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PEACE
Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment
for Continuous medical Education
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精神症状
せん妄
スライド作成
日本サイコオンコロジー学会教育委員会
精神腫瘍学の基本教育に関する小委員会
2008年12月版
M-7b
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
それではせん妄について学んでいきましょう。
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CopyrightⒸJapan Psycho-Oncology Society
症例
73歳女性、乳がん・多発肺転移にて入院
中
2日前より発熱を認め、肺炎の合併が認め
られる
昨晩不眠にて、トリアゾラム内服。その後よ
り「家に帰らなきゃ」と、落ち着かない様子で
荷物の整理を始める
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
まず、症例呈示からはじめましょう。 73歳、高齢の女性が、多発肺転移があるかなり進行した乳がんの治療目的にて入院されていました。 2日前より、発熱があり、採血上炎症反応の上昇、胸部CT上、肺炎像が認められました。 昨晩眠れないということで、トリアゾラム、商品名はハルシオンで普通の睡眠薬ですね、これを内服されたあとより落ち着かない様子で、「家に帰らなきゃ」との発言を繰り返し、荷物の整理を始められました。ご自身が入院にて乳がんの治療をされていることはまったく忘れておられるようでした。 とつぜんこのような不穏状態になられる方が時々おられますね。これがせん妄の一例であり、これからがん患者のせん妄について勉強して参りましょう。
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臨床疑問
評価
せん妄はどうやって評価するか?
せん妄の原因には何があるか?
治療
せん妄の薬物療法には何を使うか?
せん妄に対するケアはどのように行うか?
説明
家族にはどのように説明するか?
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
本日お話しするのは、次のような項目です。 まずせん妄の評価はどのようにするか、そしてせん妄の原因には何があるかです。 次に、治療として、薬物療法と、非薬物療法的な介入、ケアについて学びます。 また、せん妄が出現すると、ご家族は患者さんが認知症になってしまったのではないかと驚かれますので、そのようなときにどのように説明するかについても考えて行きましょう。
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メッセージ1
せん妄は様々な悪影響をもたらす
危険行動による事故・自殺
家族とのコミュニケーションの妨げ
家族の動揺
患者の意思決定と同意の問題
医療スタッフの疲弊
入院期間の長期化
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
ところで、せん妄はなぜ治療をしなければならないのでしょうか?もちろん、先ほどの症例のように、状況がわからなくなって混乱するとような状況には誰もなりたくないと思います。 そのほかに、せん妄は周囲の状況がわからず事故につながったり、突発的な自殺の危険性もあります。 また、家族との良好なコミュニケーションが取れなくなるという問題点があり、家族も動揺します。 治療選択の意思決定能力が阻害され、治療に対する同意の能力に問題が生じます。 医療スタッフも疲弊しますし、入院期間の長期化にもつながります。
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メッセージ2
せん妄は頻度が高い
終末期がん患者の30~40%に合併する
死亡直前においては、患者の90%がせん
妄の状態にある (誰もが経験する精神症
状)
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
そして、もう一点強調させていただきたいのはせん妄は非常に頻度が多い病態であるということです。 せん妄は病状が進行するほど頻度が高くなる精神症状なのですが、ホスピスでの調査においては終末期がん患者の約30%にせん妄が合併するという報告がいくつかございます。 また、お亡くなりになる直前には、ほとんどの患者がせん妄の状態にあり、誰もが通る精神症状であると言えます。
