pdf制作 俳誌のsalon秋 霖 や 早 退 の ひ と 眼 で 送 る 長 雨 や 栗 の 渋 皮...

PDF 制作    俳誌の salon

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  • PDF 制作    俳誌の salon

  •    衛藤公子

  • 十 一 月

  • 早退けの校庭よぎり晩夏かな

    蟬の穴掃ききよめたる塵入りぬ

    みんみんのいつぱいつまる一軒家

    うまおひの晝は黃金のひげねぶる

    晝代を妻が拂ひぬ菊供養

    秋のこゑ合せ鏡に映りけり

    笹小舟冬の早瀨をいまもゆく

    さはやかや人の手足が長くなる

    浮雲に秋を見つめてゐたりけり

    ひまはりの葉の疲れゐる夏の果

    夕月夜鷄は瞼を閉じてをり

    八甲田兵の碑法師蟬

    太股のはちきれさうな秋の風

    揉上げのまぶしきばかり菊供養

    笹小舟

    佐 藤 喜 孝鈴木多枝子

  • 秋霖や早退のひと眼で送る

    長雨や栗の渋皮煮にトライ

    TVの画面いつぱい椋鳥の群

    脱殻に白い糸くづ母の蝉

    板の間にひろげ芋茎の皮を剥く

    小蕪の早漬うまし敬老日

    人なつこい湯宿の裏の小あぢさゐ

    秋霖

    竹内弘子

    思ひ出横丁

    田中藤穂

    ポストまで百歩の並木秋の声

    蜩や丁寧な字の手紙来る

    胃薬を飲み満月を探しに行く

    この暗き池に一生あめんぼう

    吟行や大台風の西にあり

    老いてみな小さくなりぬ秋彼岸

    秋の雨「思ひ出横丁入口」です

      

