prism-ffag電磁石用クランプリターン連結部の隙...
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PRISM-FFAG電磁石用クランプリターン連結部の隙間によるRFコアへの漏れ磁場の評価
有本靖大阪大学大学院理学研究科
Nov. 8, 2005
概要フィールドクランプはメディアンプレーンで上下に分割される構造となっている。このような構造の場合、上
下を連結する部分は工作誤差により隙間が空いてしまう。この隙間が広いとフィールドクランプの磁気抵抗が大きくなり、RFコアへの流れる磁束が増えてしまう。今回、工作精度で許容出来る隙間の大きさを決めるためにフィールドクランプのリターン部の隙間の大きさを変えて RFコア内の磁束密度がどの様に変化するのか調べた。
1 配置FFAG電磁石、クランプ、RFコアの平面図を図 1に示す。磁極の形状は rを関数として以下の曲線で表わされる。
g(r) = g0 f(r)(
r
r0
)k
(1)
f(r) = a
(r
r0− 1
)2
+ 1 (2)
g0 = gref f(rref)−1
(rref
r0
)−k
(3)
ここで g(r)、r, r0 は磁極のハーフギャップ,リング中心からの距離、中心軌道半径 (r0 =650 cm)を表わす。今回の 3次元磁場設計で用いたこの式のパラメーター、k, a, gref, rrefの値は表 1に示す。また各磁極のリング内
側のシム形状は表 2に示す。各メインコイルの電流値を表 3に示す。
k a gref rref 関数有効範囲 コイル電流F磁極 -3.36 -4.3533 19.5 cm 715 cm 586 cm ≤ r ≤ 715 cm 68400 A·TD磁極 -2.05 -3.47 19.0 cm 715 cm 577 cm ≤ r ≤ 715 cm 18500 A·T
表 1: 磁極曲線関数のパラメーター値
( r, z ) ( r, z )
F磁極シム (570, 34.104) (586, 38.104)D磁極シム (559, 29.718) (577, 29.218)
表 2: 各磁極中心軸で切った断面のリング内側シムの両端の座標点。median planeを高さの原点とした。単位は cm。
コイル電流F磁極 68400 A·TD磁極 18500 A·T
表 3: メインコイル電流
FFAGリングの直線部には 5Gap分、計 30枚の RFコアがビーム軸方向に並べられている。フィールドクランプは電磁石から生じる磁束を吸収するために、RFコアと D磁極の間に設置されている。図中の灰色で示された領域 (F磁極の中心線から 18◦ まで開いた扇形の領域)は後述する TOSCA計算において対称性を利用することで計算をはぶいた領域である。図 2及び 3にフィールドクランプと RFコアの寸法図を示す。
1
2 磁気回路電磁石、クランプ、RFコアから構成される系の磁気回路は近似的に図 4のようになる。PRISM-FFAG電磁石
から発生した磁束は空中を伝わってクランプに流れこむ。磁束は図 2中でクランプ左側のリターン部を経由してメディアンプレーン下方へ流れ、再び電磁石に流れ込む。また、磁束の一部は空中を伝わり、RFコアに流れる。この図に示された磁気回路より、RFコアに流れ込む磁束は
i2 =φ0R1
R1(R2 + R3 + R4) + R3(R2 + R4)(4)
R1 =L1
µrS1+
g
µ0S1(5)
R3/2 =L3
µ0S3(6)
R4/2 =L4
µ0S4(7)
µ0 = 4π × 10−7H/m (真空の透磁率 ) (8)
となり、よってコア内の磁束密度は
Bcore = i2/S2 (9)
となる。この式で用いられているパラメーターを表 4に示す。S3,S4 はそれぞれ、フィールドクランプの断面積(上半分)、RFコアの断面積 (上半分)であると近似した。また、L2 は電磁石を FFAGリングに並べた際にリング中心からの距離,rが 6500 mmとなるメディアンプレーン上半分のクランプ上の点 (メディアンプレーンからの高さ、z = 250 mm)からクランプリターン (r = 5405 mm, z = 0mmの点)を経由し、下半分のクランプの同じ点に至る経路の長さとした。また、L3 は r=6500 mmとなる位置での電磁石端面とクランプの電磁石側の端面との距離とした。また、L4は RFコアの長手方向の中心でのクランプ端面と RFコアの端面との距離にした。RFコアはFINEMET(日立金属 Co.)から作られており、その比透磁率は低い磁界では 100,000以上と非常に高い (図 6)。そのため RFコアの磁気抵抗は 0と近似した。この式の計算値を図 5に示す。横軸はフィールドクランプのリターン連結部のギャップ間隔を関数としてコア
