H_CROSSi,t)と|DACi,t|の交差項(|DACi,t| × H_CROSSi,t),および株式持

合比率がサンプルの中央値未満であれば 1 それ以外は 0 をとるダミー(L_CROSSi,t)と|DACi,t|

の交差項(|DACi,t| × L_CROSSi,t)を組み込むことによって,株式持合比率の高低に応じて経

営者交代と利益調整行動との関係が変化するかを検証する。本研究が関心を寄せるのは

|DACi,t| × L_CROSSi,tの係数である。|DACi,t| × L_CROSSi,tの係数が有意な正の値をとり,かつ

|DACi,t| × H_CROSSi,tの係数との間に有意な差があるのであれば,株式持合比率が低い企業の

経営者ほど利益調整を行った場合に交代させられること,すなわち日本では株主による直

接的な圧力により利益調整を行う経営者が交代させられる可能性があることを示している。

表 9 は,上記の分析結果をまとめたものである。|DACi,t|に代えて,|DACi,t| × H_OUTi,t と

|DACi,t| × L_OUTi,tを用いて推定を行った場合,|DACi,t| × H_OUTi,tと|DACi,t| × L_OUTi,tの係数

はともに 1%水準で有意な正の値をとっていること,および|DACi,t| × H_OUTi,t と|DACi,t| ×

L_OUTi,tの係数には統計的な差がないことが確認できる(列 A)。続いて,|DACi,t| × H_CROSSi,t

と|DACi,t| × L_CROSSi,tを用いて推定を行った結果に目を向けると,|DACi,t| × L_CROSSi,tの係

数は 1%水準で有意な正の値であり,また|DACi,t| × H_CROSSi,t の係数との差は 1%水準で有

意な値をとっていることがわかる(列 B)。以上の発見事項は,株式持合比率が低い企業の

経営者ほど利益調整を行った場合に交代させられる確率が高まること,すなわち日本にお

いては利益調整を行う経営者に対して株主が直接的な圧力をかけることによって退任圧力

が強まることを示している。

[表 9 を挿入]

6.2 経営者交代前後の企業業績の変化と利益調整行動の変化

最後に,利益調整を行った経営者を交代させることは効率的なものであるか否かの検証

を行う。本研究は,経営者による利益調整は株主にとってコストを伴うものだと想定し,そ

れゆえ利益調整を行う経営者ほど株主からの退任圧力が強くなると予想している。他方で,

先行研究の中には,情報優位にある経営者が自社の将来業績を企業外部者に伝達するため

に利益調整を行っていると指摘するものもある(Subramanyam, 1996; Tucker and Zarowin,

2006)。このように利益調整がシグナリングを目的として行われているのであれば,利益調

整を行った経営者を交代させることは非効率的なものである可能性もある。そこで,大きな

利益調整を行う者からあまり行わない者に経営者が交代した場合,企業業績がどのように

変化するかを分析する。利益調整行動にもとづく経営者交代が効率的なものであるのであ

れば,その後の企業業績は改善するだろう。

上記の分析を行うために,サンプルを t 期から t+1 期に経営者が交代した企業群(TURNi,t+1

= 1)に限定した上で,(5)式の線形モデルを最小二乗法により推定する。(5)式の被説明変数

は産業調整済総資産利益率の変化(ΔADJROAi,t+3)あるいは産業調整済総資産営業キャッシ

ュフロー比率の変化(ΔADJOCFi,t+3)である。ΔADJROAi,t+3 は t 期から t+3 期にかけての産業

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調整済総資産利益率の変化,ΔADJOCFi,t+3 は t 期から t+3 期にかけての産業調整済総資産営

業キャッシュフロー比率の変化である。ΔADJROAi,t+3 と ΔADJOCFi,t+3 はともに正の方向に大

きな値をとるほど企業業績が改善することを意味する。説明変数のうち関心のある変数は

Δ|DACi,t+1|である。Δ|DACi,t+1|は t 期から t+1 期にかけての裁量的会計発生高の絶対値の変化

であり,負の方向に大きな値をとるほど利益調整が行われなくなったことを意味する。

ΔADJROAi,t+3 (or ΔADJOCFi,t+3) = β0 + β1Δ|DACi,t+1| + β2ΔOCFi,t+1 + β3ΔADJRETi,t+1

