ohmic heating coil power supply...

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醗翻 サイリスタ遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野光平,嶋田隆一ヤ谷 啓二肖石垣幸雄** (日立製作所日立研究所,日本原子力研究所悉日立製作所日立工場**) (1985年6月17日受理/1987年1月29日改訂原稿受理) Application of Thyristor Circuit Brea,ke Ohmic Heating Coil Power Supply Sys Kohei Yabuno,Ry皿ichi Shimada*,Keiji Ta,ni* Yuki・lshigaki** (Rece孟ved J腿ne17,1985/Revised manuscript received Jan Abstra,ct New ohmic heating coil power supply systems which ca皿 studied to豊nsure their effectiveεmJ economical use i皿nuc systems are conceived by using皿or孟al,module,a皿d multi・stage ristor circu最t brea,kers.The operation of these systems are a tion. It is seen that these thyristor circuit breakers are pract heating coil power supPly systems. 1.はじめに 核融合装置は近年ますます大規模になり,それにともなって電源設備も大容量化している。中でもトカマ ク形核融合装置における変流器コイル(Ohmic Heating CoiL以下OHコイルと略す)電源は従来の ンサ方式から誘導性エネルギー蓄積コイル(Inductive Energy Storage Coil,以下IE 式1)となり桁違いに大きなエネルギーを制御する装置になって来ている。IESコィル方式は,予め直流電源 よりOHコィルを励磁してエネルギーを蓄積しておき,OHコィル電流を直流遮断器によって遮断し,例えば 抵抗回路に転流させる。その際に起る急激な電流減衰によって,OHコィル端子閲に発生する再起電圧が, OHコィルと電磁結合した真空容器の中に電圧を誘起し,プラズマを発生させる。このようなOHコィル電 源は他のプラズマ制御用電源と並んで重要な電源であり,その中でもOHコィル電流を遮断する直流遮断器の H甜αcん‘Lむd.,H麗αcん∫RcscαゲcんLα6.,H甜αcん∫316. 」αPαηハ言o呪∫c Eηεγ8・g Reseαrch1弛s言麗%孟e,1ゐαゲαゐ」319日11. ** H甜αch∫L孟d.,1ノ甜αchガVVoγゐs,H泥αcん’316. 223

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醗翻サイリスタ遮断器の変流器コイル電源への応用

    薮野光平,嶋田隆一ヤ谷 啓二肖石垣幸雄**

 (日立製作所日立研究所,日本原子力研究所悉日立製作所日立工場**)

  (1985年6月17日受理/1987年1月29日改訂原稿受理)

Application of Thyristor Circuit Brea,ker to

Ohmic Heating Coil Power Supply Systems

Kohei Yabuno,Ry皿ichi Shimada*,Keiji Ta,ni*

      Yuki・lshigaki**

(Rece孟ved J腿ne17,1985/Revised manuscript received January29,1987)

Abstra,ct

  New ohmic heating coil power supply systems which ca皿generate high voltage are

studied to豊nsure their effectiveεmJ economical use i皿nuclear fusion devices. Several

systems are conceived by using皿or孟al,module,a皿d multi・stage repetitio皿types of thy・

ristor circu最t brea,kers.The operation of these systems are ana嚢yzed by digital simula・

tion. It is seen that these thyristor circuit breakers are practical and apPlicable in ohmic

heating coil power supPly systems.

1.はじめに

核融合装置は近年ますます大規模になり,それにともなって電源設備も大容量化している。中でもトカマ

ク形核融合装置における変流器コイル(Ohmic Heating CoiL以下OHコイルと略す)電源は従来のコンデ

ンサ方式から誘導性エネルギー蓄積コイル(Inductive Energy Storage Coil,以下IESコイルと略す)方

式1)となり桁違いに大きなエネルギーを制御する装置になって来ている。IESコィル方式は,予め直流電源

よりOHコィルを励磁してエネルギーを蓄積しておき,OHコィル電流を直流遮断器によって遮断し,例えば

抵抗回路に転流させる。その際に起る急激な電流減衰によって,OHコィル端子閲に発生する再起電圧が,

OHコィルと電磁結合した真空容器の中に電圧を誘起し,プラズマを発生させる。このようなOHコィル電

源は他のプラズマ制御用電源と並んで重要な電源であり,その中でもOHコィル電流を遮断する直流遮断器の

 H甜αcん‘Lむd.,H麗αcん∫RcscαゲcんLα6.,H甜αcん∫316.

*  」αPαηハ言o呪∫c Eηεγ8・g Reseαrch1弛s言麗%孟e,1ゐαゲαゐ」319日11.

** H甜αch∫L孟d.,1ノ甜αchガVVoγゐs,H泥αcん’316.

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核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

責務は大きい。

 トカマク形核融合装置のOHコイル電源に適用されている直流遮断器2)は現在,真空遮断器(VCB)方式3)

