physicochemical evaluation and the property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3...

76
医薬品開発を促進する原薬物性の評価ならびに改善技術に関する研究 Physicochemical Evaluation and the Property Improvement Technologies of Drug Substance to Promote Drug Development 平成28年度 論文博士学位申請者 山本 克彦 (Yamamoto, Katsuhiko) 指導教員 深水 啓朗

Upload: others

Post on 11-Aug-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

医薬品開発を促進する原薬物性の評価ならびに改善技術に関する研究

Physicochemical Evaluation and the Property Improvement Technologies of

Drug Substance to Promote Drug Development

平成28年度

論文博士学位申請者

山本 克彦 (Yamamoto, Katsuhiko)

指導教員

深水 啓朗

Page 2: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

本文中に用いた以下の用語、装置などは以下のように略記した。

DMSO: dimethyl sulfoxide

JP1: 1st fluid of disintegration test in Japanese Pharmacopoeia

JP": 2nd fluid of disintegration test in Japanese Pharmacopoeia

GCDC: glycochenodeoxycholic acid

MS: mass spectrometry

HPMC: hydroxy propyl methyl cellulose

CC: cocrystal

API: active pharmaceutical ingredient

CA: coamorphous

DSC: differential scanning calorimetry

ITZ: itraconazole

FA: fumaric acid

TA: L-tartaric acid

GRD: ground

LYO: lyophylized

RH: relative humidity

Page 3: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

目次

第一章 序論と概要 ................................................................................... 1 - 3

第 1 節 医薬品の物性評価の必要性 ............................................................... 1

第 2 節 医薬品の物性改善手法 ...................................................................... 2

第 3 節 研究概要、目的 ................................................................................. 3

第二章 迅速かつ効果的な物性評価法の開発 ......................................... 4 - 19

第 1 節 物性評価としての脂溶性および溶解度評価の必要性 ....................... 4

第 2 節 脂溶性評価法の開発 ......................................................................... 5

第 3 節 高速溶解度測定法の開発 .................................................................. 9

第 4 節 本評価結果からの物理化学特性の考察 ........................................... 14

第 5 節 物性改善・製剤設計戦略への繋がり .............................................. 17

第 6 節 小括 ................................................................................................ 19

第三章 効率的な共結晶探索法の構築 .................................................. 20 - 37

第 1 節 共結晶の有用性と網羅的探索の必要性 ........................................... 20

第 2 節 共結晶の結晶化と探索法 ................................................................ 21

第 3 節 効率的な共結晶探索法、Cocktail Cocrystal Grinding 法の開発 ... 24

第 4 節 Cocktail Cocrystal Grinding 法の試行結果 ................................... 26

Page 4: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

第 5 節 Cocktail Cocrystal Grinding 法の特徴 .......................................... 35

第 6 節 小括 ................................................................................................ 37

第四章 複合体非晶質(コアモルファス)の物性評価と医薬品としての可能性

........................................................................................................... 38 - 55

第 1 節 コアモルファスの定義と特徴 ......................................................... 38

第 2 節 イトラコナゾールのコアモルファスの物理化学的性質 .................. 41

第 3 節 イトラコナゾールのコアモルファスの物理的安定性 ..................... 46

第 4 節 イトラコナゾールのコアモルファスの化学的安定性 ..................... 51

第 5 節 イトラコナゾールのコアモルファスの溶解性 ................................ 54

第 6 節 コアモルファスの医薬品としての実行可能性 ................................ 55

第 7 節 小括 ................................................................................................ 55

第五章 総括 .......................................................................................... 56 - 57

謝辞 ............................................................................................................... 58

実験の部 ........................................................................................................ 59

引用文献 ........................................................................................................ 67

Page 5: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

1

第一章 序論と概要

第 1 節 医薬品の物性評価の必要性

医薬品において、有効性と安全性を担保するためにはその品質を保証するこ

とが必須であり、そのために安定性などの物理化学的性質(物性)を調べる物性評

価は医薬品の開発において不可欠である 1)。

医薬品の主たる活性成分の多くは、化学合成によって創製・製造された低分

子化合物である。これら有機低分子化合物は、抗体等の生物製剤に比べ安定で

コストが低く、製造性も高いという長所があるが、臨床試験・製造販売承認に

至るまでは、探索研究段階において膨大な数の化合物を新規に合成することが

必要である。同時に、それらの薬理活性や毒性、薬物動態特性をスクリーニン

グし、開発化合物を選択する。近年、分子生物学的手法の発展により、優れた

薬理活性を持つ化合物を見出すことが可能となってきている。その一方、活性

向上を標的分子との結合の強さを上げることによって実現しているために、化

合物の分子量および脂溶性が増加し、医薬品の物性として適さない難水溶性化

合物が選択され、開発期間や費用が増大する場合や、開発自体の断念も余儀な

くされることが見受けられている 2)。こういった事態を避けるために、これまで

は単なるキャラクタリゼーション、および製剤化研究の一環であった物性評価

を探索研究段階で実施し、良好な物性を持つ化合物を選択すること、加えて、

Page 6: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

2

開発化合物の物性が完全ではない場合に、その物性改善を講じることが医薬品

開発において大変重要になってきている 3, 4)。

第 2 節 医薬品の物性改善手法

医薬品の物性評価を探索研究段階で早期に実施することによって、良好な物

性を持つ化合物を見定めることが可能となってきている。しかし、開発化合物

の選択は物性のみならず、薬理活性、安全性、薬物動態特性、特許性などとの

総合判断で行わる。また、開発の時系列、競合品の状況にも影響されるため、

必ずしも物性が完全ではない化合物が選択されることも起こりうる。したがっ

て、開発品として選択された化合物について物性改善を行う必要が生じる 5)。物

性改善については、原薬形態から行う方法と製剤技術から行う方法の二つのア

プローチがある。原薬形態からのアプローチについては、水和物も含む結晶多

形検討、カウンターイオンによる化合物の塩化、シクロデキストリンなどによ

る包接化などがある 6, 7)。製剤技術からのアプローチは、非晶質固体分散体や自

己乳化型などの油系製剤を含む可溶化製剤 8,9)、原薬の粉砕によるナノ化あるい

は微細化、徐放化、小型化、遮光コーティングや防湿包装などの安定化、薬効

持続等のための投与経路の変更などがある。これらの物性改善は、化合物の試

料量や検討期間、投資予算など、医薬品の開発計画に応じて適切なタイミング

Page 7: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

3

で実施されるべきであるが、技術革新により、それらの効果や実施の容易さ、

投資額は劇的に変わるものであり、新たな技術の開発とその有用性評価、タイ

ムリーな開発化合物への適用は継続的に検討される必要がある。

第 3 節 研究概要、目的

本研究では、医薬品開発における探索研究段階において適用が可能な迅速物

性評価法として、溶解度および脂溶性測定法を確立した。これらの評価法によ

り、良好な物性をもつ開発化合物を早期から見定めることに寄与し、その判断

基準を与えることが可能となる。さらに選択した化合物についての物性改善や

適する製剤技術の指針を早期に提案することができる。続いて、物性改善技術

の開発として、近年、物性改善技術として注目されている共結晶について、そ

の効率的な探索法である cocktail cocrystal grinding 法を新たに開発した。さら

に、新規物性改善技術として研究され始めている複合体非晶質(コアモルファ

ス)について物性評価を行い、医薬品としての実現可能性について判断した。

Page 8: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

4

第二章 迅速かつ効果的な物性評価法の開発

第 1 節 物性評価としての脂溶性および溶解度評価の必要性

医薬品化合物の水系溶媒に対する溶解度は、経口剤においては吸収性、注射

剤においては、製剤化の難易度を左右する重要な物理化学特性である 10)。医薬

品として相応な溶解度の値は、化合物の薬理活性にも影響され、薬理活性が高

いほど溶解度の値は低くても許容されうる 11)。しかし、経口医薬品の場合、腸

管膜への透過性の高いことが必要条件となり、かつ難水溶性化合物の場合は生

物学的利用率自体が低いため、服薬後の化合物血中濃度のバラつきも懸念され

る。このような化合物の臨床試験においては、薬効や副作用の見極めが難しく

なるなどの問題が生じる場合があり、その以前の段階でも、臨床試験申請のた

めの毒性試験が成立しないことも起こり得る。したがって、難水溶性化合物の

開発には期間や費用がかかり、さらには開発自体困難となる場合がある。

脂溶性は薬理活性や毒性とも相関する指標であり、かつ溶解度や膜透過性と

も密接に関わる 12, 13)。脂溶性は、物理化学的パラメータとしては炭化水素系の

油系溶媒と水との間における化合物の分配係数を測定することで表される。脂

溶性は、文字通り脂質など疎水性部へのなじみやすさ、溶けやすさである。生

体は生体膜、タンパク質の内部など疎水的環境を持つため、化合物の脂溶性を

上げることで、薬理活性及び膜透過性を向上することが可能となる。しかし、

Page 9: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

5

水系溶媒への溶解度は脂溶性と逆比例する性質があり、脂溶性向上によって活

性を高めた化合物の水に対する溶解性は低くなる傾向にある 14)。したがって、

脂溶性の高い化合物は、医薬品としての性質の相応しさを示す drug-likeness が

不良となり、開発に問題が生じる場合が見受けられている。以上のことより、

脂溶性は経口吸収性について広範に関与するパラメータであり、実際にその至

適範囲も論じられている 15)。

したがって、両特性を探索研究段階において並行して評価することは、優れ

た医薬品を創出するために必要である。本研究では、探索研究の時系列に見合

うように、溶解度および脂溶性を迅速に評価する系を開発した 16)。

第 2 節 脂溶性評価法の開発

脂溶性評価については、血液や組織の pH である pH7.4 での分配係数、

LogDpH7.4を測定した。本研究では、LogDpH7.4 を LogD と定義する。LogD は、

化合物を炭化水素系の有機溶媒である 1-オクタノールと水溶液を接触させて分

配させ、(1)式に示すようにそれぞれの化合物濃度 Corgと Caqから、Corgを Caq

で割ったものの対数として求められる。

LogD = Log10 (Corg / Caq) … (1)

Page 10: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

6

LogD の測定法として直接的に行う方法としては、Corgと Caqを測定すること

であるが、LogD = 4 の場合、Corgは Caqの 10,000 倍となり、測定に際し希釈等

の実験操作、定量についても特に濃度が低い水相の濃度について LC-MS などの

微量測定法が必要であり、複雑な操作およびその実験工数が要求されることか

ら多検体の測定には適さない場合がある。したがって、LogD が様々な物理化学

理論と相関することを利用し、間接的に LogD を測定することが行われている。

例えば、キャピラリー電気泳動や電量滴定、クロマトグラフィーなどが報告さ

れている 17, 18)。

本研究ではクロマトグラフィーを用い、逆相液体クロマトグラフィーにおい

て化合物の保持時間と LogD が相関することを利用した。(2)式のように、保持

時間から導かれる Logk'は、LogD と一次相関する。

LogD = alogk' + b … (2)

k' = (tR - t0)/t0, tR: 保持時間, t0: カラム通過時間

実際の測定としては、LogD 既知化合物についてクロマトグラフを測定し、(2)