+ β4INDRETi,t+1 + β6ΔSTDRETi,t+1 + β7ΔGROWTHi,t+1

+ β8ΔSIZEi,t+1 + β9ΔMTBi,t+1 + β10ΔLEVi,t+1 + YEAR + INDUSTRY + εi,t+3, (5)

(5)式には,いくつかのコントロール変数を含めている。ひとつは,企業業績の変化であ

る。業績を悪化させた者から改善させた者に経営者が交代した場合,その後の企業業績はよ

り良くなる可能性がある(Demerjian et al., 2012)。そこで,営業キャッシュフローの変化

(ΔOCFi,t+1),産業調整済株式リターンの変化(ΔADJRETi,t+1),産業平均株式リターンの変化

(ΔINDRETi,t+1),売上成長率の変化(ΔGROWTHi,t+1),株式リターンの標準偏差の変化

(ΔSTDRETi,t+1)を組み込む。もうひとつは,企業特性である。企業特性は将来の企業業績

に大きな影響を及ぼす(Fama and French, 1995)。そのため,本研究では,企業規模の変化

(ΔSIZEi,t+1),成長機会の変化(ΔMTBi,t+1),負債比率の変化(ΔLEVi,t+1)を組み込む。この他

に,YEAR と INDUSTRY をコントロールする。YEAR と INDUSTRY の定義は(2)式と同じであ

る。

表 10 は,(5)式の推定結果である。被説明変数に ΔADJROAi,t+3 を用いた推定結果に目を向

けると,Δ|DACi,t+1|の係数は 5%水準で有意な負の値をとっていることが確認できる(列 A)。

この分析結果は,大きな利益調整を行う者からあまり行わない者に経営者が交代した場合,

将来期間にわたって産業調整済総資産利益率が改善することを示している。続いて,

ΔADJOCFi,t+3 を被説明変数とした推定結果を見ると,Δ|DACi,t+1|の係数は 5%水準で有意な負

の値であることがわかる(列 B)。大きな利益調整を行う者からあまり行わない者に経営者

が交代した場合,産業調整済総資産営業キャッシュフロー比率は改善する傾向にある。以上

の結果から,利益調整を行う経営者を交代させることによって,将来の会計利益だけでなく

キャッシュフローも改善することが明らかとなっており,利益調整行動にもとづく経営者

交代は効率的なものであるといえる。

[表 10 を挿入]

7 おわりに

本研究は,日本企業を対象として,経営者交代と利益調整行動との関係を検証している。

利益調整行動の代理変数として,裁量的会計発生高の絶対値を用いて分析を行ったところ,

次の検証結果が得られている。第 1 に,利益調整を行っている経営者ほど交代させられる確

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率が高いことが確認されている。第 2 に,経営者交代と利益調整行動との関係は社外取締役