    前号正誤

    短夜の夢に病夫を負ひ歩く

  • 天神のぐるり浄めし蚯蚓鳴く

    如何様にも為さるがままに蚯蚓鳴く

    土砂降りの人ゐなくなる秋の庭

    かくれんぼじいじ健闘盆の月

    西瓜冷ゆぼくはおむつがだーいすき

    いぼむしりおむつプールに入れない

    菊咲月昔の手紙読みつ焚く

    村興し行事多彩に秋祭

    ふるまひの品数多き秋祭

    方言の騒がしきほど秋祭

    秋祭有機栽培梨いびつ

    日暮時思はぬ日差後の月

    青空に櫻の紅葉核実験

    戦國の武将の自刃紅葉濃き

    東亜未

    秋祭

    長崎桂子

  • 救急車おしろい花の咲く門に

    法師蝉今日をかぎりと鳴きたてる

    一日の早きを惜しむ秋夕焼

    万国旗はためいてゐる運動会

    単線のすれちがひ駅彼岸花

    新藁のくすぶる煙夕映ゆる

    一生はあつと云ふ間に金木犀

    忘れられ秋の風鈴鳴り止まず

    笑ひ声絶えて久しき夜長なる

    目立たずに生きてゐるだけ明治節

    すべて見え一つ見えたる百匁柿

    立冬や男と言へど針しごと

    美しき日本の秋縄ばしご

    明日とはきのふの今日や初しぐれ

    早崎泰江堀内一郎

  • 蹲のあたり鈴虫鳴き続く

    とびとびに大鬼瓦萩の径

    古版木読めぬ字もあり萩の寺

    曼珠沙華の群落に酔ひ渓下る

    夢多き児等の壁画よ秋日和

    ロボットと交す言葉よ九月尽

    魔女人形秋の空へと消えにけり

    良く嚼んで芳しきかな走り蕎麦

    人魚姫鱗を残し海は秋

    親不知抜かれてしまひ菊膾

    富士仰ぎ又見返しつ山紅葉

    蔦漆後脚出した山の蝌蚪

    入るほどに不安が過る芒原

    夜露降るリズムを刻む北斗星

    森山のり子森 理和

  • 太鼓橋に躓き渡り終へし秋

    刃毀れや飯盛山の赤まんま

    竪穴住居のぞきこみたる蟻の列

    わあんわあん耳につまりしあぶら蝉

    涼風におぼれてしまひ翅こはる

    八月や続そっくひ飯箆にのこるそくひ

    踏んだ足ふまれた人や終戦日

    空蟬や榕樹の下の子守唄

    走馬燈の馬放たれし夜の雲

    夕焼の干顆の梨におよぶなり

    走り星湖の灯群に紛れたり

    押入にひそみゐたりし夜の涼気

    焼茄子や共に老いゆくふたりの餉

    蜻蛉の尾が触れ水槽の水ゑくぼ

    終戦

    吉弘恭子

    子守唄

    渡邉友七

  • 小枕ほどの冬瓜を買ふ道の駅

    鳶の背の黒のふちどり秋の浜

    秋曇稲荷の当て子くすみをり

    新聞のくたりと折れる秋湿り

    末枯の歯科医の庭に犬見えず

    秋彼岸銘は舞まひぎぬ衣萩茶碗

    コーヒーはきりりとトラジャ鰯雲

    足早に追ひこして行く秋の風

    台風や下水の蓋のをどり出す

    秋の雲白鳥の飛ぶ姿あり

    野良猫のつかずはなれず墓参

    秋の夜のラベルのボレロうとうとと

    稲びかり記憶の中へ入り込む

    秋めくや犬が人曳き散歩する

    赤座典子安部里子

  • 秋薔薇白をたつぷり父の墓

    青揚羽末期の息を草に吐く

    北斎の富士目のあたり鰯雲

    高空に箒ひとはきうろこ雲

    いつもの木いつもの枝に小鳥くる

    うたた寝の足かかへ込むそぞろ寒

    雨粒を飾りて萩のさかりかな

    爽籟や洗濯物の乾く音

    新涼や小錢つかんでコンビニへ

    秋風や抱へて温きフランスパン

    名月に大寺の鴟尾呼應せる

    晩学の今が本氣の秋灯下

    目の許すかぎり讀みたし秋灯下

    も一つの自分探さむ秋の旅

    鎌倉喜久恵木村茂登子

  • 母が逝く夢に起され鉦叩

    秋立つや今宵も二合米を研ぐ

    雨だれのリズム速まる秋の窓

    子を送り鉢の植ゑかへ秋麗

    たよりなき秋蝶待ちてシャッターきる

    やつと撮つたり三み度たび出合ひし秋の蝶

    月下美人の咲く様語る母楽し

    シーソーの一端が地に良夜かな

    月光の束となりけり胸に来る

    十五夜のふけゆく電信柱かな

    花野にて持てる棒きれもてあまし

    ガンマンのあらはれさうよ秋夕焼

    天高き煙突鉄梯のぼらしむ

    二千六百一年生れ星月夜

    斉藤裕子定梶じょう

    「一九四一年生れ梅雨ながし」恭子さんにあり真似て

  • さはやかやゆるりとたわむ築地塀

    稲穂越し垂仁天皇御陵かな

    天高し大き佛に太き指

    秋の蚊を払ふ男滝の風速し

    曾祖父母祖父母父母零余子飯

    古井戸のポンプの錆や昼の虫

