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4
大学施設におけるヒート&クールトレンチの熱的効果に関する実測調査 自然エネルギー活用に関する事例研究 その 3 Survey on Thermal Effect of Heat/cool Trench of School Buildings Part3. Studies on utilizing natural energy sources 学生会員 ○神保 歩未(金沢工業大学) 技術フェロー 垂水 弘夫(金沢工業大学) 塩谷 正樹(三建設備工業) 技術フェロー 岩瀬 和夫(三建設備工業) Ayumi JIMBO* 1 Hiroo TARUMI* 1 Masaki SHIOYA* 2 Kazuo IWASE* 2 * 1 Kanazawa Institute of Technology * 2 Sanken Setsubi Kogyo Co. Ltd. In recent years, as the need for development of low-carbon architecture increases, practical use of the natural energy that surrounds buildings is attracting attention. Heat/cool trench systems make use of one such natural energy, subterranean heat. These systems reduce the fresh air load by introducing outside air through trench that pass beneath the bottom floor-slab before blowing the air indoors. This study involves a year-round measurement survey of outside air and indoor outlet temperature and humidity at school buildings. The effectiveness of using subterranean heat in a building is examined by calculating heat extraction in summer and heat addition in winter. 1.研究背景と目的 ヒート&クールトレンチは、建物の地下階や基礎梁部 分などを換気空気の経路とすることで、夏は高温の外気 を冷却し、一方冬は低温の外気を加熱して屋内に吹き出 すことが可能なシステムである。建築物の ZEBNet- Zero Energy Building)化実現に向けた要素技術の一つ として注目が高まっている。 本研究の目的は、北陸の規模や仕様も異なるヒート& クールトレンチの夏期冷却及び冬期加熱性能を把握しそ の要因を考察することにある。第二に、熱画像を用いた熱 量の簡易な推定方法の糸口を見出すことにある。また、ト レンチとエアフローウィンドウ(以下、 AFW)との熱的 効果の大きさの比較や、冬期における電気室排熱利用効 果についても検討する。 2. 実測概要 2.1 実測対象建物、トレンチ、AFW 概要 1 に実測対象建物概要を、図 1 に実測対象建物の平 面図を示す。 15 号館は電気室排熱利用が可能である。ト レンチにおける空気流路は、それぞれ金沢工業大学 15 館が 2.7m W ×1.4m H ×66.3m L 、七尾市小学校が 3.5m W × 2.4m H ×94.7m L である。表 2 AFW の概要を示す。 2.2 実測方法 温湿度計(Thermo Recorder TR-7wf )をトレンチの吸 込み口や吹出し口に設置し 15 分おきに記録する。 1 実測対象建物平面図 (2) 七尾市 小学校 (1) 金沢 工業大学 15 号館 吹出し口 外気吸込み口 吹出し口 1 吹出し口 2 N N 外気吸込み口 1 実測対象建物概要 2 AFW の概要 西面 3.1 W ×1.9m H ×1 ,3.1 W ×1.9m H ×5 東面 2.1 W ×1.9m H ×1 ,3.2 W ×1.9m H ×4 北面 3.1 W ×1.9m H ×1 ,3.2 W ×1.9m H ×5 南面 4.7 W ×2.1m H ×2 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2016.9.14〜16 (鹿児島)} -181- 第10巻 F-37

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大学施設におけるヒート&クールトレンチの熱的効果に関する実測調査

自然エネルギー活用に関する事例研究 その 3

Survey on Thermal Effect of Heat/cool Trench of School Buildings

Part3. Studies on utilizing natural energy sources

学生会員 ○神保 歩未(金沢工業大学) 技術フェロー 垂水 弘夫(金沢工業大学)

正 会 員 塩谷 正樹(三建設備工業) 技術フェロー 岩瀬 和夫(三建設備工業)

Ayumi JIMBO*1 Hiroo TARUMI*1 Masaki SHIOYA*2 Kazuo IWASE*2

*1 Kanazawa Institute of Technology *2 Sanken Setsubi Kogyo Co. Ltd.

In recent years, as the need for development of low-carbon architecture increases, practical use of the natural energy that

surrounds buildings is attracting attention. Heat/cool trench systems make use of one such natural energy, subterranean heat.

These systems reduce the fresh air load by introducing outside air through trench that pass beneath the bottom floor-slab

before blowing the air indoors. This study involves a year-round measurement survey of outside air and indoor outlet

temperature and humidity at school buildings. The effectiveness of using subterranean heat in a building is examined by

calculating heat extraction in summer and heat addition in winter.

