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日本新聞製作技術懇話会 広報委員会編集 編集人 手打 省一 東京都千代田区内幸町 日本プレスセンタービル 8 階(〒 100-0011) 電話(03)3503-3829 FAX(03)3503-3828 http://www.conpt.jp VOL.42 No.1 2018.1.1 (通巻 247 号) 日本新聞製作技術懇話会 会 報(隔月刊) (禁転載) CONFERENCE FOR NEWSPAPER PRODUCTION TECHNIQUE JAPAN

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Page 1: qy C¢´Då£ ¢Ð 8L£ IUUQ XXX DPOQU KQ 年頭のご挨拶 伝統メディアへの信頼と新たな挑戦 日本新聞製作技術懇話会 会長 上坂 義明 謹んで新年のご挨拶

日本新聞製作技術懇話会広報委員会編集

編集人 手打 省一東京都千代田区内幸町日本プレスセンタービル

8 階(〒 100-0011)電話(03)3503-3829FAX(03)3503-3828http://www.conpt.jp

VOL.42� No.12018.1.1

(通巻 247 号)

日本新聞製作技術懇話会

会 報(隔月刊)(禁転載)

CONFERENCE FOR NEWSPAPERPRODUCTION TECHNIQUE JAPAN

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目次

年頭のご挨拶 日本新聞製作技術懇話会 会長 上坂 義明 ………3

日本新聞協会技術委員会 委員長 中島  靖 ………4

新聞協会賞(技術部門)を受賞して 「~ローラ再生装置の開発~」 朝日新聞社 製作本部生産管理部長 寺出 岳夫 ………5

わが職場あれこれ ㈱タイワ・仙台工場 取締役工場長 西馬  宏 ……… 7

楽事万歳 北海道新聞社 制作局次長兼システム本部長 山本 英明 ……… 8

新聞製作技術の軌跡(第15回) 朝日新聞社 OB 立花 敏明 ……… 9

第120回技術懇談会 ………………………………………………………………………………………………… 14

CONPT-TOUR2017報告会…………………………………………………………………………………… 15

第43回 年末全体会議開催……………………………………………………………………………………… 15

会員名簿…………………………………………………………………………………………………………………… 16

●�表紙写真提供:山梨日日新聞社・赤尾 聡氏「新道峠から望む富士山」●表紙製版:㈱デイリースポーツプレスセンター●組版・印刷:㈱デイリースポーツプレスセンター

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年頭のご挨拶

伝統メディアへの信頼と新たな挑戦日本新聞製作技術懇話会 会長� 上坂 義明

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年は、ソーシャルメディアを主な舞台とするフェイクニュースが世界的に蔓延し、ジャーナリズムはその対抗策に追われました。しかし、ニュースの信頼性に関する市場調査では、新聞など、伝統メディアが常に高い評価を得ていることも事実です。

トランプ大統領から名指しで批判を浴びることの多いニューヨークタイムズ紙は、逆に真実の追求を武器にして、有料電子版の契約者数を飛躍的に伸ばしました。第3四半期の購読料収入は前年同期比13%増と素晴らしい業績でした。同紙は、信憑性に問題のあるメディアの登場をビジネスチャンスに繋げた、と言えないでしょうか。

*一昨年9月、CONPTは新聞社のニーズ把

握を目的に「技術対話」の企画を始めました。昨年もこれを継続し、3月中部地区、6月東北地区、9月九州地区と、5回まで進めて参りました。これまでに新聞社から出された課題の中には、〇人材の確保と教育、〇無人化工場、〇AI活用の記事作成・記事のビジュアル化、〇デジタル配信、〇食品や一般商品のデリバリー業務への進出、〇新媒体の創出や新規事業の発掘─等々、新聞社の近未来を模索・展望するテーマも多く、パラダイムが変貌しつつあることを実感しました。

*欧米の新聞界では新聞発行部数と広告収入

の減少が顕著で、勢いデジタルシフトに躍起になっています。しかし、経営基盤の軸足をデジタルに移すには、まだまだ紆余曲折がありそうです。翻って、日本の新聞界はどうでしょうか。日刊紙の発行部数は1997年の5,376万部から約1,000万部の減少となっています。広告収入に至っては1990年の9,969億円から、2016年度には3,801億円へと激減しています。もはや猶予は許されず、紙もデジタルも、と言ったマルチプルなアプローチが必要な段階に至っていないでしょうか。

*一方、発行部数の減少には“下げ止まり”が

あるのではないか、と考える人もいるようです。日本人の国民性と教育水準に信頼を置き、紙の新聞に親和性が高い世代には紙の新聞を、ウェブに馴染んだミレニアム世代には電子版を、と考える人たちです。新聞が無くなると、日本の社会は混乱に陥るのではないか、との懸念も抱いています。フェイクニュースが横行する昨今は、時代の屈曲点を迎えているのかも知れません。各社の編集の独立性は維持しつつも、伝統メディアの総体として信頼に足るポータルを共同でうち建てる。そんな新年の夢を夢想してみました。

さて、今年はいよいよJANPS開催年です。「今だからこそ正確な情報を─読者に届けるテクノロジー」。時宜を得たテーマのもと、11月28日から3日間、東京ビッグサイトで開かれます。会員各社におかれましては、日頃培った技術力を生かし、新聞社のニーズを先取りした提案展示を期待致します。

今年も宜しくお願いします。

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年頭のご挨拶

日本新聞協会技術委員会 委員長�� 中島 靖

あけましておめでとうございます。

昨春に今年度の技術委員長を拝命し、社内外で目の前の課題をこなすのに精いっぱいの日々を送ってきました。気づいてみれば、はや新年を迎えてしまった、というの が 率 直 な 思 い で す。 今 年 は3年 ぶりのJANPS開催年となります。報道機関と関連企業が力を合わせて英知を結集しつつ、意義のある展示会にしたいと考えています。

*昨秋のCONPTツアーに参加し、ドイツ・

ベルリンでのWAN-IFRA(世界新聞・ニュース発行者協会)「World Publishing Expo」を視察しました。このメッセは、入場者減を食い止めようと、今回初めて、上流系の「DCX Digital Content Expo」との一体開催となりました。これからの方向性を探ろうという熱気と、デジタルらしい明るい雰囲気が伝わってきましたが、下流系を含めて現物の展示は少なく、新聞業界の苦境がグローバルなものであることを感じざるを得ませんでした。