    三男の嫁は末席秋団扇

    老人の忘れるちから秋の虹

    年故か松茸飯の香のうすし

    炊きたてのひとりの飯や秋日和

    新米のごはんに京の塩こんぶ

    初成のりんご亡夫と領ちけり

    さやけしや王子男瀧の音浴びる

    露しぐれ狐ゐるかや狐穴

    篠田純子芝 尚子

  • 色なき風店の灯りをすべて消し

    秋晴や車窓にメレンゲのやうな雲

    路端のサルビア愛でつ知らぬ町

    秋彼岸夢のつづきは見たくない

    ばらブーケ眞白く映ゆる秋の空

    バージンロード父と娘に秋高し

    天高くバージンロードの先の先

    白神の滝を巡りて秋の旅

    白神の九月の橅は緑濃く

    秋気満つ白神ラインは九十九折

    十二湖へ向かふ道のべ豊の秋

    秋の浜ゆるりと過ぎる五能線

    どの子にもいとしく吹けよ秋の風

    仕舞湯に首まで浸かり月仰ぐ

    孫の結婚

    芝宮須磨子

    白神

    須賀敏子

  •   

    一 句

    ひぐらしや六腑のひとつ透明に

    山下る鹿の子にじつと見詰められ

    木にのぼるから秋風が見えてくる

    佐藤喜孝

    須賀敏子

    鈴木多枝子

    竹内弘子

    田中藤穂

    長崎桂子

    早崎泰江

    堀内一郎

    森 

    理和

  • 一 人

    天に星まだ取りおへぬ田草かな

    握りしめ噛みしめ新米の塩むすび

    かなかなの声なかなかに揃はざる

    吉弘恭子

    渡邉友七

    赤座典子

    安部里子

    鎌倉喜久恵

    木村茂登子

    定梶じょう

    篠田純子

    芝 

    尚子

    芝宮須磨子

    喜孝 抄

  • 南瓜プリン固まるあひだ五並べす   

    竹内弘子

     

    幼いお客様へのおやつに南瓜プリンを作っている。そ

    れが出来るまでを五目並べをして過ごしている。オセロ

    ではなく、五目並べというところが、なんとも渋い感じ

    です。昔よく、二人では五目並べ、大勢の時は回り将棋、

    崩し将棋などを家族で遊んだことを思い出しました。出

    来上がる頃には決着が付いたのでしょうか。(典子)

    キツツキの穴に巣づくり蜂通ふ  

     

    自然の真っ只中にある蓼科の山小屋。毎日思いがけな

    い事に出会える生活は、都会のそれと何と違うことか。

     

    虫を取るために啄木鳥が作った穴、それを利用して蜂

    が巣を作りつつある。

     

    この面白い句のおかげで啄木鳥は、まん丸な穴を開

    け、雄と雌が一緒に巣を作るということや、〝蜂の巣〞

    という夏の季語があること等それからそれへと知ること

    が出来ました。穴に作る蜂の巣とは、どのような形に出

    来上がるのでしょうか。蜂の種類によって巣の形も違う

    ということですので、是非伺いたいものです。(典子)

    平穏な一尾となりし金魚かな   

    早崎泰江

     

    金魚が泳いでいるさまは見ていて飽きません。絶えず

    動いているせいなのか、突然向きを変えるからなのか、

    見ている人を意識しているような無視しているような。

    この句の金魚は最初どのようだったのでしょう。今は

    ゆったりと日々を過ごしているのを見て、作者は何かを

    重ね合せて見ているのでしょうか。でも、その〝金魚〞

    を悪いと思っているのではないようです。何故なら〝平

    穏に〞なったのですから。(典子)

    青大将君も一瞬怯んだね   

    森 

    理和

     

    蛇はとぐろを巻いていたり、鎌首をもたげていたりし

    ない限り、かかっては来ないと聞いたことがあります。

    十月作品より    

    赤座典子・佐藤喜孝

  • 目が合った途端、双方が違う方向へ飛びのけば、何事も

    起こらず、一瞬のパニックで終わります。作者は見合っ

    た相手の怯みも見逃さず、面白い句が出来ました。こう

    いう余裕は作者ならでは。中々真似が出来ません。(典子)

    誰もゐないバスに乗り込む次は夏   

    吉弘恭子

     

    この句を読んだ途端、あの映画「となりのトトロ」の

    〝猫バス〞が浮かんでしまいました。あのバスの行先は

    〝メイ〞と出ていましたが、このバスは何処へ?夏とい

    う停留所の次は何?などと楽しく想像をめぐらせまし

    た。このように、読む人に、いろいろと思い巡らす余地

    のある、ふんわりとした句を作れたらと、つくづく思っ

    ています。(典子)