比率の高低に応じては変化しないことがわかっている。第 3 に,株式持合比率が低いほど経

営者交代と利益調整行動の関係は強くなることが示されている。第 4 に,経営者が利益調整

を行わない者に交代した場合,将来の企業業績が改善することが明らかとなっている。これ

らの発見事項は,利益調整を行う経営者には交代といった罰則が科される可能性があるこ

と,利益調整を行う経営者が交代させられるためには株主による直接的な圧力が必要であ

ること,さらに利益調整を行う経営者を交代させることは効率的なものであることを示唆

している。

本研究には大きく 2 つの貢献がある。ひとつは,日本企業をサンプルとした場合にも,経

営者交代と利益調整行動との間に一定の関係があることを示したうえで,そうした関係が

生まれた要因を明らかにした点である。Hazarika et al (2012)は米国企業を対象に経営者交代

と利益調整行動との間には正の関係があることを報告している。しかし,日本では米国とは

異なり,ほとんどの企業において取締役会が経営者を適切に監視する環境が整備されてい

ない。他方,2000 年以降,株式相互持ち合いの解消が進む一方,海外機関投資家が日本株

の買い増しを進めたことにより,株主が直接的に経営者に対し退任圧力をかける環境が生

まれた。本研究はこうした株主構造の変化によって,機会主義的な行動をとる経営者に対し

て直接的に退任圧力がかかるようになったため,利益調整を行う経営者ほど交代させられ

る確率が高くなる傾向にあると推察しており,上記の見解と整合的な結果を得ている。

もうひとつは,利益調整を行う経営者ほど交代させられる確率が高くなるだけでなく,利

益調整を行う経営者を交代させることが効率的なものであることを示した点である。

Hazarika et al (2012)は,利益調整行動が経営者交代の意思決定に影響を及ぼすことを示した

点で新規性に富むものであるが,実際に経営者の利益調整行動にもとづいてなされた交代

が効率的なものであるかどうか,すなわち将来の企業業績を改善させるものであるか否か

については明らかにされていない。仮に経営者による利益調整が株主にとってコストを伴

うものであるならば,利益調整を行う経営者を交代させることは将来の企業業績を改善す

るものであると予想される。本研究は大きな利益調整を行う者からあまり利益調整を行わ

ない者に経営者が交代した場合,将来業績が改善することを示すことによって,Hazarika et

al (2012)の発見事項を補完している。

1) 2014 年に改正された会社法では,監査等委員会設置会社の形態をとることが認められている。監査等委

員会設置会社とは,監査役会に代わって過半数の社外取締役を含む取締役 3 名以上で構成される監査等

委員会が,取締役の職務執行の監視を担うものである。また,この改正に伴い,委員会設置会社は指名

委員会等設置会社に名称変更している。 2) 日本企業の中には取締役の構成員として社外取締役を採用し,取締役会の独立性を高めようとしている

企業も存在している。しかし,取締役を指名する独立の委員会が存在しない,あるいは存在していたと

しても経営者がその選定過程に介入できる余地があるため,社外取締役の指名についても経営者は大き

な影響力を有していると考えられる。その結果,日本企業では経営者交代の意思決定において社外取締

役が適切に機能していない可能性がある。宮島・小川(2012)では,独立社外取締役の有無や人数,あるい

は取締役会に占める比率によって,総資産利益率と経営者交代との関係は変化しないことが示されてお

り,上記の見解と整合的な結果が報告されている。 3) 日本企業の株式所有構造の変遷を調査している宮島・新田(2011)は,1987 年に 15.1%であった株式持合比

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率が 2008 年には 9.0%まで減少している一方で,同時期の海外機関投資家持株比率は 3.3%から 11.7%ま

で増加していることを報告している。また,Miyajima et al.(2018)では,1990 年から 2013 年までの間に,

海外機関投資家持株比率が 3.3%から 16.6%まで上昇していることを確認している。 4) SIZEi,t と AGEi,t,OWNi,t,CROSSi,t との Pearson の相関係数はそれぞれ 0.269,−0.351,0.235,Spearman の

相関係数は 0.243,−0.531,0.326 である。このことから,SIZEi,t と AGEi,t,OWNi,t,CROSSi,t それぞれとの

間に強い相関があることがわかる。実際に,これらのコントロール変数を除いた分析においては,SIZEi,t

の係数は 1%水準で有意な正の値をとっていることが確認されている。

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付録 変数の定義

変数 定義 主分析

TURNi,t+1 :t+1 期に経営者が新たな者に代わっていれば 1,続投していれば 0 をとるダミー。

経営者は社長の肩書を持つ者を指す。 |DACi,t| :t 期の裁量的会計発生高の絶対値。裁量的会計発生高は Kothari et al. (2005)に倣い

推定している。 OCFi,t :t 期の総資産営業キャッシュフロー比率。総資産営業キャッシュフロー比率は営

業キャッシュフローを総資産で除した値である。 ADJRETi,t :t 期の産業調整済株式リターン。産業調整済株式リターンは年次株式リターンか

ら同一産業・年の期首株式時価総額加重平均値を控除した値である。 INDRETi,t :t 期の産業平均株式リターン。産業平均株式リターンは同一産業・年の年次株式

リターンの期首株式時価総額加重平均値である。 GROWTHi,t :t 期の売上高成長率。 STDRETi,t :t 期の月次株式リターンの標準偏差。 SIZEi,t :t 期末の総資産の自然対数。 MTBi,t :t 期末の時価簿価比率。時価簿価比率は自己資本に対する株式時価総額の比率で

ある。 LEVi,t :t 期末の負債比率。負債比率は株式時価総額に対する負債の比率である。 TENUREi,t :t 期の経営者の在任年数が 4 年あるいは 6 年であれば 1,それ以外は 0 をとるダ