式を検量線として作成する。続いて、LogD 未知である対象化合物の測定を行い、

保持時間から(2)式により LogD を算出する。本研究では、既報での条件を参考

Page 11: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

7

に、測定法のダウンサイズおよび高速化を実施した 19)。カラムを内径 2.0 mm、

長さ 75 mm のサイズとし、オクタデシル基を充填剤として内包したセミミクロ

カラムを用いることで、流速 0.2 mL/分と移動相消費量の少ない条件を設定した。

本条件はアイソクラティックであるため、カラムの平衡化に伴う測定のインタ

ーバルが無く、連続で測定を行うことが可能である。LogD 既知の化合物を用い

て、条件の最適化を行った結果について、検量線、相関係数を表 1 に、HPLC

条件を表 2 に示す。実測値と検量線との相関係数は 0.976 と相関の高い試験法

と設定した。

本法では、LogD = 4.45 の anthracene が 8.73 分に溶出しているように、LogD

が 5 以下であれば、1 化合物につき 10 分以内で測定が可能である。Lipinski の

報告から 12)、また実際にも多くの医薬品化合物の LogD は 5 以下であることか

ら、本法は 10 分以内でほとんどの化合物の LogD 測定を行うことができる。本

法の試料溶液は、医薬品候補化合物ライブラリの保存溶液として用いられてい

る 10 mM DMSO 溶液を 200 倍希釈したものを使用するため、使用試料量はわ

ずか 1-3 µL である。

Page 12: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

8

表 1 LogD 既知の化合物の保持時間と相関式、相関英数

表 2 LogD 測定の HPLC 条件

Compound Retention time (min) Logk' Actual logDSodium nitrate 1.317

Methyl phenyl sulfone 1.468 -0.941 0.50Acetophenone 1.870 -0.377 1.58

Thymol 3.325 0.183 1.81Biphenyl 5.397 0.491 3.76

Anthracene 8.730 0.750 4.454,4-DDE 36.548 1.427 5.69

Hexachlorobenzene 41.849 1.488 6.18

Correlation factor

Correlation formula LogD = 2.373log{(tR-t0)/t0}+2.399

0.976

Column :Column temp. : 40oCDetection wavelength : 230 nmMobile phase : Britton-Robinson buffer / methanol (2:5, v/v), pH7.4Flow rate : 0.2 mL/minRun time :Injection vol. : 2 μLConcentration : 0.05 - 0.1 mg/mL

YMC-Pack pro C18 5 µm, 2.0 x 75 mm (YMC Co., Ltd.)

10 min, 50 min for high lipophilic compounds

Page 13: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

9

第 3 節 高速溶解度測定法の開発

本研究では、化合物溶液を水溶液に滴下して析出させ、一定時間後にろ過し

たろ液の濃度を定量することで求められる、析出法溶解度を測定法開発対象と

した。図 1 に示すように、多くの場合、析出法溶解度は分子および非晶質の溶

解度である kinetic solubility となる 20)。溶解度にはもう一種類、結晶からの溶

解度である thermodynamic solubility がある。こちらは粉末試料を水溶液に添

加した後に一定時間振とうし、その飽和濃度を測定する振とう法で求められる

21)。析出法でも結晶が析出した場合には thermodynamic solubility が、逆に非

晶質固体を振とうした場合には振とう法でも kinetic solubility が測定される。

Kinetic solubility は thermodynamic solubility より高い溶解度を示し、その差

は結晶の格子エネルギーに依存する。したがって、異なる結晶形はその格子エ

ネルギーに応じた thermodynamic solubility を有する。

Page 14: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

10

図 1 Kinetic solubility と thermodynamic solubility の関係

本研究では LogD 測定と同様、試料として化合物の 10 mM DMSO 溶液を用

い、測定媒体に 2.5 % (v/v)で滴下して化合物濃度を測定した。測定媒体として

は、人工胃液である日本薬局方崩壊試験第一液 JP1 (pH1.2)、および人工腸液で

ある第二液 JP2 (pH6.8)を使用した。さらに摂食後の腸液のモデルとして、ヒト

の腸内で最も濃度の高い胆汁酸である glycochenodeoxycholic acid (GCDC)を

20 mM、JP2 に加えた GCDC/JP2 も用いた。本研究では 200 µL のスケールで

試験を実施したため、1 測定条件あたり 5 µL の試料液量である。析出法では溶

液試料のみを用いるため、調液操作は 96 穴、384 穴などのマルチウェルプレー

トを用いて、分注ロボットによって高速化、自動化、多検体化が可能だが 22)、

Page 15: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

11

ろ液の濃度定量については簡便かつ高速に行うのが難しいという問題があった。

したがって、本研究では溶解度測定のための高速定量法を検討した。

高速定量法としては、マルチウェルプレートごとプレートリーダーを用いて、

紫外可視吸収(UV-vis)スペクトルを測定することが最も多検体の測定に適して

おり、高速化が可能である。しかし、その測定できる濃度範囲は限られており、

さらに解離基を有し pH によって UV-vis スペクトルが変化する化合物について

は、その pH ごとに濃度標準溶液を用意する必要がある。HPLC-MS も高速化

が可能な定量法であるが 23)、溶解度が高い試料の場合には希釈操作が必要であ

ること、濃度定量には化合物ごとに複数の濃度標準溶液の測定によって作成し

た検量線が必要なことから、測定が複雑かつ難解である。加えて MS 検出器の

場合、導入費用や維持費用・工数が多くかかることも課題である。したがって、

本研究では HPLC-UV を測定装置として適用して高速定量法を検討した。

HPLC-UV は安価で堅牢であり、測定濃度範囲が広く、一般的な溶解度の濃度

範囲である 0.1 – 100 µg/mL の間の測定に適している、濃度と感度の直線性も優

れるため溶解度測定に最適な装置である。

本研究では、高速タイプの HPLC を用い、逆相測定での溶出の強溶媒である

アセトニトリルの濃度が異なる二つの移動相を用いた高速グラジエントにより、

化合物を高速で保持・溶出させてクロマトグラムを得る試験法を作成した。最

Page 16: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

12

適化した条件を表 3 に示す。高速グラジエントは mobile phase B 濃度を 0.1 分

から 0.2 分まで、一度に 0%から 100%へと変えることで行った。さらに体積の

小さい移動相ミキサーを装着することにより、円滑なグラジエントを実現した。

両移動相の酢酸アンモニウム濃度は 5 mM に一致させることで、グラジエント

の際もクロマトグラムのベースライン変動を抑えて安定させた。カラムに関し

ては、分離理論段数の高い粒子径 2 µm の充填剤を含有したカラムを複数検討し、

最も背圧が低く、耐久性の高い Shim-Pack XR-ODS を採用した。流速について

は、高速 HPLC の標準流速である 0.5 mL/分の 2 倍である 1 mL/分として、線

流速を上げることで分離を高め、またグラジエントプログラムへの追随性を安

定させた。以上の検討を実施したことにより、わずか 1 分にて濃度測定が可能

な HPLC 条件を構築した。試料注入に必要な装置の稼働時間は 0.5 分であるた

め、合計で 1 試料につき 1.5 分の測定時間となる。したがって、200 化合物の 2

溶媒に対する溶解度を測定する場合、濃度標準溶液の 1 測定と合わせて、1 化合

物当たり 4.5 分の測定時間となる。200 化合物では 900 分、15 時間で溶解度測

定を行うことが可能となった。

Page 17: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

13

表 3 溶解度測定用の HPLC 条件

Instruments : UFLC Prominence (Shimadzu Corp.)Column :Column temp. : 40oCDetection wavelength : average of 230 - 280 nm, or 230 nmMobile phase A (MPA) :Mobile phase B (MPB) : ammonium acetate solution (50 mM)-acetonitrile (1:9, v/v)Gradient program : Time (min) MPB (%)

0.00 00.10 00.20 1000.70 1000.71 01.00 0

Flow rate : 1.0 mL/minRun time : 1.0 minInjection volume : 5 μL

Shim-pack XR-ODS 2.2 µm, 2.0 x 20 mm (Shimadzu Corp.)

ammonium acetate solution (50 mM)-water-acetonitrile (1:8:1, v/v/v)

Page 18: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

14

第 4 節 本評価結果からの物理化学特性の考察

本評価系における、モデル化合物の溶解度および脂溶性の測定結果を表 4 に

示す。化合物の各溶液に対する溶解度から、脂溶性との相関および酸塩基特性

も評価することが可能であった。各化合物の特徴を述べると、lansoprazole に

ついては、JP1 について低い溶解度を示していたが、クロマトグラムには本体

ピーク以外に多数のピークが観察されており、酸性溶液中にて不安定で分解を

示していた。本定量法はクロマトグラフィーによって行うため、化合物の溶液

中安定性も同時に評価することが可能であった。Hydrochlorothiazide は高い溶

解度と低い LogD を示した。Griseofluvin については、良好な溶解度と中程度

の LogD を示した。Diclofenac、indomethacin については酸性で低溶解度であ

ったが、中性では良好な溶解度であった。Tamoxifen は酸性、中性共に低い溶

解度であったが、LogD が高いため GCDC/JP2 にはミセル溶解を示したため、

良好な溶解度であった。Albendazole、pioglitazoneについては、酸性、GCDC/JP2

については良好な溶解度であったが、中性では低い溶解度を示した。LogD は中

程度であった。Candesartan については、酸性で低溶解度であり、LogD が高

いため tamoxifen と同様に GCDC/JP2 に対し良好な溶解度を示した。以上の結

果から、本法により各化合物の物理化学特性を迅速に判断することが可能とな

った。

Page 19: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

15

中性である JP2 に対する溶解度と脂溶性のプロットを図 2 に示す。Kinetic

solubility の対数と脂溶性は、既報どおりほぼ線形の相関を示したが 14)、一部こ

の相関から外れる化合物が確認された。Hydrochlorothiazide の溶解度(図 2 中 2

番)は相関よりも低い溶解度の値であったが、析出法溶解度は化合物溶液の添加

量が溶解度の測定上限であるため、本化合物はこの上限よりも実際の溶解度が

高いことによると考えられた。図 2 中 2'番として、既報での実測溶解度をプロ

ットしたところ 24)、ほぼ相関と合致していた。Albendazole および pioglitazone

についてもこの相関よりも低い溶解度を示した。原因として両化合物共に溶液

中で容易に結晶化して析出したため、結晶の溶解度である thermodynamic

solubility を示し、相関より低い値を示したことが考えられた。

Page 20: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

16

表 4 モデル化合物の溶解度と脂溶性

図 2 モデル化合物の LogD と JP2 への溶解度のプロット

図中の数字は表 4 中の No.と対応する

JP1, pH1.2 JP2, pH6.8 20mMGCDC in JP21 Lansoprazole 4.0 58.0 >99 1.7892 Hydrochlorothiazide 64.8 >74 >74 -1.1693 Griseofulvin 39.4 49.0 >88 1.6434 Diclofenac 1.6 68.2 >80 2.1075 Indomethacin 1.8 74.9 >90 2.3596 Tamoxifen 1.2 0.2 >93 4.8237 Albendazole 45.6 0.2 56.7 2.5418 Pioglitazone 45.3 0.3 47.9 2.1899 Candesartan <0.2 12.6 >110 4.320

Solubility (µg/mL)Compound LogDNo.