新聞部数の減少が顕著な欧州は、デジタルシフトに懸命でした。購読者数では紙を逆転した、という話も聞きます。ただ、世界的に見れば、識字率の向上を受けた途上国の底上げで新聞発行は増えています。先進国でも、いまだに売り上げでは新聞収入が過半を占めるところが大半であるのも現実です。新聞の効率的な発行が、今後も重要であり続けるこ

とは、間違いないでしょう。*

昨年10月の第70回新聞週間の標語は「新聞で 見分けるフェイク 知るファクト」でした。ネット空間では、事実を軽視し感情に訴える主張も目立ちます。大会で決議されたように、こうした時代にあってこそ、新聞は厳然とした姿勢を保ち、正確で公正な情報を提供し続けなければなりません。

視察に行った欧州でも、フェイクニュースへの新聞社の対抗心はかなりのものでした。現状への危機感から、新聞社はフェイクと戦い、「信頼」を旗印に掲げて生き残る、という強いメッセージを幹部たちの口から何度も聞きました。

世界新聞・ニュース発行者協会の副CEOであるManfred Werfel氏がドイツでの技術展の講演で、「ネットの間違いを正すことが信頼されるメディアの役割だ。私たちは10年間、信頼できるニュースをネットに無料で流すという間違いを犯した。今では世界的に正しい情報には対価を払う、という流れになっている」と話したのが、特に印象に残っています。

*今年11月28日から3日間、東京ビッグサイト

で開かれる「JANPS2018」のテーマも、「今だからこそ正確な情報を─読者に届けるテクノロジー」に決まりました。

真偽不明の情報があふれる時代には、ファクトを伝え続ける日々の努力が欠かせません。こうした営みを支える技術もまた、常に変革が求められるでしょう。それに応える一年にできるよう全 力を 傾けて 参ります。CONPT各社の皆さまのご協力を心からお願いして、新年のごあいさつといたします。

JANPSへ勝負の年

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新聞協会賞(技術部門)を受賞して

朝日新聞社 製作本部生産管理部長� 寺出 岳夫

朝日新聞社と朝日プリンテックが共同で開発した「ローラ再生装置」が2017年度の新聞協会賞(技術部門)を受賞した。溶剤を使いローラーを再生するという斬新な発想から検証を重ね、具現化した技術は画期的であること、印刷コストの低減に多大な効果をもたらしたこと、異なるメーカー3社の輪転機に適用できる汎用性の高い技術であることが高く評価された。大変名誉な賞をいただくこととなり、開発に携わった朝日新聞社、朝日プリンテックの社員、および、開発パートナーの皆さまを代表してお礼申し上げたい。

1.印刷コスト削減に威力新聞発行部数が右肩下がりの中で、印刷コ

ストの低減は各社共通の課題だ。朝日新聞社はコスト削減に向け、2013年秋から「ローラ再生装置」の開発に取り組んできた。その結果、安価な投資で大きなコスト削減が可能な装置を完成することができた。

ゴムローラーの巻き替えには、当社では1本あたり4万円~7万円の費用が掛かるが、「ローラ再生装置」を使えば1,500円~2,000円で再生できる。また、再生ローラーの品質は巻き替えたローラーと遜色がない。装置の操作は非常に簡単で、全ての新聞社や印刷会社の皆さんが安心して使用できる装置に仕上がっている。

2.開発態勢当社は分社化を進める中で、機能子会社で

ある朝日プリンテックに新技術開発のほか、紙面品質や資材開発等の実務を委託してい

る。このため、開発プロジェクトは朝日新聞製作本部が主導し、朝日プリンテック技術センターと共同で取り組んだ。プロジェクト名は「傷だらけのロ~ラ♪」。この名称から装置名も「ローラ再生装置」とした。

3.ゴムローラーの再生条件ゴムローラーはインキや水を輪転機に取り

付けられた刷版に供給するもので、当社の輪転機では1セットに180本前後使われている。ローラーの初期硬度は、過去の経験値からインキ系ローラーは30度~35度、水系ローラーは25度が主流となっている。

本装置の開発にあたり、4工場で定期交換前のローラーの硬度・径・表面状態の調査を行った。各工場の輪転機、使用資材、ローラメーカー、ローラーの使用期間が異なる中、多くのローラーを調査したところ、硬度はインキ系ローラーでは34~40度、水系ローラー

~ローラ再生装置の開発~

ローラ再生装置の正面

左側 右側

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は30度前後に変化し、径は初期値に対し平均0.47%の縮小傾向が観察された。表面状態は、インキや紙粉由来のグレーズ(付着したカス)が堆積し、目視でも鏡面化が確認された。

最終的に、①硬度を5度程度下げて柔らかくする、②径を0.5%増加して大きくする、③炭酸カルシウム由来のグレーズを除去する、という3点を再生条件と決め、装置の設計に取り掛かることになった。

4.試行錯誤した「魔法」の溶剤溶剤の開発では、成分の異なるものをいく

つも作り、ローラー片をそのまま浸してみることで効果の確認を繰り返し行った。この作業にはかなりの時間を費やした。当初、硬度の低下、径の増加、グレーズの除去の3つの効果を満たす溶剤がなかなか見つからなかったが、試行錯誤を繰り返し、高機能で、かつ、安全な溶剤を作り上げることができた。ただし、無臭ではないため、装置側面に排気ファンを実装した。また、気になる場合は建屋側と接続させることが可能なように配慮した。

完成した溶剤は、労働安全衛生法におけるラベル表示やSDSの交付義務対象である640物質には非該当。また、有害物質を事業所から排出、移動する量に関して届け出義務のあるPRTR制度の対象外である。さらに、印刷インキ工業連合会が制定した「印刷インキに関する自主規制」に基づいて製造しており、鉛やPCB等の有害物質も含んでいない。

5.ローラーの再生方法まず、再生ローラーに凸凹に表面加工され

た駆動系鉄ローラーを押し当て連れ回りさせる。この際、両ローラー間に溶剤を塗布し、加圧(ニップ)により浸透させ硬度と径を再生

(増加)させる。溶剤を塗布するだけでも再生するが、染み込み量により表面が不均一となるため、揺動しながら加圧している。また、溶剤がローラーに染み込む量は一定であり、