や空気遮断器(ABB)方式4)など,いわゆる機械スィッチ方式とサィリスタ遮断器(TCB)方式5)に代表さ

れる半導体スイッチ方式に大別できる。VCB方式は日本原子力研究所の臨界プラズマ試験装置6)(JT-60),

米国プりンストン大学のTFTROや同じく米国GA社のD。、blet皿8)などに適用されている。また,ABB方式

はヨーロッパ連合のJETに適用されている。一方,TCB方式は京都大学のHeliotr。n E9≧フランスの

TORE SUPRA lo)に適用されている。

 この中で,TCBは今後半導体技術の進歩により適用の拡大が期待されている。筆者等は既にTCBの実用

化の技術開発を行い報告した11)。サイリスタは高速制御性が勝れているので,TCBをOHコイル電源に適用

する場合,プラズマ電流制御のために機能の異なる種々の回路構成が考えられる。

 本論文では,TCBの構成方式に検討を加え,従来のTCBに比べより高度の機能をもつ数種の構成を考察

した。次いで,これらのTCBを利用した種々のOHコイル電源回路の検討を行った。その結果,OHコィル

(それ自身がIESコイルとして利用されることが多い)と外付きIESコイルとの組合せ方式,あるいは高

電圧発生用素子の選択(抵抗またはコンデンサ)等を考慮すると,多数の構成が可能であることを述べる

(2章)。

 3章では,これらの回路構成の中で特徴ある回路を選び,JT-60のOHコィル電源を例にとって,その動

作特性の詳細を解析し,その有用性を確認する。さらに,それらの回路の経済性を判定するために,各回路

に必要な半導体スイッチ容量を比較した。

2.変流器コイル電源によるプラズマ電流の励起

2.1  直流遮断器の構成

 トカマク形核融合装置では,一般にプラズマ電流を流すために図1(a)に示すような環状形の真空容器内の

プラズマと鎖交するように鉄心を入れ,プラズマを変庄器の二次コィルとして電流を流している。一方変圧

変流器(Ohmic Heating)コイル電源

/・目馨藝、

 真空容器/プラズマ

   /

塾)、翁

直流遮断器

  時定数  OH  鯛整抵抗  コE      イ      ル

OHコイル 鉄心

負荷

真プ空ラ容ズ器マ

{al原理図 ㈲等価回路

図1・トカマク形核融合装置の原理図

224

研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

一方変圧器の1次コイルには,鉄心に磁東変化を与える電源システムが必要で,これを変流器(OH)コィ

ル電源と呼ぶ。また一次コイルをOHコイルと呼ぶ。

 真空容器内に環状形のプラズマを発生させるには,大形トカマク形核融合装置では,OHコイルを予め直流

電源(図1E)より励磁しておき,直流遮断器によって電流を遮断することによって,OHコィルに磁束変

化を与える方式をとっている1)。このようにして発生したプラズマを真空容器内に浮かせながら電流を流す

ためには,プラズマ電流はプラズマの圧力も含めて力の平衡が保たれていなければならない。

 しかし,プラズで電流は強く流れることにより種々の不安定性が生ずる。電流が原因の不安定性の代表に

Kinkモード不安定性がある12)。これは,プラズマ電流励起時に発生しやすい。プラズマ制御の観点からは,

プラズマ周回電圧(OTV)を任意に制御し,電流励起時に往往にして起こるこの不安定現象を抑制するために,

プラズマ電流を極力制御できることが好ましい。

 このための方策として,OHコイル励磁用電源(図1E)を使って必要な高電圧を任意の時刻に発生するこ

とが簡単だが,高電圧発生用電源として大容量の設備となり経済的に不利となる。そこで,直流遮断器を使

って電流遮断を行った時,OHコイル端子間に発生する高電圧を利用する方がシステムとしては経済的である。

例えばJT-60の場合は,OHコイルとIESコイルを設け,2段切換が可能である13)。更にコイル個数を多く

し,直流遮断器による電流遮断,コイル切換を繰返せば,プラズマ電流励起時の制御はより効果的になる。っ

まり,プラズマ電流励起時の制御性を確保するためには,プラズマ電流の多段立上げが必要であり,それを

制御する直流遮断器の責務は大きい。ここで,直流遮断器としてTCBのようなサイリスタを使った半導体ス

ィッチを使うと,高速制御性の面から一層有利になるが,機械スイッチに比べ初期コストの上昇は避けられ

ない。このため,システムとしてはかえって不経済になりかねない。

 そこで,TCBのコスト上昇を極力抑えると同時に,より高度の制御特性をもたせるための回路方式の工

夫が重要な課題となる。ここでは,次の三つの基本的な回路方式に対する条件を基に検討を進めることにす

る。

 ①TCBを短時間定格で構成できる回路方式

 ② プラズマ電流を多段で立上げる場合,TCBを何度も繰返して使用できる回路方式

 ③半導体スイッチとして,繰返し使用すると同時に高い制御性を活かし,プラズマ電流立上げ時におい

  ても回路の制御が可能な回路方式

 ①については,TCBをOHコイルに対して直列に設置する方式(直列TCB方式)より,OHコィルと並列

に設置する方式(並列TCB方式)がよいことは既に報告した11)。従って,以下に述べる検討は,すべて並

列TCB方式で進める。そのTCBの基本形を図2(a〉に示し,S(Standard)形TCBと表示する。

 ②については,適用するTCBはS形TCBを基本とし,プラズマ電流を多段立上げする場合に,一組の

TCBを各IESコィルに順次切換えて電流遮断を行える新しい回路構成にしたことに特徴がある。これを以

後SR形TCBと表示する。SR形TCBの場合,転流コンデンサは,電流遮断毎に電圧極性が反転するため,

225

核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

図2(註)に示すもう一つのサイリスタスイ

ッチを設け,次の遮断動作を行なう前にサ

ィリスタスィッチを点弧し,電圧極性を元

の状態に戻す必要がある。これをパワーバ

ック回路と呼ぶ◎

 ③については,TCBをモジュール構成

にするとよい。つまり,モジュールTCB

毎にOHコイル電流を遮断し,バイパスス

イッチを通して時定数調整抵抗を高抵抗に

切換える方式を考案した。従来のOHコイ

ル電源では時定数調整抵抗は低抵抗へ切換

えて行くことはできても高抵抗へ切換えて

行く方式はなかった。この切換スイッチと

してのモジュールTCBの具体的回路を図

2(c),(d)に示す。

 図2(c)は,図2(a)に示すS形TCBを

直列接続した構成で,SM(Single Module)

