地域包括ケアシステムって結局何をすること? ー8 … › kinki ›...
TRANSCRIPT
Cover 2
地域包括ケアシステムって結局何をすること?ー8文字で答える地域包括ケアシステムー
「地域包括ケア研究会」(田中滋座長)事務局統括(H20-28)厚生労働省 要介護認定適正化事業 認定適正化専門員JICA(国際協力機構) 社会保障分野課題別支援委員会委員中央大学大学院 戦略経営研究科 客員教授
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社社会政策部長
上席主任研究員 岩名 礼介
近畿地域包括ケア初任者合同セミナー
1
○住民の主体的な支え合いを育み、暮らしに安心感と生きがいを生み出す
○地域の資源を活かし、暮らしと地域社会に豊かさを生み出す○個人や世帯の抱える複合的課題などへの包括的な支援
○人口減少に対応する、分野をまたがる総合的サービス提供の支援
◆制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が 『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会
「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)【概要】
「地域共生社会」とは
平成29(2017)年:介護保険法・社会福祉法等の改正 市町村による包括的支援体制の制度化
共生型サービスの創設 など
平成30(2018)年: 介護・障害報酬改定:共生型サービスの評価など
生活困窮者自立支援制度の強化2020年代初頭:全面展開
【検討課題】①地域課題の解決力強化のための体制の全国的な整備のための支援方策(制度のあり方を含む)
②保健福祉行政横断的な包括的支援のあり方 ③共通基礎課程の創設 等
平成31(2019)年以降:更なる制度見直し
実現に向けた工程
改革の骨格
専門人材の機能強化・最大活用
地域を基盤とする包括的支援の強化
地域包括ケアの理念の普遍化:高齢者だけでなく、生活上の困難を抱える方への包括的支援体制の構築
共生型サービスの創設 【29年制度改正・30年報酬改定】
市町村の地域保健の推進機能の強化、保健福祉横断的な包括的支援のあり方の検討
住民相互の支え合い機能を強化、公的支援と協働して、地域課題の解決を試みる体制を整備【29年制度改正】
複合課題に対応する包括的相談支援体制の構築【29年制度改正】
地域福祉計画の充実【29年制度改正】
地域課題の解決力の強化
地域丸ごとのつながりの強化
対人支援を行う専門資格に共通の基礎課程創設の検討
福祉系国家資格を持つ場合の保育士養成課程・試験科目の一部免除の検討
「地域共生社会」の実現
改革の背景と方向性
公的支援の『縦割り』から『丸ごと』への転換 『我が事』・『丸ごと』の地域づくりを育む仕組みへの転換
多様な担い手の育成・参画、民間資金活用の推進、多様な就労・社会参加の場の整備
社会保障の枠を超え、地域資源(耕作放棄地、環境保全など)と丸ごとつながることで地域に「循環」を生み出す、先進的取組を支援
資料・厚生労働省
2
「我が事・丸ごと地域共生社会」 地域包括ケアシステム
主な対象 すべての住民主に高齢者ケア
(すべての住民に発展可能性をもつ仕組み)
意味づけ今後日本社会が目指す
「社会イメージ」のコンセプト
2040年に向けて構築を目指す
仕組み(左記イメージ実現のための手段)
共通点多職種連携/提供体制における統合の必要性/
縦割りの打破/キャリアの複線化
地域共生社会=目指す社会のイメージ、コンセプト(目的)
地域包括ケアシステム=地域共生社会を実現するための手段・仕組み
地域包括ケアシステムは、高齢者分野でその考え方を発展させてきた仕組み。その構成要素である
「多職種連携」や「地域づくり」「規範的統合」「植木鉢」などのコンセプトは、高齢者以外の分野にも
応用可能な概念と理解される。
出所)岩名礼介作成
3
これからの社会に向けて目指すべき社会のイメージ
「我が事・丸ごと」 地域共生社会
地域包括ケアシステム
介護保険事業計画(地域包括ケア計画)
障 害 子育て
高齢分野の地域づくりの取組
高齢分野の「専門職」連携の仕組みづくり
孤立等
他分野への
応用可能性高い
出所)岩名礼介作成
4
5出所)平成28年度 地域包括ケア研究会報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
2.9%6.3%
14.2%
30.1%
52.3%
74.1%
90.1%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
65-69 70-74 75-79 80-84 85-89 90-94 95-
認定率
6
