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化学火災編 こんにちは。いつものです。皆さん平和にお過ごしのこととお喜び申し上げます。「お慶び」なのでしょ うか。お悦び・・日本語は難しいです。 本編に入る前に、少しお話をしたいのですが、私の仕事はひと言で言うと、火災予防を通して皆さんの 幸福な生活に貢献することです。ただ、この火災予防という仕事を 「評価」 するのは意外と難しいんです よ。 というのは、火災件数が20件減ったという年間件数の単純な比較であれば、客観的な数値で比較でき ますから一応の評価はできます。 ただ、この場合は「何をしなくても20件減ったのかも知れないし、特に顕著な予防活動を行った成果な のか、どちらとも判定はできないものの、一応減少している点は評価できる」・・こんな感じの気持ち悪い評 価なんですね。 また、「こういう広報を行ったところ、今月は例年より5件減りました」と言えれば「それは良くやった」と褒 めて貰えるかも知れないのですが、そう言える為には何も広報をしなかった場合の、同じ宇宙と比較しな ければ分かりません。我々の言葉でいうと 立証できません。そこでは、ここより5件余計に発生している筈 なのですが。 同じ宇宙・・・ しか し、そ ん なSF の ような ことは で きませ ん 。で きませ ん か ら、結局のところ「火災予防」の仕事の成果を評価するためには、年間 の火災件数を比較する程度ということになります。 こういう道筋から言うと、予防の仕事を一生懸命やったとしても、得るこ とのできる評価はあまり期待できないということになってしまいます。でも真剣に仕事に取り組んだ結果を 適正に評価して欲しいのは誰でも一緒ですよね。いったいどうしたらいいでしょうか・・全国の若い予防マ ンが一度は陥る、落とし穴です。 お答えします。それはどうしようもありません。(笑) 要するに「起きた」ことの原因は調べれば分かります が、 「起きなかった」 ことの原因は誰にも分からないのです。 でも、仕事をした喜びはきちんと用意されていますから頑張りましょう。その喜びについては、いま教え る訳にはいきません。 (結局教えないのか・・) ・・仲間内のブログではないので、ぼやきもこの辺にして本編に入りた いと思います。 今回は化学火災に入りますが 「化学工場でもなく実験室でもない 一般家庭で、化学火災は関係ないでしょ?」・・そんな風にお考えでは

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化学火災編

こんにちは。いつものTです。皆さん平和にお過ごしのこととお喜び申し上げます。「お慶び」なのでしょうか。お悦び・・日本語は難しいです。

本編に入る前に、少しお話をしたいのですが、私の仕事はひと言で言うと、火災予防を通して皆さんの

幸福な生活に貢献することです。ただ、この火災予防という仕事を「評価」するのは意外と難しいんです

よ。

というのは、火災件数が20件減ったという年間件数の単純な比較であれば、客観的な数値で比較でき

ますから一応の評価はできます。

ただ、この場合は「何をしなくても20件減ったのかも知れないし、特に顕著な予防活動を行った成果な

のか、どちらとも判定はできないものの、一応減少している点は評価できる」・・こんな感じの気持ち悪い評

価なんですね。

また、「こういう広報を行ったところ、今月は例年より5件減りました」と言えれば「それは良くやった」と褒

めて貰えるかも知れないのですが、そう言える為には何も広報をしなかった場合の、同じ宇宙と比較しな

ければ分かりません。我々の言葉でいうと立証できません。そこでは、ここより5件余計に発生している筈

なのですが。

同じ宇宙・・・

しかし、そんなSFのようなことはできません。できませんか

ら、結局のところ「火災予防」の仕事の成果を評価するためには、年間

の火災件数を比較する程度ということになります。

こういう道筋から言うと、予防の仕事を一生懸命やったとしても、得るこ

とのできる評価はあまり期待できないということになってしまいます。でも真剣に仕事に取り組んだ結果を

適正に評価して欲しいのは誰でも一緒ですよね。いったいどうしたらいいでしょうか・・全国の若い予防マ

ンが一度は陥る、落とし穴です。

お答えします。それはどうしようもありません。(笑) 要するに「起きた」ことの原因は調べれば分かります

が、「起きなかった」 ことの原因は誰にも分からないのです。

でも、仕事をした喜びはきちんと用意されていますから頑張りましょう。その喜びについては、いま教え

る訳にはいきません。(結局教えないのか・・)

・・仲間内のブログではないので、ぼやきもこの辺にして本編に入りた

いと思います。

今回は化学火災に入りますが 「化学工場でもなく実験室でもない

一般家庭で、化学火災は関係ないでしょ?」・・そんな風にお考えでは

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ありませんか? ところがです、いま皆さんの身の周りのものをちょっと見回してみて下さい。

