未完熟果実を用いた 革新的鮮度保持技術の開発 - chiba u · 2017. 4. 20. ·...
TRANSCRIPT
-
2017年 2月国立大学法人千葉大学大学院園芸学研究科
未完熟果実を用いた革新的鮮度保持技術の開発
-
【公募研究課題名】
販売期間の長期化を可能にする青果物の鮮度保持技術の開発
未完熟果実を用いた革新的鮮度保持技術の開発
未成熟果実利用コンソーシアム2
【研究計画名】
【コンソーシアム名】
-
研究背景①
国内人口減少、アジア新興国経済発展+
2015年のTPP妥結
国内農産物の輸出促進
農林水産物・食品の輸出目標:1兆円程度(2020年までに)
【青果物】80億円(H24) → 250億円程度(H32)
3
-
研究背景②
これまでも輸出に対して様々な取組みを模索→ほとんどの事業が定着できず
・物流の高品質化・物流の効率化・日本産品の販売強化
農林水産物輸出にかかる課題
長期貯蔵を可能とする新しい技術開発が必要→流通体系の抜本的改革
4
-
トマトの生産・流通・販売体系
生産 流通・市場 小売 実需者
出荷
買付
販売
・収穫果実の出荷調整が困難
・裂果が多い
・完熟果の輸送性が悪いため、催色期の果実を収穫⇒ 流通過程で赤熟化 (成り行きで成熟)
・季節によって果皮の色・糖度・酸度などが不均一
・着色段階の異なる果実が流通
・在庫調整が困難
・均質な果実の調達が困難
・異なるニーズへの対応が困難
・購入時の選 択 肢 が無い
・購入後の日持ちに不満がある
研究背景③
-
追熟による新しい流通体系の実現
生産 流通・市場 小売 実需者
現行の生産・流通・販売体系
追熟
緑熟果実の利用
・追熟過程をコントロール→果実の出荷調整・品質管理が可能
・追熟施設のバッファー機能→市場への安定供給(4定)が可能 6
-
追熟温度
(℃)
赤熟果(対照) 5.1 a 0.33 a 15.8 a 2.6 b緑熟果(対照) 4.1 a 0.37 a 11.2 b 4.3 a10℃/30℃ 0.11 b 4.8 a 0.36 a 13.6 ab 2.1 c20 0.08 ab 5.0 a 0.39 a 12.7 ab 2.6 b15℃/25℃ 0.07 a 4.6 a 0.39 a 12.0 b 2.4 bc
-
-
(Brix%) (%) (kg)重量減少率 糖度 酸度 糖酸比 硬度
・緑熟期で収穫・追熟速度を調整可能(図1)・果実品質は樹上赤熟果実と遜色ない(表1)
0
20
40
60
80
100
0 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29
赤熟
果(%
)
追熟日数
10℃/ 30℃20℃15℃/25℃樹上赤熟
図1 追熟時の温度管理がトマト緑熟果の赤熟日数に及ぼす影響
※貯蔵時の変温は12時間周期
表1 追熟時の変温管理が果実品質に及ぼす影響
研究背景④
-
緑熟果実収穫の利点
・緑熟期の収穫・貯蔵により出荷調整が可能・裂果対策・着果負担軽減による増収・冬季の燃料費削減が期待・収穫後のハンドリングが容易・果皮の色、果肉の硬さを調節可能 など
長期多段栽培 低段密植栽培
8
-
研究目的・目標
追熟工程管理による長期貯蔵技術の開発
トマト輸出産業の確立に寄与
・1ヶ月以上の長期貯蔵を実現・収穫物の歩留まり率を30%以上向上
9
-
緑熟果収穫の課題①
・緑熟果を収穫する指標がない→現状は勘と経験に依存
・圃場において収穫時期を判定するセンサの開発
-
緑熟果収穫の課題②
0
20
40
60
80
100
0 1 3 5 7 9 11 13 15 17
赤熟
果(%
)
追熟日数
15℃20℃25℃
