pdsの社会実装の課題と取組み · プラットフォーム. 非依存の. apiの作成....

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20161028㈱富士通研究所 知識情報処理研究所 セキュリティ研究センター 石垣一司 PDSの社会実装の課題と取組み Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016 AI, IoT時代のデータ活用ワーキンググループ資料

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Page 1: PDSの社会実装の課題と取組み · プラットフォーム. 非依存の. APIの作成. Personium. へ. の実装公開. オープンソース. 社会実装TFからのフィードバック

2016年10月28日㈱富士通研究所 知識情報処理研究所セキュリティ研究センター石垣一司

PDSの社会実装の課題と取組み

Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

AI, IoT時代のデータ活用ワーキンググループ資料

Page 2: PDSの社会実装の課題と取組み · プラットフォーム. 非依存の. APIの作成. Personium. へ. の実装公開. オープンソース. 社会実装TFからのフィードバック

COCN:社会実装タスクフォースCOCN(産業競争力懇談会)の推進プロジェクト(2015年~)の一つ

「IoT時代のプライバシーとイノベーションの両立」

(推進テーマリーダー NEC 若目田光生 氏)

1 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

WG1: 個人主導のデータ流通の実現

WG2: カメラ画像等のデータ活用

ビジョン検討SWG(東大 柴崎先生)

技術検討SWG(東大 橋田先生)

制度検討SWG(東大 生貝先生)

社会実装TF(富士通研 石垣)

以下の説明では、本活動を単にCOCN-WG1、COCN社会実装TFと呼ぶ

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COCN 社会実装タスクフォース

PDSの社会実装のための課題(技術、社会、経済)を、具体的なフィールド/ユースケースを想定し、検討する。

実施中のタスクフォースでは

具体的なフィールド、ユースケースとして A市で検討中の健康(PHR)系のユースケース(サステナブル・ヘルスPJ)を想定

技術面では上記ユースケースに対応するための要件を明確にし実現すべきユーザ体験(UX)からプラットフォーム非依存の上位APIを策定(→オープンソースPDS:Personiumに実装し、プロトタイプを開発する)

社会面では市民サイドへのアプローチ方法、経済面では企業サイドへのアプローチやデータが少ない段階でのビジネスモデルなどを検討

2 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

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現状認識

PDSは技術起点の業界トレンドではなく、経済/社会両面での必要性から来ているコンセプト

国内企業の産業競争力の維持、強化

持続可能な社会(Society 5.0)の実現、社会保障費の抑制

市民の事業者(企業・行政など)への信頼の確保

欧米では様々な取組が進行しているが、市民や事業者のコンセンサスは不足でビジネスモデルも未熟。GDPRの施行(2018年)向け、これからという状況

PDSが社会実装されるためには、技術面、社会面、経済面の課題解決が必要

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社会実装の課題

PDSの社会実装には、技術面の段階的進歩に加えて、社会面、経済面の課題解決が必要

4 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

PDSの社会実装

技術

経済 社会

・事業者(データ保有企業)のメリット・データが少ない段階でのビジネスモデル

・法律/制度・市民の意識変革

・意思とニーズのマッチング・データ標準/オントロジー・認証/セリュリティ

・・・・・・

段階的な進歩が期待される

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A市サステナブルヘルスPJ(概要)目的: 行政の補助金に依存しない形での1)健康無関心層を中心とする市民の健康推進と、2) 生活課題解決型地域産業の支援

1. 「ゲーミフィケーション」のアプローチにより、健康に向けた行動変容を促し、スマホ/ウェアラブル機器等によりデータを収集し、地域健康プラットフォーム(PDS)に格納

2. 格納されたパーソナルデータを、「本人同意」に基づき域内企業/大学/行政などに開示。データ利用料を原資とした地域ポイントやデータを活用したサービスを住民に還元する

5 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

現状:地方創成加速化交付金に基づくA市プロジェクトにより本実証にむけた構想具体化を検討中

PJの今年度の目標①プロトタイプ開発②構想具体化と実施環境の整備③市民向け説明と受け皿開拓(次年度以降の実証を想定)

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参考)オープンソースPDS: Personium利用者中心のデータ管理、広域分散、モバイル/IotのバックエンドとしてのBaaS機能を特徴とする富士通製オープンソースPDS