目に入るほとんど全てのものが何らかの化学製品ではありませんか?本があれば何らかの薬品で印刷

されていますし、パソコンの躯体は樹脂でできています。そのマウスもそうですよね。むしろ化学と関係し

ない物品を探す方が大変です。

これだけ化学製品に囲まれて暮らしている訳ですから、化学火災

が一般家庭だから関係ないとは、とても言えないことがお分かりかと

思います。

化学火災を定義すると次のように分類することができます。

1. 自然発火

2 .混合発火

3. 引 火

4. 爆 発

この辺りからお話を進めていきましょう。

自然発火とは

自然発火というのは、油の発火でも出てきましたが、物質の発火温度に達した時に自ら発火することで

した。ただ、ここでいう化学火災を扱う際の自然発火というのは前と若干ニュアンスが違っていて、「ある物

質が常温の空気中で自然に発熱して、その熱が長期間(時間)蓄積され、ついに燃焼を起こす現象」こん

な風に定義できます。

物質が自然発火する条件としては、まず第一に酸化・分解の時に発生する反応熱がかなり大きく、かつ

蓄熱しやすい状態にあることが必要です。一般的には熱が物質の内部に蓄積しないと内部の温度が上

昇しないので、自然発火は起こりにくいということになります。

次に関係してくるのは熱伝導率ですが、これは高温側から低温側へ熱エネルギーが伝導することを熱

伝導といい、この大小を規定する量を熱伝導率と定義しています。

その物質の熱伝導率が小さいほど保温効果がよく働いて熱が蓄積され易く、一般に粉末の状態、繊維

状態のものは空気を多く含んでいるので断熱性がよいため、熱の蓄積が行われやすくなります。

その他の条件として、空気の流動、また熱の発生する速度、水分等の種々の条件がありますが、一般に

高温多湿の雰囲気中で起こり易くなるようです。

その発熱機構をみると、①酸化熱 ② 吸着熱 ③ 分解熱 ④ 発酵熱 ⑤重合反応熱等があります

ので、以下これらについて簡単に説明します。

① 酸化熱について

これは油脂類等の酸化されやすい物質が、空気中の酸素を吸収して、それに伴う反応熱が蓄積さ

れて発火するものです。

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油脂類というのは植物油、動物油等、細かく分類していくと色々ありますが、こうした油を繊維類(ぼ

ろ布、紙、わら、枯れ草等)や、金属粉の表面に付着すると、空気との単位体積あたりの表面が大きくな

り、酸化が促進されることになります。

こういう状態で、元々熱かったものの余熱が残っている場合、また大量に堆積しているなどの条件が

揃うと、酸化によって生じた熱が蓄積され易い状態にあるため、一層酸化が促進されて、発火の為には

好条件ということになります。

チェックポイント

ア. 天ぷらの揚げかすを金網ザル等に大量に入れておくと余熱発火する場合がある。

イ. 油の染みた衣類を洗濯した後、衣類乾燥機で乾燥させ、その後カゴに詰めて2時間後に発火した

例もあるので、乾燥しても堆積しておかない。

ウ. 木工用つや出し塗料を拭き取ったウェスも堆積しておくと発火の危険がある。

エ. 油絵の具用の画用液を拭き取ったウェスも危ない。

・・一般に繊維類に染み込んだ油は悪い仕事をするようなので、一枚で乾燥させる分には安全なの

ですが、大量に積んでおくのは危険です。一般家庭ではあまりないような気もしますが。

② 吸着熱について

炭の粉のような、炭素粉末類は製造した直後とか、粉砕してまもな

いときには表面が活性で、空気中にさらされた場合、空気中の各成

分気体を物理及び化学吸着します。

このときに吸着熱が生じ、更に酸素を吸着した部分で、吸着酸素

と炭素とにより酸化反応が起こり発熱します。この吸着熱と酸化熱が

相乗的に作用して、蓄熱条件が良ければ自然発火することになりま

す。

昔と違い、一般家庭ではほとんど使用しなくなっていますが、アウトドア用に使用して物置に放置した

ものが、悪い条件が重なって・・ということはあり得るので、保管する場合は、粉々にするような乱暴な扱

いをしないことと、高温多湿な環境にならないようにということになります。

③ 分解熱について

酸化等の化合とは反対に、一つの物質から全く性質の異なる2種類以上の物質ができる反応を分解

といい、この際に発生する熱が分解熱と定義されます。

この分解熱で発火する物質としては、硝化綿(ニトロセルロース)やセルロイド等ですが、硝化綿はセ

ルロイドや火薬の原料として使用されるもので、一般生活の中ではほとんど関係してこない物質と思わ

れます。

セルロイドは最も古くから利用されているプラスチックです。無色透明で美しい着色ができ、強度・弾

性・表面固さ・寸法安定性等に優れていますが、熱に対しては敏感で、75℃で軟化、165~170℃で

発火し、急激に燃焼します。

用途としては、パチンコ台の飾り、眼鏡フレーム、ピンポン玉、石鹸箱、クシ等に現在でも使用されて

いるので、こうしたものを数多く保管しておく場合は注意が必要です。

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また古い映画フィルムは、昭和33年頃まではセルロイドがフィルムベースに使用されていたので、自