それ以上に塗布しても余ってしまうため、溶剤の塗布量は僅かだ。さらに、溶剤はグレーズ除去の効果も兼ねている。溶剤によりふやかされたグレーズは、グレーズ除去用部材をローラーに押し当て取り除かれる。揺動機能はグレーズ除去にも一役買っており、横方向への摩擦の増加が効果を高めている。ただし、深いエッジ跡やマスクメロンの表皮のようなヒビ割れは修復できない。

ローラーを装置に入れ、待つこと30分で再生が完了する。まさに覚醒のイメージであり、ARS(Awakening Roller press System)と名付けることにした。再生後にはそのまま機械に装着できる。また、ワンプに巻いて長期間保管しても再生後の状態が維持される。このため、ローラー交換作業にも自由度が増し、ローラーの巻き替え待ちでローラー運搬台車に山積みしなければならない状況も解消された。在庫も最低限で十分である。

6.実機検証・効果2015年2月から築地工場(東京機械製輪転

機:CT7100CDH)で 実 機 検 証 を 開 始 し、2016年6月には阪神工場(ゴス製輪転機)、船

装置概略図

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橋工場(三菱重工機械システム製輪転機)にも本装置を導入した。3工場とも巻き替えローラーと比較して硬度とニップ幅の経時変化に差異はなく、紙面品質面でも問題は出なかった。また、3工場のローラー巻き替え費用のうち、年間2,000万円分が80万円ほどに抑制できた。

現在では8工場に導入し、当社関連工場にも拡大していく予定だ。

7.終わりに新聞部数が減少していく中で、印刷現場で

の作業の効率化とコスト削減は重要なテーマのひとつである。この効率化とコスト削減を実現できる新技術のヒントは身近にまだまだあるのではないか。今後もそういったものを見つけ出し、新技術として実現できれば、と考えている。

なお、「ローラ再生装置」は2016年9月に他社向けにも販売を開始している。ご興味のある社があれば、朝日プリンテックのウェブペー ジ(https://asahi-pt.co.jp/cgi-bin/ars/form.cgi)からお問い合わせいただきたい。

わが職場これあれ

株式会社タイワ・仙台工場取締役工場長 西馬宏

夢は「町に溶け込んだ工場」

「杜の都・仙台」のいわれは、昨年生誕450年になる伊達正宗に遡ることとなります。家臣の屋敷に飢饉に備え栗・梅・柿など実になる木を植えることを奨励しました。この屋敷林とお寺や神社の林、そして広瀬川の河畔や青葉山の緑が一体となり仙台の地が形つくられました。戦時仙台空襲でまちの緑は失われます。しかし、復興時に人々が協力し合い、長い年月をかけて丁寧に育ててきた『緑』こそ仙台の宝という思いが込められ、現在の仙台「杜の都」となっています。タイワ仙台工場(読売仙台工場)は、仙台の北部に隣接する大和町(タイワ)の工業団地で2015年3月から操業を始めました。一昨年上映された映画『殿、利息でござる!』で舞台となった吉岡宿は同町にあり、主人公の穀田屋十三郎の家は現在も酒屋を営んでいます。また、同町は町のシンボルである七ツ森に代表される恵まれた自然や宮城米「ひとめぼれ」の田園が広がる町です。一方産業振興にも力を入れており、自動車関連企業、半導体製造機器等先端技術企業など日本を代表する企業が進出しています。この町づくりの方針や豊かな自然環境もあって、人口減少が進む市町村が多い中、同町は着実に人口増加している町です。工場の近くでは、クマが時折り出没します。社名のタイワは、同町のこうした自然と地域の皆様との共生の思いをこめており<大和町に溶け込んだ工場>が私共の夢。地元、大和町と共に生きる工場を目指しています。

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法だ。*

翻って私が担当しているシステム部門のストレスはどうか。我々の仕事は、新聞制作系システムと事務系システムを安定的に提供することだ。しかし機械は突然壊れ、プログラムはバグる。システム障害では冷静な判断が必要だが、土日・深夜など人手が少ない時は強いストレスを感じる。システム構築では、利用部門との仕様調整やメーカー作成のプログラム品質が悪ければストレスがかかる。十分なテストはしたが、移行日が近づくと漠然とした不安に襲われる。仕事上のストレスは多種多様だ。これに職場の上司・同僚・部下との人間関係や家庭・老親の問題が重なれば、逃げ場が無くなりストレスに押しつぶされそうになる。

*先日、「帰ってきたヨッパライ」のフォーク・

クルセダーズのメンバーで、後に精神科医になった北山修の本を読んだ。その中に「楽屋の喪失」という章がある。<人には心がほっとして、安心できるような「楽屋」が必要です。表の役割を演じている自分が、裏の本来の自分に戻り泣きわめく場所です。現代人には「楽屋」がなくなりつつあります>(「コブのない駱駝」)。さらに、<前に進むだけでなく退行でき、無意味な充実の場、…ゆっくりできるような場、関係性、そして心の在り方>の必要性が書かれている。私たちにできることは、<自分の「楽屋」にときどき戻って、そして現実に戻るという、行って、帰ってくるということを繰り返すしかない>と-。

ストレスはじわじわと溜まってゆく。職場や家庭のストレスに折り合いを付け、心のバランスを保つため前述の「コーピング」や「マインドフルネス」をやってみる。さらにホッとできる自分だけの「楽屋」を見つけることが、ストレス社会を生き抜くコツなのだろう。

ストレス対策北海道新聞社 制作局次長兼システム本部長� 山本 英明

怒られて一人前に育ってきた82年入社の昭和世代には初め問題の深刻さが理解できなかったが、今、社員のメンタル対策が急務になっている。対応を誤れば、休職や退職に追い込まれ、本人・家族はもとより会社にとっても大きな損失になる。

弊社が2016年に行ったストレス調査によると、約40%の社員がストレスを感じ、特に30歳代が自覚症状を多く訴えている。怒り、不安、抑鬱などの自覚症状は年齢層が下がるにつれ高くなっている。