形TCBと表示する。また,転流用コンデン

サC1とC2は共通化でき,図2(d)の構成が

可能である。このような構成をDM

(Double Module)形TCBと表示する。

時定数調整抵抗

R昼

lal

主サイリスタスイッチ

 /

 転流コンデンサ

  ニr TSW,1こDi。de

 CSWT§W,ID》を並列接続

Tsw,  1ゆ   隔助サイリスタRl

藷挿亭2段直列接続

R,一,1

Rト

F  「      ilD  TSWI TSW12      1      ドロ

ヒ.  ..±」

      廟

{bl RC形TCB

”一cr「

   f   TSW I2-LTSWl1-I IC、とCz

 ._..」 を共用

     ⇒’騨て℃コーコ

    l    TSW l2-2TSWH-2 1   」

lC}

Rl曹1

R1.~

TSW l H

TSW』2一l

l

    廟

SM形TCB      ldl DM形TCB

(註)パワーバック回路は下図に示すようにTSWPbを 点弧するとCswが放電し電圧極性が反転する。

 ず    

血ゆ」ユ  ー 4・             十一

  Csw

c,l   TSW l2-2TSW1聖糟2 1

.._一」

    廟

図2.サイリスタ遮断器(TCB)の基本構成

 所で,主サィリスタスィッチTSW1の電流が遮断された直後・転流コンデンサと転流リアクトルのそれぞ

れの端子電圧の和がTSW1に逆電圧となって印加される・この電圧はOHコィルに対しても逆電圧となり,

電流の立上げを阻止する方向に働く。これを抑制するためにTSW1に並列にダィオードを挿入する方法が考

えられる。これをRC(逆導通,Reverse Conducting)形TCBと表示し,具体的回路を図1(b〉に示す。

 以上をまとめると,TCBの構成は表1に示すような方式が可能である。

2.2 変流器コイル電源の多段立上げ構成

 OHコィル電源によるプラズマ電流立上げ時に,可能なかぎりプラズマ電流を制御するために,変流器コ

イル電源は多段構成がよい。この場合,OHコイル電源の基本構成は三つのタイプが考えられる。図3は

TCBを使った3段立上げの場合の基本構成を示したものである。

 (1)並列方式5’14),

 図3(a)に回路構成を示す。最も単純で基本的なOHコイル電源の構成は図中に示したような1段立上げ回

226

研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

表1.TCBの構成法

名 称 基本構成 構  成  の  概  要

標準形.

s 形 図2(a)        *1サイリスタユニットを直並列接続で構成したTC8

SR形S形TCBの転流コンデンサにパワーバック回路(Reversal)を設け,電圧極性を反転させて繰返し使用する。

逆導通形

RC形 図2(b)

S形TCBの主サイリスタスイッチに並列にダイオードを設けた逆導通(ReverseC◎nducting)TCBとし,電流遮断時の逆極性電圧発生を防止したTCB

RCR形 RC形TCBの転流コンデンサにパワーバック回路を設けて構成

SM形 図2(c)

D M形 図2(d) 2っのモジュール単位のTC8の転流コンデンサを共通にして複合して(Double)構成

SMR形 SM形TCBの転流コンデンサにパワーバック回路を設けて構成

(註)*1サイリスタをk直列4並列メッシュ結合で構成したものを“ユニット”と呼ぶことにする。

路である。これにTCBとIESコイルの両者を並列接

続し,プラズマ電流の多段立上げを可能にするのが2

段立上げ回路であり,更に1段並列接続したものが3

段立上げ回路であり。これらは並列方式変流器コイル

電源と呼ぶ。TCBとしては,S形,RC形,SM形,

DM形の適用が可能である。

 (2)直列方式1の

 図3(b)に回路構成を示す。これは,2組のTCBを

直列接続し,第2段,第3段のIESコイルも互に直列

接続する構成にしたものである。回路構成の詳細は文

献15)を参照されたい。TCBを2分割(モジュール化)

することから,TCBとしてはSM形,DM形の適用

が可能である。

F(3)直並列方式15’16)

 図3(c)に回路構成を示す。これは,2組のTCBを

直列接続し,第2段,第3段のIESコイルは互に並列

接続構成にした回路である。詳細な回路構成,動作特

性は文献15),16)を参照されたい。TCBの構成は,

第3段エネルギー蓄積(IESlコイル

バイパススイッチ

   S2

  S形  CB  L。

     第2段エネルギー蓄積(IES》コイル

  S,        時定数調整抵抗

        変流器(OH》コイル         C L、c RI Lr

 1段立上げ回路

2段立上け回路3段立上け回路

(a)並列方式

し2

S2

S4

L3

  M晋S!

  C

s。燦

R1

 3段立上げ回路

(bl直列方式

し2   M形    CB

R晋SI

    M形L3   C

しf

   S3

             Lr

   S2

      3段立上げ回路

     (c)直並列方式

(駐)TCBは表示以外のTCBを使用することも可能である

   図3.変流器コイル電源の基本構成

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核融合研究第57巻第4号  1987年4月

直列方式と同じであるが,第2段,第3段の回路動作が行われる時,お互の回路の干渉がないよう,バイパ

ススイッチS1で分離する必要がある。

 以上の三方式を比較すると,直列方式,直並列方式ではバィパススイッチを多く使用しなければならず,

並列方式より複雑になる。従って,本研究では並列方式に本研究で考案したTCBを適用した多段立上げ変

流器コイル電源について検討する。

3.サイリスタ遮断器によるプラズマ電流励起時の制御

 TCBを適用した変流器コイル電源における,プラズマ電流の励起制御のために」外部回路を補助的に付加

して制御する方式(コンデンサ付変流器コイル電源),TCBそれ自体で制御する方式(繰返し使用方式),

OHコイル電源回路の中の他の機械回路との組合せで制御する方式(可変時定数調整抵抗回路方式)など,

ここでは新らしく考案した回路について述べる。本研究で考案したTCBが,従来のS形TCBと異なる大き

な点は,OHコイル電源の必要とするプラズマ電流の多段制御立上げ機能に対し,一組のTCBで対処できる

方式であることである。

3.1 コンデンサ付変流器コイル電源への適用

 従釆,図3(a)に示すようなS形TCB      Tsw、

を使った並列方式OHコイル電源(S形並                        s瑚

列方式変流器コイル電源)の2段立上げ

回路では,2組のTCBを使って立上げ                   C                                       THCσていた。所が,本研究の目的とする所の