動物クラウド、高齢者ケアクラウドなど多数システムでの動作実績

6 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

http://personium.io/

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自己情報コントロール

機構

第三者アクセス制御機構

データ活用事業者

個人(家族等)

データアクセス要求サービス提案

データポータビリティ

利用・開示ルール Human ReadableMachine Readable

同意・制御・修正

他PDS、サービスへ

データ開示

開示(データ内容、利用履歴)

(import/export)

Personiumの拡張 具体的シナリオに基づき、PDSの基本要件を明確化。COCNの社会実装TFの

でのアドバイスをうけ、プラットフォーム独立なAPIを策定し、personiumに実装

パーソナルデータ収集部

測定器センサー

PC スマホ

PC スマホ業務システム

事業者アクセス制御

パーソナルデータ

パーソナルデータ管理機構

利用者サービスの提供

Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 20167

COCN 社会実装TFからのフィードバック

現状のpersoium

プラットフォーム独立な上位API

拡張

拡張

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参考)検討中のUI案(イメージ)データや利用履歴、同意記録の見える化。新しいサービスやデータ開示リクエストを利用者に提示

個人にとってのメリットに加え、地域や社会へのメリットを提示

8 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

上記は仕様策定を目的としたイメージであり、現在実装されているものではありません。

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シナリオ実現のために必要な要件(富士通の考え)

1. 安心・安全な管理

セキュリティリスクに対応し、安全にデータを保管

変更や誤りのあるデータの更新・修正

2. 見える化機能

どのようなデータがあるか(人間に分かり易い&機械可読)

どのように利用されているか(利用履歴、提供履歴)

3. 本人合意に基づくパーソナルデータの活用

事業者のリクエストとの利用者の意図のマッチング

利用実績に基づく報酬(サービス/ポイント等)の獲得

事業者からの問い合わせ(○○のデータを持つ人は何人?紹介機能)

提供先における適切な利用を保証するための仕組み

4. 外部とのデータ連携

外部からのパーソナルデータのインポート(ID連携、クローリングなど)

外部へのエクスポート(データポータビリティ)

5. その他(古いデータの圧縮・廃棄、事業者付加情報の管理など)9 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

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現在実施中の取組

COCN社会実装TFからのフィードバックを受けながら、A市サステナブルヘルスPJでの活動と富士通独自活動を実施中

10 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

フィールド/ユースケース

実現すべき要件とUX

プラットフォーム非依存のAPIの作成

Personiumへの実装公開オープンソース

社会実装TFからのフィードバック 富士通独自活動

プロトタイプ開発

A市サステナブルヘルスPJ

サステナブルヘルスでの活動

ビジネスモデルの検討市民、企業へのアプローチ検討

共通:

実行環境整備・合意形成

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技術的課題:

PDSは、現状技術の組合せでも実装可能であるが、本格的な普及には多様な側面での段階的技術進歩が必要

より実用的な利用者の意思と事業者のニーズのマッチング

データ形式の標準化、オントロジー、変換レポジトリ等の整備

利用者の理解や判断の支援

•分かり易く、機械可読な利用条件の表現(文書記述→アイコン化など)

•データ提供によるリスクを利用者に分かり易く伝える技術

•子供や高齢者などへの対応

提供先での適正な利用を保証/監査する技術

トレーサビリティ、セキュリティ、安全で簡便な個人/事業者認証

などなど

11 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

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経済的課題:

(データを保有する)事業者サイドの意識変革

従来モデル(囲いこみ型)に慣れた事業者が法的強制力のない状況でPDS化(オープン型)に切り替えるか?

•「将来の法制度」や「茹でガエル」理論だけでは事業者は動かない

•事業者にとってのPDSのメリットを明示的に示すことが必要

•例: 自社単独では困難な新ビジネスの立ち上げ、

他業種連携による自社サービスの品質向上、など

データが少ない段階(立ち上げ期)での「ビジネスモデル」

人(データ)が集まらなければ事業者(サービス)が集まらない

事業者があつまらなければ、人(データ)が集まらない

人(データ)や事業者が集まらなければ、データ利用収益を前提としたPDSのビジネスデモルが成立しない

12 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

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社会的課題:

法令の整備(データポータビリティ)や第三者評価機関などトラストフレームワークを実現する制度的な仕組みなどに加え、市民サイドの意識変革が重要

市民の意識変革に向けて

利用可能な手段としてのPDSの理解、不安の解消

得られるメリットの理解:自分にとって/家族,地域,社会にとって

「自分でも使えそう」という意識や感覚の醸成

ロールモデルの育成(→家族や近隣市民への影響)

13 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

守るべきプライバシー(リスク)から、活用できる資産(アセット)へ

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マルチサイド・プラットフォームとしてのPDS

PDSは三群のプレイヤからなるマルチサイド・プラットフォーム。①利用者(個人)に対する価値提供に加えて、②データ提供事業者への価値提供がポイントではないか?