に流れる磁束密度をプロットしたものである。ここでギャップ間隔は図 7に示された xの値である。変数には不定性があるので、図 5(a)-(c)はそれぞれ、µr, L1, R3の値を変えて別々の曲線でプロットした。µr,L1
が多少ずれても影響はないが、R3 の変化に対し、RFコア内の磁束密度は大きく変化する。しかし、gap間隔に対する変化率はあまり変化していない。従って、比例定数となっている起磁力を TOSCA計算の結果に合うように決めれば、これは磁気回路を反映した図になると考えられる。尚、表 4の φ0の値は後の節で述べる TOSCAで得られた計算値から見積ったものである。また (a)を見るとギャップ間隔 0ではクランプの比透磁率が 2000になると RFコア内の磁束密度は 2倍になってしまう。従って比透磁率は 4000以上であることが望ましい。今回用いたクランプに用いた BH曲線は磁気軟鉄である NKJ1を仮定しており、この場合クランプ内の磁束密度は 2500-15000 Gaussの範囲におさまるように使う必要がある (図 6)。
3 3次元磁場計算リターン部結合部の隙間を変えて RFコアの磁場を 3D磁場解析コード TOSCAを用いて調べた。この時の電磁
石のモデルのパラメーターを表 5に示す。簡単のためクランプ側から数えて 3枚目までのコアは図面通りの厚さ、35 mmのものを入れたが、4枚目以降は 3枚をまとめて 1つのコアにして TOSCAモデルを作った。
3.1 磁束密度分布TOSCAで計算した時のクランプと RFコア表面の磁束密度分布を図 8-12に示す。それぞれの図の上段はクラ
ンプの磁束密度を表示してあり、下段にはクランプ側から見た RFコアを表示した。図中の白線は TOSCAの有限
2
1700
150
180
295
365
480
510
625
695
810
115
35
RF
cav
ity
fla
me
RF
core
R 6
191
Fie
ld c
lam
p
Fie
ld c
lam
p
F p
ole
4.40° 2.00°2.00° 1.10°1.10° 2.50°
2.20°
C40
C20
R 5
250
R 5
450 R
5590
R 5
70
0
R 7
250
10.20°
D p
ole
D p
ole
AA
B
B
40
図 1: 電磁石、クランプ、RFコア配置図
3
µr : クランプ鉄材の比透磁率 6000L1 : クランプの磁路長 3.0 mL3 : 電磁石-クランプ間の距離 0.284 mL4 : クランプ-RFコア間の距離 0.264 mS1 : クランプリターン連結部の断面積 0.0204 m2
S2 : メディアンプレーンを横切る RFコアの断面積 0.0217 m2
S3 : 電磁石-クランプ間の空気の断面積 1.078 m2
S4 : クランプ-RFコア間の空気の断面積 0.553 m2
R1 : クランプの磁気抵抗 (連結部のギャップ間隔=0の時) 0.025 µ0 H−1
R2 : RFコアの磁気抵抗 0R3 : 電磁石-クランプ間の空気の磁気抵抗 0.526µ0 H−1
R4 : クランプ-RFコア間の空気の磁気抵抗 0.954µ0 H−1
φ0 : 起磁力 2.56 ×103 A
表 4: 磁気回路パラメーター
460
220
510
(1590)
840 750
40
(6500)
''"(æﬤúT�w�m
(5660)(5150) (7250)
図 2: フィールドクランプ寸法図
要素メッシュを表わしている。また各要素の中心にあるピンク色の三角マークはその位置での磁束密度の向きを示している。ギャップが広くなるにつれてクランプの磁束密度が減り、RFコアの磁束密度が増えていることがわかる。これはギャップを広げることでクランプ全体の磁気抵抗が増えるためである。
3.2 クランプ連結部の隙間の許容範囲の見積もりRFコア内の磁束密度は、KEK150 MeV FFAGの経験から、平均値で 200 Gauss以下にする必要がある。図 13