・追熟に要する日数が個体によってばらつく
⇒熟度判定による最適な貯蔵条件へ
図 追熟時の温度管理がトマト緑熟果の赤熟日数に及ぼす影響
・熟度センサの開発・追熟モデルの開発・追熟施設の開発・追熟工程マネジメントシステムの開発 11
-
12
研究実施体制
研究代表機関:千葉大学大学院園芸学研究科
研究運営機関:千葉大学大学院
園芸学研究科
普及担当機関:八代地域農業協同組合千葉大学大学院園芸学研究科
研究機関組織代表研究者 :淨閑 正史(千葉大学大学院園芸学研究科:助教)サブリーダー :丸尾 達 (千葉大学大学院園芸学研究科:教授)サブリーダー :椎名 武夫(千葉大学大学院園芸学研究科:教授)
運営委員会ステアリング会議
プロジェクト委員会・開発担当者会議・全体検討会・開発分科会
生産者・実証生産者:山住農園実 証:九州屋
野菜花き研究領域
・センサ開発
三井金属計測機工
・センサ開発
イワタニアグリグリーン
・生産性評価・果実品質評価
ナラサキ産業
・追熟施設販売
千葉大学
・統括検証・センサ開発・追熟施設開発・システム評価
八代地域農業共同組合
・実証・システム評価
-
非破壊熟度判定センサの開発
13
①測定(データ取得)
②スペクトル解析(波長選択、多変量解析)
③熟度推定
・誤差精度が1%以内のセンサを開発
・圃場タイプと選果機タイプを開発
-
追熟施設の開発
14
高度な温湿度制御技術
従来の温湿度制御技術
温湿度にムラ 温湿度を均一化
・温度制御は1%以内、湿度制御は3%以内・数値流体力学による必要スペックの選定・貯蔵、追熟の同時管理を実現する施設の開発
-
15
追熟工程マネジメントシステムの開発
・追熟工程にかかわる生体、環境パラメータを定量化→追熟のモデル式を開発(データマイニング)→国内での実証試験に供試(㈱九州屋)→実需者・消費者の評価をフィードバック
追熟工程マネジメントシステムを活用した生産から販売までのイメージ
-
16
緑熟トマト収穫の生産性評価
長期多段栽培 低段密植栽培
・長期多段栽培と低段密植栽培での収量および果実品質を評価・季節変動や品種の影響を定量化
-
実証試験(輸出)
17
・熊本県八代市の生産者と実証試験を実施→リーファーコンテナによる海上輸送の課題抽出→生産者による追熟工程システムの評価→1ヶ月以上の長期貯蔵と収穫物の歩留まり率30%向上を達成する
-
普及計画
八代地域農業共同組合と連携→管内への普及活動(セミナー・勉強会の実施、展示会への出展など)
18
熊本県外への波及→本技術に関心を示す県や生産者は多い→実績を示すことで波及性が見込める→他の作物への応用も期待
-
既往の成果
平成27年度農山漁村6次産業化対策事業6次産業化サポート事業
・追熟した緑熟果実は商品価値を確認
・本技術は生産者へのメリットを確認在庫管理、裂果対策、増収、樹勢維持、生産コスト削減など
・実儒者はトマトの安定供給に期待
・実証試験を踏まえた収益の算出19
課題名:植物工場における緑熟期収穫後の追熟工程制御による熟成トマトの事業化可能性調査
-
20
研究費の合理性
•資産、高価格物品購入における相見積の実施
•不要不急物品の購入抑止
•消耗品、部品等の適正数購入励行
•購入者と会計管理者を分離、独立させて相互監視体制の構築と運用
•独立した会計担当者による勘定科目、計上金額、発注時期、などの監視とチェック
以下の管理を徹底し、研究費使用の合理性を追求・達成
-
まとめ
・緑熟果を利用することで、均質な青果物の生産や在庫管理も可能に
・TPPなどによるグローバル化に対し、農業生産物の海外への展開が可能
革新的技術開発と戦略により生産流通の仕組みを変え、グローバルで戦える農業生産システムを実現させる 21