*対策のヒントになる番組を、一昨年NHK

が放送した。NHKスペシャル「キラーストレス」だ。番組では、ストレスは放っておくとホルモン分泌が異常になり、鬱状態だけでなく脳出血や心不全などで命までを奪う危険性があると説き、2つの対策法を紹介していた。

ひとつは「コーピング」。これは簡単に言えば、気晴らしだ。自分なりの気晴らしリストを100個くらい上げること。例えば、カラオケで絶叫する、行きつけの呑み屋で深酒、一人でドライブ、年末年始に無精ひげを生やす、などなど何でも良い。要はストレスがかかったときの逃げ場、気分転換をリスト化し実践することだ。気分転換の引き出しが多いほどストレス耐性が強くなるという。

二つ目は「マインドフルネス」。アメリカ心理学会が推奨し、グーグル社やアップル社、テニスのノグバ・ジョコビッチなども取り入れているようだ。人間の脳は放っておくと過去や未来のことを考え、ストレスがかかる。瞑想で“いまここ”に意識を集中する脳の休息

楽事万歳

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その15第2世代の写真植字機(サプトンNなど)今回は活字組み版から現在の電算編集シス

テムに移行する途中で、多くの新聞社で使われた写真植字機研究所(1972年に写研に改称、本稿ではすべて写研)のサプトンN、そしてPDIのCAT、東京機械製作所(東京機械)のCAPPSについて紹介する。

写真植字機(写植機)は写真・光学技術を使用して文字を感光材(印画紙やフィルム)に印字(露光)する装置である。文字を記録したガラスの文字盤を手で前後左右に動かして感光材に印字する手動写植機は第1世代機、あらかじめさん孔した紙テープにしたがって回転する文字盤(ディスク型、ドラム型)を使って印字するものは第2世代機、そして紙テープにしたがって文字をCRT(ブラウン管)に表示させて、より高速に印字するものを第3世代機という。ここで紹介するサプトンNなどは第2世代の写植機である。

手動写植機  ≪森沢と石井で写植機を開発≫

手動写植機の開発は意外と早い。1924年(大13)、特許権者(発明者)・森沢信夫、特許権者・石井茂吉の連名で「写真装置」の特許が申請された。森沢と石井は手動写植機の開発に乗り出し、25年10月に試作第1号が完成した。機械の機構は森沢、文字盤とレンズ系は石井が担当した。26年には石井の自宅に写真植字機研究所を設立、本格的に手動写植機の実用化に乗り出した。

29年(昭4)10月、待望の実用機が完成、1号機は共同印刷に納入された。文字盤は、当時広く使われていた東京築地活版製造所の12ポイントの活字を光学的に4倍に引き伸ばし、それを修正して使用したという。苦心の実用機だったが、東西の大手の印刷会社に数台納入されただけで、後が続かなかった。

戦後、森沢と石井は共同事業を再開(33年

に2人は決別していた)。大阪で機械部分を森沢が作り、それに石井が文字盤やレンズなどを取り付けて販売した。しかし、森沢は自身の会社をモリサワ写真植字機製作所とし、東京に進出、2人は再び決別した。以後、両社の手動写植機が市場を二分した。新聞社では、大きな見出し文字(活字だと保管に広いスペースが必要)や見出しカットの種字、そして広告の版下用などに使われた。  ≪社会党の試み≫

手動写植機の性能が上がると、手動写植機を使って活字に代わって新聞組み版を作ろうとする試みが出てくる。日本社会党(現在の社会民主党)の機関紙印刷局は東京・永田町に印刷工場を新設、65年(昭40)1月から写研の手動写植機を使って社会新報(週2回)の発行を開始した。

手動印字したポジフィルムを大貼り台紙に貼り、別工程の写真などを貼り、それをプリンターでネガフィルムにし、段ケイを入れて版下を作る。印刷方式は亜鉛版(凸版)の直(じか)刷り印刷を採用した。記事の修正は、1文字の場合はその文字を消し、別に用意しておいた赤字ワッペンを貼り、1文字以外の修正は手動写植機で打ち直すことで対応した。

新聞協会加盟社では北羽新報(能代市)が66年1月から、モリサワの手動写植機を使って鉛活字を使わない紙面を作り始めた。印刷方式はオフセット。

全自動写植機サプトンN第2世代の写植機のアイデア(回転する文字

盤)は2人のフランス人による。2人は米国に渡り、56年(昭31)にフォトン200を発売。ただし、これはテープ駆動ではなくキーボード式だった。テープ駆動のフォトン513は63年に発売された。欧米では他にも第2世代の写植機が発売されたが、フォトン製品は広く使われた。フォトンはサプトンNのお手本と言われている。

第15回

朝日新聞社OB 立花 敏明

新聞製作技術の軌跡長期連載

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第15回

第2世代の写真植字機(サプトンNなど)

  ≪サプトンNが誕生≫写研は55年(昭30)から紙テープによる全自

動写植機の開発を始めた。当時の新聞界ではさん孔した紙テープによって活字を鋳植する自動モノタイプが普及していたが、そのスピードは毎分100字程度である。有害な鉛を使い、熱や騒音も問題になっていた。

60年10月、写研は日本で初の全自動写植機サプトンNの試作機を公開した。毎分600回転する文字盤に、同心円状に12列(1列192字)の文字を配置し、フラッシュランプを点滅させて35ミリ幅(1段分)の感光材(フィルム)に記録する。収容文字数は2304字で、共同通信のCO-59文字コードを採用。記録能力は毎分300字で、全自動モノタイプの3倍のハイスピード。しかし、このサプトン試作機は字のふらつきが目立ち、実際に使用するにはほど遠い出来栄えだった。

  ≪社会党が最初に導入≫それから約5年後の65年7月、写研はサプト

ンNの実用機を公開した。光学系が大幅に手直しされ、印字品質が向上した。

最初にサプトンNを導入したのは既に写研の手動写植機で新聞製作を行っていた社会党機関紙印刷局だ(1台)。サプトンNの発表から1年後の66年9月のこと。手動写植機の紙面製作でノウハウを積み上げていたので、全自

