s27@ ?h 3 (1)tnagata/education/ochem2/2019/ochem2...アルデヒド・ケトンは、1-6....
TRANSCRIPT
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 1 – 名城大学理工学部応用化学科
S 27@�?H�� 3 (1)�
今回と次回は、有機合成のデザインについて学ぶ。有機合成の基本的な考え方については有機化学Ⅰでも学んだが、利用できる反応の種類が格段に多くなっている。
有機合成に利用する反応は、大まかには二つの分類に分けられる。一つは「炭素-炭素結合を生成する(炭素骨格を組み立てる)」反応であり、もう一つは「官能基を変換する」反応である。これらは厳密に区別できるものではない。炭素-炭素結合生成は特定の官能基を利用する反応であり、また官能基を変換するときに炭素骨格が変化する場合もあるからである。しかしながら、複雑な目的物の合成戦略を立てる際に、「炭素骨格を組み立てる」段階と、「官能基を変換する」段階に分けると、見通しよく考えられることが多い。 ここからは、それぞれの分類に属する反応について、有機化学Ⅰで学んだ反応も含め
て概観する。いくつか、重要な新しい反応についても紹介する。
1. OTgOTU?�QH�>G
1-1. ���.!�%1�3=�/�/4�*��!�>G
この反応は有機化学Ⅰで学んだ。アセチリドは、末端アルキンと NaNH2 の反応で生成させる。新しくできた C–C結合の隣に C≡C 三重結合が残る。
(R’ は一級または二級アルキル)
アセチリドとエポキシドを反応させた場合は、「C≡C–C–C–OH」という構造の生成物が得られる。
1-2. Grignard^\��*��!�>G
この反応も有機化学Ⅰで学んだ。Grignard 試薬はハロゲン化アルキルとの反応には適さない。(組み合わせによっては成功することもあるが、判断が難しい。)
エポキシドとの反応は可能で、「R–C–C–OH」という構造の生成物が得られる。
C CR C CR R'H
(1) NaNH2(2) R'–Br
C CR HNaNH2
O
C CR OH
(1)(2) H2O
R BrMg
R MgBrR'–Br
R R'
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 2 – 名城大学理工学部応用化学科
1-3. Grignard^\��/)#/=?P�>G
第 20~23 回に学んだ。アルデヒド・ケトンとの反応では、Ⅰ当量の Grignard 試薬が消費されて、アルコールが得られる(注Ⅰ)。
注Ⅰ:上の反応式では Grignard 試薬が矢印の上に書かれている。一方、前節の反応式では Grignard試薬が矢印の左で、矢印の上は求電子剤のエポキシドである。合成反応の場合は、二つの反応物のどちらを矢印の上に書いても構わない。重要なのは、「出発物質をこの手順で変換する」という流れが見やすいように書くことである。
カルボン酸エステルとの反応では、2当量の Grignard 試薬が消費されて、同じ炭素置換基が二つ導入されたアルコールが得られる。エステルのアルキル基部分は失われるので、なるべく安価なメチルエステルまたはエチルエステルを用いる。
1-4. �$-5 �%1�3=�/�/�>G
第 24~25回に学んだ。カルボニル基のα炭素上で新しい炭素-炭素結合が形成される。
(R は一級または二級アルキル)
この反応は実は制御が難しく、R–Br が2回反応したジアルキル体が副生することがある。より優れた方法として、カルボニル化合物を二級アミンと反応させてエナミンを合成し、これをアルキル化したあと加水分解してカルボニル基に戻す方法がある。
R BrMg
R MgBr
O(1)(2) H2O R OH
R
O
R'
R'' MgBr(1)(2) H2O
RR'
R''OH
R
O
OMe
R'' MgBr(1)(2) H2O
(2 eq.)