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目的
この項目を学習した後、以下のことができ
るようになる
せん妄の評価
せん妄の原因の理解と介入
せん妄に対する薬物療法
せん妄に対するケア
せん妄に関する家族への説明
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
本日の講義の目的は、皆さんに以下のことを理解していただき、実践できるようになることです。 せん妄の評価、原因の理解と原因に対する介入、症状緩和のための薬物療法、ケア、そして家族への説明です。
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背景
定義
せん妄とは
軽度~中程度の意識障害が主症状
幻覚、妄想、興奮などの精神症状を伴うことが
ある
急性、亜急性発症し、症状の日内変動が存在
する
原因は、身体疾患や薬物である
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
まずせん妄の定義ですが、主となる症状は意識障害です。よく、現場では不穏と言ったりしますが、「せん妄は第一に意識障害である」ということを念頭においてください。 そして、意識障害に加えて、幻覚や妄想、興奮などの精神症状を伴うことがあります。しかし、これらの激しい精神症状を伴わない「低活動性せん妄」というものも存在します。症状は急激に発症し、日内変動が存在するという点で、一般的な認知症と鑑別可能であることが多いです。 もう一点強調したいのは、せん妄は身体状態の増悪や、投与した薬物などによって出てくる精神症状であるという点です。せん妄が出てくると、「精神科医にお任せ」という対応をされている先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、大元となる原因は身体疾患の増悪であったりするわけですから、評価は精神科医が行い、原因の除去、治療は身体疾患の主治医が行うという役割分担、密な連携が必要です。
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せん妄の評価
次の場合、せん妄を疑う
本人より「ぼんやりする」「集中できない」
家族より「最近言っていることがおかしい」「忘れっぽくなっている」「昼はずっとうとうとしており、夜は眠れていない」
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
次の場合、せん妄を疑います。 ご本人より、「ボーっとする」という訴えがある場合。また、ボーっとしていると状態の変化を自覚することも難しくなることもありますので、他覚的に「何か最近ボーっとしてこられたな」という印象があるとき、せん妄を疑ったほうが良いかもしれません。 また、ご家族より、最近言っていることがおかしいとか、物忘れがあるとか、昼間ずーっとうとうとしているといった訴えがあるときも、せん妄であることが多いです。
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せん妄の評価
診断基準
1. 意識障害:ボーっとしていて、周囲の状況を良く
分かっていない
2. 認知機能・知覚の異常:見当識障害、幻覚、妄
想など
3. 日内変動:1日の中で症状のむらがある。夜間
に悪化
4. 原因となる薬物、あるいは身体要因が存在する
上記を全て満たす場合、せん妄の診断に該当する
米国精神医学会診断基準 DSM-IV
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
少し難しいかもしれませんが、アメリカ精神医学会が定義した、せん妄の診断基準をお示しします。 まず第一に、意識障害が存在することです。ボーっとしており、周囲の状況を解っておらず、注意力が散漫になります。 二番目に、日付や場所などの見当識が障害される、幻覚や妄想などの知覚異常などが存在します。 三番目に、急激に発症し、一日の中にも症状のムラがあるという特徴があります。よく、患者さんが夜になると不穏になるという現象を経験されると思います。入院時にしっかりされていた方が、その後記憶力が低下したり、行動のつじつまが合わなくなるという場合のほとんどは、認知症ではなく、せん妄に該当します。 そして、先ほども述べましたが、原因は身体疾患の増悪や、薬物などであります。
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せん妄の評価
スクリーニング
質問内容 得点
1(5点)
今年は平成何年ですか今の季節は何ですか今日は何曜日ですか今日は何月何日ですか
2(5点)
ここは何県ですかここは何市ですかここは何病院ですかここは何階ですかここは何地方ですか
3(3点)