1.研究背景と目的

ヒート&クールトレンチは、建物の地下階や基礎梁部

分などを換気空気の経路とすることで、夏は高温の外気

を冷却し、一方冬は低温の外気を加熱して屋内に吹き出

すことが可能なシステムである。建築物の ZEB(Net-Zero Energy Building)化実現に向けた要素技術の一つ

として注目が高まっている。 本研究の目的は、北陸の規模や仕様も異なるヒート&

クールトレンチの夏期冷却及び冬期加熱性能を把握しそ

の要因を考察することにある。第二に、熱画像を用いた熱

量の簡易な推定方法の糸口を見出すことにある。また、ト

レンチとエアフローウィンドウ(以下、AFW)との熱的

効果の大きさの比較や、冬期における電気室排熱利用効

果についても検討する。 2. 実測概要

2.1 実測対象建物、トレンチ、AFW概要

表 1 に実測対象建物概要を、図 1 に実測対象建物の平

面図を示す。15 号館は電気室排熱利用が可能である。ト

レンチにおける空気流路は、それぞれ金沢工業大学 15 号

館が 2.7mW×1.4mH×66.3mL、七尾市小学校が 3.5mW×

2.4mH×94.7mLである。表 2にAFWの概要を示す。

2.2 実測方法

温湿度計(Thermo Recorder TR-7wf)をトレンチの吸

込み口や吹出し口に設置し15 分おきに記録する。

図1 実測対象建物平面図

(2)七尾市小学校

(1) 金沢工業大学 15号館

吹出し口

外気吸込み口

吹出し口1

吹出し口2

NN

NN外気吸込み口

表 1 実測対象建物概要

表2 AFW の概要

西面 3.1W×1.9mH×1面,3.1W×1.9mH×5面東面 2.1W×1.9mH×1個,3.2W×1.9mH×4面

北面 3.1W×1.9mH×1面,3.2W×1.9mH×5面南面 4.7W×2.1mH×2面

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2016.9.14〜16(鹿児島)} -181-

第10巻

F-37

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3. 各トレンチの実測結果

3.1 各トレンチの温湿度

金沢工業大学 15 号館は 2015 年 6 月から 2016 年 1 月

17 日、七尾市小学校は 2015 年 6 月から 2015 年 9 月、

2014年10月から2015年1月17日の温湿度を図2に示

す。夏期における外気と吹出し口の月平均温度差が最大

となるのは 7月で 15号館では-2.5℃、七尾市小学校では

-3.4℃である。冬期における外気と吹出し口の月平均最大

温度差は 15号館では 2016年 12月の 9.6℃、七尾市小学

校では 2015年 1月の 5.6℃である。 3.2 各トレンチの取得・除去熱量の推定と比較

測定した期間の金沢工業大学 15号館、七尾市小学校の

取得・除去熱量を図 3に示す。表 3に各トレンチの取得・

除去熱量の月平均を示す。15 号館は顕熱除去よりも顕熱

取得が大きく、最大顕熱取得は 2015 年 12 月 17 日の

1559MJ/日(外気温度 3.3℃)である。七尾市小学校も顕

熱除去よりも顕熱取得が大きく、2014 年 12 月 2 日

1678MJ/日(風量 79086㎥/日)である。 15 号館と七尾市小学校の 7 月の顕熱除去と 12 月の顕

熱取得を比較すると、 イ) 7月顕熱除去 日平均 トレンチ表面積当り [MJ/日] [kJ/㎡・日] ・15号館 -394 -716 ・七尾市小学校 -15 -13 ロ) 12月顕熱取得 日平均 トレンチ表面積当り [MJ/日] [kJ/㎡・日] ・15号館 874 1589 ・七尾市小学校 1094 968 と要約できる。七尾市小学校は 7 月夏休み休業で連続運

転しなかったためトレンチ内にカビが発生し、トレンチ

の運転を停止した。その結果、七尾市小学校の顕熱除去は -15MJ/日と小さくなっている。15号館は連続運転である

ためカビ臭もなく、-394MJ/日の顕熱除去が得られた。15号館の顕熱取得 874MJ/日は顕熱除去の約 2 倍あり、ト

レンチは冬期に効果が大きくなる。また、トレンチ表面積

当りで見ると15 号館の顕熱取得・除去は七尾市小学校に

比べてそれぞれ 703MJ/日、621MJ/日大きい。そこでト

レンチの換気回数を確かめたところ、15 号館で 21.8 回

/h、七尾市小学校で 2.7 回/h と、8 倍の差が生じており、

この換気回数が 15号館の単位面積当り顕熱取得・除去の

大きさに影響を及ぼしたと考察される。図 4に 15号館の

2015 年 6 月 1 日から 2016 年 1 月 17 日までの日平均外

気温度と日顕熱量の関係を示す。夏期運転モードでは y = -74.3x + 1671(相関係数R=0.95)、冬期運転モードでは

y = -121.2x + 1700(相関係数R = 0.96)という式が得ら

れた。冬期の取得熱量についてみると、冬期運転モードよ

りも夏期運転モードの方が同じ外気温度でも得られる熱

量が大きいことが分かった。

0

5

10

15

20

25

30

35

0

5

10

15

20

25

30

35

絶対

湿度

[g/kg(DA)] 