Page 21: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

17

第 5 節 物性改善・製剤設計戦略への繋がり

前節のように、kinetic solubility と LogD を並行して測定することにより、

各化合物の物理化学特性を解析することが可能となった。さらにその特性を考

察することにより、各化合物への物性改善手段、および適用すべき製剤形態や

製剤技術などの対応策を提示することが可能である。各化合物についての対応

策を表 5 に示す。Lansoprazole については、酸性溶液中で不安定であったが、

中性では良好な溶解度を示したため、腸溶性製剤の適用が考えられた。実際、

lansoprasole は腸溶コーティングを施した顆粒を含むカプセル剤として市販さ

れている。Hydrochlorothiazide は良好な溶解度であったため、通常製剤で製剤

化可能と判断された。しかし、LogD が-1.169 と低すぎるため、膜透過性が不良

である場合は用量の増加が必要であると推測された。Griseofluvin についても

良好な溶解度を示したため通常製剤が適用可能と考えられたが、

thermodynamic solubility が低い場合や溶解速度が低い場合は、原薬の微細化

やナノ化製剤が必要となると考えられた。Diclofenac、indomethacin について

は酸性で低溶解度、中性では良好な溶解度であったため、ナトリウムやカリウ

ムなどのアルカリ性カウンターイオンとの塩化、塩基添加製剤の適用が考えら

れた。実際、diclofenac はナトリウム塩として市販されている。Tamoxifen は

酸性、中性共に低い溶解度であったが、脂溶性が高くミセル溶解をする、また

Page 22: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

18

油系添加剤への溶解度が高いと考えられたため、自己乳化型製剤など油系製剤

の適用が示唆された。Albendazole、pioglitazone については、酸性で良好な溶

解度を示したため、塩化または酸添加製剤の適用が考えられた。一方で結晶化

しやすく、その格子エネルギーの大きいことが中性での低溶解度の原因である

と示唆されたため、非晶質固体分散体の適用も考えられた。Candesartan につ

いては、酸性で低溶解度であるため、塩化または塩基添加製剤、LogD が高いた

め tamoxifen と同様に油系製剤の適用が考えられた。

表 5 モデル化合物の特性と対応策としての物性改善、製剤技術

Model Compound Property CountermeasureLansoprazole acid-labile enteric-coating

Hydrochlorothiazide high solubility conventional formulationGriseofulvin high solubility conventional formulation, nanocrystalDiclofenac low acidic solubility salt formation, base loading

Indomethacin low acidic solubility salt formation, base loadingTamoxifen low neutral solubility, high lipophilicity salt formation, acid loading, oily formulation

Albendazole low neutral solubility, low lipophilicity salt formation, acid loading, solid dispersionCompound A low neutral solubility, low lipophilicity salt formation, acid loading, solid dispersionCompound B low acidic solubility, high lipophilicity salt formation, base loading, oily formulation