RR''
R''OH
O
H
(1) LDA(2) R–Br O
R
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 3 – 名城大学理工学部応用化学科
(R は一級または二級アルキル)
アセト酢酸エステル合成、マロン酸エステル合成も、エノラートの反応の一種である。カルボニル基のα位にアルキル基が導入され、その隣のエステル基は加水分解・脱炭酸を経て H に置き換わる。
(R は一級または二級アルキル)
1-5. �$-5 ��/)#/=?P�>G
これも第 24~25回に学んだ。カルボニル基のα炭素上で新しい炭素-炭素結合が形成されるが、その隣に「カルボニル基由来の官能基」が残されているのが特徴である。 エノラートとアルデヒド・ケトンの反応では、新しい炭素-炭素結合の隣に、カルボ
ニル基由来の OH 基が残される(アルドール付加)。
α炭素にもう一つ水素原子が結合している場合、アルドール付加生成物からの脱水に
よってα,β-不飽和カルボニル化合物が得られる(アルドール縮合)(注2)。
注2:上の式では、アルドール付加とアルドール縮合を同じ反応条件で書いている。これは本来おかしいのだが、アルドール付加・アルドール縮合の最適な反応条件は化合物ごとに異なり、一般化は難しい。合成計画の場合は、上のように書いて「ここでアルドール付加(または縮合)を行う」ことを示しておけば十分である。
O
H
NH
, H+
NR–Br(1)
(2) H+, H2O O
R
���������
OEt
O O (1) NaOEt(2) R–Br
OEt
O O
R
(1) NaOH(2) H+, (3) Δ
OR
OEtEtO
OO (1) NaOEt(2) R–Br
OEtEtO
OO
R
(1) NaOH(2) H+, (3) Δ
OH
OR
O
H
ONaOH, O OH
O
H H
ONaOH, O
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 4 – 名城大学理工学部応用化学科
エノラートとエステルの反応では、新しい炭素-炭素結合の隣に、エステル由来のカルボニル基が残される(クライゼン縮合)。
1-6. [dJ=?P�E� Friedel–Crafts �/�/=���/=
第 18回に学んだ。芳香環に新しい炭素鎖を導入することができる。ただし、アルキル化は制約が大きく、カルボカチオン中間体が転位しないこと、多置換体が生成しないことが条件である。
アシル化はより適用範囲が広い。アシルカチオンは転位を起こさないのと、多置換体
が生成しないためである。
芳香環に一級アルキル基を導入する方法として、Friedel–Crafts アシル化に続いて、
Wolff–Kishnere��/'4��,"5f_:、または Clemmensene�0+3�3f_:でカルボニル基を CH2 基に還元する方法がある(注3)。Wolff–Kishner還元では、カルボニル化合物をヒドラジン H2NNH2 と KOHとともに加熱する。ヒドラジンが還元剤として働き、N2が放出される。Clemmensen 還元では、カルボニル化合物を亜鉛と水銀の合金(亜鉛アマルガム)とともに塩酸中で加熱する。亜鉛が還元剤として働く。
注3:これらは本来官能基変換の反応だが、Friedel–Crafts アシル化と組み合わせて使われることが多いので、ここで言及した。
Wolff–Kishner 還元は強塩基性条件であるため、塩基性条件で反応する官能基があるときは使えない(sp3炭素に結合したハロゲンなど)。逆に、Clemmensen 還元は強酸性条件であるため、酸性条件で反応する官能基があるときは使えない(アセタールなど)。
O
H
OEt
ONaOEt, O O
Cl , AlCl3
R Cl
O, AlCl3 R
O
Wolff–Kishner��
R R'
OH2NNH2KOHΔ R R'
H H
Clemmensen��
R R'
O Zn(Hg)HCl
R R'
H H
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 5 – 名城大学理工学部応用化学科
うまく使い分ける必要がある。
2. DXABI>Gh�/�34�/�34�/�3�9
官能基を変換する反応は、非常に多岐にわたっている。ここでは、官能基に含まれる原子の種類で分類して解説する。最初に、炭素原子のみを含む官能基を生成する方法を紹介する。
2-1. �/�3�?H