TCBを有効に使うという観点からすると,

1組のTCBにコンデンサを補助胸に付加      図4.コンデンサ付S形並列方式変流器コィル電源の構成

した回路は,2段立上げ回路に相当する

機能をもつことができる。これをコンデ

                           表2.回路条件ンサ付S形並列方式変流器コイル電源と

呼び,図4に回路構成を示す。

 こ.の新らしく考案した方式の回路特性

を検討するために,ディジタルシミュレ

ーションを行った。解析では,表2に示

すようにJT-60の回路条件を参考にし

た。なお,プラズマ,真空容器は電気回

路要素(Inductor・Resistor等)解置換

                               (註)※直流遮断器による電流遽断後OHコイルえられるので,プラズマ,真空容器のイ                   端子間に印加され縄圧

TSW  3

い↓

 プラズマ{⊃監黛∈1 真空容器

↑肌S形TCB

計算条件 参考値(JT-60仕様》

OHコイル電流 100kA(最大) 92kA

lESコイル電流 100kA(最大) 92kA

OHコィルインダクタンス 10mH 8.3mH

IESコィルィンダクタンス 10mH 10mH

OHコイル端子間電密 25kV 25kV

プラズマ電流 2.7MA 2.7MA

ノラズマ電流立上げ鯛 約100ms 100ms~1s

228

『研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

ンダクタンスはそれぞれ6.7μH,3・8μH,

抵抗はそれぞれ1σ6、9,1.5×10-3、9 とし

た。本方式が,プラズマ電流の2段立上げ相

当の回路になるかどうかを検討するために,

OHコイルの初期電流を70。7kA(コイルの

蓄積エネルギーを1段立上時の1/2)とした。

また,コンデンサCの容量は,プラズマ電流

励起時間がLfとCの振動周期で決まることか

ら,C;50mFとし,約70msで立上げる

ことにした。

 解析プログラムは日立製作所の開発したサ

イリスタ回路の汎用解析プログラムSCAPを

使用した。本研究では,すべてこのプログラ

ムを使用した。

 図5に解析結果を示す。まずOHコィルLf

を直流電源THC{より初期励磁すると図4に

示す方向に電流が流れる。次に・THCfをイ

ンバータ運転し逆極性電圧を発生させ,S形

TCBの主サイリスタスイッチを点弧すると

31.50さ

出 oo籾 ・

一1.5

140V電圧

ブラズマワンターン

プラズマ電流3,7MA

0,0    2.0    4.0

~0.3

§乙団0,0

一〇,3

  0,0  2.0

 60  8.0  10.0(a) 時間咽σ2Sl

 0.4く  ト  o  乙 0.0慣

  卿

 0・4.12.0

変流器コィル電流

変流器コイル電圧

24.8kV

4。0    6.0     8,0    10.0

 (bl 時間IXlO-2Sl

>0.300乙

出0.0

一〇.3

 0.0    2.0    4.0

24.8kV   Iコンデンサ電圧

π

コンデンサ電流

 6.Olc) 時

 0.8 く

  ゆ  o  乙 0.0爆

  費

 0.812,0

  く 0.8切

  o  乙  爆 0,0

  蟹

       0.88。0    10,0   12.0

間 (XIO-2S》

図5.コンデンサ付S形並列方式変流器コイル電源の

  動作特性

Lfの電源は主サィリスタスィッチに流れる(2点鎖線)のようになりTHCfの電流は零となる。 この時

SW1を開放し・THCfとL{の回路分離を行う。

 ここで・プラズマを発生させるために・t=5msでTCBにより電流を遮断し,TSW3を点弧すると・通

電回路はC・TSW3に移る。これによって・Lfを流れる電流はC充電し(太い実線)・図5(b)に示すよう

にOHコイル端子間に高電圧を発生する。同時に,真空容器内に図5(a)に示すようなOTVが誘起される。

そして,140Vに達し放電が起り,同図に示すようにプラズマ電流が励起される。

 この間のCの電圧・電流波形は図5(c)のようになる。t=33msでCの充電が停止するので・TSW4を

点弧すると,Cは放電する。このため,OHコィル電流の向きは逆転し,図5(b〉のようになるため,プラズ

マ電流は図5(a)のように更に上昇し,3.7MAまで達する。

 次に,t・=60msでCの電圧が零となった後,もし回路モードが変らなければOHコイルの電流の向きが

変り,プラズマ電流を減少させる方向に動作してしまう。そこで,TSW5を点弧すると図4に示すように点

線の方向に電流が流れ,短絡回路が形成されるので,プラズマ電流の変化もゆるやかになる。解析では,電

源THCfを投入し・プラズマ電流が3・7MAを保持できるよう制御した。

229

核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

24

9.6

O.8

0.O

一〇.8

一1.6

一2.4

プラズマ電淑×10・A》

100kA

OHコイル電流(×105A)1■

OHコイル端子間電圧(x104V)

解析条件OHコイルインダクタンス=10mHOHコイル初期電流=100kA時定数調整抵抗=0.25Ω

25kA

26MA

24

16

08

o,o

O.8

一1.6

2.4

◎.O    l.0     2.0    3,0    40     5.0    6.0    7.0    8.0     9.O     ゆ,O

                       時間(×104S)

 図6 抵抗付S形並列方式変流器コイル電源の動作特性(プラズマ電流1段立上げ)

 このように,本方式は初期のエネルギー蓄積要素であるOHコイルに蓄積されたエネルギーをコンデンサに

一時蓄積し,再びOHコイルに回収するので,回路動作としては2段立上げ方式に相当する。従って,エネ

ルギー蓄積要素としてはOHコイルとコンデンサの2つになるが,TCBは一組でよいことが特徴的で,

TCBを有効に活用した回路と言える。

 更に,本方式はプラズマ周回電圧を得るための時定数調整抵抗を必要としないので,プラズマ電流励起時

の回路損失が少ない。1例として,同一蓄積エネルギーで抵抗付S形並列方式変流器コイル電源(図3(a)1

段立上げ回路)でのシミュレーション結果(図6)と比較すると,プラズマ電流の最終値(3.7MAと2.6

MA)に差が出る。つまり,コンデンサ付S形並列方式変流器コイル電源の方がエネルギー転送効率が高い

と言える。このことから,本方式は,回路損失の低減を必要とす為超電導コイルを使った回路に有効である。

 ただし,プラズマ電流の励起時間を長くするためにCの容量を大きくすることはシステムとして不経済と

なる。そのため,Cの容量を小さくした中規模以下の核融合装置に適している。

3.2 繰返し使用方式への適用

 これまでのOHコイル電源は,エネルギー蓄積要素としてOHコイル,IESコイルを考えたが,更に多数

のIESコィルを使ってプラズマ電流を多段立上げする場合,多数のTCBを使わずに1組のTCBを繰返し

使用することによって,より経済性に富んだOHコイル電源を構成できる。回路構成を図7に示す。図7は

OHコイルの他にIE Sコィル(L2,L3)を2段使用したプラズマ電流3段立上げのOHコイル電源で,

SR形並列方式変流器コイル電源と呼ぶ。

230

研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

SW2

L3

D2

SWI

DI      TSW5

TSW4TSW6

L2

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R l

1 ド

SR形TCB

  (a)