物品名を3個覚えてもらい直後に被験者に繰り返してもらう(正解1個につき1点)
4(5点)
100から順に7を引く(5回まで:正解1個につき1点)
11(1点)
次の図形を書いてください
Mini Mental State
Examination (MMSE)
30点満点23点以下でせん妄を疑う
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
先ほどの診断基準を、精神科医などの精神保健の専門家以外の方が用いるのは難しいかもしれません。そこで、いくつかの評価尺度が存在します。これはMini Mental State Examination; MMSEで、せん妄をターゲットに開発されたものではなく、認知機能障害全般の評価尺度ですが、いままで述べたようなせん妄が疑われるような状況の場合、可能であれば施行してみてください。30点満点で、23点以下の場合は、せん妄である可能性が高いです。しかし、いままでしっかりしていた人にMMSEを行ことは、尊厳を損なったりと侵襲的であることもありますので、患者さんの心情に配慮つつ実施を検討下さい。
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せん妄の評価
原因の検索1
薬剤の評価
オピオイド
睡眠剤、抗不安薬
抗コリン作用のある薬
せん妄出現の少し前に開始・増量されていれ
ば疑わしい
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
ここまで述べてきたようなせん妄の症状を認めた場合、次に原因の検索を行います。 薬剤で、せん妄の原因となるのは、第一にオピオイド、第二に睡眠薬や抗不安薬などのベンゾジアゼピン系薬物、第三に抗コリン作用のある薬剤(ハイスコ、ブスコパン、アキネトンなど)です。せん妄が出現する前にこれらの薬剤が開始されていたり、増量されていた場合は、その薬剤により惹起されたせん妄の可能性を疑います。
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せん妄の評価
原因の検索2
全身状態の評価
高カルシウム血症
脱水
呼吸不全
高アンモニア血症
腎機能障害
貧血
低ナトリウム血症
感染症
中枢神経浸潤 など
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
薬物の評価と同時に、身体状態の変化に関しても評価いたします。過去の研究では、スライドに上げたような状態が、せん妄の原因となりうることが報告されております。特に、せん妄が起こってくる時期に生じた身体状態の変化が、せん妄の原因である可能性を強く疑います。しかし、進行終末期においては、複数の要因がせん妄に関与することもまれではありません。例えば、肺がんの終末期で、貧血、肺炎を合併し、低酸素血症、高炭酸ガス血症が存在する状態で、呼吸困難感に対してモルヒネを開始した後に生じるせん妄、肝臓がんの終末期で、肝不全による抗アンモニア血症と、脱水、貧血が合併するケースなどです。
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せん妄の評価
促進因子
不快な症状の評価
疼痛
尿閉
宿便
発熱
口渇 など
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
これらの症状のみが原因でせん妄が生じることはありませんが、せん妄がある患者さんにこれらの不快な症状が存在すると、混乱を助長する原因となりますし、なにより苦痛の原因となりますので、これらの身体症状がないかということをアセスメントいたします。
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せん妄の治療
可逆性の見積もり
病状の進行によるせん妄は不可逆であることが多い
回復可能 不可逆
脱水
感染
高カルシウム血症
薬剤性
肝不全
腎不全
低酸素血症
頭蓋内病変
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
原因を推定した後に、可逆性の見積もりを行います。たとえば、食事が摂れていないことで一過性の脱水になっている場合は、補液をすれば原因を除去しますし、感染であれば抗菌薬の投与によって改善が期待されます。高カルシウム血症はビスフォスフォネート製剤の投与にて一時的には改善が見込めますし、睡眠薬が原因であれば、後ほど出てくるようなメジャートランキライザーへの置換にて改善が見込まれます。このように、原因が除去できる見通しが立つ場合はせん妄も回復可能と考えられますが、がんそのものの進行に伴って生じる症状、たとえば肝不全や腎不全、脳転移の増悪などの場合は不可逆であることが多いです。また、原因が複数になる場合も、不可逆である可能性が高くなります。