ミー。 AGEi,t :t 期の経営者の年齢。 OWNi,t :t 期の経営者の持株比率。 OUTi,t :t 期の社外取締役比率。社外取締役比率は取締役人数に対する社外取締役人数の

比率である。 CROSSi,t :t 期の株式持合比率。

頑健性分析 FORCEDi,t+1 :t+1 期に経営者が新たな者に代わっており交代した経営者が会長職に就いていな

い場合は 1,続投していれば 0 をとるダミー。 STANDARDi,t+1 :t+1 期に経営者が新たな者に代わっており交代した経営者が会長職に就いている

場合は 1,続投していれば 0 をとるダミー。 |DAC_Ki,t| :t 期の裁量的会計発生高の絶対値。裁量的会計発生高は Kasznik (1999)に倣い推定

している。 |DAC_Mi,t| :t 期の裁量的会計発生高の絶対値。裁量的会計発生高は McNichols (2002)に倣い推

定している。 P_ADJRETi,t :t 期の産業調整済株式リターンが 0 以上であれば 1,それ以外は 0 をとるダミー。 N_ADJRETi,t :t 期の産業調整済株式リターンが 0 未満であれば 1,それ以外は 0 をとるダミー。 P_DACi,t :t 期の裁量的会計発生高が 0 以上であれば 1,それ以外は 0 をとるダミー。 N_DACi,t :t 期の裁量的会計発生高が 0 未満であれば 1,それ以外は 0 をとるダミー。 STDROAi,t :t 期における過去 5 年間の総資産利益率の標準偏差。総資産利益率は当期純利益

を総資産で除した値である。 SPi,t :t 期の特別利益と t 期の特別損失の和を t 期末の総資産で除した値。

追加分析 H_OUTi,t :t 期の社外取締役比率がサンプルの中央値以上であれば 1,それ以外は 0 をとる

ダミー。 L_OUTi,t :t 期の社外取締役比率がサンプルの中央値未満であれば 1,それ以外は 0 をとる

ダミー。 H_CROSSi,t :t 期の株式持合比率がサンプルの中央値以上であれば 1,それ以外は 0 をとるダ

ミー。 L_CROSSi,t :t 期の株式持合比率がサンプルの中央値未満であれば 1,それ以外は 0 をとるダ

ミー。 ΔADJROAi,t+3 :t 期から t+3 期にかけての産業調整済総資産利益率の変化。産業調整済総資産利

益率は総資産利益率から同一産業・年の期首株式時価総額加重平均値を控除した

値である。 ΔADJOCFi,t+3 :t 期から t+3 期にかけての産業調整済総資産営業キャッシュフロー比率の変化。

産業調整済総資産営業キャッシュフロー比率は総資産営業キャッシュフロー比

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率から同一産業・年の期首株式時価総額加重平均値を控除した値である。 Δ|DACi,t+1| :t 期から t+1 期にかけての裁量的会計発生高の絶対値の変化。 ΔOCFi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての総資産営業キャッシュフロー比率の変化。 ΔADJRETi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての産業調整済株式リターンの変化。 ΔINDRETi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての産業平均株式リターンの変化。 ΔGROWTHi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての売上高成長率の変化。 ΔSTDRETi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての月次株式リターンの標準偏差の変化。 ΔSIZEi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての総資産の自然対数の変化。 ΔMTBi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての時価簿価比率の変化。 ΔLEVi,t+1 :t 期から t+1 期にかけての負債比率の変化。

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表 1 記述統計量

平均値 標準偏差 最小値 25% 中央値 75% 最大値 TURNi,t+1 0.142 0.349 0.000 0.000 0.000 0.000 1.000 |DACi,t| 0.061 0.066 0.000 0.018 0.041 0.078 0.504 OCFi,t 0.051 0.064 −0.236 0.021 0.053 0.085 0.273 ADJRETi,t 0.017 0.361 −1.345 −0.179 −0.003 0.188 2.037 INDRETi,t 0.016 0.129 −0.527 −0.060 0.014 0.090 0.515 GROWTHi,t 0.024 0.159 −0.558 −0.049 0.017 0.083 0.923 STDRETi,t 0.102 0.066 0.020 0.061 0.085 0.122 0.504 SIZEi,t 10.525 1.598 6.918 9.393 10.380 11.512 14.992 MTBi,t 0.537 0.558 0.039 0.234 0.377 0.623 5.740 LEVi,t 2.010 2.218 0.034 0.612 1.322 2.584 20.822 TENUREi,t 0.176 0.381 0.000 0.000 0.000 0.000 1.000 AGEi,t 60.816 8.029 27.000 57.000 62.000 66.000 93.000 OWNi,t 0.038 0.088 0.000 0.000 0.002 0.024 0.499 OUTi,t 0.078 0.119 0.000 0.000 0.000 0.143 0.500 CROSSi,t 0.082 0.085 0.000 0.007 0.059 0.125 0.373 注:上の表は記述統計量である。変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上

