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便真言宗智山派 SHINGON Vol. 99 令和5年(2023年)

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Page 1: SHINGON お正月だからこそ考えよう · 表2「紅梅と雪」東京都国立市 早咲きの梅が咲く梅園に雪が降りました。凍えるよう な寒さの中でも梅の花は凛

平成十年十二月十六日第三種郵便物認可「生きる力SH

ING

ON

」第九十九号 令和元年十二月一日発行 年四回(六月・九月・十二月・三月の一日)発行 定価一〇〇円(本体九三円)

発行人/芙蓉良英 編集/智山教化センター 発行所/〒  

京都市東山区東大路七条下ル東瓦町九六四 総本山智積院内 真言宗智山派宗務庁

605-0951

平成十年十二月十六日第三種郵便物認可 第九十九号 令和元年十二月一日発行 年四回(六月・九月・十二月・三月の一日)発行

真言宗智山派

SHINGON

Vol.

99

[特集]

お正月だからこそ考えよう

―亡き人を安心して送り・供養するために③

 年回忌法要―

令和5年(2023年)

Page 2: SHINGON お正月だからこそ考えよう · 表2「紅梅と雪」東京都国立市 早咲きの梅が咲く梅園に雪が降りました。凍えるよう な寒さの中でも梅の花は凛

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表紙「雪晴れの富士山」山梨県山中湖村前日降った雪が木々の枝にも着雪して、あたり一面が

白く雪化粧した朝です。空は沈むほどに青く、まさに雪晴れ。青と白とのコントラストが強い景色は静

せい

謐ひつ

で、晴れ晴れとした雄姿の富士山を見ていることがとても幸せに感じました。

表2「紅梅と雪」東京都国立市早咲きの梅が咲く梅園に雪が降りました。凍えるよう

な寒さの中でも梅の花は凛りん

としています。そんな花の姿に心打たれ、背景を単調にして梅の花の力強さを表現しようと撮影に臨

のぞ

むと、雪が梅の背後を白い線を残して流れてゆきました。� 撮影・解説/新海良夫

目 次

Vol. 99 SHINGON

今日の法語 伊東永人............. 2智山寺院探訪如意山福生院.................... 3特集 お正月だからこそ考えよう......... 6お大師さまとご信仰 田村宗英...........10教えは伝わる―真言八祖解説―  別所弘淳...........11図解・仏教ガイド 「マンガでわかる十三仏⑰」

え・悟東あすか...........12ゆーけいの写仏をするよろこび

牧 宥恵...........14日本の四季を切り取る十七文字

星野高士...........15総本山の便りをお知らせします...........16らせんのなかのブッダガヤ中嶋亮順....18ごくらくらくご 三遊亭竜楽...........19御詠歌で綴る十善戒の教え

佐々木眞光...........20読者アンケートから・おしらせ・編集後記......22真言宗智山派出版物のご案内...............23桃山の息吹に触れる 安原成美...........24お大師さまのご生涯 ―お大師さまカルタ― 川﨑一洸・三船毅志...26花に聞く仏に聞く 佐々木隆元...........28仏教と妖怪 今井秀和...........29私のお大師さまビジュアルで読む現代的性霊集 feat.Rieko内藤理恵子...30ご本尊さまと出会う

小笠原隆浩・黒川広志...........31仏教について 仏教と文化わたしたちの生活と仏教 お知らせ

伊い

東とう

永えい

人じん(

栃木県宇都宮市・持じ

寶ほう

院いん

住職)