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せん妄の治療STEP
STEP1 STEP2 STEP3
他の抗精神病薬
抗精神病薬とベンゾジアゼピンの併用
抗精神病薬の定期投与
原因の治療抗精神病薬の頓用
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
せん妄の治療ステップを示します。ここでも強調いたしますが、まず一番大切なのは、せん妄の原因をアセスメントし、可能であれば原因に対する治療を行うことです。 薬物療法としては抗精神病薬(メジャートランキライザー)が第一選択であり、まずは頓用にて使用します。それでもせん妄が改善しない場合は抗精神病薬の定期投与を行い、抗精神病薬のみでは対応が難しいのみ、抗精神病薬と併用してベンゾジアゼピン系の薬剤を使用します。
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STEP1原因の治療
身体要因への介入
脱水に対する輸液
感染症に対する抗生剤投与 など
原因薬剤の変更・中止
オピオイドローテーション
睡眠薬から抗精神病薬への変更
不快な症状への対応
疼痛コントロール
便秘のコントロール など
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
まず原因の治療です。身体的要因が原因であれば、その要因に対しての介入を行います。例えば、食事を摂れず脱水になっている場合は輸液を行ったり、感染が原因であれば、それに対する抗生剤の投与を検討いたします。 オピオイドが原因として疑わしい場合は、疼痛緩和の観点からはオピオイドの減量や中止は難しいケースが多いですので、せん妄のリスクが少ないオピオイドであるフェンタニルへのローテーションを考慮します。また、睡眠薬が原因でせん妄になっている場合は、睡眠薬を中止し、抗精神病薬への変更を考えます。 不快な症状のみでせん妄が惹起されることはないですが、増悪要因にはなりうるため、疼痛のコントロールや、便秘などのコントロールなど、患者さんが安楽に過ごせるようなサポートを行います。
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STEP1抗精神病薬頓用
投与薬剤・初期投与量 効果の判定・副作用の評価
内服リスペリドン液(0.5mg) 1包ハロペリドール(0.75mg) 1錠クロルプロマジン(12.5mg) 1錠
注射ハロペリドール(5mg/A) 0.5A皮下注・点滴
・開始直後は投与約1時間後に評
価を行う。効果が乏しい場合は増量し、初期投与量の4倍量程度まで使用
・錐体街路症状の出現に注意パーキンソニズム、アカシジア、悪性症候群など
・クロルプロマジンの場合は、抗アドレナリン作用による血圧低下、抗コリン作用による口渇、便秘などにも注意
認知症患者への投与は重篤な副作用のリスクがある
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
薬物療法の第一段階は、抗精神病薬の頓用使用です。内服ではリスペリドン(リスパダール)、ハロペリドール(セレネース、リントン)、クロルプロマジン(ウィンタミン、コントミン)を使用します。経口投与が難しい場合は、注射剤のハロペリドールを使用します。投与量は参考程度ですが、身体状態が不安定な患者が多いため、少量から開始し、効果をみながら漸増し、スライドに示した量の4倍量程度まで増量します。 副作用としては、錐体外路症状である、振戦・寡動・筋強剛を主症状としたパーキンソニズム、アカシジア、そしてごくまれではありますが悪性症候群が生じることがありますので注意するする必要があります。クロルプロマジンの場合は、抗アドレナリン作用による血圧低下、抗コリン作用による口渇便秘などにも注意する必要が在ります。 また、抗精神病薬はキニジン様作用をもち、薬剤性QT延長症候群から致死性の不整脈を来たすこともありますので、心電図のチェックを適宜行うことが推奨されます。 また、近年、認知症が存在する患者に抗精神病薬を投与すると、感染症などのリスクが高まり、死亡率が高まるとの報告があります。認知症がもともとある患者さんの場合は、投与に対してかなり慎重になる必要があります。
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STEP2抗精神病薬定期投与
眠前定期投与 不穏時
内服リスペリドン液 0.5~3mgハロペリドール 0.75~3mgクロルプロマジン 12.5~25mg
注射ハロペリドール 2.5~10mg皮下注・点滴
眠前1回分を1時間空けて2~4回まで追加。それ以上必要な場合は定時処方を増量
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