Page 23: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

19

第 6 節 小括

本法は少量の溶液試料のみを使用することで LogD と kinetic solubility を迅

速に測定することを可能とした。これらを並行して評価することによって、化

合物の物理化学的特性を考察することが可能となり、さらにその特性に合わせ

た塩化などの物性改善手段、また油系製剤や固体分散体などの適切な製剤技術

を提案することも可能であると考えられた。

Page 24: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

20

第三章 効率的な共結晶探索法の構築

第 1 節 共結晶の有用性と網羅的探索の必要性

医薬品化合物の物性改善技術として、近年、共結晶 (cocrystal、CC) が活発

に研究および開発され、臨床化合物、製品の原薬形態としても適用されている。

共結晶は、医薬品分子とカウンター分子 (cocrystal former, CCF) 間において塩

のようなプロトン移動を伴わずに、結晶格子内で水素結合やファンデルワール

ス力などの非イオン性相互作用を有する、複成分からなる結晶である。共結晶

はフリー体結晶と異なる物理化学的性質を示すことから、溶解性・安定性など

物性改善の手段として多く用いられている 25-26)。共結晶は解離基を持たない中

性化合物へも適用が可能であり、さらに CCF としても中性の添加剤・甘味料な

どの多種類の分子を用いることができるため、共結晶を形成する組み合わせは

膨大となる。さらに、原則として塩については化合物と CCF の当量は解離可能

なプロトンの比率、例えば 1:1 や 2:1 のみであるが、共結晶については相互作用

可能な部位があれば当量は限定されず、様々な比率の共結晶が形成される可能

性がある。したがって、共結晶を探索する際には、多種類の CCF、また複数の

比率について共結晶の形成の有無を調べる必要があり、多数の条件を行うこと

が可能で、かつ効率的な探索法が必要とされている。

Page 25: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

21

第 2 節 共結晶の結晶化と探索法

共結晶は特徴的な複数の結晶化方法で形成させることが可能である。代表的

な 4 つの結晶化方法、それらの特徴を表 6 に示す。

表 6 代表的な共結晶の結晶化方法

溶液からの晶析は 27)、一般的な医薬品原薬の製造法として用いられている。

原薬の精製が可能であるため品質確保が容易であり、再現性及びスケールアッ

プ性に優れるという利点がある。しかし、共結晶の結晶化においては、化合物

と CCF の溶解度の差が大きい場合、晶析溶媒に対して溶解度の低い方の成分が

溶液の冷却にしたがって先に単体として結晶化する。あるいは、溶媒との化合

物との相互作用が化合物と CCF との相互作用より強い場合、同様に共結晶が結

晶化できず単体として結晶化することがある。そのため、晶析条件の設定には

特定の溶媒中における化合物と CCF の比率、それらの濃度の三成分溶解度相図

を作成し、優先的に共結晶が結晶化する領域を見出す必要がある 28)。探索法と

して使用する際には、近年、塩・結晶多形スクリーニングにおいて行われてい

調製法 長所 短所

溶液からの晶析 精製、スケールアップ 溶媒の影響、化合物とCCFの溶解度差

溶媒懸濁(スラリー) スループット、安定形 終点が不明、溶媒の影響

融解冷却(コフラー法) 反応性高い 融解分解に適用不可、スケールアップ難しい

粉砕法(grinding法) 反応性高い、メカニカルに強い 試料量・工数が多い

Page 26: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

22

るのと同様に、マルチウェルプレートを適用できる。CCF と溶媒種をマトリッ

クス状に配置してウェルプレートごと冷却、または溶媒除去を行って晶析する

ことによって、少量で網羅的に行うことが可能でなる。しかし、設定条件が上

記三成分溶解度相図における、共結晶晶出領域と一致している場合にのみ共結

晶が取得されるものであるため、条件設定・効率という面で工夫が必要である。

溶媒懸濁(スラリー)法は、化合物と CCF をそれぞれの飽和溶解度を超える濃

度で溶媒に共に添加し、懸濁状態でオストワルト則により共結晶の結晶化を促

す方法である 29)。実験操作も簡便で熱力学的安定形が得られやすいという特徴

がある。一方、共結晶の結晶化反応にかかる期間はその結晶の特性に依存する

ため、in situ モニタリング等で捕捉可能ではあるものの 30)、反応終点が不明瞭

であり、1 週間、2 週間など比較的長期の試験期間を設定する必要がある。また、

溶媒と化合物の相互作用により溶媒含有結晶が生じやすく、共結晶の結晶化に

必ずしも有利とならない場合があり、加えて共結晶の溶媒含有結晶も晶出され

うる。探索法としては、溶液からの晶析の際と同様にマルチウェルプレートが

適用可能であり、化合物と CCF の粉体をウェルに入れて溶媒を分注し懸濁させ

ることで評価できる。しかし、化合物が溶けやすい溶媒を用いる場合、懸濁状

態となるまでには多くの化合物量の添加が必要である。さらには、懸濁後に共

結晶が結晶化していても、化合物および CCF との混合物となっている場合、共

Page 27: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

23

結晶の検出および判別が難しく共結晶を見逃すことがある。

融解冷却法(コフラー法)は化合物と CCF が溶融状態で混合するため、両者の

相互作用において溶媒の影響がなく、共結晶の結晶化が促されやすい 31)。短所

としては融解分解を起こす化合物には適用できない点、試料量が多い場合は、

均一となりにくいためにスケールアップが難しいという点がある。近年、本原

理を利用した、加熱押し出し成形機 (hot melt extruder) による共結晶の結晶化

が報告されており、実製造への適用も行われるものと予測される 32)。探索法と

しては、本法は溶媒が不要であるため、溶媒種を検討する必要が無い。しかし、

CCF として用いられる有機酸の一部には融解分解、あるいは昇華性で明確な融

点を持たないものがあるため適用が限られる。さらに、本法にはマルチウェル

プレートを適用できないため、多検体の試料処理能力(スループット)が低いこと

が課題として挙げられる。しかし、熱分析装置を用いて、共結晶形成に伴う熱

挙動をモニターしながら本法を行うことで、より効率的に本原理により共結晶

を探索することが可能である。

粉砕法は、化合物と CCF をボールミルなどで混合粉砕することにより共結晶

を得る方法である 33 - 35)。粉砕時の応力により化合物および CCF に結晶格子の

欠陥もしくは非晶質化を生じさせ、その部位を利用して分子間相互作用を促す。

本法も溶媒の影響が無く、反応性が高いため共結晶を結晶化させやすい。また

Page 28: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

24

外部からの加熱を行わないため、融解冷却法を適用できない、融解時に分解を

起こす、あるいは熱に対して不安定な化合物にも適用可能である。加えて、粉

砕のせん断力に抗って結晶化させるため、物理的にも強固な結晶となることも

特徴である。しかし、探索法への適用を考える場合、本法粉砕操作の都合上、

試験系のスケールが数百 mg となるなど大きく、試料のロスも生じるために多く

の試料量が必要である。したがって、化合物量の限られる医薬品研究の探索研

究段階には用いにくい。さらに、必然的に粉体を取り扱う実験工数が多く、秤

量、静電気対策などが煩雑であるため、スループットという点で探索法として

の実施が難しいということが課題である。

第 3 節 効率的な共結晶探索法、Cocktail Cocrystal Grinding 法の開発

本研究では、粉砕法の長所を持ちつつも、スループットが高く効率的な

cocktail cocrystal grinding 法を開発した 36)。本法では、図 3 のように、あらか

じめ 4 つの CCF を物理混合した CCF 混合物との粉砕を行い、1 次スクリーニ

ングとして共結晶形成能を調べる。1 次スクリーニングにて共結晶の結晶化が認

められた場合、続いて 2 次スクリーニングとしてヒットした混合物内の個々の

CCF との混合粉砕を行い、どの CCF との共結晶が形成されたかを絞り込む。

例えば 20 種類の CCF の中から 1 つの共結晶のみが見出される場合、1 対 1 の

Page 29: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

25

従来法では 20 回の粉砕が必要となるのに対し、本法では混合物の 5 回に加え、

混合物内の個々の 4 つの CCF との 4 回、計 9 回の粉砕実験で可能となる。した

がって、試料量・実験数を従来法の半分以下に減らすことが可能である。

図 3 Cocktail cocrystal grinding 法と従来法の比較

CCF 混合物の設計については、どのような組み合わせでカウンター分子を混

合しても、本法に適用することは可能であると推測された。さらに CCF 混合物

として、同じ部分構造、官能基を持つ CCF を混合することで、化合物との相互

作用を優位に行える部分構造を見出すことを可能とした。表 7 のように、添加

剤として使用実績のある 20 種類の CCF を選択し、同じ部分構造を持つ 4 つの

CCF から成る混合物を 4 種、Acid 1 及び Acid 2、Amide、Amine として作成

Page 30: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

26

した。Others については異種 CCF 間のモデルとして、異なる部分構造を持つ 4

つの CCF からなる混合物とした。

表 7 CCF 混合物一覧

第 4 節 Cocktail Cocrystal Grinding 法の試行結果

本法を試行するにあたり、CCF 混合物内の CCF 同士が粉砕によって共結晶

を形成する場合は、化合物との共結晶形成が優先的に行われないおそれがある

ため、始めに CCF 混合物のみでの粉砕を行った。共結晶の検出には、結晶構造

を反映し、その変化に鋭敏である粉末 X 線回折を用いた。粉砕前後の CCF 混合

物の粉末 X 線回折ピークを図 3 に示す。Acid 1 および Acid 2, Others 混合物に

おいて粉砕後にわずかな新規の回折ピークが確認されたが、粉砕前のパターン

CCF混合物 化合物名 分子量 (Da) 水素-アクセプター数 水素-ドナー数 clogP 融点 (℃)

Acid1 citric acid 192 7 4 -1.67 135

(2価、3価有機酸) fumaric acid 116 4 2 0.05 210(昇華)

succin ic acid 118 4 2 -0.75 185

L-tartaric acid 151 6 4 -1.00 168

Acid2 benzoic acid 122 2 1 1.87 121

salicylic ac id 138 3 2 2.24 159

gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解)

glutaric acid 132 4 2 -0.26 95

Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45 129

(アミド) benzamide 121 2 1 0.74 128

glycolamide 75 3 2 -1.73 122

lactamide 89 3 2 -2.21 120

Amine tromethamine 121 4 4 -1.56 167

(アミン) N-methyl-D-glucamine 195 6 6 -3.15 129

L-argin ine 174 6 5 -8.50 222

L-lysine 146 4 3 -2.99 215

Others urea 60 3 2 -1.56 132(昇華)

(その他) ethylmaltol 140 3 1 0.30 85(昇華)

saccarin 183 4 1 0.45 226(昇華)

stearic acid 284 2 1 7.94 67(昇華)

(芳香族、脂溶性有機酸)

Page 31: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

27

はほぼ保存されていた。新規ピークの強度自体も非常に低いものであった。し

たがって、各 CCF 混合物内での共結晶形成または変化は微小なものであり、化

合物との混合粉砕に影響は軽微と考えられたため、CCF 混合物を用いる本法は

実施可能であると判断された。

図 4 CCF 混合物のみでの粉砕前後の粉末 X 線パターン

a – I: Acid1 粉砕前, II: Acid1 粉砕後, III: Acid1 粉砕前, IV: Acid1 粉砕後

b – I: Amide 粉砕前, II: Amide 粉砕後, III: Amine 粉砕前, IV: Amine 粉砕後

c – I: Others 粉砕前, II: Others 粉砕後

IV III II I

IV III II I

II I

a b

c

Page 32: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

28

CCF 混合物との粉砕後の共結晶の検出については、DSC による融点の吸熱挙

動の変化による検出も試みた。しかし、混合による融点降下および共融解の影

響があり、かつ昇華する CCF の分析も困難なことから、検出法として不適であ

ると判断した。赤外吸収、ラマン散乱などの分光法による検出は微量試料での

測定が可能であるという観点で有利であるが、主に化学構造を反映する方法で

あるため、結晶構造の検出感度が低いという問題から、共結晶形成によるスペ

クトルの変化が顕著である場合にのみ適用できると考えられた。

実際に本法を医薬品化合物へ適用した結果、新規のものも含め複数の共結晶

が確認された。まず、複数の共結晶が報告されている carbamazepine (CBZ) へ

本法を試行した 37)。図 5 a に化学構造を示す。化合物との混合粉砕操作につい

ては、化合物 10 mg と CCF 混合物 10 mg を物理混合したものについて、CCF

混合物のみを粉砕した際と同様に実施した。CBZ と CCF 混合物との混合粉砕後、

Amine 混合物以外のすべての CCF 混合物において新規の回折ピークが認めら

れ、共結晶の形成が示唆された。粉末 X 線回折パターンを図 6 に示す。

つづいて、CCF 混合物との粉砕において示唆された共結晶形成は真であるか、

具体的にどの CCF と共結晶を形成したかを検証するため、CCF 混合物内の個々

の CCF との粉砕を行った。図 7 に示すように、新規ピークが認められた CCF

混合物内の個々の CCF と粉砕した後に、新規回折ピークが確認された。CCF

Page 33: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

29

混合物と個々の CCF の試行において相反しない結果が得られた。以上の結果よ

り、CBZ への cocktail cocrystal grinding 法の適用から、本法のコンセプトが

確認され、効率的に共結晶を見出すことが可能であると考えられた。

図 5 モデル医薬品化合物の化学構造

a – CBZ, b – PRX, c – SPI

Page 34: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

30

図 6 CBZ と CCF 混合物との粉砕後の粉末 X 線回折パターン

a – I: CBZ, II: Acid1, III: CBZ-Acid1, IV: Acid2, V: CBZ-Acid2

b – I: CBZ, II: Amide, III: CBZ-Amide, IV: Amine, V: CBZ-Amine

c – I: CBZ, II: Others, III: CBZ-Others

図中矢印は新規回折ピークを示す

a b

c

V

IV

III

II

I

V

IV

III

II

I

III

II

I

Page 35: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

31

CBZ-L-tartaric acid

L-tartaric acid

CBZ-succinic acid

succinic acid

CBZ-fumaric acid

fumaric acid

CBZ-citric acid

citric acid

CBZ

CBZ-glutaric acid

glutaric acid

CBZ-gentisic acid

gentisic acid

CBZ-salicylic acid

salicylic acid

CBZ-benzoic acid

benzoic acid

CBZ

CBZ-lactamide

lactamide

CBZ-glycoamide

glycoamide

CBZ-benzamide

benzamide

CBZ-nicotinamide

nicotinamide

CBZ

Page 36: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

32

図 7 CBZ と CCF 混合物内の個々の CCF との粉砕後の粉末 X 線回折パターン

図中矢印は新規回折ピークを示す

下線は共結晶のヒットを示す

CBZ-L-lysine

L -lysine

CBZ- L -alginine

L -arginine

CBZ-meglumine

meglumine

CBZ-tromethamine

tromethamine

CBZ

CBZ-steatic acid

steatic acid

CBZ-saccharin

saccharin

CBZ-ethylmaltol

ethylmaltol

CBZ-urea

urea

CBZ

Page 37: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

33

CBZ と同様に共結晶が報告されている医薬品化合物、piroxicam (PRX) 38)お

よび spironolactone (SPI) 39)についても本法を試行した。PRX および SPI の化

学構造をそれぞれ図 5 b、c に示す。いずれの化合物についても、CCF 混合物で

新規回折ピークが認められたものは、全て個々のCCFとも共結晶が確認された。

したがって、CCF 混合物ではヒットしたものの、個々の CCF ではヒットしな

いという false positive は確認されず、本法のスクリーニング法としての高い整

合性が示唆された。CCF 混合物、また個々の各 CCF との混合粉砕後の共結晶

形成結果の一覧を表 8 に示す。文献などで既知の共結晶については、本法によ

りほぼ見落とすことなく確認されたことから、本法の検出性能に問題はないと

示された。また、新規の共結晶である、CBZ – Urea および PRX - citric acid、

PRX – ethyl maltol、SPI – benzoic acid、SPI – salicylic acid、SPI – gentisic

acid も見出された。しかし、PRX については、CCF 混合物の Acid 1 グループ

においてヒットが観察されなかったものの、Acid 1内の個々のCCFである citric

acid と succinic acid とで、PRX との共結晶形成が確認された。この結果は、本

試行結果の中で唯一、CCF 混合物ではヒットしないにもかかわらず、個々の

CCF では実はヒットするという false negative であった。

Page 38: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

34

表 8 モデル化合物との cocktail cocrystal grinding 法試行結果

Acid1 Citric acid Acid1 Citric acid Acid1 Citric acidFumaric acid Fumaric acid Fumaric acidSuccinic acid Succinic acid Succinic acidL-Tartaric acid L-Tartaric acid L-Tartaric acid

Acid2 Benzoic acid Acid2 Benzoic acid Acid2 Benzoic acidSalicylic acid Salicylic acid Salicylic acidGentisic acid Gentisic acid Gentisic acidGlutaric acid Glutaric acid Glutaric acid

Amide Nicotinamide Amide Nicotinamide Amide NicotinamideBenzamide Benzamide BenzamideGlycolamide Glycolamide GlycolamideLactamide Lactamide Lactamide