    緑陰に長くゐてやや進化せり 

    定梶じょう

     

    進化論はダーウィンの名と共に知られている。緑蔭と

    いう自然の中に包まれていて、ふと生物である自己を意

    識したのであろうか。進化を進化と意識した生命体はい

    ないはずなのに、掲句は〝やや進化せり〞と大言してい

    る。発想の飛躍が愉快である。緑蔭という場で永遠に続

    いてきた命を感じているようだ。(喜孝)

    ぴしぴしとビルの玻璃張る西日かな  

    篠田純子

     

    普通ガラスという意味で使っている玻璃とは、広辞苑

    によれば、第一義は「仏教で七宝の一、水晶」とありま

    した。よく見かける、外壁が総ガラスのようなビル。そ

    のビルに、西日が張り手を打つように当たっている。ぴ

    しぴしと打たれたガラス窓は多面体の水晶のようにきら

    きらしている。作者のいつもながらの鋭い情景描写で

    す。(典子)

    梅干に顔改まる今朝の秋       

    芝 

    尚子

     

    梅干を食べた瞬間に表情の変わらない人は確かにいま

    せん。この「改まる」がとてもぴったりでおかしくて、

    作者の言葉の選び方に敬服です。夏の暑さも峠をこし、

    季節の変わり目が感じられるという季語の「今朝の秋」

    も、梅干のすっきりさを表わすのにとてもふさわしいと

    思いました。(典子)

  •  

    秋沙はアイサ。鴨の一種。古くは「アキサ」。秋シベリアの方から渡つてくる冬鳥。

     

    昼、聴いてゐた秋沙のこゑ。その秋沙の鳴声も夜に聴くと昼とはまた違ふ趣を感じる。

    「夜のこゑ」である。昼からずつと水辺で過してゐたのであらう。その辺の時間の経過

    のたゆたふような心情が表出されてゐる。

     

    なんの変哲もないと思へる内容の句ではあるが、この句に魅力を感じるのはなぜだら

    うか。アイサといふやさしい響きの鳥の名に惹かれるのだろうか。この鳥にマジックが

    あるのであろう。さうはいつても現実の鳥といふより鳥の名、言葉に魅力の比重がかか

    つてゐるやうだ。「山の際に渡る秋あきさ沙

    の行きて居むその川の瀬に波立つなゆめ」と万葉

    集に詠まれてゐる。一首のみというところが、やはりあまり見かけない鳥だつたのであ

    らう。

     

    あそびに『夜さり』より「朝」の語彙の入った句は六句。「晝」は十五句。「夕」が十一句。

    夜さりを含む「夜」が二十九句。暗くなるほど作句欲が沸くやうだ。印象通り夜の作家

    であった。晝のうち五句は「ひる」と表記されてゐる。言葉遣ひの繊細さもうかがへる。

      

    ひるよりも夜に旬あり魚田食ふ

      

    櫻見にひるから走る夜汽車かな

      

    盆の月ひるのあかるさもちこたへ

     

    と、ひるから夜への時間の微妙な変化をはらんでゐる。

    ひる啼いて夜のこゑする秋沙かな   

    八田木枯著『夜さり』鑑賞6 

    佐藤喜孝

  • 参考:

    傾盆急雨麗炎空、

    乍覚疏林露氣濃。

    一陣涼風逐雲去、

    半峰犹駐夕陽紅。

    龍草盧・「驟雨」

    参考:

    花信犹寒捻々風、

    老年情味火籠中。

    支頤乍憶童年楽、

    何處鳶箏鳴遠空。

       

    六如・「春寒」

     

    参考:

    遠樹帯行客、孤城当落暉。

    王維・「送別」

    矮屋冬眠暖洋々、戯与妻児捉迷藏

    遠山一道夕陽紅、此處陣雨依然濃

    層々灰下炭火紅、我屋亦埋大雪中

    夕陽枯野外、孤城天守閣

    冬籠妻にも子にもかくれん坊

    遠山に夕日一すぢ時雨哉

    うづみ火や我かくれ家も雪の中

    夕陽に枯野の末の天守閣

    漢訳蕪村(冬の句)       王 

  • 彦根城能の旅 

    芝 尚子

        

    彦根博物館内の能舞台は半野外

    〝節木増〞は能面の一。増とよばれる面はやや年たけた印象だが、節木増は小面や若女と同じく若い女性の面で、はじめてこの

    面が創作された時、檜材の節が鼻の左側のつけん根近くにきて彩色の上にまで表れたが、作柄が優秀なため、後世の人が模倣し、

    一つの典型となったといわれる。

  • 節木増のにほやかにして虫の秋

        

    彦根博物館内の能舞台は半野外

    〝節木増〞は能面の一。増とよばれる面はやや年たけた印象だが、節木増は小面や若女と同じく若い女性の面で、はじめてこの

    面が創作された時、檜材の節が鼻の左側のつけん根近くにきて彩色の上にまで表れたが、作柄が優秀なため、後世の人が模倣し、

    一つの典型となったといわれる。

  • 平筆に赤をふくます終戦日

    ペン胼胝にあたる鬼灯鉢おもし

    平首をたたく右手に汗じめり

    十六夜の雲のはなれてしばしかな

    十六夜や硝子細工にひかり当つ

    千成鬼灯見つけた庭の草の中

    十六夜の面影橋にうごく影

    平凡といふ幸秋刀魚唇に熱し

    あをかき集

    吉弘恭子

    田中藤穂

    吉弘恭子

     

    二階の納戸にある三つ重ねの簞笥に

    「仙台平」の袴がある。二十三年前、母

    が亡くなって四十九日が済むと間もな

    く、嫂から、家の改築をするのでしばら

    く預かってほしいと電話があって、着物

    が入ったままの簞笥その他、母の荷物が

    送られて来た。姉たちも諒解していると

    いうことだった。重い喘息の母と、分か

    らず屋の兄を看取ってくれた嫂には何も

    十六夜

    鬼灯

    竹内弘子 

  • 瓶に長すぎて鬼灯挿さずけり

    網鬼灯さびしからずや日照雨ふる

    十五夜の平野その端貨車進む

    いざよひの電柱にある足がかり

    足のうらほてつてならぬ十六夜

    揺椅子を揺すつてしばし十六夜

    十六夜や兎の耳の少し缺け

    秋麗の坂を登れば海たひら

    会ひ別れこころたひらに秋の声

    安らかにうまおひが居る手の平に

    久しぶり先づお平らに月の客

    鬼灯やもみほぐす手のおぼつかな

    いえないが、姉たちの真意を測りかねた。

    連れ合いが長男でないのは私のところだ

    けだからといって、以来そのままになっ

    ているのだ。

     「仙台平」からそんな昔の事を思い出

    した。

     