14 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

PDS

・・・

・・・

・・・②データ提供事業者 ③データ活用事業者

①利用者(個人)サービス→ ←サービス

データ 対価 データ 対価

管理・運用 収益/サービス

←対価 対価→

相互移動

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PDSの意味(事業者の視点から)事業者視点での最大の価値は、PDSによって他の事業者の持つサービ

スやサービスと繋がり、自社単独では難しいビジネスを可能にすること

自社単独では得られない/コストがかかりすぎるデータが利用できる

他社のサービスと連携することで、自社サービスの品質/価値が向上

データ利用を透明化することで利用者の不安を解消し、信頼を獲得

(自社サービスにより得られたデータをマネタイズ:十分なデータ蓄積のあと)

15 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

PDSプラットフォーム

事業者A個別アプリ(サービス)

事業者B個別アプリ(サービス)

事業者C個別アプリ(サービス)

PDSとしてのエコシステム(ビジネスモデル)

市民 利用者 行政企業

エコシステムの補間

パーソナルデータ

市民 行政 企業 大学

連携相互補完

専門士

③データ活用事業者

②サービス提供(&データ提供)事業者

①データ主体(オーナー)

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社会実装に向けた第一ステップ

第一期は利用者意識と事業者意識の変革にトライすること。事業者、利用者双方にとってのメリットの明確化が鍵

16 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

利用者意識

事業者意識

PDSを使うことが自らの事業にとってリスク<メリット

•何ができるかを知る•メリットがあることを知る

•不安なく使える第一期トライアル

法令・制度の整備

市民の理解

事業者の理解

本格社会実装

データポータビリティトラストフレームワーク

PDS連携

立ち上げ期(データ少)のビジネスモデル 発展期のビジネスモデル

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PDSの社会実装に向けて

PDSの社会実装は、日本の産業競争力の強化&持続可能な社会づくり(2025年問題の解消など)のため、早期に取り組むべき

市民や事業者意識の変革など、まだ時間がかかる → 個別企業だけでは実施困難。知恵(人)とお金と時間が必要

1. 社会実装の支援、ノウハウの共有、協調技術開発、国際連携、標準化、など(推進機関の設置など)

2. 人材育成、専門資格の認定

3. PDS事業者などの認定サービスの実施

4. 社会実装のための国プロ

5. 代理機関やマイナポータルなど、公的なデータ活用事業へのデータポータビリティの義務付け

17 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

以下は国に期待することに対する私的見解(現在、COCN WG1-制度検討SWGなどで議論中)

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参考資料

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参考)PDSの捉え方

PDSとは、個人主導のデータ流通を実現するための仕組み

自己情報コントロール機能を有し、本人合意によるデータの第三者利用を可能にするもの

必須条件として、データポータビリティの機能を有する

19 Copyright Fujitsu Laboratories LTD. 2016

PDS(広義)

Mydata

実現する仕組み

実現された世界

情報銀行PIMS委託管理型代理機関

収集分析型代理機関補完

VRMアプリケーション

実装形態 オプトアウトによる医療情報の収集

(仮定義:現在COCN-WG1で議論中)

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参考)個人と事業者ニーズのマッチングについて

論点

個人が個別に開示ルールを記述したり、大量で多様な事業者の開示リスエストに個別に判断することは非現実的?

•信託型(個別判断・運用を組織や人に任せる)や代理人型(個別判断を代理人に任せデータ主体は最終承諾)の仲介機構(メディエータ)が必須か?

個人の判断を支援する仕組み

信託型、代理人型に加え、秘書型(大量に来るリクエストを、他者のコメントなど付与して要約、整理して提示し、データ主体による個別判断を支援する)の可能性

コミュニティの評価や、信頼する人や組織の判断の流用

これらの方式は、排他的なものではなく、同一マーケットに共存可能で、利用者が組合せ、選択する形になるのではないか?

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