下 1%でウィンソライズを施している。なお,|DACi,t|については絶対値をとる前の値にもとづいてウ

ィンソライズを行い,そのあとに絶対値をとっている。

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表 2 単変量分析 TURNi,t+1 = 1 TURNi,t+1 = 0 2 群間の比較 平均値 中央値 平均値 中央値 t 検定 z 検定

|DACi,t| 0.065 0.043 0.060 0.040 (<0.001) (0.001) OCFi,t 0.046 0.050 0.052 0.053 (<0.001) (<0.001) ADJRETi,t 0.013 −0.010 0.018 −0.002 (0.525) (0.172) INDRETi,t 0.015 0.012 0.016 0.014 (0.568) (0.477) GROWTHi,t 0.017 0.012 0.025 0.018 (0.041) (<0.001) STDRETi,t 0.106 0.088 0.102 0.085 (0.004) (0.007) SIZEi,t 10.637 10.493 10.506 10.358 (<0.001) (<0.001) MTBi,t 0.525 0.369 0.539 0.378 (0.236) (0.300) LEVi,t 2.102 1.383 1.994 1.314 (0.032) (0.027) TENUREi,t 0.275 0.000 0.159 0.000 (<0.001) (<0.001) AGEi,t 64.308 65.000 60.239 62.000 (<0.001) (<0.001) OWNi,t 0.022 0.001 0.041 0.002 (<0.001) (<0.001) OUTi,t 0.085 0.000 0.077 0.000 (0.001) (0.001) CROSSi,t 0.078 0.053 0.082 0.060 (0.035) (0.002) 注:上の表は単変量分析の結果をまとめたものである。変数の定義については付録を参照してほしい。

連続変数を除くすべての変数は年ごとに上下 1%でウィンソライズを施している。なお,|DACi,t|につ

いては絶対値をとる前の値にもとづいてウィンソライズを行い,そのあとに絶対値をとっている。

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表 3 検証結果

TURNi,t+1 A B C 係数 p 値 係数 p 値 係数 p 値 切片 −0.927 (<0.001) −1.351 (<0.001) −3.837 (<0.001) |DACi,t| 0.630 (0.001) 0.634 (<0.001) 0.745 (<0.001) OCFi,t −0.660 (<0.001) −0.781 (0.001) ADJRETi,t −0.029 (0.192) −0.179 (<0.001) INDRETi,t −0.020 (0.840) −0.155 (0.143) GROWTHi,t −0.150 (0.018) 0.037 (0.532) STDRETi,t 0.570 (0.019) 1.510 (<0.001) SIZEi,t 0.036 (<0.001) −0.023 (0.012) MTBi,t −0.022 (0.289) 0.030 (0.068) LEVi,t 0.004 (0.644) 0.003 (0.703) TENUREi,t 0.359 (<0.001) AGEi,t 0.048 (<0.001) OWNi,t −1.834 (<0.001) OUTi,t 0.315 (<0.001) CROSSi,t −0.881 (<0.001) YEAR 含める 含める 含める INDUSTRY 含める 含める 含める 疑似決定係数 0.006 0.009 0.078 観測個数 18,069 18,069 18,069 注:上の表は(2)式を推定した結果をまとめたものである。変数の定義については付録を参照してほしい。