Lf

     ヨ

魯暑  ,曾

D}

4 l l

(c》

図7.SR形並列方式変流器コイル電源

 SR形TCBは繰返し使用することから,各IESコイル間の二F渉をなくすためにバイパススイッチTSW4,

TSW5,TSW6等を設ける必要がある。すなわち,プラズマ電流が立上っている間に,次の段の立上げ準

備をするためにIESコイル電流をTSW1とバイパススイッチを通して転流させておかねぱならない。この

ため各IESコイルに1個のバイパススイッチが必要である。

 OHコイルの初期電流を92kA,第2段,第3段IESコイルの初期電流をそれぞれ92kA,50kAとし

た場合のディジタルシミュレーション結果を図8に示す。回路条件は表2の定数を適用した。

 第1段の立上げ動作はこれまでの方式と同じである。図8(a)に示すようにプラズマ電流は40msまで上

昇する。その間,第2段立上げ動作準備のために,L2の電流をTSW1に転流させておく。これを図7(b)に

示す。この時の代表的な波形として,変流器コイル端子間電圧,TSWr TSW4の電圧波形を図8(協(c),

(d)に示す。また,転流コンデンサCSWlの電圧は,この聞に極性反応を行うため,図8(d)に示す波形とな

る◎

 tニ40msで,第2段の立上げ動作に入る。TSW1の電流を遮断し,SW1を投入すると電流経路は図7

(c〉のようになる。この時R1はL2からの電流によってOHコィル端子間に高電圧を発生し・プラズマ電流も

更に立上る。これを図8(a),(b)に示す。

 同様にして,第3段立上げ動作を行う。その結果,プラズマ電流は約3・5MAまで上昇する。

 以上の結果より,3絹のTCBを使わずに,1組のTCBを繰返し使用してプラズマ電流の3段立上げが

可能なことを確認した。しかし,本方式は,プラズマ電流の立上げ期間の任意の時刻に高電圧を発生できる

訳ではない。っまり,ある遮断動作が終って次の遮断動作に入るには一定の時間が必要である。その時間は,

一つは転流コンデンサの電圧極性反転動作時間,もう一つは,IESコイルから主サイリスタスイッチヘの電

流転流に要する時間である。前者は数msで可能で,後者は直流電源(図示していない)のインバータ運転

231

核融合研究 第57巻第4号 1987年4月

  1.5

>~

o×  0,0

 一1.5

  O,3

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o×  o.o

 一〇,3

  O,3

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×  0.O

 一〇.3

プラズマワンターン電圧(OTV)

プラズマ電流

0,0 2,0 4,0 6,0     8,0     10.O

 時間(×10-2S)(a)

12.0

変流雛:コイル端子間電圧

変流器コイル電流

0,0 2.0 4.0 6.0     8.0    10,0

 時間(×10-2S)(b)

12.0

TSW1電圧

TSW1の電圧一28kV

0.O

  0,3

>の

o×  0,0

 一〇.3

  0.3

no×  0.O

 一〇.3

2,0 4.0 6.0     8,0     10,0

 時間(×10-2S)(c)

12,0

TSW4の電圧

O.0

25kV

2,0 4,0 6,0     8.0     10,0

 時問(×10遭S)(d)

0,4

 《 卜 ◎o.◎ ×

 爆 鯉O.4

12,0

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一25kV Cswの電圧0.O 2,0 4,0 6,0    8,0    10,0

 時間(×10覗S)(e)

12。0

1,0

 ( ⑩ oo・o~~

 爆 鯉1.0

図8.SR形並列方式変流器コイル電源の動作特性

232

研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

時の電圧,電流にもよるが,本解析では一2.5kVのインバータ運転で約3msを要している。従って,次

の遮断動作に移るまでの時間は10ms程度は考慮しなければならない。

 以上から,SR形並列方式変流器コイル電源は,時間精度を要しない,単にプラズマ電流の多段立上げに

は有用な方式である。

3.3 可変時定数調整抵抗回路への適用

 図3(a)に示した並列方式のOHコイル電源においては,OHコイル電流を時定数調整抵抗に転流させた後,

抵抗値を自由に変えられれば,プラズマ電流励起時の制御の自由度も高くなる。しかし,従来のS形TCB

を使った回路では,時定数調整抵抗にバイパススイッチを設けて切換えても抵抗値を下げることはできても,

上げることはできなかった。そこで,SM形,DM形TCBと時定数調整抵抗の間にバイパススイッチを設け

た新らしい機能をもつOHコイル電源を考案した。

 (1) SM形並列方式OHコイル電源

 SM形TCBを適用した並列方式OHコイル電源(SM形並列方式変流器コイル電源)の代表的な回路構成

を図9に示す。初期のエネルギー蓄積要素はOHコイルとIESコィルでJT-60の構成を参考にした1)。

 SM形TCBの段数は3段構成とした。TCBの遮断時間は数msと高速だが,TCBは電流遮断と通流の繰

返し動作を行うため,切換時間に10~15msを考慮して検討することにした。そこで,プラズマ電流の立

礁・ (b)t≦50ms

勧(c)50≦t≦65ms

魯(d)65≦t≦80ms

鞍1

 (e》80ms≦t

D

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   バイパススイッチ/ 緊

SW1時定

CoTSWoLo

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  lTSW  lSW11-1)

4-l R回

SW1量騨2)

S閉形TCB

TSW4.2

下S8W”甲3)   1   1

R1_2  Lf3R1_3

TSW4

TC B   幸サイリスタスイッチTCB(a)