温度

[℃]

吹出し温度 外気温度吹出し絶対湿度 外気絶対湿度

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

12月17日 最大温度差10.3℃

(2) 七尾市小学校 * はデータ欠損日を表す。(12月15~31日)

(1) 金沢工業大学15号館

図2 各トレンチの吹出し及び外気による温湿度の変化

* はデータ欠損日を表す。(12月15~31日)

図3 各トレンチによる取得・除去熱量の変化 表3 各トレンチの取得・除去熱量月平均

月平均熱量[MJ/日] 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月顕熱取得熱量 105 10 16 213 523 641 874 932潜熱取得熱量 308 168 124 185 203 70 89 198顕熱除去熱量 -123 -394 -298 -2 0 0 0 0潜熱除去熱量 0 -29 -36 -4 0 -47 -89 -165

有効日数 30 31 31 30 31 30 31 17

月平均熱量[MJ/日] 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月顕熱取得熱量 1 0 0 12 370 479 1094 161潜熱取得熱量 133 39 21 146 398 291 380 74顕熱除去熱量 -52 -15 -7 -4 0 0 0 0潜熱除去熱量 0 0 0 0 0 0 0 0

有効日数 30 31 31 30 31 30 14 17

金沢工業大学15号館

七尾市小学校

0

5

10

15

20

25

30

35

0

5

10

15

20

25

30

35

絶対

湿度

[g/kg(DA)] 

温度

[℃]

外気温度 吹出し温度1吹出し温度2 外気絶対湿度吹出し絶対湿度1 吹出し絶対湿度2

2015年6月 7月 8月 9月 2014年10月 11月 12月 1月

12月6日 最大温度差

吹出し口1 8.8℃

吹出し口2 13.9℃

‐2400

‐1800

‐1200

‐600

0

600

1200

1800

2400

6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1 1/1

顕熱除去 顕熱取得 潜熱除去 潜熱取得

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

12月17日 最大顕熱取得熱量 1559MJ/日

7月13日 最大顕熱除去熱量 ‐1123MJ/日

除去

熱量

[MJ/

日]

取得

熱量

[MJ/

日]

‐100000

‐75000

‐50000

‐25000

0

25000

50000

75000

100000

‐2400

‐1800

‐1200

‐600

0

600

1200

1800

2400

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

風量

(㎥

/日)

顕熱除去 顕熱取得 潜熱除去

潜熱取得 風量日合計

2015年6月 7月 8月 9月2014年10月 11月 12月 1月

2014年12月2日 最大顕熱取得熱量 1678MJ/日

除去

熱量

[MJ/

日]

取得

熱量

[MJ/

(2) 七尾市小学校

(1) 金沢工業大学15号館

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2016.9.14〜16(鹿児島)} -182-

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4. 金沢工業大学 15 号館のヒート&クールトレンチに

関する特徴分析

4.1 ヒート&クールトレンチの加熱・冷却効果のメカニ

ズム分析

図 5 に 2015 年 12 月 19 日 0 時に撮影したトレンチ右

面風下側の熱画像を示す。図 6 に 2015 年 12 月 18 日に

撮影した熱画像を元に作成したトレンチの中間地点にお

ける 6時間ごとのトレンチ空気・表面温度の変化を示す。

トレンチの日平均空気温度は 10.2℃、表面温度は 12.7℃と 2.5℃の差がある。また、トレンチの右・下面よりも左・

上面の方が温度が高く、最も高い右面が日平均で 13.4℃に対し、最も低い左面が 12.3℃である。 図 7 にトレンチ中間地点における熱画像予測熱量注1)