然発火の危険性があります。

④ 発酵熱について

発酵というのは簡単に言うと、「酵素の作用によって有機物が簡単

な化合物に変化して、自由エネルギーを放出する現象」であり、一

般的には微生物が有機物を分解して代謝物を蓄積する現象をさし

ています。

何だか、こうして説明されても難しい現象だと思いますが、納豆だ

とか、キムチその他、この現象の恩恵は生活の中で非常に多く受け

ています。(特に美味しくなる方向ですよね) この原理は、大体のイメージが

把握できればいいのかなと思います。

火災と関連した発酵ということになると、通常、乾燥した「ワラ」とか「木屑」等をそのまま放置しても自

然発火は起こりませんが、野積みにされた状態で堆積すると、地中でバクテリアがこの木屑等を分解し

て、炭酸ガス、アルコール等を生成し、発酵熱を生み出します。

木屑が山積みにされたような状態にあると、熱が蓄積して温度が上昇します。温度が上がるとバクテ

リアによる分解が促進されて木屑等の成分である植物油等が分離して、ある程度温度が上昇すると、

バクテリア醸酵が阻害され、次に分離してきた植物油等の酸化反応が進行して、更に温度が上がりつ

いには発火する・・このような順序で、結構時間をかけて発火に至ります。

管内でも、野積みにされた木チップの山が火災になっていますが、山の表面にできた黒い部分から

煙が出て、焚き火の跡のようなものでしたが、消火にかかり内部を掘ってみると、内部では大変な規模

で炭化していたような状況です。

また、牛の飼料用にまとめたワラの束が燃えている例もあります。暑い夏で湿度が高い時などは、こう

した場所にも注意の目を向けて下さい。

⑤ 重合による発熱(重合熱)について

これを分かりやすく説明するのは逆に難しいのですが(汗)文献上の言葉を紹介すると「一種類の単位

物質が、その物質の倍数の分子量をもつ物質に移行する化学変化」なのですが、最近は石油化学や

高分子化学分野も発達しており、一種類だけでなく二種類以上の単位物質が、他の物質の離脱や付

加を伴うことなく結合する反応をいうようです。そしてこの際に発生する反応熱を重合熱といいます。

報告されている例もそう多くはないのですが、身近な例としては、防水塗料の重合熱があります。

これはFRP防水と呼ばれる塗料で、木造住宅のベランダや屋上駐車場に使用されているものですが

ポリエステル樹脂に一定量の硬化剤を混合させると、硬化速度が約1時間と早く、しかも硬度があること

から、防水層の劣化を保護するための最終仕上剤として広く使用されているものです。

事故例は、この作業で使用した18ℓ缶に約2㎏の塗料が残っており、その中に塗料を拭き取ったウエ

ス(ボロ布等)を一緒に入れて放置した為、防水用の塗料の重合反応によって発熱して、ウエス等に着

火したものです。

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これと似たような状況では油絵具と、それを早く乾かす為の速乾剤との間でこの現象が起きて、拭き