連続変数は年ごとに上下 1%でウィンソライズを施している。なお,|DACi,t|については絶対値をとる

前の値にもとづいてウィンソライズを行い,そのあとに絶対値をとっている。p 値は企業・年のクラ

スタリングに対して頑健な標準誤差を用いて算出している(Petersen, 2009)。

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表 4 経営者交代の区分

FORCEDi,t+1 STANDARDi,t+1 A B 係数 p 値 係数 p 値 切片 −2.275 (<0.001) −6.515 (<0.001) |DACi,t| 0.874 (<0.001) 0.268 (0.222) OCFi,t −0.959 (<0.001) −0.129 (0.709) ADJRETi,t −0.189 (<0.001) −0.077 (0.162) INDRETi,t −0.076 (0.537) −0.177 (0.097) GROWTHi,t −0.061 (0.403) 0.217 (0.108) STDRETi,t 1.482 (<0.001) 0.952 (<0.001) SIZEi,t −0.095 (<0.001) 0.074 (<0.001) MTBi,t −0.019 (0.490) 0.044 (0.112) LEVi,t 0.019 (0.001) −0.015 (0.117) TENUREi,t 0.344 (<0.001) 0.322 (<0.001) AGEi,t 0.031 (<0.001) 0.066 (<0.001) OWNi,t −4.215 (<0.001) 0.521 (0.005) OUTi,t 0.475 (<0.001) −0.037 (0.780) CROSSi,t −1.766 (<0.001) 0.377 (<0.001) YEAR 含める 含める INDUSTRY 含める 含める 疑似決定係数 0.092 0.115 観測個数 16,919 16,658 |DACi,t|の係数比較 χ2 統計量 5.213 p 値 (0.022) 注:上の表の列 A と列 B はそれぞれ,TURNi,t+1 の代わりに,FORCEDi,t+1 と STANDARDi,t+1 を用いて(2)式

を推定した結果である。変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上下 1%でウィンソライズを施している。なお,|DACi,t|については絶対値をとる前の値にもとづいてウィン

ソライズを行い,そのあとに絶対値をとっている。p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な

標準誤差を用いて算出している(Petersen, 2009)。

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表 5 利益調整の推定方法

TURNi,t+1 A B Kasznik (1999) McNichols (2002) 係数 p 値 係数 p 値 切片 −3.901 (<0.001) −3.938 (<0.001) |DAC_Ki,t| 1.520 (<0.001) |DAC_Mi,t| 1.974 (<0.001) OCFi,t −0.729 (0.004) −0.658 (0.018) ADJRETi,t −0.176 (<0.001) −0.175 (<0.001) INDRETi,t −0.153 (0.140) −0.143 (0.155) GROWTHi,t 0.047 (0.443) 0.056 (0.352) STDRETi,t 1.415 (<0.001) 1.409 (<0.001) SIZEi,t −0.021 (0.024) −0.020 (0.015) MTBi,t 0.031 (0.051) 0.021 (0.127) LEVi,t 0.002 (0.800) 0.002 (0.818) TENUREi,t 0.362 (<0.001) 0.366 (<0.001) AGEi,t 0.048 (<0.001) 0.048 (<0.001) OWNi,t −1.822 (<0.001) −1.804 (<0.001) OUTi,t 0.309 (<0.001) 0.335 (<0.001) CROSSi,t −0.871 (<0.001) −0.841 (<0.001) YEAR 含める 含める INDUSTRY 含める 含める 疑似決定係数 0.079 0.080 観測個数 18,068 17,888 注:上の表の列 A と列 B はそれぞれ,|DACi,t|の代わりに,|DAC_Ki,t|と|DAC_Mi,t|を用いて(2)式を推定し

た結果である。変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上下 1%でウィン

ソライズを施している。なお,|DAC_Ki,t|と|DAC_Mi,t|それぞれについては絶対値をとる前の値にもと

づいてウィンソライズを行い,そのあとに絶対値をとっている。p 値は企業・年のクラスタリングに

対して頑健な標準誤差を用いて算出している(Petersen, 2009)。

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表 6 代替的な解釈

TURNi,t+1 係数 p 値 切片 −3.837 (<0.001) |DACi,t| × P_ADJRETi,t 0.826 (<0.001) |DACi,t| × N_ADJRETi,t 0.681 (0.013) OCFi,t −0.784 (0.001) ADJRETi,t −0.190 (<0.001) INDRETi,t −0.155 (0.143) GROWTHi,t 0.037 (0.540) STDRETi,t 1.515 (<0.001) SIZEi,t −0.023 (0.012) MTBi,t 0.030 (0.065) LEVi,t 0.003 (0.705) TENUREi,t 0.359 (<0.001) AGEi,t 0.048 (<0.001) OWNi,t −1.834 (<0.001) OUTi,t 0.315 (<0.001) CROSSi,t −0.880 (<0.001) YEAR 含める INDUSTRY 含める 疑似決定係数 0.078 観測個数 18,069 |DACi,t| × P_ADJRETi,t と|DACi,t| × N_ADJRETi,t の係数比較 χ2 統計量 0.333 p 値 (0.564) 注:上の表は,|DACi,t|の代わりに,|DACi,t| × P_ADJRETi,t と|DACi,t| × N_ADJRETi,t を用いて(2)式を推定し