アルカン自体は官能基とは言えないが、既存の官能基からアルカンを生成する方法をまとめる。 アルケン・アルキンは、接触水素添加によってアルカンを与える。
アルデヒド・ケトンは、1-6. で述べた Wolff–Kishner 還元と Clemmensen還元によ
って、アルカンを与える。
2-2. �/�3�?H
2-2-1. Zb>G��/�3�?H
ハロゲン化アルキルは、β脱離(E1 または E2)によってアルケンを与える。
Br の結合位置が一級または二級である場合は、SN2 反応との競争を考慮する必要が
ある。立体障害の大きな塩基を使うことで、E2反応を優先させることができる。
また、β水素が二種類以上あるときは、位置選択性が問題になる。原則的には、最も
安定なアルケンが主生成物になることが多い(注4)。
H2, Pd/C
H HH2, Pd/C
H HH H
R R'
OH2NNH2KOHΔ R R'
H H
R R'
O Zn(Hg)HCl
R R'
H H
Br
H
CH3ONa
Br
t-BuONa
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 6 – 名城大学理工学部応用化学科
注4:上の反応では、立体障害の大きな塩基はむしろ避けたほうがよい。あまり立体障害が大きいと、メチル基からの H+引き抜きが起きる可能性がある。この場合は三級のハロゲン化アルキルで SN2との競争を心配する必要はないため、CH3O– のほうがよい結果を与える。
2-2-2. 7<>G��/�3�?H
アルキンは、部分接触水素添加によって、cis-アルケンを与える。
アルキンから trans-アルケンを合成する方法として、N]aF_: dissolving metal
reduction がある。この反応は、液体アンモニア中にアルキンをとかして、金属ナトリウム(または金属リチウム)を加えることで進行する。金属ナトリウムが電子を、液体アンモニアが H+ を供給し、新しい C–H結合が2本、transの位置に生成する。
2-2-3. C–CU?QH�8��/�3�?H
アルデヒド・ケトンは、ホスホニウムイリドと反応してアルケンを与える(Wittig
反応)。新しく生成する炭素-炭素結合が二重結合である。
1,3-ジエンとジエノフィルは、Diels–Alder 反応によってシクロヘキセン誘導体を与
える。2本の結合が同時に生成されるので、うまく利用できれば強力である。
カルボニル基と共役したアルケン、つまりα,β-不飽和カルボニル化合物は、アルド
ール縮合で合成できる(1-5. でも示した)。
CH3Br CH3ONa CH3
H2Lindlar cat.
H H
NaNH3 (liq.)
H
H������
OPh3P
EWG
EWGEWG������
O
H H
OO
NaOH
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 7 – 名城大学理工学部応用化学科
2-3. �/�3�?H
臭化(塩化)ビニルから HBr (HCl) が脱離すると、アルキンが得られる。この反応は E2 ではあるが、ハロゲン化ビニルは反応性が低いため、この反応には NaNH2 のように強い塩基が必要である。
関連する反応として、隣接する炭素原子に H, Br (Cl) が2個ずつ結合している化合物
から、2分子の HBr (HCl) が脱離すると、アルキンが得られる。この反応では、一段階目の脱離でハロゲン化ビニルが得られ、続いて二段階目の脱離でアルキンが得られる。塩基は二当量以上が必要である。
1-1. ですでに述べた通り、アセチリドを用いた炭素-炭素結合生成反応でも、アルキ
ンが得られる。
3. DXABI>Gh%1�3=�/�/4%1�3=�.5/�9
ハロゲン(特に塩素・臭素)を含む化合物は、合成中間体として非常に有用である。ここでは、ハロゲンが sp3 炭素に結合しているハロゲン化アルキルと、芳香環に結合しているハロゲン化アリールについてまとめる。
3-1. %1�3=�/�/�?H
3-1-1. -��/R%1�3=�%1�3=�/�/�?H
アルカンのラジカル的ハロゲン化によって、ハロゲン化アルキルが得られる。アルカンに官能基を導入する手段は少ないので、この方法は有用である(注5・6)。ただし、選択性に乏しい場合もあるので、注意を要する。
CH
CBr
NaNH2C C
CBr
HCH
BrC C
NaNH2(2 eq.)
CBr
BrCH
HC C
NaNH2(2 eq.)