取った布から自然発火している例もあります。

まとめ

化学火災のうち、自然発火に焦点を当てて、日常生活の中で可能性のあるものを挙げてみましたが、

この他にも金属ナトリウムだとか、また水素化リチウム等の自然発火による火災例もありますが、何れも

専門工場での事故であり日常生活とはほとんど関係しないため、引火、爆発と共に、ここでは割愛しま

した。

一点、生石灰について補足しておきますと、これは用途としては鉄鋼、カーバイド、紙、パルプ等の

原料として使用されたり、さらし粉、肥料の原料としても使用されるものです。

管内でも消毒用として、ぶどう農家の作業小屋に保管されている例が多いのですが、発熱機構とし

ては何らかの水分と反応して熱を発生させるので、雨漏りや、水の流入には注意が必要です。

火災例としては、生石灰自体が燃える温度(2千度以上)にまで達する訳でなく、また、石灰の量も熱

を蓄積するだけのものが必要ですが、発熱をしたときに近くに紙等の燃え易いものがあれば着火する

場合があります。

これも例によって最初の火は小さくても、人目に着きやすい場所に置いておくことはむしろ少ない物

ですから、火災に拡大する可能性は高い火ということになってしまいます。水分と反応した後は、消石

灰となって、グランドのライン引き等に使用されるものです。

このように、化学火災、とりわけ自然発火というのは、全く思いがけない場所から、しかも雨漏りが火災

の原因になる場合もある等、「一般人がそんなこと知るか」 と言いたくなるような現象もあり、ただ、「あ

まり聞いたことがない」若しくは「見たことも聞いたこともない」ということ自体は、皆さんが勉強不足という

訳ではありません。

原因調査上この種の火災は、これが出火原因と断定できる証拠

が見つからない場合が多いことから、明確な発表ができないだけで

「原因は不明」と判定された中に、この手の原因が数多く眠っている

可能性はあります。

また、火災の出火原因には個人情報も多く含まれるため、個々の

火災について火元者以外の人には原則開示しません。こうした理由が複合して、「発表されないから一

般の人は知りようがない」という、あまり良くない構図ができてしまっているのだと思います。

ですから、こういうメジャーでない話題については知っている人が教えなければいけないのです。知

識があれば誰でもそれを防げる要素はたくさんある筈なのです。

・・というようなことを言って自画自賛するつもりはありませんが、もしこの中に「えっ、あれ危なかった

の?」というようなことがあれば、今後是非それを注意して下さい。または今すぐその場所を確認して下

さい。化学火災は非常に静かに、そして深く潜航して、発火する機会を窺っている場合があります。

化学火災と呼ぶから現実離れした感を持つものとすれば、もっと身近な名前、例えば揚げ玉火災だ

とかの名前をつければいいのかも知れませんね。でもこれはあまり恐い感じがしないので、もっと恐い

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名前を考えてみて下さい。

それでは、次は微小火源火災に入りたいと思います。

微小火源火災編

「微小火源火災?」こういう言葉を使うと、微笑と同じ響きですから何となく優しげな感じがしますが、

結局は火事を出してしまう存在ですから、優しい筈がありません。

微小火源というのは、「炎」のない無炎燃焼を示しているもので、その燃えている状態や、見かけ上の

エネルギー量が(光とか熱)が極めて小さい発火源のことをいいます。

たばこの火、線香、溶接の火花、焚き火の火の粉等が挙げられますが、原因調査上はなかなか厄介

な存在で、他の燃焼器具とか電気器具などからの火災と違い、発火

源を物的証拠として追跡するのは困難という特徴があります。

ですから、出火原因を立証する場合は、周囲の状況、例えば近く

で焚き火をしていなかったか、風の向きは、また、割れた灰皿のかけ

らはないか、その近くに他に発火源になり得るものは無かったの

か・・このような確認作業を通してしか判定できないことが多くなります。

微小火源による火災は、始めから炎が立ち上がるのではなく、布団や紙屑等の着火物が無炎燃焼を

継続して、ある程度燃え込んだ後、空気の流動等の周囲条件によって炎となって燃えあがるという経過

をたどります。

このような燃焼状況を科学的には 「燻焼(くんしょう)スモルダリング」 と呼んでおり、熱による炭素を含んだ

固体物が直接酸素と反応して、固体の表面で無炎燃焼しているものです。この高温の固体が隣り合っ

た燃えていない部分を加熱して、今度はそこが熱分解を起こして新しい炭化固体を作り、同じように固

体の表面で燃焼して・・と、それを繰り返して、緩慢な速度で継続するため、火の保存性がいいという特

徴があります。

こうした特性は木炭ですとか、練炭等の燃え方をみれば分かるように、長時間暖房として適していると

いうことでもあるのですが、火災の原因として考えると、余計な特性とも言えますよね。

この火災原因のトップに位置するのは、やはりタバコなので、タバコについて少し考えてみることにし

ます。

タバコについて 余談から入るのはどうかとも思うのですが、最近の国民こぞって右習いの喫煙者排除の雰囲気は少し

気持ち悪いと思いませんか?自由の思想は日本から無くなったのでしょうか・・

本題に入りますが、タバコは一度着火すれば、表面燃焼部及び未燃焼部から酸素の供給を受けて、

常温の空気中では燃焼を継続します。

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最も多く酸素の供給を受けているところは先端であり、巻紙部分の燃焼に大きく影響しています。な

お酸素濃度が16%以下では燃焼しません。

一般に、燃焼という現象は、火災や爆発のような災害を除くと、酸化反応を行い、その時に発生する

熱をエネルギーとして利用する場合や、または反応の結果生じる生成物を用いる場合、これら何れか

の使い方をする訳ですが、タバコの燃焼は後者に入ります。

順を追ってタバコの燃え方を見てみると、ライターで点火されたタバコの葉は炎をあげず燃焼し、この

時に生じた熱はこれに接した未燃焼のタバコの葉を加熱します。この部分でたばこの葉が熱分解を起

こしガス状の分解生成物が発生します。

これをフィルター側から吸引する訳ですが、タバコが紙や木と異な

り喫煙者に心地好い興奮作用を起こさせるのは、タバコの葉の分解

生成物中にニコチンのようなアルカロイドや、各種のタールが含ま

れるからであり、味やにおいの違いもこれらの成分によることになり

ます。

フィルターは活性炭、細い繊維状物質によって構成されており、主に生成物中のタールを減少させる

役目を果たしています。また吸引という操作は、これらの分解生成物を口に運ぶのと同時に、空気を吸

い込んで無炎燃焼を継続させる役割を果たしています。

タバコの温度

① 放置したときの温度

一般にタバコの温度は中心部で700℃~800℃、表面で200℃~300℃の範囲といわれて

います。各種銘柄のタバコで実際測定しても、大体この範囲で収まるようです。

② 喫煙時の温度

通常の喫煙時のように間欠的な吸煙を行う場合は、燃焼部分の温度分布や最高温度が時々刻々

と変化します。放置した場合は燃焼部分の中心付近の温度が最も高く、周辺部ほど低くなります。

吸煙を行うと、大部分の外気は巻紙の燃焼端付近から吸い込まれる為、この部分の燃焼が促進さ

れて850℃~900℃にもなります。

出火危険について タバコの温度だけをみると中心で800℃もあり、各種の可燃物、例えば畳に落とした場合とか、新聞紙の上に落とした場合、また布団の上に落とした場合等、これらの物品の発火温度は大体400℃~60