Amine Tromethamine Amine Tromethamine Amine TromethamineMeglumine Meglumine MeglumineL-Arginine L-Arginine L-ArginineL-Lysine L-Lysine L-Lysine

Others Urea Others Urea Others UreaEthylmaltol Ethylmaltol EthylmaltolSaccarin Saccarin SaccarinStearic acid Stearic acid Stearic acid太字: 見出された既知の共結晶, 太字下線: 新規共結晶, 修飾なし: 共結晶が確認されなかったもの

Carbamazepine Piroxicam Spironolactone

CCF mixture Individual CCF CCF mixture Individual CCF CCF mixture Individual CCF

Page 39: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

35

第 5 節 Cocktail Cocrystal Grinding 法の特徴

本法の利点について考察すると、本法は粉砕法の短所の一つである、多くの

試料量・実験工数を要する点について、それらの削減を可能としたことが最も

大きなものである。さらに、本法では CCF 混合物との粉砕において、複数の

CCF が化合物との相互作用の際に競合し、打ち勝った CCF が共結晶を形成す

ると考えられる。したがって、本法で見出された共結晶は、より強い相互作用

を有する、物理的に安定な共結晶であると推察された。粉砕法は反応性の高い

結晶化法であるため、一対一での従来法では、相互作用の弱い共結晶も見出し

てしまう可能性がある。この点において、本法では CCF 間での相互作用の競合

が生じるため、このリスクは低減されると考えられる。他の利点としては、本

法で用いた CCF 混合物は同じ部分構造を持つ CCF を含有するように設計した

ことから、相互作用を引き起こす構造をベースとした探索法となっていること

が挙げられる。例えば、ある化合物が本法において fumaric acid と succinic acid

とのみ共結晶形成が確認されたものの、両共結晶の物性改善効果が期待された

レベルではなかった場合を想定する。その際は、本法で見出された化合物とカ

ルボン酸との相互作用を利用して、他のカルボン酸 CCF との共結晶探索に展開

し、望まれる物性の共結晶を得ることが期待される。

一方、欠点としては、CCF 同士が競合することによって、化合物との相互

Page 40: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

36

作用を互いに妨害し、CCF 混合物との粉砕において共結晶が形成されないとい

う可能性がある。もしくは、複数の CCF が同時に化合物に相互作用した結果、

例えば相互作用が三すくみとなる、あるいは複合体を形成するものの結晶化は

しなかった場合、本法では共結晶を検出することは出来ない。これらの場合、

CCF 混合物との粉砕ではなく、一対一の粉砕でのみ共結晶が確認されるという

false negative を生じる。実際に本研究での試行において、PRX と Acid 1 混合

物との粉砕の際にこの現象が確認された。今後、本法におけるこれらの欠点に

ついては、テラヘルツ分光法など直接的に相互作用を検出できる測定技術の発

展により解決できるものと見込まれる 40)。

今後の共結晶探索の展開としては、単に共結晶を得るのみでなく、その溶解

性・安定性といった機能性評価も合わせた評価系の構築が理想的である。その

際、化合物と CCF の相互作用に関する情報を有効に利用することで、求められ

る物性改善に繋げられると推測される。また、このような分子間相互作用の知

見は化合物と賦形剤、高分子基剤などとの相互作用にも展開が可能であり、製

剤の更なる高機能化に繋がることが期待される。

Page 41: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

37

第 6 節 小括

本研究で開発した cocktail cocrystal grinding 法は、試料量、工数の削減によ

り粉砕法の弱点を克服するのみならず、効率的かつ高いスループットで共結晶

を探索できる方法であることが明らかとなった。さらに、共結晶形成に関与す

る相互作用の特定により、本法で用いた以外の CCF との共結晶の探索へも展開

することが可能である。

Page 42: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

38

第四章 複合体非晶質(コアモルファス)の物性評価と医薬品としての可能性

第 1 節 コアモルファスの定義と特徴

医薬品原薬の複合体非晶質(コアモルファス)は、共結晶と同様に溶解性な

どの物性を改善できると考えられる新たな技術である。コアモルファスは共結

晶のように医薬品分子とカウンター分子間に水素結合などの非イオン性の相互

作用を持つと推測される。しかし、結晶構造、規則的配列を持たず、分子がラ

ンダムに存在する非晶質形態である 41-43)。フリー体結晶と共結晶、コアモルフ

ァスの違いを図 8 に図示する。

図 8 フリー体結晶と共結晶、コアモルファスの違い

コアモルファスの最たる利点として考えられるものは、非晶質状態であるこ

とに由来する溶解性向上であり、難溶性化合物に対する可溶化効果が挙げられ

: 薬物分子

: カウンター分子

フリー体 共結晶 コアモルファス

Page 43: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

39

る 44-45)。一方で、非晶質は結晶よりも高いエネルギー状態にあるため、化学的

及び物理的安定性が十分でない場合がある。このような短所に対し、一般的に

は非晶質とポリマーとの固体分散体を形成させることにより、その安定性を向

上させる方策が採られる。しかし、固体分散体による安定性向上のためには、

化合物とポリマーの相互作用が十分ではなく、化合物が非晶質から結晶化しや

すい場合には、化合物量に比べて重量比で 5 倍、10 倍といった多量のポリマー

が必要である 46)。この際、費用面、技術面で問題となることがある。この問題

点に対し、コアモルファスはその相互作用サイトが固定された、当量の定まっ

た低分子間の相互作用によって非晶質状態を安定化できるため 47)、ポリマーと

の固体分散体よりもコスト、かさが低くなり、製剤化において実用的であると

考えられる。

続いて、コアモルファスと共結晶を比較すると、共結晶を開発する場合には

その結晶化、スケールアップが複雑で難易度が高い場合もあるが 48)、コアモル

ファスの場合、結晶化工程自体が不要である。加えて、共結晶は水への溶解度

積が低い場合には、フリー体結晶に対して必ずしも溶解性向上を示さない場合

もあるが、コアモルファスの場合は非晶質としての溶解性を示すため、溶解性

の向上が確約されている。

本研究では、難水溶性薬物であるイトラコナゾール(ITZ)と、共結晶を形成

Page 44: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

40

できるカウンター分子である有機酸として、フマル酸(fumaric acid, FA)および

L-酒石酸(L-tartaric acid, TA)をモデル化合物として用いた 49, 50)。それぞれの化

学構造を図 9 に示す。上記組み合わせ (ITZ-FA または ITZ-TA) のコアモルファ

スを粉砕によって調製し、それらの溶解性、安定性などの物性、相互作用を評

価した 51)。また、対照品として、同じ化学組成を持つ非晶質の凍結乾燥品、結

晶の物理混合物、共結晶も調製し、各種物性を比較した。

図 9 モデル化合物の化学構造

a – ITZ, b – FA, c – TA

Page 45: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

41

第 2 節 イトラコナゾールのコアモルファスの物理化学的性質

各コアモルファスの物理化学的性質をさまざまな分析法にて評価した。コア

モルファスの結晶性を判断するため、結晶化度を反映する粉末 X 線回折測定を

実施した。ITZ-FA と ITZ-TA コアモルファスの粉末 X 線回折パターンを図 10

に示す。各コアモルファスのパターンには、結晶由来の鋭い回折ピークが確認

されず、非晶質であると判断された。回折角 2θ = 6 o および 9 o付近の低角領域

において、微小なピークが観察されたが、これらは非晶質化されなかった各共

結晶の残余成分と推察された。粉砕によるコアモルファスの調製過程において、

コアモルファスは共結晶を経由して形成されたと考えられた。

図 10 コアモルファスの粉末 X 線回折パターン

ITZ-TA CA ITZ-FA CA ITZ-TA CC ITZ-TA CC TA FA ITZ

Page 46: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

42

ITZ-FA と ITZ-TA コアモルファスのラマンスペクトルを図 11 に示す。ラマ

ンスペクトルは各官能基の分子状態を反映するため、相互作用を検出できると

考えられる。ITZ-FA の組み合わせにおいて、FA のカルボニルに由来するピー

クが単体のスペクトルでは 1687 cm-1に確認されたのに対し、共結晶のスペクト

ルでは、このピークが 1720 cm-1へと一部シフトした。このシフトは、FA の単

体結晶中ではそのカルボキシ基同士が相互作用を形成しているのに対し、共結

晶中では、FA のカルボキシ基と ITZ のトリアゾール基と相互作用を形成してい

ることによると報告されている 52)。コアモルファスのスペクトルにおいても、

共結晶のスペクトルと同じように 1720 cm-1のピークが観測されており、コアモ

ルファス内で ITZ と FA は共結晶と同様の相互作用を形成していると示唆され

た。凍結乾燥品については、このピークは観測されず、相互作用は明確に認め

られなかった。一方、ITZ-TA の組み合わせでは、共結晶においても TA のカル

ボニルに由来するピーク(1694 および 1742 cm-1)のシフトは認められず、TA の

カルボニル基と ITZ のトリアゾール基との相互作用は弱い、または一様ではな

いためラマン分光法では鋭敏に検出できなかったと考えられた。コアモルファ

ス、凍結乾燥品においても同様に本ピークは認められなかった。

Page 47: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

43

図 11 コアモルファスのラマンスペクトル

a – ITZ-FA, b – ITZ-TA

a b

Page 48: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

44

ITZ-FA および ITZ-TA コアモルファスの DSC 曲線を図 12 に示す。DSC に

より、非晶質の熱挙動、結晶への結晶化温度を観察することが可能である。ITZ

単体の非晶質は、60oC 付近で緩和の回復熱による吸熱挙動を伴ってガラス転移

を示し、115℃付近で ITZ 結晶へと結晶化した。各コアモルファスについては、

明確なガラス転移が検出されず、ITZ-FA については 170oC 付近、ITZ-TA につ

いては 135oC 付近で、それぞれの共結晶へと結晶化した。いずれについても ITZ

単体の結晶として結晶化しなかったことから、コアモルファス内では ITZ と各

カウンターが相互作用しており、単体非晶質の物理混合物とは異なると判断さ

れた。したがって、ラマンスペクトルにおいては、明確な相互作用が確認され

なかった ITZ-TA コアモルファスについても、相互作用を形成していると推察さ

れた。

Page 49: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

45

図 12 コアモルファスの DSC 曲線

Page 50: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

46

第 3 節 イトラコナゾールのコアモルファスの物理的安定性

各コアモルファスの物理的安定性の結果を表 9 に示す。物理的安定性は、各

試料を保存後に粉末 X 線回折測定にて試料の結晶性、結晶形を確認することで

行った。加えて、吸湿性も物理的安定性の重要な評価項目であるため、動的吸

湿平衡を測定し、相対湿度 (relative solubility, RH) の変化に応じた水分吸着に

よる重量変化を観察した。

ITZ-FA コアモルファスについては、いずれの保存条件においても 4 週間(W)