た結果である。変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上下 1%でウィン

ソライズを施している。なお,|DACi,t|については絶対値をとる前の値にもとづいてウィンソライズ

を行い,そのあとに絶対値をとっている。p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な標準誤差

を用いて算出している(Petersen, 2009)。

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表 7 符号付裁量的会計発生高

TURNi,t+1 係数 p 値 切片 −3.839 (<0.001) |DACi,t| × P_DACi,t 0.607 (0.037) |DACi,t| × N_DACi,t 0.892 (<0.001) OCFi,t −0.880 (0.003) ADJRETi,t −0.177 (<0.001) INDRETi,t −0.154 (0.148) GROWTHi,t 0.043 (0.439) STDRETi,t 1.502 (<0.001) SIZEi,t −0.023 (0.012) MTBi,t 0.032 (0.062) LEVi,t 0.003 (0.718) TENUREi,t 0.359 (<0.001) AGEi,t 0.048 (<0.001) OWNi,t −1.834 (<0.001) OUTi,t 0.313 (<0.001) CROSSi,t −0.882 (<0.001) YEAR 含める INDUSTRY 含める 疑似決定係数 0.078 観測個数 18,069 |DACi,t| × P_DACi,t と|DACi,t| × N_DACi,t 係数の比較 χ2 統計量 0.631 p 値 (0.427) 注:上の表は,|DACi,t|の代わりに,|DACi,t| × P_DACi,t と|DACi,t| × N_DACi,t を用いて(2)式を推定した結果

である。変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上下 1%でウィンソライ

ズを施している。なお,|DACi,t|については絶対値をとる前の値にもとづいてウィンソライズを行い,

そのあとに絶対値をとっている。p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な標準誤差を用い

て算出している(Petersen, 2009)。

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表 8 二段階最小二乗法

|DACi,t| TURNi,t+1 A B 1 段階目 2 段階目 係数 p 値 係数 p 値 切片 0.110 (<0.001) −0.821 (<0.001) STDROAi,t 0.107 (<0.001) SPi,t 0.127 (<0.001) |DACi,t| 3.737 (<0.001) OCFi,t −0.056 (0.043) 0.178 (0.057) ADJRETi,t −0.005 (0.097) −0.008 (0.510) INDRETi,t −0.001 (0.930) −0.015 (0.660) GROWTHi,t 0.028 (0.034) −0.075 (0.064) STDRETi,t 0.052 (<0.001) −0.042 (0.501) SIZEi,t −0.002 (<0.001) 0.006 (0.001) MTBi,t 0.011 (<0.001) −0.040 (<0.001) LEVi,t −0.001 (0.019) 0.003 (0.156) TENUREi,t 0.001 (0.392) 0.089 (<0.001) AGEi,t 0.000 (0.500) 0.009 (<0.001) OWNi,t 0.005 (0.544) −0.236 (<0.001) OUTi,t −0.002 (0.708) 0.070 (0.005) CROSSi,t −0.018 (0.002) −0.081 (0.029) YEAR 含める 含める INDUSTRY 含める 含める 自由度修正済決定係数 −0.315 観測個数 17,599 弱相関の検定 Anderson 正準相関尤度比統計量 281.973 p 値 (<0.001) 過剰識別の検定 Sargan 統計量 1.811 p 値 (0.178) 注:上の表は STDROAi,t と SPi,t を操作変数として(2)式を二段階最小二乗法として推定した結果である。