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060
後期高齢者人口(左目盛) 死亡数(右目盛り)
2025 2030 2035 2040
団塊の世代の年齢
(単位:千人)(単位:千人)
75+最初のピーク
【2030】
死亡者数ピーク【2040】
76|78歳
91|93歳
81|83歳
出所)平成28年度 地域包括ケア研究会報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
7出所)平成28年度 地域包括ケア研究会報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
14.3%
14.6%
17.5%
18.7%
17.9%
13.7%
8.0%
13.7%
15.6%
15.8%
15.9%
15.7%
13.8%
10.0%
19.1%
17.8%
18.4%
19.6%
20.3%
20.4%
18.1%
17.4%
18.8%
17.4%
16.4%
16.3%
17.6%
19.0%
13.0%
12.3%
11.7%
11.1%
11.3%
13.0%
16.1%
12.2%
10.5%
10.0%
9.8%
10.0%
11.8%
15.9%
10.3%
10.4%
9.3%
8.6%
8.5%
9.7%
12.9%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
65-69
70-74
75-79
80-84
85-89
90-94
95-
要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
8
出所)平成28年度 地域包括ケア研究会報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
社会参加する 重度化を遅らせる
地域で「つながる」地域のつながりがなくなっている住民
一次予防
もうひとつの予防
地域共生社会の実現・地域包括ケアシステムの構築
地域のつながりの中にいる住民
重度元気 虚弱
虚弱を遅らせる
二次予防 三次予防
ゼロ次予防:地域環境・社会環境の整備・改善
ゼロ次予防:地域環境・社会環境の整備・改善
ゼロ次予防:地域環境・社会環境の整備・改善
ゼロ次予防:地域環境・社会環境の整備・改善
9
10
ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するため、医療や介護、予防のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制
高齢者が尊厳を保ちながら、重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる
地域包括ケアシステムが目指すもの
出所)厚生労働省資料及び地域包括ケア研究会報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
11
非日常 日 常
医療機関(非日常) 馴染みの人間関係のある場所
(住み慣れた地域=日常の生活)
その継続
人生の最終段階@日常の中での看取り
馴染みの人間関係のある場所
(住み慣れた地域=日常の生活)
介護施設
施設での看取り
出所)岩名礼介作成
12
出所)植木鉢の絵:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業報告書」(地域
包括ケア研究会)、平成27年度老人保健健康増進等事業。
13
出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティン
グ「地域包括ケアシステムの構築における
【今後の検討のための論点整理】」(地域
包括ケア研究会)、平成24度老人保健健
康増進等事業
互助
公助共助
自助
自分のことを自分でする
自らの健康管理(セルフケア)
市場サービスの購入
一般財源による高齢者福祉事業等
生活保護
介護保険に代表される社会保険制度及びサービス
ボランティア活動住民組織の活動
当事者団体による取組有償ボランティア
ボランティア・住民組織の活動への公的支援
14
出所)植木鉢の絵:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「地域包括ケアシステム構築に向けた制度及
びサービスのあり方に関する研究事業報告書」(地域包括ケア研究会)、平成27年度老人保健健康増
進等事業。楕円と周辺の文字については筆者が加筆。
在宅医療・介護連携推進事業
生活支援体制整備事業介護予防・日常生活支援総合事業
認知症総合支援事業
地域ケア会議推進事業
新しい地域支援事業(包括的支援事業)は、地域包括ケアシステムを具体化するための取組の総称
15
地域包括ケアシステムとは何?