「佛ぶ

心しん

困っている人を手助けし、喜んでもらったときは大変嬉し

いものです。他者のために、分け隔てなく思いやる慈悲のこ

ころを「ほとけごころ」といいます。

仏教では、本来すべての人に「ほとけごころ」が備わって

いると説きます。

我々に備わっている「ほとけごころ」を自覚し、その佛心

を大切に生活していきたいものです。

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東海地方の梅雨明けが発表された翌日の七

月二十九日。炎天下の中、名古屋駅に降り立

ちました。手羽先、ひつまぶし、みそカツ、

きしめん、えびふりゃ~……と、名古屋には

数多くの美味しいグルメが。何を食べたかは

秘密ですが、カメラマ

ンと昼食を済ませ、地

下鉄桜さ

くら

通どおり

線せん

で二駅、丸

の内駅へ。戦後は日本

三大繊維問屋街として

栄えた長者町通りから

袋ふくろ

町まち

通りへと、商店が

立ち並ぶビル街を駅か

ら五分ほど歩くと、突

如、大だ

聖しょう

歓かん

喜ぎ

天てん

と書か

れた大きな幟の

ぼり

旗ばた

と、赤

い重層な山門が目に飛

び込んできます。山門

の左右、狛犬の台座に

彫られた大根と巾き

着ちゃく

何? と疑問に感じな

がら、境内に足を踏み

入れると、そこは四方

八方、どこを向いても

仏さまと出会える、曼ま

荼だ

羅ら

のような心静まる

場所でした。

袋町お聖天さま

お聖天さま(「しょうてん」ではなく「しょうで3

ん」と読みます)をご存じですか。正式には大

聖歓喜天、大聖歓喜双そ

身しん

天てん

王のう

などと呼ばれ、

私たちのどんな願いも叶えてくださり、私たち

を歓3

ばせ、ともに喜3

んでくださる仏さまです。

「一度信仰すれば、いかに宿縁の薄い因縁の

悪い人でも、皆ことごとく願望を満たし、抜ば

苦く

与よ

楽らく

・転て

貧ひん

与よ

福ふく

の大利益をこうむる」とお

経にあり、大名や豪商らから熱心に信仰され

てきた歴史があります。現在でも大成功、富ふ

貴き

栄えい

達たつ

をされた方がたくさんいらっしゃいま

す。待ま

乳ち

山やま

聖天(東京都台東区本龍院)、生い

駒こま

聖天

(奈良県生駒市宝山寺)、妻め

沼ぬま

聖天(埼玉県熊谷市歓

喜院)の日本三大聖天(諸説あり)にも引けを

取らない、今名古屋で一番のパワースポット

名古屋市の中心地、ビル街の中に突如現れる福生院の山門。街のパワースポットとして多くの人々の信仰を集めています。

智山寺院探訪なごや七福神めぐり(毘沙門天)東海三十六不動尊霊場第十二番札所名古屋二十一大師霊場第五番札所大名古屋十二支霊場(亥年阿弥陀如来札所)

愛知県名古屋市 如意山 福生院(通称 : 袋町お聖天)

四方八方どこを向いても仏さま、神さまに見守られたようなつくりの境内は、隅 ま々で掃除がいきとどいていることもあり、とても清 し々い気持ちになります。

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として親しまれている袋町お聖天さま、如に

意い

山ざん

福ふく

生しょう

院いん

を訪れました。

福生院は南北朝時代の至し

徳とく

三年(一三八六)