    秋晴れが続くので、風を入れがてら見

    て来ようと二階へ上がると、雑多な物が

    推積していて簞笥の前へゆけない。一番

    下の段と分っていたので膝行し、漸く手

    を入れてそれらしい物を掴んだが、重た

    くて片手では引き出せなかった。何十年

    もこうしてある。「畳皺」は消えないの

    ではないだろうか。

    田中藤穂

     「仕込み杖」。明治のはじめ、軍人・警

    官や大礼服着用者以外の帯刀を禁止する

    法令が出て、こうした物があったと聞い

    定梶じょう

    鎌倉喜久恵

    芝 

    尚子

  • 所在無く海鬼灯を鳴らしけり

    鬼灯の色さしてゐる庭の隅

    十六夜の月ゆるゆるとビルの陰

    どこまでも稲田のにほひ平な城らの道

    吉右衛門の鬼平が好き落花生

    平服のチャペルの挙式さやけしや

    無花果や老人ホームに平らな目

    姉に添ひ遊びし頃や鬼灯の香

    十六夜や染屋に掛かる鮫小紋

    十六夜や小走りに過ぐ芸子さん

    ひとときの平穏無事や小鳥来る

    母からの糠床寒蘭平らかに

    漿

    ています。

     「天袋」は、掛軸などふだん使わない、

    さほど重くない物が収ってある感じ。

     「千成り鬼灯」。小形で数が多く、熟し

    ても赤くならない。「草の中」に紛れる

    くらいだから「見つけた」かるいおどろ

    きの表現が生きてくる。

    定梶じょう

     「鬼灯」の感じがよく出ています。茎

    の太いよく熟したものは、切ったままに

    して置いてもかなり保つようです。「挿

    さずけり」は、そうした事実をあらため

    て思い、軽い詠嘆とともに回想している

    という、練達の方らしい表現です。

    鎌倉喜久恵

     「揺り椅子」に坐って揺られている方

    は、百歳になられる作者の母上でしょ

    篠田純子

    森 

    理和

    赤座典子

  • コスモスの開き終りて平らなる

    薄紅葉はや眩しかり平林寺

    竜巻や実りし稲穂平伏せる

    十六夜の月を間近に観覧車

    十六夜のいざよひつつも月のぼる

    ほろにがき鬼灯の味父思ふ

    姿

    秋場所や平幕の髷それぞれに

    平成の御慶新宮様のご誕生

    平家琵琶秋の夜長を弾語り

    鬼灯や器用不器用今もなほ

    十六夜や追分といふ七ッ辻

    墨絵めく十六夜をはや眠る町

    赤き日を海に沈めて十六夜

    一枚の葉を光らせる十六夜

    鬼灯の挿されてゐたり山の墓

    うか。前夜の雨がウソのような穏やかな

    「十六夜」でした。「兎の耳」の欠けたの

    が見えたくらいですから。

    芝 

    尚子

     

    九月の吟行の際、「王子稲荷」のつぎ

    に行った「名主の瀧」で、同行の一人が「う

    まおひ」を見つけた。触覚の長い小指く

    らいの線のきれいな昆虫「すいっちょ」。

    子供たちが小さかった頃以来のような気

    がした。まもなくもとの草むらに放され

    たようだった。

    篠田純子

     

    平城京。恒武天皇の七八四年に、京都

    に移るまでの奈良の都。平安京に移ると

    一部が中世の門前町として残り、大半が

    田園となったといわれています。近くに

    あって京都とはだいぶ趣がちがっていま

    森山のり子

    木村茂登子

    渡辺友七

  • 平安を祈りつづける原爆忌

    や湯呑平らに置かれゐて

    秋の雲ラベンダー畑平らなり

    ふる里は青田の風の平らかに

    曼珠沙華何万本も平らかに

    東京は砂漠化しつつ鬼灯市

    十六夜や猫何処までもついて来る

    十六夜や大樹に替り鉄塔立つ

    平均台はらはらさせる運動会

    軒下に鬼灯の日々赤くなる

    身籠りて鬼灯上手く鳴らしけり

    平行に生きても二人秋さうび

    平柿をきつちり並べ店開ける

    爽やかや少女思はず平手打

    す。奈良、平な城ら、寧楽ともいいますね。

    五句目の「鬼灯の香」がちょっと気にな

    りました。

    森 

    理和

     