まとめる 仕組み
まきこむ 仕組み
地域の様々な資源をまとめていく仕組み。特に、専門職については、事業者間の連携コストを
引き下げるための取組を推進していくことが重要。
自分達の取組が「どういう意味で」「何を」まとめているのかを意識していくと、個々の取組
が地域包括的であるかどうかを考えることができる。
地域包括ケアシステムは、専門職以外の関係者が参加してはじめて成立すると考えるべき。地
域住民や、家族、ご近所とのつながりで自生的に土壌が構成されることが重要。地域の見守り
等への近隣住民の参加などを意識していくこと、介護分野以外の関係者をどれだけ「まきこ
む」ことができるかがポイント。介護関係者だけで形成される地域包括ケアシステムは脆弱で
ある。
16
「地域包括ケアシステム」は「地域統合ケアシステム」
地域の中にある「バラバラ」なものを
「まとめる」仕組みのこと!
利用者からみて
「一体的なケア」
出所)岩名礼介作成
17
「統合」の観点から考える=医療と介護の連携
統合的なアプローチ(断片化されている資源を接続する作業)
共有化:地域関係者が同じ方向を向いて取り組む。基本方針=検証可能な客観的な目標の設定とその共有(規範的統合)。
共通化:現場で用いられる書式・様式の共通化による情報の共有、地域連携パスなどのツールの導入(臨床的統合)。
ネットワーク化:多職種協働を強化し、協調的にサービス提供を行う。住民間の互助組織の形成、ケアカンファレンスなど(臨床的統合)。
在宅高齢者
在宅高齢者
サービスは「断片化」されており、各事業者がそれぞれの考え方に基づいて提供。(統合的・包括的なケアは期待できない)
在宅高齢者
断片化されたサービスを増やすだけでは、地域に住みづけることができない上に財政負担だけが大きくなる。
それぞれの事業者は、同じ方向性を向いてサービスを提供している状態(規範的統合)。
事業者間の連携が取られ、統合的にサービスが提供される(臨床的統合)※地域連携パスや地域ケア会議なども含む。
連携
業務提携・委託等による効率的運営(組織的統合)
専門職
出所)岩名礼介作成
18
「葉っぱ」である専門職は「まとまる」方向
地域の取組が「地域包括ケア」的かどうか?
「地域包括ケアシステム」の目的は明確だが、システム自体の定義が曖昧なので、
現場では、それぞれの取組が地域包括ケアの実現に貢献しているのかが見えにくい。
自分たちの取組が、地域のどんな「バラバラ」を「まとめているのか」を考えてみ
ると、取組の意味や方向性を「見える化」できる。
「連携コスト」をいかに小さくしていくかがカギ
基本的に異質(経営が違う/考え方が違う等)な者同士が統合的(包括的に)活動
しようとしているので、連携=コストである。
コストを小さくする方法は2つ
ケアに対する考え方・方針、技術、書式、ルールなどをできる限り共有
し標準化の方向に改善する。
法人や主体を統合していく(事業提携や経営統合なども含めた組織的な
統合)
19
最近の政策における地域包括ケア的動向の例【まとめ】
「ばらばら」を「まとめる」政策
包括払いによる居宅サービスの新規導入(小規模多機能、定期巡回・随時
対応サービスなど)
在宅医療介護連携(他職種連携)、地域ケア会議(規範的統合の場)、地
域連携パス(現場レベルでの手順の共有)
介護報酬改正:小規模通所介護における政策転換、総合マネジメント体制
強化加算など
「ロールシフト」で「まきこむ」政策
介護予防日常生活支援総合事業:軽度者への支援を非専門職にシフトする
ことで、専門職は中重度者へ重点化。総合事業における「地域リハビリ
テーション活動支援事業」「A類型サービス」など
アクティブエイジング=高齢者の参加による地域の担い手・支え合いの仕
組みづくり=介護予防の概念の転換(介護予防・日常生活支援総合事業)
20
施設
ケアシステムの転換(イメージ)
従来型のケアシステム これからのケアシステム
大型施設(機能は固定)
大型施設(機能は固定)
通い
定期巡回
小規在宅サービス事業所(個別サービス単体)
生活支援
通所
施設泊まり
通い
訪問
小規模の施設+在宅サービス
(固定サービス+可変サービス)
大型施設は地域展開(地域での資源連携)
出所)岩名礼介作成
21
今後の方向性(個人的な見解として)