0℃の範囲に収まっていることを考えると、ただちに燃えそうな気もしますが、温度だけで着火性を論じ

ることはできません。

というのは、タバコを可燃物と接触させると、可燃物に熱を奪われて火種が消えてしまう場合も多く、

着火するためには、加熱が放熱を上回る必要がありますから、タバコの火は小さく、周囲への放熱とか

拡散によって全ての温度が可燃物に伝導することはないため、風とか湿度等の他の条件が重ならない

と、逆に着火させようとすると難しいということになるからです。

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これを逆読みすると、これらの条件が揃った場合に、出火する危険があるということになりますから、各

種の可燃物とタバコの接触実験の結果を見てみると・・

畳の場合

畳は全て「いぐさ」で作られているもの、畳表のみいぐさで内部が発泡ウレタン等が使われているもの

(スタイロ畳)また、全ての材料にプラスチックを使用しているものがあります。

何れも火のついたタバコが落下した場合、タバコは無炎燃焼を継続しますが、タバコが燃え切った以

降も無炎燃焼を継続するためには、風とか他の可燃物の条件が必要になります。

ただし、畳の縁(へり)にタバコが落下した場合は、隙間からの通気によって、タバコが燃えきった後も

無炎燃焼を継続する場合があります。

板張りの場合

畳の場合と同様に、風又は他の可燃物の接触がある場合や、板の隙間にタバコが接触した場合以

外では、タバコが燃え切った後の無炎燃焼の継続は困難ということになります。

座布団等の場合

座布団の場合は、タバコが燃え切った後でも無炎燃焼を継続し易く、座布団の上に新聞紙でも乗っ

ていれば更に発炎しやすくなり、火災になる可能性は高いものと考えられます。

ただ、新聞紙単独の場合は、表面からの放熱が大きい為か、タバコに接している部分のみ炭化させ

て無炎燃焼を継続しにくいという結果も出ています。ただ、これも新聞紙に挟まれたような場合は放熱

が小さくなって、燃え上がる場合もあります。

こうしてみてみると、タバコはそれほど怖くないというような感じもしますが、実際にはたばこによる出火

は毎年原因の上位を占めており、それだけ火源が多いことを示しているのかも知れません。一人で一

日一箱吸うと、20本の火源がどこかにある訳ですからね。バッシング?を少しは抑える為にも、愛煙家

の皆さん、吸殻の始末はしっかりしましょう。(自戒)

チェックポイント

① ガラス製の灰皿に多量に溜めた吸殻が無炎燃焼を起こすと、灰皿の

内側は大変な高温になり、外側は内側より放熱性が良く低温であるため、

その温度差によって小爆発的に壊れます。

壊れると、火の着いたタバコが周囲に散乱することになりますから、周囲の状況によっては火災にな

る確率は高くなります。分厚いガラスの方が温度差が大きく、勢い良く割れます。

② ごみ箱に捨てた吸殻に火が残っていた場合、ごみの種類やその密度によって違いますが、紙屑等

の場合は、実験でも無炎燃焼から有炎燃焼に変わる確率は高いようです。その際、1時間から2時間

後の出火という例もあり、ごみ箱に吸殻を捨てて、30分後に仕事に出かけたとしても、その時点では

何の異常も感じなかったということになります。吸殻の始末は水でする習慣をつけた方がいいかと思

います。

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③ 布団の中に挟んだタバコは蓄熱性が良く、無縁燃焼を継続し易い。こんなところにタバコがあるの

は、隠れタバコ少年が多いかと思いますが、大人も寝タバコには注意して下さい。酒を呑んでいる時

は特に危険で、一酸化炭素中毒も含めて、焼死している例が非常に多くなります。

まとめ 微小火源としてタバコについて少し詳しくお話しましたが、依然としてタバコによる火災は多く、ところが実験をしてみると、これがあまり燃えないのです。ですから、火災というのは本当に悪い条件が

重なった時でないと起きないということが言えます。

ということは、悪い条件が3つ揃えば燃えるという時に、一つか2つ揃ったところでストップさせる方

法、例えば座布団を防炎処理(クリーニング屋さんでやってくれます)しておいたり、灰皿には常に水を入れ

ておいたり、布団を防炎製品にしたり(少し値が張りますが) 防火スキルの上がった皆さんにとって、タバ

コ火災の確率はかなり低くなったことと思います。

この他の微小火源としては線香、香取線香そして最近はアロマテラピー用インセンス等も挙げられ

ますが、注意すべき点は無炎燃焼が持続し、何らかの可燃物と接触して有炎燃焼に変わる燃え方で

すから、これらを使用する周囲の状況が大切なのかなと思います。

例えば、座布団とか布団の上に落下してしまうような位置に灰皿を置かないこと。勿論わざわざお

香用の壺を座布団の上に置いたりしないように、簡単な注意で防ぐことができると思います。

車両火災編

いよいよ火災基礎編も最終章ということになりますが、車両火災も全国では年間7000件前後発生し

ており、走っている数からすればそう多くはないと、無視できるものではありません。何しろ人の命を乗せ

て、高速で動くものですから、悪くともエンジンがかからない程度の故障で済んで貰いたいですよね。

ただ、車の火災が恐いからと、一般の使用者が通常の注意で火災

を予防できる部分は残念ながらあまり多くはなく、定期的に点検して

いただくことが一番と言うしかありません。

しかし、それを言ってしまうと、車両編はここで終了してしまいます

(笑)ので、どのような原因で火災が発生するのか、その概略をお伝

えして、参考にして頂ければと思います。

つい最近も、あるメーカーでの大きな欠陥問題が報道を賑わせま

したが、まずリコールについて簡単に説明します。

リコールとは

自動車のリコール制度が日本に導入されたのは、昭和44年8月です。どういう自動車がリコールの

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対象になるかについては、その自動車が安全上または公害防止上の問題を有しており、且つその原因