と実測熱量注2)を示す。12月 18日 6時から 19日 6時ま

での 24時間熱量において実測熱量が 1150MJ/6h となっ

ているのに対し、熱画像予測熱量は 1296MJ/6h であり、

予測熱量が実測熱量を 13%上回る程度の差で推定できる

ことが確かめられた。 4.2 AFW及びトレンチの顕熱量比較

AFW が設置してある 5 階の居室の室内温度と還気温

度から方位別に窓面の顕熱除去を 2 階から 5 階の窓数に

応じて乗算を行い、それらを足し合わせ 15 号館全体の

AFW の顕熱取得・除去を推定した。AFWの冬期窓面の

冷熱排気を顕熱取得とする。AFW とトレンチの顕熱取

得・除去の比較を図 8 に示す。全天日射量は金沢工業大

学 69 号館の屋上を観測点とした。2015 年 6 月から 7 月

3 日の期間はデータ欠損期間である。外気温度は 15号館

の近くに設置している百葉箱の温度を用いる。表 4 にト

レンチ及びAFWの顕熱量月別日平均値を示す。図8(1)を見ると全天日射量が大きいほど AFW の顕熱除去は大

きくなっている。顕熱除去が最大月である 7 月でトレン

チが-349MJ/日、AFW が-476MJ/日であった。次に図 8(2)を見ると外気温度が低い日ほど顕熱取得が大きいこ

とが分かる。顕熱除去が最大月である 1 月でトレンチが

932MJ/日、AFW が 763MJ/日であった。AFW の顕熱取

得は 2016 年 1 月 13 日に 1331MJ/日(外気温度 3.3℃)

で最大である。 夏期と冬期のトレンチとAFW の熱量を比較すると、 イ) 7・8月顕熱除去 トレンチ AFW

[MJ/日] -346 -476 ロ) 12・1月顕熱取得 トレンチ AFW

[MJ/日] 903 702 と要約でき、夏期にはトレンチよりAFW、冬期にはAFWよりトレンチの方が効果があることが示された。

(1) 12月18日6:00 (2) 12月18日12:00

(3) 12月18日18:00 (4) 12月19日0:00

図5 トレンチ中間地点における熱画像 (トレンチ右面風下側 12月19日0:00)

図7 トレンチ中間地点における熱画像予測熱量と実測熱量の比較

‐1500

‐1000

‐500

0

500

1000

1500

2000

0 5 10 15 20 25 30 35

顕熱

量[M

J/日

]

日平均外気温度[℃]

夏期運転モード

冬期運転モード

夏期運転モードy = ‐74.3x + 1671

R = 0.95

冬期運転モード

y = ‐121.2x + 1700R = 0.96

376 355

289 276

1296

334 303 

260  252 

1150 

0

5

10

15

20

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

温度

[℃]

顕熱

取得

熱量

[MJ]

熱画像予測熱量 実測熱量

トレンチ空気温度 外気温度

吹出し温度

24時間熱量

1.12倍 1.09倍1.17倍 1.11倍

1.13倍

6:00~12:00の

6時間熱量

12:00~18:00の

6時間熱量

18:00~0:00の

6時間熱量

0:00~6:00の

6時間熱量

図6 トレンチ中間地点における空気・表面温度の変化

ホール

地中

外気

トレンチ空気温度 9.8

12.4

12.3

13.2

12.8

ホール

地中

外気

トレンチ空気温度 10.4

12.6

12.7

13.7

13.3

ホール

地中

外気

トレンチ空気温度 10.4

12.2

12.1

13.7

12.8

ホール

地中

外気

トレンチ空気温度 10.4

12.3

12.0

13.2

12.6

図4 15号館の日平均外気温度と日顕熱量の関係

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2016.9.14〜16(鹿児島)} -183-

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4.3 電気室排熱利用

図 9 に夏期・冬期運転モード時の顕熱取得の日比較を

示す。外気温がほぼ同じ日を選定し、図の左と右でそれぞ

れ対応している。外気が電気室を経由してトレンチに吸

込まれる間の顕熱取得がトレンチ全体の顕熱取得に占め

る割合は、夏期モードで約 38%であったものが、冬期モ

ードでは約65%と3分の2を占めるまでに上昇すること

が示された。この時、両者のトレンチ全体の顕熱取得はほ

ぼ 1200MJ/日と変わらないことからトレンチにおける電

気室排熱の利用は 1 日あたりの取得熱量を増やすのでは

なく、地中熱の利用できる期間を延ばす方向に作用する

ものと考察された。 5. まとめ

1) ヒート&クールトレンチによる取得・除去熱量を顕熱 分についてみたところ、七尾市小学校では7 月の除去 熱量-15MJ/日に対して、12 月の取得熱量は 1094MJ/ 日であった。夏に冷却性能が得られなかったのは、夏 休み期間でトレンチの運転を停止していたことが原 因と思われる。連続運転を行っている金沢工業大学15 号館では、7 月の除去熱量-394MJ/日に対して、12 月 の取得熱量は874MJ/日であった。取得熱量が除去熱 量の 2.2倍得られることが明らかとなった。