後まで結晶に由来する明確な回折ピークは確認されず、非晶質として物理的に

安定であった。図 13に 40oC75%RH 4W保存後の粉末X線回折パターンを示す。

2θ = 6 o および 9 o 付近の共結晶の残余と考えられるピークは、保存後にわずか

に大きくなっており、高温多湿下での保存によって共結晶が結晶成長したと考

えられた。対照である凍結乾燥品については、2-8oC の冷所においても 1W 後か

ら共結晶として結晶化しており、非晶質として物理的に不安定であった。

Page 51: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

47

図 13 40℃75%RH 4W 保存後のコアモルファスの粉末 X 線パターン

ITZ-TA コアモルファスについても、いずれの保存条件において 4W 後でも結

晶に由来する明確な回折ピークは確認されず、非晶質として物理的に安定であ

った。共結晶の残余と考えられるピークも、ITZ-FA コアモルファスと同様にイ

ニシャルと比べ僅かに大きくなっており、若干の結晶成長を認められた。対照

である凍結乾燥品については、2-8oC の冷所においても 1W 後から結晶化し非晶

質として物理的に不安定であった。こちらは ITZ-TA 共結晶ではなく、ITZ 単体

として結晶化しており、ITZ-FA の系よりも相互作用が弱いため、ITZ 分子同士

の相互作用が優位となって ITZ の結晶化が有利に進んだと推測された。

ITZ-TA 凍結乾燥

ITZ-FA 凍結乾燥

ITZ-TA CA

ITZ-TA CA

TA

FA

ITZ

Page 52: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

48

粉砕と凍結乾燥の非晶質調製法を比較すると、凍結乾燥品は非晶質として物

理的に不安定で保存において速やかに結晶化したため、コアモルファスの製造

法としては相応しくないと考えられた。一方、粉砕品については、共結晶の残

余があると考えられたにもかかわらず、非晶質として物理的に安定であった。

原因としては、粉砕の作用により結晶構造が乱雑に開裂したこと、化合物とカ

ウンター分子の相互作用が促進されたことによると推察された。

表 9 コアモルファスの物理的安定性

Initial 1W 2W 4WLyophylized amorphous cocrystal cocrystal cocrystal

Ground amorphous amorphous amorphous amorphousLyophylized amorphous cocrystal cocrystal cocrystal

Ground amorphous amorphous amorphous amorphousLyophylized amorphous cocrystal cocrystal cocrystal

Ground amorphous amorphous amorphous amorphousLyophylized amorphous ITZ crystal ITZ crystal ITZ crystal

Ground amorphous amorphous amorphous amorphousLyophylized amorphous ITZ crystal ITZ crystal ITZ crystal

Ground amorphous amorphous amorphous amorphousLyophylized amorphous ITZ crystal ITZ crystal ITZ crystal

Ground amorphous amorphous amorphous amorphous

ITZ-TA

2-8oC close

25oC58%RH open

40oC75%RH open

2-8oC close

25oC58%RH open

40oC75%RH open

Storage conditonPreparationPair

ITZ-FA

Period

Page 53: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

49

ITA-FA、ITZ-TA コアモルファスの動的吸湿平衡曲線を図 14 に示す。ITZ-FA

コアモルファスにおいては、相対湿度の増加に対しても重量増加が 0.5%未満で

あり、吸湿性を示さなかった。一方、ITZ-TA については、75%RH において 1.3%

程度、95%RH においては 9.0%程度の著しい吸湿性を示した。一般的に非晶質

は運動性、比表面積が高く吸湿性を示す。ITZ-FA コアモルファスは吸湿性を示

さなかったことは、分子間相互作用によって運動性が抑えられたことが推察さ

れた。さらに、相互作用が FA のカルボキシ基と ITZ のトリアゾール基という

親水性基間で行われているため、親水性部分をコアモルファスの内部へと隠す

形となって、水分子がこの親水性部分に接近・付着できなかったことが考えら

れた。

一方、ITZ-TA については、相互作用が ITZ-FA ほど強固ではない、また一様

でないことに加え、TA 自体 2 つのヒドロキシル基を有するため、水分子が容易

にコアモルファスに接近、付着できたものと考えられた。

Page 54: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

50

図 14 コアモルファスの動的吸湿平衡曲線

a – ITZ-FA, b – ITZ-TA

a b

Page 55: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

51

第 4 節 イトラコナゾールのコアモルファスの化学的安定性

各コアモルファスの化学的安定性結果を表 10 に示す。化学的安定性は、各試

料を保存後、溶媒へ溶解し試料溶液として HPLC 測定を行い、そのクロマトグ

ラムにおける、ITZ ピークの面積百分率から化学純度を求めることによって行

った。

ITZ-FA のコアモルファスは、保存後も顕著な純度低下を示さず、化学的に安

定であると判断された。他の同組成の対照試料についても化学的に安定であっ

た。

一方、ITZ-TA については、物理混合物においても保存後に分解による純度低

下を示すことから、本質的に ITZ との反応を誘起し分解を示す系である。分解

物に関しては、逆相 HPLC 分析において ITZ よりも速い保持時間を示したため、

ITZ より親水性が高い構造であり、ITZ が水酸化または加水分解されたものであ

ると推測された。コアモルファスは物理混合物や凍結乾燥品と同様に分解を示

し、その度合いはそれらより大きかった。凍結乾燥品は 1W 後より ITZ 単体と

して結晶化していたため、分解の程度がコアモルファスより小さかったと考え

られた。コアモルファスについては、本保存条件においても非晶質状態が維持

されており、75%RH という高湿度下では吸湿性を有するため、吸着した水分が

分解反応に関与し、さらに分解が促進されたと考えられた。共結晶については、

Page 56: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

52

この組み合わせにおいて唯一、40oC75%RH の保存条件でも分解を示さず安定で

あった。結晶格子内で分子が固定されたことで、分解反応が抑制されたと考え

られた。コアモルファスは、相互作用によって、分解に関与する反応部分の運

動性を低下させることによって分解反応を抑制できることが期待されたが、

ITZ-TA の系では相互作用が十分ではなく、結果的に化学的安定性を向上させる

ことはできなかったと推測された。

Page 57: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

53

表 10 コアモルファスの化学的安定性

initial 1W 2W 4WLyophylized 99.6 99.6 99.6 99.6

Ground 99.6 99.6 99.5 99.5Physical Mixture 99.6 99.6 99.6 99.6

Cocrystal 99.6 99.6 99.6 99.6Lyophylized 99.6 99.6 99.6 99.6

Ground 99.6 99.6 99.5 99.5Physical Mixture 99.6 99.6 99.6 99.6

Cocrystal 99.6 99.6 99.6 99.6Lyophylized 99.6 99.6 99.6 99.6

Ground 99.6 99.6 99.5 99.5Physical Mixture 99.6 99.6 99.6 99.6

Cocrystal 99.6 99.6 99.6 99.6Lyophylized 99.6 99.6 99.6 99.6

Ground 99.6 99.6 99.5 99.5Physical Mixture 99.6 99.6 99.6 99.6

Cocrystal 99.6 99.6 99.6 99.6Lyophylized 99.6 99.4 99.1 98.8

Ground 99.6 99.6 99.5 99.5Physical Mixture 99.6 99.6 99.6 99.6

Cocrystal 99.6 99.6 99.6 99.6Lyophylized 99.6 99.2 98.6 98.1

Ground 99.6 99.6 98.7 95.6Physical Mixture 99.6 98.9 98.9 97.7

Cocrystal 99.6 99.6 99.6 99.6

Purity by Main Peak Area (%)Period

ITZ-TA

2-8oC close

Storage conditonPreparationPair

ITZ-FA 25oC58%RH open

40oC75%RH open

2-8oC close

25oC58%RH open

40oC75%RH open

Page 58: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

54

第 5 節 イトラコナゾールのコアモルファスの溶解性

溶解性については、胃での溶解を想定し胃液のモデルとして JP1 に 1% (w/v)

の濃度でポリマーであるHPMCを加えたものを媒体として用いた。方法として、

コアモルファスを 37oC で 30 分振とうして、溶解度を測定した。各コアモルフ

ァスの溶解度は、表 11 に示すように ITZ 単体の非晶質と同等で、ITZ 単体結晶

よりも 30 倍から 50 倍高い溶解度を示した。また同じ組み合わせの各共結晶よ

りも高い溶解度を示し、ITZ-FA の組み合わせについては、5 倍程度の溶解度向

上が認められた。また、コアモルファスの溶解度は ITZ 単体の非晶質よりもバ

ラつきが少なかったことから、表面特性などによって溶解速度や分散性に優れ

るため、安定して溶解したと考えられた。

表 11 コアモルファスの溶解度

ITZ crystal 4.2 ± 0.1ITZ amorphous 165.3 ± 15.6

ITZ-FA cocrystal 28.8 ± 2.0ITZ-TA cocrystal 129.2 ± 5.3

ITZ-FA coamorphous 149.4 ± 1.4ITZ-TA coamorphous 203.2 ± 4.2

Solubility (mg/mL, n=3, Average±SD)