が自動車メーカーにある場合で、ユーザー(使用者)側にその原因がある場合は、リコールの対象とは

なりません。

リコールを行う自動車メーカーは国土交通省へ「改善対策届出」を行い、届出に基づいてリコール内

容を報道発表し、ダイレクトメール等で全ユーザーに周知して、該当車両を無料で修理、部品の交換な

どの改善措置を行うこととしています。

リコールは、不具合が発生する可能性のあるものを対象としているのであって、全てのリコール対象

車が必ず不具合を発生するという訳ではありません。

車両火災の分類

車両火災を大きく分類すると、車両自体の構造等に起因して出火した火災、車内から出火した火災

放火による火災、そして交通事故による火災の4つに分けることができます。

このうち、車両の構造等に起因するものを更に分類すると、①電気系 ②燃料系(オイル含) ③エン

ジン系 ④排気系とに分けられますので、以下簡単に説明します。

①電気系について

ア.バッテリーの短絡

バッテリーのプラスターミナルにボンネット支持棒や、バッテリーを固定している金具が接触して出

火する場合があります。また、何気なく置いたスパナ等も接触して短絡する場合があります。

これは、車の構造上、マイナス側は車のボディに接続されているので、ボディの何れかの部分とプ

ラス側が直に接触してしまうと短絡を起こすことになります。

バッテリーのプラスターミナルからヒューズに至る間の配線や、セルモーターに至るケーブルは、ヒ

ューズの保護がないために出火する危険性が高い部分ということになります。

イ.スタータの配線の短絡

スタータの配線はバッテリーのプラスターミナルからスタータの端子に接続されている最も太い配線

です。始動のときに大電流が流れるためヒューズがありません。このため、短絡すると赤熱状態となり

出火する危険が大きくなります。

ウ.改造・後付けの配線の短絡

ヘッドライトやホーン、大出力のアンプ、スピーカ等を後付けして、使用者が自分で設置した為、配

線の措置方法が悪い例が多く、バッテリーのプラスターミナルから直結して配線している場合も多い

いことから、車体と擦れて短絡し出火しています。

エ.バッテリーターミナルの緩みにより出火

バッテリーはホームセンター等でも安く販売されている為、最近は自分で交換する方も増えていま

す。その際、ターミナルのナットの締めつけが不十分な場合、車の振動から隙間が開いて、接触不

良の状態となり、放電によるターミナルの過熱から出火する場合があります。

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オ.アース線離脱による出火

スタータモーターの配線は、エンジン本体にアースされていますが、エンジン本体については、振動防

止の為の緩衝ゴムで、車体から電気的に絶縁されています。このため、エンジン本体から車体へアース

線が複数設置されていますが、このメインとなるアースが外れたり、整備時に設置を忘れると、線の直径

が細い補助のアース線に電流が流れて、溶けて断線することがあります。

これが断線すると、エンジンと接触しているクラッチワイヤーや触媒の温度センサー、また金属メッ

シュの入った各種のホースに漏洩した電流が流れて、過熱から出火する場合があります。

・・これらは電気系の代表的なもので、この他にスタータモーターの過熱、オルタネーター端子の過

熱等がありますが、配線の取り付け部の緩みが相当大きい比率を占めています。

ボンネットを開けてみて、各種の電気関係のコード取り付け部が緩んでいないか程度の点検は

難しくないと思いますので、たまにやってみて下さい。

上記のエとオについては、管内でも発生しており、エについては住宅の1階にある車庫内での出

火から、家も危ない火災でしたし、オでは大型のトレーラーが燃えています。

②燃料系について

車の燃料といってもガソリンだけでなく、軽油・LPG・メタノール・水素ガス・太陽熱・電気等があっ

て、また車にはエンジンオイルを初めとした各種のオイルも使用されているので、これらの燃料やオ