    地下鉄の「落合」の駅を出て早稲田通

    りの信号を渡るとすぐ、「カフェ傳」へ

    曲る角に、お地蔵さんがあって、いつ行っ

    てもきれいなあたらしい花が供えられて

    いる。この角の家に「染屋」の看板が上

    がっていて、店の戸は閉ざされたままだ

    が、かつて店主らしい痩身の老人が坐っ

    ていたような気がする。こまかい白い点

    を重ねた文様に染め上げた「鮫小紋」が、

    店内に掛かっていたような気がする。

    赤座典子

     「海酸漿」は、アカニシやテングニシ

    という巻貝の卵嚢のことだ。お諏訪さ

    鈴木多枝子

    早崎泰江

    須賀敏子

  • 十六夜や三たび入院せし夫と

    鬼灯の熟れるを待ちて孫が来る

    秋彼岸平和の今をかみしめる

    秋の海地平線まで凪つづく

    十六夜や遅れし帰路をかがやかす

    思ひ出と鬼灯を提げ墓の道

    平面図かほ寄せ囲む夜長かな

    鬼燈のなかの空氣は甘さうな

    八月を平時のごとく納豆練る

    鬼灯の熟せし果肉甘かりし

    コンテナの平らに過ぐる無月の貨車

    十六夜や囲碁の会より人もどる

    まの縁日で簀の子の上に赤、青、薄黄い

    ろに染めて売っていた。薙刀ほおずき

    もあった。磯臭い泥のようなものが入っ

    ていた。海酸漿にかぎらず、口に入れる

    ものはドクだからと買ってもらえなかっ

    た。

     

    ずっと後になって浅草の観音様へ行っ

    たら、平たい小さな笊に乾いたような海

    酸漿が三つ四つのっていた。本当に褪せ

    たような「ねぼけ色」だった。

    夫に似し後姿や鬼灯市 

    森山のりこ

    平家琵琶秋の夜長を弾き語り 

    木村茂登子

    鬼灯の挿されてゐたり山の墓 

    渡邉友七

    秋の雲ラベンダー畑平らなり 

    鈴木多枝子

    十六夜や猫何処までもついて来る 

    早崎泰江

    身籠りて鬼灯上手く鳴らしけり 

    須賀敏子

    信濃には四つの平ら稲の花 

    東亜未

    十六夜や三だび入院せし夫と 

    安部里子

    安部里子

    長崎桂子

    佐藤喜孝

    竹内弘子

  •  

    今回は旅の中盤、ドイツ

    との国境の街ストラスブー

    ルをご紹介します。

     

    ストラスブールは川に

    囲まれたわずか1平方キロ

    メートルの美しい街です。

    川沿いには絵本に出て

    欧州

    紀行

    ストラスブール大聖堂

    庄司ひろみ

  • るようなかわいらしい家々が

    並び、街の中心にはバラ色の

    大聖堂が

    そびえたっていま

    す。南北を結ぶライン川と

    東西を結ぶ街道が交

    わる場

    所にあり、中世には交通の

    要衝としてめざましい発展

    をとげ

    ました。大聖堂の尖

    塔の高

    さは142メートル。12

    世紀後半から、260年のとき

    をかけて

    建設されたゴシッ

    ク様式の傑作です。大聖堂

    は中世ヨーロッパで一

    番の

    高さを誇っていました。17

    世紀以降、フランスとドイ

    ツとの間で

    の激しい争奪戦

    に巻き込まれ、これまでに

    5回も国籍が変わったとの

    ことです。

  • 新暦翻開是余白

    平安無事好日来

    初暦無事こそ良けれ余白の日   

    芝 

    尚子

    Xl―n lì fa―n ka―i shì yú bái

    Píng a―n wú shì ha∨o rì lái

    訳 : 王 岩

  • 九月の句会

     

    傳句会  

       

    中野区 

    カフェ傳

    十六夜や空席青き野球場

    喜 

    母が逝く夢に起されちちろ虫

    裕 

    靴の紐新しくして九月かな

    敦 

    草叢に蟷螂鎌を磨ぐ気配

    茂登子

    茗荷汁我に愚直の血脈あり

    純 

    故郷を遠くにおきて阿波踊

    喜久恵

    少年に身長ほしき青芭蕉

    弘 

    救急車おしろい花の咲く門に

    泰 

    涼風におぼれゐるなか翅こはる 

    恭 

    寝そべりし猫の足裏秋の風

    綾 

    白人は実に真つ白夏帽子

    理 

    老人の忘れるちから秋の虹

    尚 

    小枕ほどの冬瓜を買ふ道の駅

    典 

    蜩や丁寧な字の手紙くる

    藤 

    源流は黒部も指を濡らすほど

    寒 

     