動写植機を積極的に導入したようだ。  ≪テープ編集機の開発≫

サプトンNの性能は目を見張るものであったが、最大の課題は原稿の修正である。新聞の原稿は降版するまでに修正が多い。活字組み版の場合は、手作業(ピンセット)で活字の差し替えや行送り、禁則処理が容易にできるが、サプトンNの場合は紙テープの再さん孔が必要。このため工務側は編集側に完全原稿を要請したが、新聞の性格上、限界がある。

写研はサプトンN用のテープ編集機の必要性を認め、66年4月、サプテジター(サプトン+エディターの造語)Nを発表した。これによってサプトンNは新聞界で実用に耐える機械になった。サプテジターは、①修正する紙テープ=オリジナルテープと②修正場所、修正内容を指示する紙テープ=コレクティングテープを編集機にかけ、③修正済み紙テープ=ファイナルテープを作るもの。さらにサプテジターNは原稿の修正だけでなく、行頭行末の禁則処理も行った。たとえば行末に始めカッコがあると、その前の5文字の間に1/4文字分のスペース符号(ファンクション符号=写植機に動作を指示する符号)を入れ、始めカッコを次の行に送る。なお、活字の場合は手作業で1文字の半分の空白を2か所に挿入していた。

サプテジターNの編集処理(論理回路)には300個のリレーが使われたという。当時はトランジスターも使えたが、高価だったので機械式のリレーが使われたのだろう。

紙テープの修正は今から見るとまどろっこしい方法で、指示ミスもあった。後にディスプレイに原稿を呼び出し、簡単に記事を修正できるようになる。サプトンのシステムでは77年に発表されたサプネッツNがそれだ。  ≪朝日・北海道と佐賀新聞が導入≫

社会党でのサプトンNの稼働状況やサプテジターNの発表で、新聞社でもサプトンシステムの導入を検討し始めた。最初に発注した

サプトンN実用機の原理(「技術者たちの挑戦-写真植字機技術史」から)

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─ 11 ─

第15回

第2世代の写真植字機(サプトンNなど)

のは朝日・北海道と佐賀新聞で、それぞれ2システムが67年(昭42)10月に納入された。文字盤が12列から1列増え13列になり、収容文字数が2496字になった。他にも若干の改良が加えられた。これがサプトンN3110である。

朝日・北海道は全紙面を新聞ファクシミリ受信していたが、道内版などを現地組みするため、サプトンN3110を導入した。印刷方式はオフセット印刷。67年10月の編集特集から使用を開始した。

佐賀新聞は導入後、順次サプトンN3110での紙面製作に移行、68年1月1日の紙面(36ページ)はすべてサプトンNで製作した。そして、同年3月5日から、日本の日刊紙で初めて全ページを活版からサプトン製作に移行した。既存の凸版輪転機を使うため、亜鉛版の直刷り方式である。この偉業に対して佐賀新聞は69年に日本新聞協会から「新聞製作工程の全自動写植化により経営の合理化を果たした」との理由で新聞協会賞(経営・技術部門)を受賞した。佐賀新聞には見学者が殺到、中にはお隣の韓国からも。  ≪地方紙の導入相次ぐ≫

佐賀新聞に続いて、69年11月に日本海新聞が全面サプトンに移行(サプトンN3110)。印刷の版材は旭化成の感光性樹脂版APRを予定していたが、工程時間や紙面品質で優れているオフセット方式に変更し、浜田印刷機製造所(朝日・北海道、読売・高岡の浜田精機とは別会社)のオフ輪を購入した。

72年6月に山梨日日新聞と高知新聞がサプトンによる鉛活字を使わない新聞製作システムに移行した(サプトンN5265)。山梨日日新聞は既にオフセット輪転機(三菱マリノニ)を使用していた。高知新聞は朝夕刊発行で最初のサプトンN導入だった。

続いて、79年までに上毛新聞、神奈川新聞、北日本新聞、北海タイムス(98年廃刊)、奈良新聞、岩手日日新聞、福島民報、岡山日日新聞(2011年廃刊)、鹿児島新報(2004年廃刊)が

サプトンNを導入して活字を使わないシステムに移行した。この他にも北海道新聞、中日、中国新聞、西日本新聞がサプトンを導入したが、一部紙面の移行に終わっている。いずれも比較的部数の多い新聞である。  ≪共同のCO-77に対応≫

59年、全自動モノタイプが立ち上がる時に文字符号の統一が図られた。これがCO-59コードで、2304字の符号を統一した。そして共同通信は60年5月から毎秒50ビット(当時は50ボーと言った)の通信速度で送信を始めた。

75年5月には共同の第1次電算化で毎秒200ビット(ボー)送信が始まった(受信社の事情で50ビットも可能)。

この頃になると地方紙にサプトンN、CAT(PDI)、CAPPS(東京機械)の第2世代の写植機が普及し始め、共同加盟社から使用する文字符号の拡大の声が強くなってきた。77年、6単位(ビット)2列から7単位2列にして、盤内文字2779、盤外文字3771の計6550の文字符号が決まった。これがCO-77である。82年4月の共同の第2次電算化に合わせて実施された。同時に送信速度は毎秒1200ビットにアップした。

77年秋に写研は(記事)集配信システムを販売する東芝と販売提携を行った。東芝の集配信システムとセットで新聞社への売り込みを図ろうというものだ。

この第2次電算化が地方紙のサプトンNなどの採用を促した。81年末の新聞協会の調査だが、たとえば東北6県のうち青森(東奥日報)、岩手(岩手日報)、宮城(河北新報)、福島(福島民報)の4紙が全面サプトンNで紙面製作をしている。全国で130台の第2世代機が設置され、サプトンNは93台(72%)、PDIのCATは29台(22%)、東京機械のCAPPSは5台

(4%)である。前年に比べCATの設置台数の伸びが大きい。  ≪進化するサプトンN≫

サプトンNは進化した。導入を検討してい

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る新聞社の要望があったのだろう。69年(昭44)にN5265、72年にN7265、73年にN7765が発表された。N5265は毎分450字、N7265とN7765は750字の生産印字速度。また、すべて2枚の文字盤(明朝とゴシック)と複数のレンズを持ち(つまり複数の文字サイズが可能)、1倍扁平以外の文字も記録できる。