イル等が漏れて火災となっているものがあります。

ア.燃料ホースの亀裂・ひび割れ

ゴム製燃料配管が古くなり劣化して、エンジンルーム内の熱影響や、走行時の振動などによっ

て亀裂やひび割れが生じて燃料が漏れ、ディストリビュータやハイテンションコード、またスパーク

プラグからのリーク(漏洩)火花等の発火源があれば、引火して燃える場合があります。

同じような原因として、ゴム製燃料ホースと金属配管との取り付け部で、ネジ式締めつけバンド

を使用している場合、これが緩んだり、又は締めつけ過ぎでも亀裂が生じて、燃料漏れを起こして

いる例があります。

イ.シリンダヘッドカバー取り付け不良によるエンジンオイル漏れ

シリンダヘッドカバー上部のボルトの締め付けが緩かったり、パッキンの取り付け方法が悪いと、

エンジンオイルが漏れて、下部の排気管に滴下して出火する場合があります。

ウ.各種オイルホースの劣化

ブレーキ用高圧ゴムホースやパワーステアリングオイル配管等が劣化していると、その作動時に

漏れる場合がありますが、何れも高圧のかかるパイプなので、霧上に吹き出す場合が多く、下部の

排気管にかかり出火する場合があります。、

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・・この辺りが代表的なものになりますが、燃える場合の多くは各種のオイルが排気管に直接降りかか

って燃える場合が多くなります。排気管といっても、エンジンに最も近い部分と、先端の方とでは温度

が違いますが、マニホールドと言われる直近の部分では、ガソリンエンジンで400℃以上の高温にな

っています。

実験をしてみると、ガソリンを振りかけた場合は、発火点に達する前に弾かれてしまい、殆どの場

合燃えませんが、オイルのように粘着性のあるものは、排気管上に留まって、発火してしまうようで

す。

③ エンジン系について

エンジン系では、エンジンの空吹かしによるオーバーヒートに関わるもの、エンジンオイルなどの

オイル漏れによるもの。またコンプレッサーによるもの等から火災が発生しています。

ア.エンジンガスケット部のオイル漏れ

ラジエータの水漏れやエンジンオイル不足によってエンジンがオーバーヒートすると、ガスケットが

変形損傷し、内圧によりオイル漏れを起こします。 このオイルが排気管にかかって出火する場合

があります。

イ. ブローバイガス還元装置からのオイル漏れ

(ブローバイガス還元装置は、ピストン圧縮時にクランクルーム内に漏れた未燃焼ガスをエアインテーク又はエアクリーナーに戻して燃焼させる排気ガス規制のひとつです。)

車内で寝込んでしまい、アクセルペダルを踏み込んだままだったり(空レーシング)すると、オー

バーヒートとなり、このブローバイガスが過熱し、シリンダーヘッドカバーに取り付けられたブローバ

イガス逆流防止バルブのパッキンが軟化して、オイルが噴出します。

これが排気管にかかり出火する場合があります。

ウ. エキゾーストマニホールドが過熱

上記イと同じような原因になりますが、連続空吹かしをすると、オーバーヒートしてエンジンが過

熱すると共に、マニホールドも過熱して、この高温自体で周囲の合成樹脂部品に着火した例もあり

ます。

エ. オイルフィルターの取付不良

オイルフィルターエレメントの交換の際、締付不良や古いエレメントのパッキンが残存したまま

新しいエレメントを取付け、パッキンの変形や亀裂によって、エンジンオイルが漏れる場合があり

ます。これも排気管の熱で出火します。

・・エンジンも、燃料系と共通して、オイルが排気管にかかって燃える場合が多くなっています。

④ 排気系

エンジンのシリンダー内で燃焼した後、排気弁から排出された排気ガスは、エキゾーストマニホー

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ルドを通り、フロントパイプ、触媒コンバータ、センターバイプ、マフラー(サブ・メイン)などを通過し