不穏が続く場合は、抗精神病薬を定期投与いたします。基本は寝る前に定期投与し、それでも不穏と場合は、定期投与と同様の量を追加します。日中も幻覚、興奮が著しい場合は日中にも少量の定期投与を行います。頻回に不穏時の追加が必要な場合は定期投与の投与量を増量いたします。
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STEP3
ベンゾジアゼピン併用
眠前定期投与 不穏時
STEP2の薬剤に下記を追加注射フルニトラゼパム(2mg/A) 0.25A点滴
坐薬ブロマゼパム坐薬(3mg) 1個ジアゼパム坐薬(6mg) 1個
定期投与1回分を追加呼吸数10回/分以上であれば
1時間以上あけて4回まで使用可
ベンゾジアゼピンは呼吸抑制に十分留意して使用
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
抗精神病薬のみではせん妄症状のコントロールが不十分の場合は、ベンゾジアゼピンを抗精神病薬と併用して使用します。抗精神病薬を使用せず、ベンゾジアゼピンのみの投与を行うと、せん妄を増悪させるため、これは行わないようにしてください。 Step3まで至るせん妄の場合は、経口投与が難しい場合がほとんどですので、フルニトラゼパムの点滴や、座薬を使用します。 ベンゾジアゼピン系の薬剤は呼吸抑制がありますので、身体状態が不安定な患者に使用する場合は特に要注意です。
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せん妄のケア
環境介入
照明の調整(昼夜のめりはり、夜間の薄明かり)
日付・時間の手がかり(カレンダー、時計を置く)
眼鏡、補聴器の使用
親しみやすい環境を整える
家族の面会、自宅で使用していたものを置く
オリエンテーションを繰り返しつける
場所、日付や時間、起きている状況について患者自身
が思い出せるように手助けする
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
原因に対する介入、薬物投与に加えて、環境介入も重要です。せん妄の場合は、睡眠覚醒リズムが障害されることが多いため、部屋の照明は昼は明るく、夜は薄明かりになるように工夫します。夜間真っ暗だと患者さんが混乱しますので、薄明かり程度が適当とされています。 見当識障害に対しては、日付、時間の手がかりとなるように、カレンダーや時計を見やすいところに置く工夫をします。 感覚の遮断はせん妄の増悪につながるため、視力低下がある方の場合は眼鏡を使用し、聴覚障害がある方には補聴器をつけていただくなどの対応を行います。 また、親しみやすい環境を整える意味で、ご家族の面会はとても大切ですし、身の回りにはご本人が自宅で使用していたものを置くようにします。 「今日は○日ですね」「もうすぐお昼ご飯ですよ」「手術から1週間たちましたね」など、場所、日付や時間、起きている状況について患者自身が思い出せるよう手助けをします。ただし、オリエンテーションを繰り返しつけることに関しては、患者の負担にもなるので、終末期のせん妄など、不可逆的な状態の場合は、あえて行わないこともあります。
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せん妄のケア
安全確保
点滴ルートの工夫
点滴時間の工夫
障害物、危険物(はさみ、ナイフなど)の除去
離床センサーの設置 など
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
せん妄の場合、患者が身の回りの状況を理解していないことから、事故が起きてしまうことがありますので、安全確保が大切です。 点滴ルートを抜去してしまうことは時々経験されると思いますが、点滴ルートが視界に入りにくくしたり、点滴時間をたとえばせん妄症状が落ち着いている昼間の短時間に設定するなどの工夫が必要です。 ベッドから転落しないような工夫や、はさみ、ナイフなどが手の届く範囲にないように注意することも大事です。 身体拘束はせん妄を増悪させることにもつながるため、なるべくこのような手段は用いず、離床センサーを設置するなどの工夫を行います。
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家族への説明
認知症とは異なり、身体疾患や、薬剤が原因であること、原因が除去されれば回復可能であることを説明する
原疾患の進行による場合は、せん妄が病状進行のサインであることを説明し、家族のつらさを理解し、声かけを行う。家族が実行できる患者のケアなどを一緒に探す
つじつまが合わない言動は、無理に修正しようとせず、話をあわせたり、話題を変えたりする方法を推奨する
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