訪問を組み込んだ包括型サービス
「定期巡回、小多機、看多機」=包括型サービスが基本路線。訪問抜きでは、
在宅を支えることが困難であるとの認識はより一層明確に。また、従事者の
キャリア形成上も、単品サービス事業者では、若年の人材は魅力を感じない。
リハ的視点をもった中重度支援
単に中重度者を多く抱えるのではなく、重度化予防に取り組むことが
ポイント。担い手として、リハ的な視点を持った訪問介護員の養成が
不可欠。
経営の効率化
上記を意識すると、基本的に経営規模の拡大または業務提携等の流れは不可避。
社会福祉法人については大規模化の流れが打ち出されている。ポイントは単純
な規模拡大ではなく、複数機能を統合的に提供できる経営体制の構築といえる。
22
出所)岩名礼介作成
現状の提供事業者の課題 今後の事業者に与えられている選択肢
時代の要請
現
実
現状維持
法人規模の拡大(サービス拠点の拡大等)
他事業者・法人との連携(サービス連携・組織間連携)
経営統合(合併・事業譲渡)
利用者からみて
一体的なサービス提供体制の構築
在宅サービスはバラバラに提供され
ている。
在宅三本柱は同じ屋根を支えてき
たのか?
23
24
【全国】私たちが直面する「人口減少と需要の増加」に対応する
出所)国立社会保障・人口問題研究所;日本の将来推計人口(平成24年1月推計)のデータをもとに、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが作成。
※2015年を100とした場合の2040年までの推計値
<生産年齢人口の減少と後期高齢者の増加>
95.6
92.2 88.2
82.6
75.3
99.1
84.5 80.4
85.594.0
100.0
114.2
132.4138.4 136.4 135.1
0
20
40
60
80
100
120
140
160
2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年
15~64歳 65~74歳 75歳以上
25
【全国】どんどん重くなる負担にどうやって対処するか
75歳以上1人に対して
15~74歳は
2040 年
うち 0.74人は前期高齢者
資料:国立社会保障・人口問題研究所;日本の将来推計人口(平成24年1月推計)
25
5.7人
2015 年
25
2025 年
75歳以上1人に対して
15~74歳は3.9人
75歳以上1人に対して
15~74歳は3.3人
うち 0.68人は前期高齢者
介護予防の効果をいかに高めるか?
限られた人材をいかに有効に活用するか?
26
ロールシフト(役割の移行)から人的資源を確保する
出所)岩名作成
【現在の役割】 【機能・役割の例示】 【ロールシフト後】
医師診断・治療
医師
リスクの予測
看護職
看護職診療補助行為
適切な介助方法の選択身体介護
介護職
介護職身体介護
生活支援 誰が担うのか?
【ロールシフトのイメージ】以下の図は、法令上の区分や個別の現場の状況とは必ずしも一致しないが、全体のシフトのイメージを示すために作成。
27
高齢者≠要介護予備軍ではない ~担い手として高齢者
出所)厚生労働省
28
専門職は「一対一」から「一対多」へ (例示)
リハ職
利用者
リハビリテーション
リハ職
訪問介護員
利用者
自立支援の視点をもった身体介護
技術的助言・指導
住民
リーダー
住民
体操の指導
仲間内での共有
プラス
専門職が利用者や患者に対して専門サービスを提供する形態だけでは
減少する担い手が増加する需要に追い付かなくなる。専門職と利用者の
「一対一」の関係性だけでは限界がある。専門職がその知識や技術の一
部を他者に提供することで、より多くの対象者に貢献するような「一対多」
の関係が重要になってくる。リハ職が地域の体操教室の立ち上げ時に少
しだけ指導する、訪問介護事業所の研修に協力するといったことによって、
地域資源のパワーアップが可能。→地域リハビリテーション活動支援事業
29
ちなみに、なぜこれ以上施設を作ったらまずいのか?
施設入所者数 在宅サービス利用者数必要人材数
40人100人 200人
人員配置基準
3:1に加配を想定して
設定(2.5:1)
実態の配置状況
を想定して算出(5:1)
出所)岩名礼介作成