変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上下 1%でウィンソライズを施

している。なお,|DACi,t|については絶対値をとる前の値にもとづいてウィンソライズを行い,その

あとに絶対値をとっている。p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な標準誤差を用いて算

出している(Petersen, 2009)。

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表 9 社外取締役比率と株式持合比率の影響

TURNi,t+1 A B 係数 p 値 係数 p 値 切片 −3.835 (<0.001) −3.879 (<0.001) |DACi,t| × H_OUTi,t 0.766 (0.002) |DACi,t| × L_OUTi,t 0.730 (0.003) |DACi,t| × H_CROSSi,t −0.046 (0.847) |DACi,t| × L_CROSSi,t 1.117 (<0.001) OCFi,t −0.781 (0.001) −0.750 (0.001) ADJRETi,t −0.179 (<0.001) −0.174 (<0.001) INDRETi,t −0.155 (0.142) −0.156 (0.144) GROWTHi,t 0.038 (0.533) 0.026 (0.647) STDRETi,t 1.510 (<0.001) 1.471 (<0.001) SIZEi,t −0.023 (0.012) −0.022 (0.015) MTBi,t 0.030 (0.071) 0.024 (0.163) LEVi,t 0.003 (0.703) 0.003 (0.675) TENUREi,t 0.359 (<0.001) 0.359 (<0.001) AGEi,t 0.048 (<0.001) 0.048 (<0.001) OWNi,t −1.833 (<0.001) −1.845 (<0.001) OUTi,t 0.307 (<0.001) 0.313 (<0.001) CROSSi,t −0.881 (<0.001) −0.586 (<0.001) YEAR 含める 含める INDUSTRY 含める 含める 疑似決定係数 0.078 0.079 観測個数 18,069 18,069 |DACi,t| × H_OUTi,t と|DACi,t| × L_OUTi,t の係数比較 χ2 統計量 0.011 p 値 (0.916) |DACi,t| × H_CROSSi,t と|DACi,t| × L_CROSSi,t の係数比較 χ2 統計量 14.911 p 値 (<0.001) 注:上の表の列 A と列 B はそれぞれ,|DACi,t|の代わりに,|DACi,t| × H_OUTi,t と|DACi,t| × L_OUTi,t あるい

は|DACi,t| ×H_CROSSi,t と|DACi,t| × L_CROSSi,t を用いて(2)式を推定した結果である。変数の定義につ

いては付録を参照してほしい。連続変数は年ごとに上下 1%でウィンソライズを施している。なお,

|DACi,t|については絶対値をとる前の値にもとづいてウィンソライズを行い,そのあとに絶対値をと

っている。p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な標準誤差を用いて算出している(Petersen, 2009)。

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表 10 経営者交代前後の企業業績と裁量的会計発生高

ΔADJROAi,t+3 ΔADJOCFi,t+3 A B 係数 p 値 係数 p 値 切片 −0.007 (0.046) 0.007 (0.407) Δ|DACi,t+1| −0.035 (0.035) −0.041 (0.033) ΔOCFi,t+1 0.136 (0.002) 0.493 (<0.001) ΔADJRETi,t+1 0.022 (0.008) 0.008 (0.097) ΔINDRETi,t+1 0.001 (0.961) −0.010 (0.347) ΔGROWTHi,t+1 0.067 (<0.001) 0.022 (0.059) ΔSTDRETi,t+1 0.082 (0.054) 0.008 (0.408) ΔSIZEi,t+1 −0.143 (<0.001) −0.029 (0.339) ΔMTBi,t+1 0.005 (0.725) −0.012 (0.243) ΔLEVi,t+1 0.002 (0.324) 0.007 (<0.001) YEAR 含める 含める INDUSTRY 含める 含める 自由度修正済決定係数 0.134 0.212 観測個数 2,346 2,346 注:上の表は(5)式を推定した結果である。変数の定義については付録を参照してほしい。連続変数は年

ごとに上下 1%でウィンソライズを施している。p 値は企業・年のクラスタリングに対して頑健な標

準誤差を用いて算出している(Petersen, 2009)。

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図 1 裁量的会計発生高と経営者交代の予測確率

注:上の図は|DACi,t|の百分位数ごとの TURNi,t+1 の予測値を示している。変数の定義については付録を参

照してほしい。なお,TURNi,t+1 の予測値の算出には,表 3 の列 C の推定結果を用いており,コント

ロール変数に関しては各変数の平均値で固定している。

0.007 0.018 0.041

0.078

0.135

11.3% 11.5% 11.8% 12.3% 13.2%

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0%

5%

10%

15%

20%

25%

0% 5% 10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

85%

90%

95%

100%

|DAC|の百分位数

|DAC|—右軸

Pr(TURN)—左軸