主サイリスタスイッチ

 プラズマ

/∈31Mし

{3 真空容器

図9.SM形並列方式変流器コイル電源の構成

233

核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

上げ時間は表2に示すように100msとし,最初のOHコイルによる立上げ時間を50ms,後のIESコイルに

よる立上げ時間の50msをSM形TCBを使って立上げるとすると3段程度の構成がよい。

 また,SM形TCBは時定数調整抵抗の切換が必要なことから,図9に示すような構成のバイパススィッチ

TSW4-1,TSW4_2,TSW4-3,TSW4_4を設けた。

 このような回路構成のOHコイル電源の特性を検討するために,ディジタルシミュレーションを行った。計

算で適用される各部の条件は表2を基にした。プラズマ電流が所定の値(2.7MA)より大幅に変らないよう

ここではOHコイル,I ESコイルの初期電流を70.7kA(100kA時の蓄積エネルギーの1/2とした)とした。

 従って,時定数調整抵抗の値はR1-1=R1-2=R1-3=0。1189(=25kV/(70.7kA×3))となる。

 動作としては,第1段のプラズマ電流立げに入る前に,OHコイル電流はS形TCBの主サイリスタスィッ

チTSW11-3,TSW11-2,TSW11-4,バイパススイッチTSW4-1を通って流れている時点から考え始める。

プラズマ着火に必要な高電圧をOHコイル端子間に発生させるため,転流回路の補助サイリスタスイッチ

TSWoを点弧し,予め充電しておいたCoの放電電流によって,主サィリスタスイッチの電流を遮断する。

このため,OHコイル電流は時定数調整抵抗に移り,OHコイル端子間に高電圧が発生する。 これらの特性

は,図10(a〉,(c)~(k)に示す。

 t=50msより第2段プラズマ電流立上げを行う。L2には直流電源(図示していない)より電流を供給

しておき,t=10msより電源をインバータ運転しながら主サイリスタスィッチを点弧すると図9(b)に示

すような電流経路になる。この間プラズマ電流は図10(a〉に示すように上昇しt=50msで約L7MA に

達する。また,真空容器にも図10(b)に示すような電流が流れる。

 t=50msでSM形TCB(1)の補助サイリスタを点弧し,TSW11_1の電流を遮断し,TSW4-2を点弧し

SW1を投入すると電流経路は図9(c)に示すようになる。ここではL2の電流が流入し,OHコィル端子間電

圧も図10(c)に示すように変る。

 この間・TSW11-1の電圧・電流波形は図10(d)・(e)のようになり・通常状態になったTSW4-2の電圧・

電流波形は図10(6),㈹のようになる。

 次にt=65msでSM形TCB(皿)のTSW11-2の電流を遮断する(図10(f)・(9))・次いでTSW4_3を

点弧すると図9(d)に示す電流経路となり,時定数調整抵抗の値が大きくなる。これによって,OHコィル

端子間電圧は図10(c〉のように高電圧を発生することができる。この間のTSW4_3・TSW5の電圧,電流

波形は図10(n〉,(o〉,(p〉,(q)のようになる。

 同様にして・t=80msでTSW11_3の電流を遮断すると・電流経路は図9(e)のようになり・時定数調

整抵抗はR1.1,R1_2,R1_3が直列接続され更に大きな値となるため,OHコイル端子間電圧は図10(c)に

示すような波形に変えることができる。

 以上の結果より,SM形TCBを使った場合,時定数調整抵抗を切換毎に大きくすれば,切換毎のOHコィ

ル端子間電圧を上昇させていくことが可能である。しかもIESコイル電流が主サイリスタスイッチに移った後

234

研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

 1.5〉

o乙0,0田劇

層t課。

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一q I-1真聖容器電流  r一” 一 一 -

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 1.5

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冒 一『一 一 - 一 甲        一 一一         -  一      一}「}了70.7kA  OHコイル電流

lesコイル電流

 924kV一6舶イル蛸子問電圧

秤1・も,。

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2.0 ・4.0  6.Olc) 時

8.0    ,0,0   12.0

間(×10一盤S》

        0.8(          (          o                   0.0}          爆          ”

8.0    10.0   12.0

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a5kV -lQskV

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2,0 4,0

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”-一-r一72kA

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 1.0)

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一1・宅,。

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6,0

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時  閥《x10’厘S,

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8,5kV I

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 一  一一4kV

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TSWI..2電流

 0,8

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襖騨

 一〇.8

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 1.0》

o乙0.0出騨

2.0 4.0

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8・0    10.0   12.0

問{x10冒竃S,

8

’一丁  レ 一

マ「齢 }  一

  72kA-1二韓 FTSWgl-2電流

一18。

 0.(

o乙o・o

撰”

2.0 4.0

lgl

6.0  8.0    10,0   12.0

時  闘×10薗2S}

一   一

副十1一4賦V

TSWg、.3電圧一一』 LT『2,0

一〇,8

 0,0   2,0

.一_一._.一..  鯉一  _一』r『”2k !キ1目

一「一!

冒 ■ 一

Tsw”.3畢流噸_

4』0    6.0    8・0    10.0   12,0

     時  間{×10-2S》

 ㈲

4.0  6.0

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8.0    10.0    12.0

問(x10-2S》

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13.5胴▽

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TSW4.、電流

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一1・8.u

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2.0 4.0    6,0    8.0    10.0   12.0

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TSW4.2電圧

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2.0 4.0 6.0    80    10.0   12.0

 時  閣{×10-2S》

T 72kA

TSW4、雪電流  1⊥

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2,0 4.0    6.0    8.0    10.0   12.0

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一〇・乞.。

2.0 4.0

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 時  問{x10闇2S》

一一 -

τSW4.3電流

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2.0 4,0   6.O

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 8.0    量0.0   12.0

時  悶{x10『塞S》

3

一 「”一『冒 P , 一

一 冒  一 一

墳25kV

『 n }   冒 }       一TSW5電圧 一 ■一

一〇・葛,。

2.0 4,0    6.0    8,0    10,0   12,0

     時  悶・{x10’2S》  (P)