現愛知県あま市蜂須賀の蓮華寺第五世順誉上

人がお聖天さまを勧か

請じょう

(ご分身などをお迎えする

こと)し、現名古屋市中村区に堂ど

宇う

を建立され

たことに始まります。その後、清洲城下の名

古屋移転(清き

州す

越ご

し)にともない元げ

和な

三年

(一六一七)現在の地に移り、「袋町のお聖天さ

ま」として隆盛します。しかし、昭和二十年

三月、名古屋は大空襲に見舞われ、伽が

藍らん

全て

を焼失。当時の松ま

平だいら

實じつ

亮りょう

住職が、お聖天さま

だけは何が何でも助けなければと胸に抱き避

難をされたことにより、今に伝わっています。

ですが、そのお聖天さまのお姿を私たちは

拝見することができません。お聖天さまはそ

の験げ

力りき

があまりに強く秘仏なのです。ヒン

ドゥー教のガネーシャという、象の頭をした

神さまがもととなっており、象頭人身の夫婦

抱き合った姿をされています。カメラマン

は、お聖天さまをもしかしたら撮影できるか

もと期待していたようですが、その夢ばかり

は叶いませんでした。

疑問に感じた大根・巾着とは

「お聖天さまの住む山中には油池があり、そ

の周囲に蘿ら

蔔ふ

根こん

、吉き

祥しょう

菓か

、美酒等が置かれ、

この池に浴され、これらを食し、歓喜遊戯し

ている」とお経にあります。

お聖天さまへは、蘿蔔根(大根に似た食物で、

大根よりも細くて辛味が強い)の代用として大

根。吉祥菓として、お聖天さまが人々に与え

る福が納められている宝袋(巾着)の形をした

お菓子(お団・歓か

喜ぎ

団だん

)。そしてお酒をお供えし

ます。ですから、屋根瓦をはじめ境け

内だい

の至る

所に大根や巾着が飾られています。隠れミッ

キーではありませんが、こんな所に! と思

中央の丸い厨子の中にお聖しょう

天でん

さまが、奥の厨ず

子し

にはお聖天さまの本地仏である十

じゅう

一いち

面めん

観かん

音のん

さまが祀られています。吊り灯篭も巾着の形で素敵ですね。

福生院のご本尊さまは薬やく

師し

如にょ

来らい

と伝わっています。聖天堂内の向かって右脇に鎮座されています。

東海三十六不動尊霊場 十二番札所の不ふ

動どう

明みょう

王おう

さま

です。もと信州上田城の守護尊として祀られていたお

不動さまで、お聖天さまに縁ある方々をお守りするた

めに戦後復興事業に賛同された長野県東御市の長久寺

さまより遷座されました。不動堂では毎月二十八日に

お護摩修行が行われます。

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うような場所にも大根や巾着が飾られており

ますので、ぜひ探してみてください。

そして油池に浴されるということから、お

聖天さまの御み

頭くし

に聖油をおかけして祈る、浴よ

油ゆ

祈祷という、お聖天さまから選ばれし僧侶

しか修法することのできない、最も優れた秘

法があります。袋町お聖天さまでは正月・五

月・九月のそれぞれ一日から七日間行われて

います。是非その期間にご参拝・ご祈祷して

ください。また、お正月の年越し詣りには甘

酒のご接待もいただけるそうです。

お聖天さま曼荼羅

東海三十六不動尊十二番札所のお不動さ

ま、名古屋十二支霊場の亥年阿弥陀如来さま

始め十二支の各守り本尊さま、名古屋二十一

大師霊場の出世大師さま、なごや七福神の毘

沙門天さま、福生院ご本尊薬師如来さま、ぼ

け封じ観音さま、十一面観音さま、出世天

神、秋葉権現、お稲荷さま……。境内、堂内

ではたくさんの仏さまにお会いでき、まさに

お聖天さまを中心にした曼荼羅世界が広がっ

ています。そしてご住職始め寺じ

庭てい

婦ふ

人じん

(住職婦

人)さまが、優しく迎え入れてくれます。取

材時も参詣者一人一人に気配りをされながら

対応されているお姿に、生き仏さまにまみえ

たような気がしました。袋町お聖天さまはま

さに曼荼羅。たくさんの仏さまに出会えま

す。たくさん祈っていただき、たくさんの仏

さまから生きる力を授かってください。

(智山教化センター所員/上村正健

撮影/竹本りか)

如意山 福生院〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦二丁目5-22Tel 052-231-5261地下鉄桜通線 丸の内駅 5番出口より徒歩3分地下鉄東山線、鶴舞線 伏見駅 1番出口より徒歩5分

ACCESS アクセス

如意山福生院

名古屋テレビ塔名古屋駅名古屋駅

丸の内丸の内桜通線桜通線

東山線東山線

和菓子屋むらさきや和菓子屋むらさきや

伏見伏見

鶴舞線

鶴舞線 名

城線

名城線

大須観音大須観音

栄町栄町

久屋大通久屋大通

中興第二十二世 松まつ

平だいら

實じつ

城じょう

住職「お聖天さまはどんな願いも必ず叶えてくれます。ですから自分のことだけではなく、皆さんのこと、未来の幸せ、全ての生き物たちの無事を祈ってください」と熱く語られていました。