また、リレーで構成されていたサプテジターNの代わりにミニコン(最初はDECのPDP-8、後に日立のHITAC-10)を用いることにした。

75年にサプトンNS11、77年にサプトンNS26とNS26Dが発表された。両機種は紙テープ修正処理などのミニコンを写植機本体に内蔵して設置スペースを節約した。NS11から生産印字速度は毎分1200字になった。最初のサプトンN3110の4倍である。NS11は文字盤が1枚で、レンズは1つ、35ミリ幅のロール感光材に記録する。NS26/NS26DはCO-77対応で、明朝とゴシックの2枚の文字盤を持ち、レンズは5種類。NS26は35ミリ幅か200ミリ幅までの感光材のどちらかに記録する。NS26Dは両方の感光材が可能。

 サプトンNS26D  (「技術者たちの挑戦-写真植字機技術史」から)

81年にはハンドリングや保管に難のある紙テープの他にフロッピーディスクを採用したNS26DF(Fはフロッピーディスクの意)を発表した。すでに写研から第3世代のCRT型の

写植機(サプトロン)が発売されていたのにNS26DFをわざわざ発表したのはNS26/26Dが広く地方紙に受け入れられことを示している。NS26DFは最後のサプトンNになった。

写植機本体の進化とは別に本体に付属するミニコン(最初は別に設置、後に本体に内蔵)のソフトウエア(サプコル)も進化した。記事の修正、禁則処理のほかに、箱組みから表組み、スポーツ記録などが可能になった。最後には簡単な大組みもできるようになった。

また77年にはミニコンを外出しし、ディスプレイで記事の校正を行うEVDT、ディスプレイでおおまかなレイアウトを行うLVDTを接続したサプネッツNを発表。河北新報、山梨日日新聞、高知新聞などに納入された。  ≪サプトンNの終焉≫

朝日・北海道と佐賀新聞から始まり、多くの新聞社に導入されたサプトンNだが、70年代後半に日経(東京)と朝日(東京)でIBMの電算編集システムが稼働。続いて富士通のシステムが81年に北国新聞で稼働。日本電気、東芝などの本格的な電算編集システムも開発されると、基本的に手作業で大貼りを行うサプトンNは次第に形勢が悪くなってきた。

80年代の初めに多くの新聞社で使われたサプトンNだが、91年(平3)末の調査では、第1県紙でサプトンNを使用しているのは、東奥日報、奈良新聞、佐賀新聞、長崎新聞、琉球新報だけである。

なぜ写研のサプトンNを中心とするシステムは使われなくなったのか。1つは記事と画像(写真、線画など)を同時に出力するフルページネーションができなかったこと。もう1つは、80年頃から新聞は紙の新聞発行だけでなく、マルチメディア化が求められるようになった。記事を新聞に使うだけでなく、データベース化して公開するなど。たとえフルページネーションができたとしても、マルチメディア対応で新聞社側に不安があったのではないか。

第15回

第2世代の写真植字機(サプトンNなど)

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第15回

第2世代の写真植字機(サプトンNなど)

サプトンN以外の第2世代写植機  ≪東京機械のCAPPS≫

71年(昭46)、米フォトン社から東京機械に欧文見出し用写植機の製造依頼があった。日本のエレクトロニクス技術に着目したとのこと。これを契機に両社の提携関係ができた。

75年に東京機械は第2世代機のフォトン729を輸入し日刊工業新聞に納入。日刊工業は昭和情報機器などと独自の新聞製作システムの開発に取り組み、ようやく81年9月から本番稼働。しかし、同システムは短命に終わった。

その後、東京機械とフォトン社との提携が切れ、東京機械は独自の全自動写植機を組み込んだ電算写植システムを開発する。77年にCAPPS-8088を発表。収容文字数は明朝、ゴシック各4044字、合計8088字(これが機械の型番の由来だろう)。印字速度は毎分900字。福島民友新聞に納入。続いてCAPPS-140を開発。これらの写植機を組み込んだ新聞製作システムが福島民友新聞と秋田魁新報に納入された。  ≪PDIのCAT≫

PDIは世界的な米国のカラースキャナー(カラー分解機)のメーカー。その副社長だった秋田安弘氏が日本支社を独立させ、日本PDI設立、紙面編集システムに乗り出した。

74年に全自動写植機CAT-N1132が公開された。フォントストリップをドラムに装着する第2世代の写植機で、1つのドラムで3360字を収容した。印字速度は毎分1500字。行頭から行末に印字すると次は行末から行頭へ逆戻りしながら印字する面白い仕組み。棒組みから4段までの箱組みが出力可能。同写植機を組み込んだシステムは75年に夕刊フクニチ

(92年廃刊)、宮崎日日新聞に納入された。写植機本体はOEM製品と思われるが詳細は不明だ。

77年には改良型のCAT-N2372(MARK-Ⅱ)を完成、1号機を下野新聞に納入した。その後もMARK-Ⅱを出力機とするPDIのシステ

ムは、茨城新聞、埼玉新聞、千葉日報などに納入された。面白いのは山陰中央新報だ。77年に写研のサプトンNS11を導入して脱鉛に一歩を踏み出した。更にもう1台のサプトンNを買う予定だったが高価なので、CAT-MARKⅡに変更。数年間、両社の写植機を使った(その後PDIオンリーに)。

【主な参考文献】新聞之新聞(新聞之新聞社)新聞印刷技術(日本新聞協会)文字に生きる[51〜60](写研)技術者たちの挑戦―写真植字機技術史(布施茂・編)

••••••••••••••••••次回は立花敏明が、第3世代の写植機を中

心とする初期の電算編集システムについて紹介します。

容易に基本文字を   拡大できたサプトンN

朝日(東京)は80年9月にIBMの電算編集システムに全面移行した。これを機会に従来の基本活字を一回り大きくすることにし、準備を進めた。そして同紙は新聞協会理事会の了承を得て、81年7月20日に全社で基本文字を拡大した。51年1月に全国の新聞が一斉に基本活字を拡大した際に無駄な競争を避けるため、協会の了承を得ることになっていた。実はそれ以前にサプトンNを導入した十勝毎日新聞(79年8月)、岡山日日新聞(79年9月)は基本文字を拡大しているのだが。