C CR C CR R' �R'��������H
(1) NaNH2(2) R'–Br
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 8 – 名城大学理工学部応用化学科
注5:「hv」は「光照射」という意味である。この表記は、量子力学において、振動数ν(ギリシャ文字の「ニュー」)を持つ光のエネルギーが hν(hはプランク定数)の整数倍であることに由来している。
注6:ここでは、ラジカル反応が Br2 の光吸収によって開始されるとしたが、hνのかわりに「BPO、加熱」としてもよい。
N-ブロモスクシンイミド (NBS) とラジカル開始剤を用いた反応では、二重結合に隣接する C–H(アリル位の水素)が選択的に臭素化される(Wohl–Ziegler 反応)。
3-1-2. McC7<>G�%1�3=�/�/�?H
アルケンに対する HBr, HCl の付加によって、臭化アルキル、塩化アルキルが得られる。位置選択性に注意を要する。安定なカルボカチオンを生成する炭素原子にハロゲン原子が結合する。
アルケンに対する Br2, Cl2の付加によって、1,2-ジブロモ化合物、1,2-ジクロロ化合
物が得られる。
Br2, Cl2 の付加の際に、溶媒または分子内の近くに求核剤が存在するときは、「Brと求核剤」「Clと求核剤」が付加した化合物が得られる。この反応の位置選択性は、安定なカルボカチオンを生成する炭素原子に求核剤が結合するものである。
3-1-3. YWJMKVI>G�%1�3=�/�/�?H
三級アルコールと HCl, HBr との反応により、三級ハロゲン化アルキルが得られる。
Br + HBrBr2
hvCH3 CH2BrBr2
hv
NBS, BPO
Br
NBS = N
O
O
Br
Wohl–Ziegler��
HBrBr
Br2Br
Br
Br2Br
OHH2O
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 9 – 名城大学理工学部応用化学科
同じ反応は一級・二級アルコールでも可能であるが、加熱が必要で、副反応を伴うことが多いため、次に述べる PBr3, SOCl2 との反応の方が優れている。
アルコールと PBr3, SOCl2 との反応により、ハロゲン化アルキルが得られる。この反
応は適用範囲が広く、有用である。
3-2. %1�3=�.5/�?H
芳香環に直接ハロゲンが結合したハロゲン化アリールの合成には、前節で示した方法はどれも適用できない。代わりに、Br2, Cl2 とルイス酸触媒を用いた芳香族求電子置換反応を用いる。
置換ベンゼンに対して芳香族求電子置換反応を行う場合は、配向性に注意する。
4. DXABI>Gh�/�5/�9
アルコールは、sp3炭素に結合した OH基を持つ化合物である。アルコールの OH基は合成上重要な官能基である。アルコール自体が目的生成物であることもあるし、合成の中間生成物としてアルコールを経由することもある。
4-1. �/�3��7<>G��/�5/�?H
アルケンは、酸触媒水和反応によってアルコールを与える。ハロゲン化水素の付加と同様、位置選択性に注意を要する。安定なカルボカチオンを生成する炭素原子に OH基が結合する。
位置選択性を逆転させる手段として、&!1(�T= hydroborationとそれに続く酸
OHHCl
Cl
OHPBr3
Br
OHSOCl2
Cl
Br2 , FeBr3Br
Br2 , FeBr3 CO2MeCO2Me Br
H2O
OH
, H2SO4
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 10 – 名城大学理工学部応用化学科
化反応を用いる方法がある。
この反応の第一段階にあたるヒドロホウ素化は、アルケンに対する求電子置換反応で
ある。水の付加と比べて位置選択性が逆転するのは、求電子剤が H+ でなくホウ素原子であることによる。まず C–B結合が生成され、第二段階の酸化反応でホウ素が OH 基に置き換わる。
4-2. �/)#/=?P��7<>G��/�5/�?H
アルデヒド・ケトンは、水素化ホウ素ナトリウムで還元されてアルコールを与える(注7)。
注7:反応機構で分類すると「ヒドリド等価体の付加」であるが、合成反応としての分類では、アルデヒド・ケトンからアルコールを作る反応を「還元反応」と考えるのが普通である。
エステルは、水素化アルミニウムリチウムで還元されてアルコールを与える。
カルボニル化合物と Grignard 試薬の反応では、炭素̶炭素結合が生成すると同時に、
アルコールが生成する。この反応については 1-3. で述べた。
カルボニル化合物とエノラートの反応では、炭素̶炭素結合が生成すると同時に、ア
ルコールが生成する(アルドール付加)。この反応については 1-5. で述べた。
(1) (BH3)2(2) NaOH, H2O2
OH���������
(BH3)2BH2
H
NaOHH2O2
OH
H
����
���
R R'
O (1) NaBH4(2) H+
RR'
OHH
R OMe
O (1) LiAlH4(2) H+
RH
OHH
R
O
R'
R'' MgBr(1)(2) H2O
RR'
R''OH
R
O
OMe
R'' MgBr(1)(2) H2O
(2 eq.)