2) 外気と吹出し口の温度差等から求めた実測熱量を基 準として熱画像による予測熱量との比較を試みたと ころ、6時間間隔の熱画像を用いた簡便なケースにお いて予測熱量が実測熱量を13%上回る程度の差で推 定できることが示された。

3) 15 号館の 2~5 階に設置されているエアフローウィン

ドウの熱的効果をヒート&クールトレンチと比較した

結果、夏期の日平均除去熱量でエアフローウィンドウ

がヒート&クールトレンチを約 38%上回り、逆に冬期

の日平均取得熱量はヒート&クールトレンチがエアフ

ローウィンドウを約 29%上回ることが明らかとなった。 4) トレンチの冬期モード運転による電気室排熱の利用

は、トレンチ全体の顕熱取得熱量の増加には直ちに結 びつかず、効果の得られる期間に影響するものと考察

された。

参 考 文 献

1) 神保歩未、中村俊之、林純子「ヒート&クールトレンチの

熱的効果に関する研究 複数棟における通年実測調査を

通じて」、金沢工業大学プロジェクトデザインⅢ プロジ

ェクトレポート、2016.3 2) 足立勇樹,永野紳一郎,鈴木啓泰:学校建築のクールヒー

トトレンチの効果検証、その 5 性能向上のための数値解

析 日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)、pp629-630、2014.9

 0

 2500

 5000

 7500

 10000

‐ 2000

‐ 1500

‐ 1000

‐ 500

‐ 0

‐ 500

‐ 1000

‐ 1500

‐ 2000

全天

日射

量〔Wh/㎡

・日

顕熱

除去

熱量

〔MJ/

日〕

6月 7月 8月 9月

AFW顕熱除去熱量〔MJ/ 日〕 全天日射量〔Wh/ ㎡・日〕

トレンチ顕熱除去熱量〔MJ/ 日〕

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

顕熱

取得

熱量

[MJ/

日]

(吸込み-外気)熱量 (吹出し-吸込み)熱量

1215MJ

3.3 4.6   5.8 6.0 5.0 3.5 4.1 5.4 6.3 4.8日平均

外気温度 [℃]

12/17 12/18  12/19  12/20      4日間 12/27 12/29 12/31  12/23       4日間

平均 平均

656MJ

65%

514MJ

35%855MJ

62%

360MJ

38%

1160MJ

 0

 6

 12

 18

 24

 2000

 1500

 1000

 500

 0

 500

 1000

 1500

 2000

温度

〔℃

顕熱

取得

熱量

〔MJ/

日〕

11月 12月 1月

AFW顕熱取得熱量〔MJ/ 日〕 外気温度〔℃〕

トレンチ顕熱取得熱量〔MJ/ 日〕

表4 トレンチ及びAFW の顕熱量月別日平均値

(2) 冬期

*15号館5階で計算した熱量を2階から4階に適用した。

図9 夏期と冬期運転モード時の顕熱取得の日比較

(1) 夏期運転モード (2) 冬期運転モード

(1) 夏期

月平均〔MJ/日〕 6月 7月 8月 9月 4カ月平均

トレンチ顕熱除去熱量 -123 -394 -298 -2 -204

AFW顕熱除去熱量 -224 -519 -432 -118 -324

月平均〔MJ/日〕 11月 12月 1月 3カ月平均

トレンチ顕熱取得熱量 641 874 932 815

AFW顕熱取得熱量 449 641 763 618

図8 トレンチ及びAFW の顕熱量の変化

Q1=Σαt(θsi-θa)×Ai×6[h] 4

i=1

θ右

トレンチ空気温度

ホール

地中

外気

θ左

θ下

θ上

注2)トレンチ実測熱量は次式による。

Q2=ΣCp×ρ×V×(toj-tij) 96 j=1

Q2:実測熱量[MJ/日] Cp:空気の定圧比熱1.006kJ/kg(DA)・K]ρ:空気の密度1.2[kg(DA)/㎥] V :風量[㎥/15分] to:吹出し空気温度[℃] ti :吸込み空気(外気)温度[℃]

Q1 :熱画像予測熱量[MJ/日] αt :総合熱伝達率11[W/㎡・K]

(トレンチ内平均風速0.4m/s) θsi :トレンチ表面温度[℃] θa :トレンチ空気温度[℃] Ai :トレンチ表面積[㎡]

注1) 熱画像予測熱量は次式による。

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2016.9.14〜16(鹿児島)} -184-