Page 59: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

55

第 6 節 コアモルファスの医薬品としての実行可能性

本研究で用いた組み合わせについて、医薬品としての実行可能性を考察する。

ITZ-FA のコアモルファスは物理的、化学的に安定であり、共結晶よりも高い溶

解度を示したため、流動性や付着性など、マテリアルとしての性質に問題が無

ければ、より溶解性に優れる経口製剤の開発原薬形態として採用できると考え

られた。一方、ITZ-TA のコアモルファスは共結晶より溶解度が高かったものの、

化学的に不安定であったことから適用は難しいと考えられた。ITZ-TA 共結晶は

化学的に安定であり、フリー体結晶よりも溶解性に優れるので原薬形態として

適用できると考えられるが、製造過程もしくは製剤添加剤との配合で結晶化度

が低下した場合は、コアモルファスのように分解が起こるおそれがあり、本質

的に分解を伴う組み合わせを適用することにはリスクが伴うと考えられた。

第 7 節 小括

コアモルファスは、ITZ-FA のように物理的および化学的に安定であるものが

見出され、医薬品原薬および製剤の一組成として十分適用可能であると判断さ

れた。溶解性にも優れるため、可溶化を目的とする物性改善の手法としての適

用が期待された。

Page 60: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

56

第五章 総括

本研究は、優れた医薬品を創出するための効率的な物性評価法と画期的な物

性改善技術を開発また評価したものである。それぞれの研究成果は、医薬品開

発の体系に取り入れられ始めており、新薬創出に貢献するものと期待される。

少量試料での溶解度 (kinetic solubility)と脂溶性 (LogD)の迅速な測定法は、

探索研究の初期段階において、スクリーニングとして用いられている。良好な

溶解度、至適な脂溶性を持つ化合物の選択、加えて構造との相関を考察するこ

とにより、化合物の最適化に活用されつつある。また、他の drug-likeness との

相関解析から、各パラメータについてのクライテリアも設定され、開発化合物

およびリード化合物の選択基準となっている。

効率的な共結晶探索法である cocktail cocrystal grinding は、開発化合物を選

択した後の段階において、物性改善手法として用いられている。実際に開発化

合物の共結晶を多数発見し、物性が改善した共結晶を複数見出している。さら

に、臨床開発段階にありながら、あらゆる製剤技術によっても物性改善が困難

であった開発化合物に対して、本法で見出した共結晶はその物性改善を可能と

し、開発形態として採用されている。本化合物は現在フェーズⅡにあり、特殊

製剤に匹敵する良好な臨床成績を収めている。

コアモルファスについても、実行可能性を有する物性改善手段の一つとして

Page 61: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

57

認識されている。研究対象として精力的に行われており、従来の製剤技術に更

なる高機能を付与するものとして適用され始めている。

以上、本研究はプロアクティブな物性評価法の構築、分子間相互作用を利用

した、先鋭的な物性改善手法の開発と評価を通じ、新規医薬品の創製および開

発を大いに促進するものと期待される。

Page 62: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

58

謝辞

本研究に際し、御懇切なる御指導、御鞭撻を賜りました明治薬科大学 深水啓

朗教授に深甚なる謝意を表します。

本論文作成に際し、御指導、御助言を賜りました明治薬科大学 古源寛教授、

兎川忠靖教授に深謝いたします。

本研究を遂行するに際し、著者に本論文を纏める機会を与え、その間御理解

と御鞭撻を賜り、また全ての論文の共著者となって頂いた、武田薬品工業株式

会社ファーマシューティカル・サイエンス アナリティカルデベロップメント

リサーチマネージャー 池田幸弘博士に深く感謝いたします。

本研究遂行にあたり直接懇切なる御指導と御助言を賜りました武田薬品工業

株式会社 辛島正俊氏、堤俊一郎博士、竹内祥子氏、小島太郎氏、木本香哉氏な

らびに本研究に多大なる御協力と御助言頂きました研究所内の諸氏に厚く御礼

申し上げます。

末筆ながら、本研究実施にあたり研究者としての礎を築いてくださった恩師

の北海道大学 石森浩一郎教授ならびに物性研究者としての基礎を築いて頂い

た北村智博士、木原典昭氏に謹んで感謝申し上げます。

最後に、支えとなってくれた家族に感謝致します。

Page 63: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

59

実験の部

試薬

各章の実験に用いた試薬は和光純薬工業株式会社および東京化成株式会社、シ

グマアルドリッチ株式会社、Spectrum Chemical Manufacturing Corporation

より購入した。試薬の等級は試薬特級を用いた。Pioglitazone および

candesartan は武田薬品工業株式会社製薬本部製薬研究所(現ファーマシューテ

ィカルサイエンス・プロセスケミストリー)より譲渡された。溶媒に関しては、

和光純薬工業株式会社より購入した。

第二章に関する実験

HPLC 装置

LogD 測定法の検討及び実測定には、Waters corporation HPLC システム

Alliance 2795、2487 紫外可視光検出器を用いた。溶解度の定量検討および実測

定には島津製作所株式会社 UFLC Prominence HPLC システム、PDA-20A 検出

器を用いた。

LogD 測定検討用試料

LogD 測定検討用の検量線用試料は以下のように調製した。

2 mg/mL 硝酸ナトリウム水溶液 1 mL、0.5 mg/mL フェニルメチルスルホンメ

Page 64: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

60

タノール溶液 2mL、0.4 µL/mL アセトフェノンメタノール溶液 0.4 mL、2

mg/mL チモールメタノール溶液 1mL、0.5 mg/mL ビフェニルメタノール溶液

1mL、0.5 mg/mL アントラセンメタノール溶液 1mL、1.5 mg/mL 4,4-DDE

(1,1-bis(4-chlorophenyl)-2,2-dichloroethylene)メタノール溶液 1mL、2 mg/mL

ヘキサクロルベンゼンメタノール溶液 1 mL を 10 mL メスフラスコに入れ、メ

タノールにて標線までメスアップした。

化合物の試料溶液は、化合物の 10 mM DMSO 溶液 1 µL を 199 µL の蒸留水 /

アセトニトリル(1:1)溶液に加え、0.5 mM としたものを用いた。

LogD 実測値の測定

検量線作成用試料、フェニルメチルスルホン及びアセトフェノン、チモール、

ビフェニル、アントラセン、4,4-DDE、 ヘキサクロルベンゼンの実測 LogD は

経済産業省、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づき以

下のように測定した。化合物を水で飽和させた 1-オクタノールに溶解させ、そ

の溶液をBritton-Robinson緩衝液、pH7.4と5分混合した後に2時間静置した。

各相を 20 分遠心分離した後、上清を HPLC にて定量した。LogD は 1-オクタノ

ール相の濃度を緩衝液相の濃度で割り、底 10 の対数とし算出した。

Kinetic solubility の測定

各測定媒体 195 µL を Grainer 社製 96 ウェル PVDF フィルタープレート(孔径

Page 65: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

61

0.45 µm)に入れ、化合物溶液 5 µL を滴下した。フィルタープレートは暗所、室

温にて 24 時間静置し、Grainer 社製 96 ウェルプレートを受けとして、真空吸

引にて各溶液をろ過した。ろ液の入ったウェルプレートはシールにてフタをし、

島津製作所株式会社 UFLC Prominence、ウェルプレート用アタッチメントに設

置して測定を行った。濃度標準溶液は、化合物の 10 mM DMSO 1 µL を水 / ア

セトニトリル 199 µL に加えて 200 倍希釈し、同様にウェルプレートにいれ、

HPLC に設置した。溶解度はクロマトグラムを用いて以下の式を用いて算出し

た。

溶解度 (µg/mL) = At / As × 10 × Mw / 200

At: ろ液のピーク面積、As: 濃度標準溶液のピーク面積、Mw: 化合物の分子

なお、溶解度の値が測定上限である 0.25 × Mw (µg/mL)より大きい場合は、溶解

度の表示を> 0.25 × Mw と表示した。

Page 66: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

62

第三章に関する実験

CCF 混合物の調製

各 CCF 混合物は 4 つそれぞれの CCF 0.5 モルを、乳鉢により緩やかに応力を

かけずに混合、粉砕して調製した。

粉砕操作

粉砕操作はレッチェ社製ボールミル MM301 を使用した。容器は専用の 1.5

mL ステンレス製セルを用い、ボールは 7mm ステンレスボールを 1 個用いた。

CCF 混合物のみでの粉砕の際は CCF 混合物 10 mg をセルにいれ、1-ヘプタン

を 10 µL 加えた後に、28.5 rps の振動数で 30 分粉砕した。CCF 混合物と化合

物の粉砕の際は CCF 混合物 10 mg と化合物 10 mg をセルに入れ、1-ヘプタン

20 µL を加えて同様に粉砕した。化合物と個々の CCF との粉砕については、化

合物 10 mg と等モルの CCF をセルに入れ、1-ヘプタン 20 µL を加えて同様に

粉砕した。粉砕は室温で行った。

粉末 X 線回折測定

粉末 X 線回折装置はブルカーAXS 社製 D8 Discover HTS with GADDS を用

いた。X 線発生装置の管電圧は 40 kV、管電流は 40 mA にて、検出器距離は 25

cm、露光時間は 120 秒とした。試料はスライドガラス上に 1 mg ほどを塗布し

たものとした。

Page 67: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

63

第四章に関する実験

物理混合物の調製

ITZ 300 mg とモル比として半量の FA または TA をメノウ乳鉢に加え、緩やか

に粉砕して混合した。

共結晶の調製

ITZ 300 mg とモル比として半量の FA または TA を試験管に加え、テトラヒド

ロフラン 7.5 mL を加え、60 oC に過熱して溶解させた。孔径 0.22 µm のフィル

ターでろ過し、60 oC に維持したまま 60 oC の 1-ヘプタン 5 mL を加え、マグネ

チックスターラーを用いて 300 rpm でかくはんしながら、5 oC /時間で徐冷して

各共結晶を晶出させた。共結晶はメンブランフィルターでろ取し、40 oC にて 18

時間真空乾燥した。

凍結乾燥品の調製

ITZ 300 mg をモル比として半量の FA または TA をジメチルホルムアミド 5

mL に溶解し、tert-ブチルアルコール 10 mL を添加した。溶液は-40 oC で凍結

させ、東京理科機械製凍結乾燥機 を用いて約 1 日間凍結乾燥を行った。

コアモルファスの調製

粉砕操作はレッチェ社製ボールミル MM301 を使用した。ITZ 300 mg とモル

比として半量の FA または TA を専用の 35 mL ステンレス製セルを用い、ボー

Page 68: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

64

ルは 20 mm ステンレスボールを 1 個用いた。1-ヘプタンを 300 µL 加え、25 rp

で 15 分間粉砕した。粉砕後の粉末は室温にて 1 日間真空乾燥を行い、1-ヘプタ

ンを除去した。

粉末 X 線回折測定

粉末 X 線回折装置はリガク社製 RINT Untima-IV を用いた。X 線発生装置の管

電圧は 40 kV、管電流は 50 mA にて、測定角度は 2 から 35 o2θで測定し、検出

器の測定インターバルは 0.02 o2θで行った。

ラマンスペクトル測定

ラマンスペクトルはカイザー社製 Rxn1 Analyzer で測定した。レーザー波長は

785 nm、レーザー強度は 400 mW とした。試料は約 1 mg をスライドガラスに

塗布したものを用いた。測定の露光時間は 4 秒、スペクトル分解能は 4 cm-1で

実施した。

熱分析(DSC)測定

DSC はメトラー・トレド製 DSC1 を用いて測定した。0.5 mg の試料を 20 µL

のアルミ製パンにいれ、アルミ製落とし蓋で密閉して測定した。測定は 50 mL/

分の窒素気流下で行い、測定温度範囲は 25oC から 200 oC または 220 oC、昇温

速度は 10 oC /分とした。

Page 69: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

65

動的吸湿平衡測定

動的吸湿平衡は、TA 社製 VTI SGA-100 を用いて測定した。試料量は約 5 mg

としガラス製サンプルホルダー中で行った。相対湿度は開始を 5%RH とし、

5%RH 刻みで 95%RH まで上昇させ、5%RH まで下降させた。測定温度は 25 oC

とした。

HPLC による面積百分率純度測定

HPLC はウォーターズ社製 Alliance 2695 HPLC システムと 2996 フォトダ

イオードアレイ検出器を用いて行った。分析カラムは資生堂社製 CapcellPAK

MGIII、粒子径 3 µm、内径 4.6 mm、長さ 150 mm を使用した。移動相は移動

相 A として 50 mM 酢酸アンモニウム水溶液、移動相 B としてアセトニトリル

を用いた。移動相のグラジエントプログラムは、移動相 B 20% (0 分)から 20% (4

分)、80% (10 分)、80% (14 分)、20% (14.1 分)、20% (20 分)とし、測定時間は

計 20 分とした。移動相流速は 1 mL/分、カラム温度は 40 oC、注入量は 10 µL