の上図は図 3に示したレーストラック状の経路、Path 1,2,3に沿って磁束密度をプロットしたものである。この時、計算に使用した RFコアはビーム軸方向に積層されたコアのうち一番クランプに近いものである。図 13の下の図は Path1,2,3に沿った磁束密度の線積分の平均値をギャップ間隔を関数としてプロットしたものである。これを見ると、200 Gauss以下にするためにはギャップ間隔は 0.1 mmでなければならないことがわかる。また、磁気回路から見積ったカーブはほぼ TOSCAで得られた結果を再現している。クランプの磁気抵抗はクランプ鉄材の比透磁率を 6000、磁路長を 3 mとすると、0.5×10−3/µ0S1となる。これは、同じ断面積の空気に換算すると、0.5×10−3 m=0.5 mmのギャップ間隔に相当する。つまり、0.5 mmのギャップ間隔が開くとクランプの
4
35 1700
1080
380
1000
RF Core
Path 3 Path 2 Path 1
r
z
1010
図 3: RFコア寸法図
R1
R3 R4
R2
R3/2
R3/2
R4/2
R4/2
R2φ0
itot
i2i1 R1
RF CoreField ClampFFAG Magnet
Median Plane
図 4: 磁気回路
0
200
400
600
800
1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Bco
re (
Gau
ss)
(a)
µr=2000µr=4000µr=6000µr=8000µr=10000
0
200
400
600
800
1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Bco
re (
Gau
ss)
(b)
L1=1.8L1=2.4L1=3L1=3.6L1=4.2
0
200
400
600
800
1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
gap (cm)
Bco
re (
Gau
ss)
(c)
R3=0.263µ0R3=0.3945µ0R3=0.526µ0R3=0.6575µ0R3=0.789µ0
図 5: 磁気回路から求めた RFコアに流れる磁束密度。横軸はギャップ間隔 (図 7の x)。
磁気抵抗が 2倍となってしまう。空気ギャップの影響が出ないようにするには、ギャップ間隔は、それよりも十分小さい値とする必要がある。したがって、0.1 mm以下という結果は妥当な値と思われる。
5
0
5000
10000
15000
20000
25000
10-2
1 102
103
H (OERSTEAD)
B (
GA
USS
)
nkj1.bhft-3km.bh
1
10
10 2
10 3
10 4
10 5
10 6
10-2
1 102
103
H (OERSTEAD)
µ
nkj1.bhft-3km.bh
図 6: FINEMET の BH 曲線 (ft-3km.bh) と磁気軟鉄の BH 曲線(nkj1.bh)
xMedian Plane
図 7: クランプ連結部ギャップ間隔の定義
oppreファイル名 ts096.oppreDメインコイル電流 17850 A·TFメインコイル電流 68400 A·T電磁石本体の BH曲線 nkj1.bh(図 6)クランプの BH曲線 nkj1.bh(図 6)RFコアの BH曲線 ft-3km.bh(図 6)
表 5: TOSCA電磁石モデルパラメーター
6
図 8: 結合部ギャップ 0 mm
7
図 9: 結合部ギャップ 1 mm
8
図 10: 結合部ギャップ 2 mm
9
図 11: 結合部ギャップ 6 mm
10
図 12: 結合部ギャップ 10 mm
11
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
0 25 50 75 100 125 150 175 200 225
s (cm)
Bm
od (
G)
gap=0cm (ts096-bmod-rfcore.dat)gap=0.1cm (ts097-bmod-rfcore.dat)gap=0.2cm (ts095-bmod-rfcore.dat)gap=0.6cm (ts098-bmod-rfcore.dat)gap=1cm (ts094-bmod-rfcore.dat)PATH1PATH2PATH3
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
x (cm)
Bm
ean
(G)
PATH1PATH2PATH3
図 13: 上図:Pathに沿った磁束密度の大きさ。下図:ギャップを関数としてプロットした磁束密度平均値
12