ご家族は、ご本人より突然つじつまが合わない言動が聞かれたり、記憶があいまいだったりというご様子を目の当たりにして、ショックを受けられます。認知症になってしまったのではないかと心配されるご家族もいらっしゃいます。ですので、ご家族の心情に配慮しつつ、状況を説明することが必要となります。 まず、術後のせん妄など、回復が可能と見積もられる一過性のせん妄の場合は、認知症とは異なる病態であり、身体症状の変化や薬剤の作用により神経がバランスを崩していること、これらの原因を除去することができれば、せん妄は改善しうることを説明します。 癌の進行に伴うせん妄の場合は、「病状が進行して全身的に衰弱が進んでおり、神経も例外ではなくバランスを崩してきている」などと説明し、せん妄が病状進行のサインであることを伝えます。多くのご家族は、そこまで病状が進行しているのかということに衝撃を受け、悲嘆にくれることも少なくありません。この場合、家族のやりきれない気持ちに共感し、家族をいたわることも大切です。また、「自分はどうしてあげることもできない」と無力感にさいなまれるご家族も多く、その場合、清拭など、ケアに家族が加わっていただけるような配慮をすることも良いかもしれません。 ご家族より、「つじつまが合わない発言に対して、どう応じたらよいのか?」という質問を時々いただきますが、これに対しては、「話を適宜あわせたり、注意がそれたときに話題を変えたりするのも良いでしょう」と推奨します。
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原因による治療目標の設定
回復可能 回復困難
治療目標 せん妄からの回復 せん妄症状の緩和
薬物療法抗精神病薬を用い、ベンゾジアゼピンは最小限使用
ベンゾジアゼピンの併用を適宜行う
ケア・見当識障害の回復・生活リズムの補正・家族のケア
・不穏症状の緩和・睡眠確保・家族のケア
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
いままで、せん妄に対する原因介入、薬物療法、ケアについて述べて参りました。せん妄が回復可能であるか、回復困難であるかという見積もりによって、目標、対応方法は大きく変わってきます。 せん妄が回復可能である場合は、せん妄を増悪し得るベンゾジアゼピンはなるべく使用しないように工夫し、ケアも、見当識をつけるような働きかけを積極的に行ったり、日中は少々大変でも覚醒していただくように刺激を与えます。また、家族に対しては、一過性の状態である可能性が高いという説明を行い、不安をなるべく取り除くような対応を行います。 回復困難と見積もられる場合は、意識障害を改善させるというよりは、興奮、不眠、焦燥、幻覚、妄想などの苦痛な症状を取り除くことを主な目的とした対応となります。ですので、抗精神病薬で効果が不十分な場合は、特に夜間にはベンゾジアゼピンの併用を適宜実施します。また、衰弱が強いときに無理に起きていることを強いるのも負担になりますので、傾眠状態に対しても許容します。ご家族は、病状が進行していることに対する悲嘆反応を示されることが多いので、そのケアを行います。
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よくある質問1不穏のため点滴を抜いてしまう
せん妄に対する治療を十分に行う
薬剤の投与時間を工夫する
不穏が強い時間の前にあらかじめ投与する
点滴が必要であるかを検討する
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
よく、「不穏のために点滴を抜いてしまうのだがどのようにしたら良いか?」という質問をいただきます。これに対して、身体抑制は患者のQOLを著しく阻害しますし、せん妄そのものを増悪しますので、勧める事が出来ない対応です。 繰り返しになりますが、せん妄に対する治療を、原因に対する介入と薬物療法の両面から十分に行うことが必要です。 次に、薬剤の投与時間を工夫することも大切です。夜間に不穏になられる場合は、日中に投与してしまうなどです。どうしても頻回に抜いてしまう場合は、点滴そのものの必要性を検討することも大切です。終末期のせん妄で、輸液量自体を制限したほうが良い状況もあるでしょうし、がん患者の場合、身体拘束を行って著しく患者のQOLを阻害してでも点滴を行う必要がある場面というのは、かなり限られてくると思います。
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よくある質問1不穏のため点滴を抜いてしまう
夜間の持続点滴が必要でない場合、日中のみと
する
オピオイドの持続静注のためだけに24時間点滴がされ
ている場合、オピオイドは持続皮下注射に変更する
点滴中に点滴ラインが目に入らない、体に触って
不快感にならない工夫をする