サプトンNは文字を感光材に印字する際にレンズを使用しているので、レンズを変えさえすれば容易に基本文字のサイズを変更できる。写研は基本文字の拡大をユーザーの新聞社に勧めたようだ。琉球新報と熊本日日新聞は事前に準備していたのだろう。朝日の発表で基本文字拡大実施を決め、朝日の実施の直前に基本文字を拡大している(琉球は18日、熊日は19日)。

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第120回技術懇談会

中日新聞社 浜松都田工場を見学日本新聞製作技術懇話会の第120回技術懇

談会は、中日新聞 浜松都田工場の見学会として11月21日に実施した。会員社、事務局などから32名が参加した。

工場は三方原台地の北端、新都田テクノポリスに位置し、2015年10月に着工、17年1月17日に竣工式を迎えた。東京機械製作所製の4×1輪転機2セット、刷版の自動着脱装置、完全無処理型CTPプレートなどを備えた最新鋭工場。東海・東南海・南海の3連動地震を想定した同社初の免震建屋を採用。ヘリポートも備えている。

工場の運営にあたる中日オフセット印刷の榎本衆代表取締役は冒頭の挨拶で、工場のコンセプトは“人に優しく、環境に優しく、コストは安く”と説明、「現在、非常に安定した稼働を続けている。忌憚のない意見を聞いて製品作りに生かしていきたい」と語った。

見学者はすでに一般2600人、新聞関係者750人にのぼり、工場に導入された新技術・新設備の注目度は高い。「技術陣が長くあたためてきたアイデアを表現したもので、一連の流れの中で浜松が一番先になった」という。

見学は佐藤博之・中日新聞社技術局印刷技術部長の案内で進められた。今回最も注目されたのは刷版の自動着脱装置(T-PLATER)だ。曲率の大きい1L版の版替えが1人で容易にでき、片側上下段8枚分の1L1W版を同時に着脱が可能。CTPサーバーの情報を利用することで、次の印刷のために刷版を一括して取り外すシステムも実現した。

刷版チェックも関心を集めた。情報印字装置(Miyell:ミエール)によって版の表面に頁などの情報が水性インクで印字してある。さらに、輪転機に取り付けた刷版の上にスマートフォンをかざすと、版が間違っていないか

を瞬時に判定する。輪転機の頁ごとに取り付けたNFC(Near Field Communication)タグと刷版表面に印字されたQRコードを照合する仕組みで、汎用品を活用していることが特徴だ。版掛け、チェックとも実際の作業状況を確認することができた。

工場は設計段階から見学者のことを考えて造られた。巻取関係では都田工場のマスコット、ロールちゃんが説明役として登場。特別に設けられた展示室では活版時代の活字の鉛版や活字を見ることができ、記者体験コーナーや新聞ができるまでの展示コーナーなどもあり、「見て」、「触れて」、楽しく新聞を知ることができる工夫がされている。

見学を終えて、質疑の中で「今後、メーカーに望むことは?」との質問が出た。「取説を現場の実態に合わせて改善してほしい」との回答。厚くてめったに見ないものだが、何かの時には直ちに必要な部分が確認できるような工夫、システムが欲しいとのことだった。

◇今回の見学会を快く受け入れていただき、

ご多忙中にもかかわらず見学を引率してくださいました中日新聞社、中日オフセット印刷の皆様に感謝申し上げます。 (事務局)

CONPT-TOUR2017報告会

日本新聞製作技術懇話会は11月17日、CONPT-TOUR2017の報告会を日本プレスセンターで開いた。新聞社関係25社52名、CONPT会員社17社38名に事務局を加えた計95名が参加。講師は黒澤勇氏(共同通信)がWPE/DCXの総括、川村康博氏(日経西日本製作センター)が下流部門、佐々木修一氏(方正)と井出崇士氏(日経編集制作センター)が上流部門を担当。林克美企画委員長が司会を務めた。

CONPT-TOUR2017は10月4日に成田を出発。スウェーデン・ストックホルムでダーゲ

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ンス・ニーヘーテル、エクスプレッセン、アフトンブラーデットの新聞3紙と印刷工場ボールド・プリンティングを見学。ドイツ・ベルリンでアクセル・シュプリンガー社の発行するWelt、Bildの2紙とシュパンダウ印刷工場を訪問後、IFRA-World Publishing ExpoとDCX Digital Content Expoを視察し、同13日に帰国した。

今回訪問した新聞各社は新聞の部数が減る中で、デジタルシフトを加速している。

下流部門を担当した川村氏は印刷工場が取り組んでいる効率化、業務改革への挑戦の動きを紹介するとともに、WPEで注目した輪転機、版材メーカーなどの展示を報告した。

「デジタルへの移行を進めつつ、紙の生きる道を模索しており、週末紙面の充実などの工夫も見られた」、「欧州では総じて紙面品質にはおおらかである」との所感。

佐々木氏はWelt紙とDCX、スウェーデンの新聞3紙、井出氏はBild紙とDCXを担当した。両氏はデジタルシフトの現状と展望を紹介し、各紙が危機感をもって組織改革を実行していること、有料とするコンテンツの内容の重要性を強調していることなどを報告。DCX展示各社の類似点として、CMSはブラウザベースであること、エコシステムで効率化を図っていることなどを指摘した。

黒澤氏はWPE/DCX会場で行われたWAN-IFRAのDeputy CEO、M・ワーフェル氏のセミナーやオープニングスピーチに登場したNYタイムズのバイスチェアマン、M・ゴールデン氏らの講演の内容を報告した。

第43回年末全体会議開催副会長に木船正彦氏

日本新聞製作技術懇話会は第43回年末全体会議を12月13日午後4時から、日本記者クラブ会見場で開いた。来賓として日本新聞協会技術委員会委員長 中島靖氏(朝日新聞社)、日

本新聞協会事務局次長兼編集制作部長 神田俊英氏を迎え、会員社30社37名が出席。今回新たに副会長として、東京機械製作所 代表取締役社長 木船正彦氏を選出し、副会長は3人体制となった。