8

弾 } 岬 一 一 『

-1  一 『 』

._』型sw礁.流

2.0 4.0    6.0    8.0    10.0   12.0

     時  間(×10曹8S}  lq}

解析条件

しf=10mHLieg謂10mHl蟹 =70.7kA  IIo6=70.7kA

 R1-g==R1艦2==R麿.3鵯Rl-4=0.118Ω

図10.SM形並列方式変流器コイル電源の動作特性

235

核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

で,順次遮断動作を行えることから,高電圧を必要とする時に任意の時刻に即座に遮断動作が行える◎即ち,

主サイリスタの遮断時聞(補助サイリスタスィッチを点弧して,主サイリスタスイッチの電流が遮断された

後,補助サイリスタスイッチが遮断状態になるまで時間一数ms一)以上の時間間隔があれば切換可能であ

る。従って本方式はサイリスタの高速制御性を充分活かした回路と言える。

 更に,時定数調整抵抗を順次低い値に切換えていく場合は,図9(b)の状態から順次TSW1-3とTSW4-4

TSWh_2とTSW4-3,TSW11-1とTSW4-2を点弧していけばよい。

 このように,SM形TCBを使ったOHコイル電源はOHコイル端子間電圧を自由に変えられることから,

プラズマ電流立上げ時に有用な回路となる。

 (2) DM形並列方式OHコイル電源

 DM形TCBを適用した並列方式OHコイル   D

電源(DM形並列方式変流器コイル電源)の代

表的な回路構成を図11に示す。これは・DM

                                     プラズマ

髪薦㌶灘轍糖形並     づe                                    lM

.1瓢鴇嶽鷺二盗し   ミ臼                                     真空容器り経済的なTCBを構成することを特徴とし

ている。転流回路のコンデンサは,電流遮断

時の放電によって通常電圧極性が反転ずる。

本来,コンデンサを共通化すると電圧極性を                      図11.DM形並列方式変流器コイル電源の構成再度反転する必要があるが・DM形TCBの

場合は図2(d)からもわかるように,電圧極性

TSW51

T C B   Tsw4一、

SW,

C,C2

TSW,1-1

0購形’『C8 (1)

τSW11_2

TSW!1-3

D麟形●『CB (】D

TSW11一‘

を反転する別回路が不必要で,そのまま次の遮断動作用転流コンデンサとして使えるのも特長の一つである。

 図11の回路をもとにディジタルシミュレーションを行い,回路特性を検討した。DM形TCBの構成は2

段とした。従って主サイリスタスイッチの切換は4回行うため,切換問隔は10msとした。 そ中他の回路

定数等の解析条件はSM形並列方式OHコイル電源の場合と同じである。

 解析結果を図12(a),(b),(c〉に示す。(a)はプラズマOTV,プラズマ電流,(b)はOHコィルの電流,端子

間電圧,およびIESコイル電流,(c)は転流コンデンサの電圧をそれぞれ示す。本方式でも,主サイリスタ

スイッチの切換毎に時定数調整抵抗が順次多くなることから(b)に示すように,OHコィル端子間電圧は切換

毎に高い電圧が得られる。

 また,共通化した転流コンデンサの電圧も,(c〉に示すように,転流時に必要な電圧条件を満たしで転流

が行われている。このことから,SM形TCBの転流コンデンサを共通化しても, 回路特性に何の問題もな

236

研究論文 サイリス遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野・嶋田他

1,5

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9 00さ団鮮

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ブラズマOTV

プラズマ電流

O.0 2.0 4.0 6.0        8.0        10.0       12、0

  時悶(xIO『2Sl

ESコイル電流

変流器コィ’礁流

変流器コイル鑑子蹴圧

.:24kV

0,0 2.0 40  00  ao  100  重20     時澗lx10-2S)

6.25kV

C撹圧CI電圧

一4,5kV

一8kV

0.3

 ≦α09 乙 爆 鱒03

0,8

 《 る0.0 ¶一

 乙 爆 ”一〇,8

(a)

(b)

(c)