    調句会 

     

    さいたま市

    岸町公民館 

    一日の早きを惜しむ秋夕焼

    泰 

    敬老日集ってくる池の鯉

    綾 

    鰯雲だれもかれもが足早に

    敦 

    晩夏の訃句縁深かりしと思ふ

    藤 

    秋霖や早退のひと目で送る

    弘 

     

    あを吟行        

    王子稲荷 

    秋の蚊を払ふ男滝の風速し

    純 

    うまおひの昼は黄金のひげねぶる

    喜 

    冷え冷えと滝の気を受け安らぎぬ

    尚 

    男滝の前に居ならび冷えまさる

    弘 

    だんだんに暗くなる森水引草

    綾 

    都電の旅車窓をよぎる秋御輿

    典 

    水澄みて川底赤き小石敷く

    藤 

    水浴びの鴉にとどく滝の音

    泰 

    古井戸のポンプ錆差し秋の昼

    東亜未

    チンチン電車秋祭の街通り

    茂登子

    瀧の風さはやか狐の前通る 

    恭 

     

    七座句会 

    中野区 

    小川苑 

    十六夜や染屋に掛かる鮫小紋

    理 

    西瓜冷ゆぼくはおむつがだーいすき

    東亜未

    曾祖父母祖父母父母零余子飯

    純 

    終戦日仙台平に疊皺

    恭 

    子規庵にまかりて秋の蚊を叩く

    夏 

    招き入れ先づ「お平らに」月の客

    尚 

    秋の風人の手足を長くする

    多枝子

    息吸って止めてください草の花 一 

    秋の雨「思ひ出横丁入口」です 藤 

    傳句会�

    毎月第�火曜

    ���傳�

    森�

    理和

    �03-3368-4263

    調句会�

    毎月第�木曜�

    岸町公民館�

    竹内弘子

    �0488-86-3501

    ��林檎�

    偶数月第�日曜

    女性�����

    ���21

    篠田純子�5250-2776

    七座句会�

    毎月第�火曜

    小川苑�

    吉弘恭子

    �090-9839-3943

    ��吟行会�

    奇数月�

    第3日曜

  • を吟行会も幹事さんの努力のおかげで作句と食事を

    楽しんでいる。川崎大師で買ってきた久寿餅は腰が

    あり美味しかった。次回は深大寺蕎麦である。十代の頃よ

    く自転車で行き、楽焼や蕎麦を楽しんだ。

    こ数日冷え込んでいる。今年は遲刊が常習になり皆

    さまにご迷惑をお掛けしている。それなのに気に入っ

    た私の写真を毎日一枚ブログで紹介し始めている。お暇が

    ありましたら覗いてください。いまは野良猫の写真がメイ

    ンです。(喜孝)

     

    http://blog.goo.ne.jp/honsan_2006/

    二〇〇六年十一月号

    十一月二十五日

      

    発行所   

    東京都中野区中央2-

    50-

    3

      

    電 

    話   

    090-

    9828-

    4244  

    佐藤喜孝

      

    印刷・製本・レイアウト      

     

    竹僊房

    カット/恩田秋夫・松村美智子

    表紙・赤座吉保

       

    会費 

    一〇〇〇〇円(送料共)/一年

    郵便振替 

    00130-

    6-

    55526(あを発行所)

    乱丁・落丁お取替えします。

     

    あを吟行会のお知らせ

    吟行地�

    神代植物園��

    深大寺

    日�

    時�

    一月二十一日�日�午前十時半

    集合場所�

    新宿京王線�

    調布駅�北口����正面

    ⑭番��停�深大寺行�

    食事�句会場�

    �鈴��二階�

    一時半�

    ℡������������

    申込締切�

    一月十八日�

    安部里子��

    幹事�

    安部里子�

    042�375�6623