唯一戦禍を逃れたのが、お聖天さまと、この手水鉢だそうです。手水舎の屋根が落ち覆いかぶさっていたことにより焼けずに済んだそうです。

出世天神と秋葉大権現この出世天神は豊臣秀吉が信仰されていた天神さまと伝わり、天下統一を果たされたのもこの天神さまのおかげともいわれ、参拝者が絶えません。

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自身を振り返るお正月

三十一年続いた平成の世は四月に終わり、

五月から新たに令和の時代を迎えました。そ

して、元号が令和になってから初めて迎える

お正月。みなさまは、去りゆく一年をどのよ

うに過ごし、また新たな一年をどのように迎

えますでしょうか。

新しい年を目前に控えた大お

晦みそ

日か

。どこから

か聞こえてくる除じ

夜や

の鐘か

の響きは、心を清ら

かにしてくれます。煩ぼ

悩のう

を除くとされる除夜

の鐘を聞きながら、ご自身の一年間を振り

返ってみてください。むやみに誰かを傷つけ

なかったでしょうか。嘘をついたり、乱暴な

言葉を使ったりしなかったでしょうか。欲

張ったり、やたらと怒ったりしなかったで

しょうか。そして、亡き人やご先祖さまに、

感謝の心をもって手を合わせることができま

したでしょうか。自身の行いを振り返ること

で、心を改め、新たな気持ちで新年をお迎え

いただきたいものです。

お雑煮、お節せ

に、お年玉とお祝いづくしの

お正月ですが、このような歌があるのはご存

知でしょうか。

―門松は 冥め

土ど

の旅の 一里塚

めでたくもあり めでたくもなし―

これは「一休さん」として馴染み深い室町

時代の僧侶、一い

休きゅう

宗そう

純じゅん

が詠よ

んだとされる歌で

―亡き人を安心して送り・供養するために③ 年回忌法要―

正月飾りのひとつ、門松。お正月を迎えるにあたり、家々の門前に飾る門松は、一説には歳神さまの依より

代しろ

ともされています。� 写真提供/PIXTA

お正月だからこそ考えよう

特 集

6

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す。私たちはこの世に生を受けたその日を誕

生日としてお祝いしますが、かつては数え年

で年齢を数えていました。そのため、新年を

迎えると皆が一斉に一つ歳をとることから、

お正月には家族や友人とお祝いをしたともい

います。※「新年」の定義は、旧暦、新暦などに

より変わります。その一方、この歌ではお正月

に飾られる門松を、街道に一里(約四キロメー

トル)ごとに築かれた一里塚に喩た

え、新年を

迎えて門松を立てるたびにまた一つずつ歳を

とり、少しずつですが着実に寿命に近づくこ

とを詠んでいます。

この歌にも象徴されるように人の一生はし

ばしば旅に喩た

えられ、亡き人の行く先も「死し

出で

の旅た

路じ

」と、形容されます。地域の風習に

よっても違いはありますが、いまでも亡き人

を棺に納めるとき、杖や手て

甲こう

・脚き

絆はん

などを着

けた旅支度をするのはこのためです。この装

束には、亡き人が無事に仏さまの元へと辿り

着くことを願う気持ちが込められているので

しょう。

仏さまの世界への

旅立ち

もしも大切な人をなくし

たとき、亡き人の行く末が

少しでも安らかであってほ

しいと願うのは当然のこと

だと思います。一連の葬送

儀礼では、お盆号(九十七

号)でご紹介した「枕ま

くら

経ぎょう

通つ

夜や

」、そして秋彼岸号

(九十八号)でご説明した

「葬そ

儀ぎ

」によって、亡き人

を安らかならしめ、仏さま

の世界への旅立ちを見送り

ます。それでは、亡くなら

れた人はどのようにして仏

さまの世界への旅路を行く

のでしょうか。

仏教の生まれた古代インドでは、人は生ま

れ変わりを繰り返すと考え、それを四つに分

けました。生まれるときを「生し

ょう

有う

」といい、

生きている間を「本ほ

有ぬ

」といいます。そして

亡くなる時を「死し

有う

」、次に生まれ変わるま

でを「中ち

ゅう

有う

(中ち

ゅう

陰いん

)」といいます。葬儀を終

えたあと、七七日忌(四十九日忌)を迎えるま

一いっ

休きゅう

宗そう

純じゅん

(1394−1481) 室町時代の臨済宗大徳寺派僧侶。その姿はアニメ「一休さん」のイメージとはかなり違った印象です。枠にとらわれない自由な発想の持ち主といわれており、門松の歌にも見えるように、人とは違った目線で物事をとらえ、気づきを与えていたのかもしれません。� 一休和尚像(部分) 東京国立博物館蔵� Image:TNM�Image�Archives許可なき複製を禁じます