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           時間〔x102Sl

        解析条件        llニ1惚sニ7α7kA        Ll=し2=10mH        R耳一‘=R尋一2ニR1-3=R暑一4=0¶8Ω

 図穆.DM形並列方式変流器コイル電源の動作特性

いことが明らかになった。従って,DM形並列方式OI{コイル電源はSM形並列方式OHコイル電源より回路

構成をより簡単化することができる。

4.半導体スイッチ容量の評価

 半導体スイッチは機械スイッチに比べて高価である。しかも,半導体スイッチはOHコイル電源を構成す

る他の主要機器(IESコィル,コンデンサ,時定数調整抵抗等)と比べても高価である。従って,OHコィル

電源の経済性を評価する時は,半導体スイッチの評価が重要な比重を占める。そこで,半導体スィッチを使

った変流器コイル電源をさ程高価にしないためにはOH電源を回路的に工夫することが必要である。これま

で述べた方式は,それを目標にしたものであるが,TCBのスイッチ容量は従来方式より低減できる目途はっ

いても,一方ではサイリスタを使ったバイパススィッチが増えるという副次定効果をもたらした。従って,

回路に必要な半導体スイッチの容量は,TCBのみならずバイパススイッチを含めて評価するのが妥当である。

 ここでは,一例としてコイル段数3(OHコイルとIESコイル2段)の場合について各方式の半導体スイ

ッチ容量を比較してみる。主サイリスタスイッチには高速サイリスタが必要である。一方補助サイリスタス

ィッチ,バィパスサィリスタスィッチ等は一般用サイリスタが使用できる。従って,金額に換算した等価容

量は主サィリスタスィッチの1/3として評価するのが適切と考えられる。ただし・図6に示す第1段回路

237

核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

(OHコイル)と第2段回路(IESコイル)を結ぶバイパススイッチは,投入速度が遅くても機能上問題に

ならないため機械スイッチとダイオードの組合せが可能である。従って,サイリスタに比べ安価なため,評

価から外した。さらに転流コンデンサの極性反転回路スイッチは微小電流で電圧反転が可能のため容量も小

さく除外した。評価結果を表3に示す。

 (1) 主サイリスタスイッチ

 SM形TCBの場合,主サイリスタスイッチを3分割したため,各々の定格電圧はS形TCBの定格電圧

(25kV)の33%でよい。定格電流は全電流が流れるため100%である。しかし,図10(d)より, t=50

msでの切換時に若干の過電圧(10.5kV)を禿生しているため,各主サィリスタスイッチ容量はS形TCBの

40%として評価した。

表3.各種TCB方式と半導体スイッチ容量評価

TC8方式 S形TCB SM形τCB DM形TCB SR形TCBコ イ ル段  数

3 3 3 3

TSW, 1.0料 TSW1量.10.4 TSWI1一,0.3 TSW1 1.0

TSW2 1.0 TSW書1..20.4 TSWll.20、3

TSW3 tO TSW賢曽304 TSW11.30.3

TSW目.4 0.3

TSW3203’2 TSW1210.1 TSW盲2.10.1 TSWl103

TSW220.3 TSW12..20.1 TSW12.2 0.1

τSW320.3 TSWl2.30」 TSW量230、1

TSW12.40.1

TSWo  O,3 TSWo  O.3

TSW4-1 0.15 TSW4..1 0.15 TSW4 0.3

TSW42 0.15 TSW4.2 0.15

TSW43 0.15 TSW4.3 0.15

τSW44 0.15

了SW5  0.3 TSW5  0、3 TSW5 0、3

TSW,  0,3 TSW6  0.3 TSW6 0、3

半導体スイッチ容量 3.9 2.85 3.1 2.2

(註)*1 25kv,100kAを遮断するTCBの主サイリスタスイッチ容量を

    晃,0とした。’

  *2 補助サイリスタスイッチ,バイパススイッチは一般サイリスタ

    を使用するため高速サイリスタを使う主サイリスタスイッチの

    等価容量の鮮3で評価した。

  *3 1ESコイルとOHコイルをつなぐバイパススイッチSW・+Dは

    評価から除外した。

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研究論文 サイリスタ遮断器の変流器コイル電源への応用 薮野,嶋田他

 DM形TCBの場合は,4分割としたため,各々25%の容量でよいが,SM形TCBの場合と同一理由で過

電圧を評価しS形TCBの容量の30%とした。

 SR形TCBはS形TCBと同一のため100%で評価した。

 (2)補助サイリスタスイッチ

 SM形TCBの場合,3分割のため定格電圧はS形TCBの補助サイリスタスイッチの33%でよく,定格

電流は100%必要である。よって,33%で評価し0.1とした。

 DM形TCBの場合,4分割のため各々,S形TCBの容量の25%でよく,0.1と評価した。SR形TCB

はS形TCBと同一のため100%で評価し0.3とした。

 また,SM形,DM形TCBを使ったOHコイル電源では,プラズマ発生時のOHコィル電流遮断にTSWo

(図9,図ll)が使われる。これは,S形TCBの補助サイリスタスイッチと同容量でなければならず,0.3

となる◎

 (3) バイパススイッチ

 SM形TCBのバイパススイッチは,図10(」),(1),(n)の電圧波形から,最初のプラズマ電流が立上った

後,IESコィル電流を主サイリスタスイッチヘ転流するために点弧した時にOHコイル端子間電圧が分圧さ

れて印加されていることがわかる。従って,電圧はこの時の最大電圧(13。6kV)で評価した。電流は設計

時には定格電流値で評価すべきである。よって,0.3の半導体スイッチ容量の1/2,つまり0.15として評

価した。

 DM形TCBについても同様で,すべて045で評価した。

 TSW5,TSW6のバイパススイッチは,IESコイルの定格電流が流れ,プラズマ発生時に全電圧(定格

25kV)が印加されるため,0.3の半導体スイッチ容量が必要である。

 以上より,各方式の半導体スイッチ容量を比較すると,プラズマ電流3段立上げの場合,S形TCBを3

組使う方式は経済性の面から不利であり,SR形TCBが有利だと言える。SM形,DM形TCBの場合は時

定数調整抵抗の切換を行うため,その分,SR形TCBより,バイパススィッチの容量が増大する。しかし,

プラズマ電流励起時の任意の時刻で,OHコィル端子間に高電圧を発生できる特長をもち,より精度の高い

制御を可能にしている。従って,少ないスイッチ容量及び高精度制御性という相反する要求の中で,個々の

システムに合わせたTCBの方式を選択していく必要がある。

 なお,ここではコィル段数3の場合を比較したが,更に段数が多くなる程,S形TCBを並列方式OHコィ

ル電源に適用するのは経済的に不利となる。

5.おわりに

 プラズマ電流励起時の制御立上げを目的とした変流器(OH)コイル電源に適用する新らしいサイリスタ遮

断器(TCB)を経済性,制御性の面から検討し,次の結論を得た。

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核融合研究 第57巻第4号  1987年4月

(1)従来のOHコイルとIESコイルから成るプラズマ電流2段立上げOHコイル電源(2台のTCBを適

用)と同等の機能をもつOHコイル電源として,1台のTCBと」ンデンサとを組合せたOHコイル電源が有

用であることがわかった。しかし,プラズマ電流励起時間を長くするとコンデンサ容量が大きくなる欠点を

有する。

(2)プラズマ電流の制御立上げOHコイル電源では,システムの経済性を重視すると,TCBを繰返し

使用する方式が,半導体スイッチが従来方式の約55%の価格でできるので有用であることがわかった。

(3)プラズマ電流励起期問の任意の時刻でも,OHコイル端子間に高電圧を発生できるOHコイル電源と

しては,経済性と共に制御性も重視すると,TCBをモジュール構成にした回路方式が,半導体スィッチが従

釆方式の約75~80%の価格でできるので有用であることがわかった。

(4)半導体スイッチ容量から見た経済性を考えると,TCBを繰返し使用する方式が安価で,次いで,

TCBをモジュール化した方式がやや高価になり,従来のエネルギー蓄積コイル毎にTCBを設ける方式は最

も高価になる。

終りに,本研究に際し終始御指導を賜わりました日本原子力研究所大型トカマク開発部吉川部長,同田村

次長・日立製作所日立研究所天野主管研究員,大西第一部部長に感謝の意を表します。

参 考 文 献

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  Research,PP・386~389,(1981).

5)谷,嶋田,他=JT-60用大電流直流遮断器の開発(TCB方式),核融合連合講演会,e-3,P・127,(1978).

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  Fusion Research,PP。1427~1430(1981).

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11)谷,嶋田,他:サイリスタ遮断器を使ったトカマク形核融合装置変流器コイル電源の検討;電学誌B,102巻,7号,

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15) Tani,e孟αZ.:Study of Ohmic Heating(OH)Power Supply System Using DC Thyristor Circuit Breaker,Proceed.

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