RR''
R''OH
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 11 – 名城大学理工学部応用化学科
4-3. YWJMKVI>G��/�5/�?H
ハロゲン化アルキルは、脂肪族求核置換反応によってアルコールを与える。一級・二級ハロゲン化アルキルの場合は SN2 条件、三級ハロゲン化アルキルの場合は SN1 条件が適している。
一級・二級ハロゲン化アルキルでは、酢酸ナトリウムで置換反応を行ったあと、エス
テルのアルカリ加水分解でアルコールを得る方法もよく用いられる(4-4. も参照すること)。この方法は、二級ハロゲン化アルキルで脱離反応が競争しやすい場合に、特に有効である。酢酸イオンは塩基性が弱いため、脱離反応を起こしにくいからである。
エポキシドは、求核剤と反応してアルコールを与える。この反応は、反応機構上は SN2
に分類されるが、実際には付加反応である。アセチリドと Grignard 試薬による求核付加は 1-1, 1-2 ですでに述べた。他の求核剤も使うことができる。
4-4. �/)3`���/�<L;]��/�5/�?H
カルボン酸エステルを加水分解すると、カルボン酸とともにアルコールが得られる。
O
H
ONaOH, O OH
R BrNaOH
R OH
R BrNaOH
R OH
R' R'
R BrH2OR'
R''R OHR'
R''
R Br
R' CH3CO2NaR O
R' O
CH3NaOH
R OH
R'
C CRO
C CR OH(1)(2) H2O
Na+
R MgBrO
(1)(2) H2O R OH
O(1) NaOH(2) H2O
HO OH
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 12 – 名城大学理工学部応用化学科
この反応は、反応機構での分類だとつい見落としがちだが、有機合成の現場では極めて頻繁に用いられており、重要な反応である。
5. DXABI>Gh�5�/�9
5-1. �/�3��7<>G��5�/�?H
アルケンは、酸触媒によるアルコールの付加によってエーテルを与える。ハロゲン化水素や水の付加と同様、位置選択性に注意を要する。安定なカルボカチオンを生成する炭素原子に OR基が結合する。
位置選択性を逆転させたい場合は、前回に述べたヒドロホウ素化-酸化を用いてまず
OH 基を導入したあと、次に述べるWilliamson エーテル合成を使う。
5-2. YWJMKVI>G��5�/�?H
アルコール・フェノールは、共役塩基に変えた後ハロゲン化アルキルと反応させると、エーテルを与える(Williamsonエーテル合成)。この反応は SN2 なので、ハロゲン化アルキルは一級または二級である必要がある。
アルコールを共役塩基に変えるためには、NaH などを用いる。フェノールはアルコールよりも酸性度が高いため、NaOH でも共役塩基に変えることができる。アルコール・フェノールのままでは SN2 反応は起きないことに注意。
6. DXABI>Gh�*��!�9
エポキシドは三員環のエーテルである。求核剤との反応によって三員環が開いて付加生成物を与えるので、合成中間体として有用である。
O CH3R
O NaOHR OH
CH3OH
OCH3
H2SO4
OH
(1) NaH(2) CH3Br
OCH3
OH
(1) NaOH(2) CH3Br
OCH3
有機化学Ⅱ 講義資料 第 27回「合成デザイン (1)」
– 13 – 名城大学理工学部応用化学科
アルケンは、過酸との反応によってエポキシドを与える。
過酸としてよく用いられるのは、過酢酸 CH3CO3H またはメタクロロ過安息香酸
m-chloroperbenzoic acid (mCPBA) である。
2-位にハロゲン置換基を持つアルコール(β-ハロヒドリン)は、塩基で処理すると
エポキシドを与える。これは分子内の SN2 反応である。
7. 6@��525!
今回はキーワードを特に列挙しない。各節の小見出しと、四角囲みで示した新反応について予習・復習しておくこと。 【教科書の問題】
第7章:26, 49 第 19章チュートリアル(p. 1088):1, 2, 3, 5
CH3CO3H
O
Cl
CO3H m-��������m-chloroperbenzoic acid(mCPBA)
OH
Br NaOH
O