中有(中陰)ちゅう う ちゅういん

生有しょう う

次に生まれかわるまで

本有ほん ぬ

生きている間

生まれるとき

死有し う

亡くなるとき

四し

有う

 古代インドにおける人の生まれ変わりを表しています。

7

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ではこの中陰の期間にあたるとされ、七日ご

とに供養が行われてきました。悲しみに暮れ

ながらも、慌ただしく過ぎていく通夜・葬儀

も終わり、この中陰の間は、改めて亡き人を

ゆっくりと想い偲し

ぶことができる大切な期間

となることでしょう。

十三の仏さまに見守られて

仏さまの世界へと旅立った亡き人は中陰の

期間、初し

七なの

日か

から七日ごとに七尊の仏さまの

元を訪ねます。そして、亡くなられて百日後

の百箇日、一年後の一周忌、二年後の三回

忌、そして七回忌、十三回忌、三十三回忌

と、六尊の仏さまを巡ります。これら十三の

仏さまに見守られながら仏さまの世界へと赴

きます。

この十三の仏さまを「十じ

ゅう

三さん

仏ぶつ

」といい、初

七日忌の不ふ

動どう

明みょう

王おう

や三回忌の阿あ

弥み

陀だ

如にょ

来らい

十三回忌には大だ

日にち

如にょ

来らい

が名を連ねています。

亡き人はこれらの十三仏を順番に巡り、それ

ぞれの仏さまの徳を授かっていくのです。

一周忌を終えると一年後に三回忌を迎え、

七回忌、十三回忌と間隔を空けながら年回忌

は続けられていきます。大切な人を亡くした

直後には悲嘆に暮れていても、中陰から年回

忌へと供養を重ねるごとにいつしかその悲し

みも和らぎ、新たな一歩を踏み出すことがで

きるやもしれません。回忌を重ね仏さまの元

へとたどり着いた亡き人は、やがてご先祖さ

まとなっていきます。ご先祖さまとなりゆく

亡き人のためにも、感謝の心をもって供養し

続けていくことが大切なのではないでしょう

か。

感謝の心で供養を続けよう

葬儀を終え、中陰の期間中は、主に家

庭のお仏壇とは別に亡き人の冥福を祈る

「中陰壇」を飾ります。忌日は初七日に

始まり、七七日(四十九日)まで、七日

ごとにやってきます。地域によっては各

忌日に僧侶を招き法要を行うところもあ

りますが、この七日ごとの忌日には、ご

自身でも『智ち

山さん

勤ごん

行ぎょう

式しき

』を一心にお唱え

し、亡き人に感謝の心を捧げましょう。

さらには亡き人を思い浮かべながら忌日

や回忌ごとに『般は

若にゃ

心しん

経ぎょう

』などを写経

し、また回忌にあたる十三仏のお姿を写

仏し、法要の際に奉納することも供養に

十三仏仏・菩薩 回忌

①不ふ動どう明みょう王おう

初七日忌

②釈しゃ迦か如にょ来らい

二七日忌

③文もん殊じゅ菩ぼ薩さつ

三七日忌

④普ふ賢げん菩ぼ薩さつ

四七日忌

⑤地じ蔵ぞう菩ぼ薩さつ

五七日忌

⑥弥み勒ろく菩ぼ薩さつ

六七日忌

⑦薬やく師し如にょ来らい

七七日忌

⑧観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつ百箇日忌

⑨勢せい至し菩ぼ薩さつ

一周忌

⑩阿あ弥み陀だ如にょ来らい三回忌

⑪阿あ閦しゅく如にょ来らい

七回忌

⑫大だい日にち如にょ来らい

十三回忌

⑬虚こ空くう蔵ぞう菩ぼ薩さつ三十三回忌

十三仏さま(弘法大師御影入り) 画/牧宥恵※十三仏図にはさまざまな体裁のものがあります。

亡き人は仏さまの世界へと旅立ち、十三仏さまにまみえ、仏さまより徳を授かります。遺族が法事を営むことで、さらにその徳が増します。その善行は回忌によって追加されていくので、法事を「追