開会の挨拶にたった上坂義明会長は、「厳しい環境の続く新聞界にあって、CONPTは原点に返って活動したい。一つは紙の新聞の減少を止め、さらには増やすようなアイデアを提供すること。もう一つは電子新聞など新しい流れについても、提案していくことだ」と語った。中島委員長は「来年はJANPSの年。実行委員会はテーマを『今だからこそ正確な情報を――読者に届けるテクノロジー』と決めた。そのコンセプトは、フェイクニュースが席巻する状況に対し、新聞の使命を再確認しメーカーの技術を結集した展示会にしたい、というものだ。JANPSの活性化へ向け必死となって活動している」と挨拶。神田局次 長 も「CONPTと 緊 密 に 連 携 を と っ てJANPSを成功させたい」と語った。

上坂会長が議長となって、まず今年度の活動の中間報告。評議員会は藤間修一副会長、クラブ委員会は平井泰之委員長、企画委員会はJANPS関連の経過報告も含めて林克美委員長、広報委員会は手打省一委員長、技術対話部会は後藤英次郎副部会長が担当した。

29年度の事業中間報告、会計中間報告の後、木船副会長選出のほか、都並清史評議員(クラブ委員会副委員長)の重任、平成30年度の事業計画の3議案を全会一致で承認。

全体会議に続く懇親会では、副会長に就任した木船氏が「CONPTの有意義な活動を改めて実感している。今後一層、新聞界に貢献していきたい」と挨拶した。 (事務局)

会員消息

■退会* クォード・テック・インク日本支店 (12月31日付)

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日本新聞製作技術懇話会 会員名簿(43社) 平成30年1月1日現在社    名 〒番号 所  在  地 連 絡 先

㈱イワタ 101-0032 東京都千代田区岩本町3-2-9 03-5820-3161㈱インテック 136-8637 東京都江東区新砂1-3-3 03-5665-5097NECプラットフォームズ㈱ 270-1198 千葉県我孫子市日の出1131 04-7185-7722㈱加貫ローラ製作所 544-0005 大阪府大阪市生野区中川5-3-13 06-6751-1121キヤノンプロダクションプリンティングシステムズ㈱ 108-0075 東京都港区港南2-13-29 キヤノン港南ビル 03-6719-9701㈱金陽社 136-0082 東京都江東区新木場1-1-1王子木材緑化ビル1F 03-3522-3600㈱KKS 555-0011 大阪府大阪市西淀川区竹島4-11-54 06-6471-7771コダック(同) 140-0002 東京都品川区東品川4-10-13KDX東品川ビル 03-6837-7285コニカミノルタジャパン㈱ 105-0023 東京都港区芝浦1-1-1浜松町ビルディング 03-6311-9061㈱ゴスグラフィックシステムズジャパン 350-1328 埼玉県狭山市広瀬台3-7-4 04-2954-1141サカタインクス㈱ 112-0004 東京都文京区後楽1-4-25 日教販ビル 03-5689-6666㈱システマック 520-2277 滋賀県大津市関津4-772-17 077-536-3131清水製作㈱ 108-0023 東京都港区芝浦3-17-10 03-3451-1261ストラパック㈱ 221-0864 神奈川県横浜市神奈川区菅田町2800 045-475-7229西研グラフィックス㈱ 110-0016 東京都台東区台東4-29-15 上野永谷タウンプラザ213 03-5812-3681第一工業㈱ 335-0002 埼玉県蕨市塚越7-2-8 048-441-3660田中電気㈱ 101-0021 東京都千代田区外神田1-15-13 03-3253-2816椿本興業㈱ 108-8222 東京都港区港南2-16-2 太陽生命品川ビル30階 03-6718-0151㈱椿本チエイン 108-0075 東京都港区港南2-16-2 太陽生命品川ビル17階 03-6703-8402DICグラフィックス㈱ 103-8233 東京都中央区日本橋3-7-20 ディーアイシービル 03-6733-5067東京インキ㈱ 114-0002 東京都北区王子1-12-4 TIC王子ビル 03-5902-7625㈱東京機械製作所 108-8375 東京都港区芝5-26-24 03-3451-8172東芝デジタルソリューションズ㈱ 212-8585 神奈川県川崎市幸区堀川町72-34 ラゾーナ川崎東芝ビル5階 044-331-1097東洋インキ㈱ 104-8378 東京都中央区京橋2-2-1 03-3272-0721東洋電機㈱ 480-0393 愛知県春日井市神屋町字引沢1-39 0568-88-6401東和電気工業㈱ 104-0032 東京都中央区八丁堀1-7-7 長井ビル6F 03-6222-5005ニッカ㈱ 174-8642 東京都板橋区前野町2-14-2 03-3558-7861日本電気㈱ 108-8001 東京都港区芝5-7-1 NEC本社ビル 03-3798-4666日本アイ・ビー・エム㈱ 103-0015 東京都中央区日本橋箱崎町19-21 03-6667-1111日本アグフア・ゲバルト㈱ 141-0032 東京都品川区大崎1−6−1 大崎ニューシティビル1号館5階 03-6420-2010日本新聞インキ㈱ 210-0858 神奈川県川崎市川崎区大川町13-8 044-589-3500日本ボールドウィン㈱ 108-0023 東京都港区芝浦4-9-25 芝浦スクエアビル11階 03-5418-6121パナソニックシステムソリューションズジャパン㈱ 224-8539 神奈川県横浜市都筑区佐江戸町600番地 045-938-1613㈱日立製作所 140-8573 東京都品川区南大井6-26-3 03-5471-2141藤倉ゴム工業㈱ 135-0063 東京都江東区有明3-5-7 TOC有明イーストタワー10F 03-3527-8484富士通㈱ 105-7123 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター 03-6252-2625富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ㈱ 106-0031 東京都港区西麻布2-26-30富士フイルム西麻布ビル 03-6419-0421冨士薬品工業㈱ 176-0012 東京都練馬区豊玉北3-14-10 03-3557-6201方正㈱ 112-0004 東京都文京区後楽2-3-19 住友不動産飯田橋ビル4号館8F 03-5803-6600三菱重工機械システム㈱ 729-0343 広島県三原市糸崎南1-1-1 0848-67-2068三菱製紙㈱ 130-0026 東京都墨田区両国2-10-14両国シティコア 03-5600-1475ミューラー・マルティニジャパン㈱ 174-0042 東京都板橋区東坂下2-5-14 03-3558-3131明和ゴム工業㈱ 146-0092 東京都大田区下丸子2-27-20 03-3759-4621