とした。ITZ 量として約 2 mg の試料をアセトニトリル 10 mL に溶解したもの

を試料溶液とした。

安定性試験条件

安定性試験における保存条件は冷所 2-8℃を冷蔵庫内で、25 oC 58%RH および

40 oC 75%RH をそれぞれナガノサイエンス製恒温保管庫内で行った。58%RH

Page 70: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

66

は臭化ナトリウム、75%RH は塩化ナトリウムの飽和水溶液で調整し、デシケー

タ内で保存した。

溶解度測定

約 2 mg の試料を試験管に加え、1 mL の測定媒体を加え、30 秒ボルテックスミ

キサーにて混合した後に、100 rpm で、37 oC の水浴内で 30 分振とうした。振

とう後の懸濁液は孔径 0.45 µm のカートリッジフィルターでろ過し、ろ液は等

量のアセトニトリルで希釈した。濃度標準溶液は約 0.1 mg/mL の ITZ アセトニ

トリル溶液を用いた。濃度測定は、島津製作所株式会社 HPLC、UFLC

Prominence を用いて、既報の条件で実施した 53)。

Page 71: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

67

引用文献

1) Branch, S. K., J. Pharm. Biomed. Anal., 38, 798–805 (2005).

2) Kola, I., Landis, J. Nature Rev. Drug. Discov., 3, 711-715 (2004).

3) Balbach, S., Korn, C., Int J Pharm., 275, 1–12 (2004).

4) Kola, I., Landis, J. Nature Rev. Drug. Discov., 3, 711-715 (2004).

5) Kawakami, K., Adv. Drug. Deliv. Rev., 64, 480-496 (2012).

6) Brewster, M. E., Loftsson, T., Adv. Drug. Deliv. Rev., 59, 645-666 (2007).

7) Fukami, T., Furuishi, T., Suzuki, T., Hidaka, S., Ueda, H., Tomono, K., J.

Inclusion Phenom. Macrocycl. Chem., 56, 61-64 (2006).

8) Leuner, C., Dressman, J., Eur. J. Pharm. Biopharm., 50, 47-60 (2000).

9) Porter, C. J., Trevaskis, N. l., Charman, W. N., Nature Rev. Drug. Discov.,

6, 231-248 (2007).

10) Di, L., Fish, P. V., Mano, T., Drug Discov. Today, 17, 486-495 (2012).

11) Papadopouloua, V., Valsamia, G., Dokoumetzidis A., Macherasa, P., Int J

Pharm., 361, 70–77 (2008).

12) Lipinski, C. A., Lombardo, F., Dominy, B. W., Feeney, P. J., Adv. Drug.

Deliv. Rev., 46, 3-26 (2001).

13) Krämer, S. D., Wunderli-Allenspach, H., Il Farmaco, 56, 145-148 (2001).

Page 72: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

68

14) Chu, K. A., Yalkowsky, S. H., Int J Pharm., 373, 24–40 (2009).

15) Kerns, E. H., J. Pharm Sci., 90, 1838–1857 (2009).

16) Yamamoto, K., Ikeda, Y., J. Drug. Deliv. Sci. Tech., 33, 13–18 (2016).

17) Valko, K., J. Chromatogr. A, 1037, 299–310 (2004).

18) Henchoz, Y., Bard, B., Guillarme, D. Carrupt, P. Veuthey, J. Martel, S.,

Anal. Bioanal. Chem., 394, 707-729 (2009).

19) Masumoto, K., Takeyasu, A., Oizumi, K., Kobayashi, T., Yakugaku Zasshi,

115, 213-220 (1995).

20) Alsenz, J., Kansy, M., Adv. Drug. Deliv. Rev., 59, 546-567 (2007).

21) Glomme, A., März, J., Dressman, J., J. Pharm Sci., 94, 1–16 (2005).

22) Sugano K., Kato T., Suzuki K., Keiko K., Sujaku T., Mano T., J. Pharm

Sci., 95, 2115–2122 (2006).

23) Yamashita, T., Dohta, Y., Nakamura, T., Fukami, T., J. Chromatogr. A,

1182, 72–76 (2008).

24) Sanphui, P., Kusum, D. V., Clara, D., Malviya, N., Ganguly, S., Desiraju,

G. R., Mol. Pharm., 12, 1615−1622 (2015).

25) FDA draft guidance for Industry 'Regulatory Classification of

Pharmaceutical Co-Crystals

Page 73: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

69

http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinfor

mation/guidances/ucm281764.pdf

26) Izutsu, K., Koide, T., Takata, N., Ikeda, Y., Ono, M., Inoue, M., Fukami,

T., Yonemochi E., Chem. Pharm. Bull., 64, 1421-1430 (2016).

27) Rodriguez-Hornedo, N., Nehm, S. J., Seefeldt, K. F., Pagań-Torres, Y.,

Falkiewicz, C. J., Mol. Pharm., 3, 362−367 (2005).

28) Ainouza, A., Authelina, J-R., Billot, P., Liebermanb, H., Int J Pharm., 374,

82–89 (2009).

29) Takata, N., Shiraki, K., Takano, R., Hayashi, Y., Terada, K., Cryst.

Growth. Des. 8, 3032-3037 (2008).

30) Kojima, T., Tsutsumi, S., Yamamoto, K., Ikeda, Y., Moriwaki, T., Int J

Pharm., 399, 52–59 (2010).

31) Seefeldt, K., Miller, J., Alvarez-Núňez, F., Rodriguez-Hornedo, N., J.

Pharm Sci., 96, 1147–1158 (2007).

32) Boksa, K., Otte, A., Pinal, R., J. Pharm Sci., 103, 2904–2910 (2014).

33) Trask, A. V., Motherwell W. D. S., Jones, W., Int J Pharm., 320, 114–123

(2006).

34) Friščić, T., Jones, W., Cryst. Growth. Des. 9, 1621-1637 (2009).

Page 74: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

70

35) 谷田 智嗣、青木 雅英、植戸 隆充、高田 則幸、石谷 雅樹、日本薬剤学会

27 回年会発表 (2012).

36) Yamamoto, K., Tsutsumi, S., Ikeda, Y., Int J Pharm., 437, 162–171

(2012).

37) Childs, S. L., Rodriguez-Hornedo, N., Reddy, L. S, Jayasankar, A.,

Maheshwari, C., McCausland, L., Shipplett, R., Ctahly, B. C., Cryst. Eng.

Comm., 10, 856-864 (2008).

38) Childs, S. L., Hardcastle, K. I., Cryst. Growth. Des. 7, 1291-1304 (2007).

39) Takata, N., Takano, R., Uekusa, H., Hayashi, Y., Terada, K., Cryst.

Growth. Des. 10, 2116-2122 (2010).

40) Shen, Y. C., Int J Pharm., 417, 48–60 (2011).

41) Hoppu, P., Jouppila, K., Rantanen, J., Schantz, S., Juppo, A. M., J.

Pharm. Pharmacol., 59, 373–381 (2007).

42) Löbmann, K., Laitinena, R., Grohganz, H., Strachana, C., Rades, T.,

Gordon, K. C., Int. J. Pharm., 453, 80– 87 (2013).

43) Chieng, N., Aaltonen, J., Saville, D., Rades, T., Eur. J. Pharm. Biopharm.,

71, 47–54 (2009).

44) Gao, Y., Liao, J., Qib, X., Zhang, J., Int. J. Pharm., 450, 290–295 (2013).

Page 75: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

71

45) Jahangiri, A., Barzegar-Jalali, M., Garjani, A., Javadzadeh, Y.,

Hamishehkar, H., Asadpour-Zeynali, K., Adibkia, K., Eur. J. Pharm. Sci.

82, 21-30 (2016).

46) Maniruzzamana, M., Morganb, D. J., Mendhama, A. P., Panga, J.,

Snowdena, M. J., Douroumisa, D., Int. J. Pharm., 443, 199– 208 (2013).

47) Laitinen, R., Lobmann, K., Grohganz, H., Strachan, C., Rades, T., Mol.

Pharm., 11, 2381-2389 (2013).

48) Kim, S., Li, Z., Tseng, Y., Nar, H., Spinelli, E., Varsolona, R., Reeves, J. T.,

Lee, H., Song, J. J., Smoliga, J., Yee, N., Senanayake C., Org. Process..

Res. Dev., 17, 540−548 (2013).

49) Remenar, J. F., Morissette, S. L., Peterson, M. L., Moulton, B., MacPhee,

J. M., Guzma'n, H. R., Almarsson, Ö., J. Am. Chem. Soc., 125, 8456-8457

(2003).

50) Shevchenko, A., Bimboa, L. M., Miroshnyka, I., Haaralab, J., Jelínková,

K., Syrjänenb, K., van Veenb, B., Kiesvaarab, J., Santosa, H. A., Yliruusi,

J., Int. J. Pharm., 436, 403– 409 (2012).

51) Yamamoto, K., Kojima, T., Karashima, M., Ikeda, Y., Chem. Pharm. Bull.,

64, online publication available (2016).

Page 76: Physicochemical Evaluation and the Property …salicylic acid 138 3 2 2.24 159 gentisic acid 154 4 3 1.76 199(分解) glutaric acid 132 4 2 -0.26 95 Amide nicotinamide 122 3 1 -0.45

72

52) Shevchenko, A., Miroshnyk, I., Pietilä, L. O., Haarala, J., Salmia, J.,

Sinerve, K., Mirza, S., van Veen, B., Kolehmainen, E., Yliruusi, J., Crys.

Growth. Des., 13, 4877-4884 (2013).

53) Nakashima, S., Yamamoto, K., Arai, Y., Ikeda, Y., Chem. Pharm Bull., 61,

1228-1238, (2013).