つい

善ぜん

供く

養よう

」(追つい

福ふく

修しゅ

善ぜん

の供養)といいます。そして亡き人は忌

とむら

い上げの後にご先祖さまとなり、皆さんをお守りする存在となっていくのです。

●⑬

●⑩ ●⑪

●⑦

●⑥

●②

●⑧

●⑤

●⑨

●③●④

●⑫●①

8

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つながります。

また、ご自宅で供養

するだけではなく、四

国八十八ヶ所霊場や、

西さい

国ごく

、坂ば

東どう

三十三ヶ所

の観音霊場などを、亡

き人の供養のためにお

参りすることもできま

す。一度に全ての霊場

を巡め

らずとも、時間を

かけて回忌の度に少し

ずつ巡っても供養にな

ります。お遍へ

路ろ

さんの

菅すげ

笠がさ

には、「同ど

行ぎょう

二に

人にん

という言葉が書かれて

います。これはお大師

さまに見守られなが

ら、一緒に巡じ

ゅん

礼れい

をする

ことを示しています。

亡き人が仏さまの世

界へと赴く旅路も決し

て一人ではありませ

ん。多くの仏さまに見

守られるとともに、こ

の世に残された私たち

も感謝の心をもって供

養をすることでその旅

を支えているのです。

Vol.9 両祖大師とご宝号

Vol.10 感謝の心と葬儀

Vol.5 光明真言

Vol.6 お戒名ってなに?

Vol.7お彼岸とお墓参り

�真言宗智山派檀信徒がお唱えする経典。日頃のお仏壇のお勤めにもどうぞ。並製 40円 上製 90円

今号で触れた内容に関する一部資料です。さらに詳しく知りたい方はP23の出版係までお問い合わせください。

智山勤行式

仏事がわかるリーフレット 各30円

写真は初七日忌ご本尊不動明王

十三仏写仏手本セット 1,000円

写経用紙(20 枚入り)※大文字版・なぞり版もございます。

般若心経写経セット 1,000円

9

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総本山智積院別院 真福寺東京 〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-8TEL:03-3431-1081 FAX:03-3431-0203

総本山智積院京都 〒605-0951京都市東山区東大路七条下ル東瓦町964TEL:075-541-5361 FAX:075-541-5364

令和5年(2023)は、弘法大師空海さまがお生まれになって1250年にあたる記念の年です。

平成十年十二月十六日第三種郵便物認可「生きる力SH

ING

ON

」第九十九号 令和元年十二月一日発行 年四回(六月・九月・十二月・三月の一日)発行 定価一〇〇円(本体九三円)

発行人/芙蓉良英 編集/智山教化センター 発行所/〒  

京都市東山区東大路七条下ル東瓦町九六四 総本山智積院内 真言宗智山派宗務庁

605-0951

写しゃ

経きょう

のつどい

毎月21日 13時より

於 智積院金堂地下ホール

納経料 千円

智積院阿あ

字じ

観かん

会え

毎月12日 14時より(受付13時より)

※8月と12月は8日 14時より

於 智積院金堂地下ホール

(参加灯明料五百円・要事前申込)

宿坊

智積院会館は、新築工事

のため、平成30年12月13日(木)

より宿泊利用並びに会館利用

を休止しております。新しい

智積院会館は、令和2年6月

頃開業の予定です。

愛宕薬師ご縁日(毎月8日)

※8日が土日祝の際は第一金曜日

・大護摩供法要 12時より

・写経会(納経料千円)14時より

12月6日(金)

1月8日(水)

※新春大護摩供法要 11時30分より

2月7日(金)

やすらぎ寄席

毎月第3木曜日 18時30分より

於 本堂(木戸銭千五百円)

12月19日 三遊亭

1月16日 三遊亭

2月20日 談志一門会

真福寺阿あ

字じ

観かん

会え

昼の部15時・夜の部19時より

於 本堂(無料・要事前申込)

1月28日(火)

2月25日(火)

愛宕薬師フォーラム(無料)

12月16日(月)14時より

「お大師さまが出会った仏教」

公益財団法人中村元東方研究所

専任研究員/吉よ

村むら 

均ひとし

先生

智積院Facebook

令和2年カレンダー発行のお知らせ

令和2年のカレンダーを2種類ご用意いたしました。ぜひご利用ください。

(各1部100円)お問い合わせは本誌P.23出版係まで

柱かけカレンダー「今月の法語」

弘法大師空海さまの著作『即身成仏義』の中にある法語を選び、月ごとにお大師さまの教えに触れる柱かけカレンダー。玄関やお部屋の柱などにかけてお使いください。

ポスターカレンダー(B2版)「千手観音像」

令和2年の守り本尊である千手観音のお姿を、

智積院寺宝の掛け軸を使用して作成したカレンダー。