点滴中に看護師や家族が見守り、マッサージや会
話など点滴以外のことに気をそらすようにする
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
日中のみに点滴を行う場合、オピオイドの投与経路が問題となるケースもあると思いますが、この場合オピオイドは持続皮下注射に変更するという方法もあります。 また、点滴ルートが視界に入らないような工夫も有効であることがあります。 看護師の見守りを頻回にしたり、ご家族に見守ってもらったりして、マッサージをしたりいろんな会話をしたりして、点滴以外のことに気をそらすようにすることもできると思います。
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よくある質問2家族が「モルヒネのせいではないか」と心配している
せん妄の原因を探索し、原因を家族に伝え
る
オピオイドが原因と考えられないときには、
はっきりと伝える
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
ご家族が「モルヒネのせいで精神状態が異常を来たしているのではないか?」と危惧されることが時々あります。この場合、せん妄の原因をアセスメントし、オピオイドが原因と考えられない場合はその旨はっきりと伝えることが大切です。
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症例
73歳女性、乳がん・多発肺転移にて入院
中
2日前より発熱を認め、肺炎の合併が認め
られる
昨晩不眠にて、トリアゾラム内服。その後よ
り「家に帰らなきゃ」と、落ち着かない様子で
荷物の整理を始める
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
最初の症例に戻りましょう。 73歳、高齢の女性が、多発肺転移があるかなり進行した乳がんの治療目的にて入院されていました。 2日前より、発熱があり、採血上炎症反応の上昇、胸部CT上、肺炎像が認められました。 昨晩眠れないということで、トリアゾラム、商品名はハルシオンで普通の睡眠薬ですね、これを内服されたあとより落ち着かない様子で、「家に帰らなきゃ」と落ち着かない様子で、荷物の整理を始められました。ご自身が入院にて乳がんの治療をされていることはまったく忘れておられるようでした。
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症例
肺炎を認めること、せん妄出現直前にトリアゾラムを内服していることから、感染と睡眠薬によるせん妄の可能性が高いと考えた
徘徊などによる事故防止を目的に、李少センサーを設置した
窓際にベッドを移動し、カレンダーつきの時計を設置。驚く家族に状況の説明を行い、一過性の症状である可能性が高いことを説明した
肺炎に対して抗生剤を開始した
トリアゾラムを中止し、不眠時はハロペリドール0.75mg投与とした
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
実際の対応は次のようになります。まず原因の推定ですが、ここ数日で肺炎が増悪してきていることと、せん妄が出現する直前にトリアゾラムを内服していることから、感染と睡眠薬によるせん妄の可能性が高いと考えたました。 次に、せん妄による徘徊などで事故が起こらない様に、離床センサーを設置しました。 環境を整える目的で、窓際にベッドを移動し、カレンダーつきの時計を設置。 家族に対するケアとして、驚く家族に、肺炎の増悪と、睡眠薬の副作用が合わさって出現している可能性が高いこと、睡眠薬をやめて、治療により肺炎が改善すれば、改善する可能性が高いことを説明しました。 原因に対する介入として、肺炎に対して抗生剤を開始し、トリアゾラムを中止しました。 不眠、不穏時はハロペリドール 0.75mgを頓用にて使用することとしました。 これらの対応により、せん妄は一時的に改善したが、3ヵ月後に病状の進行によるせん妄が出現し、これに関しては不可逆な状態に移行しました。
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日本サイコオンコロジー学会・教育委員会精神腫瘍学の基本教育に関する小委員会
秋月伸哉 明智龍男○ 岩満優美国立がんセンター東病院 名古屋市立大学大学院 北里大学病院
内富庸介○ 大西秀樹○ 大庭 章国立がんセンター東病院 埼玉医科大学 群馬県立がんセンター
岡村 仁 小川朝生 加藤雅志広島大学大学院 国立がんセンター東病院 厚生労働省
小早川誠 清水 研◎ 所 昭宏広島大学病院 国立がんセンター中央病院 近畿中央胸部疾患センター
藤森麻衣子 松島英介 吉内一浩国立がんセンター東病院 東京医科歯科大学大学院 東京大学大学院
◎スライド作成責任者 ○スライド作成者