て大気に放出されます。この排気系の熱に伴って火災が発生しています。

ア.排気熱により、可燃物に着火

車庫内の段ボールや衣類などの可燃物に排気管が接触したまま止めたり、枯れ草の溜まった場

所に停車すると、排気管の熱や排気ガス、又は赤熱したスラッジ(燃えかす)の噴出などによって

出火する場合があります。

イ.排気管の腐食による出火

マフラーや排気管溶接部が腐食したり、走行時の振動等で亀裂が発生して穴が空き、高温の排

気ガスが貨物車の荷台下方の木製の床板に吹きつけて出火したり、乗用車の底板に吹きつけて

伝導熱によって室内のカーペット等に着火している例があります。

ウ.失火による触媒コンバーターの過熱

点火プラグの電極の磨耗や煤の付着等によって点火不良を起こすと、点火しなかった燃焼室か

ら燃えていないガスが排気管に流れて、触媒コンバータ内で燃焼を起こす為、その部分が過熱し

て、周囲の電気配線や車室内のフロアカーペット等が、放射熱により着火することがあります。

・・車両火災について代表的なところを急ぎ足で説明しましたが、2006年10月にも管内で4輪駆

動車が燃える事故がありました。これは前輪と後輪のサイズが違う状態で4輪駆動に入れていた為

にデフ部分のローラーベアリングに過大なストレスがかかり、ベアリングが潰れ、高速回転するシャ

フトとの金属摩擦で過熱し、オイルシール部分が溶融して噴き出したギアオイルに着火したもので

す。

4輪駆動車で、全後輪のタイヤサイズの違いで出火し

ている例は全国で起きていますが、その原因については

様々で、4輪駆動の方式によって燃える箇所が異なること

になります。

通常走行時は前輪駆動で、前輪がスリップした場合に

後輪に駆動力がかかる方式、また常時4輪に駆動力がか 潰れたベアリング

かっている方式、フリーホイールハブといわれる前輪と前輪駆動系を接続・切り離しをする操作が

必要な方式など色々あります。

これら4輪駆動の何れであっても、4輪に駆動力がかかっている状態では、4輪共に同じサイズの

タイヤを使用しないと、デファレンシャルギア(デフ)やクラッチ部分に無理がかかることになります。

ビスカスカップリングと呼ばれる4輪駆動の伝達部が燃えている例も報告されています。

タイヤの直径が違えば、一回転して進む距離も違っている訳ですから、本来であれば小さい方のタ

イヤが滑るか、又はブレーキがかかって走れない状態になるべきなのですが、砂利道だったり、タイヤ

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が跳ねて調整したり、クラッチを滑らせたりしながら無理を重ねて何とか走れてしまう場合があります。

通常はすぐ気づく不調が現れることの方が多いと思われますが、何らかの事情で気づかないで走

行した場合は、ストレスのかかった部分から出火する可能性が高くなりますので、4輪駆動車に乗って

いる方はタイヤサイズに十分注意して下さい。

この場合同じインチ径、例えば14インチであれば太さが違っていても大丈夫だろうと思われる方も

多いかも知れませんが、同じインチ表示であっても、太さが違う場合は外径も異なる場合があります。

タイヤの表示について下に示します。

この場合タイヤの幅は195ですから、19.5㎝となります。そして「14インチ」はタイヤのリム径(内径)を表しており、外径を表すものではないので、例えば同じ「14インチ」呼ばれるものであって

も、最初の195の部分が225と太くなると、外径で2㎝~3㎝程も異なる場合があります。

こうなると、一回転で10㎝近い距離の差がでることになりますから、仮にそのまま走れるような状態

だとデフ部分やクラッチ部分には過大なストレスがかかり、そこから出火する可能性が高くなりま

す。

自動車メーカーでも、このようなことから、4輪駆動車の説明書には「タイヤを交換するときは、4

輪とも指定サイズで同一サイズ、同一メーカー、同一銘柄及び同一トレッドパターン(溝模様)のタ

イヤを装着して下さい。」と明示する方針としています。

また、全て同一のタイヤであっても、極端に磨耗したタイヤが混じっていたり、空気圧が低いもの

が入っていると、類似した現象が起きる場合がありますので、これも注意して下さい。 (2輪駆動車は、前後輪のサイズが違っていても、このような現象は起きませんが、同一のものが望ましいと思います。)

火災基礎編のまとめ

・・ここまで、電気火災、燃焼機器火災、化学火災そして微小火源火災、最後に車両火災と、各種

の発火源ごとの分類でお話をしてきました。

いかがですか?火災の原因も知ってみると色々とあって、ひと言で「火の用心」といっても、何と何

を用心すればいいのか分からなくなってしまいますよね。実は説明している私も思っているんですか

ら、皆さんがそう思うのは当たり前かも知れません。

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こうした知識に興味を持つこと自体がなかなか難しく、日常の中であまり危険を感じてばかりいるの

も、精神衛生上あまりいい生活とは思えませんからね。ですから、必要最低限の注意で防げる範囲

で、各種の火災原因についてお話したつもりですが、簡単な講習会の資料としても使用できるように、

ある程度踏み込んでいるところもあります。

これは、中越地震を取材したアナウンサーの方から伺ったお話ですが、地盤状の問題で、まだ無

事だった家から家族で避難する際に、ある小学生の男の子が「ブレーカーを落として」 と家族に言っ

たそうなんですね。

例えばガス漏れが始まった時、また電灯配線が断線しかかっていた

時、火災や爆発を防ぐには大変に有効で、適切な指示だったと思いま

す。そのひと言が帰る家を確保してくれたかも知れませんし、帰ってきた

直後の爆発から家族の命を守ってくれた可能性すらあります。

この小学生はどこでこれを知ったのでしょうか? 阪神淡路大震災で

はいたるところで火災が発生しましたが、それらの色々なエピソードをテ

レビで見ていたか、学校の避難訓練で教えて貰ったのか、それは分かりませんが、こういうちょっとし

たヒントのような、ひらめきのようなもの、これが家族の命を守る場合もあるということを改めて教えられ

たようなエピソードでした。

こうしたひらめきを得るためには、真剣に勉強などしなくても、頭のどこかに残しておくだけでいいと

思いますし、ここまで付き合って下さった皆さんは、恐らく色々な場面でひらめきを得ることができるも

のと思います。

また、様々な火災危険の種類、それに対するチェックの方法を、周囲の人にも教えてあげて下さ

い。人に教えようと思うと、自分が何を分かっていなかったのかが改めて分かったりもします。

本編では「火災」に特化したお話をしましたが、何れ地震や水害等に対する総合的な防災スキル

をアップして頂けるような内容でお送りできればと考えております。その為には私も猛勉強をしなけれ

ばいけませんので、またその時にお会いしましょう。

火災の基礎編はこれで終了です。次回は、火災をとりまく法律についてお話を進めたいたと思い

ます。